説明

冷凍機

【課題】冷凍効率を落とすことなく、作動ガス中の不純物を効率的に取り除くことができる冷凍機を提供する。
【解決手段】本発明は、作動ガスの圧縮及び膨張を利用して冷凍作用を生じさせる冷凍機1であって、作業ガスが充填されるケーシング5と、ケーシング5内に設けられ、作動ガスを圧縮する圧縮空間Nを内部に有するシリンダ7と、所定の軸線方向Lでシリンダ7内を移動するピストン8と、シリンダ7に固定され、ピストン8を軸線方向で移動自在に支持するピストン支持部材10と、ケーシング5内で圧縮空間N以外の空間であるバッファ空間Mに配置され、作動ガス中の不純物を吸着する吸着材20と、を備え、ピストン支持部材10は、バッファ空間Mのうちピストン支持部材10より外側の外側バッファM1とバッファ空間Mのうちピストン支持部材10より内側の内側バッファM2とを連通する第1の連通孔16を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動ガスの圧縮及び膨張を利用して冷凍作用を発生させる冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術文献として特開平9−119727公報が知られている。この公報には、作動ガスの圧縮及び膨張により冷凍作用を発生させる冷凍機であって、作動ガス中の不純物を吸着する吸着材を作動ガスのガス流路内に設けた冷凍機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−119727公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の冷凍機のようにガス流路内に吸着材を設けると、ガスの圧縮及び膨張の際に圧力損失が生じる原因となり、冷凍効率向上の妨げとなっていた。
【0005】
そこで、本発明は、冷凍効率を落とすことなく、作動ガス中の不純物を効率的に取り除くことができる冷凍機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、作動ガスの圧縮及び膨張を利用して冷凍作用を発生させる冷凍機であって、作業ガスが充填されるケーシングと、ケーシング内に設けられ、作動ガスを圧縮する圧縮空間を内部に有するシリンダと、所定の軸線方向でシリンダ内を移動することで、圧縮空間内の作動ガスを圧縮するピストンと、シリンダに固定され、ピストンを軸線方向で移動自在に支持するピストン支持部材と、ケーシング内で圧縮空間以外の空間であるバッファ空間に配置され、作動ガス中の不純物を吸着する吸着材と、を備え、ピストン支持部材は、バッファ空間のうちピストン支持部材より外側の空間である外側バッファとバッファ空間のうちピストン支持部材より内側の空間である内側バッファとを連通する第1の連通孔を有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る冷凍機によれば、有機溶剤やFRP、接着剤からのアウトガスなどの不純物が作動ガスに入り込むと冷凍作用により固着して冷凍機の性能劣化を招くことから、作動ガス中の不純物を吸着する吸着材を設けることで、作動ガスの純度の低下を抑制して製品の長寿命化を図ることができる。しかも、この冷凍機では、作動ガスの圧縮や膨張が行われる圧縮空間やガス流路ではなくバッファ空間に吸着材を設けることで、吸着材が圧力損失の原因となることが避けられるので、冷凍効率を落とすことなく作動ガス中の不純物を取り除くことができる。更に、この冷凍機では、ピストン支持部材に第1の連通孔が形成されているので、ピストンの移動により生じるバッファ空間内の作動ガスの流れはピストン支持部材に妨げられずに第1の連通孔を通じてスムーズに通り抜けることができる。この冷凍機によれば、ピストンの移動によりバッファ空間内で作動ガスのスムーズな流れが形成されることにより、バッファ空間内に配置された吸着材による不純物の吸着効率を著しく高めることができる。従って、この冷凍機によれば、冷凍効率を落とすことなく作動ガス中の不純物を効率的に取り除くことができる。
【0008】
本発明に係る冷凍機においては、吸着材は、第1の連通孔に設けられていることが好ましい。
本発明に係る冷凍機によれば、第1の連通孔を通り抜ける作動ガス中の不純物を高い確率で吸着できるので、吸着材による吸着効率を大きく向上させることができる。
【0009】
本発明に係る冷凍機においては、吸着材は、ケーシングに固定されていることが好ましい。
本発明に係る冷凍機によれば、吸着材がケーシングに固定されているので、他の部材に吸着材を固定する場合と比べて高い耐久性を得ることができる。
【0010】
本発明に係る冷凍機においては、ケーシングは、シリンダが収納される本体部と本体部に対して脱着可能なキャップ部とを有し、吸着材は、キャップ部に固定されていることが好ましい。
本発明に係る冷凍機によれば、吸着材が脱着可能なキャップ部に固定されているので、吸着材の取り付け作業を容易にすることができ、製品の組み立て作業やメンテナンス作業の作業効率を向上させることができる。
【0011】
本発明に係る冷凍機においては、第1の連通孔は、ピストン支持部材のうち軸線方向に沿って延在する側面部に形成されていることが好ましい。
本発明に係る冷凍機によれば、ピストンの軸受け等を備える他の部位と比べて側面部では第1の連通孔を大きく形成できるので、側面部に第1の連通孔を大きく形成することでバッファ空間における作動ガスの流れを更にスムーズにすることができる。
【0012】
本発明に係る冷凍機においては、ピストン駆動用のコイル又はマグネットが取り付けられ、ピストンと一体に駆動するピストン駆動部材を更に備え、ピストン駆動部材は、内側バッファのうちピストン駆動部材より内側の空間である第1の内側バッファと内側バッファのうちピストン駆動部材より外側の空間である第2の内側バッファとを連通する第2の連通孔を有していることが好ましい。
本発明に係る冷凍機によれば、ピストン駆動部材に第2の連通孔が形成されているので、ピストン移動時に生じるバッファ空間内の作動ガスの流れはピストン駆動部材に妨げられずに第2の連通孔を通じてスムーズに通り抜けることができる。このことは、バッファ空間内の作動ガスのスムーズな流れを実現するので、吸着材による吸着効率の向上に有利である。
【0013】
本発明に係る冷凍機においては、第1の連通孔及び第2の連通孔は、軸線方向で圧縮空間から離れるほど軸線方向に直交する方向でピストンの移動軸線から離れた位置に設けられていることが好ましい。
本発明に係る冷凍機によれば、ピストンの移動により生じた作動ガスの流れが直線状に近い流れで第1の連通孔及び第2の連通孔を通り抜けることができるので、バッファ空間内の作動ガスのスムーズな流れを実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、冷凍機の冷凍効率を落とすことなく、作動ガス中の不純物を効率的に取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態に係る冷凍機を示す端面図である。
【図2】図1のガス圧縮機を示す拡大端面図である。
【図3】図1のピストン支持部材を示す斜視図である。
【図4】第2の実施形態に係る冷凍機のガス圧縮機を示す拡大端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
[第1の実施形態]
図1に示されるように、第1の実施形態に係る冷凍機1は、いわゆるスターリングサイクルを利用したスターリング冷凍機である。冷凍機1は、ガス圧縮機2と、コールドヘッド3と、ガス圧縮機2及びコールドヘッド3を接続するキャピラリチューブ4と、を備えている。
【0018】
ガス圧縮機2は、円筒状の本体部5A及び一対のキャップ部5Bからなるケーシング5を有している。ケーシング5内には、ヘリウムガス等の作動ガスが充填されている。円筒状の本体部5Aは軸線方向Lに沿って延在しており、一対のキャップ部5Bは軸線方向Lで本体部5Aの両端に取り付けられている。
【0019】
キャップ部5Bは、フランジ部6のボルト止めにより本体部5Aに取り付けられている。フランジ部6は、本体側フランジ6A及びキャップ側フランジ6Bから構成され、ケーシング5内の気密性を保つように設計されている。キャップ部5Bは、フランジ部6の固定を解除することで本体部5Aに対して脱着可能に構成されている。
【0020】
本体部5A内には、円筒状の内周面7aを有するシリンダ7が収容されている。このシリンダ7は、中央の連結部7bにおいてキャピラリチューブ4と連結されている。シリンダ7の内部には、軸線方向Lで対向するように一対のピストン8が入り込んでいる。
【0021】
シリンダ7は、作動ガスを圧縮するための圧縮空間Nを内部に有している。圧縮空間Nは、シリンダ7の内周面7aとピストン8のピストン面8aとによって形成されるシリンダ7内の空間である。なお、内周面7aには連結部7bの内面も含まれる。圧縮空間Nは、キャピラリチューブ4を通じてコールドヘッド3の内部と連通している。ケーシング5内の空間のうち圧縮空間N以外の空間をバッファ空間Mと呼ぶ。
【0022】
一対のピストン8は、シリンダ7内で互いのピストン面8aが近づくように移動することで圧縮空間Nを縮小させ、圧縮空間N内の作動ガスを圧縮する。また、一対のピストン8は、互いのピストン面8aが離れるように移動することで圧縮空間Nを拡張させ、圧縮空間N内の作動ガスを膨張させる。軸線方向Lは、ピストン8の移動軸線の延在方向に相当する。ピストン8の移動により作動ガスが圧縮及び膨張すると、キャピラリチューブ4を通じて圧力の変動がコールドヘッド3内に伝達される。シリンダ7内では、圧縮時において圧縮空間N内の作動ガスの一部はバッファ空間Mに漏出し、膨張時においてバッファ空間M内の作動ガスの一部が圧縮空間N内に入り込む作動ガスの循環が生じている。
【0023】
ガス圧縮機2は、圧縮空間Nを中心に軸線方向Lで対称な構成を有している。以下、ガス圧縮機2のうち図1の紙面右側の部位(図2に示す部位)について説明を行い、紙面左側の部位についての説明は省略する。
【0024】
図1及び図2に示すように、ピストン8は、ピストン頭部8bとピストンロッド8cとから構成されている。ピストン頭部8bは、圧縮空間Nを形成するピストン面8aとシリンダ7の内周面7aに対向する外周面8dとを有している。ピストンロッド8cは、ピストン頭部8bから圧縮空間Nの反対側に向かって突出するロッドである。ピストンロッド8cは軸線方向Lに延在している。
【0025】
ピストンロッド8cは、二つのピストン支持部材9,10によって支持されている。二つのピストン支持部材9,10は、リニアベアリングやすべり軸受け等の軸受け機構を備えており、ピストンロッド8cを軸線方向Lで移動可能に支持する。
【0026】
第1のピストン支持部材9は、ピストンロッド8cのうちピストン頭部8b側を支持する部材である。第1のピストン支持部材9は、ピストン8が入り込むシリンダ7の開口付近に設けられている。第1のピストン支持部材9は、ピストンロッド8cを周方向で囲うように設けられている。
【0027】
第2のピストン支持部材10は、ピストンロッド8cの先端側(ピストン頭部8bとは反対の側)を支持する部材である。図3に、第2のピストン支持部材10の斜視図を示す。図2及び図3に示されるように、ピストン支持部材10は、シリンダ7に固定された側面部10aと、ピストンロッド8cの先端側を支持する先端支持部10bと、から構成されている。側面部10aは、ピストンロッド8cに沿って軸線方向Lに延在する略円筒形状の部位である。先端支持部10bは、側面部10aより小径の略円筒形状の部位であり、ピストンロッド8cを軸線方向Lで移動可能に支持する軸受け機構を備えている。
【0028】
図1及び図2に示されるように、軸線方向Lで第1のピストン支持部材9と第2のピストン支持部材10との間には、ピストン駆動用の電磁コイル11を支持するピストン駆動部材12が配置されている。ピストン駆動部材12は、ピストンロッド8cに固定された円盤状の固定部12aと、固定部12aのシリンダ7側から軸線方向Lに沿って延在する円筒状のコイル支持部12bと、から構成されている。電磁コイル11は、円筒状のコイル支持部12bの先端に巻回されている。
【0029】
コイル支持部12bの先端側は、シリンダ7のケーシング5側に設けられたギャップGの内側に入り込んでいる。このギャップGを構成するシリンダ7の壁には、電磁コイル11と対向する環状のマグネット13が配置されている。マグネット13は、シリンダ7の径方向(軸線方向Lと直交する方向)で電磁コイル11と対向するように配置されている。
【0030】
ピストン駆動部材12は、電磁コイル11及びマグネット13の協働によりシリンダ7に対して軸線方向Lに駆動される。ピストン駆動部材12の駆動により軸線方向Lでピストン8の往復動が行われる。なお、ピストン駆動部材12は、ピストン駆動部材12と第2のピストン支持部材10との間に設けられたコイルバネ14,15によってシリンダ7側へ付勢されている。ピストン8の往復動には、コイルバネ14,15の弾性力も利用される。
【0031】
次に、バッファ空間Mにおいて作動ガスの流路を形成する連通孔16〜18について説明する。軸線方向Lでケーシング5の外側から内側に向かって第2のピストン支持部材10、ピストン駆動部材12、第1のピストン支持部材9の順に説明を行う。
【0032】
図2及び図3に示されるように、第2のピストン支持部材10の側面部10aには、第1の連通孔16が形成されている。第1の連通孔16は、バッファ空間Mのうち第2のピストン支持部材10より外側の空間である外側バッファM1とバッファ空間Mのうち第2のピストン支持部材10より内側の空間である内側バッファM2とを連通する孔である。第1の連通孔16は、側面部10aを軸線方向Lと直交する方向に貫通して形成されている。第1の連通孔16は、側面部10aの周方向に複数形成されている。
【0033】
また、第1の連通孔16内には、作動ガス中の不純物を吸着する吸着材20が設けられている。吸着材20には、吸着する不純物の内容や冷凍機の使用環境に応じて様々なものが選択される。例えば、吸着材20としてジルコニウム合金を利用することができる。吸着材20は、通気性を有しており、第1の連通孔16を塞ぐように嵌め込まれているものの作動ガスを通過させることができる。なお、吸着材20は、必ずしも第1の連通孔16を塞ぐように配置する必要はなく、所望の隙間を形成するように配置しても良い。
【0034】
図2に示されるように、ピストン駆動部材12の固定部12aには、第2の連通孔17が形成されている。第2の連通孔17は、内側バッファM2のうちピストン駆動部材12より外側の空間である第1の内側バッファM3と内側バッファM2のうちピストン駆動部材12より内側の空間である第2の内側バッファM4とを連通する孔である。第2の連通孔17は、固定部12aを軸線方向Lに貫通して形成されている。第2の連通孔17は、ピストンロッド8cを囲むように複数形成されている。
【0035】
また、第1のピストン支持部材9には、第3の連通孔18が形成されている。第3の連通孔18は、第2の内側バッファM4のうち第1のピストン支持部材9より外側の空間である第3の内側バッファM5と第2の内側バッファM4のうち第1のピストン支持部材9より内側の空間である第4の内側バッファM6とを連通する孔である。第3の連通孔18は、第1のピストン支持部材9を軸線方向Lから傾いた斜め方向に貫通して形成されている。第3の連通孔18は、ピストンロッド8cを囲むように複数形成されている。
【0036】
第1の連通孔16、第2の連通孔17、及び第3の連通孔18は、バッファ空間M内における作動ガスのスムーズな流れを実現できるように配置されている。具体的には、連通孔16〜18は、軸線方向Lで圧縮空間Nから離れるほど軸線方向Lに直交する方向で当該軸線(ピストン8の移動軸線)から離れた位置に設けられている。連通孔16〜18は、圧縮空間Nからケーシング5の隅部(キャップ部5Bの隅部)に向かって直線状に近いガス流路を形成するように設けられている。
【0037】
図1に示すように、コールドヘッド3は、ケーシング21、シリンダ22、ディスプレーサ23、支持ロッド24、及びコイルバネ25を備えている。ケーシング21には、キャピラリチューブ4が連結されている。ガス圧縮機2で作動ガスの圧縮が行われると、キャピラリチューブ4を通じてケーシング21内に作動ガスの圧力変動が伝播する。
【0038】
このケーシング21には、先端に膨張空間Eを有するシリンダ22が固定されている。シリンダ22の内部はケーシング21の内部と連通している。シリンダ22の内には、円筒状のディスプレーサ23が挿入されている。
【0039】
ディスプレーサ23は、シリンダ22の延在方向に延びる支持ロッド24によって支持されている。支持ロッド24は、図示しない軸受け機構によってシリンダ22の延在方向で移動可能に配置されている。この支持ロッド24にはコイルバネ25が巻回されており、コイルバネ25の一端は支持ロッド24に固定され、他端はケーシング21に固定されている。コイルバネ25は、作動ガスの流れによりディスプレーサ23が移動した場合、ディスプレーサ23を初期位置に戻すように機能する。
【0040】
ディスプレーサ23内には、ケーシング21の内部からシリンダ22の先端の膨張空間Eへ至るガス流路が形成されている。ディスプレーサ23のガス流路内には、銅金網や鉛球等から構成される蓄冷材26が充填されている。
【0041】
以上説明した冷凍機1では、ガス圧縮機2において圧縮空間Nの作動ガスが圧縮されると、キャピラリチューブ4を通じてコールドヘッド3内へと圧力が伝播する。コールドヘッド3内では、作動ガスの一部が蓄冷材26によって冷却されながら膨張空間Eへと押し込まれる。その後、ガス圧縮機2において圧縮空間Nの拡張が始まると、コールドヘッド3内の作動ガスの圧力が低下し、膨張空間E内の作動ガスが断熱膨張することで冷凍作用が発生する。
【0042】
この冷凍機1によれば、有機溶剤やFRP、接着剤からのアウトガスなどの不純物(例えば、一酸化炭素や二酸化炭素、有機成分、空気、水)が作動ガスに入り込むと冷凍作用により固着して冷凍機1の性能劣化を招くことから、不純物を吸着する吸着材20を設けることで、作動ガスの純度の低下を抑制して製品の長寿命化を図ることができる。しかも、この冷凍機1では、作動ガスの圧縮や膨張が行われる圧縮空間Nやガス流路ではなくバッファ空間Mに吸着材20を設けることで、吸着材20が圧力損失の原因となることが避けられるので、冷凍効率を落とすことなく作動ガス中の不純物を取り除くことができる。
【0043】
更に、この冷凍機1では、第2のピストン支持部材10に第1の連通孔16が形成されているので、ピストン8の移動により生じるバッファ空間M内の作動ガスの流れは第2のピストン支持部材10に妨げられずに第1の連通孔16を通じてスムーズに通り抜けることができる。このため、この冷凍機1によれば、ピストン8の移動によりバッファ空間M内で作動ガスのスムーズな流れが形成されることで、バッファ空間M内に配置された吸着材20による不純物の吸着効率を著しく高めることができる。従って、この冷凍機1によれば、冷凍効率を落とすことなく作動ガス中の不純物を効率的に取り除くことができる。
【0044】
また、この冷凍機1によれば、第2のピストン支持部材10が作動ガスの流れの妨げとならず、ピストン8の移動時に作動ガスにより生じる抵抗を低減できるので、冷凍機1におけるピストン駆動効率の向上すなわち冷凍効率の向上を図ることができる。
【0045】
また、この冷凍機1によれば、第1の連通孔16に吸着材20を設けることで、第1の連通孔16を通り抜ける作動ガス中の不純物を高い確率で吸着できるので、吸着材20による吸着効率を大きく向上させることができる。
【0046】
また、この冷凍機1では、ピストン8を支持する軸受け等が配置される先端支持部10bと比べて側面部10aでは第1の連通孔16を大きく形成できることから、側面部10aに第1の連通孔16を大きく形成することで、バッファ空間Mにおける作動ガスの流れを更にスムーズにすることができる。
【0047】
また、この冷凍機1によれば、ピストン駆動部材12に第2の連通孔17が形成されているので、ピストン8の移動時に生じるバッファ空間内の作動ガスの流れはピストン駆動部材12に妨げられずに第2の連通孔17を通じてスムーズに通り抜けることができる。このことは、バッファ空間M内の作動ガスのスムーズな流れを実現するので、吸着材20による吸着効率の向上に有利である。同様に、この冷凍機1によれば、第1のピストン支持部材9に第3の連通孔18が形成されているので、バッファ空間M内の作動ガスのスムーズな流れを実現することができ、更なる吸着効率の向上を図ることができる。
【0048】
更に、この冷凍機1によれば、連通孔16〜18が軸線方向Lで圧縮空間Nから離れるほど軸線方向Lに直交する方向でピストン8の移動軸線から離れた位置に設けられているので、ピストン8の移動により生じた作動ガスの流れが直線状に近い流れで連通孔16〜18を通り抜けることができ、バッファ空間M内の作動ガスのスムーズな流れを実現することができる。
【0049】
[第2の実施形態]
図4に示されるように、第2の実施形態に係る冷凍機30は、第1の実施形態に係る冷凍機1と比べて、ガス圧縮機31における吸着材32の配置のみが異なる。
【0050】
具体的には、第2の実施形態に係るガス圧縮機31では、吸着材32が外側バッファM1内に配置されており、ケーシング5のキャップ部5Bの内側に固定されている。この吸着材32の固定方法は特に限定されない。吸着材32は、キャップ部5Bの内側に嵌め合わされて固定されても良く、またボルト等を利用して固定されても良い。
【0051】
吸着材32は、キャップ部5Bの内壁に沿ったリング形状をなしている。図4には、リング形状の吸着材32の端面を示す。吸着材32は、軸線方向Lにおけるガス圧縮機31の両端に配置されている。
【0052】
以上説明した第2の実施形態に係る冷凍機30によれば、第1の実施形態に係る冷凍機1とほぼ同様の効果を得ることができる。しかも、この冷凍機30では、吸着材32がケーシング5に固定されているので、他の部材に吸着材を固定する場合と比べて高い耐久性を得ることができる。また、この冷凍機30では、吸着材32が本体部5Aから脱着可能なキャップ部5Bに固定されているので、吸着材32の取り付け作業を容易にすることができ、製品の組み立て作業やメンテナンス作業の作業効率を向上させることができる。
【0053】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0054】
例えば、吸着材20,32の位置は、上述したものに限られずバッファ空間M内であれば良い。また、吸着材20,32の形状も上述したものに限られず、例えば第2の実施形態ではリング形状に代えて平板形状の吸着材を採用しても良い。
【0055】
また、特許請求の範囲に記載のピストン支持部材には、第2のピストン支持部材10だけではなく、第1のピストン支持部材9も含まれる。すなわち、第3の連通孔18も特許請求の範囲に記載の第1の連通孔に相当する。また、各部材の形状や配置も上述したものに限られず、連通孔16〜18の位置や大きさも上述したものに限られない。
【符号の説明】
【0056】
1,30…冷凍機 2,31…ガス圧縮機 3…コールドヘッド 4…キャピラリチューブ 5…ケーシング 5A…本体部 5B…キャップ部 6…フランジ部 7…シリンダ 7a…内周面 7b…連結部 8…ピストン 8a…ピストン面 8b…ピストン頭部 8c…ピストンロッド 9…第1のピストン支持部材 10…第2のピストン支持部材 10a…側面部 10b…先端支持部 11…電磁コイル 12…ピストン駆動部材 12a…固定部 12b…コイル支持部 13…マグネット 16…第1の連通孔 17…第2の連通孔 18…第3の連通孔 20,32…吸着材 E…膨張空間 G…ギャップ L…軸線方向 M…バッファ空間 M1…外側バッファ M2…内側バッファ M3…第1の内側バッファ M4…第2の内側バッファ M5…第3の内側バッファ M6…第4の内側バッファ N…圧縮空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動ガスの圧縮及び膨張を利用して冷凍作用を発生させる冷凍機であって、
前記作業ガスが充填されるケーシングと、
前記ケーシング内に設けられ、前記作動ガスを圧縮する圧縮空間を内部に有するシリンダと、
所定の軸線方向で前記シリンダ内を移動することで、前記圧縮空間内の前記作動ガスを圧縮するピストンと、
前記シリンダに固定され、前記ピストンを前記軸線方向で移動自在に支持するピストン支持部材と、
前記ケーシング内で前記圧縮空間以外の空間であるバッファ空間に配置され、前記作動ガス中の不純物を吸着する吸着材と、
を備え、
前記ピストン支持部材は、前記バッファ空間のうち前記ピストン支持部材より外側の空間である外側バッファと前記バッファ空間のうち前記ピストン支持部材より内側の空間である内側バッファとを連通する第1の連通孔を有することを特徴とする冷凍機。
【請求項2】
前記吸着材は、前記第1の連通孔に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の冷凍機。
【請求項3】
前記吸着材は、前記ケーシングに固定されていることを特徴とする請求項1に記載の冷凍機。
【請求項4】
前記ケーシングは、前記シリンダが収納される本体部と前記本体部に対して脱着可能なキャップ部とを有し、
前記吸着材は、前記キャップ部に固定されていることを特徴とする請求項3に記載の冷凍機。
【請求項5】
前記第1の連通孔は、前記ピストン支持部材のうち前記軸線方向に沿って延在する側面部に形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の冷凍機。
【請求項6】
ピストン駆動用のコイル又はマグネットが取り付けられ、前記ピストンと一体に駆動するピストン駆動部材を更に備え、
前記ピストン駆動部材は、前記内側バッファのうち前記ピストン駆動部材より内側の空間である第1の内側バッファと前記内側バッファのうち前記ピストン駆動部材より外側の空間である第2の内側バッファとを連通する第2の連通孔を有していることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の冷凍機。
【請求項7】
前記第1の連通孔及び前記第2の連通孔は、前記軸線方向で前記圧縮空間から離れるほど前記軸線方向に直交する方向で前記ピストンの移動軸線から離れた位置に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の冷凍機。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−207830(P2012−207830A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72483(P2011−72483)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)