説明

冷凍器、および非常に低い温度の冷熱を作り出す方法

本発明は希釈サイクルによって非常に低い温度の冷熱を作り出す方法であって、2種類の同位体3Heおよび4Heの二相混合物が別々に添加される液体3Heおよび4Heから混合室(2)内に生じ、いわゆる濃厚相からの3Heの前記混合物がこの3Heをいわゆる希薄相へと流すように抽出され、およびそれにより3Heが希薄相へと流すことによって生じる冷熱が回収され;二相混合物の相分離は、混合室(2)へと別々に添加される純粋な3Heおよび4Heの流れをモニタすることによって、および重力とは無関係の毛細力によって行われ、希釈サイクルは閉ループにおいて機能し、前記方法が、2種類の同位体3Heおよび4Heを放出管(8)を通して抽出される混合物の一部から回収および分離する第1の工程と第1の工程中に分離された2種類の同位体3Heおよび4Heを添加して混合室(2)に戻す第2の工程とを含む方法に関する。本発明は冷凍器にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は希釈冷凍器と非常に低い温度の冷熱を作り出す方法とに関する。
【0002】
本発明はより詳細には非常に低い温度を得るための希釈冷凍器であって、混合室と、ヘリウム同位体3(3He)のソースに接続された上流端および混合室に接続された下流端を有する第1の供給パイプと、ヘリウム同位体4(4He)のソースに接続された上流端および混合室に接続された下流端を有する第2の供給パイプと、第1のおよび第2のパイプによってそれぞれ供給される3Heおよび4Heから混合室内に作り出される3He−4Heの混合物を放出する放出パイプとを有し、放出パイプは混合室に接続された上流端および放出される混合物の一部を回収する収集ボリュームに接続された下流端を有し、第1のおよび第2のパイプの下流端と放出パイプの上流端とは混合室を形成するように共通接続部において流体連絡しており、ヘリウム3He−4Heの混合物間の相分離がパイプ内の3Heおよび4Heの流れとパイプ内の毛管力とによって重力とは無関係に制御される冷凍器に関する。
【0003】
非常に低い温度を得るのに利用可能な方法の中で、最も有利なものの1つは通常の4Heを同位体3Heで希釈することを含む。
【0004】
約0.88K未満では、3He−4He混合物は2つの相、濃厚相として知られている3Heリッチ相および希薄相として知られている4Heリッチ相を示すであろう。温度が0.88Kから0Kまで低下するとき、濃厚相中の3He濃度は67%から約100%まで上昇し、一方で希薄相中の3He濃度は67%から約6.6%まで減少する。
【0005】
従来の希釈冷却器は上述の熱力学的条件下で2つの相の液体ヘリウム:希薄相である相および濃厚相である相により満たされる混合ボックスまたは混合室を慣習的に有する。冷熱を作り出す原理は本質的には以下の通りである:4He−3He混合物を熱力学的に断熱された混合ボックスにおいて上述した2つの相(希薄相および濃厚相)がそこに存在するような割合で生じさせる。3Heを希薄相から抽出することによって、濃厚相からの3Heが平衡濃度を維持するために希薄相中に溶解するであろう。この希釈プロセスは冷熱の産出をもたらす。
【0006】
このようなデバイス、すなわちクライオスタットが連続的に動作するのに必要なのは、液体3Heが、場合により少量の4Heと混合されて、取り出しを埋め合わせるために混合ボックスに導入されることだけである。
【0007】
これらシステムを動作させるには;
−濃厚相(主に3Heを含有する液体)、
−希薄相(主に4Heを含有する液体)、およびさらには
−濃厚な気相(主に3He)
を局在化させることが必要である。
【0008】
様々な相のこの局在化は重力の作用下で従来達成される(それらの異なる密度による相分離)。しかし、システムが無重力条件下で、またはある向きで使用される場合、この形態の局在化は可能でない。
【0009】
FR 2626658は重力とも向きとも無関係な希釈冷却システムを記載している。
【0010】
このシステムでは、キャピラリとしても知られている3つのパイプが使用される。3つのキャピラリは一方の端部において互いに接続されて接続部(混合室)を形成する。2つのキャピラリは飽和3He−4He混合物(濃厚相および希薄相の混合物)を作り出すために純粋な3Heおよび4Heを注入するのにそれぞれ使用される。ヘリウム混合物は第3のキャピラリを使用して抽出され、「フリー」ポンプのように働く空間へと回収されるかまたは放出される。液体ヘリウム混合物間の相分離は3Heおよび4Heの流れおよび毛管力によってのみ制御され、重力によってはもはや制御されない。
【0011】
重力に関連した制約を回避するため、前記冷凍器は蒸留器を有していない。補助的な蒸留ユニットが、(たとえば貯蔵タンクによって)回収されている場合がある3He−4He混合物の2種類の構成成分を専用稼働の間に分離するのに提供されうる。
【0012】
しかし、このシステムの寿命は混合ボックスに供給するのに準備されたヘリウム同位体の量によって制限される。加えて、それが宇宙船内で使用される場合、抽出されたヘリウム混合物は消失する。
【0013】
本発明の目的は従来技術の上述した欠点の全てまたはいくつかを緩和することにある。
【0014】
この目的のために、本発明による冷凍器は、上述の序文に挙げた包括的定義に従う他の点において、それが混合物が回収されるところの収集ボリュームを構成する分溜器を有し、この分溜器が3Heおよび4Heの混合物を気液平衡に保ち、この分溜器が3Heのソースと4Heのソースとの両方を形成し、第1の供給パイプが混合室に3Heを連続的におよび第1の閉ループにおいて供給するように3Heを分溜器内へと選択的にポンピングするポンピング部材を有し、第2の供給パイプが混合室に4Heを連続的におよび別の第2の閉ループにおいて供給するように4Heを分溜器内へと選択的にポンピングするポンピング部材を有することを本質的に特徴とする。
【0015】
さらに、本発明のいくつかの実施形態は以下の特徴のうち1つ以上を有してもよい:
−分溜器は気相に対しての液相の封じ込めのための部材を有する;
4Heを選択的にポンピングするポンピング部材は封じ込め部材によって封じ込められた液相と流体連絡しているスーパーリークと、取入れ口がスーパーリークを介して前記液相に接続されているポンピング部材とを有する;
−第1のおよび第2のパイプならびに放出パイプは分溜器と混合室との間で熱交換を行うように集合させられている;
−第1の供給パイプのポンピング部材は気体3Heをポンピングするポンプ、たとえばメカニカルポンプおよび/または吸収ポンプとして知られている1つ以上のポンプである;
−第1の供給パイプの上流端および/または第1の供給パイプのポンピング部材は分溜器のうち気液平衡にある3He−4He混合物から主に3Heを集める領域に通じている;
−第2の供給パイプのポンピング部材は液体4Heをポンピングするポンプ、たとえばメカニカルポンプおよび/または4He用のソースポンプ(サーモメカニカルポンプ)もしくはメカニカルポンプとして知られているポンプである;
−第2の供給パイプの上流端および/または第2の供給パイプのポンピング部材は分溜器のうち気液平衡にある3He−4He混合物から主に4Heを集める領域に通じている;
−第2の供給パイプのポンピング部材または第2の供給パイプの上流端は4Heの選択濾過のための部材を介して分溜器のうちのある領域に通じている。
【0016】
本発明は非常に低い温度、特には2K未満およびより好ましくは1K未満にある冷熱を、2種類の同位体3Heおよび4Heの二相混合物がそれぞれの供給パイプを介して別々に導入される液体3Heおよび液体4Heから混合室内に生じるところの希釈サイクルを使用して作り出す方法であって、濃厚相として知られる相からの3Heが、3Heを希薄相として知られる相に入れるために、前記混合物から放出パイプを介して抽出され、およびそれにより、3Heが希薄相に入ることによって生じる冷熱エネルギーが回収され、二相混合物の相が混合室へと別々に導入される純粋な3Heおよび4Heの流れとパイプ内の毛管力とを制御することによって重力とは無関係に分離される方法にも関する。
【0017】
1つの有利な特徴によると、希釈サイクルは閉ループにおいて機能し、前記方法は:
−2種類の同位体3Heおよび4Heを混合物のうち放出パイプによって抽出される部分から回収しおよび分離する第1の工程と;
−第1の工程中に分離された2種類の同位体3Heおよび4Heを混合室へと再導入する第2の工程と;
を有する。
【0018】
他の考えられる特徴によると:
−2種類の同位体を回収および分離する第1の工程は3He−4He混合物を気液平衡に保つように構成された分溜器において行われる;
−2種類の3Heおよび4He同位体を混合室へと再導入する第2の工程はそれぞれのポンピング部材を使用して行われる;
−2種類の同位体3Heおよび4Heの混合物は混合室内で10mKないし300mKの間に含まれるおよびたとえば50mKないし300mKの間にある温度に保たれる;
−第1のパイプのポンピング部材のポンプ圧は0.1ないし50mbの間に含まれ、および好ましくは約5mBarに等しい;
−前記方法は、第1の回収および分離の工程と第2の再導入の工程との間に、分離された同位体の一方または各々を1ないし2Kの間および好ましくは1.4ないし1.5Kの間にそれぞれ冷却する工程を有する;
−分溜器内の温度および分溜器内の3He濃度は3Heの蒸気圧が4Heのものより遥かに高くなるように保たれる;
−第1のパイプのポンプの吐き出し圧力は3Heを1.4−1.5Kの温度で液化させる(ポンプの出口での冷却)ために50ないし1500mbarの間に含まれおよび好ましくは約200mbである;
−前記方法は希釈冷凍器であって、混合室と、ヘリウム同位体3(3He)のソースに接続された上流端および混合室に接続された下流端を有する第1の供給パイプと、ヘリウム同位体4(4He)のソースに接続された上流端および混合室に接続された下流端を有する第2の供給パイプと、第1のおよび第2のパイプによってそれぞれ供給される3Heおよび4Heから混合室内に作り出される3He−4Heの混合物の一部を放出する放出パイプとを有し、放出パイプは混合室に接続された上流端および放出された混合物の一部を回収する収集ボリュームに接続された下流端を有し、第1のおよび第2のパイプの下流端と放出パイプの上流端とは混合室を形成するように共通接続部において流体連絡しており、ヘリウムの混合物間の相分離が重力ではなくパイプ内の3Heおよび4Heの流れと毛管力とによって制御され、前記冷凍器が混合物が回収されるところの収集ボリュームを構成する分溜器をさらに有し、この分溜器が3Heおよび4Heの混合物を気液平衡に保ち、この分溜器が3Heのソースと4Heのソースとの両方を形成し、第1の供給パイプが3Heを分溜器内へと選択的にポンピングして混合室に3Heを連続的におよび第1の閉ループにおいて供給するポンピング部材を有し、第2の供給パイプが4Heを分溜器内へと選択的にポンピングして混合室に4Heを連続的におよび第2の閉ループにおいて供給するポンピング部材を有する冷凍器を使用する:
−第2のパイプのポンプ(ソース圧力ポンプ)内の圧力は単相性キャピラリにおいておよび前記ソース圧力ポンプと分溜器との間のキャピラリにおいて乱流を得るように、数百mbarでありうる;
−第2のパイプ4のポンプ7がメカニカルポンプである場合、ポンプ圧は負でありうる。
【0019】
本発明は以上または以下に挙げる特徴の任意の組み合わせを有する任意の代わりのデバイスまたは方法にも関するであろう。
【0020】
他の詳細および利点は、図面を参照して示した以下の説明を読むことによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の1つの考えられる実施形態による冷凍器の構造および動作を模式的におよび部分的に示した図。
【0022】
希釈冷却器1は第1の3He供給パイプ3の、第2の4He供給パイプ4の、および3He−4He混合物を放出する放出パイプ8の開口端(共通の接続部)において形成された混合室2を有している。
【0023】
放出パイプ8は、上流から下流にかけて、2つの部分:2つの相(濃厚および希薄)が通る第1の部分(参照番号13を付した領域)といったん濃厚相が希薄相中で完全に希釈されたあとの単相性3He−4He混合物が通る第2の部分(参照番号12を付した領域)とを有している。この放出パイプ8はそれゆえに第1の3および第2の4のパイプによってそれぞれ供給される3Heおよび4Heから混合室2内で作り出される二相性3He−4He混合物を放出するのに役立つ。
【0024】
ヘリウム3He−4Heの混合物間の相分離は3Heおよび4Heのパイプ3、4、8を通る流れとパイプ3、4、8内の毛管力とによって制御される。つまり前記相分離は重力にも向きにも依存しない(文献FR 2626658で用いられたものと同様の一般的原理に従う)ということである。
【0025】
冷凍器1は3Heリッチの蒸気相と平衡状態にある希薄液体3He−4He混合物を収容する分溜気化器5を有している。
【0026】
分溜器5は、たとえば、銅製および/またはステンレス鋼製のサブアセンブリであり、必要とされる流体入口および出口を有しおよびたとえば数立方センチメートルの気密ボリュームを構成している。分溜器5のボリュームは液体−気体の界面が前記ボリュームの内側に確立されるような大きさであり、系を通るHeの量に依存する。
【0027】
第1のパイプ3の上流端はポンプ6を介して分溜器5に接続されておりおよび第1のパイプ3の下流端は混合室2に接続されている。
【0028】
第2の供給パイプ4はポンプ7を介して分溜器5に接続された上流端および混合室2に接続された下流端を有している。
【0029】
放出パイプ8はそれの上流端によって混合室2に接続されておりおよびそれの下流端によって分溜器5に接続されている。
【0030】
装置1はそれゆえに分溜器5と混合室2との間に2つの閉ループを形成している。装置1は、蒸気−液体界面が分溜器5内に存在しおよび濃厚−希薄界面が混合室2内に存在するように、飽和3Heおよび4He混合物によって満たされている。
【0031】
第1の供給パイプ3は混合室2に3Heを分溜器5からポンピング部材6たとえばポンプを介して供給する。
【0032】
第2の供給パイプ4は混合室2に4Heを分溜器5からポンピング部材7たとえばポンプを介して供給する。
【0033】
分溜器5内の温度および分溜器5内の3He濃度は3Heの蒸気圧が4Heのものよりも遥かに高くなるように保たれるので、第1のパイプ3のポンプ6は主に3He(気体)をポンピングする。
【0034】
このポンプ6はメカニカルポンプでもよいしまたは周囲温度もしくは極低温の状態で設置された任意の他の好適で等価なポンピングシステム(たとえば吸着ポンプ)でもよい。分溜器5からポンピングされたあと、3Heはそれが混合室2に導入される前に冷却される。たとえば、冷却器10は気体の形態で分溜器5からポンピングされた3Heを液化させる。この冷却器10は、たとえば、He(3Heまたは4He)に対して機能するジュール−トムソン膨張システムから構成されていてもよいしまたは理想的には約1.4ないし1.5Kの温度を供給することができる任意のクーラーでもよい。この第1の冷却10のあと、3Heは分溜器5(第1のパイプ3との熱交換)によって冷却される。次に、3Heは第1のパイプ3と放出パイプ8(この放出パイプ8も潜在的に第2のパイプ4との熱交換関係にある)との間の熱交換によって冷却されてもよい。したがって、注入された液体3Heが単相性3He−4He混合物と熱交換するところの領域12および注入された液体3Heと二相性3He−4He混合物との間の熱交換のための領域13が存在する。
【0035】
液体の形態で混合ボックス2へと注入されるヘリウム同位体3(3He)は10mKないし300mKの間に含まれる温度を典型的に有する。
【0036】
第2のパイプ4のポンプ7はもっぱら液体4Heをポンピングする。液体4Heポンプ7はスーパーリークとして知られており超流動体4Heのみをポンピングさせる半透膜のように働くシステム9をたとえば用いて分溜器5に接続されていてもよい。このスーパーリーク9は分溜器5の液相中に浸漬した一端19と、浸漬されておらずおよび好ましくは分溜器5から断熱されている一端29とを有している。さらに、境界デバイス14が液体3He−4He混合物のスーパーリークの浸漬した端部19と接触した状態での封じ込めを可能にするのに使用される場合がある。この境界デバイス14はキャピラリを使用して機能してもよく、たとえばそれは意図された用途に適した孔径分布を有する多孔質媒体からなっていてもよい。他のシステム、たとえば電場を用いるものが液相と気相との間でのこの封じ込めを達成するために考えられるであろう。
【0037】
ポンプ7はソースポンプ(サーモメカニカルポンプ)でもよいしまたはメカニカル4Heポンプでもよいしスーパーリーク9の下流に必要に応じて位置決めされた周囲もしくは極低温にある他の任意の適切で等価な部材(たとえば吸着ポンプまたはコールドタービン)でもよい。
【0038】
分溜器5からポンピングされた超流動体4Heは第1のパイプ3の冷却器10と同様の機能を果たす外部の冷熱ソース11によって冷却されてもよい(理想的には約1.4ないし1.5Kの温度までの冷却)。2つの冷却器10および11は付随的にただ1つの同じ冷却部材を形成する場合がある。第2のパイプ4のポンプ7による熱の逸散が十分に低い場合には特に、冷熱ソース(何れかまたは両方が任意であろう冷却器10および/または冷却器11)なしで済ますことが熱力学的に考えられることに気付かれるであろう。
【0039】
この第1の冷却11に続いて、4Heは分溜器5によって冷却される場合がある(第2のパイプ4との熱交換)。次に、4Heはこの第2のパイプ4と放出パイプ8との間の熱交換によって冷却される(この放出パイプ8は場合により第1のパイプ3とも熱交換関係にある)。したがって、注入された液体3Heと単相性3He−4He混合物との間で熱交換が行われるところの領域12および注入された液体3Heと二相性3He−4He混合物との間で熱交換が行われるところの領域13が存在する。
【0040】
液体の形態で混合室2へと注入されるヘリウム同位体4(4He)は10mKないし300mKの間に含まれる温度を典型的に有する。
【0041】
混合室2内の動作温度は10mKからないし300mKの範囲内に一般に含まれる。
【0042】
第2のパイプ4のソース圧力ポンプ7が効率的に動作できるには、分溜器5の液相中の3He濃度は好ましくは約10%であり、分溜器5内の温度は好ましくは約1.05Kである。結果として、分溜器5内の蒸気圧は約5mbでありおよび蒸気中の3He濃度は95%に近い。
【0043】
第1のパイプ3のポンプ6のポンプ圧はそれゆえに典型的には約5mbでありおよび吐き出し圧は、たとえば、約200mb以上であり、およびこれは3Heが1.4−1.5Kの温度で液化することを可能にする。
【0044】
ポンピングおよび第1の冷却10、11のあとの流体の温度は、たとえば、1ないし2Kの間に含まれる。
【0045】
本発明による希釈冷凍器1はそれゆえに分溜器5内の液相および蒸気相を局在化させることを可能にする封じ込めシステム14を使用する。
【0046】
したがって本発明による冷凍器1はヘリウム同位体(4Heおよび3He)の2つの別個な流れを2つの閉ループ内において、ヘリウムを外部から追加する必要なしに維持することを連続的に可能にする。
【0047】
得られる冷凍器1またはクライオスタットはたとえば約0.05Kの安定な温度を作り出すことおよびこれを混合室2内で制限されない自律性で維持することを可能にする。
【0048】
上で説明したシステムは全ての方向に向き付けることができる支持体上にとりわけ無重力環境における用途または重力場を受ける用途を目的として搭載できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非常に低い温度を得るための希釈冷凍器であって、混合室(2)と、ヘリウム同位体3(3He)のソースに接続された上流端および前記混合室(2)に接続された下流端を有する第1の供給パイプ(3)と、ヘリウム同位体4(4He)のソースに接続された上流端および前記混合室(2)に接続された下流端を有する第2の供給パイプ(4)と、前記第1(3)のおよび第2(4)のパイプによってそれぞれ供給される3Heおよび4Heから前記混合室(2)内に作り出される3He−4Heの混合物を放出する放出パイプ(8)とを有し、前記放出パイプ(4)が前記混合室(2)に接続された上流端および前記放出される混合物の一部を回収する収集ボリューム(5)に接続された下流端を有し、前記第1(3)のおよび第2(4)のパイプの前記下流端と前記放出パイプ(8)の前記上流端とが前記混合室(2)を形成するように共通接続部において流体連絡しており、ヘリウム3He−4Heの前記混合物間の相分離が前記パイプ(3、4、8)内の3Heおよび4Heの流れと前記パイプ内の毛管力とによって重力とは無関係に制御され、それが前記混合物が回収されるところの前記収集ボリュームを構成する分溜器(5)を有し、前記分溜器(5)が前記3Heおよび4Heの混合物(2)を気液平衡に保ち、前記分溜器(5)が前記3Heのソースと前記4Heのソースとの両方を形成し、前記第1の供給パイプ(3)が前記混合室(2)に3Heを連続的におよび第1の閉ループにおいて供給するように3Heを前記分溜器(5)内へと選択的にポンピングするポンピング部材(6)を有し、前記第2の供給パイプ(4)が前記混合室(2)に4Heを連続的におよび別の第2の閉ループにおいて供給するように4Heを前記分溜器(5)内へと選択的にポンピングするポンピング部材(7、9)を有することを特徴とする冷凍器。
【請求項2】
前記分溜器(5)が気相に対しての液相の封じ込めのための部材(14)を有することを特徴とする請求項1に記載の冷凍器。
【請求項3】
前記4Heを選択的にポンピングする前記ポンピング部材(7、9)が前記封じ込め部材(14)によって封じ込められた液相と流体連絡(19)しているスーパーリーク(9)と、取入れ口が前記スーパーリーク(9)を介して(29)前記液相に接続されているポンピング部材(7)とを有することを特徴とする請求項2に記載の冷凍器。
【請求項4】
前記第1(3)のおよび第2(4)のパイプならびに前記放出パイプ(8)が前記分溜器(5)と前記混合ボックス(2)との間で熱交換を行うように集合させられていることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の冷凍器。
【請求項5】
前記第1の供給パイプ(3)の前記ポンピング部材(6)が気体3Heをポンピングするポンプ、たとえばメカニカルポンプおよび/または吸収ポンプとして知られている1つ以上のポンプであることを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の冷凍器。
【請求項6】
前記第1の供給パイプ(3)の前記上流端および/または前記第1の供給パイプ(3)の前記ポンピング部材(6)は前記分溜器(5)のうち気液平衡にある前記3He−4He混合物から主に3Heを集める領域に通じていることを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載の冷凍器。
【請求項7】
前記第2の供給パイプ(4)の前記ポンピング部材(7)は液体4Heをポンピングするポンプ(P)、たとえばメカニカルポンプおよび/または超流動体ヘリウム用のソースポンプ(サーモメカニカルポンプ)もしくはメカニカルポンプとして知られているポンプであることを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載の冷凍器。
【請求項8】
前記第2の供給パイプ(4)の前記上流端および/または前記第2の供給パイプ(4)の前記ポンピング部材(7)は前記分溜器(5)のうち気液平衡にある前記3He−4He混合物から主に4Heを集める領域に通じていることを特徴とする請求項1ないし7の何れか1項に記載の冷凍器。
【請求項9】
前記第2の供給パイプ(4)の前記ポンピング部材(7)または前記第2の供給パイプ(4)の前記上流端は4Heの選択濾過のための部材(9)を介して前記分溜器(5)のうちのある領域に通じていることを特徴とする請求項7または8に記載の冷凍器。
【請求項10】
非常に低い温度、特には2K未満およびより好ましくは1K未満にある冷熱を、2種類の同位体3Heおよび4Heの二相混合物がそれぞれの供給パイプ(3、4)を介して別々に導入される液体3Heおよび液体4Heから混合室(2)内に生じるところの希釈サイクルを使用して作り出す方法であって、濃厚相として知られる相からの3Heが、前記3Heを希薄相として知られる相に入れるために、前記混合物から放出パイプ(8)を介して抽出され、およびそれにより、前記3Heが前記希薄相に入ることによって生じる冷熱エネルギーが回収され;前記二相混合物の相が前記混合室(2)へと別々に導入される純粋な3Heおよび4Heの流れと前記パイプ(3、4)内の毛管力とを制御することによって重力とは無関係に分離され、前記希釈サイクルが閉ループにおいて機能し、前記方法が:
−前記2種類の同位体3Heおよび4Heを混合物のうち放出パイプ(8)によって抽出される部分から回収しおよび分離する第1の工程と;
−前記第1の工程中に分離された前記2種類の同位体3Heおよび4Heを前記混合室(2)へと再導入する第2の工程と
を有することを特徴とする方法。
【請求項11】
前記2種類の同位体を回収および分離する前記第1の工程が前記3He−4He混合物(2)を気液平衡に保つように構成された分溜器(5)において行われることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記2種類の3Heおよび4He同位体を前記混合室(2)へと再導入する前記第2の工程はそれぞれのポンピング部材(6、7)を使用して行われることを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記2種類の同位体3Heおよび4Heの前記混合物は前記混合室(2)内で10mKないし300mKの間に含まれる温度に保たれることを特徴とする請求項10ないし12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のパイプ(3)の前記ポンピング部材(6)のポンプ圧は0.1ないし50mbの間に含まれ、および好ましくは約5mBarに等しいことを特徴とする請求項10ないし13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の回収および分離の工程と前記第2の再導入の工程との間に、分離された同位体の一方または各々を1ないし2Kの間および好ましくは1.4ないし1.5Kの間にそれぞれ冷却する工程(10、11)を有することを特徴とする請求項10ないし14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
希釈冷凍器であって、混合室(2)と、ヘリウム同位体3(3He)のソースに接続された上流端および前記混合室(2)に接続された下流端を有する第1の供給パイプ(3)と、ヘリウム同位体4(4He)のソースに接続された上流端および前記混合室(2)に接続された下流端を有する第2の供給パイプ(4)と、前記第1(3)のおよび第2(4)のパイプによってそれぞれ供給される前記3Heおよび前記4Heから混合室(2)内に作り出される前記3He−4Heの混合物の一部を放出する放出パイプ(8)とを有し、前記放出パイプ(4)は前記混合室(2)に接続された上流端および前記放出される混合物の一部を回収する収集ボリューム(5)に接続された下流端を有し、前記第1(3)のおよび第2(4)のパイプの前記下流端と前記放出パイプ(8)の前記上流端とは前記混合室(2)を形成するように共通接続部において流体連絡しており、前記ヘリウムの混合物間の相分離が重力ではなく前記パイプ内の3Heおよび4Heの流れと毛管力とによって制御され、前記冷凍器(1)が前記混合物が回収されるところの前記収集ボリュームを構成する分溜器(5)をさらに有し、前記分溜器(5)が前記3Heおよび4Heの前記混合物(2)を気液平衡に保ち、前記分溜器(5)が前記3Heのソースと前記4Heのソースとの両方を形成し、前記第1の供給パイプ(3)が3Heを前記分溜器(5)内へと選択的にポンピングして前記混合室(2)に3Heを連続的におよび第1の閉ループにおいて供給するポンピング部材(6)を有し、第2の供給パイプ(4)が4Heを分溜器(5)内へと選択的にポンピングして前記混合室(2)に4Heを連続的におよび第2の閉ループにおいて供給するポンピング部材(7)を有する冷凍器を使用することを特徴とする請求項10ないし15の何れか1項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−529561(P2011−529561A)
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520563(P2011−520563)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051468
【国際公開番号】WO2010/012939
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【出願人】(500174661)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・レシェルシュ・サイエンティフィーク−セ・エン・エール・エス− (54)
【出願人】(509120447)サントル・ナショナル・デテュッド・スパティアレ (2)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL D’ETUDES SPATIALES
【住所又は居所原語表記】2 place Maurice Quentin − 75001 PARIS, France