説明

冷却システム、冷却方法

【課題】地表付近の空気を冷却可能なシステムを提供する。
【解決手段】地上付近の気温を冷却するためのシステム10は、地表高さに空気取り込み口13を備え、地上高さから上方に向かって延びる煙突11と、煙突11内の空気を上方に向かって付勢する送風ファン12とを備える。地表付近の高温の空気を煙突11を通じて上空に上昇させることにより、上空の低温の空気が下降する気流が生じることとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上付近の空気を冷却するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気中の二酸化炭素量が増加し、いわゆる温室効果により、大気温の温暖化が進行している。このため、発電所において発電効率を向上し、二酸化炭素の発生を抑える方法(例えば、特許文献1)など、二酸化炭素の発生量を削減する技術が様々な技術分野で開発されている。
【特許文献1】特開2008−121668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように、二酸化炭素の発生を削減するべく、様々な技術が開発されているが、大幅に二酸化炭素の発生量を削減するには至っておらず、温暖化の抑制効果が上がっているとはいえない。
【0004】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、地表付近の空気を冷却可能なシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の冷却システムは、地上付近の気温を冷却するためのシステムであって、地上から上方に向かって延び、地上付近に空気取り込み口を有する管状部材と、前記空気取りこみ口から外気を取り込んで、当該取り込んだ外気を前記管状部材内の空気を上方に向かって付勢するファンと、を備えることを特徴とする。
【0006】
上記の冷却システムにおいて、前記管状部材は地表面に略垂直に立設されていてもよく、また、山の斜面に沿うように設けられていてもよい。また、前記ファンは、太陽光発電又は風力発電により発電した電力により駆動してもよい。
【0007】
また、本発明の冷却方法は、地上付近の気温を冷却する方法であって、地上から上方に向かって延びるように、地表付近に空気取り込み口を有する管状部材を設け、前記空気取り込み口から外気を取り込んで、当該取り込んだ外気をファンにより前記管状部材内の空気を上方に向かって付勢することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、地表付近の温度が高い空気を煙突を通して、大量に上空まで上昇させることができる。これにより、下方に向かって空気が下降する気流が生じることとなり、上空の温度の低い空気が地表付近まで降下し、地表付近の気温を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の冷却システムの一実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の冷却システム10を示す鉛直断面図である。同図に示すように、本実施形態の冷却システム10は、地表付近に外気を取り込むための空気取り込み口13を有し、上下方向に延びる高さ3000m程度の管状の煙突11と、煙突11内に設けられた送風ファン12とにより構成される。
送風ファン12は、太陽光発電パネル(不図示)で発電された電力が供給され、下方から上方に向かって煙突11内の空気を付勢することにより煙突11内を上昇させる。
【0010】
地上付近における気温が、例えば、35℃である場合には、気温は100m上昇すると約0.8℃低下するため、煙突11の上端における気温は、約5〜10℃である。
【0011】
発明者らは、送風ファン12に必要とされる付勢力を以下のように算出することとした。
煙突の上下ではベルヌーイの式が成立するため、以下の式(1)が導かれる。
【数1】

【0012】
なお、式(1)中の各記号が示す数値は以下の通りである。
:地表における風速[m/s]
:煙突11上部における風速[m/s]
g:重力加速度[m/s
:地表における気圧[kgf/m
:煙突11上部における気圧[kgf/m
γ:地表における空気の密度[kgf/m
γ:煙突11上部における空気の密度[kgf/m
:地表の高さ[m]
:煙突11上部の高さ[m]
:煙突11内の圧力損失[m]
【0013】
ここで、地表及び煙突11上部における風速が等しく(すなわち、V=V)、煙突11上部の高さZを3000mとすると、上記の式(1)は以下の式(2)のように表される。
【数2】

【0014】
式(2)に以下の値を代入する。
煙突11上部の高さZ=3000[m]
地表における気圧P=1.033×10[kgf/m
煙突11上部(上空3000m)における気圧P=7.0121×10[kgf/m
地表における空気の比重γ=1.225[kgf/m
煙突11上部における空気の比重γ=0.90925[kgf/m
なお、気圧や空気の比重などの値は、理科年表などにより得られる。
【0015】
上記の式(2)における左辺及び右辺は以下の値となる。
【数3】

【0016】
このように左辺の値に比べて右辺の値の方が大きく、これは、地上の空気のエネルギーに比べて、煙突11上部の空気のエネルギーの方が高いことを示しており、このため、地上から煙突11上部へ向かう気流が生じないことがわかる。
【0017】
そこで、送風ファン12により煙突11内の空気を上向きに付勢することで、地上の空気のエネルギーを増加させることを考える。
【0018】
例えば、送風ファン12により付勢することで地上の空気のエネルギーを1.5倍すると、式(2)における左辺の値は以下の式(5)のようになる。
【数4】

【0019】
式(3)で得られた値に代えて式(5)により得られた値を用いると、以下の式(6)が得られる。
【数5】

この式(6)を解くことにより、圧力損失h=1937[m]となる。
【0020】
また、煙突11内の圧力損失hはファニングの式により算出することができ、以下の式(7)のように表される。
【数6】

【0021】
ここで式(7)中の各記号は以下の値を示す。
λ:ダルシーの管摩擦係数
L:煙突11の長さ[m]
D:煙突11の直径[m]
v:煙突11内の空気の流速[m/s]
【0022】
また、ダルシーの管摩擦係数λと、ファニングの管摩擦係数fとの間には、以下の式(8)の関係がある。
【数7】

【0023】
ファニングの管摩擦係数は、図2に示すムーディー線図により求めることができ、本実施形態ではレイノルズ数Reは非常に大きく、管内の粗さe/直径Dが非常に小さいため、管摩擦係数fは約0.003と求められる。
【0024】
このため、ダルシーの管摩擦係数λ=4×0.003=0.012となる。また、煙突11の長さL=3000[m]、煙突11の直径D=50[m]を式(7)に代入すると、以下の式(9)となる。
【数8】

よって、煙突11内の空気の流速Vは130[m/S]となる。
【0025】
また、煙突11内の空気の流速Vが求まることで、単位時間当たりに煙突11を通過する空気の流量Qは以下の式(10)で算出できる。
【数9】

【0026】
すなわち、1時間あたり1.2百万トンの地表近傍の空気が、煙突11を通って上空まで上昇することとなる。このように地表付近の高温の空気を煙突11を通じて大量に上昇させ、煙突11の上端から上空へ放出させることにより、図3に示すように、上空から低温の空気が下降する気流が生じることとなる。
【0027】
以上説明したように、本実施形態によれば、地表付近の高温の空気を煙突11を通じて上空へ向かって上昇させることにより、上空から低温の空気が下降する気流が生じることとなる。これにより、上空の低温の空気を大量に地上まで流れこみ、地表付近の気温を下げることができる。また、送風ファン12を太陽電池パネルで発電したエネルギーにより駆動しているため、新たなに二酸化炭素を排出することがない。
【0028】
なお、本実施形態では、煙突11を設けることとしたが、これに限らず、標高の高い山の斜面に沿って、大径の配管を設けることとしてもよい。また、本実施形態では、煙突の高さを3000m程度としたが、これに限らず、上端が上空の気温の低い高さ位置まで到達していれば、その高さは問わない。
【0029】
また、本実施形態では、送風ファン12を駆動する電力を太陽光発電により発電するものとしたが、これに限らず、風力発電により発電することとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態の冷却システムを示す鉛直断面図である。
【図2】ムーディー線図である。
【図3】本実施形態の冷却システムにおける空気の流れを示す図である。
【符号の説明】
【0031】
10 冷却システム
11 煙突
12 送風ファン
13 空気取り込み口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上付近の気温を冷却するためのシステムであって、
地上から上方に向かって延び、地上付近に空気取り込み口を有する管状部材と、
前記空気取りこみ口から外気を取り込んで、当該取り込んだ外気を前記管状部材内の空気を上方に向かって付勢するファンと、を備えることを特徴とする冷却システム。
【請求項2】
請求項1記載の冷却システムであって、
前記管状部材は地表面に略垂直に立設されていることを特徴とする冷却システム。
【請求項3】
請求項1記載の冷却システムであって、
前記管状部材は、山の斜面に沿うように設けられていることを特徴とする冷却システム。
【請求項4】
請求項1から3のうち何れか1項に記載の冷却システムであって、
前記ファンは、太陽光発電又は風力発電により発電した電力により駆動することを特徴とする冷却システム。
【請求項5】
地上付近の気温を冷却する方法であって、
地上から上方に向かって延びるように、地表付近に空気取り込み口を有する管状部材を設け、
前記空気取り込み口から外気を取り込んで、当該取り込んだ外気をファンにより前記管状部材内の空気を上方に向かって付勢することを特徴とする冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−261653(P2010−261653A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112935(P2009−112935)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】