説明

冷凍サイクル装置

【課題】暖房運転時に2次冷媒回路を有効に機能させ、かつ、全体のエネルギー効率を向上させる。
【解決手段】1次冷媒回路12では、第1熱交換器18および第2熱交換器19の間で冷媒経路17に第1膨張弁23、第3熱交換器24および第2膨張弁25が順番に組み込まれる。2次冷媒回路13の第2冷媒は暖房運転時に第3熱交換器24で第1冷媒から吸熱する。暖房運転にあたって第1冷媒には第5熱交換器44で第2冷媒から熱エネルギーが移される。そのことにより第1冷媒の蒸発温度は高まる。よって、第1冷媒の蒸発圧力は高まる。この蒸発圧力の高まりは第1圧縮機14の吸入圧力を高める。結果として第1圧縮機14の動力は低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気調和機といった冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1の図7に開示されるように、二酸化炭素といった低い地球温暖化係数を有する冷媒を利用した冷凍サイクル装置、すなわち、空気調和機は広く知られている。この空気調和機は1次冷媒回路および2次冷媒回路を備えている。1次冷媒回路では冷媒に二酸化炭素(以下「第1冷媒」という)が利用される。2次冷媒回路では冷媒に二酸化炭素よりも良好なエネルギー消費効率を有する冷媒(以下「第2冷媒」という)、例えば、プロパンが利用される。1次冷媒回路と2次冷媒回路とは冷媒−冷媒熱交換器で相互に連結される。2次冷媒回路は冷媒−冷媒熱交換器の働きで冷房運転時に室外熱交換器と膨張弁との間で二酸化炭素から吸熱する。こうして二酸化炭素のエンタルピーは室内熱交換器への流入に先立って十分に低下する。それにより二酸化炭素の臨界温度よりも外気温が高くても、遷臨界サイクルの室内熱交換器で十分なエンタルピー差(冷凍効果)が確保されることができる。
【0003】
一方、暖房運転時には2次冷媒回路は冷媒−冷媒熱交換器で放熱する。したがって、1次冷媒回路では膨張弁と室外熱交換器との間で二酸化炭素の蒸発温度は高まる。すなわち、冷媒の蒸発圧力は高まる。よって、圧縮機の吸入圧力も高まる。圧縮比が小さくなるため圧縮機の動力は低減される。したがって、空気調和機のエネルギー効率は向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/052467号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、暖房運転時には2次冷媒回路の室外熱交換器は低温の外気に曝されることから、冷房運転時に比べて2次冷媒回路の室外熱交換器と冷媒−冷媒熱交換器との間に大きな圧力差が要求される。また、低外気温の環境では2次冷媒回路の圧縮機への吸入密度が小さくなることから、所定の能力を得るために冷媒循環量を増大させる必要がある。その結果、2次冷媒回路の圧縮機には大きな動力が要求される。こうしたことから、前述のように1次冷媒回路の圧縮機で動力が低減されるものの、空気調和機全体では期待されるほどエネルギー効率は向上することができない。
【0006】
本発明によれば、暖房運転時に2次冷媒回路を有効に機能させることができ、かつ、全体のエネルギー効率を向上させることができる冷凍サイクル装置が提供されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
冷凍サイクル装置の一形態は、第1熱交換器および第2熱交換器の間で冷媒経路に順番に組み込まれる第1膨張弁、第3熱交換器および第2膨張弁を有し、第1圧縮機から選択的に前記第1熱交換器または前記第2熱交換器に高温高圧の第1冷媒が供給されると前記冷媒経路を通って前記第2熱交換器または前記第1熱交換器から前記第1冷媒を前記第1圧縮機に戻す1次冷媒回路と、前記第3熱交換器に接続されて、第2圧縮機および第3膨張弁の間で第4熱交換器に高温高圧の第2冷媒を供給し、前記第3膨張弁で減圧された前記第2冷媒を前記第3熱交換器を通って前記第2圧縮機に戻す2次冷媒回路と、前記1次冷媒回路で前記第1膨張弁および前記第1熱交換器の間に組み込まれて、前記第2冷媒から前記第1冷媒に熱エネルギーを移す第5熱交換器とを備える。
【0008】
こういった冷凍サイクル装置では、2次冷媒回路の第2冷媒は冷房運転時に第3熱交換器で第1冷媒から吸熱する。第1熱交換器が放熱器として働く場合には、蒸発器として働く第2熱交換器への流入に先立って第1冷媒のエンタルピーは減少する。その結果、第1冷媒の臨界温度より外気温が高くても、第2熱交換器で十分にエンタルピー差(冷凍効果)が確保されることができる。ここで、2次冷媒回路や第3熱交換器の追加に代えて、圧縮機の吸入側と膨張弁の手前との間に内部熱交換器を組み込み、蒸発器として働く熱交換器でエンタルピー差(冷凍効果)を増大することが考えられる。こうした内部熱交換器の場合と異なり、本発明に係る冷凍サイクル装置の一形態では過熱度が高まらないので、第1圧縮機の吐出温度が過度に高温に上昇することは抑えられることができる。したがって、良好な冷房運転は実現されることができる。
【0009】
同様に、2次冷媒回路の第2冷媒は暖房運転時にも第3熱交換器で第1冷媒から吸熱する。第2熱交換器が放熱器として働く場合には、蒸発器として働く第1熱交換器への流入に先立って第1冷媒のエンタルピーは減少する。冷房運転から暖房運転に切り替わった後に冷房運転時と同様に2次冷媒回路が動作しても、蒸発器となった第1熱交換器の蒸発温度が第3熱交換器の働きで意図した温度以上に過度に低下し第1熱交換器の効率が悪化することは回避されることができる。また、内部熱交換器を使ってエンタルピー差(冷凍効果)が増大する場合と異なり、圧縮機の吐出温度が過度に高温に上昇することは抑制されることができる。
【0010】
この冷凍サイクル装置では、暖房運転にあたって第1冷媒には第5熱交換器で第2冷媒から熱エネルギーが移される。その結果、第1冷媒の蒸発温度は高まる。第5熱交換器が追加されない場合の蒸発圧力に比べて第1冷媒の蒸発圧力は高まる。蒸発圧力の高まりは第1圧縮機の吸入圧力を高める。このことから、圧縮比が低下することにより第1圧縮機の動力は低減される。よって、空際調和機のエネルギー効率は向上する。ここで、第1圧縮機の動力の低減にあたって第2圧縮機の動作はそのまま維持される。基本的に外気温度が低下しても第3熱交換器の2次冷媒回路側の蒸発温度は変わらないので第2圧縮機の冷媒吸入密度は高い値で安定する。そのため、第2圧縮機で動力の増加は要求されない。したがって、第1圧縮機の動力の低減はそのまま冷凍サイクル装置全体のエネルギー効率の向上に寄与する。その一方で、例えば国際公開第2005/052467号(特許文献1)の図7に開示されるように、冷房運転時には冷媒−冷媒熱交換器で1次冷媒回路の冷媒から2次冷媒回路に放熱され、暖房運転時には冷媒−冷媒熱交換器で1次冷媒回路の冷媒は2次冷媒回路から吸熱する場合には、暖房運転時に1次冷媒回路の圧縮機の動力は低減されるものの、2次冷媒回路の室外熱交換器は低温の外気に曝されることから、冷房運転時に比べて2次冷媒回路の室外熱交換器と冷媒−冷媒熱交換器との間に大きな圧力差が要求されてしまう。その結果、圧縮比の増大に伴って2次冷媒回路の圧縮機には大きな動力が要求される。したがって、空気調和機全体では期待されるほどエネルギー効率は向上することができない。
【0011】
前記第5熱交換器は前記第1膨張弁と前記第1熱交換器との間に配置されればよい。その結果、第1冷媒の蒸発温度は高まる。第5熱交換器が追加されない場合の蒸発圧力に比べて第1冷媒の蒸発圧力は高まる。この蒸発圧力の高まりは第1圧縮機の吸入圧力を高める。よって、第1圧縮機の圧縮比は低下しその動力は低減される。
【0012】
冷凍サイクル装置は、暖房運転時に、前記第2熱交換器から放出される熱エネルギーを受ける暖気の環境に、前記第4熱交換器から放出される熱エネルギーを受ける暖気を送り込むダクトをさらに備えてもよい。前述の一形態に係る冷凍サイクル装置では、冷房運転時だけでなく暖房運転時でも2次冷媒回路は運転されることができることから、暖房運転時に2次冷媒回路の凝縮器として働く第4熱交換器から熱エネルギーは回収されることができる。すなわち、第3熱交換器で回収された低温の熱は第2圧縮機の働きで高温の熱に変換されることができる。第3熱交換器で第1冷媒から取り出された熱エネルギーは暖気として第2熱交換器から放出される熱エネルギーに加えられることができる。こうして熱エネルギーは無駄なく利用されることができる。全体として熱エネルギーは効率的に利用されることができる。その結果、良好な暖房運転は実現されることができる。
【0013】
冷凍サイクル装置は、前記ダクトを開閉する開閉板と、前記開閉板の開閉を制御する制御回路とをさらに備えてもよい。こういった開閉板によれば、冷房運転時には、第2熱交換器で生成される冷気に、第4熱交換器から放出される熱エネルギーが加えられることは回避されることができる。その結果、第2熱交換器で効率的に空気は冷却されることができる。
【0014】
冷凍サイクル装置は、前記第2冷媒回路の循環経路に前記第2圧縮機および前記第4熱交換器の間で組み込まれて、前記第5熱交換器に高温高圧の前記第2冷媒を送り込む分配弁をさらに備えてもよい。こうして第4熱交換器の上流で第5熱交換器に冷媒が送り込まれてもよい。その他、冷凍サイクル装置は、前記第2冷媒回路の循環経路に前記第4熱交換器および前記第3膨張弁の間で組み込まれて、前記第5熱交換器に高温高圧の前記第2冷媒を送り込む分配弁をさらに備えてもよい。このように第4熱交換器の下流で第5熱交換器に向かって冷媒が分配されると、第4熱交換器の下流で第2冷媒はさらに冷却されることになり、過冷却が促進された状態で第2冷媒は第3膨張弁に至ることから、第4熱交換器の上流で分配される場合に比べて成績係数(COP)は向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、暖房運転時に2次冷媒回路は有効に機能し、かつ、冷凍サイクル装置全体でエネルギー効率は向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る空気調和機の構成を概略的に示す図である。
【図2】空気調和機の制御系を概略的に示すブロック図である。
【図3】冷房運転時に第1冷媒および第2冷媒の流れを示す図である。
【図4】冷房運転時に第1冷媒の状態変化を概略的に示すモリエル線図である。
【図5】暖房運転時に第1冷媒および第2冷媒の流れを示す図である。
【図6】暖房運転時に第1冷媒の状態変化を概略的に示すモリエル線図である。
【図7】内部熱交換器を利用した場合の第1冷媒の状態変化を概略的に示すモリエル線図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る空気調和機の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0018】
図1は本発明の第1実施形態に係る冷凍サイクル装置、すなわち、空気調和機11の構成を概略的に示す。空気調和機11は1次冷媒回路12および2次冷媒回路13を備える。1次冷媒回路12および2次冷媒回路13はそれぞれ冷凍回路を構成する。1次冷媒回路12では例えばCO2(二酸化酸素)といった自然冷媒が第1冷媒として使用される。CO2は遷臨界サイクルを形成する。ただし、例えばフロンよりも小さい地球温暖化係数を有する物質であって遷臨界サイクルを形成する物質であれば、第1冷媒にはCO2以外の物質が利用されてもよい。第1冷媒は外気(または室外に相当する環境の空気)と室内の空気(または室内に相当する環境の空気)との間で熱エネルギーをやり取りする。
【0019】
2次冷媒回路13では、CO2以外の物質、例えばプロパンが第2冷媒として使用される。その他、第2冷媒にはプロパンに代えてHFC系、HFO系、HC系、アンモニア、またはそれらの混合物が用いられてもよい。特に、第2冷媒には、第1冷媒よりも高いエネルギー消費効率を有する物質が用いられればよい。第2冷媒は第1冷媒から吸熱し高温高圧の状態にしてから外気に向かって熱エネルギーを放出する。
【0020】
1次冷媒回路12は圧縮機(以下「第1圧縮機」という)14を備える。第1圧縮機14は第1循環経路15に組み込まれる。第1循環経路15は四方弁16の第1口16aおよび第2口16bを相互に結ぶ。第1循環経路15は、例えば銅管などの冷媒配管で形成される。第1圧縮機14の吸込口14aは四方弁16の第1口16aに冷媒配管を介して接続される。第1口16aからガス冷媒は第1圧縮機14の吸込口14aに供給される。第1圧縮機14は低圧のガス冷媒を所定の圧力まで圧縮する。第1圧縮機14の吐出口14bは四方弁16の第2口16bに冷媒配管を介して接続される。第1圧縮機14の吐出口14bからガス冷媒は四方弁16の第2口16bに供給される。
【0021】
四方弁16の第3口16cおよび第4口16dには第2循環経路17を形成する冷媒配管が接続される。第2循環経路17は、例えば銅管などの冷媒配管で形成されればよい。第2循環経路17は四方弁16の第3口16cおよび第4口16dを相互に結ぶ。こうして四方弁16は第1循環経路15および第2循環経路17を相互に接続する。1次冷媒回路12では第1冷媒は第1循環経路15および第2循環経路17を交互に循環する。
【0022】
第2循環経路17には、第3口16c側から順番に、第1熱交換器、すなわち、室外熱交換器18および第2熱交換器、すなわち、室内熱交換器19が組み込まれる。室外熱交換器18は第1口18aおよび第2口18bを有する。第1口18aおよび第2口18bの間で冷媒は室外熱交換器18を通過する。室外熱交換器18は、通過する冷媒と周囲の空気との間で熱エネルギーの交換を実現する。室外熱交換器18の第1口18aは四方弁16の第3口16cに冷媒配管を介して接続される。四方弁16の働きで、室外熱交換器18の第1口18aは、第1圧縮機14の吸込口14aおよび圧縮機14の吐出口14bのうちいずれかに切り替え可能に接続される。
【0023】
室外熱交換器18に関連づけられて送風ファン21が設置される。送風ファン21は羽根車の回転に応じて気流を生成する。気流は室外熱交換器18を通過する。通過する気流の流量は羽根車の毎分回転数に応じて調整される。気流の流量に応じて室外熱交換器18では冷媒と空気との間で交換される熱エネルギー量が調整される。
【0024】
室内熱交換器19は第1口19aおよび第2口19bを有する。第1口19aおよび第2口19bの間で冷媒は室内熱交換器19を通過する。室内熱交換器19は、通過する冷媒と周囲の空気との間で熱エネルギーの交換を実現する。室内熱交換器19の第2口19bは四方弁16の第4口16dに接続される。四方弁16の働きで、室内熱交換器19の第2口19bは、第1圧縮機14の吸込口14aおよび圧縮機14の吐出口14bのうちいずれかに切り替え可能に接続される。
【0025】
室内熱交換器19に関連づけられて送風ファン22が設置される。送風ファン22は羽根車の回転に応じて気流を生成する。気流は室内熱交換器19を通過する。通過する気流の流量は羽根車の毎分回転数に応じて調整される。気流の流量に応じて室内熱交換器19では冷媒と空気との間で交換される熱エネルギー量が調整されることができる。室内熱交換器19および送風ファン22は例えば室内機に組み込まれる。室内機は例えば建物内の室内空間RMに設置される。その他、室内機は室内空間RMに相当する環境空間に設置されればよい。
【0026】
室外熱交換器18および室内熱交換器19の間で第2循環経路17には室外熱交換器18側から順番に第1膨張弁23、第3熱交換器、すなわち、第1冷媒−冷媒熱交換器24および第2膨張弁25が組み込まれる。第1膨張弁23および第2膨張弁25はそれぞれ第1冷媒の流通量を制御する。その開度に応じて第1冷媒の流通量は調整される。こうした調整に応じて第1膨張弁23の上流および下流で第1冷媒に圧力差が生じる。同様に、第2膨張弁25の上流および下流で第1冷媒に圧力差が生じる。
【0027】
第1冷媒−冷媒熱交換器24は1次冷媒回路12の第2循環経路17を提供する第1流通路26を備える。第1流通路26は第1口26aおよび第2口26bを有する。第1口26aおよび第2口26bの間で冷媒は第1流通路26を通過する。第1流通路26の第1口26aは第1膨張弁23に接続される。第1流通路26の第2口26bは第2膨張弁25に接続される。
【0028】
同時に、第1冷媒−冷媒熱交換器24は第2流通路27を備える。第2流通路27は第1流通路26に相対して延びる。例えば、第2流通路27は第1流通路26に平行に延びてもよい。第2流通路27は第1口27aおよび第2口27bを有する。第1口27aおよび第2口27bの間で冷媒は第2流通路27を通過する。
【0029】
2次冷媒回路13は第3循環経路28を備える。第3循環経路28は第1冷媒-冷媒熱交換器24の第2流通路27に接続される。第3循環経路28は、例えば銅管などの冷媒配管で形成される。第3循環経路28は第2流通路27の第1口27aおよび第2口27bを相互に結ぶ。
【0030】
第3循環経路28には、圧縮機(以下「第2圧縮機」という)31、第4熱交換器、すなわち、空気熱交換器32および第3膨張弁33が順番に組み込まれる。第2圧縮機31は低圧のガス冷媒を所定の圧力まで圧縮する。第2圧縮機31の働きで高温高圧に圧縮された第2冷媒は空気熱交換器32に供給される。空気熱交換器32は通過する第2冷媒と周囲の空気との間で熱エネルギーの交換を実現する。空気熱交換器32は凝縮器として機能する。空気熱交換器32から熱エネルギーは放出される。
【0031】
前述のように、第1冷媒−冷媒熱交換器24は1次冷媒回路12の第2循環経路17に組み込まれると同時に2次冷媒回路13の第3循環経路28に組み込まれる。第1流通路26内の第1冷媒と第2流通路27内の第2冷媒との間で熱エネルギーの交換が実現される。こうした熱エネルギーの交換にあたって、熱交換器に代えて、例えば、第1流通路26の配管と第2流通路27の配管とを相互に接触させる構造が採用されることもできる。こうして第1冷媒−冷媒熱交換器24で第1冷媒は冷却される。
【0032】
空気熱交換器32に関連づけられて送風ファン34が設置される。送風ファン34は羽根車の回転に応じて気流を生成する。気流は空気熱交換器32を通過する。通過する気流の流量は羽根車の毎分回転数に応じて調整される。気流の流量に応じて空気熱交換器32では冷媒と空気との間で交換される熱エネルギー量が調整されることができる。
【0033】
空気熱交換器32にはダクト35が接続される。送風ファン34はダクト35内に配置される。ダクト35は送風ファン34から排気口36まで延びる。送風ファン34と排気口36との間でダクト35には分岐ダクト37が接続される。分岐ダクト37は、例えば室内熱交換器19まで延びる。分岐ダクト37は送風ファン34から送り出される気流を室内熱交換器19まで導くことができる。ここでは、分岐ダクト37から送り込まれる暖気は室内熱交換器19の送風ファン22から送り出される熱交換後の気流に混ぜ合わせられる。その他、送風ファン34から送り出される気流は分岐ダクト37から直接に室内空間RMに噴き出されてもよい。
【0034】
ダクト35には開閉板38が設置される。この開閉板38は、例えば第1位置と第2位置との間で相対変位する。開閉板38が第1位置に位置決めされると、ダクト35の排気口36は開放される。その一方で、分岐ダクト37の入口は閉鎖される。したがって、送風ファン34から送り出される気流は排気口36から外部に排出され、分岐ダクト37に対して気流の流入は阻止される。開閉板38が第2位置に位置決めされると、ダクト35の排気口36は閉鎖される。その一方で、分岐ダクト37の入口は開放される。その結果、送風ファン34から送り出される気流は分岐ダクト37に導入される。分岐ダクト37の気流は、室内熱交換器19の送風ファン22から送り出される熱交換後の気流に混ぜ合わせられ、室内空間RMに導かれる。
【0035】
2次冷媒回路13の第3循環経路28には迂回経路41が接続される。迂回経路41は分配弁42で第3循環経路28から分岐し合流点43で第3循環経路28に合流する。分配弁42は第2圧縮機31および空気熱交換器32の間で第3循環経路28に組み込まれる。合流点43は第2圧縮機31および空気熱交換器32の間で分配弁42の下流に配置される。分配弁42は第3循環経路28から迂回経路41に分配される第2冷媒の冷媒量を調整することができる。分配率が0%であれば、迂回経路41に冷媒は流入しない。分配率が100%であれば、冷媒は全量迂回経路41に流れ込む。第3循環経路28は分配弁42で遮断される。こうして迂回経路41には第3循環経路28から高温高圧の第2冷媒が流入する。第2冷媒は、迂回経路41を流通した後に再び合流点43から第3循環経路28に戻される。
【0036】
迂回経路41には第5熱交換器、すなわち、第2冷媒−冷媒熱交換器44が組み込まれる。第2冷媒−冷媒熱交換器44は第1流通路45および第2流通路46を備える。第1流通路45は2次冷媒回路13の迂回経路41の一部を形成する。こうして第2冷媒−冷媒熱交換器44には分配弁42から高温高圧の第2冷媒が送り込まれる。第2流通路46は1次冷媒回路12の第2循環経路17の一部を形成する。第2流通路46は室外熱交換器18と第1膨張弁23との間に配置される。第2流通路46は第1流通路45に相対して延びる。例えば、第2流通路は第1流通路に平行に延びてもよい。第1流通路45内の第2冷媒と第2流通路46内の第1冷媒との間で熱エネルギーの交換が実現される。こうした熱エネルギーの交換にあたって、熱交換器に代えて、例えば、第1流通路45の配管と第2流通路46の配管とを相互に接触させる構造が採用されることもできる。こうして第2冷媒−冷媒熱交換器44で第1冷媒は加熱される。
【0037】
なお、室内熱交換器19および送風ファン22以外の構成要素はいずれも室内空間RMの外側、すなわち、室外に設置されればよい。室内熱交換器19および送風ファン22以外の構成要素は、例えば、1つの室外機内に収容されてもよい。
【0038】
1次冷媒回路12の第2循環経路17には3つの圧力センサー47、48、49が取り付けられる。圧力センサー47は室外熱交換器18の第2口18b側に配置される。圧力センサー47は室外熱交換器18の圧力を検出する。圧力センサー47は圧力情報信号を出力する。この圧力情報信号では検出された圧力値が特定される。同様に、圧力センサー48は室内熱交換器19の第1口19a側に配置される。圧力センサー48は室内熱交換器19の圧力を検出する。圧力センサー48は圧力情報信号を出力する。この圧力情報信号では検出された圧力値が特定される。圧力センサー49は第1冷媒−冷媒熱交換器24の第1口26a側に配置される。圧力センサー49は第1冷媒−冷媒熱交換器24の第1流通路26の圧力を検出する。すなわち、圧力センサー49は第1膨張弁23と第2膨張弁25との間で冷媒の圧力を検出する。圧力センサー49は圧力情報信号を出力する。この圧力情報信号では検出された圧力値が特定される。なお、圧力センサー49は第1冷媒−冷媒熱交換器24の第2口26b側に配置されてもよい。こうした圧力センサー49は、第1口26a側および第2口26b側のいずれか一方に取り付けられてもよく、第1口26a側および第2口26b側の両方に取り付けられてもよい。
【0039】
図2に示されるように、空気調和機11は制御回路51を備える。制御回路51には四方弁16、第1圧縮機14、第2圧縮機31、第1膨張弁23、第2膨張弁25、第3膨張弁33、分配弁42、開閉板38の駆動源52、送風ファン21、送風ファン34および送風ファン22が接続される。制御回路51は四方弁16、第1圧縮機14、第2圧縮機31、第1膨張弁23、第2膨張弁25、第3膨張弁33、分配弁42、駆動源52、送風ファン21、送風ファン34および送風ファン22にそれぞれ制御信号を供給する。制御信号は、四方弁16の動作や、第1圧縮機14および第2圧縮機31の動作周波数、第1膨張弁23、第2膨張弁25および第3膨張弁33の開度、分配弁42の分配率、送風ファン21、送風ファン22および送風ファン34の毎分回転数、駆動源52の駆動量を制御するための信号である。四方弁16は制御信号に応じて第1状態または第2状態に設定される。第1状態では四方弁16で第1口16aは第4口16dに接続されると同時に第2口16bは第3口16cに接続される。第2状態では四方弁16で第1口16aは第3口16cに接続されると同時に第2口16bは第4口16dに接続される。第1圧縮機14および第2圧縮機31は制御信号で特定される周波数で動作する。第1膨張弁23、第2膨張弁25および第3膨張弁33は制御信号で特定される開度で冷媒の流通量を調整する。分配弁42は制御信号で特定される分配率で第3循環経路28および迂回経路41に冷媒を分配する。送風ファン21、22、34では熱交換量に応じて制御信号により回転数が制御される。駆動源52は制御信号に応じて第1位置および第2位置の間で開閉板38を駆動する。
【0040】
制御回路51には圧力センサー47、48、49、第1開度センサー53、第2開度センサー54および第3開度センサー55が接続される。第1開度センサー53は第1膨張弁23の開度を測定する。第2開度センサー54は第2膨張弁25の開度を測定する。第3開度センサー55は第3膨張弁33の開度を測定する。第1開度センサー53、第2開度センサー54および第3開度センサー55はそれぞれ開度情報信号を制御回路51に供給する。個々の開度情報信号では、第1開度センサー53、第2開度センサー54および第3開度センサー55で測定された開度が特定される。制御回路51は、開度情報信号で特定される膨張弁の開度と、この制御時点で目標とする圧力に相当する膨張弁開度とのずれを補正する。制御回路51には圧力センサー47、48、49から圧力情報信号が供給される。
【0041】
次に空気調和機11の動作を簡単に説明する。冷房運転が設定されると、制御回路51は四方弁16に制御信号を供給する。図3に示されるように、四方弁16は第1状態に設定される。制御回路51は分配弁42に制御信号を供給する。分配弁42の分配率は0%に設定される。すなわち、迂回経路41は遮断される。制御回路51は駆動源52に制御信号を供給する。開閉板38は第1位置に位置決めされる。排気口36は開放される。制御回路51は第1膨張弁23および第2膨張弁25の開度を検出する。第1膨張弁23の開度が閾値よりも大きいか否かが判定される。第1膨張弁23の開度が閾値よりも大きければ、制御回路51は閾値の開度まで第1膨張弁23の開度を絞る。開度の調整にあたって第1膨張弁23には制御回路51から制御信号が供給される。閾値は予め設定される。こうして第1膨張弁23の開度が規制されることから、第1冷媒−冷媒熱交換器24の第1流通路26に高圧の冷媒が流れ込むことが防止される。
【0042】
続いて制御回路51は1次冷媒回路12の第1圧縮機14を動作させる。動作にあたって第1圧縮機14には制御回路51から制御信号が供給される。第1圧縮機14から高温高圧のガス冷媒が吐出される。第1冷媒、すなわち、CO2は1次冷媒回路12内を循環する。第1冷媒は、四方弁16の第3口16cから第4口16dまで第2循環経路17を流通し、四方弁16の第1口16aから第1圧縮機14の吸込口14aに戻される。このとき、制御回路51は、第2膨張弁25を全開した後に、第1膨張弁23の開度を設定する。第1膨張弁23および第2膨張弁25には制御回路51から制御信号が供給される。室内熱交換器19つまり蒸発器における蒸発圧力が目標の蒸発圧力よりも所定圧力高くなるように第1膨張弁23の開度は設定される。目標の蒸発圧力は設定温度と室温との差に応じて制御回路51により設定される。
【0043】
同様に、制御回路51は2次冷媒経路13の第2圧縮機31を動作させる。動作にあたって第2圧縮機31には制御回路51から制御信号が供給される。第2圧縮機31から高温高圧のガス冷媒が吐出される。第2冷媒は2次冷媒回路13の第3循環経路28を循環する。ガス状態の第2冷媒は空気熱交換器32で凝縮される。凝縮された第2冷媒は第3膨張弁33で減圧される。減圧された第2冷媒は第1冷媒−冷媒熱交換器24に供給される。第1冷媒−冷媒熱交換器24で第2流通路27内の第2冷媒は第1流通路26内の第1冷媒から吸熱して蒸発する。蒸発した第2冷媒は第2圧縮機31に戻される。
【0044】
制御回路51は、目標の蒸発圧力になるように第2膨張弁25の開度を調整する。蒸発圧力は室内熱交換器19の第1口19a側に設けられた圧力センサー48で検出される。こうして室内熱交換器19では目標の蒸発圧力が確立される。ここでは、第1膨張弁23の制御が第2膨張弁25の制御に対して先行することから、第1冷媒−冷媒熱交換器24の第1流通路26に高圧の冷媒が流れ込むことが防止される。この制御に加えて、制御回路51は、室外熱交換器18の第2口18b側に備えた圧力センサー47で放熱器の圧力も検出し、圧力センサー47、48の圧力から第1冷媒−冷媒熱交換器24の第1流通路26の中間圧力を演算してもよい。この中間圧力に圧力センサー49で検出された値が合致するように第1膨張弁23の開度と第2膨張弁25の開度とは制御されるとよい。
【0045】
1次冷媒回路12では第1圧縮機14から高温高圧の第1冷媒が室外熱交換器18に供給される。第1冷媒は室外熱交換器18、第1膨張弁23、第1冷媒−冷媒熱交換器24、第2膨張弁25および室内熱交換器19を順番に流通する。このとき、図4に示されるように、第1圧縮機14と第1膨張弁23との間で第1冷媒は高圧pdに保持される。室外熱交換器18では一定圧で第1冷媒の熱エネルギーが外気に放出される。続いて第1膨張弁23と第2膨張弁25との間では第1冷媒は中間圧力pmに保持される。第1冷媒−冷媒熱交換器24では一定圧で第1冷媒の熱エネルギーが第2冷媒に受け渡される。その結果、第2膨張弁25の入口で第1冷媒のエンタルピーは低下し、室内熱交換器19では大きなエンタルピー差(冷凍効果)が確保される。こうしたエンタルピー差の増大は冷凍効果の増大に貢献する。その後、第2膨張弁25で第1冷媒は低圧psまで減圧される。減圧された第1冷媒は室内熱交換器19で周囲の空気から吸熱する。冷気が生成される。冷気は送風ファン22の働きで室内空間RMに流される。
【0046】
次に、暖房運転が設定されると、制御回路51は四方弁16に制御信号を供給する。このとき、図5に示されるように、四方弁16は第2状態に設定される。制御回路51は分配弁42に制御信号を供給する。分配弁42の分配率は0%よりも大きな所定値に設定される。その結果、迂回経路41に第2冷媒は流入する。制御回路51は駆動源52に制御信号を供給する。開閉板38は第2位置に位置決めされる。排気口36は閉鎖される。制御回路51は第1膨張弁23および第2膨張弁25の開度を検出する。第2膨張弁25の開度が閾値よりも大きいか否かが判定される。第2膨張弁25の開度が閾値よりも大きければ、制御回路51は閾値の開度まで第2膨張弁25の開度を絞る。開度の調整にあたって第2膨張弁25には制御回路51から制御信号が供給される。閾値は前述と同様に設定されればよい。こうして第2膨張弁25の開度が規制されることから、第1冷媒−冷媒熱交換器24の第1流通路26に高圧の冷媒が流れ込むことが防止される。
【0047】
続いて制御回路51は第1圧縮機14を動作させる。動作にあたって第1圧縮機14には制御回路51から制御信号が供給される。第1圧縮機14から高温高圧のガス冷媒が吐出される。第1冷媒、すなわち、CO2は1次冷媒回路12内を循環する。第1冷媒は、四方弁16の第4口16dから第3口16cまで第2循環経路17を流通し、四方弁16の第1口16aから第1圧縮機14の吸込口14aに戻される。このとき、制御回路51は、第1膨張弁23を全開した後に、第2膨張弁25の開度を設定する。第1膨張弁23および第2膨張弁25には制御回路51から制御信号が供給される。室外熱交換器18つまり蒸発器における蒸発圧力が目標の蒸発圧力よりも所定圧力高くなるように第2膨張弁25の開度は設定される。目標の蒸発圧力は外気温度との差に応じて制御回路51で設定される。
【0048】
同様に、制御回路51は第2圧縮機31を動作させる。動作にあたって第2圧縮機31には制御回路51から制御信号が供給される。第2圧縮機31から高温高圧のガス冷媒が吐出される。第2冷媒は2次冷媒回路13の第3循環経路28を循環する。ガス状態の第2冷媒は空気熱交換器32で凝縮される。凝縮された第2冷媒は第3膨張弁33で減圧される。減圧された第2冷媒は第1冷媒−冷媒熱交換器24に供給される。第1冷媒−冷媒熱交換器24で第2流通路27内の第2冷媒は第1流通路26内の第1冷媒から吸熱して蒸発する。蒸発した第2冷媒は第2圧縮機31に戻される。
【0049】
制御回路51は、目標の蒸発圧力になるように第1膨張弁23の開度を調整する。蒸発圧力は室外熱交換器18の第2口18b側に設けられた圧力センサー47で検出される。こうして室外熱交換器18では目標の蒸発圧力が確立される。ここでは、第2膨張弁25の制御が第1膨張弁23の制御に対して先行することから、第1冷媒−冷媒熱交換器24の第1流通路26に高圧の冷媒が流れ込むことが防止される。この制御に加えて、制御回路51は、室内熱交換器19の第1口19a側に備えた圧力センサー48で放熱器の圧力も検出し、圧力センサー47、48の圧力から第1冷媒−冷媒熱交換器24の第1流通路26の中間圧力を演算してもよい。この中間圧力に圧力センサー49で検出される値が合致するように第1膨張弁23の開度と第2膨張弁25の開度とは制御されるとよい。
【0050】
1次冷媒回路12では第1圧縮機14から高温高圧の第1冷媒が室内熱交換器19に供給される。第1冷媒は室内熱交換器19、第2膨張弁25、第1冷媒−冷媒熱交換器24、第1膨張弁23、第2冷媒−冷媒熱交換器44および室外熱交換器18を順番に流通する。このとき、図6に示されるように、第1圧縮機14と第2膨張弁25との間で第1冷媒は高圧pdに保持される。続いて第2膨張弁25と第1膨張弁23との間では第1冷媒は中間圧力pmに保持される。第1冷媒−冷媒熱交換器24では一定圧で第1冷媒の熱エネルギーが第2冷媒に受け渡される。その結果、第1膨張弁23の入口で第1冷媒のエンタルピーは低下し、室外熱交換器18では大きなエンタルピー差(冷凍効果)が確保される。その後、第1膨張弁23で第1冷媒は低圧psまで減圧される。このとき、減圧された第1冷媒には第2冷媒−冷媒熱交換器44で第2冷媒から熱エネルギーが移される。その結果、室外熱交換器18における第1冷媒の蒸発温度は高まる。したがって、第2冷媒−冷媒熱交換器44が追加されない場合の蒸発圧力psに比べて第1冷媒の蒸発圧力はpnまで高まる。蒸発圧力pnの第1冷媒は室外熱交換器18で周囲の空気から吸熱する。その後、第1冷媒は第1圧縮機14に戻される。第2冷媒−冷媒熱交換器44の働きで第1圧縮機14の吸入圧力は高められることから、圧縮比が低下し第1圧縮機14の動力は低減される。よって、空気調和機11のエネルギー効率は向上する。
【0051】
しかも、1次冷媒回路12では、前述のように暖房運転時でも第1冷媒−冷媒熱交換器24の働きで第1膨張弁23の入口で第1冷媒のエンタルピーは低下する。その結果、室外熱交換器18に流入する第1冷媒のエンタルピーは低下する。エンタルピーの低下に応じて第1冷媒の乾き度は低下する。こうして室外熱交換器18ではその入口となる第2口18bでの第1冷媒の乾き度とドライアウトの乾き度との差分が増大する。その結果として室外熱交換器18での第1冷媒の平均熱伝達率は向上する。室外熱交換器18では効率的に熱エネルギーは外気に移動することができる。一般に、冷媒の乾き度がドライアウトの乾き度を超えると、冷媒の熱伝達率は著しく低下する。その中でもCO2は比較的に低い乾き度(0.5〜0.6程度)でドライアウトすることが知られている。
【0052】
図7に示されるように、2次冷媒回路13や第1冷媒−冷媒熱交換器24の追加に代えて、圧縮機の吸入側と膨張弁の手前との間に内部熱交換器が組み込まれる場合には、点線で示されるように、蒸発器として働く熱交換器でエンタルピー差(冷凍効果)は増大することができる。しかしながら、この場合には、内部熱交換器の働きで圧縮機の吸入側では過熱度が高まることから、圧縮機の吐出温度が過度に高温まで上昇してしまう。
【0053】
暖房運転の開始にあたって室内空間RMの温度が低い場合には、2次冷媒回路13の運転は控えられてもよい。すなわち、第2圧縮機31は休止状態に維持されてもよい。このとき、1次冷媒回路12では第2膨張弁25が全開に設定され第1膨張弁23の開度が調整される。これによって2次冷媒回路13の再運転時に、第1冷媒−冷媒熱交換器24の第1流通路26に高圧の冷媒が流れ込むことが防止されることから、第1膨張弁23の制御に先行する第2膨張弁25の制御は円滑に実施されることができる。こうして1次冷媒回路12単独で単段サイクル運転が実施されてもよい。
【0054】
前述のように暖房運転時の第1圧縮機14の動力の低減にあたって第2圧縮機31の動作はそのまま維持される。基本的に外気温度が低下しても第1冷媒−冷媒熱交換器24の第2流通路27の蒸発温度は変わらないので第2圧縮機の冷媒吸入密度が高い値で安定する。そのため、第2圧縮機31で動力の増加は要求されない。したがって、第1圧縮機14の動力の低減はそのまま空気調和機11全体のエネルギー効率の向上に寄与する。その一方で、例えば国際公開第2005/052467号(特許文献1)の図7では、第2膨張弁25および第2冷媒−冷媒熱交換器44が追加されずに、第1冷媒−冷媒熱交換器24の第1流通路26が暖房運転時には室外熱交換器18と第1膨張弁23との間に配置される。この特許文献1の図7では、冷房運転時には冷媒−冷媒熱交換器で1次冷媒回路の冷媒(CO2)から2次冷媒回路に放熱され、暖房運転時には冷媒−冷媒熱交換器で1次冷媒回路の冷媒は2次冷媒回路から吸熱する。その結果、暖房運転時には、1次冷媒回路の圧縮機の動力は低減されるものの、2次冷媒回路の室外熱交換器は低温の外気に曝されることから、2次冷媒回路の室外熱交換器では冷房運転時に比べて凝縮側の圧力と蒸発側の圧力との間に大きな圧力差が要求されてしまう。また、外気温度がさらに低下すると、第2圧縮機31の冷媒吸入密度が低下し、所定の能力を得るために冷媒循環量を増大させる必要がある。その結果、2次冷媒回路の圧縮機には大きな動力が要求される。したがって、特許文献1の図7の空気調和機全体では期待されるほどエネルギー効率は向上することができない。
【0055】
本実施形態に係る空気調和機11では、暖房運転時には、室内熱交換器19では一定圧で第1冷媒の熱エネルギーが室内へ放出される。室内熱交換器19の周囲で空気には室内熱交換器19から放出される熱エネルギーが受け渡される。送風ファン22の働きで暖気は室内空間RMに流される。同時に、空気熱交換器32では第2冷媒の熱エネルギーが放出される。空気熱交換器32の周囲で空気には空気熱交換器32から放出される熱エネルギーが受け渡される。送風ファン34および分岐ダクト37の働きで暖気は室内空間RMに供給される。その結果、暖房時の熱効率は高められることができる。
【0056】
本発明者は空気調和機11の成績係数(COP)を算出した。算出にあたって本発明者は[表1]の運転条件および動作点を設定した。暖房能力は10馬力(=約28kW)に設定された。2次冷媒回路13の冷媒にはR32(HFC−32)が採用された。暖房運転時には2次冷媒回路13の凝縮器すなわち空気熱交換器32から熱回収分の熱が算出され、1次冷媒回路12の放熱器すなわち室内熱交換器19の熱に加算された。これにより2次冷媒回路13で暖房能力全体の約10%が確保された。
【0057】
【表1】

【0058】
算出にあたって本発明者は第1比較例および第2比較例を設定した。第1比較例では単純な冷凍サイクル回路が用いられた。すなわち、1次冷媒回路12に相当する空気調和機が設定された。しかも、この空気調和機では1次冷媒回路12から第1膨張弁23および第1冷媒−冷媒熱交換器24が削除された。暖房能力は10馬力(=約28kW)に設定された。高圧側圧力は10MPaに設定された。圧縮機の吐出温度は摂氏104.7度に設定された。室外熱交換器の冷媒出口温度は摂氏25度に設定された。蒸発温度は摂氏−3度に設定された。圧縮機の吸入温度は摂氏2度に設定された。
【0059】
第2比較例では特許文献1に記載の空気調和機が設定された。すなわち、第2膨張弁25および第2冷媒−冷媒熱交換器44が追加されずに、第1冷媒−冷媒熱交換器24の第1流通路26が室外熱交換器18と第1膨張弁23との間に配置された。暖房運転時には冷媒−冷媒熱交換器で1次冷媒回路の冷媒は2次冷媒回路から吸熱した。暖房能力は10馬力(=約28kW)に設定された。算出にあたって本発明者は[表1]の運転条件および動作点を設定した。なお、少なくとも第2圧縮機31で下限値の圧縮比=2が確保されるように第2比較例では第1冷媒−冷媒熱交換器24の第2流通路27の温度(凝縮温度)は摂氏21度に設定された。
【0060】
算出の結果、暖房運転時では、第1比較例に比べて第2比較例ではCOPが5.5%増大することが確認された。第1比較例に比べて第1実施形態に係る空気調和機11ではCOPが8.3%増大することが確認された。よって、第1実施形態に係る空気調和機では第2比較例よりもCOPが増大する。なお、第2比較例では空気熱交換器が外気(例えば摂氏2度)から吸熱することから蒸発温度は外気よりも低い温度(ここでは摂氏−3度)に設定された。加えて、第2比較例では、前述のように第2圧縮機の圧縮比が低く設定され、できる限り第2圧縮機の動力の低減が図られた。それでも、第1実施形態に係る空気調和機11では、2次冷媒回路13の蒸発温度(=摂氏14度)が比較的に高いことから、第2圧縮機31の吸入温度は比較的に高い温度(=摂氏19度)に設定されることができ、その結果、第2圧縮機31の冷媒吸入密度は蒸発温度が低いとき(=摂氏−3度)の吸入温度(=摂氏2度)よりも高まり、必要な冷媒循環量の確保にあたって第2圧縮機31の運転回転数は低く抑え込まれることができる。
【0061】
図8は本発明の第2実施形態に係る冷凍サイクル装置である空気調和機11aの構成を概略的に示す。この第2実施形態では迂回経路41の形成にあたって分配弁42は空気熱交換器32および第3膨張弁33の間で第3循環経路28に組み込まれる。迂回経路41の合流点43は空気熱交換器32および第3膨張弁33の間で分配弁42の下流に配置される。その他、第1実施形態と均等な構成には同一の参照符号が付され詳細な説明は割愛される。空気調和機11aは空気調和機11と同様に動作する。
【0062】
前述と同様に、本発明者は空気調和機11aの成績係数(COP)を算出した。算出にあたって本発明者は[表2]の運転条件および動作点を設定した。暖房能力は10馬力(=約28kW)に設定された。2次冷媒回路13の冷媒にはR32(HFC−32)が採用された。暖房運転時には2次冷媒回路13の凝縮器すなわち空気熱交換器32から熱回収分の熱が算出され、1次冷媒回路12の放熱器すなわち室内熱交換器19の熱に加算された。これにより2次冷媒回路13で暖房能力全体の約10%が確保された。その他、前述と同様に、本発明者は前述の第1比較例および第2比較例を設定した。
【0063】
【表2】

【0064】
算出の結果、暖房運転時では、第1比較例に比べて第2実施形態に係る空気調和機11aではCOPが8.5%増大することが確認された。第1実施形態に係る空気調和機11に比べて、暖房運転時に第2実施形態に係る空気調和機11aは優れた成績係数(COP)を得ることが確認された。これは、迂回経路41の形成にあたって分配弁42は空気熱交換器32および第3膨張弁33の間で第3循環経路28に組み込まれたことで、第5熱交換器44の第2流通路45の冷却に伴い、空気熱交換器32の出口で冷媒のエンタルピーが低下したことに起因する。すなわち、第1実施形態に比べて第2実施形態では第3膨張弁33の入口で冷媒がさらに過冷却され、2次冷媒回路の効率が向上したためである。よって、第2実施形態に係る空気調和機では第2比較例よりもCOPが増大する。しかも、第2実施形態に係る空気調和機11aでは、第1実施形態に係る空気調和機11と同様に、2次冷媒回路13の蒸発温度(=摂氏14度)が比較的に高いことから、第2圧縮機31の吸入温度は比較的に高い温度(=摂氏19度)に設定されることができ、その結果、第2圧縮機31の冷媒吸入密度は蒸発温度が低いとき(=摂氏−3度)の吸入温度(=摂氏2度)よりも高まり、必要な冷媒循環量の確保にあたって第2圧縮機31の運転回転数は低く抑え込まれることができる。
【符号の説明】
【0065】
11 冷凍サイクル装置(空気調和機)、11a 冷凍サイクル装置(空気調和機)、12 1次冷媒回路、13 2次冷媒回路、14 第1圧縮機、17 冷媒経路、18 第1熱交換器(室外熱交換器)、19 第2熱交換器(室内熱交換器)、23 第1膨張弁、24 第3熱交換器(第1冷媒−冷媒熱交換器)、25 第2膨張弁、31 第2圧縮機、32 第4熱交換器(空気熱交換器)、33 第3膨張弁、35 ダクト、37 ダクト(分岐ダクト)、38 開閉板、42 分配弁、44 第5熱交換器(第2冷媒−冷媒熱交換器)、51 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1熱交換器および第2熱交換器の間で冷媒経路に順番に組み込まれる第1膨張弁、第3熱交換器および第2膨張弁を有し、第1圧縮機から選択的に前記第1熱交換器または前記第2熱交換器に高温高圧の第1冷媒が供給されると前記冷媒経路を通って前記第2熱交換器または前記第1熱交換器から前記第1冷媒を前記第1圧縮機に戻す1次冷媒回路と、
前記第3熱交換器に接続されて、第2圧縮機および第3膨張弁の間で第4熱交換器に高温高圧の第2冷媒を供給し、前記第3膨張弁で減圧された前記第2冷媒を前記第3熱交換器を通って前記第2圧縮機に戻す2次冷媒回路と、
前記1次冷媒回路で前記第1膨張弁および前記第1熱交換器の間に組み込まれて、前記第2冷媒から前記第1冷媒に熱エネルギーを移す第5熱交換器と
を備えることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷凍サイクル装置において、
前記第5熱交換器は前記第1膨張弁と前記第1熱交換器との間に配置されることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の冷凍サイクル装置において、
暖房運転時に、前記第2熱交換器から放出される熱エネルギーを受ける暖気の環境に、前記第4熱交換器から放出される熱エネルギーを受ける暖気を送り込むダクトをさらに備えることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項4】
請求項3に記載の冷凍サイクル装置において、
前記ダクトを開閉する開閉板と、
前記開閉板の開閉を制御する制御回路と
をさらに備えることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置において、
前記第2冷媒回路の循環経路に前記第2圧縮機および前記第4熱交換器の間で組み込まれて、前記第5熱交換器に高温高圧の前記第2冷媒を送り込む分配弁をさらに備えることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置において、
前記第2冷媒回路の循環経路に前記第4熱交換器および前記第3膨張弁の間で組み込まれて、前記第5熱交換器に高温高圧の前記第2冷媒を送り込む分配弁をさらに備えることを特徴とする冷凍サイクル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−207835(P2012−207835A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72565(P2011−72565)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)