説明

冷却ファンの駆動装置

【目的】 冷却水や作動油の冷却性能を損うことなく、作業アタッチメント用油圧ポンプ等の入力馬力を増加させ得る冷却ファンの駆動装置を提供する。
【構成】 リモコン弁20,21が操作されてブーム俯仰および機体上部旋回の複合動作が起動されたことを圧力センサ26,27で検出し、これを受けて電磁比例弁18のソレノイド部18sへの駆動電流の供給を停止して冷却ファン4の駆動用油圧ポンプ11の傾転レギュレータ11aを中立位置に戻し、第2の油圧ポンプ11の吸収トルクを低減させる。吸収トルクの低減で浮いたエネルギを第1の油圧ポンプ10側へ振り分け、ブーム等の作業アタッチメントの作業速度を高める。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、原動機で駆動される油圧ポンプに油圧モータを接続し、この油圧モータで原動機の冷却水や作動油の冷却ファンを駆動する冷却ファンの駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】油圧ショベル等の建設機械に設けられた原動機の冷却水や作動油を冷却する装置として図6に示すものが知られている。この装置は、原動機1で駆動される固定容量形の油圧ポンプ2に油圧モータ3を接続し、この油圧モータ3の出力軸に冷却ファン4を連結し、この冷却ファン4の前方にラジエータ5およびオイルクーラ6を配置したもので、原動機1の回転数に応じた速度で冷却ファン4を回転させてラジエータ5内の冷却水やオイルクーラ6内の作動油を冷却する。なお、図において符号7は、ブーム等の作業アタッチメントの駆動や機体上部の旋回のために設けた可変容量形油圧ポンプである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した装置では油圧ポンプ2や油圧モータ3の効率が80〜90%程度のため、冷却ファン4の駆動系統に損失馬力が発生する。この冷却ファン4の駆動系統で費やされるエネルギは、一般的な油圧ショベルの場合で原動機1の出力の10%前後にも達し、その分、作業アタッチメント等の油圧ポンプに分配されるエネルギが減るという不都合が生じていた。この点、冷却ファン駆動用の油圧ポンプ2や油圧モータ3の吐出容量を小さくすれば冷却ファン4の駆動馬力を減らして作業アタッチメント等の側へより多くのエネルギを分配できるが、むやみに油圧ポンプ2や油圧モータ3の吐出容量を減らすと冷却性能が損われ、オーバーヒートが頻発するおそれがある。本発明の目的は、冷却水や作動油の冷却性能を損うことなく、作業アタッチメント等へより多くのエネルギを分配できる冷却ファンの駆動装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】一実施例を示す図1に対応付けて説明すると、本発明は、原動機1に駆動される油圧ポンプ11と、この油圧ポンプ11の吐出油で駆動され、原動機1の冷却水や作動油の冷却ファン4を回転させる油圧モータ3とを備えた冷却ファンの駆動装置に適用される。そして、上述した目的は、原動機1に所定の負荷が加わるときに油圧ポンプ11の吸収トルクを低減するトルク制御手段を設けることにより達成される。
【0005】
【作用】原動機1に所定の負荷が加わるときには冷却ファン駆動用の油圧ポンプ11の吸収トルクが低減され、作業アタッチメント等を駆動するための油圧ポンプ10等へより多くのエネルギが分配される。
【0006】なお、本発明の構成を説明する上記課題を解決するための手段と作用の項では、本発明を分かり易くするために実施例の図を用いたが、これにより本発明が実施例に限定されるものではない。
【0007】
【実施例】
−第1実施例−以下、図1および図2を参照して本発明の第1実施例を説明する。なお、上述した従来例と共通する部分には同一符号を付し、説明を省略する。図1に示すように、本実施例では原動機1の出力軸に2基の可変容量形油圧ポンプ10,11と1基の固定容量形油圧ポンプ12が接続されている。第1の油圧ポンプ10は油圧ショベルの作業アタッチメント等を駆動するためのもので、その吐出油は切換弁13a,13bの切換位置に応じてブーム俯仰用の油圧シリンダ14aおよび機体上部旋回用の油圧モータ14bに導かれる。第2の油圧ポンプ11は冷却ファン4を駆動するためのもので、その吐出油は冷却ファン4と連結された油圧モータ3へ導かれる。なお、15は油圧モータ3の最大駆動圧力を規制するリリーフ弁、16はキャビテーションを防止するチェック弁である。
【0008】第3の油圧ポンプ12は油圧ショベルの操作系のパイロット油圧などを発生させるもので、その吐出油の一部は管路17を介して電磁比例弁18に導かれる。電磁比例弁18はソレノイド部18sに供給される駆動電流に比例した圧力の圧油を吐出するもので、その出力側は第2の油圧ポンプ11の傾転レギュレータ11aと接続されている。これにより第2の油圧ポンプ11の吐出容量は電磁比例弁18のソレノイド部18sの駆動電流に応じて変化する。ソレノイド部18sへの駆動電流の供給が停止されたときは傾転レギュレータ11aがタンクと接続され、第2の油圧ポンプ11の吐出容量が零となる。なお、19は管路17の最高圧を規制するリリーフ弁である。
【0009】第3の油圧ポンプ12の吐出油の一部は2つのリモートコントロール弁(以下、リモコン弁)20,21にも導かれている。第1のリモコン弁20は、操作レバー20aと、この操作レバー20aの操作量に比例した圧力の圧油を出力する一対のパイロット弁20b,20cとを有する。操作レバー20aを上げ方向または下げ方向へ操作してパイロット管路22a,22bのいずれか一方へ第3の油圧ポンプ12の吐出油を導くと、操作レバー20aの操作方向に応じて切換弁13aが切換わって第1の油圧ポンプ10からの圧油が油圧シリンダ14aのいずれか一方のポートに導かれ、油圧ショベルのブーム(不図示)が所望の方向へ俯仰する。操作レバー20aを中立位置にしたときはパイロット管路22a,22bがともにタンクと接続されて切換弁13aが中立位置へ戻り、油圧シリンダ14aへの圧油の供給が阻止されてブームの俯仰動作が停止する。
【0010】第2のリモコン弁21も同様に操作レバー21aと、この操作レバー21aの操作量に比例した圧力の圧油を出力する一対のパイロット弁21b,21cとを有する。操作レバー21aを右旋回側または左旋回側のいずれかへ操作してパイロット管路23a,23bのいずれか一方へ第3の油圧ポンプ12の吐出油を導くと、操作レバー21aの操作方向に応じて切換弁13bが切換わって第1の油圧ポンプ10からの圧油が油圧モータ14bのいずれか一方のポートに導かれ、油圧ショベルの機体上部が所望の方向へ旋回する。操作レバー21aを中立位置にしたときはパイロット管路23a,23bがともにタンクと接続されて切換弁13bが中立位置へ戻り、油圧モータ14bへの圧油の供給が阻止されて機体上部の旋回動作が停止する。なお、図示の例では第1,第2のリモコン弁20,21の操作レバー20a,21aを別体としているが、これを360゜の旋回操作が可能な一本のレバーに集約し、レバーの周囲に第1のリモコン弁20のパイロット弁20b,20cと、第2のリモコン弁21のパイロット弁21b,21cとを互いの並び方向を直交させて配置しても良い。
【0011】パイロット管路22a,22bの間には、これらパイロット管路22a,22bの圧力の高い方を出力する高圧選択弁24が接続されている。また、パイロット管路23a,23bの間にも、これらパイロット管路23a,23bの圧力の高い方を出力する高圧選択弁25が接続されている。高圧選択弁24,25の出力は圧力センサ26,27で監視され、これら圧力センサ26,27は高圧選択弁24,25から出力される圧力(以下、パイロット圧)P1,P2に応じた信号をコントローラ30へ出力する。
【0012】コントローラ30は、燃料レバー31で設定される目標回転数Nrと、原動機1の出力軸と対向配置した回転数センサ32で検出される原動機実回転数Naとの偏差ΔN(=Nr−Na)に基づいて第1の油圧ポンプ10の電気式傾転レギュレータ10aを制御するとともに、圧力センサ26,27で検出されるパイロット圧P1,P2と、ラジエータ5の近傍に設置した水温センサ33で検出される冷却水の温度tWと、オイルクーラ6の近傍に設置した油温センサ34で検出される作動油の温度tOとに基づいて電磁比例弁18のソレノイド部18sへの駆動電流を制御する。なお、第1の油圧ポンプ10の吐出容量の制御は、スピードセンシング制御として公知のものである(例えば特開昭55−12245号公報)。
【0013】図2はコントローラ30での処理手順を示すフローチャートである。原動機1が起動するとコントローラ30による処理が実行され、まず、ステップS1において目標回転数Nr、原動機実回転数Na、水温tW、油温tO、パイロット圧P1,P2を読み込む。ステップS2では目標回転数Nrと原動機実回転数Naとの偏差ΔN(=Nr−Na)の絶対値|ΔN|を基準回転数kと大小比較する。基準回転数kとは第1の油圧ポンプ10の吐出容量を変化させる必要が生じるほど偏差ΔNが拡大したか否かを判断するための値である。ステップS2で偏差ΔNの絶対値が基準回転数kよりも高いと判断したときはステップS3へ進む。ステップS3では、偏差ΔNに応じて傾転レギュレータ10aの駆動電流を変化させて第1の油圧ポンプ10の吐出容量を増減する。ステップS2で偏差ΔNの絶対値が基準回転数k以内であると判断したときは、ステップS10へ進み、第1の油圧ポンプ10の吐出容量を現在位置に固定してステップS4へ進む。
【0014】ステップS4では水温tWと限界水温tWLとの大小を比較するとともに、油温tOと限界油温tOLとの大小を比較する。ここで、限界水温tWLおよび限界油温tOLは、冷却ファン4による冷却水や作動油の冷却を停止しても直ちにオーバーヒートが生じるおそれがない温度である。ステップS4で水温tWが限界水温tWLより低くかつ油温tOが限界油温tOLよりも低いと判断したときはステップS5へ進む。ステップS5ではパイロット圧P1,P2と基準圧P1K,P2Kとの大小関係をそれぞれ比較し、パイロット圧P1,P2が基準圧P1K,P2K以上のときステップS6へ進む。なお、一例として、基準圧P1Kは油圧シリンダ14aが起動し始めるときのパイロット圧P1に等しく設定され、基準圧P2Kは油圧モータ14bが起動し始めるときのパイロット圧P2に等しく設定される。ステップS6では、電磁比例弁18のソレノイド部18sへの駆動電流を一定時間かけて零まで減少させる。これにより、第2の油圧ポンプ11の吐出容量は零に向って漸減する。ステップS4またはステップS5が否定される場合はステップS11に進み、電磁比例弁18のソレノイド部18sへの駆動電流を最大値に設定して第2の油圧ポンプ11の吐出容量を最大にする。ステップS6またはステップS11の終了後はステップS1に戻り、以下同様の処理を繰り返す。
【0015】以上の処理手順では、原動機1に過負荷が加わってその実回転数Naが目標回転数Nrから基準回転数kを越えて低下すると、ステップS2が肯定されて第1の油圧ポンプ10の吐出容量が低減される。第1の油圧ポンプ10の吐出容量の低下によって実回転数Naが上昇して偏差ΔNが基準回転数k以内まで減少するとステップS2が否定され、ステップS10で第1の油圧ポンプ10の吐出容量が固定される。リモコン弁20,21が同時に操作されてブームの俯仰動作および機体上部の旋回動作が同時に起動されると、ステップS5が肯定されてステップS6の処理が実行され、第2の油圧ポンプ11の吐出容量が減少して第2の油圧ポンプ11の吸収トルクが低減される。これにより原動機1の出力に余裕が生じ、原動機1の実回転数Naの低下によってステップS2が肯定されて第1の油圧ポンプ10の吐出容量が低減される頻度が減少する。このため、第1の油圧ポンプ10の吐出容量が高く維持され、油圧シリンダ14aや油圧モータ14bへのより多くのエネルギが分配されて同一負荷の作業を従来よりも高速で行なうことが可能となる。
【0016】ステップS6で第2の油圧ポンプ11の吐出容量が低減されると冷却ファン4による冷却効果が一時的に損われるが、ブーム俯仰と旋回の複合動作は短時間で終了する場合がほとんどで、複合動作終了後はステップS5が否定されてステップS11の処理が実行され、第2の油圧ポンプ11の吐出容量がすぐに最大値まで戻るので、オーバーヒートが生じるほど冷却性能が損われることはない。しかも、実施例では水温tW、油温tOの少なくともいずれか一方が限界水温tWL、限界油温tOLを越えると、ステップS4が否定されてステップS11で第2の油圧ポンプ11の吐出容量が最大値に戻されるので、仮にブーム俯仰と機体旋回の複合動作を長時間継続したとしても、水温tW、油温tOがオーバヒートの生じる領域まで上昇しない。
【0017】本実施例では、第2の油圧ポンプ11の傾転レギュレータ11aの制御に電磁比例弁18を用い、吐出容量を低減させる必要があるときにはソレノイド部18sの駆動電流を徐々に減少させるので、チェック弁16の機能とあいまって第2の油圧ポンプ11の吐出容量の急激な低下によるキャビテーションの発生が防止される。
【0018】−第2実施例−次に図3および図4によって本発明の第2実施例を説明する。なお、上述した第1実施例と共通する部分には同一符号を付し、説明を省略する。図3に示すように、本実施例が第1実施例と異なるのは、リモコン弁20,21から出力されるパイロット圧を監視する圧力センサが省略され、コントローラ40が、燃料レバー31で設定される目標回転数Nrと、原動機1の出力軸と対向配置した回転数センサ32で検出される原動機実回転数Naと、水温センサ33で検出される冷却水の温度tWと、油温センサ34で検出される作動油の温度tOとに基づいて第1、第2の油圧ポンプ10,11の吐出容量を制御する点にある。
【0019】図4はコントローラ40の処理を示すフローチャートである。コントローラ40はまずステップS21で目標回転数Nr、原動機実回転数Na、水温tW、油温tOを読み込み、次のステップS22で目標回転数Nrと原動機実回転数Naとの偏差ΔN(=Nr−Na)の絶対値|ΔN|を基準回転数kと大小比較する。偏差ΔNの絶対値が基準回転数kよりも高いと判断したときはステップS23へ進む。ステップS23では、実回転数Naと目標回転数Nrとの大小を比較し、実回転数Naの方が低いと判断したときステップS24へ進む。ステップS24では、水温tWと限界水温tWLとの大小を比較するとともに、油温tOと限界油温tOLとの大小を比較する。
【0020】ステップS24で水温tWが限界水温tWLより低くかつ油温tOが限界油温tOLよりも低いと判断したときはステップS25へ進む。ステップS25では電磁比例弁18のソレノイド部18sへの駆動電流を一定時間かけて零まで減少させ、第2の油圧ポンプ11の吐出容量を零に向けて漸減させる。次のステップS26では第2の油圧ポンプ11の吐出容量低下後の原動機実回転数Naを読み込み、次のステップS27では新たに読み込まれた実回転数Naと目標回転数Nrとの偏差ΔN(=Nr−Na)の絶対値|ΔN|を基準回転数kと大小比較する。偏差ΔNの絶対値が基準回転数kよりも大きいと判断したときはステップS28へ進み、第1の油圧ポンプ10の吐出容量をΔNに応じて変化させる。
【0021】ステップS22が否定される場合はステップS30に進み、第1の油圧ポンプ10の吐出容量を固定する。次のステップS31では水温tWと限界水温tWLとの大小を比較するとともに、油温tOと限界油温tOLとの大小を比較する。水温tWが限界水温tWL以上、若しくは油温tOが限界油温tOL以上のときはステップS32へ進み、第2の油圧ポンプ11の吐出容量を最大にする。ステップS23が否定される場合はステップS24〜ステップS27の処理を行なうことなくステップS28へ進む。ステップS24が否定される場合はステップS40へ進み、第2の油圧ポンプ11の吐出容量を最大にした上でステップS26へ進む。ステップS31が肯定される場合、およびステップS28、ステップS32の終了後はステップS21へ戻り、以下同様の処理を繰り返す。
【0022】以上の処理手順では、原動機1に過負荷が加わってその実回転数Naが目標回転数Nrから基準回転数kを越えて低下すると、まずステップS25で第2の油圧ポンプ11の吐出容量が低減され、第2の油圧ポンプ11の吸収トルクが低減される。これにより原動機1の過負荷が解消して回転数偏差ΔNの絶対値が基準回転数k以内になると、ステップS27が肯定されるとともにステップS22が否定され、負荷変動によって回転数偏差ΔNが基準回転数kを越えるか、ステップS31が否定されない限り第1、第2の油圧ポンプ10,11の吐出容量が固定される。
【0023】第2の油圧ポンプ11の吸収トルクの低減後も偏差ΔNの絶対値が基準回転数kを越える場合は、ステップS28で第1の油圧ポンプ10の吐出容量が調整され、偏差ΔNが基準回転数k以内になったときにステップS22が否定されて第1、第2の油圧ポンプ10,11の吐出容量が固定される。なお、ステップS28の処理は第2の油圧ポンプ11の吸収トルクを低減してもなお実回転数Naが低いままの場合だけでなく、実回転数Naが目標回転数Nrから基準回転数kを越えて増加したときにも行なわれる。この場合には、実回転数Naが下がるように第1の油圧ポンプ10の吐出容量が増やされるので、第1の油圧ポンプ10の入力馬力が一層増加する。
【0024】以上から明らかなように、本実施例では原動機1に過負荷が加わった場合、まず冷却用の第2の油圧ポンプ11の吐出容量を優先的に減少させて原動機1の負荷を軽減させるので、第1の油圧ポンプ10の入力馬力が増加して油圧シリンダ14aや油圧モータ14bへより多くのエネルギが分配される。ブームの俯仰と旋回の複合動作をしたときでも、原動機1の出力に余裕がある限り冷却用の第2の油圧ポンプ11の吐出容量が低減されないので、冷却効果も高く維持される。第2の油圧ポンプ11の吐出容量を減少させるか否かを原動機1の目標回転数Nr、実回転数Naの相対関係に基づいて判断するので、第1実施例のように特定の作業アタッチメントの起動を検出する手段を設ける必要がない。水温tW、油温tOのいずれか一方が限界水温tWL、限界油温tOLを越えるときは、ステップS32またはステップS40で第2の油圧ポンプ11の吐出容量が最大値に戻されて冷却ファン4による冷却が再開されるので、第1実施例と同様、水温tW、油温tOがオーバヒートの生じる領域まで上昇するおそれがない。
【0025】−第3実施例−次に図5を参照して本発明の第3実施例を説明する。なお、第1実施例と共通する部分には同一符号を付し、説明を省略する。図5に示すように、本実施例では、冷却ファン4の駆動用の第2の油圧ポンプ11Aが固定容量形のものに変更されるとともに、油圧モータ3をバイパスするバイパス管路50にアンロード弁51が設けられ、このアンロード弁51のパイロット管路52がコントローラ30で制御される電磁比例弁18の出力側と接続されている。電磁比例弁18が最大開度のとき、パイロット管路52の圧力によってアンロード弁51がバイパス管路50を連通する位置に切換わる。電磁比例弁18の開度が零のときはパイロット管路52がタンクと接続される。
【0026】本実施例によれば、第1実施例と同様にブームの俯仰と旋回の複合動作が起動されたことを圧力センサ26,27が検出すると、コントローラ30が電磁比例弁18のソレノイド部18sへ駆動電流を供給し、電磁比例弁18が最大開度となってアンロード弁51がバイパス管路50を開放する側に切換わる。これにより、第2の油圧ポンプ11Aの吐出油が油圧モータ3を迂回してバイパス管路50からタンクへ流出するので、第2の油圧ポンプ11Aの吸収トルクが低減され、第1の油圧モータ10の入力馬力が増加する。複合動作をしないとき、あるいは、水温センサ33、油温センサ34で検出される水温tW、油温tOのいずれか一方が限界水温tWL、限界油温tOLを越えるときは電磁比例弁18が閉じてアンロード弁51がバイパス管路50を閉塞するので、第2の油圧ポンプ11Aの吐出油で油圧モータ3が駆動されて冷却ファン4による冷却が行なわれる。
【0027】以上の実施例のうち、第1,第3実施例では、ブーム俯仰および機体上部旋回の複合動作による負荷が原動機1に加わる場合に冷却ファン駆動用油圧ポンプの吸収トルクを予め低減させ、第2実施例では原動機1に実際に過負荷が加わったときに冷却ファン駆動用の油圧ポンプの吸収トルクを低減させたが、本発明はこのような態様に限定されることなく、ブーム以外のフロントアタッチメントの負荷が加わった場合に冷却ファン側の吸収トルクを低減させたり、あるいは原動機に過負荷が加わる前、例えば原動機の最大出力の90%を越えた時点で吸収トルクの低減を開始するなど、冷却ファン用油圧ポンプの吸収トルクの低減時期は種々変更可能である。
【0028】各実施例では第2の油圧ポンプの吐出容量を零まで低減させたが、必ずしもその必要はなく、冷却ファン4を停止するとすぐに水温が上昇するような場合には通常時の半分程度まで減らして冷却ファン4による冷却効果を残すなど、本発明が適用される建設機械の性能に応じて種々変更して良い。また、本発明の適用範囲が、作業アタッチメント側の第1の油圧ポンプ10をスピードセンシング制御する場合に限らないことも勿論である。さらに、油圧ショベルを一例として説明したが、その他の建設機械にも適用可能である。
【0029】以上の実施例では、傾転レギュレータ11aと電磁比例弁18、または電磁比例弁18とアンロード弁51とがトルク制御手段を構成する。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、原動機に所定の負荷が加わると冷却ファン駆動用の油圧ポンプの吸収トルクが低減されるので、原動機に余裕が生じて作業アタッチメントや旋回用のアクチュエータなどの油圧ポンプにより多くのエネルギが分配され、その油圧ポンプの入力馬力が増加する。原動機に所定の負荷が加わるときだけ冷却ファン駆動用ポンプの吸収トルクが低減され、その他の場合には所定の冷却能力が得られるので、全体として冷却性能の低下も僅かである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る油圧回路図。
【図2】図1のコントローラ30での処理手順を示すフローチャート。
【図3】本発明の第2実施例に係る油圧回路図。
【図4】図2のコントローラ40での処理手順を示すフローチャート。
【図5】本発明の第3実施例に係る油圧回路図。
【図6】従来の冷却ファンの駆動装置の回路図。
【符号の説明】
1 原動機
3 冷却ファン駆動用の油圧モータ
4 冷却ファン
11,11A 冷却ファン駆動用の油圧ポンプ
11a 傾転レギュレータ
18 電磁比例弁
30,40 コントローラ
51 アンロード弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】 原動機に駆動される油圧ポンプと、この油圧ポンプの吐出油で駆動され、前記原動機の冷却水や作動油の冷却ファンを回転させる油圧モータとを備えた冷却ファンの駆動装置において、前記原動機に所定の負荷が加わったときに前記油圧ポンプの吸収トルクを低減するトルク制御手段を設けたことを特徴とする冷却ファンの駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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