説明

冷凍空調装置及び冷凍空調装置の制御方法

【課題】 ショーケースの冷却に利用される複数の蒸発器を有し、ショーケースの運転/停止に伴う低圧の引き込みによる運転効率低下及び低圧上昇による冷却能力不足を防ぎ、運転効率及び信頼性を向上できる冷凍空調装置及び冷凍空調装置の制御方法を提供する。
【解決手段】 ショーケース2の運転開始時に減圧装置8の開度を第一初期開度で所定時間運転した後(ステップ21)、第一初期開度より小さい第二初期開度で所定時間運転する(ステップ22)。また、ショーケース2の停止時に減圧装置8の開度を段階的に変化させる。また、蒸発器9の負荷が急変した時を検知して、これに応じて冷却能力を変更するように圧縮機3の容量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は冷凍空調装置に関するものであり、特にショーケースのような冷却対象が複数接続される冷凍空調装置及び冷凍空調装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数台の蒸発器を備えた冷凍空調装置として、店舗用ショーケースの冷却用に用いられているものがあった(例えば、特許文献1参照)。これは、蒸発器で冷却されるショーケースに設けられた電子膨張弁の開度を、ショーケースの設定庫内温度と庫内温度の偏差、及び蒸発器出入口の温度差から求められる蒸発器出口過熱度に基づいて制御している。即ち、庫内温度と設定庫内温度との偏差が所定値以上の場合には、膨張弁開度を蒸発器出口過熱度が所定目標値になるように制御し、庫内温度と設定庫内温度との偏差が所定値以下の場合には、膨張弁開度を庫内温度が設定庫内温度となるように制御している。そして、タイマー設定により店舗開店時間及び閉店時間を判別し、店舗開店時間及び閉店時間に応じて庫内温度設定値や過熱度の目標値を変更している。
【0003】
【特許文献1】特開平11−281221号公報(第3―4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の冷凍空調装置の場合には以下のような問題があった。まず、従来のオープンショーケースの冷却装置では、ショーケースが安定的に運転している場合を対象としており、ショーケース運転開始時及び停止時の制御方法については触れられていない。ショーケース運転開始時及び停止時は冷凍装置の運転が不安定になりやすい。例えば運転開始時には冷凍装置の冷凍サイクルの低圧が高めの状態となって冷却能力不足となるなどの不具合が発生したり、運転停止時には冷凍サイクルの低圧が引き込む運転となって効率が低下する可能性があるが、これらについては考慮されていないという課題があった。また装置が店舗に設置される場合、開店時間・閉店時間によってケース冷却負荷が大きく変化するが、開店時間帯から閉店時間帯、あるいは閉店時間帯から開店時間帯に切換わる際も負荷急変により冷凍装置の運転が不安定になりやすい。このときも同様に冷凍サイクルの低圧が必要とされる値よりも上下し、冷凍サイクルの低圧が引き込む運転となり効率低下する、あるいは冷凍サイクルの低圧が高めの状態となり、冷却能力不足となるなどの不具合が発生する可能性があるが、これらについての対策が取られないという課題があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、冷凍空調装置にて、例えばショーケースの運転停止時、店舗の開店閉店切換時間などにおける負荷急変時などにおいても冷凍装置の運転を安定的に行い、冷凍サイクルの低圧の引き込みによる効率低下、あるいは低圧上昇による冷却能力不足を回避することで、高効率かつ高信頼性の冷凍空調装置及び冷凍空調装置の制御方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係わる冷凍空調装置は、圧縮機、凝縮器、複数の減圧手段、複数の蒸発器を接続して冷媒を循環させる冷凍サイクルと、前記蒸発器毎に冷却対象の目標冷却温度を個別に設定する目標温度設定手段と、前記冷却対象の温度と前記目標冷却温度に応じて前記蒸発器毎に運転停止を決定する蒸発器運転決定手段と、前記減圧手段の流動抵抗を変化させて前記蒸発器に流す冷媒流量を制御する流動抵抗制御手段と、を備え、前記流動抵抗制御手段は、前記蒸発器に対して前記蒸発器の運転開始時に、前記減圧手段に第一の初期流動抵抗を設定して所定時間運転した後に、前記第一の初期流動抵抗より大きい第二の初期流動抵抗を設定するようにしたことを特徴とするものである。
【0007】
また、この発明に係わる冷凍空調装置の制御方法は、複数の蒸発器を圧縮機に並列に接続して成る冷凍サイクルを運転する際、複数の前記蒸発器毎に個別に目標冷却温度を設定する目標温度設定ステップと、複数の蒸発器のうちでそれぞれの冷却対象の温度がその目標冷却温度範囲内になるように蒸発器を運転停止する蒸発器運転停止ステップと、前記蒸発器運転停止ステップで運転するときに前記蒸発器に予め設定された所定能力よりも大きな能力を実現しうるような第一初期流動抵抗を前記減圧手段に設定する第一初期運転ステップと、前記第一初期運転ステップを所定時間運転した後で前記第一初期流動抵抗よりも大きい第二初期流動抵抗を前記減圧手段に設定する第二初期運転ステップと、前記第二初期運転ステップで運転した後に前記蒸発器の出口冷媒状態が目標冷媒状態になるような流動抵抗を前記減圧手段に設定する過熱度制御ステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明は、蒸発器の運転停止時、または店舗の開店閉店切換時間における負荷が急変した時でも、冷凍サイクルの低圧の引き込みによる効率低下を回避でき、または低圧上昇による冷却能力不足を回避でき、高効率かつ高信頼性で運転できる冷凍空調装置及び冷凍空調装置の制御方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による冷凍空調装置を示す冷媒回路図である。この冷凍空調装置は、例えば店舗に設置される複数のショーケースの冷却装置として用いられているものである。図1において、1は熱源側で例えばコンデンシングユニット、2a、2b、2cは負荷側のショーケースでこの部分は断面構成で図示している。例えば3個のショーケース2を有し、ショーケース2aは青果用、ショーケース2bは日配用、ショーケース2cは生鮮用のショーケースとする。ショーケース2内の白抜き矢印はショーケース2内の空気の流れを示している。3は例えばインバータにより回転数が可変である圧縮機、4は凝縮器、5は液レシーバ、6はアキュムレータであり、これらはコンデンシングユニット1に内蔵される。7a、7b、7cは電磁弁、8a、8b、8cは減圧手段である電子膨張弁、9a、9b、9cは蒸発器、10a、10b、10cはショーケース2a、2b、2c内を冷却するため蒸発器9a、9b、9cを経てショーケース2内の冷却対象に送風するファンであり、電磁弁7、電子膨張弁8、蒸発器9、ファン10はショーケース2に内蔵される。液管11とガス管12は、コンデンシングユニット1とショーケース2a、2b、2cを接続する冷媒配管である。圧縮機3、凝縮器4、電磁弁7、電子膨張弁8、蒸発器9は冷媒配管11、12で接続されて冷凍サイクル20を構成している。特にこの冷凍装置では、1つの熱源に複数の冷却負荷が並列に接続され、その目標冷却温度をそれぞれ個別に設定して冷却対象各々を互いに異なる目標冷却温度に冷却することができる。
【0010】
さらに、13は冷媒温度センサであり、13aは圧縮機3の吸入温度、13bは圧縮機3の吐出温度、13cは凝縮器4の出口温度、13dは蒸発器9aの入口温度、13eは蒸発器9aの出口温度、13fは蒸発器9bの入口温度、13gは蒸発器9bの出口温度、13hは蒸発器9cの入口温度、13iは蒸発器9cの出口温度を測定する。14は空気温度センサであり、14aは凝縮器4周囲の外気温度、14bは蒸発器9aの吸込空気温度、14cは蒸発器9aの吹出空気温度、14dは蒸発器9bの吸込空気温度、14eは蒸発器9bの吹出空気温度、14fは蒸発器9cの吸込空気温度、14gは蒸発器9cの吹出空気温度を測定する。15は冷媒圧力センサであり、15aは冷凍サイクルの低圧である圧縮機3の吸入圧力、15bは冷凍サイクルの高圧である圧縮機3の吐出圧力を測定する。
【0011】
また、16はコンデンシングユニット1の計測制御装置であり、図2は計測制御装置16の主な構成を示すブロック図である。冷媒温度センサ13a、13b、13c、空気温度センサ14a、冷媒圧力センサ15a、15bでの測定値をもとに圧縮機3の回転数や、凝縮器4に送風するファン18の風量などを制御する。即ち、計測制御装置16は圧縮機容量制御手段21及びファン風量制御手段22を含むものである。17a、17b、17cは各ショーケース2の計測制御装置であり、図3は計測制御装置17の主な構成を示すブロック図である。冷媒温度センサ13、空気温度センサ14によるそれぞれの蒸発器9の出入口冷媒温度、吹出・吸込の空気温度の測定値をもとに、電磁弁7の開閉、および電子膨張弁8の開度、ファン10の風量を制御する。また、入力手段で入力された蒸発器9の冷却対象の目標冷却温度も記憶されている。即ちこの計測制御手段17は、目標温度設定手段31、蒸発器運転決定手段32、ファン風量制御手段33、電子膨張弁8の開度を制御して流動抵抗を制御する流動抵抗制御手段34、電子膨張弁8の開度を補正する第二初期開度補正手段35を含むものである。またコンデンシングユニット1の計測制御装置16とショーケース2の計測制御装置17は相互に通信可能となっており、それぞれの計測値および制御される機器の情報通信を可能とする。図1〜図3において、情報の受け渡しの様子を点線で図示している。
【0012】
次に、この実施の形態での冷媒の流れについて説明する。圧縮機3から吐出された高温高圧のガス冷媒は、凝縮器4で外気と熱交換し凝縮液化される。その後、液レシーバ5、液管11を経てショーケース2a、2b、2cに流入する。そして電磁弁7a、7b、7cを経た冷媒は、電子膨張弁8a、8b、8cで減圧され、低圧の二相冷媒となった後で、蒸発器9a、9b、9cで蒸発ガス化しながらファン10a、10b、10cで送風される空気に冷熱を供給する。その後冷媒はガス管12、アキュムレータ6を通り、圧縮機3に吸入される。運転状態に応じて冷凍サイクル20で余剰となる冷媒は、液レシーバ5またはアキュムレータ6に貯留される。
【0013】
次に、この実施の形態での運転制御方法について説明する。まず、計測制御装置17a、17b、17cで行うショーケース2a、2b、2cの制御方法について説明する。前述したようにショーケース2aは青果用、ショーケース2bは日配品用、ショーケース2cは生鮮品用であり、各ショーケース2の目標冷却温度Tmはそれぞれ異なり、ショーケース2aでTma=8℃、ショーケース2bでTmb=5℃、ショーケース2cでTmc=0℃に設定される。この目標冷却温度Tmは個別に目標温度設定手段31に、例えばショーケース2や計測制御装置17に設けられた入力手段から外部入力され、各ショーケース2の計測制御装置17内に記憶保持される。以下の制御方法は各ショーケース2で同様であるので、代表としてショーケース2aの運転制御方法について、図4に基づいて説明する。ショーケース2の運転制御では、ショーケース2を蒸発器9で冷却する冷却空間として使用している状態であり、かつショーケース2の温度が目標冷却温度Tm以下になっていて冷却する必要がない場合に、蒸発器9を停止してショーケース2停止状態とする。また、ショーケース2の温度が目標冷却温度Tmよりも上昇し冷却する必要がある場合に、蒸発器9を運転してショーケース2運転状態とする。
【0014】
ショーケース2aが冷却空間として使用していない状態から冷却空間として使用するように運転を開始する際、目標冷却温度Tma、例えば8℃で一定に保つ場合、まず、ステップ1で外部入力によりショーケース2aの目標冷却温度Tmaに8℃が目標温度設定手段31で入力されて記憶保持される。そしてショーケース2aの初期状態を運転状態に設定し、蒸発器運転決定手段32及び流動抵抗制御手段34を介して、電磁弁7aを開、電子膨張弁8aの開度を運転初期開度に設定する。なお、ここでは電子膨張弁8aは全閉できるものを用いており、電磁弁7aはこの後、通常の目標冷却温度に冷却する運転中は開のままとし、主に電子膨張弁8aの開度を制御することで流動抵抗を制御して蒸発器9aの冷媒流量制御を行なう。そして、ショーケース2aでデフロスト運転をしたり冷却を行わない非冷運転をする時には、ショーケース2aへの冷媒の流入を確実に防止するために電磁弁7aを閉とする。
【0015】
次に、ステップ2で一定時間毎、例えば2秒程度毎にショーケース2aの吸込・吹出空気温度を空気温度センサ14b、14cで測定し、両者の平均温度を求め現在のショーケース2内温度Taとする。即ち、ショーケース内温度Ta=(吸込空気温度+吹出空気温度)/2を演算する。
【0016】
次にステップ3〜ステップ7で、蒸発器運転決定手段32は、ショーケース内温度Taと目標冷却温度Tmに応じて蒸発器9の運転停止を決定し、この決定に応じて流動抵抗制御手段34は電子膨張弁8の開度を設定する。まず、ステップ3でショーケース2内温度Taと目標冷却温度Tmを比較する。現在ショーケース2aが運転状態でかつTa<Tmであれば、ショーケース2aは十分冷却され目標冷却温度を満足しているので、ステップ4を行う。即ちステップ4では、ショーケース2aを停止状態に変更し、電子膨張弁8aの開度を全閉開度に設定する。電子膨張弁8aの開度を全閉にすることで蒸発器9aへの冷媒流入量をほぼ0とし、ショーケース2aの冷却能力をほぼ0にする。
【0017】
またステップ3の比較で、現在ショーケース2aが運転状態でかつTa≧Tmである場合、ショーケース2aの冷却が十分になされていないので、ステップ5に進む。ステップ5では、運転状態を継続する。このとき電子膨張弁8aはショーケース2a出口の冷媒過熱度SHaが予め設定された目標値SHamになるように制御される。過熱度SHaは冷媒温度センサ13d、13eで測定される蒸発器9a出入口の冷媒温度の差温とし、下式(1)で求められる。
SHa=蒸発器9a出口冷媒温度−蒸発器9a入口冷媒温度 ・・・(1)
次に過熱度SHaと目標値SHamとの大小を比較し、SHa>SHamならば電子膨張弁8aの開度を大きくし、SHa<SHamならば電子膨張弁8aの開度を小さく制御する。過熱度の目標値SHamは装置全体の運転効率が良くなるように予め設定された値、例えばSHam=5℃に設定される。このように冷媒過熱度が目標値になるように制御することを過熱度制御またはSH制御と称する。電子膨張弁8aを上記で設定された開度に制御する際には、例えばPID制御で実施される。なお電子膨張弁8aの開度制御方法については、ファジー制御など他の制御方法を用いてもよい。
【0018】
またステップ3の比較で、現在ショーケース2aが停止状態でかつTa<Tm+ΔTdiffである場合、ショーケース2aはまだ十分冷却されているとしステップ6に進む。ステップ6では、ショーケース2aの停止状態を継続し、電子膨張弁8aの開度を全閉開度のままに設定する。ここでΔTdiffは温度ディファレンシャルであり、ショーケース2aの運転停止状態の頻繁な切換えを防止するために設定され、例えばΔTdiff=2℃に設定される。この値については予め設定された値、あるいは外部入力された値として計測制御装置17aに保持される。
【0019】
次にステップ3の比較で、現在ショーケース2aが停止状態でかつTa≧Tm+ΔTdiffである場合、ショーケース2aが温まってきたとして、ステップ7に進む。ステップ7では、ショーケース2aを運転状態に切換え、電子膨張弁8aの開度を運転初期開度に設定する。ステップ3〜ステップ7で、蒸発器9の運転停止を決定し、この決定に応じて電子膨張弁8の開度を設定した後、A4の処理に戻って、冷凍装置の運転を続行する。
以上のように計測制御装置17によってショーケース2aの運転制御を実施することで、ショーケース2a内の温度Taが一旦目標冷却温度Tm以下に冷却された後は、ショーケース2a内の温度Taを目標冷却温度Tmと目標冷却温度Tm+ΔTdiffの温度範囲内に保持するように蒸発器9aの運転停止が行われる。
図4ではステップ4及びステップ7の蒸発器9の運転停止の制御とステップ5における電子膨張弁8のSH制御を共に2秒毎に実施するようなフローチャートになっているが、これに限るものではない。電子膨張弁8のSH制御は、余りに短い時間で実施すると運転状態が不安定になりやすいので、1分程度の間隔をもって実施した方がよい。
【0020】
なお、ファン10aの制御については、ショーケース2aへの熱侵入を防止するため、ショーケース2aの運転停止状態にかかわらず送風するようにし、エアカーテンによる熱遮断効果を発揮させる。もちろん、ショーケース2aを冷却空間として使用していない場合にはファン10aの送風は停止する。
【0021】
次に、計測制御装置16で施されるコンデンシングユニット1の制御方法について説明する。凝縮器4に送風するファン18の風量制御については、凝縮器4出口の冷媒温度を温度センサ13cで測定し、この測定値が所定の目標値になるようにファン風量制御手段22で制御する。
【0022】
以下、計測制御装置16で施される圧縮機3の制御方法について、図5に基づいて説明する。圧縮機容量制御手段21によって圧縮機3はインバータにより回転数制御され容量制御される。例えば、目標蒸発温度ETmを定め、冷媒圧力センサ15aで測定される吸入圧力Psを飽和換算して得られた蒸発温度ETが、目標蒸発温度ETmになるように、圧縮機3の回転数制御を実施する。そこでステップ11でまず目標蒸発温度ETmの初期値として、基準値ETm0を設定する。この基準値ETm0の値は後述するようにショーケース2の運転状況によりフィードバック制御により修正していくが、初期起動などでフィードバック制御を実施するための運転情報が存在しない場合などは、例えばショーケース2の目標冷却温度Tmの最も低い値に基づいて設定する。そこで、最も目標冷却温度Tmの低いショーケース2cでも確実に冷却されるようにするため、例えば蒸発器9cの蒸発温度が目標冷却温度0℃よりも10℃程度低くなるように、目標蒸発温度の基準値ETm0=−10℃に設定する。
【0023】
次にステップ12で、短い時間周期例えば1分程度の一定時間毎に現在運転されているショーケース2の目標冷却温度Tmに応じて目標蒸発温度ETmをシフトする。例えば、ショーケース2a、2b、2cが全て運転している場合、目標蒸発温度ETmが−10℃に設定されていると、目標冷却温度Tmが高い青果用ショーケース2a、日配品用ショーケース2bでは、過剰に低い温度で冷却されることになり装置の運転効率が低下する。そこでこのような場合には目標冷却温度Tmの高い青果用ショーケース2aに合わせて目標蒸発温度ETmをシフトさせる。ショーケース2aの目標冷却温度Tmはショーケース2cよりも8℃高いため、目標蒸発温度ETmを基準値ETm0より8℃高くシフトし、ETm=−2℃に設定する。また目標冷却温度Tmが高く設定され早く冷却されやすいショーケース2aが停止状態となり、ショーケース2b、2cが運転状態の場合には、目標冷却温度Tmの高いショーケース2bに合わせてシフトさせる。ショーケース2bの目標冷却温度Tmはショーケース2cよりも5℃高いため目標蒸発温度ETmを基準値ETm0より5℃高くシフトし、ETm=−5℃に設定する。またショーケース2a、2bがともに停止状態となりショーケース2cのみ運転状態である場合、目標蒸発温度ETmはシフトさせずETm=ETm0=−10℃のままとする。即ち、目標蒸発温度ETmを基準値ETm0より下式(2)で計算されるΔTmだけシフトさせる。
ΔTm=(運転しているショーケース2の目標冷却温度Tmの最高値)
−(全ショーケース2の中の目標冷却温度Tmの最低値)・・・(2)
なお、この目標蒸発温度ETmのシフトは所定時間間隔、例えば1分間隔で実施される。
【0024】
ステップ13では、設定された目標蒸発温度ETmに応じて、圧縮機3の回転数を制御する。吸入圧力Psを飽和温度換算した蒸発温度ETと目標蒸発温度ETmを比較し、ETm>ETならば圧縮機3の回転数を減少させ、逆にETm<ETならば圧縮機3の回転数を増大させる。圧縮機3の回転数制御はPID制御を用いて行うが、ファジー制御などその他の制御方式を用いてもよい。
また、ステップ13における圧縮機3の回転数制御の時間間隔は、ステップ12の目標蒸発温度ETmをシフトする時間間隔と同じにする必要はなく、冷却能力の応答性や安定性などを考慮して適宜実施される。
【0025】
ステップ12、13によって、例えば1分程度の短い周期で目標蒸発温度ETmに基づきシフト量変更して圧縮機3の容量を制御する。さらに長い時間周期、例えば30分運転する毎に、ステップ14で目標蒸発温度の基準値ETm0の設定が適切であったかどうか判定する。そのために運転しているショーケース2に対して、まず各ショーケース2内温度Taと目標冷却温度Tmとの偏差ΔTaの平均値ΔTasを下式(3)で求める。
ΔTa=ショーケース2内温度Ta−ショーケース2目標冷却温度Tm
ΔTas=Σ(各ショーケース2の所定容量×各ショーケース2のΔTa)
/Σ(各ショーケース2の所定容量) ・・・(3)
この計算式では温度偏差ΔTaに各ショーケース2の所定容量の重み付けをしてΔTaの平均値ΔTasを求めている。そしてΔTas<0℃である場合、ショーケース2内温度Taが目標冷却温度Tmより低くなっているので、冷却負荷に対して装置の冷却能力が過大と判定し目標蒸発温度の基準値ETm0を高く再設定し、例えば0.5℃程度高く設定する。また0℃≦ΔTas≦2℃の場合、ショーケース2内温度Taが目標冷却温度Tmとほぼ同じになっているので、冷却負荷に装置の冷却能力が釣り合っていると判定し、目標蒸発温度の基準値ETm0はそのままの値に設定する。またΔTas>2℃の場合、ショーケース2内温度Taが目標冷却温度Tmより高くなっているので、冷却負荷に対し装置の冷却能力が不足と判定し、目標蒸発温度の基準値ETm0を低く再設定し、例えば0.5℃程度低く設定する。目標蒸発温度ETmを高くすると圧縮機3の回転数は低く運転され装置の冷却能力は減少し、目標蒸発温度ETmを低くすると圧縮機3回転数は高く運転され装置の冷却能力は増加するようになり、冷却負荷に釣り合った運転が可能となる。
この後、A5に戻って、冷凍装置の運転を続行する。
【0026】
以上のようにこの実施の形態によれば、圧縮機容量制御手段21によって、運転されている蒸発器9の個別の目標冷却温度に基づいて運転されている蒸発器9を含む冷凍サイクルの目標とする状態、ここでは目標蒸発温度を定めるので、運転中にその状態に適した冷凍サイクルの目標状態を設定できる。さらに冷凍サイクルの目標状態を最適に設定することで、装置全体の運転効率を高めると共に、ショーケース2に保存してある食品などの鮮度悪化を回避でき、信頼性の高い運転を実現することができる。冷凍サイクルの状態とは、冷凍サイクルの冷媒の状態を表し、ここで用いた冷媒の蒸発温度の他、例えば高圧や低圧などの圧力値、冷媒の流量や流速や液量など、冷凍サイクル内を循環している冷媒の状態を意味している。
【0027】
特にステップ12では、複数のショーケース2が運転される場合に、運転されているショーケース2の中の高い方の目標冷却温度Tmに基づいて蒸発温度ETを高く設定して運転する。目標冷却温度Tmが高いショーケース2は次々に目標冷却温度Tmが満足されて運転停止することになり、実際には蒸発温度ETは徐々に低く設定して運転される。このように、ショーケース2の目標冷却温度Tmに見合った蒸発温度ETで運転することが可能となり、過度に低い蒸発温度ETで運転するのを回避でき、装置全体の運転効率を高く運転することができる。これと共に、ショーケース2の吹出空気温度が設定温度よりも大きく低下することによる鮮度悪化を回避し信頼性の高い運転を実現することができる。
さらに、冷却対象の目標冷却温度Tmが複数のショーケース2間で大きく異なる場合に、ショーケース2の目標冷却温度Tmに適した蒸発温度ETで運転することができるので、上記効果をより発揮できる。
【0028】
ここでショーケース2運転開始時に流動抵抗制御手段34で行う減圧手段の流動抵抗制御方法について詳しく説明する。ここでは減圧手段として例えば電子膨張弁8を用いるので、膨張弁開度を制御することで流動抵抗を制御している。図6はこの処理工程を示すフローチャートである。図4のステップ1、ステップ7においてショーケース2を停止状態から運転状態に切換える場合、電子膨張弁8開度を閉から初期開度にする。その際の初期開度については、ステップ21でまず第一初期開度に設定し、所定時間経過後にステップ22で示すように、第一初期開度よりも小さい第二初期開度に設定する。そして、所定時間経過後、電子膨張弁8開度制御をSH制御(図4のステップ5)に移行する。
図7はショーケース2の運転停止の様子、及び電子膨張弁8の開度の変化を示すグラフである。図7において、横軸は時間、縦軸はショーケース2の運転停止及び電子膨張弁8の開度の変化を示す。ショーケース2停止の間は電子膨張弁8開度は全閉開度になっており、図6に示す処理を行うことで、図7に示すように電子膨張弁8開度は第一初期開度から第二初期開度に変化し、さらにSH制御に移行する。ショーケース2a内温度Taが目標冷却温度Tm以下になるまでSH制御が行われ、ショーケース2aは運転状態になる。
【0029】
第一初期開度は、上記のようなステップ1またはステップ7におけるショーケース2運転開始時の開度であり、この開度が大きいと流動抵抗が小さくなって蒸発器9の冷媒流量が多くなり、ショーケース2運転開始時の冷却能力が大きくなる。従って、第一初期開度の大小でショーケース2運転開始後のショーケース2内温度Taの変化が決定され、第一初期開度が大きいほどショーケース2内温度Taの低下速度が大きくなる。ショーケース2運転開始時は、ショーケース2内温度Taが目標冷却温度Tmより、ΔTdiff(ステップ7)またはそれ以上(ステップ1)高くなっている状況なので、これ以上ショーケース2内温度Taが上昇することは、冷却対象品の品質確保するためにも望ましくなく、運転開始時以降確実にショーケース2内温度Taが低下することが求められる。そこで、第一初期開度はショーケース2に設定された所定能力、例えば最大能力以上の能力を実現する冷媒流量を流しうる開度に設定する。このように第一初期開度を設定することで、運転開始後ショーケース2内温度Taを確実に低下させることができる。
なお、最大能力としては、JISB8612−1 7.3 C) 4.4)にて製造業者が提供すべき情報として規定されている冷凍能力(W)を用いてもよい。この冷凍能力は想定される最大負荷でもショーケース2内温度を冷却可能できる能力として、ショーケース2のシステムを構成するときの冷凍機選定に用いられることが多く、この実施の形態における蒸発器9の最大能力として用いるに適当な値となる。また、ステップ7ではΔTdiffだけ目標冷却温度Tmよりも高いので、第一初期開度はショーケース2でその運転時に要求される所定能力、例えばΔTdiff程度の温度低下が得られる能力より大きい能力を実現する冷媒流量を流しうる開度に設定してもよい。
即ち、第一初期開度はショーケース2に設定された所定能力より大きい能力を実現する冷媒流量を流しうる開度に設定すれば、運転開始後にショーケース2内温度Taを確実に低下させることができる。
【0030】
ここで上記のように第一初期開度を選定し、その開度のまま継続運転した場合のショーケース2運転開始後のショーケース内温度Taの変化を図示すると図8のようになる。図8において、横軸は時間、縦軸はショーケース2の運転停止及びショーケース内温度Taを示す。図中の実線はショーケース2外部からの侵入熱量大の高負荷条件の場合の温度変化を示し、破線はショーケース2外部からの侵入熱量小の低負荷条件の場合の温度変化を示す。低負荷条件時には冷却量≫侵入熱量となるので、温度低下が早く生じ、短時間でショーケース2内温度Taが目標冷却温度Tm以下なってショーケース2が停止状態となる。
【0031】
このようにショーケース2が短時間で頻繁に停止すると、それに伴い装置運転が不安定となる。特にショーケース2停止時は、電子膨張弁8が全閉となるため、装置全体の電子膨張弁8開度合計値と圧縮機3容量とのバランスが崩れ、圧縮機3の容量が大きくなるので、冷凍サイクルの低圧が一時的に低下する。これに伴い圧縮機3の運転効率が低下し、装置の運転効率も低下してしまう。
また、ショーケース2運転開始時はそれまで全閉であった電子膨張弁8が第一初期開度に設定されるので、装置全体の電子膨張弁8開度合計値と圧縮機3容量とのバランスが崩れ、開度合計値が大きくなるので、冷凍サイクルの低圧が一時的に上昇する。これにより、蒸発温度が上昇し、それまで運転していたショーケース2の冷却量が減少するので、ショーケース2内温度Taが一時的に上昇する状態となり、冷却対象品の品質確保のために望ましくない状態となる。
ショーケース2の運転停止は、多い場合には1時間に20〜30回程度も行われることもあり、その度に不安定な状態で冷凍サイクルを運転することになって、効率の低下及び信頼性の低下を招く。このようなことからショーケース2の運転停止が頻繁に発生しないように運転することが望ましい。
【0032】
低負荷運転時の第一初期開度が大きいと、上記のようにショーケース2の運転停止が頻繁になるので、負荷状況に応じて、第一初期開度を変更することが考えられる。そこで、図9に第一初期開度を負荷状況に応じて小さくして流動抵抗を大きく設定した場合のショーケース2内温度変化を実線で示す。図9において、横軸は時間、縦軸はショーケース内温度Taである。このように、低負荷時に第一初期開度を負荷に合わせて小さくすると図9に示されるようなショーケース2内温度変化となり、運転開始後一定時間はショーケース2内温度Taが運転開始時の温度より高くなってしまう。ショーケース2内温度Taの変化は、基本的に冷却能力、およびショーケース2外部から侵入してくる熱量(熱負荷)で決まるが、運転開始時は停止時の熱負荷によりショーケース2内が全体的に冷却目標温度Tmより高温状態にあり、運転開始してもショーケース2全体が冷却されて温度低下し始めるのにある程度の時間を要する。これは、ショーケース2内を冷熱が行き渡るのに要する時間や、ショーケース2筐体の熱容量などの影響を受けてのものであり、これらの影響は熱負荷には依存せず、ショーケース2の形態・大きさや重量によって主に決定される。従って第一初期開度を負荷に合わせて変更すると、低負荷運転時にショーケース2内温度Taが上昇してしまう場合が頻発するようになり、望ましい運転とはならない。
【0033】
そこで本実施の形態では前述の図6に示したように、電子膨張弁8の開度を第一初期開度で所定時間運転して温度低下させた後で、第一初期開度よりも小さい第二初期開度に変更する制御を行う。このときのショーケース2内温度変化及び電子膨張弁8の開度変化を図10に示す。図10において、横軸は時間、縦軸はショーケース2の運転停止及びショーケース内温度Taを示す。図中の実線はショーケース2外部からの侵入熱量大の高負荷条件の場合の温度変化を示し、破線はショーケース2外部からの侵入熱量小の低負荷条件の場合の温度変化が示す。この運転では、第一初期開度は負荷条件によらずそれぞれのショーケース2で設定された所定値とし、第二初期開度は負荷条件に応じて変更し、低負荷であるほど小さく開度を設定して流動抵抗を大きくする。
【0034】
この運転では、第一初期開度で所定時間運転中にショーケース2内温度Taが運転開始時の温度より低下し、その後で第二初期開度に開度を切換える。第一初期開度の運転中にショーケース2内に冷熱が行き渡るようになり、熱容量の影響も排除されるので、第二初期開度に開度変更以降は冷却能力と熱負荷に応じてショーケース2内温度Taの変化が生じる。そこで、第二初期開度を熱負荷、即ち蒸発器9の冷却負荷に応じて電子膨張弁7の開度を設定することにより、熱負荷によらず同様のショーケース2内温度Ta変化とすることができる。なお、第二初期開度はその開度での運転中にショーケース2内温度Taが上昇せず、また急低下しショーケース2が停止しないように設定される。第二初期開度で所定時間運転している間にショーケース2内温度Taはさらに低下し、その後は図6、図7に示したようにSH制御(図4のステップ5)に移行する。なお、SH制御に移行した時点では第二初期開度から開度変化を行うため、第二初期開度が小さいと、SH制御開始時の冷却能力は小さく、第二初期開度が大きいとSH制御開始時の冷却能力は大きくなる。従って、ショーケース2運転開始後過熱度SHが目標値に収束するまでの間の冷却能力に対し、第二初期開度は影響を持つ。
【0035】
以上のように、蒸発器9の運転時に図6に示したような初期開度制御を行うことで以下の効果を得ることができる。
即ち、蒸発器9の運転開始時にショーケース2の熱容量などの影響を受けてショーケース2内温度Taが決定される時間は、第一初期開度を設定することで、確実にショーケース2内温度Taが低下するように運転でき、温度上昇による冷却対象品の品質低下を回避でき、運転信頼性を高めることができる。
また、第一初期開度よりも小さい第二初期開度であり、蒸発器9の冷却負荷に応じて設定される第ニ初期開度で運転することにより、ショーケース2が短時間で停止状態となることを回避する。
このように、異なる要因に対して考慮した第一初期開度と第二初期開度を設定し、電子膨張弁8の開度をそのニ段階で順次設定することにより、ショーケース2の運転停止が頻繁になることによる運転効率の低下や、冷却能力不足を回避でき、高効率かつ高信頼性の運転を実現できる。
なお、ショーケース2外部から侵入してくる熱量(熱負荷)は、外気温度やショーケース2への収納物の量などに応じて変化するので、図3に示すように計測制御装置17に第二初期開度補正手段35を設けて、その開度の設定を補正するのが好ましい。
【0036】
第一初期開度の大きさは前述したようにショーケース2に設定された所定能力、例えば最大能力以上の能力を発揮する開度に設定することが望ましいが、特に図4のステップ1のようにショーケース2を冷却空間として利用し始めるときのショーケース2の熱容量などの影響を考慮すると、さらに多くの能力を発揮することが望ましく、最大能力の1.5〜2倍程度の能力を発揮する開度に設定することが望ましい。図4のステップ1とステップ7で第一初期開度を異なる値で設定し、ステップ1の第一初期開度をステップ7の第一初期開度より大きい開度にしてもよい。
【0037】
また、第二初期開度は蒸発器9での冷却負荷に対応した能力を発揮する開度に設定されるが、一般に負荷はショーケース2に設定された最大能力よりも小さく、最小30%程度まで低下するので、最大能力の0.3〜1倍程度の能力を発揮する開度に設定することが望ましい。このように、一般に第二初期開度は第一初期開度よりも小さく設定されるが、負荷が大きい場合などには、第一初期開度と同程度の第二初期開度を設定することもある。また、流動抵抗で言い表す場合には、第二初期開度の流動抵抗は、一般に第一初期開度の流動抵抗よりも大きくなるように設定することになる。
【0038】
また、第二初期開度の設定方法として、以下の方法をとることもできる。まず負荷の大小は外気温度の影響を大きく受けるので、空気温度センサ14aで計測される温度情報をコンデンシングユニット1から入手し、この情報に応じて予め設定された負荷係数に応じて第二初期開度を設定できる。
また、負荷と釣り合うように蒸発温度目標値が設定され、圧縮機3が運転されるので、その時点での平均的な蒸発温度目標値や、圧縮機3回転数をもとに負荷係数を定め、この値に応じて第二初期開度を設定してもよい。
【0039】
第二初期開度は予め蒸発器9の最大能力の0.3〜1倍の間の適当な能力を発揮する開度に設定しておき、ショーケース2の運転状況に応じて負荷の大きさを判断して第二初期開度補正手段35で補正することもできる。以下、図11に示すフローチャートに基づいて説明する。
蒸発器9の冷却負荷が小さい場合には、運転中のショーケース2内の温度Taが低下しやすく、逆に冷却負荷が大きい場合には、ショーケース2内の温度Taが低下しにくくなる。そこで、ステップ23で運転開始から所定時間経過した後のショーケース2内の温度Taを検知し、この温度によって第二初期開度を補正する。ステップ24で所定時間経過後のショーケース2内の温度Taと所定値を比較し、ショーケース2内の温度Taが所定値よりも高い場合は、第二初期開度が冷却負荷に対して小さく、温度低下が小さいと判断できるので、ステップ25で第二初期開度を大きく補正して流動抵抗を小さくする。逆にショーケース2内の温度Taが所定値よりも低い場合、またはショーケース2が停止している場合は、第二初期開度が冷却負荷に対して大きいと判断できるので、ステップ26、ステップ27で第二初期開度を小さく補正して流動抵抗を大きくする。ステップ25、ステップ26で第二初期開度を補正後、SH制御(図4のステップ5)に移行し、ステップ27で第二初期開度を補正後はショーケース2の停止状態を継続する(図4のステップ6)。
【0040】
なお、ステップ23における所定時間は、ショーケース2が確実に運転継続する時間となるので、ショーケース2の運転停止間隔をこの時間によって決定することができる。ショーケース2運転停止時の冷凍サイクルの応答変化が安定するためには、例えば3〜5分程度要するので、安定運転を実現するためには、少なくともこの時間間隔以下のショーケース2の運転停止を避けることが望ましい。そこで、所定時間間隔としてはこの安定に要する時間以上、例えば5〜10分程度とすることが望ましい。
【0041】
また、ステップ24における負荷を判定するショーケース2内の温度の所定値としては、以下のようにして決めることができる。即ち、目標冷却温度Tmに近い条件に設定すると、運転状況によっては直ちにショーケース2が停止してしまう可能性があること、一方ショーケース2運転開始温度(Tm+ΔTdiff)近辺に設定すると、状況によってはショーケース2内の温度Taが運転開始温度より高くなってしまう可能性があることから、目標冷却温度Tmとショーケース2運転開始温度(Tm+ΔTdiff)の中間の温度に設定することが望ましい。なお、この温度については、閾値として常に変更するというだけでなく、ある一定の幅を持たせ、その範囲内に収まれば、第二初期開度を変更せず、その範囲以上であれば第二初期開度を大きく変更、範囲以下であれば第二初期開度を小さく変更するというようにしてもよい。
【0042】
このように、第二初期開度補正手段35によって電子膨張弁8の第二初期開度を蒸発器9の冷却負荷に応じて変更することで、その時の運転状況に対応して蒸発器9の運転停止の切換えを少なくでき、停止時の低圧の引き込み及び運転時の低圧上昇を極力防止して、安定した冷凍サイクルを運転でき、運転効率の向上及び冷却能力の安定化を図ることができる。また、上記のように第二初期開度補正手段35は、例えば蒸発器9を運転開始して所定時間経過後の冷却対象温度が高いときに低いときよりも電子膨張弁8の第二初期開度を大きくするように変更することで、その時の運転状況に対応して確実に蒸発器9の運転停止の切換えを少なくできる。
【0043】
また、電子膨張弁8の第二初期開度をショーケース2の運転状況に応じて補正する方法として、ショーケース2の停止時間で冷却負荷の大きさを判断して補正することもできる。蒸発器9での冷却負荷が大きい場合は、停止時間中のショーケース2内温度Taの上昇が早くなって停止時間が短くなる。逆に冷却負荷が小さい場合は、停止時間中のショーケース2内温度Taの上昇が遅なって停止時間が長くなる。そこで、停止時間に対する負荷係数を予め求めておき、その運転開始直前の停止時間が短い場合には大きい負荷係数を用いて第二初期開度を大きく補正し、その運転開始直前の停止時間が長い場合には小さい負荷係数を用いて第二初期開度を小さく補正する制御を実施する。
【0044】
このように第二初期開度補正手段35は、例えば蒸発器9の運転開始前の停止時間が長いときに短いときよりも電子膨張弁8の第二初期開度を小さくするように変更することで、その時の運転状況に対応して確実に蒸発器9の運転停止の切換えを少なくでき、停止時の低圧の引き込み及び運転時の低圧上昇を極力防止して、安定した冷凍サイクルを運転でき、運転効率の向上及び冷却能力の安定化を図ることができる。
【0045】
なお、図6に示した第一初期開度、第二初期開度で運転する所定時間は、例えば以下のように設定すればよい。第一初期開度で運転する所定時間は、ショーケース2の熱容量などの影響による運転開始時のショーケース2内温度上昇を抑制することが求められるので、熱容量などの影響が排除できる時間とすることが望ましい。この時間はショーケース2の形態、大きさ及び重量などによって変化するが、おおよそ1〜5分程度となり、第一初期開度で運転する所定時間はこの時間に設定すればよい。
また、第二初期開度で運転する所定時間は、ショーケース2の運転開始後、冷凍サイクルの状態が安定して、過熱度SHの検出結果が安定的に得られるまでの間は無理に制御を行わず、開度固定で運転する時間としておきたいので、冷凍サイクルの安定に要する時間、例えば3〜5分程度に設定すればよい。
【0046】
また、第一初期開度から第二初期開度への切換制御は、図7に示したように第一初期開度で運転する所定時間が終了したときに急に切換えてもよいが、図12に示すように段階的に切換えてもよい。図12はショーケース2の運転停止の様子、及び電子膨張弁8の開度の変化を示すグラフである。図12において、横軸は時間、縦軸はショーケース2の運転停止及び電子膨張弁8の開度の変化を示す。このように第一初期開度から第二初期開度に段階的に徐々に切換えるようにすると、第一初期開度から第二初期開度に切換える際の安定性が向上し、開度が小さくなる際の低圧引き込み幅を小さくできるので、より高効率の運転を行うことができる。図12では第一初期開度から第二初期開度までの間に3つの段階を設定して変化させているが、段階の数はこれに限るものではなく、少なくとも1つの段階を設定すれば、切換える際の安定性をある程度向上することができる。また、逆に制御が可能であれば、開度を直線的に減少させることで、切換え動作をよりスムーズに行うことができる。
【0047】
この実施の形態では、目標蒸発温度ETmを定め、吸入圧力を飽和温度換算した蒸発温度ETがETmになるように圧縮機3の運転容量を決定して容量制御を実施したが、目標蒸発温度ETmから目標吸入圧力を換算し、吸入圧力が目標吸入圧力になるように圧縮機3の容量制御を実施しても同様の効果が得られる。
また、蒸発温度を直接求め、例えば各ショーケース2の蒸発器9の入口冷媒温度を温度センサ13dなど測定した温度を蒸発温度ETとし、その情報をショーケース2の計測制御装置17からコンデンシングユニット1の計測制御装置16に伝送し、その蒸発温度ETが目標値ETmになるように圧縮機3の容量を制御してもよい。
【0048】
また、蒸発温度の目標値の代わりに吸入圧力Psの目標値Psmを直接定め、圧力センサ15aで測定される吸入圧力PsがPsmになるように圧縮機3の容量制御を実施してもよい。この場合には、例えば式(2)における右辺を圧力に換算して目標吸入圧力の基準値及びシフト量を設定すればよい。
【0049】
また、ショーケース2内温度Taは、吸込・吹出空気温度の平均値としたが、吹出温度、吸込温度いずれか一方の値を用いてもよい。また、ショーケース2内の空間に別途空気温度センサを設けて、その測定値を用いてもよいし、ショーケース2内の商品温度を直接測定する温度センサを設け、その測定値を用いてもよい。
【0050】
また、冷凍空調装置の制御方法として、複数の蒸発器を圧縮機に並列に接続して成る冷凍サイクルを運転する際、複数の前記蒸発器毎に個別に目標冷却温度を設定する目標温度設定ステップ(図4、ステップ1)と、複数の蒸発器のうちでそれぞれの冷却対象の温度がその目標冷却温度範囲内になるように蒸発器を運転停止する蒸発器運転停止ステップ(図4、ステップ4〜ステップ7)と、前記蒸発器運転停止ステップで運転するときに前記蒸発器に予め設定された所定能力よりも大きな能力を実現しうるような第一初期冷媒流量を前記蒸発器に流す第一初期運転ステップ(図6、ステップ21)と、前記第一初期運転ステップを所定時間運転した後で前記第一初期冷媒流量よりも少ない第二初期冷媒流量を前記蒸発器に流す第二初期運転ステップ(図6、ステップ22)と、前記第二初期運転ステップで運転した後に前記蒸発器の出口冷媒状態が目標冷媒状態になるような冷媒流量を前記蒸発器に流す過熱度制御ステップ(図4、ステップ5)と、を備えたことにより、蒸発器の運転停止の切換えを少なくでき、停止時の低圧の引き込み及び運転時の低圧上昇を極力防止して、安定した冷凍サイクルを運転でき、運転効率の向上及び冷却能力の安定化を図ることができる。
【0051】
実施の形態2.
以下、この発明の実施の形態2による冷凍空調装置について説明する。この実施の形態における装置の構成及び圧縮機3の容量制御方法については、図1及び図5に示す実施の形態1と同様であり、ここではその説明を省略する。また電子膨張弁8の制御、及びショーケース2の運転も基本的には図4に示す方法で実施される。ここでは図4のステップ4において、ショーケース2内温度Taが目標冷却温度Tmよりも低い温度まで冷却され、ショーケース2を停止状態に変更する時に流動抵抗制御手段34で行う減圧手段の流動抵抗制御方法に関する。ここでは減圧手段として例えば電子膨張弁8を用いるので、膨張弁開度を制御することで流動抵抗を制御している。ここでも、ショーケース2の運転停止とは蒸発器9の運転停止と同様の動作を意味する。ショーケース2の運転時にはショーケース2を冷却空間として使用し、蒸発器9で冷却を行っている。他方、ショーケース2の停止時にはショーケース2を冷却空間として使用しているが、蒸発器9で冷却を行っていない。
【0052】
蒸発器9の運転から停止に切換える過程では、電子膨張弁8がそれまでの開から閉となるため、装置全体の電子膨張弁8開度合計値と圧縮機3容量とのバランスが崩れ、圧縮機3の容量が大きくなるので、冷凍サイクルの低圧が一時的に低下する低圧引き込みが生じる。この実施の形態は、ショーケース2停止時の低圧引き込みに伴う圧縮機3の運転効率の低下、及び装置の運転効率の低下の低減を図るものである。
【0053】
図13はこの実施の形態に係る電子膨張弁8の開度制御を示すグラフである。図13において、横軸は時間、縦軸はショーケース2の運転停止、電子膨張弁8開度、冷凍サイクルの低圧値、即ち圧縮機の吸入圧力値である。図におけるTPは蒸発器9の運転から停止に切換える過程(ここでは、停止過程と記す)を行っている時間を示し、図3における蒸発器運転決定手段32で停止と決定したときから、流動抵抗制御手段34で電子膨張弁8の開度を変更して流動抵抗を制御し、蒸発器9停止状態になるまでの時間を示している。
【0054】
通常の図4のステップ4などにおける電子膨張弁8開度を全閉開度に設定する際には、図13の一点鎖線で示されるように運転停止時に直ちに全閉開度にするように行っている。このため、冷凍サイクルの低圧は一点鎖線で示すように一度最小値まで引き込んだ後で、回復する挙動となる。この低圧引き込みが冷凍装置の効率低下を招いていた。そこでこの実施の形態では、停止直前の開度から所定時間TPをかけて全閉開度に制御する。例えば図13の実線のように段階的に全閉開度にしてもいいし図13の点線のように直線的に全閉開度に変化させてもよい。
【0055】
停止直前の開度から所定時間TPをかけて段階的に全閉開度に制御した場合、冷凍サイクルの低圧は実線に示すように変化し、低圧引き込みを抑制することができる。また、直線的に全閉開度に制御した場合、冷凍サイクルの低圧は点線に示すように変化し、この場合にも低圧引き込みを抑制することができる。
このように開度制御を行うことにより、蒸発器9停止時に、電子膨張弁8の開度が瞬時に全閉になることにより発生する低圧の引き込みを抑制でき、運転効率の低下を回避でき、高効率の運転を実現することができる。
ここで、図13では停止過程で3つの段階を設定して開度を変化させているが、段階の数はこれに限るものではなく、少なくとも1つの段階を設定すれば、停止する際の安定性をある程度向上することができる。
【0056】
なお、電子膨張弁8の開度を全閉にするまでに要する所定時間TPは、安定性を重視すると基本的には長ければ長いほどよいが、余り長くすると、その間にショーケース2内の温度Taが目標冷却温度以下まで低下してしまい、過剰冷却となり運転効率が低下する。一方、所定時間が短いと、安定性が低下し、低圧の引き込みやすい運転となる。そこで、停止過程の所定時間TPとしては、低圧の引き込みをできるだけ緩和しつつ、ショーケース2内の温度Taが目標冷却温度Tm以下とならない時間とする。
一般に冷凍サイクルにおいて、冷媒配管の内容積が大きくて熱交換器である蒸発器の熱交換量が大きいと低圧引き込みが少なく、冷媒配管の内容積が小さくて熱交換器である蒸発器の熱交換量が小さいと、低圧引き込みが多くなる。このため、冷媒配管の内容積や蒸発器の熱交換量を考慮して、徐々に閉じる時の段階数や所定時間を設定すればよい。
【0057】
冷凍サイクルの圧力応答は一般に温度など他の特性の応答よりも早く生じ、数10秒程度の応答となり、1分以内に完了する。従って開度全閉に要する所定時間としては、例えば1分以上とすると、図13のような引き込みを抑制することができ、効率のよい運転を実現できる。
【0058】
低圧の引き込みは、低圧低下を検知したことによる圧縮機3の容量を減少させる制御によって緩和されるので、全閉開度に要する所定時間の間に圧縮機3の容量制御を行うタイミングが少なくとも1回以上あれば、低圧の引き込みを緩和できる。従って所定時間TPとしては、圧縮機3の容量制御を行う時間間隔以上に設定することが望ましい。例えば圧縮機3の容量制御間隔が20秒であるならば、20秒より長い時間に設定する。
【0059】
このように、流動抵抗制御手段34は、蒸発器9の停止過程で、電子膨張弁8の停止前の開度から停止時の所定開度(ここでは例えば全閉)に向けて段階的に変化または直線的に変化させる。これにより、蒸発器9の運転停止の切換えを少なくでき、停止時の低圧の引き込みを極力防止して、安定した冷凍サイクルを運転でき、運転効率の向上を図ることができる。また、流動抵抗制御手段34は、蒸発器9の停止過程の間に圧縮機の容量制御が少なくとも1回実施されるように電子膨張弁8の開度を変化させている。このため、停止時の低圧の引き込みをさらに緩和できる。実施の形態1でも述べたが、ここでは蒸発器9停止時のほぼ数10秒程度の低圧引き込みであるが、運転停止が多い時には1時間に20〜30回程度も行われることもあり、この低圧引き込みによって生じる効率低下は大きなものとなる。これに対してこの実施の形態によれば低圧引き込みを極力少なくでき、その効果は大きい。
減圧手段として全閉することが可能な電子膨張弁8を使用した場合には、蒸発器9停止時に全閉にすることで、蒸発器9に冷媒が流れないように制御できるが、全閉にできない減圧手段を用いた場合には、電磁弁7で全閉と同じ状態を構成することができる。即ち、停止過程で減圧手段を変化させて流動抵抗を段階的、または直線的に制御した後に電磁弁7を閉じればよい。
【0060】
また、ショーケース2停止時の電子膨張弁8の開度は全閉でなくてもよく、適度に開いて蒸発器9に冷媒が流れる状態であってもよい。図14は、蒸発器9停止時にもある程度の冷媒を流して冷媒流量をゼロにしない場合の、ショーケース2の運転停止、電子膨張弁開度変化、ショーケース2内温度Taの変化を示すグラフである。図14において、横軸は時間、縦軸はショーケース2の運転停止、電子膨張弁8開度、及びショーケース内温度Taを示す。図中の実線は電子膨張弁8開度の停止開度>全閉開度とした場合の変化を示し、破線は電子膨張弁8開度の停止開度=全閉開度とした場合の変化を示す。このときは、対象とする蒸発器9に接続されている電磁弁7はショーケース2の停止時でも開とする必要がある。
【0061】
ショーケース2停止時の電子膨張弁8開度を全閉としないことにより、以下のような効果を得ることができる。
まず、ショーケース2停止過程での電子膨張弁8の開度変化が小さくなる。従って、停止時の低圧の引き込み幅が小さくなり、高効率の運転を行うことができる。次に、ショーケース2停止時のショーケース2内温度Taの上昇が緩やかになる。これはショーケース2停止時であっても、冷媒が流れることにより、いくらかの冷却能力が生じていることに起因する。温度上昇が緩やかになると、ショーケース2停止時間が長くなる。従ってショーケース2の運転停止の頻度が少なくなり、運転停止時の運転不安定に起因する運転効率の低下、及び冷却能力低下の発生回数を抑制でき、より高効率かつ高信頼性の冷凍空調装置を実現することができる。
【0062】
このように、流動抵抗制御手段34は、蒸発器9の停止時の冷媒流量をゼロにしないように制御することにより、蒸発器の運転停止の切換えを少なくでき、停止時の低圧の引き込み及び運転時の低圧上昇を極力防止して、安定した冷凍サイクルを運転でき、運転効率の向上及び冷却能力の安定化を図ることができる。
【0063】
ショーケース2停止時の電子膨張弁8の所定開度については、その開度で生じる冷却能力が冷却負荷よりも大きいと、停止中もショーケース2内の温度Taが低下し、目標冷却温度以下まで冷却され、冷却能力過剰となり運転効率が低下する。そこで、停止時の開度はその開度で流れる冷媒による冷却能力が冷却負荷よりも小さくなるように設定し、緩やかに上昇する温度変化または一定温度になるようにする。冷却負荷の最大値は、ショーケース2に設定された所定能力、例えば最大能力であるので、停止開度は少なくともショーケース2の最大能力を実現する冷媒流量よりも少ない冷媒流量を流しうる開度に設定する。また冷却負荷の最小値は最大負荷の30%程度であるので、最大能力の30%に相当する開度よりも小さい開度に設定しておくと、ショーケース2内の温度Taが目標冷却温度以下まで冷却されることを確実に回避できる。
【0064】
なお、停止中に発揮される冷却能力は適度に冷却負荷に近い値、例えば冷却負荷の80〜100%程度の値としておくと、停止時間が長くなり、より運転停止頻度を少なくできる。従って、冷凍空調装置の運転条件、外気温度や蒸発温度、圧縮機3回転数などから冷却負荷を予測し、その負荷に応じて停止中に要求される冷却能力を定めて、この冷却能力を実現する冷媒流量から停止中の開度を決定してもよい。
【0065】
このように、蒸発器9の停止時の流動抵抗は、蒸発器9に設定された所定能力を実現する冷媒流量よりも少ない冷媒流量を流しうる流動抵抗としたことにより、停止中のショーケース2内の温度上昇を緩やかな上昇として、蒸発器の運転停止の切換えを少なくでき、安定した冷凍サイクルを運転できる。
【0066】
また、停止中のショーケース2内温度Taの変化によって、停止時の開度を変更してもよい。例えば、停止中のショーケース2内温度Taが低下する場合は、明らかに能力が冷却負荷よりも大きいので、停止時の開度を小さく設定する。また停止中のショーケース2内の温度Taが上昇している場合、温度上昇の勾配からショーケース2が停止から運転開始となる時間が予測できる。従って、停止時間間隔が予測できるので、この時間間隔を所定値と比較し、所定値より短い場合は、停止時間を長引かせるため、停止時の開度を大きく変更する制御を実施し、所定値より長い場合は、停止時間を短くするため、停止時の開度を小さく変更する制御を実施する。このような制御を行うことで、ショーケース2の停止時間を所定値にすることができる。なお、所定値は、ショーケース2運転開始による運転不安定を抑制できる時間間隔とすることから、5分以上にすることが望ましい。
【0067】
以上のように、この実施の形態では蒸発器9停止時に設定する所定流動抵抗を運転状況に応じて適切な冷却能力が得られるような流動抵抗とすることで、蒸発器9の運転停止の切換えを少なくでき、安定した冷凍サイクルを運転でき、運転効率の向上を図ることができる。
図14では、停止時の開度をゼロでない開度とすると共に、蒸発器9の停止過程で、電子膨張弁8の停止前の開度から停止時の所定開度に向けて段階的に変化または直線的に変化させて効果を得ているが、どちらか一方を実現するだけでもある程度の効果を奏する。
【0068】
実施の形態1、実施の形態2において、蒸発器9出口の過熱度SHの制御を電子膨張弁8の開度で流動抵抗を制御して行っているが、他の減圧手段を用いて流動抵抗を制御してもよい。例えば短い時間間隔で開閉を繰り返し、開である時間の比率で流量や減圧量を制御する弁を用いてもよいし、複数の固定開度の弁を並列に配置し、開閉する弁の数を制御することで流量や減圧量を制御してもよい。またキャピラリーチューブなどの減圧手段を並列あるいは直列に設置して、減圧幅の調整を実施するなどの構造をとってもよい。
【0069】
また、冷凍空調装置の制御方法として、複数の蒸発器を圧縮機に並列に接続して成る冷凍サイクルを運転する際、複数の前記蒸発器毎に個別に目標冷却温度を設定する目標温度設定ステップ(図4、ステップ1)と、複数の蒸発器のうちでそれぞれの冷却対象の温度がその目標冷却温度範囲内になるように蒸発器を運転停止する蒸発器運転停止ステップ(図4、ステップ4〜ステップ7)と、前記蒸発器運転停止ステップで停止するときに前記蒸発器に流す冷媒流量を段階的に減少させる冷媒流量減少ステップ(図13のTP)と、前記目標蒸発温度または目標吸入圧力を実現しうる容量で圧縮機を運転制御する圧縮機容量制御運転ステップ(図5、ステップ12、ステップ13)と、を備え、前記冷媒流量減少ステップを行っている間に前記圧縮機容量制御運転ステップを少なくとも1回行うようにしたことにより、停止時の低圧の引き込み及び運転時の低圧上昇を極力防止して、安定した冷凍サイクルを運転でき、運転効率の向上及び冷却能力の安定化を図ることができる。
【0070】
実施の形態3.
以下、この発明の実施の形態3による冷凍空調装置について説明する。この実施の形態における装置の構成及び電子膨張弁8の開度制御方法、ショーケース2の運転については、図1及び図4に示す実施の形態1と同様であり、ここではその説明を省略する。また圧縮機3の制御に関しても基本的には図5と同様であり、容量可変である圧縮機3を容量制御している。ここでは1つのショーケース2における冷却負荷の変動ではなく、冷凍装置全体として例えば店舗開店、閉店切換時などのように冷却負荷の急変が発生した場合に、これを検知して効率が低下しないように運転制御するものである。ここでも、ショーケース2の運転停止とは蒸発器9の運転停止と同様の動作を意味する。ショーケース2の運転時にはショーケース2を冷却空間として使用し、蒸発器9で冷却を行う場合である。他方、ショーケース2の停止時にはショーケース2を冷却空間として使用しているが、蒸発器9で冷却を行っていない場合である。
【0071】
ショーケース2が設置されることが多い店舗では、通常は開店時間と閉店時間が決められており、閉店時間帯では、ショーケース2の冷却負荷を減少させて消費電力を低減させるため、ショーケース2にナイトカバーを設置して外部侵入熱量を減少させる、あるいは照明を消して発熱量を低減するなどの運転がなされる場合が多い。開店・閉店で複数のショーケース2に対して同時にこのような運転がなされると、ショーケース2の冷却負荷は、開店時間帯と閉店時間帯で大きく異なる。例えば、閉店時間帯の冷却負荷は開店時間帯の半分程度となる。
【0072】
開店から閉店に切換わると、上記のように冷却負荷が急減するため、ショーケース2内温度は低くなりやすく、実施の形態1にて記述した目標蒸発温度の基準値ETm0を上昇させる制御(図5のステップ14)を実施して、圧縮機3の容量を負荷に対応させる運転が行われる。また閉店から開店に切換わると冷却負荷が急増するため、ショーケース2内温度は高くなりやすく、目標蒸発温度の基準値ETm0を低下させる制御(図5のステップ14)を実施して、同様に圧縮機3の容量を負荷に対応させる運転が行われる。
【0073】
しかし、実施の形態1における目標蒸発温度の基準値ETm0の変更は、ある一定時間の庫内温度変動を見ないと、負荷に対する圧縮機3容量の過不足を適切に判断できないことから、実施の形態1においては、例えば30分間隔でETm0を0.5℃変化させる制御を実施している。しかし、開店・閉店の切換時のような負荷急変時には、目標蒸発温度の基準値ETm0を最大で7〜8℃変化させる必要が出てくる。従って実施の形態1における容量制御を実施した場合、ETm0を適切な値に変化させるには7〜8時間を要し、この時間の間は目標蒸発温度の基準値ETm0が負荷に対して適切な値になっていない運転となる。
【0074】
従って、開店から閉店に切換えた場合などの負荷急減時には、負荷に対して目標蒸発温度の基準値ETm0が低い値となり、冷却能力過剰となって、運転効率が低下するとともに、各ショーケース2の運転時間が短くなり、ショーケース2の運転停止の切換えが頻繁になる。このため、ショーケース2停止時の低圧の引き込みが多くなり、さらに運転効率の低下が発生する。逆に、閉店から開店に切換えた場合などの負荷急増時には、負荷に対して目標蒸発温度の基準値ETm0が高い値となり、冷却能力不足となる。従ってショーケース2内の温度Taが高くなる時間が長くなり、冷却対象品の品質に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0075】
そこで、この実施の形態ではショーケース2の運転状況などから負荷急変時の状況を検知し、実施の形態1に述べたショーケース2内温度Taによる目標蒸発温度の基準値ETm0の変更制御以外にETm0を変更する制御を行う。
【0076】
以下、負荷急減時の運転状況について、図15に基づいて説明する。図15は例えば2台のショーケース2a、2bを有する冷凍装置において、ショーケース2a、2bの時間に対する運転停止(ON/OFF)の様子を示すグラフであり、時間TSは店舗が閉店するなどして負荷が急減した時点を示す。負荷急減時には、前述したように冷却能力過剰となるので、2つのショーケース2a、2bの運転時間が短くなり、運転停止が頻繁になる。実施の形態1、2の圧縮機3の容量制御、電子膨張弁8の開度制御で、冷却能力が過剰となることを回避し、ショーケース2の運転時間が一定時間以上になるように制御しているにもかかわらず、ショーケース2の運転時間が短くなっているということは、それまでの運転負荷とは異なり、負荷急減して低負荷状態になったと判別できる。
【0077】
図16はこの実施の形態に係る計測制御装置17を示すブロック図である。図において、図3と同一符号は同一、または相当部分を示す。さらに、この実施の形態では、ショーケース2の運転開始時間及び停止時間を記憶する運転停止時間記憶手段36を設けると共に、及び運転停止となった時のショーケース2内温度を記憶するショーケース内温度記憶手段37を設ける。そして、運転停止時間記憶手段36とショーケース内温度記憶手段37に記憶した情報をコンデンシングユニット1の計測制御装置16に送信する。
また、図17はこの実施の形態に係る計測制御装置16を示すブロック図である。図において、図2と同一符号は同一、または相当部分を示す。さらに、この実施の形態では、運転制御変更手段23と、負荷急減または急増を判別する負荷判別手段24を設ける。
図18はこの処理工程を示すフローチャートである。ステップ31で全ショーケース2の運転停止状況を把握する。例えば、ショーケース2a、2b毎のそれぞれの運転時間及び停止時間を、ショーケ―ス2毎に設けられている計測制御装置17の運転停止時間記憶手段36に記憶しておく。この情報はコンデンシングユニット1の計測制御装置16に送信され、負荷判別手段24で所定時間以内、例えば時間T1と時間T2の間で全てのショーケース2がショーケース2内温度Taの低下により停止となったかどうかを判別する(ステップ32)。全てのショーケース2が停止となった場合に、負荷急減となって低負荷状態になったと判別する。
【0078】
例えば、図15では時間T1と時間T2の間で全てのショーケース2a、2bが*印の時間で停止しており、これによって負荷急減による低負荷状態であると判別する。ステップ32における所定時間としては、各ショーケース2a、2bの運転時間が10分以上になるように電子膨張弁8などで制御していると想定すると、それと同じ時間か短い時間が適当になり、例えば10分程度が適当となる。
【0079】
ステップ32で負荷急減と判別された場合には、ステップ33で目標蒸発温度の基準値ETm0を高く変更する。これは実際には図17に示す運転制御変更手段23で行う。変更幅としては、大きければ大きいほど、負荷急減に対する応答は良くなるが、余り大きく変更すると、ETm0が負荷に対して高すぎとなり、冷却能力不足となる場合も発生するので、ショーケース2内温度Taによる目標蒸発温度の基準値ETm0の変更幅よりも若干大きい程度とする。例えばショーケース2内温度Taによる目標蒸発温度の基準値ETm0の変更幅が0.5℃と設定されている場合は、負荷急減時のETm0の変更幅は1℃と設定する。このように設定すると、ETm0が冷却負荷に対して高すぎとなり、冷却能力不足となっても、通常のショーケース2内温度Taによる目標蒸発温度の基準値ETm0の変更によって比較的短時間に補正可能となる。
運転制御変更手段23で目標蒸発温度を変更後、圧縮機容量制御手段21で圧縮機3の容量を制御する。
【0080】
以上のように、負荷急減によって低負荷状態となった時に、ショーケース2の運転停止状況から負荷急減と判別し、目標蒸発温度の基準値ETm0を高く変更する制御を行うことで、冷却能力過剰となることを防止し、運転効率の低下を抑制できる。これに加えて実施の形態2で説明したように各ショーケース2の運転停止を適度に調節すれば、ショーケース2停止時の低圧の引き込みを回避でき、効率のよい冷凍空調装置が得られる。
即ち、負荷判別手段24によって、蒸発器9の運転状況または冷却対象の温度に基いて蒸発器9の冷却負荷が低負荷状態であることを判別し、低負荷状態の時に運転制御変更手段23で冷却負荷に対応した運転制御を行うことで、蒸発器の運転停止の切換えを少なくでき、停止時の低圧の引き込み及び運転時の低圧上昇を極力防止して、安定した冷凍サイクルを運転でき、運転効率の向上及び冷却能力の安定化を図ることができる。さらに、負荷判別手段24では、接続された蒸発器9の全てが、例えば10分程度の所定時間内に少なくとも一度停止状態となった場合に、低負荷状態と判別することで、容易に低負荷状態であるという判別を行うことができる。
【0081】
なお、負荷急減を判別する方法として、ショーケース2の停止状態で判別する以外の方法を用いることもできる。負荷急減時には、図15のAに示すようにショーケース2の運転時間が短くなるので、運転時間が所定値より短くなった段階で負荷急減と判断してもよく、例えば全ショーケース2の運転時間が所定値である10分間より短くなれば負荷急減による低負荷状態と判別する。
また、それまでの全ショーケース2の運転時間を記憶しておき、運転時間が記憶された運転時間よりも短くなった場合に負荷急減と判別してもよい。例えば、全ショーケース2の運転時間の平均値を記憶しておき、運転時間の平均値が、記憶値の1/2以下となった場合に負荷急減と判別する。
【0082】
即ち、負荷判別手段24によって、接続された蒸発器9の全てにおける蒸発器9の連続して運転する時間が例えば10分程度の所定時間より短くなった場合に、低負荷状態と判別することで、容易に低負荷状態であるという判別を行うことができる。
【0083】
また、負荷急減と判別する別の方法として、負荷急減時には、停止時のショーケース2内の温度上昇が緩やかになり、図15のBで示すように連続停止時間が長くなるので、連続停止時間が所定値より長くなった段階に負荷急減と判別してもよい。例えば全ショーケース2の停止時間が所定値、例えば5分間より長くなれば負荷急減による低負荷状態と判別する。
また、それまでのショーケース2の停止時間を記憶しておき、全ショーケース2の停止時間が記憶された停止時間よりも長くなった場合に負荷急減と判別してもよい。例えば、全ショーケース2の停止時間の平均値を記憶しておき、停止時間の平均値が、記憶値の2倍以上となった場合に負荷急減と判別する。
【0084】
即ち、負荷判別手段24によって、接続された蒸発器9の全てにおける蒸発器9の連続して停止する時間が例えば5分程度の所定時間より長くなった場合に、低負荷状態と判別することで、容易に低負荷状態であるという判別を行うことができる。
【0085】
次に、負荷急増時の制御方法について図19、図20に基づいて説明する。図19は時間に対するショーケース2内温度Taを示すグラフであり、図20は負荷急増時の制御方法における処理工程を示すフローチャートである。図19において、実線は負荷急増時の温度変化を示し、一点鎖線はデフロスト後の冷却運転での温度変化を示し、破線はショーケース2運転開始時の温度変化を示す。負荷急増時には、前述したように冷却能力不足となり、実線で示すように負荷急増タイミングから各ショーケース2内の温度Taが高くなる。そこで、負荷判別手段24では、ショーケース2内温度Taが所定値より高い温度になった場合に、負荷急増と判別する。所定値としては、例えば、ショーケース2運転開始時の温度である目標冷却温度Tm+温度ディファレンシャルΔTdiffとする。
【0086】
ただし、単純に所定値よりショーケース2内温度が高い場合とすると、誤検知を行う可能性がある。例えば、図19の破線で示したようにショーケース2運転開始時から時間がたっていない場合などで、一時的に負荷が増えた場合には、ショーケース2内の温度が上昇する可能性がある。また、一点鎖線で示したようにショーケース2のデフロスト後に冷却運転開始してから数10分はショーケース2内の温度は前述の所定値Tm+ΔTdiffより高い場合が存在する。
【0087】
そこで、これらの誤検知を避けるため、負荷急増判定条件として、一定時間間隔で複数回ショーケース2内の温度測定し、いずれの場合もショーケース2内の温度が所定値より高くなっていて、かつ、ショーケース2内の温度低下速度が一定値以下である場合に負荷急増と判定する。この判定状況を図示すると図19に示すように、負荷急増時の温度変化を、デフロスト後の冷却運転とショーケース2運転開始後の一時的温度上昇から区別できる。ショーケース2運転時間開始後の一時的な温度上昇については、破線で示されるように時間経過すると温度低下するので、一定時間間隔で複数回温度検知をすることで判定条件に該当しなくなる。またデフロスト後の冷却運転の場合には、スムーズに温度が低下してくると考えられる。従って、一点鎖線で示されるように運転中の温度低下速度が大きいので、判定条件に該当しなくなる。ここで、複数のショーケース2のいずれかが実線のような温度変化をしており、他のショーケース2ではたまたまデフロスト後の冷却運転に入っていたとしても、負荷急増であると判断する必要がある。
【0088】
即ち、図20で示す処理工程のように、ステップ41とステップ42で所定の時間間隔で全ショーケース2内の温度Taを把握し、ステップ43でTaが連続して所定温度、例えばTm+Tdiffより高く、かつTa低下速度が所定値以下のショーケース2が存在した場合に負荷急増と判断する。このステップ43の判断で、ショーケース2運転時間開始後の一時的な温度上昇の場合には、Taが連続して所定温度より高くないのでステップ41の直後に戻る。また、デフロスト後の冷却運転の場合には、Ta低下速度が所定値よりも大きいのでやはりステップ41の直後に戻る。また、複数のショーケース2のうちで、Ta低下速度が所定値以下のショーケース2が存在する場合には、運転制御変更手段23によって目標蒸発温度の基準値ETm0を低く変更する(ステップ44)。
【0089】
ステップ43における判定の所定値としては、所定時間間隔については、判定を短時間に行うと負荷急増にも迅速に対応できて望ましいが、余り短時間にすると、一時的なショーケース2内温度Ta上昇による誤検知が発生し、好ましくない。そこで、一時的なショーケース2内温度Taの上昇が排除できる時間に設定し、ショーケース2の熱容量などから冷却能力が行き渡るのに要する時間まで考慮すると、5分〜10分程度に設定することが望ましい。
また、温度低下速度の判定値としては、所定時間間隔として5分〜10分に設定すると、この間に1℃低下することを判定値とする。即ち、Ta低下速度が1℃/10分よりも小さい場合、例えば10分の間に0.5℃程度しか低下していなかったり温度低下が見られない場合には、負荷急増と判断してステップ44の処理を行う。デフロスト後の冷却運転時には、ショーケース2内の温度Taは4℃/10分程度の速度で温度低下するので、これにより、デフロスト後の冷却運転は判定条件に該当しなくなる。
なお、実際に、負荷急増時のショーケース2内の温度は、冷却目標温度Tmから3℃〜4℃高温の状態となる。従って1℃/10分の速度で温度低下すれば、30分程度の短時間で高温状態から回避できることになるので、この条件に合致する場合は、負荷急増と判断して冷却能力を増加させる必要がない。従って、この場合にはステップ43の判断における所定値を1℃/10分程度に設定することで、高温状態から回避するのに50分程度以上の長時間かかる場合に冷却能力を増加できる。
【0090】
ステップ44で運転制御変更手段23によって目標蒸発温度の基準値ETm0を低く変更する時の変更幅としては、大きければ大きいほど、負荷急増に対する応答は良くなるが、余り大きく変更すると、ETm0が負荷に対して低すぎとなり、冷却能力過剰となる場合も発生する。このため、ショーケース2内温度Taによる目標蒸発温度の基準値ETm0の変更幅よりも若干大きい程度とし、例えばショーケース2内温度Taによる目標蒸発温度の基準値ETm0の変更幅が0.5℃と設定されている場合は、負荷急増時のETm0の変更幅を1℃〜2℃と設定する。このような設定とすると、ステップ44でETm0が負荷に対して低すぎとなって冷却能力過剰となっても、図5のステップ14に示した通常のショーケース2内温度Taによる目標蒸発温度の基準値ETm0の変更によって比較的短時間に補正可能となる。
【0091】
以上のように、負荷急増によって高負荷状態となった時に、ショーケース2内温度Taの状況から負荷急増と判別し、目標蒸発温度の基準値ETm0を低く変更する制御を行うことで、冷却能力不足となることを防止し、冷却対象の温度上昇を抑制することで、信頼性の高い冷凍空調装置が得られる。
即ち、負荷判別手段24によって、蒸発器9の運転状況または冷却対象の温度に基いて蒸発器9の冷却負荷が高負荷状態であることを判別し、高負荷状態の時に運転制御変更手段23で冷却負荷に対応した運転制御を行うことで、冷却能力不足となることを防止でき、また冷却対象の温度上昇を抑制でき、信頼性の高い冷凍空調装置が得られる。さらに、負荷判別手段24では、少なくとも1つの蒸発器9における冷却対象の温度Taがその蒸発器9の冷却目標温度Tmから決定される所定温度より所定時間の間、高温になると共に、温度低下速度が所定値以下であった場合に、高負荷状態と判別する。この判別方法により確実に負荷の急増による温度変化や運転状況の変化を、その他の要因による温度変化や運転状況の変化から判別できる。確実に負荷急増を判別し、この判別結果から冷却負荷に対応して運転することで、冷却能力不足の防止や冷却対象の温度上昇の抑制を実施でき、信頼性の高い冷凍空調装置が得られる。
【0092】
なお、負荷急増と判断する方法として、ショーケース2内温度Taの状況から判断する以外の方法を用いることもできる。負荷急増時には、ショーケース2の運転時間が長くなるので、運転時間が所定値より長くなった段階で負荷急増と判断してもよく、例えば全ショーケース2の運転時間が所定値である10分間より長くなれば負荷急増と判断する。またそれまでのショーケース2の運転時間を記憶しておき、運転時間が記憶された運転時間よりも長くなった場合に負荷急増と判断してもよい。例えば全ショーケース2の運転時間の平均値を記憶しておき、現在の運転時間の平均値が、記憶値の2倍以上となった場合に負荷急増と判断する。
【0093】
また、負荷急増と判断する別の方法として、負荷急増時には、停止時のショーケース2内の温度上昇が早くなり、停止時間が短くなるので、停止時間が所定値より短くなった段階で負荷急増と判断してもよく、例えば全ショーケース2の停止時間が所定値、例えば3分間より短くなれば負荷急増と判断する。またそれまでのショーケース2の停止時間を記憶しておき、停止時間が記憶された停止時間よりも短くなった場合に負荷急増と判断してもよい。例えば全ショーケース2の停止時間の平均値を記憶しておき、現在の停止時間の平均値が、記憶値の1/2倍以下となった場合に負荷急増と判断する。
【0094】
また、店舗のように、負荷急減、急増が開店・閉店の切換時しか無いことが予めわかっている場合には、それまでの運転情報をもとに、負荷急減または負荷急増した時、その状況に即した運転を行うことができる。例えば、開店から閉店に切換わり、負荷急減した場合には、前日の閉店時間帯での目標蒸発温度の基準値ETm0を記憶しておき、負荷急減と判断された場合に、目標蒸発温度の基準値ETm0の値を記憶された値に変更する。逆に、閉店から開店からに切換わり、負荷急増した場合には、前日の開店時間帯での目標蒸発温度の基準値ETm0を記憶しておき、負荷急増と判断された場合に、目標蒸発温度の基準値ETm0の値を記憶された値に変更する。このように前日の情報を用いると、負荷急減、急増があった場合に目標蒸発温度の基準値ETm0を即座に適切な値に変更できるので、より冷却能力過剰、あるいは不足である状態を回避しやすくなり、高効率かつ高信頼性の運転を実現できる。
【0095】
なお、店舗のように、開店・閉店の時間が決まっている場合には、予めその時間を設定しておき、その時間になった段階で、負荷急減・急増時の対応をとることもできる。この場合、対応が迅速にできるという効果がある一方で、事情により開店・閉店の時間が変更されたときに、適切に対応できないという問題がある。上記のように、ショーケース2の運転状態などから判断する方法をとると、開店・閉店の時間が変更されたときであっても適切に対応することができるので、より信頼性の高い運転を行うことができる。
【0096】
ここで、圧縮機容量制御手段21で冷凍サイクルの目標とする状態を定めこれを実現するように圧縮機の運転容量を決定して運転しているのであるが、目標とする冷凍サイクルの状態とは、冷凍サイクルの冷媒の状態を表し、ここで用いた冷媒の蒸発温度の他、例えば高圧や低圧などの圧力値、冷媒の流量や流速や液量など、冷凍サイクル内を循環している冷媒の状態を意味している。ステップ33、ステップ44において、運転制御変更手段23で冷凍サイクルの運転制御を変更する際、ここでは目標蒸発温度を変更するようにしたが、他の冷凍サイクルの状態を変更してもよい。低負荷状態と判別された場合に圧縮機の容量を減少し、高負荷状態と判別された場合に圧縮機の容量を増加するように制御されればよい。
例えば圧縮機容量制御手段21で目標低圧を定めこれを実現するように圧縮機の運転容量を決定して運転している場合には、負荷判別手段24で低負荷状態であると判別された時に、運転制御変更手段23は目標低圧を高く設定すればよい。逆に、高負荷状態と判別された時には目標低圧を低く設定する。
このように、負荷急減または急増時に他の冷凍サイクルの状態に基づいて運転制御しても、冷却能力不足となることを防止し、冷却対象の温度上昇を抑制することで、信頼性の高い冷凍空調装置が得られる。
【0097】
また、冷凍空調装置の制御方法として、複数の蒸発器を圧縮機に並列に接続して成る冷凍サイクルを運転する際、複数の前記蒸発器毎に個別に目標冷却温度を設定する目標温度設定ステップ(図4、ステップ1)と、複数の蒸発器のうちでそれぞれの冷却対象の温度がその目標冷却温度範囲内になるように蒸発器を運転停止する蒸発器運転停止ステップ(図4、ステップ4〜ステップ7)と、前記蒸発器運転停止ステップの運転停止状況から前記蒸発器の冷却負荷が高負荷状態であるか低負荷状態であるかを判別する負荷判別ステップ(図18、ステップ32)と、前記目標蒸発温度または目標吸入圧力を実現しうる容量で圧縮機を運転制御する圧縮機容量制御運転ステップ(図5、ステップ12、ステップ13)と、前記負荷判別ステップの判別結果に応じて前記圧縮機容量制御運転ステップにおける前記圧縮機の運転制御を変更する圧縮機運転制御変更ステップ(図18、ステップ33)と、を備えたことにより、冷却負荷に対応して運転できることで、低負荷状態の時には、蒸発器の運転停止の切換えを少なくでき、停止時の低圧の引き込み及び運転時の低圧上昇を極力防止して、安定した冷凍サイクルを運転でき、運転効率の向上及び冷却能力の安定化を図ることができる。また、高負荷状態の時には、冷却能力不足を防止でき、冷却対象の温度上昇を抑制することで、信頼性を向上できる。
【0098】
実施の形態1〜実施の形態3において、計測制御装置16、17はそれぞれ例えばマイクロコンピューターで構成し、これに含まれる各手段の動作は、ソフトウエアプログラムによって行なっている。ここでは、ショーケース2の計測制御装置17は各ショーケース2のそれぞれに設けられているが、1台の計測制御装置17に複数台制御する機能を持たせてもよい。また、複数の計測制御装置17を統合するマスターコントローラを設けてもよい。各ショーケース2の目標冷却温度Tmなどショーケース2の運転に際して外部入力が必要な情報をマスターコントローラに一括して入力し、その情報を各ショーケース2の計測制御装置17に伝送する構成とすることで、外部入力を簡便に行うことができる。また、各ショーケース2の運転状況を一括管理できるようにすることで、運転状況のモニタや不具合発生時の確認を容易に実施でき、信頼性の高い冷凍空調装置が得られる。
【0099】
また、実施の形態1〜実施の形態3において、圧縮機の運転容量はインバータにより回転数制御を行うことで実施するとしたが、圧縮機を複数台搭載し、その運転台数を増減させることで運転容量を制御してもよい。また、アンロード機能を備えた圧縮機を搭載し、アンロード運転の実施有無により容量制御を実施してもよい。また、インバータ駆動の圧縮機と一定速圧縮機を複数台組み合わせ、圧縮機の回転数と運転台数を共に制御し運転容量を制御してもよい。
【0100】
また、実施の形態1〜実施の形態3において、蒸発器9による冷却空間を例えばショーケース2とし、ショーケース2の冷却温度域は上記の形態に限るものではなく、例えば冷凍食品、アイスクリーム用など冷却温度が−20℃前後のいわゆる冷凍域のショーケースに適用してもよい。特にショーケース2のように複数の様々な目標冷却温度が要求される冷凍装置において、効率の向上及び信頼性の向上を図ることができる。
また、冷却対象はショーケース2内の商品に限るものではなく冷蔵倉庫などに適用してもよいし、水やブラインなどを介して間接的に冷却するシステムであってもよい。さらに、一般の空調域にも用いることもできる。例えば機械設備と人が存在する空間を一つの装置で冷却する場合で機械設備の目標冷却温度が35℃、人が存在する空間の目標冷却温度が27℃であるような場合にも適用可能である。
いずれの場合も蒸発器9の運転停止の切換えを少なくでき、停止時の低圧の引き込み及び運転時の低圧上昇を極力防止して、安定した冷凍サイクルを運転でき、運転効率の向上及び冷却能力の安定化を図ることができる。
【0101】
実施の形態1〜実施の形態3において、冷凍空調装置に用いる冷媒は特に限定されるものではなく、R−22などのHCFC冷媒や、R−134aやR−404AなどのHFC系の冷媒や混合冷媒、またアンモニア、CO2、炭化水素などの自然冷媒やこれらの混合冷媒など各冷媒に適用可能である。また冷凍機油についても鉱油、エステル油、HAB油など各種の油を用いた場合に適用可能である。
なお上記では、冷媒として例えばR―22を用いた場合の蒸発温度や蒸発器9の出口過熱度の温度を説明したが、他の冷媒を用いる場合には、その冷媒で構成される冷凍サイクルのPH線図に応じて、各所定値を設定すればよい。
また、蒸発器9の停止時に低圧引き込みが生じると温度が冷え過ぎとなって冷凍サイクルを循環している冷凍機油が圧縮機3に戻りにくくなる。これに対し低圧引き込みを低減することで、冷凍機油が圧縮機3に戻り易くなり、冷凍サイクルの信頼性をさらに高めることができる。特に、CO2を冷媒として用いる場合にも冷凍機油を圧縮機3に戻り易くできる。
また、実施の形態1〜実施の形態3のいずれにおいても、蒸発器の運転停止の切換えの回数を低減できる効果があったことから、冷凍空調装置の各部材の寿命を長くできる。
【0102】
以上のように、この発明によれば、ショーケース運転停止時あるいは、店舗の店舗の開店閉店切換時間における負荷急変時においても、膨張弁開度を負荷に見合った開度で安定的に変化させるとともに、負荷急変の運転状態を検知し、負荷急変に対応した圧縮機容量制御を行うことで、冷凍サイクルの状態変化を安定的に行い、冷凍サイクルの低圧の引き込みによる効率低下、あるいは低圧上昇による冷却能力不足を回避し高効率かつ高信頼性の運転を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】この発明の実施の形態1による冷凍装置を示す冷媒回路図である。
【図2】実施の形態1に係る計測制御装置16の構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1に係る計測制御装置17の構成を示すブロック図である。
【図4】実施の形態1によるショーケースの運転制御方法を示すフローチャートである。
【図5】実施の形態1による圧縮機の運転制御方法を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態1によるショーケース運転開始時の電子膨張弁の開度制御方法を示すフローチャートである。
【図7】実施の形態1によるショーケース運転開始時の時間に対する電子膨張弁開度変化を示すグラフである。
【図8】実施の形態1に係わるショーケース運転開始時の時間に対するショーケース内温度変化を示すグラフである。
【図9】実施の形態1に係わるショーケース運転開始時の時間に対する別のショーケース内温度変化を示すグラフである。
【図10】実施の形態1によるショーケース運転開始時の時間に対する電子膨張弁開度変化及びショーケース内温度変化を示すグラフである。
【図11】実施の形態1に係る開度の補正制御方法を示すフローチャートである。
【図12】実施の形態1に係るショーケース運転開始時の時間に対する別の電子膨張弁開度変化を示すグラフである。
【図13】この発明の実施の形態2によるショーケース停止時の時間に対する電子膨張弁開度変化及び低圧変化を示すグラフである。
【図14】実施の形態2によるショーケース停止時の時間に対する別の電子膨張弁開度変化及びショーケース内温度変化を示すグラフである。
【図15】この発明の実施の形態3に係るショーケース運転停止の時間に対するタイミングを示すグラフである。
【図16】実施の形態3に係る計測制御装置17の構成を示すブロック図である。
【図17】実施の形態3に係る計測制御装置16の構成を示すブロック図である。
【図18】実施の形態3による負荷急減時の運転制御方法を示すフローチャートである。
【図19】実施の形態3に係る時間に対するショーケース内温度変化を示すグラフである。
【図20】実施の形態3による負荷急増時の運転制御方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0104】
1 コンデンシングユニット
2 ショーケース
3 圧縮機
4 凝縮器
5 液レシーバ
6 アキュムレータ
7 電磁弁
8 減圧手段
9 蒸発器
10 ファン
11 液管
12 ガス管
13 冷媒温度センサ
14 空気温度センサ
15 圧力センサ
16、17 計測制御装置
20 冷凍サイクル
21 圧縮機容量制御手段
22 ファン風量制御手段
23 運転制御変更手段
24 負荷判別手段
31 目標温度設定手段
32 蒸発器運転決定手段
33 ファン風量制御手段
34 流動抵抗制御手段
35 第二初期開度補正手段
36 運転停止時間記憶手段
37 ショーケース内温度記憶手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、複数の減圧手段、複数の蒸発器を接続して冷媒を循環させる冷凍サイクルと、前記蒸発器毎に冷却対象の目標冷却温度を個別に設定する目標温度設定手段と、前記冷却対象の温度と前記目標冷却温度に応じて前記蒸発器毎に運転停止を決定する蒸発器運転決定手段と、前記減圧手段の流動抵抗を変化させて前記蒸発器に流す冷媒流量を制御する流動抵抗制御手段と、を備え、前記流動抵抗制御手段は、前記蒸発器に対して前記蒸発器の運転開始時に、前記減圧手段に第一の初期流動抵抗を設定して所定時間運転した後に、前記第一の初期流動抵抗より大きい第二の初期流動抵抗を設定するようにしたことを特徴とする冷凍空調装置。
【請求項2】
前記第一の初期流動抵抗は、前記蒸発器の運転開始時に前記蒸発器で要求される所定の冷却能力より大きな能力を実現する冷媒流量を流しうる流動抵抗であることを特徴とする請求項1記載の冷凍空調装置。
【請求項3】
前記第二の初期流動抵抗を前記蒸発器の冷却負荷に応じて変更する第二初期流動抵抗補正手段を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の冷凍空調装置。
【請求項4】
前記第二初期流動抵抗補正手段は、前記蒸発器を運転開始して所定時間経過後の冷却対象温度が高いときに低いときよりも前記減圧手段の流動抵抗を小さくするように変更することを特徴とする請求項3記載の冷凍空調装置。
【請求項5】
前記第二初期冷媒流量補正手段は、前記蒸発器の運転開始前の停止時間が長いときに短いときよりも前記減圧手段の流動抵抗を大きくするように変更することを特徴とする請求項3記載の冷凍空調装置。
【請求項6】
圧縮機、凝縮器、複数の減圧手段、複数の蒸発器を接続して冷媒を循環させる冷凍サイクルと、前記蒸発器毎に冷却対象の目標冷却温度を個別に設定する目標温度設定手段と、前記冷却対象の温度と前記目標冷却温度に応じて前記蒸発器毎に運転停止を決定する蒸発器運転決定手段と、前記減圧手段の流動抵抗を変化させて前記蒸発器に流す冷媒流量を制御する流動抵抗制御手段と、を備え、前記流動抵抗制御手段は、前記蒸発器の運転から停止に切換える過程で、停止前の流動抵抗から停止時の所定流動抵抗に向けて段階的に変化させることを特徴とする冷凍空調装置。
【請求項7】
運転されている前記蒸発器の個別の目標冷却温度に基づいて前記冷凍サイクルの目標とする状態を定めこれを実現するように容量可変である前記圧縮機の運転容量を決定して運転する圧縮機容量制御手段を備え、前記流動抵抗制御手段は、前記蒸発器の運転から停止に切換える過程の間に前記圧縮機の容量制御が少なくとも1回実施されるように前記減圧手段の流動抵抗を変化させることを特徴とする請求項6記載の冷凍空調装置。
【請求項8】
圧縮機、凝縮器、複数の減圧手段、複数の蒸発器を接続して冷媒を循環させる冷凍サイクルと、前記蒸発器毎に冷却対象の目標冷却温度を個別に設定する目標温度設定手段と、前記冷却対象の温度と前記目標冷却温度に応じて前記蒸発器毎に運転停止を決定する蒸発器運転決定手段と、前記減圧手段の流動抵抗を変化させて前記蒸発器に流す冷媒流量を制御する流動抵抗制御手段と、を備え、前記流動抵抗制御手段は、前記蒸発器の停止時の冷媒流量をゼロにしないことを特徴とする冷凍空調装置。
【請求項9】
前記蒸発器の停止時における前記減圧手段の流動抵抗は、前記蒸発器に設定された所定能力を実現する冷媒流量よりも少ない冷媒流量を流しうる流動抵抗としたことを特徴とする請求項8記載の冷凍空調装置。
【請求項10】
圧縮機、凝縮器、複数の減圧手段、複数の蒸発器を接続して冷媒を循環させる冷凍サイクルと、前記蒸発器毎に冷却対象の目標冷却温度を個別に設定する目標温度設定手段と、前記冷却対象の温度と前記目標冷却温度に応じて前記蒸発器毎に運転停止を決定する蒸発器運転決定手段と、前記減圧手段の流動抵抗を変化させて前記蒸発器に流す冷媒流量を制御する流動抵抗制御手段と、前記蒸発器の運転状況または前記冷却対象の温度に基いて前記蒸発器の冷却負荷が高負荷状態であるか低負荷状態であるかを判別する負荷判別手段と、前記負荷判別手段の判別結果に応じて前記冷凍サイクルの運転制御を変更する運転制御変更手段と、を備えたことを特徴とする冷凍空調装置。
【請求項11】
運転されている前記蒸発器の個別の目標冷却温度に基づいて前記冷凍サイクルの目標とする状態を定めこれを実現するように容量可変である前記圧縮機の運転容量を決定して運転する圧縮機容量制御手段を備え、前記運転制御変更手段は、前記負荷判別手段で高負荷状態と判別された場合に前記圧縮機の容量を増加し、前記負荷判別手段で低負荷状態と判別された場合に前記圧縮機の容量を減少することを特徴とする請求項10記載の冷凍空調装置。
【請求項12】
前記圧縮機容量制御手段は前記冷凍サイクルの目標とする状態として目標低圧を設定すると共に、前記運転制御変更手段は、前記負荷判別手段で高負荷状態と判別された場合に前記目標低圧を低く設定し、前記負荷判別手段で低負荷状態と判別された場合に前記目標低圧を高く設定することを特徴とする請求項11記載の冷凍空調装置。
【請求項13】
前記負荷判別手段は、接続された前記蒸発器の全てが所定時間内に少なくとも一度停止状態となった場合に、低負荷状態と判別することを特徴とする請求項10乃至請求項12のいずれか1項に記載の冷凍空調装置。
【請求項14】
前記負荷判別手段は、接続された全ての前記蒸発器の連続する運転時間が所定時間より短くなった場合に、低負荷状態と判別することを特徴とする請求項10乃至請求項12のいずれか1項に記載の冷凍空調装置。
【請求項15】
前記負荷判別手段は、接続された全ての前記蒸発器の連続する停止時間が所定時間より長くなった場合に、低負荷状態と判別することを特徴とする請求項10乃至請求項12のいずれか1項に記載の冷凍空調装置。
【請求項16】
前記負荷判別手段は、少なくとも1つの蒸発器における前記冷却対象の温度がその蒸発器の前記冷却目標温度から決定される所定温度より所定時間の間、高温になると共に、温度低下速度が所定値以下であった場合に、高負荷状態と判別することを特徴とする請求項10乃至請求項14のいずれか1項に記載の冷凍空調装置。
【請求項17】
複数の蒸発器を圧縮機に並列に接続して成る冷凍サイクルを運転する際、複数の前記蒸発器毎に個別に目標冷却温度を設定する目標温度設定ステップと、複数の蒸発器のうちでそれぞれの冷却対象の温度がその目標冷却温度範囲内になるように蒸発器を運転・停止する蒸発器運転停止ステップと、前記蒸発器運転停止ステップで運転するときに前記蒸発器に予め設定された所定能力よりも大きな能力を実現しうるような第一初期流動抵抗を前記減圧手段に設定する第一初期運転ステップと、前記第一初期運転ステップを所定時間運転した後で前記第一初期流動抵抗よりも大きい第二初期流動抵抗を前記減圧手段に設定する第二初期運転ステップと、前記第二初期運転ステップで運転した後に前記蒸発器の出口冷媒状態が目標冷媒状態になるような流動抵抗を前記減圧手段に設定する過熱度制御ステップと、を備えたことを特徴とする冷凍空調装置の制御方法。
【請求項18】
複数の蒸発器を圧縮機に並列に接続して成る冷凍サイクルを運転する際、複数の前記蒸発器毎に個別に目標冷却温度を設定する目標温度設定ステップと、複数の蒸発器のうちでそれぞれの冷却対象の温度がその目標冷却温度範囲内になるように蒸発器を運転・停止する蒸発器運転停止ステップと、前記蒸発器運転停止ステップで停止するときに前記減圧手段に設定する流動抵抗を段階的に変化させる流動抵抗変更ステップと、前記目標蒸発温度または目標吸入圧力を実現しうる容量で圧縮機を運転制御する圧縮機容量制御運転ステップと、を備え、前記流動抵抗変更ステップを行っている間に前記圧縮機容量制御運転ステップを少なくとも1回行うようにしたことを特徴とする冷凍空調装置の制御方法。
【請求項19】
複数の蒸発器を圧縮機に並列に接続して成る冷凍サイクルを運転する際、複数の前記蒸発器毎に個別に目標冷却温度を設定する目標温度設定ステップと、複数の蒸発器のうちでそれぞれの冷却対象の温度がその目標冷却温度範囲内になるように蒸発器を運転・停止する蒸発器運転停止ステップと、前記蒸発器運転停止ステップの運転停止状況から前記蒸発器の冷却負荷が高負荷状態であるか低負荷状態であるかを判別する負荷判別ステップと、前記目標蒸発温度または目標吸入圧力を実現しうる容量で圧縮機を運転制御する圧縮機容量制御運転ステップと、前記負荷判別ステップの判別結果に応じて前記圧縮機容量制御運転ステップにおける前記圧縮機の運転制御を変更する圧縮機運転制御変更ステップと、を備えたことを特徴とする冷凍空調装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−105554(P2006−105554A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295628(P2004−295628)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000004422)日本建鐵株式会社 (152)