説明

冷凍野菜の製造方法

【課題】比較的安価な設備と容易な作業手順により、品質の良い冷凍野菜類を製造する。
【解決手段】野菜類、きのこ類を次亜塩素酸ナトリウム200ppmの水溶液に浸漬した後、流水中で水洗し、金網に移して水切りをする。水切り後、30℃以下の冷風を当て、水分を10〜40重量%除去した後に、当該食品を冷凍耐性のある袋に密閉し、冷凍する。
【効果】当該冷凍野菜類を解凍しても、グリップの発生がなく、調理に使用しても歯応えがあり、食感が低下しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍野菜の製造方法に関する。さらに詳しくは、野菜類、きのこ類をそのままあるいは成型後、洗浄、殺菌し、加熱しないで30℃以下の風を当て、水分を10〜40重量%除去した後、冷凍することを特徴とする冷凍野菜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活の多様化に伴い、原料農産物の海外からの輸入が急増している。これらの農産物は鮮度が求められており、価格の高いものは航空貨物便により輸入されるが、価格の安い農産物は対応できない。
さらに、国内においても気候の変動により、価格の安い農産物が豊作になると廃棄される事態が生ずる。
そこで、これらの農産物を比較的簡単で、安いコストで冷凍できれば、安定した価格で供給できる。
通常、野菜類を冷凍保存する場合は、洗浄後ブランチング(高温で短時間加熱)し、酵素を失活させて冷凍する。しかし、これらの処理を行った野菜類を解凍後調理に使用すると、ドリップが生じたり、歯応えのある食感が失われる欠点があり、適用できる野菜類は限られている。
【0003】
冷凍野菜の製造方法には次の特許が出願されている。
【特許文献1】 特許2839455は、野菜類好ましくはジャガイモを高温で処理する第一工程およびカルシウムを含む水溶液好ましくは乳酸カルシウムを溶解した水溶液中で加熱処理する第二を必須とする工程、またさらに再度高温処理する第三工程を必須とすることを特徴とする製造方法である。
この方法では、高温加熱工程が多いため、適用できる野菜が限られる。
【特許文献2】 特許3816481は、成型して塩素剤などの除菌剤で洗浄・除菌した野菜類を30〜50℃で熱して、硬度と機能性並びにうまみ成分を付与する第1の蒸気加熱工程を行った後、55〜80℃で、3〜30分加熱して除菌する第2の蒸気加熱工程を行い、ついで0〜30℃に冷却した後、20〜100℃の温風を通気して野菜類の水分を15〜70%除去する乾燥工程を行い、この後、糖類を含む調味料、調味液またはペースト状調味料を、野菜の糖濃度が1〜15%になるように配合・調味してからそのまままたは30分〜72時間後に冷凍する調味冷凍野菜の製造方法である。
しかし、この方法は、作業が煩雑で容易に実施できる方法とは言えない。
【0004】
【特許文献3】 特開2001−224304は、溶液中の尿素濃度が0.005〜0.1重量%である尿素を含む水溶液、あるいは、尿素に加えて適宜の糖及び/又は糖アルコール並びにカルシウム塩及び/又はマグネシウム塩を含む溶液に、野菜類を浸漬した後、冷凍する方法である。
しかし、尿素は食品添加物に指定されていないので、この方法は使用できない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明者らは、解凍後にドリップの発生がなく、調理に使用しても歯応えがあり、食感が低下しない冷凍野菜を、比較的簡単に製造する方法を開発することを目的として鋭意検討した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その結果、本発明者らは、野菜類、きのこ類をそのままあるいは成型後、洗浄、殺菌し、加熱しないで30℃以下の風を当て、水分を10〜40重量%除去した後に冷凍することにより、解凍後もドリップが発生せず、調理に使用しても歯ごたえがあり、食感を低下させることが少ないことを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明における野菜類は、ピーマン、キャベツ、もやし、アスパラガス、インゲン豆、きぬさや、ブロッコリー、カリフラワー、ズッキーニ、シシトウ、セロリ、長ねぎ、トマト、チンゲン菜、牛蒡、くわい、にんじん、たまねぎ、れんこんなど、きのこ類がえのきたけ、しめじ、なめこ、ヒラタケ、まいたけ、マッシュル−ムなどに適用できる。
【0008】
本発明における冷凍野菜の製造方法は、まず、野莱類はそのまま、または可食部を適当な大きさに成型し、きのこ類は石付きを除いて、洗浄し、殺菌剤、例えば次亜塩素酸ナトリウム200ppmの水溶液に10〜20分浸漬して殺菌し、流水で1分間以上水洗し、良く水切りをする。
次いで、金網などに広げて、30℃以下の風を当てるか、気温30℃以下の風当たりの良い日陰に放置して、水分を飛散させる。
水分の飛散量は10〜40重量%が適当で、飛散量が10重量%より少ないと、冷凍及び解凍後に、ドリップが出やすい。
又、飛散量が40重量%以上になると、野菜類やきのこ類の組織が破壊され、調理に使用した場合、歯ごたえのある食感が得られない。
冷風、又は気温が30℃以上の場合は、野菜類やきのこ類の酵素が作用し、褐変や組織の軟化が起こり、外観、食感を低下させる。
【0009】
水分を10〜40重量%減少させた野菜類、きのこ類の冷凍は、通常の冷凍方法で良い。冷凍設備が整っている場合は、コンタクトフリーザーにより−30℃以下に冷凍する。
しかし、−18℃以下の保存庫での緩慢凍結でも構わない。
使用時の解凍は、室温又は冷蔵庫中での自然解凍又は水中での解凍のいずれでも良い。
【発明の効果】
【0010】
上記したように、本発明による冷凍野菜の製造方法は、比較的安価な設備で実施することが出来、従って、価格の安い野菜類、きのこ類にも適用できる。
さらに、水分の減少により、輸送時の重量も減少し、さらに、野菜の旨みも凝縮される。
【実施例1、2】
【0011】
以下、本発明による実施例および比較例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1、2として、栃木県産緑豆もやし(包装材の表示によると100g中水分94.2g)を次亜塩素酸ナトリウム200ppmの水溶液に15分浸漬し、次いで、流水中に1分間水洗し、金網に上げて水切りをした。
実施例1は、このもやし100gを金網に載せ、約40cm上方からドライヤーにて16℃の冷風を30分間当てた。終了時の重量は80gであった。従って、水分の飛散量を20重量%とした。
【0012】
実施例2は、この100gを金網に並べ、気温15℃、風速約1〜2m/秒の外気中に6時間放置した。放置後の重量は78gであった。従って、水分の飛散量を22重量%とした。
実施例1及び2の乾燥もやしを、冷凍耐性のある袋に密閉し、−18℃に5日間保存後、室温で自然解凍した。
解凍後のもやしは、実施例1および2共に、ドリップの発生もなく、フライパンに油を引き、強火で1分間炒めた結果、生のもやしに近い食感を示した。
【0013】
比較例1として、殺菌、水洗後、この100gを金網に並べ、気温16〜17℃、風速約3〜5m/秒の外気中に20時間放置した。放置後の重量は37gであった。従って、水分の飛散量を63重量%とした。
この乾燥もやしは、褐変が見られ、しなびた柔らかい状態であった。冷凍耐性のある袋に密閉し、−18℃に5日間保存後、室温で自然解凍した。
次いで、フライパンに油を引き、強火で1分間炒めた結果、もやし特有のしゃきしゃきとした食感は得られなかった。
【実施例3】
【0014】
実施例3として、1ケ約200gの赤色及び黄色のパプリカを8つ割りにし、へた及び種を除き、次亜塩素酸ナトリウム200ppmの水溶液に15分浸漬する。次いで、流水中で1分間水洗し、金網に移して水切りをする。
【0015】
この100gを金網に並べ、気温16〜17℃、風速約3〜5m/秒の外気中20時間放置した。放置後の重量は88gであった。従って、水分の飛散量を12重量%とした。この乾燥パプリカを、冷凍耐性のある袋に密閉し、−18℃に5日間保存後、室温で自然解凍した。
解凍後のパプリカは、ドリップの発生もなく、フライパンに油を引き、強火で1分間炒めた結果、生のパプリカに近い食感を示した。
【0016】
比較例2として、殺菌、水洗したパプリカ100gを金網に載せ、約40cm上方からドライヤーにて21℃の冷風を1時間当てた。終了時の重量は93gであった。従って、水分の飛散量を7重量%とした。
次いで、冷凍耐性のある袋に密閉し、−18℃に5日間保存後、室温で自然解凍した結果、ドリップが8重量%発生した。このパプリカをフライパンに油を引き、強火で1分間炒めた結果、食感が実施例3に比較して劣った。
【実施例4】
【0017】
実施例4として、長野県産ぶなしめじの石付きを除き、ばらばらにほぐしを次亜塩素酸ナトリウム200ppmの水溶液に15分浸漬し、次いで、流水中に1分間水洗し、金網に上げて水切りをした。
この100gを金網に並べ、気温15℃、風速約1〜2m/秒の外気中に6時間放置した。放置後の重量は82gであった。従って、水分の飛散量を18重量%とした。この乾燥しめじを冷凍耐性のある袋に密閉し、−18℃に5日間保存後、室温で自然解凍した。その結果、ドリップは見られなかった。
次いで、フライパンに油を引き、強火で1分間炒めた結果、しめじ特有の食感を示した
【0018】
比較例3として、殺菌、水洗したしめじ100gを金網に並べ、気温16〜17℃、風速約3〜5m/秒の外気中に20時間放置した。放置後の重量は53gであった。従って、水分の飛散量を47重量%とした。
この乾燥しめじは、しなびた柔らかさを示した。次いで、この乾燥しめじを冷凍耐性のある袋に密閉し、−18℃に5日間保存後、室温で自然解凍した。
次いで、フライパンに油を引き、強火で1分間炒めた結果、しめじ特有の食感は得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜類、きのこ類をそのまま、あるいは成型後、洗浄、殺菌し、加熱しないで30℃以下の風を当て、水分を10〜40重量%除去した後に冷凍することを特徴とする冷凍野菜の製造方法。
【請求項2】
野菜類がピーマン、キャベツ、もやし、アスパラガス、インゲン豆、きぬさやブロッコリー、カリフラワー、ズッキーニ、シシトウ、セロリ、長ねぎ、トマト、チンゲン菜、牛蒡、くわい、にんじん、たまねぎ、れんこん、きのこ類がえのきたけ、しめじ、なめこ、ヒラタケ、まいたけ、マッシュルームから選ばれたいずれかであることを特徴とする請求項1記載の冷凍野菜の製造方法。

【公開番号】特開2008−271934(P2008−271934A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142504(P2007−142504)
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【出願人】(502375024)株式会社キレネ (1)
【Fターム(参考)】