説明

冷凍装置

【課題】潤滑油を圧縮機の油溜まりから流体機械へ供給するための連通路への潤滑油の供給不足を速やか且つ確実に判定する。
【解決手段】圧縮機(20,60)の油溜まり(27,67)の潤滑油を流体機械(30,60)へ供給するための連通路(48,48a,48b)を備えた冷凍装置に、連通路(48,48a,48b)を流れる流体の温度を検出する流体温度検出部(56,56a,56b)と、圧縮機(20,60)の圧縮機構(24,64)によって圧縮された冷媒の温度を検出する冷媒温度検出部(57,57a,57b)と、流体温度検出部(56,56a,56b)で検出された流体の温度(Ta)と、冷媒温度検出部(57,57a,57b)で検出された冷媒の温度(Tb)との温度差(ΔT)に基づいて、油溜まり(27,67)から上記連通路(48,48a,48b)への潤滑油の供給不足を判定する判定部(58)とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機が冷媒回路に接続された冷凍装置に関し、特に圧縮機の潤滑油不足の対策に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1に開示されるように、圧縮機と膨張機(流体機械)とが接続され、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷媒回路を備えた冷凍装置が知られている。特許文献1の圧縮機は、圧縮機構から吐出された圧縮冷媒でケーシング内が満たされる、いわゆる高圧ドーム型に構成されている。この冷凍装置では、圧縮機の油溜まりに貯留された潤滑油が圧縮機構に供給され、該圧縮機構の摺動部を潤滑する。
【0003】
また、油溜まりの潤滑油は、給油用配管(連通路)を通じて膨張機にも供給され、膨張機構の摺動部を潤滑する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−185720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、圧縮機構から冷媒とともに吐出された潤滑油が熱交換器等の内壁などに付着して残留すると、油溜まりに戻される潤滑油の量が少なくなる。そうなると、連通路に供給される潤滑油の量が不足し、ケーシング内の冷媒が連通路を流れるようになるため、流体機械へ十分な量の潤滑油を供給できなくなってしまう。
【0006】
これに対して、連通路へ潤滑油が十分に供給されているか否かを把握するために、連通路に温度センサを設けることが考えられる。油溜まりの潤滑油は、ケーシング内の圧縮冷媒よりも温度が通常低いため、連通路に供給される潤滑油が少なくなり該連通路に冷媒が流れるようになると、温度センサで検出される温度は高くなる。この温度変化によって、連通路への潤滑油の供給不足を判定することができる。
【0007】
しかし、上述のように連通路を流れる流体(潤滑油又は冷媒)の温度変化をみる場合、温度変化が生じるまでは、連通路を流れている流体の種類を判別することができない。よって、連通路への潤滑油の供給不足を速やかに判定できない。
【0008】
しかも、油溜まりの潤滑油の温度は冷媒の温度に依存するため、例えば、潤滑油が連通路を流れているときに冷媒の温度が高くなると、潤滑油の温度も高くなる。そうなると、連通路に潤滑油が流れ続けているにも拘わらず、潤滑油の供給不足が発生したと過って判定されてしまう虞がある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、潤滑油を圧縮機の油溜まりから流体機械へ供給するための連通路への潤滑油の供給不足を速やか且つ確実に判定することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、冷凍装置を対象とし、圧縮機(20,60)と、冷媒を圧縮又は膨張する流体機械(30,60)とが接続され、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷媒回路(10)を備え、上記圧縮機(20,60)は、ケーシング(21,61)と、該ケーシング(21,61)内に配置され吸入した冷媒を圧縮して該ケーシング(21,61)内へ吐出する圧縮機構(24,64)と、該ケーシング(21,61)内に吐出された冷媒をケーシング(21,61)外の冷媒回路へ流出させる吐出管(26,66)と、上記ケーシング(21,61)の底部に形成され潤滑油が貯留される油溜まり(27,67)とを有し、上記油溜まり(27,67)の潤滑油を上記流体機械(30,60)に供給するための連通路(48,48a,48b)と、上記連通路(48,48a,48b)を流れる流体の温度を検出する流体温度検出部(56,56a,56b)と、上記圧縮機構(24)によって圧縮された冷媒の温度を検出する冷媒温度検出部(57,57a,57b)と、上記流体温度検出部(56,56a,56b)で検出された流体の温度(Ta)と、上記冷媒温度検出部(57,57a,57b)で検出された冷媒の温度(Tb)との温度差(ΔT)に基づいて、上記油溜まり(27)から上記連通路(48,48a,48b)への潤滑油の供給不足を判定する判定部(58)とを備えることを特徴とする。
【0011】
第1の発明では、油溜まり(27,67)の潤滑油が、連通路(48,48a,48b)を通じて流体機械(30,60)に供給される。これにより、流体機械(30,60)の摺動部が潤滑される。
【0012】
油溜まり(27,67)に十分な量の潤滑油が貯留されている場合、潤滑油は、連通路(48,48a,48b)を通じて流体機械(30,60)へ供給される。しかし、油溜まり(27)の潤滑油の量が少なくなりケーシング(21,61)内の冷媒が連通路(48,48a,48b)を流れるようになると、流体機械(30,60)へ十分な量の潤滑油が供給されなくなる。
【0013】
これに対して、第1の発明では、流体温度検出部(56,56a,56b)で検出された連通路(48,48a,48b)を流れる流体の温度(Ta)と、冷媒温度検出部(57,57a,57b)で検出された圧縮機構(24)によって圧縮された冷媒の温度(Tb)との温度差(ΔT)に基づいて、油溜まり(27,67)から連通路(48,48a,48b)への潤滑油の供給不足を判定している。
【0014】
油溜まり(27)の潤滑油の量が多く潤滑油が連通路(48,48a,48b)を流れる場合、流体温度検出部(56,56a,56b)では潤滑油の温度が検出される。一般的に、油溜まり(27,67)の潤滑油の温度は、冷媒温度検出部(57,57a,57b)で検出される冷媒の温度(Tb)よりも低くなるため、上記温度差(ΔT)は比較的大きくなる。一方、油溜まり(27,67)の潤滑油の量が少なく冷媒が連通路(48,48a,48b)を流れる場合、流体温度検出部(56,56a,56b)では冷媒の温度が検出される。この冷媒の温度は、圧縮機構(24,64)で圧縮された冷媒の温度(つまり、冷媒温度検出部(57,57a,57b)で検出される冷媒の温度(Tb))と概ね同等になるため、上記温度差(ΔT)は比較的小さくなる。判定部(58)は、このような温度差(ΔT)の大小に基づき、連通路(48,48a,48b)に供給される潤滑油の量が不足していると判定する。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、上記判定部(58)は、上記流体温度検出部(56,56a,56b)で検出された流体の温度(Ta)と、上記冷媒温度検出部(57,57a,57b)で検出された冷媒の温度(Tb)との温度差(ΔT)が所定値(ΔTs)以下又は0になると、上記油溜まり(27)から上記連通路(48,48a,48b)への潤滑油の供給が不足していると判定することを特徴とする。
【0016】
第2の発明では、判定部(58)は、上記温度差(ΔT)が所定値(ΔTs)上回っている、又は0でない場合、連通路(48,48a,48b)に供給される潤滑油の量が十分であると判定する。一方、判定部(58)は、上記温度差(ΔT)が所定値(ΔTs)以下又は0になると、連通路(48,48a,48b)に供給される潤滑油の量が不足していると判定する。
【0017】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記流体機械は、冷媒を膨張させる膨張機(30)で構成されいることを特徴とする。
【0018】
第3の発明では、油溜まり(27,67)の潤滑油は、連通路(48,48b)を通じて膨張機(30)へ供給される。膨張機(30)へ供給された潤滑油は、該膨張機(30)の摺動部を潤滑する。
【0019】
第4の発明は、第1又は第2の発明において、上記流体機械は、低段側となる上記圧縮機(20)で圧縮された冷媒を吸入して圧縮する高段側圧縮機(60)で構成されていることを特徴とする。
【0020】
第4の発明では、油溜まり(27)の潤滑油は、連通路(48a)を通じて高段側圧縮機(60)へ供給される。高段側圧縮機(60)へ供給された潤滑油は、該高段側圧縮機(60)の摺動部を潤滑する。
【発明の効果】
【0021】
第1の発明によれば、流体温度検出部(56,56a,56b)で検出された温度(Ta)と冷媒温度検出部(57,57a,57b)で検出された温度(Tb)との温度差(ΔT)に基づいて連通路(48,48a,48b)への潤滑油の供給不足を判定しているため、連通路の流体の温度変化に基づいて該連通路への潤滑油の供給不足を判定する場合と比べて、短時間で上記判定を行うことができる。
【0022】
また、第1の発明によれば、運転条件の変化に伴い圧縮された冷媒の温度が急激に変化した場合、連通路(48,48a,48b)を流れる潤滑油の温度も同様に変化する。このため、TaとTbとの温度差、すなわちΔTは実質的に変化しない。従って、第1の発明では、冷媒の急激な温度変化に起因する誤判定を回避でき、連通路(48,48a,48b)への潤滑油の供給不足を確実に判定できる。従って、この確実な判定結果に基づいて冷凍装置に対する適切な処置を行うことにより、冷凍装置の信頼性を確保できる。
【0023】
また、第2の発明によれば、2つの温度検出部(56,56a,56b,57,57a,57b)で検出された温度(Ta,Tb)の温度差(ΔT)が、所定値(ΔTs)以下となる又は0になると、連通路(48,48a,48b)への潤滑油の供給が不足していると判定される。従って、連通路(48,48a,48b)へ供給される潤滑油が不足していることを速やか且つ確実に判定できる。
【0024】
また、第3の発明によれば、膨張機(30)に供給される潤滑油の不足を確実に判定できる。この確実な判定結果に基づいて冷凍装置に対する適切な処理を行うことにより、膨張機(30)の信頼性を確保できる。
【0025】
また、第4の発明によれば、高段側圧縮機(60)に供給される潤滑油の不足を確実に判定できる。この確実な判定結果に基づいて冷凍装置に対する適切な処理を行うことにより、高段側圧縮機(60)の信頼性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、実施形態1の空調機の冷媒回路図である。
【図2】図2は、判定部の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、実施形態2の空調機の冷媒回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0028】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。図1に示すように、本実施形態1は、本発明に係る冷凍装置により構成された空調機(1)である。この空調機(1)は、冷媒回路(10)で冷媒を循環させて蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うもので、冷房運転と暖房運転とを切り換えて行う。この空調機(1)は、1つの室外ユニット(5)と複数(図1の例では3つ)の室内ユニット(2,3,4)とを備える、いわゆるマルチ型に構成されている。
【0029】
冷媒回路(10)には、二酸化炭素(CO)が冷媒として充填されている。上記冷媒回路(10)は、利用側回路である3つの室内回路(11,12,13)と、熱源側回路である1つの室外回路(14)とを備えている。3つの室内回路(11,12,13)は、第1連絡管(15)及び第2連絡管(16)を介して室外回路(14)に接続されている。
【0030】
上記室内回路(11,12,13)は、各室内ユニット(2,3,4)に1つずつ収納されている。各室内回路(11,12,13)には、利用側熱交換器である室内熱交換器(2a,3a,4a)と、利用側膨張弁である開度可変の室内膨張弁(2b,3b,4b)とが直列に接続されて設けられている。各室内ユニット(2,3,4)には、図示しないが、室内ファンがそれぞれ設けられている。
【0031】
各室内熱交換器(2a,3a,4a)は、いわゆるクロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器により構成されている。各室内熱交換器(2a,3a,4a)へは、図外の室内ファンによって室内空気が供給される。各室内熱交換器(2a,3a,4a)では、供給された室内空気と該室内熱交換器(2a,3a,4a)を流通する冷媒との間で熱交換が行われる。また、各室内膨張弁(2b,3b,4b)は、電子膨張弁によって構成されている。
【0032】
上記室外回路(14)は、室外ユニット(5)に収納されている。この室外回路(14)には、圧縮機(20)、流体機械としての膨張機(30)、気液分離器(51)、室外熱交換器(44)、冷却用熱交換器である内部熱交換器(45)、四路切換弁(42)、及びブリッジ回路(41)が設けられている。室外ユニット(5)には、図示しないが、室外ファンが設けられている。
【0033】
圧縮機(20)は、密閉状の圧縮機ケーシング(21)と、該圧縮機ケーシング(21)内に配置される電動機(22)と、該電動機(22)によって駆動される圧縮機構(24)とを備えている。本実施形態1の圧縮機(20)は、圧縮機ケーシング(21)内が圧縮機構(24)で圧縮された高圧の冷媒で満たされてた、いわゆる高圧ドーム型に構成される。
【0034】
圧縮機ケーシング(21)は、縦長で円筒状の密閉容器である。圧縮機ケーシング(21)の上部には、圧縮機構(24)で圧縮された冷媒を吐出するための吐出管(26)が、圧縮機ケーシング(21)の下部には、冷媒を吸入するための吸入管(25)が、それぞれ挿通固定されている。また、圧縮機ケーシング(21)の底部には、潤滑油を貯留するための油溜まり(27)が形成されている。吸入管(25)及び圧縮機構(24)の下側の部分は、油溜まり(27)の潤滑油に浸漬している。油溜まり(27)の潤滑油は、吸入管(25)を流れる低圧冷媒によって冷やされるため、圧縮機ケーシング(21)内の高圧冷媒よりも温度が低くなっている。
【0035】
電動機(22)は、ステータ(22a)とロータ(22b)とを備えている。ステータ(22a)は、略円筒状に形成され、圧縮機ケーシング(21)における上側の部分に内嵌している。ロータ(22b)は、円柱状に形成され、ステータ(22a)の内周に所定の隙間(エアギャップ)を介して挿通されている。ロータ(22b)の中央部には、駆動軸(23)が挿通固定されている。
【0036】
駆動軸(23)は、ロータ(22b)から油溜まり(27)まで上下方向に延びるように形成されている。駆動軸(23)には、油溜まり(27)の潤滑油を圧縮機構(24)の摺動部へ供給するための給油路(23a)が形成されている。また、駆動軸(23)の下端部には、潤滑油を上方へ汲み上げるための遠心ポンプ(23b)が形成されている。電動機(22)の駆動により駆動軸(23)が回転すると、潤滑油は、遠心ポンプ(23b)によって上方へ汲み上げられ、給油路(23a)を通じて圧縮機構(24)の摺動部へ供給される。
【0037】
圧縮機構(24)は、ロータリー式の圧縮機構で構成されている。圧縮機構(24)は、圧縮機ケーシング(21)における下側の部分に配置されている。圧縮機構(24)は、シリンダ及びピストンを備えている。圧縮機構(24)は、ピストンの回転により吸入管(25)から吸入された冷媒を圧縮し、圧縮後の高圧冷媒を圧縮機ケーシング(21)内の上方へ吐出する。この高圧冷媒は、吐出管(26)を通じて冷媒回路(10)へ吐出される。
【0038】
膨張機(30)は、密閉状の膨張機ケーシング(31)を備えている。膨張機ケーシング(31)の内部には、膨張機構(34)と発電機(32)と出力軸(33)とが収容されている。膨張機構(34)は、いわゆるロータリ式の容積型流体機械を構成している。膨張機ケーシング(31)内では、膨張機構(34)の上方に発電機(32)が配置されている。出力軸(33)は、上下方向に延びて、膨張機構(34)と発電機(32)とを連結している。
【0039】
膨張機ケーシング(31)には、流入管(35)と流出管(36)とが設けられている。流入管(35)及び流出管(36)は、何れも膨張機ケーシング(31)の胴部の下部付近を貫通している。流入管(35)は、その終端が膨張機構(34)へ接続されている。流出管(36)は、その始端が膨張機構(34)へ接続されている。膨張機構(34)の内部では、流入管(35)を通って流入した冷媒がピストン(図示省略)を回転させながら膨張する。その結果、発電機(32)が回転駆動される。つまり、冷媒の膨張によって発生した動力が発電に利用される。また、冷媒回路(10)には、膨張機(30)の流入側と流出側とに接続されるバイパス管(38)が設けられている。バイパス管(38)には、該バイパス管(38)を流れる冷媒の流量を調整するためのバイパス弁(29)が設けられている。また、膨張機ケーシング(31)の底部には、油戻し流路(55)が接続されている。油戻し流路(55)の流出端は、ガスインジェクション管(37)の圧縮機(20)側に接続されている。
【0040】
また、圧縮機(20)及び膨張機(30)には、連通管(48)が接続されている。この連通管(48)は、圧縮機(20)の油溜まり(27)の潤滑油を膨張機(30)へ供給するための連通路を構成している。連通管(48)の流入端は、圧縮機ケーシング(21)の底部を貫通して油溜まり(27)へ開口している。一方、連通管(48)の流出端は、膨張機構(34)における軸受部の摺動部分に接続されている。
【0041】
気液分離器(51)は、縦長で円筒状の密閉容器である。気液分離器(51)には、その頂部にガスインジェクション管(37)の一端が、その底部に液配管(49)の一端が、その側部には膨張機側流出管(39)の一端が、それぞれ接続されている。ガスインジェクション管(37)の他端は、圧縮機(20)の吸入側へ接続されている。液配管(49)の他端は、ブリッジ回路(41)に接続されている。膨張機側流出管(39)の他端は、膨張機(30)の流出管(36)に接続されている。また、ガスインジェクション管(37)には、ガス抜き弁(52)が設けられている。ガス抜き弁(52)は、例えば電子膨張弁で構成される。
【0042】
室外熱交換器(44)は、いわゆるクロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器により構成されている。室外熱交換器(44)へは、図外の室外ファンによって室外空気が供給される。室外熱交換器(44)では、供給された室外空気と該室外熱交換器(44)を流通する冷媒との間で熱交換が行われる。室外回路(14)において、室外熱交換器(44)は、その一端が四路切換弁(42)の第3のポートに接続され、その他端がブリッジ回路(41)に接続されている。
【0043】
内部熱交換器(45)は、互いに隣接して配置された第1流路(46)及び第2流路(47)を備え、第1流路(46)の冷媒と第2流路(47)の冷媒とを熱交換させるように構成されている。室外回路(14)において、第1流路(46)はガスインジェクション管(37)の一部を構成し、第2流路(47)は液配管(49)の一部を構成している。この内部熱交換器(45)では、第1流路(46)の冷媒と第2流路(47)の冷媒との間で熱交換が行われる。
【0044】
ブリッジ回路(41)は、3つの逆止弁(CV-1〜CV-3)と1つの室外膨張弁(43)とをブリッジ状に接続したものである。各逆止弁(CV-1〜CV-3)は、図1における矢印方向への冷媒の流れを許容し、その逆の流れを禁止している。このブリッジ回路(41)は、第1逆止弁(CV-1)の流入側及び室外膨張弁(43)の一端側が室外熱交換器(44)の他端に接続され、第2逆止弁(CV-2)の流入側及び室外膨張弁(43)の他端側が液配管(49)に接続されている。また、ブリッジ回路(41)は、第2逆止弁(CV-2)の流出側及び第3逆止弁(CV-3)の流入側が第1閉鎖弁(17)に接続され、第3逆止弁(CV-3)の流出側及び第1逆止弁(CV-1)の流出側が膨張機(30)の流入側へ接続されている。
【0045】
室外回路(14)において、四路切換弁(42)の第1のポートは、圧縮機(20)の吸入側に接続されている。第2のポートは、第2閉鎖弁(18)に接続されている。第3のポートは、室外熱交換器(44)の一端に接続されている。第4のポートは、圧縮機(20)の吐出側に接続されている。この四路切換弁(42)は、第1のポートが第2のポートと連通し且つ第3のポートが第4のポートと連通する状態(図1に実線で示す状態)と、第1のポートが第3のポートと連通し且つ第2のポートが第4のポートと連通する状態(図1に破線で示す状態)とに切り換わるように構成されている。
【0046】
第1連絡管(15)は、その一端が第1閉鎖弁(17)に接続されている。また、第1連絡管(15)は、他端側で3つに分岐されて、各室内回路(11,12,13)における室内膨張弁(2b,3b,4b)側の端部に接続されている。第2連絡管(16)は、その一端が第2閉鎖弁(18)に接続されている。また、第2連絡管(16)は、他端側で3つに分岐されて、各室内回路(11,12,13)における室内熱交換器(2a,3a,4a)側の端部に接続されている。
【0047】
空調機(1)は、流体温度検出部(56)と、冷媒温度検出部(57)とを備えている。流体温度検出部(56)は、連通管(48)を流れる流体(潤滑油又は高圧冷媒)の温度を検出するためのものである。流体温度検出部(56)は、連通管(48)における圧縮機(20)近傍に設けられている。冷媒温度検出部(57)は、圧縮機構(24)で圧縮された冷媒の温度を検出するためのものである。冷媒温度検出部(57)は、圧縮機(20)の吐出管(26)に設けられている。各温度検出部(56,57)で検出された温度(Ta,Tb)は、判定部(58)へ送信される。
【0048】
また、空調機(1)は、コントローラ(70)を備えている。コントローラ(70)は、図2に示すように、判定部(58)と制御部(59)とを備えている。
【0049】
判定部(58)は、上記各温度検出部(56,57)から送信された温度(Ta,Tb)を用いて、油溜まり(27)から連通管(48)への潤滑油の供給が十分か不足しているかを判定する。判定部(58)は、演算部(58a)と、記憶部(58b)と、比較判定部(58c)とを備えている。
【0050】
演算部(58a)では、各温度検出部(56,57)から送信される温度(Ta,Tb)の温度差(ΔT)が算出される。記憶部(58b)には、設定温度差(ΔTs)が記憶されている。この設定温度差(ΔTs)は、実験等によって予め決定された値である。設定温度差(ΔTs)は、連通管(48)に高圧冷媒が流れているときに流体温度検出部(56)で検出される温度(Ta)と、冷媒温度検出部(57)で検出される温度(Tb)との温度差に基づいて決定される。本実施形態1では、設定温度差(ΔTs)としては、0度よりもやや高い値が設定される。
【0051】
比較判定部(58c)では、演算部(58a)で算出された温度差(ΔT)と、記憶部(58b)に記憶される設定温度差(ΔTs)とが比較される。温度差(ΔT)が設定温度差(ΔTs)を上回っている場合、比較判定部(58c)は、連通管(48)への潤滑油の供給量が十分であると判定する。一方、温度差(ΔT)が設定温度差(ΔTs)以下になると、比較判定部(58c)は、連通管(48)への潤滑油の供給量が不足していると判定し、制御部(59)へ、信号Sを送信する。
【0052】
制御部(59)は、比較判定部(58c)から信号Sを受信すると、圧縮機(20)の電動機(22)の回転数や、各室内膨張弁(2b,3b,4b)及び室外膨張弁(43)の開度を制御するように構成されている。
【0053】
−運転動作−
本実施形態1の空調機(1)では、冷房運転と暖房運転とが選択的に行われる。そして、冷房運転中及び暖房運転中において、判定部(58)によって油溜まり(27)から連通管(48)へ供給される潤滑油が不足していると判定されると、油戻し運転へ切り換えられる。
【0054】
なお、冷房運転及び暖房運転の双方の運転開始時には、起動運転が行われる。この起動運転では、圧縮機(20)の電動機(22)の回転数が段階的に引き上げられる。この起動運転時には、圧縮機ケーシング(21)内の冷媒の温度が安定しないため、各温度検出部(56,57)で検出される温度(Ta,Tb)が不安定になる。従って、起動運転時には、上記判定部(58)による判定は行われない。
【0055】
《冷房運転》
上記空調機(1)の冷房運転時の動作について説明する。
【0056】
冷房運転時において、四路切換弁(42)は、図1に実線で示す状態に切り換えられ、各室内膨張弁(2b,3b,4b)の開度が個別に調節される。また、室外膨張弁(43)は全閉状態に設定され、バイパス弁(29)及びガス抜き弁(52)は、開度が適宜調整される。
【0057】
この状態で圧縮機(20)を駆動すると、冷媒回路(10)で冷媒が循環して冷凍サイクルが行われる。その際、室外熱交換器(44)が放熱器として機能し、室内熱交換器(2a,3a,4a)が蒸発器として機能する。
【0058】
具体的に、圧縮機(20)からは、圧縮されて臨界圧力よりも高い圧力となった高圧冷媒が吐出される。この高圧冷媒は、四路切換弁(42)を通過して室外熱交換器(44)へ送られる。室外熱交換器(44)を流れる高圧冷媒は、室外空気と熱交換を行い、室外空気に対して放熱する。
【0059】
室外熱交換器(44)で放熱した冷媒は、ブリッジ回路(41)を通じて膨張機(30)へ流入する。膨張機(30)では冷媒が膨張して減圧される。減圧された冷媒は、気液分離器(51)に流入して液冷媒とガス冷媒とに分離される。気液分離器(51)内の飽和状態の液冷媒は、底部から流出して内部熱交換器(45)の第1流路(46)に流入する。一方、気液分離器(51)内の飽和状態のガス冷媒は、ガス抜き弁(52)で減圧された後に内部熱交換器(45)の第2流路(47)に流入する。
【0060】
内部熱交換器(45)では、第1流路(46)の冷媒と第2流路(47)の冷媒との間で熱交換が行われる。第1流路(46)の冷媒は、第2流路(47)の冷媒によって冷却される。
【0061】
第1流路(46)を通過した液冷媒は、ブリッジ回路(41)及び第1連絡管(15)を通じて各室内回路(11,12,13)へ分配される。この液冷媒は、各室内調節弁(2b,3b,4b)で減圧された後に各室内熱交換器(2a,3a,4a)へ流入する。各室内熱交換器(2a,3a,4a)では、冷媒と室内空気との間で熱交換が行われる。この熱交換により、冷媒は室内空気から吸熱して蒸発する一方、室内空気は冷却されて室内へ供給される。各室内熱交換器(2a,3a,4a)で蒸発した冷媒は、第2連絡管(16)で合流して室外回路(14)へ流入する。室外回路(14)へ流入した冷媒は、第2流路(47)を流出した冷媒と合流し、圧縮機(20)へ吸入される。圧縮機(20)に吸入された冷媒は、再び圧縮されて吐出される。
【0062】
《暖房運転》
上記空調機(1)の暖房運転時の動作について説明する。
【0063】
暖房運転時において、四路切換弁(42)は、図1に破線で示す状態に切り換えられ、各室内膨張弁(2b,3b,4b)の開度が個別に調節される。また、バイパス弁(29)、室外膨張弁(43)、及びガス抜き弁(52)は、開度が適宜調整される。
【0064】
この状態で圧縮機(20)を駆動すると、冷媒回路(10)で冷媒が循環して冷凍サイクルが行われる。その際、室内熱交換器(2a,3a,4a)が放熱器として機能し、室外熱交換器(44)が蒸発器として機能する。
【0065】
具体的に、圧縮機(20)からは、圧縮されて臨界圧力よりも高圧となった高圧冷媒が吐出される。この高圧冷媒は、四路切換弁(42)を通過して第2連絡管(16)へ流入し、各室内回路(11,12,13)へ分配される。その際、各室内回路(11,12,13)に対しては、室内膨張弁(2b,3b,4b)の開度に応じた量の冷媒が供給される。
【0066】
各室内回路(11,12,13)へ分配された高圧冷媒は、それぞれ室内熱交換器(2a,3a,4a)へ導入されて室内空気と熱交換を行う。この熱交換により、高圧冷媒は室内空気に対して放熱し、室内空気が加熱される。各室内熱交換器(2a,3a,4a)で放熱した冷媒は、第1連絡管(15)へ流入して合流し、その後に室外回路(14)へ送り返される。一方、室内熱交換器(2a,3a,4a)において加熱された室内空気は、室内へ供給される。
【0067】
第1連絡管(15)から室外回路(14)へ流入した冷媒は、ブリッジ回路(41)を通過して膨張機(30)に流入する。膨張機(30)では冷媒が膨張して減圧される。減圧された冷媒は、気液分離器(51)に流入して液冷媒とガス冷媒とに分離される。気液分離器(51)内の液冷媒は、底部から流出してブリッジ回路(41)の室外膨張弁(43)を流れて減圧された後、室外熱交換器(44)へ流入する。この冷媒は、室外空気と熱交換を行うことにより、冷媒が室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器(44)で蒸発した冷媒は、圧縮機(20)へ吸入され、再び圧縮されて吐出される。
【0068】
〈圧縮機および膨張機の潤滑動作〉
圧縮機(20)の電動機(22)が駆動すると、圧縮機(20)の油溜まり(27)に貯留される潤滑油は、遠心ポンプ(23b)によって上方へ汲み上げられ、給油路(23a)を通じて圧縮機構(24)の摺動部へ供給される。これにより、圧縮機構(24)の摺動部が潤滑される。摺動部を潤滑した潤滑油は、そのまま油溜まり(27)へ戻されるか、又は圧縮機構(24)によって圧縮された冷媒とともに冷媒回路(10)へ流出する。潤滑油は、冷媒回路(10)を循環した後、再び圧縮機(20)へ戻される。
【0069】
一方、圧縮機(20)の油溜まり(27)の潤滑油は、圧縮機(20)と膨張機(30)との間に生じる差圧を利用して、連通管(48)を通じて膨張機(30)へ供給される。膨張機構(34)へ供給された潤滑油は、該膨張機構(34)の摺動部を潤滑した後、膨張された冷媒とともに冷媒回路(10)へ流出する。この潤滑油は、冷媒回路(10)を循環した後、圧縮機(20)へ戻されるか、又は、膨張機(30)の軸受部の摺動部分を通過して膨張機(30)の底部に溜まり込み、該底部から油戻し流路(55)を通じて圧縮機(20)へ戻される。
【0070】
ここで、油溜まり(27)の潤滑油の量が十分に多く、潤滑油の油面が連通管(48)の流入端よりも上方にある場合には、潤滑油は連通管(48)を通じて膨張機(30)へ供給される。
【0071】
しかし、油溜まり(27)へ戻される潤滑油の量が減少し、潤滑油の油面が連通管(48)の流入端よりも下方になると、圧縮機ケーシング(21)内の高圧冷媒が連通管(48)を流れることになり、膨張機構(34)への潤滑油の供給量が不十分になってしまう。
【0072】
これに対して、本実施形態1では、判定部(58)によって連通管(48)への潤滑油の供給不足が判定される。空調機(1)は、この判定結果に基づいて、冷媒回路(10)内に溜まった潤滑油を油溜まり(27)へ戻すための油戻し運転を行う。
【0073】
〈判定部の動作〉
判定部(58)では、連通管(48)に供給される潤滑油量の不足が判定される。
【0074】
まず、判定部(58)の演算部(58a)では、流体温度検出部(56)で検出された温度(Ta)と冷媒温度検出部(57)で検出された温度(Tb)との温度差(ΔT)が算出され、次に、比較判定部(58c)で、上記温度差(ΔT)と記憶部(58b)で記憶される設定温度差(ΔTs)とが比較される。
【0075】
油溜まり(27)の潤滑油は、ケーシング(21)内の高圧冷媒よりも温度が低いため、連通管(48)に潤滑油が流れている場合、上記温度差(ΔT)は、0度よりもやや高い値に設定される設定温度差(ΔTs)よりも高くなる。一方、連通管(48)に高圧冷媒が流れている場合、TaとTbとはほとんど同じ値になるため、上記温度差(ΔT)は概ね0となる。従って、温度差(ΔT)は、設定温度差(ΔTs)以下になる。
【0076】
比較判定部(58c)は、上記温度差(ΔT)の値が設定温度差(ΔTs)よりも高い場合には、連通管(48)に潤滑油が十分に供給されていると判定する。一方、ΔTの値が設定温度差(ΔTs)以下になると、比較判定部(58c)は、連通管(48)に供給される潤滑油の量が不足していると判定し、制御部(59)へ信号Sを送信する。
【0077】
〈油戻し運転〉
制御部(59)は、判定部(58)から信号Sを受信すると、空調機(1)が冷媒配管内に溜まった潤滑油を油溜まり(27)へ戻すための油戻し運転を行うように、冷媒回路(10)を制御する。
【0078】
冷房運転中に、制御部(59)が信号Sを受信すると、制御部(59)は、各室内熱交換器(2a,3a,4a)から圧縮機(20)へ向かって流れる冷媒が湿り冷媒となるように、各室内膨張弁(2b,3b,4b)の開度を調整する。こうすると、各室内熱交換器(2a,3a,4a)やその下流側に残存する潤滑油を冷媒とともに圧縮機(20)へ送ることができる。これにより、油溜まり(27)の潤滑油の量が増大する。
【0079】
また、暖房運転中に、制御部(59)が信号Sを受信すると、制御部(59)は、四路切換弁(42)を図1における破線状態から実線状態へ切り換えるとともに、各室内熱交換器(2a,3a,4a)から圧縮機(20)へ向かって流れる冷媒が湿り冷媒となるように、各室内膨張弁(2b,3b,4b)の開度を調整する。これにより、冷房運転時における油戻し運転の場合と同様、各室内熱交換器(2a,3a,4a)等に残存する潤滑油を冷媒とともに圧縮機(20)へ送ることができるため、油溜まり(27)の潤滑油の量が増大する。
【0080】
上述のような油戻し運転を行った結果、油溜まり(27)の潤滑油が増えて、再び十分な量の潤滑油が連通管(48)へ供給されるようになると、制御部(59)は、空調機(1)が通常の冷房運転、又は通常の暖房運転を行うように、各室内膨張弁(2b,3b,4b)の開度を調整する。
【0081】
−実施形態1の効果−
以上のように、実施形態1に係る空調機(1)では、油溜まり(27)から連通管(48)への潤滑油の供給不足を、流体温度検出部(56)で検出される流体の温度(Ta)と、冷媒温度検出部(57)で検出された冷媒の温度(Tb)との温度差(ΔT)に基づいて判定している。こうすうると、連通管の流体の温度変化に基づいて該連通管への潤滑油の供給不足を判定する場合と比べて、短時間で上記判定を行うことができる。
【0082】
また、実施形態1の空調機(1)では、運転条件の変化に伴い圧縮された冷媒の温度が急激に変化した場合、連通管(48)を流れる潤滑油の温度も同様に変化する。このため、TaとTbとの温度差、すなわちΔTは実質的に変化しない。従って、第1の発明では、冷媒の急激な温度変化に起因する誤判定を回避でき、連通管(48)への潤滑油の供給不足を確実に判定できる。
【0083】
そして、実施形態1の空調機(1)では、冷房運転中又は暖房運転中において、上述のように比較的短時間で且つ確実に判定された潤滑油の供給不足の判定に基づいて、油戻し運転を行っている。こうすると、膨張機(30)の摺動部への潤滑油の供給不足が長時間続くのが抑制されるため、膨張機(30)の信頼性を確保できる。
【0084】
《発明の実施形態2》
実施形態2の空調機(1)は、図3に示すように、冷媒が2つの圧縮機(低段側圧縮機(20)及び高段側圧縮機(60))で圧縮されるように構成されている。
【0085】
実施形態2における低段側圧縮機(20)の構成は、実施形態1における圧縮機の構成を概ね同じである。しかし、実施形態1の圧縮機と異なり、低段側圧縮機(20)は、圧縮機構(24)で圧縮された冷媒を中間圧まで圧縮するように構成されている。これにより、低段側圧縮機(20)の圧縮機ケーシング(21)内は、中間圧の冷媒で満たされる。
【0086】
高段側圧縮機(60)は、低段側圧縮機(20)で圧縮された冷媒を吸入して圧縮する流体機械を構成している。高段側圧縮機(60)は、密閉状の高段側ケーシング(61)と、該高段側ケーシング(61)内に配置される高段側電動機(62)と、該高段側電動機(62)によって駆動される高段側圧縮機構(64)とを備えている。高段側ケーシング(61)の上部には、高段側圧縮機構(64)で圧縮された冷媒を吐出するための吐出管(66)が、高段側ケーシング(61)の下部には、低段側圧縮機(20)からの冷媒を吸入するための吸入管(65)が、それぞれ挿通固定されている。また、高段側圧縮機(60)の駆動軸(63)にも、実施形態1の場合と同様、給油路(63a)と遠心ポンプ(63b)とが形成されている。高段側電動機(62)が駆動すると、遠心ポンプ(63b)によって汲み上げられた潤滑油が、給油路(63a)を通じて高段側圧縮機構(64)の摺動部へ供給される。
【0087】
低段側圧縮機(20)の吐出管(26)と、高段側圧縮機(60)の吸入管(65)との間には、中間圧配管(53)が接続されている。この中間圧配管(53)には、中間冷却器(54)が設けられている。
【0088】
高段側電動機(62)の駆動により、低段側圧縮機(20)からの中間圧の冷媒が、中間圧配管(53)を通じて高段側圧縮機構(64)へ吸入される。この冷媒は、高段側圧縮機構(64)によって圧縮されて高圧冷媒となる。この高圧冷媒は、高段側ケーシング(61)の吐出管(66)を通じて冷媒回路(10)へ吐出される。
【0089】
実施形態2の空調機(1)は、2つの連通管(第1連通管(48a)及び第2連通管(48b))を備えている。第1連通管(48a)は、流入端が圧縮機ケーシング(21)の底部を貫通して油溜まり(27)へ開口する一方、流出端が中間圧配管(53)における中間冷却器(54)と高段側圧縮機(60)との間の部分に接続されている。第2連通管(48b)は、流入端が高段側ケーシング(61)の底部を貫通して油溜まり(67)へ開口する一方、流出端が膨張機構(34)における軸受部の摺動部分に接続されている。
【0090】
また、実施形態2の空調機(1)は、2つの流体温度検出部(第1流体温度検出部(56a)及び第2流体温度検出部(56b))と、2つの冷媒温度検出部(第1冷媒温度検出部(57a)及び第2冷媒温度検出部(57b))とを備えている。第1流体温度検出部(56a)は、第1連通管(48a)における低段側圧縮機(20)近傍に設けられている。第2流体温度検出部(56b)は、第2連通管(48b)における高段側圧縮機(60)近傍に設けられている。第1冷媒温度検出部(57a)は、低段側圧縮機(20)の吐出管(26)に設けられている。第2冷媒温度検出部(57b)は、高段側圧縮機(60)の吐出管(66)に設けられている。
【0091】
〈低段側圧縮機および高段側圧縮機の潤滑動作〉
低段側圧縮機(20)の電動機(22)が駆動すると、低段側圧縮機(20)の油溜まり(27)に貯留される潤滑油は、遠心ポンプ(23b)によって上方へ汲み上げられ、給油路(23a)を通じて圧縮機構(24)の摺動部へ供給される。これにより、低段側圧縮機(20)の圧縮機構(24)の摺動部が潤滑される。摺動部を潤滑した潤滑油は、そのまま油溜まり(27)へ戻されるか、又は圧縮機構(24)によって圧縮された冷媒とともに中間圧配管(53)へ流出する。潤滑油は、冷媒回路(10)を循環した後、再び低段側圧縮機(20)へ戻される。また、低段側圧縮機(20)の油溜まり(27)の潤滑油は、第1連通管(48a)を通じて高段側圧縮機構(64)の吸入側へ吸入されて、該高段側圧縮機構(64)の摺動部を潤滑する。
【0092】
一方、高段側圧縮機(60)においても、該高段側圧縮機(60)の電動機(22)が駆動すると、油溜まり(67)の潤滑油が給油路(63a)を通じて高段側圧縮機構(64)の摺動部へ供給され、該摺動部を潤滑する。摺動部を潤滑した潤滑油は、そのまま油溜まり(67)へ戻されるか、又は高段側圧縮機構(64)によって圧縮された冷媒とともに冷媒回路(10)へ流出する。潤滑油は、冷媒回路(10)を循環した後、低段側圧縮機(20)を経由して再び高段側圧縮機(60)へ戻される。また、高段側圧縮機(60)の油溜まり(67)の潤滑油は、第2連通管(48b)を通じて膨張機(30)の軸受部の摺動部分へ供給され、該摺動部分を潤滑する。
【0093】
実施形態2の空調機(1)の判定部(58)は、空調機(1)の冷房運転時又は暖房運転時において、低段側圧縮機(20)の油溜まり(27)から第1連通管(48a)への潤滑油の供給不足を判定して、制御部(59)へ信号Sを送信する。制御部(59)は、上記信号Sを受信すると、実施形態1の場合と同様、空調機(1)が油戻し運転を行うように各室内膨張弁(2b,3b,4b)の開度を調整する。油戻し運転を行った結果、低段側圧縮機(20)の油溜まり(27)の潤滑油が増えて、再び十分な量の潤滑油が第1連通管(48a)へ供給されるようになると、制御部(59)は、空調機(1)が通常の冷房運転又は暖房運転を行うように、各室内膨張弁(2b,3b,4b)の開度を制御する。
【0094】
また、実施形態2の空調機(1)の判定部(58)は、空調機(1)の冷房運転時又は暖房運転時において、高段側圧縮機(60)の油溜まり(67)から第2連通管(48b)への潤滑油の供給不足を判定して、制御部(59)へ信号Sを送信する。制御部(59)は、上記信号Sを受信すると、高段側圧縮機構(64)のピストンの回転数が低減するように、電動機(62)を制御する。これにより、高段側圧縮機(60)の油溜まり(67)の潤滑油量が増加する。その結果、再び十分な量の潤滑油が第2連通管(48b)へ供給されるようになると、制御部(59)は、空調機(1)が通常の冷房運転又は暖房運転を行うように、高段側圧縮機(60)を制御する。
【0095】
−実施形態2の効果−
以上のように、実施形態2に係る空調機(1)でも、各温度検出部(56a,56b,57a,57b)での検出温度(Ta,Tb)の温度差(ΔT)を用いて、連通管(48a,48b)へ供給される潤滑油の不足を判定しているため、実施形態1の場合と同様、連通管(48a,48b)へ供給される潤滑油量の不足を、比較的短時間で且つ確実に判定できる。
【0096】
また、実施形態2に係る空調機(1)では、高段側圧縮機(60)の摺動部へ供給される潤滑油の量が、長時間に亘って不足してしまうのを抑制できるため、高段側圧縮機(60)の信頼性を確保できる。また、システムに充填する潤滑油の量を過剰にする必要がなくなるため、圧縮機(20,60)内の潤滑油が多くなって圧縮機(20,60)の仕事量が過剰になることを回避できる。その結果、システムの性能を適正にすることができる。
【0097】
−その他の実施形態−
上記実施形態では、判定部(58)で算出された温度差(ΔT)の比較対象となる設定温度差(ΔTs)を、0℃よりもやや高い値に設定したが、この限りでなく、0℃に設定してもよい。この場合、判定部(58)は、温度差(ΔT)が0℃になると連通管(48,48a,48b)への潤滑油の供給が不足していると判定する。
【0098】
また、上記実施形態では、判定部(58)で算出された温度差(ΔT)と設定温度差(ΔTs)とを比較しているが、この限りでなく、例えば、上記温度差(ΔT)を必要に応じて補正した値と設定温度差(ΔTs)とを比較することにより、連通管(48,48a,48b)への潤滑油の供給不足を判定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上説明したように、本発明は、圧縮機が冷媒回路に接続された冷凍装置に有用である。
【符号の説明】
【0100】
10 冷媒回路
20 圧縮機、低段側圧縮機(圧縮機)
21 圧縮機ケーシング(ケーシング)
24 圧縮機構
26 吐出管
27 油溜まり
30 膨張機(流体機械)
48 連通管(連通路)
48a 第1連通管(連通路)
48b 第2連通管(連通路)
56 流体温度検出部
56a 第1流体温度検出部(流体温度検出部)
56b 第2流体温度検出部(流体温度検出部)
57 冷媒温度検出部
57a 第1冷媒温度検出部(冷媒温度検出部)
57b 第2冷媒温度検出部(冷媒温度検出部)
58 判定部
60 高段側圧縮機(圧縮機、流体機械)
61 高段側ケーシング(ケーシング)
64 高段側圧縮機構(圧縮機構)
66 吐出管
67 油溜まり

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(20,60)と、冷媒を圧縮又は膨張する流体機械(30,60)とが接続され、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷媒回路(10)を備え、
上記圧縮機(20,60)は、ケーシング(21,61)と、該ケーシング(21,61)内に配置され吸入した冷媒を圧縮して該ケーシング(21,61)内へ吐出する圧縮機構(24,64)と、該ケーシング(21,61)内に吐出された冷媒をケーシング(21,61)外の冷媒回路へ流出させる吐出管(26,66)と、上記ケーシング(21,61)の底部に形成され潤滑油が貯留される油溜まり(27,67)とを有し、
上記油溜まり(27,67)の潤滑油を上記流体機械(30,60)に供給するための連通路(48,48a,48b)と、
上記連通路(48,48a,48b)を流れる流体の温度を検出する流体温度検出部(56,56a,56b)と、
上記圧縮機構(24)によって圧縮された冷媒の温度を検出する冷媒温度検出部(57,57a,57b)と、
上記流体温度検出部(56,56a,56b)で検出された流体の温度(Ta)と、上記冷媒温度検出部(57,57a,57b)で検出された冷媒の温度(Tb)との温度差(ΔT)に基づいて、上記油溜まり(27)から上記連通路(48,48a,48b)への潤滑油の供給不足を判定する判定部(58)と
を備えることを特徴とする冷凍装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記判定部(58)は、上記流体温度検出部(56,56a,56b)で検出された流体の温度(Ta)と、上記冷媒温度検出部(57,57a,57b)で検出された冷媒の温度(Tb)との温度差(ΔT)が所定値(ΔTs)以下又は0になると、上記油溜まり(27)から上記連通路(48)への潤滑油の供給が不足していると判定することを特徴とする冷凍装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記流体機械は、冷媒を膨張させる膨張機(30)で構成されていることを特徴とする冷凍装置。
【請求項4】
請求項1又は2において、
上記流体機械は、低段側となる上記圧縮機(20)で圧縮された冷媒を吸入して圧縮する高段側圧縮機(60)で構成されていることを特徴とする冷凍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−87975(P2013−87975A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226123(P2011−226123)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)