説明

冷却ユニット

【課題】本発明は冷媒から析出される氷によって流量調整弁等の機器が氷詰まりを起こさないようした冷却システムに関し、氷フィルタ装置の氷詰まりを早期に検知しこれに対応することによりプローバの設定温度を希望する温度に適正に制御することを課題とする。
【解決手段】被温度制御対象を保持するため冷媒流路に接続されたチャックPと、冷凍機22で冷却された冷媒24の流量調整を行う流量調整弁28と、冷凍機22で発生する氷を冷媒24から除去する氷フィルタ装置50と、チャックPのチャック温度を検出する温度センサー30aとを有する冷却システムであって、判定開始時間の経過後に、判定開示時間の経過後における流量調整弁28の正常な弁開度である基準弁開度値に基づく判定値と、現在の冷却システムの状態から演算される流量調整弁28への流量調整弁指令値とを比較し、流量調整弁指令値が前記判定値よりも大きいと判断したとき、氷詰まり防止装置50に対する再生処理を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷却ユニットに係り、特に冷媒から析出される氷によって流量調整弁等の機器が氷詰まりを起こさないようした冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造技術の分野では、半導体ウエハー(主にシリコンウエハー)上に半導体素子あるいは半導体回路(以下、半導体素子等という)を製造した後、その半導体素子等が正常に動作するかどうかを調べるための電気的試験が行なわれる。通常、この種の試験は半導体ウエハーをチャックと呼ばれる保持器に保持させ、半導体素子等が後に置かれると想定される使用環境を模擬した状態(動作環境温度)を作り出して行なわれる。このような試験は、以前は、高温領域(室温から150℃程度まで)で行なわれることが多かったが、最近では、低温領域(−10℃〜−50℃)で行なわれることも多くなってきている。
【0003】
低温領域での試験を実現するために、チャックには、その内部に冷却液を流通させる冷却液流路が形成されている。この冷却液流路に冷凍機を用いて冷却した冷却液を流すことにより、チャック自体の温度を低下させ、チャックに保持された半導体ウエハーの温度を低下させることができる。
【0004】
従来、この種のチャックを冷却する冷却システムとしては、例えば特許文献1に開示されたものがある。この冷却システムは、チャックに設けられた冷却液流路に流すための冷媒を蓄えるための低温タンクと、この低温タンク内の冷媒をチャックの冷却液流路へ送り出すためのポンプと、冷媒を冷却するための冷凍機と、チャックに対して流す冷媒の流量の調整を行う流量調整弁等を有した構成とされている。
【0005】
ところで、ガルデンやフロリナート等の表面張力の小さいフッ素系の冷媒は、室温状態では、空気から水分を吸収しやすいという性質を持っており、低温タンク内に存在する湿った空気から水分が冷媒に吸収されることがある。この低温タンク内で水分を吸収した室温の冷媒が、冷凍機で0°C以下の低温に冷却されると、冷媒から水が析出し、この水は冷凍機で冷却されて氷になる。この氷は、冷却された低温冷媒とともに流れて流量調整弁に運ばれることがある。
【0006】
氷を含んだ冷媒が流量調整弁に運ばれると、流量調整弁に氷が入り込み弁座と弁体が凍りつき、流量調整弁が適正に動作することができなくなる。このような異常が発生すると、冷凍機で冷却された約−70°C(=T4)の氷を含んだ低温冷媒が流量調整されずに低温タンクにそのまま流れ込むため、低温タンク内の冷媒温度が大きく低下して、プローバの設定温度を希望する温度に制御することができなくなる。
【0007】
また、流量調整弁に氷が詰まった場合には、冷媒が流量調整弁を通過できなくなり、この場合には冷凍機で冷却された冷媒が低温タンクに供給されず、低温タンク内の冷媒温度が大きく上昇し、この場合においてもプローバの設定温度を希望する温度に制御することができなくなる。
【0008】
そこで、引用文献1に開示された冷却システムでは、冷凍機と流量調整弁とを繋ぐ配管に氷をトラップできる氷フィルタ装置を設けた構成が提案されている。冷凍機と流量調整弁との間に氷フィルタ装置を設けることにより、冷凍機で発生し冷媒に混入した氷は氷フィルタ装置でトラップされて流量調整弁に至ることはなくなる。よって、流量調整弁は冷凍機で発生する氷に影響されることなく動作することが補償される。
【特許文献1】特開2006−283991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、引用文献1に開示された冷凍システムでは、流量調整弁に氷が入り込むことは有効に防止できるが、氷フィルタ装置にトラップされる氷の量が増大し、必要流量を確保することができないレベルにまで達すると、冷却不良が発生するという問題点が生じる。
【0010】
即ち,冷凍機で冷却された冷媒は流量調整弁に向け送り出されるが、氷フィルタ装置に大量の氷がトラップされた状態では、氷フィルタ装置内の流体抵抗が増大してしまう。よって、氷フィルタ装置を通過する冷媒の流量は低下し、冷却された冷媒が低温タンク内に十分に供給されなくなる。このため、氷フィルタ装置を設けても、やはり低温タンク内の冷媒温度が大きく上昇し、プローバの設定温度を希望する温度に制御することができなくなってしまう。
【0011】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、氷フィルタ装置の氷詰まりを早期に検知しこれに対応することによりプローバの設定温度を希望する温度に適正に制御することを可能とした冷却ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題は、本発明の第1の観点からは、
冷媒を循環させる冷媒流路に設けられた循環ポンプと、
該冷媒流路に設けられ前記冷媒を冷却させる冷凍機と、
被温度制御対象を保持するため、前記冷媒流路に接続されたチャックと、
該チャックに設けられ、前記冷媒流路を加熱するヒーターと、
前記冷凍機で冷却された前記冷媒の流量調整を行う流量調整弁と、
前記冷凍機と前記流量調整弁との間に配設され、前記冷凍機で発生する氷を前記冷媒から除去することにより氷詰まりの発生を防止する氷詰まり防止装置と、
前記チャックのチャック温度を検出するチャック温度検出手段と、
チャック設定温度を設定する温度設定手段と、
該チャック設定温度の設定時からの経過時間を演算する時間演算手段と、
前記流量制御弁に対する流量調整弁指令値を演算する指令値演算手段と、
前記氷詰まり防止装置が正常時において前記チャック温度が前記チャック設定温度となるのに要する経過時間に基づき設定された判定開始時間を格納すると共に、該判定開示時間の経過後における前記流量調整弁の正常な弁開度を基準弁開度値として格納してなる格納手段と、
前記判定開始時間の経過後に、前記基準弁開度値に基づく判定値と前記流量調整弁指令値とを比較し、該流量調整弁指令値が前記判定値よりも大きいと判断したとき、前記氷詰まり防止装置に対する再生処理を開始する氷詰まり防止制御手段と、
を有することを特徴とする冷却システムにより解決することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、熱交換器で発生する氷によって氷フィルタ装置に氷詰まりが発生してきた場合、これを早期に検知して対応することができるため、プローバの設定温度を希望する温度に常に適正に制御することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面と共に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態である冷却システムを示す全体構成図である。本実施形態に係る冷却システムは、大略するとチラーユニット10,プローバ11,及び各種制御処理を行う制御装置60等により構成されている。
【0016】
チラーユニット10は、例えば半導体ウエハー(被温度制御対象)の試験に適用されるものであり、半導体ウエハーが搭載されるプローバ11内のチャック12を既定温度に保つ機能を奏するものである。
【0017】
半導体ウエハーが搭載されるチャック12には、伝熱盤Pが配設される。この伝熱盤Pは、チラーユニット10の筺体21(ハウジング)内に収納された冷凍機22の熱交換器23で温度を下げられた冷媒24(例えば、フッ素系化学液からなる)を伝熱盤P内に形成された冷却通路29に流すことにより、また伝熱盤Pに取り付けられた伝熱盤ヒーター30で加熱することにより、例えば−70°C〜200°Cの範囲で温度制御される。この伝熱盤ヒーター30は、伝熱盤Pに設置した温度センサー30aの検知する温度に基づいて制御され、伝熱盤Pが予め定めた設定温度になるように伝熱盤Pを加熱する。
【0018】
伝熱盤Pの温度制御を行うチラーユニット10は、冷媒24を循環させるための循環ラインL1,L2と、前記の冷凍機22と、冷媒24を貯留する低温タンク25と、冷媒24を循環させる循環ポンプ27と、熱交換器23で冷却される冷却液の流量を調整する流量調整弁28と、熱交換器23に設けた冷却液通路(図示せず)と、熱交換器23で冷媒24に混入した氷をトラップする氷フィルタ装置50等を有した構成とされている。
【0019】
循環ラインL1とL2の一部或いは全部はステンレス等の金属材料により構成されており、またチラーユニット10内において冷媒24と接触する構成要素の一部或いは全部もステンレス等の金属材料により構成されている。尚、本実施形態に係るチラーユニット10は、冷媒24としてガルデン液やHFE7200(商標)等のフッ素系化学液を用いている。
【0020】
熱交換器23は二重管で構成されており、その内管が冷凍機22側の冷媒の流れる冷媒通路とされ、内管と外管との間に形成される通路が冷媒24の流れる冷却液通路とされている。冷媒24は、この熱交換器23で冷凍機側冷媒と熱交換して冷却されるようになっている。なお、低温タンク25からの冷媒24を内管の中へ、内管と外管との間に形成される流路に冷凍機22からの冷媒が流れるようにしてもよい。
【0021】
低温タンク25はチラーユニット10の筺体21内に収納されており、ほぼ密閉された断熱構造とされている。低温タンク25内の上部空間には、この上部空間を大気に開放する大気開放チューブ26が設けられており、低温タンク25の液面が上昇や下降して、低温タンク25に圧力の変動が生じたとき、その圧力の変動を吸収するようにしている。
【0022】
尚、ガルデンやフロリナート等の表面張力の小さいフッ素系化学液からなる冷媒24は、室温状態では空気から水分を吸収しやすいという性質を持っており、低温タンク25内に存在する湿った空気から水分が冷媒に吸収されることがあることは前述した通りである。
【0023】
循環ポンプ27の吸入側は、低温タンク25に接続されている。また循環ポンプ27の吐出側は、熱交換器23の入口に冷媒24を送る循環ラインL1に接続されると共に、伝熱盤Pの冷却通路29に冷媒24を送る循環ラインL2に接続されている。この循環ポンプ27は、後述する制御装置60により駆動制御が行なわれる。また、循環ポンプ27にはリリーフ弁65が設けられており、循環ポンプ27から一定の圧力で冷媒が供給されるよう構成されている。
【0024】
流量調整弁28は、冷凍機22と低温タンク25とを接続する冷却液循環配管32に取り付けられている。この流量調整弁28は、図2に示すように、ステンレス製のケーシング28aの上部に駆動部28bを有し、その下部に弁部を有している。
この弁部は、ケーシング28aの底部に開口する冷媒入口28cと、冷媒入口28cより上方でケーシング28aの側面に開口する冷媒出口28dと、冷媒入口28cと冷媒出口28dを連通する冷媒流路28eと、冷媒流路28eの途中に形成したケーシング28aと一体の弁座28fと、弁座28fの下部に配置され、弁座の28fの下方から弁座28fに離接して冷媒流路28eを開閉する樹脂製の弁体28gから構成されている。
【0025】
弁体28gは、弁棒28hによって駆動部28bに連結されるとともに、その下方から復帰スプリング28iによって弁座28f側に付勢されている。また、弁体28gは、ケーシング28aの底部から突接されたガイド部材28jによって案内されるようになっている。尚、28kはケーシング28aに設けた断熱材である。
【0026】
このように構成された流量調整弁28は、冷媒入口28cに熱交換器23及び氷フィルタ装置50からの配管23aが接続され、冷媒出口28dに冷却液循環配管32が接続される。また、駆動部28bは後述する制御装置60に接続されており、よって流量調整弁28は制御装置60によりその駆動が制御される。
【0027】
具体的には、流量調整弁28は制御装置60において例えば5秒おきに出される開指令に基づいて開閉制御される構成とされており、この制御装置60から指令される流量調整弁指令値によって駆動部28bは復帰スプリング28iの付勢に抗して弁体28gを弁座28fから所定時間離間(開弁)させる。流量調整弁28が開弁すると、熱交換器23で冷却された冷媒24は流量調整弁28を通過して低温タンク25に流入する。
【0028】
また、上記の所定時間が経過すると、駆動部28bによって弁体28gが駆動されなくなるので、弁体28gは復帰スプリング28iの付勢力によって復帰して冷媒流路28eを閉じるようになる。流量調整弁28はこの開閉を繰り返すことにより熱交換器23で冷却された冷媒24を低温タンク25に供給する。この制御を行うことにより、低温タンク25内の冷媒24の温度は、チャック12の設定温度に対応した温度に調整される。
【0029】
制御装置60は、チャック12の温度が設定された設定されたチャック設定温度(X)に対して低いとき、また低温タンク25内の冷媒24の温度(以下、低温タンク内温度(θ)という)がチャック設定温度(X)に対応した設定温度よりも低いとき、弁体28gの開弁時間が長くなるよう流量調整弁指令値を設定する。尚、チャック12の温度は温度センサー30aにより検出され制御装置60に送信され、低温タンク25内の温度は温度センサー28aにより検出され制御装置60に送信される。
【0030】
氷フィルタ装置50は、熱交換器23と流量調整弁28とを接続する配管23aに設けられている。この氷フィルタ装置50は、低温タンク25内の室温の冷媒24を熱交換器23によって0℃以下の低温にしたとき熱交換器23で発生する氷が流量調整弁28に入るのを防止するためのものであり、流量調整弁28への氷詰まり防止機構として機能している。
【0031】
図3は、氷フィルタ装置50の断面図である。氷フィルタ装置50は、一端が開口したケーシング本体55と、この開口を液密に閉蓋する蓋56とからなるケーシング54と、水は通過させるが熱交換器23で発生した氷はトラップする金網製のフィルタ57aとから構成されている。
【0032】
ケーシング本体55は、図3において下端が開口端として開放された略円筒状の容器として構成されている。このケーシング本体55の上壁55aには、ケーシング本体55内に連通する可撓ホース58が液密に取り付けられている。このホース58は、熱交換器23に接続された配管23aに接続される。
【0033】
蓋56は、ケーシング本体55の側壁55aと同じ厚さの縁部56bを有する容器状に形成されている。蓋56の底壁56aには、継手59が液密に取り付けられている。この継手59は、流量調整弁28の入口側に接続される。蓋56の縁部56bには、ケーシング本体55の段部55cに係合する突出部56cがその全周にわたって一体に形成されている。
【0034】
フィルタ57aは、金網から形成されている。このフィルタ57aは、ケーシング本体55の段部55bの外径とほほ等しい円板状に形成されている。このフィルタ57aを形成する金網のメッシュサイズは、60〜100メッシュとされている。
【0035】
このメッシュサイズとすることにより、熱交換器23で冷却された冷媒とともに運ばれてきた氷をトラップするとともに、後述するようにフィルタ57aでトラップした氷を溶かして水にしたとき、溶けた水が重力のみでフィルタ57aを通過するからである。また、フィルタ57aを60〜100メッシュの金網から形成すると強度不足となるため、フィルタ57aの両側は一対の補強部材57b,57bによって押さえられている。
【0036】
このフィルタ体57は、ケーシング本体55と蓋56とで挟持することによってケーシング54に固定される。またこれにより、ケーシング54内には冷媒が流れるとともにフィルタ57aでトラップされた氷が溜まる上部室54aと、氷が除去された後の冷媒が流れる下部室54bとに画成される(上部室54aは下部室54bより大きな空間とされている)。
【0037】
尚、前記のようにチャック12内には冷却通路29が配設されているが、この冷却通路29の冷却液入口側は伝熱盤接続配管35(往き管)に接続され、冷却液出口側は伝熱盤接続配管36(戻り菅)に接続されている。伝熱盤接続配管35は、循環ポンプ27の吐出口に接続した冷却液供給配管33に接続されている。また、伝熱盤接続配管36は、低温タンク25に連通する冷却液供給配管34(戻り菅)に接続されている。
【0038】
制御装置60は、後述する流量調整弁制御処理及び氷詰まり抑制制御処理等の各種制御処理を実行するものである。この制御装置60にはチラーユニット10及びプローバ11を構成する各種機器及びセンサーが接続されているが、図1には本発明の主要構成となる機器及びセンサーと制御装置60との接続のみを図示している。また、制御装置60には入力装置61及び記憶装置62が接続されている。入力装置61は、後述するチャック設定温度(X)を入力するのに用いられる。また、記憶装置62は、後述する流量調整弁制御処理及び氷詰まり発生確認処理に必要とされる各種データが格納されている。
【0039】
このように構成されたチラーユニット10は、前記のように循環ラインL1,L2の二つの循環ラインを有している。循環ラインL1においては、冷媒24は低温タンク25→循環ポンプ27→熱交換器23(冷凍機22)→氷フィルタ装置50→流量調整弁28→低温タンク25と循環する。また、循環ラインL2では、冷媒24は低温タンク25→循環ポンプ27→冷却液供給配管33→伝熱盤接続配管35→伝熱盤Pの冷却通路29→伝熱盤接続配管36→冷却液供給配管34→低温タンク25と循環する。
【0040】
また、チラーユニット10には、循環ラインL1,L2とは別に、低温タンク25内に冷却液を補給するほぼ密閉された常温タンク38が設けられている。この常温タンク38は低温タンク25の下方に設けられており、また常温タンク38内の上部空間にはタンク上部空間を大気に開放する大気開放チューブ39が接続されている。常温タンク38の容積は、低温タンク25へ冷媒24を補給できる量を確保しうる容積とされている。
【0041】
この常温タンク38には、循環ラインL1,L2の冷媒24の液量が減少して冷却液が足りなくなったとき、常温タンク38内の冷媒24を低温タンク25に補給する補給ポンプ40が接続されている。補給ポンプ40は、低温タンク25内に設けた液面センサー41の検知する液量に基づいて自動的に運転されるようになっている。補給ポンプ40により常温タンク38から送り出される冷媒24は、補給用ホース40aにより低温タンク25に送られる。
【0042】
この液面センサー41は、制御装置60に接続されている。そして、液面センサー41により液面25aの高さが所定位置より低くなったと判断されたとき、制御装置60は低温タンク25内の冷媒24の液量が減少したと判断し、補給ポンプ40を駆動開始する構成とされている。
【0043】
また、常温タンク38は、制御装置60に接続された液面センサー43が取り付けられている。そして、この液面センサー43が常温タンク38の冷媒が一定量以下となったことを検知すると、制御装置60は接続されたアラーム駆動指令手段(図示せず)を駆動しアラームを発する構成とされている。
【0044】
また、チラーユニット10では、冷却通路29を高温に制御したときに循環ラインL1,L2内で冷媒24が膨張して、低温タンク25内の液面25aが上昇することがある。このため、低温タンク25にはオーバーフロー管42が設けられており、上昇した低温タンク25内の余分な冷媒24はオーバーフロー管42を介して補給タンク38に移動させる構成とされている。
【0045】
続いて、上記構成とされたチラーユニット10の基本動作について説明する。
【0046】
伝熱盤Pを高温(例えば、40°C以上)で温度制御するときは、制御装置60は循環ポンプ27の運転を停止し、伝熱盤Pに取り付けた伝熱盤ヒーター30を駆動する。伝熱盤ヒーター30は、温度センサー30aが検知する温度に基づいて伝熱盤Pの温度が設定温度になるように恒温制御がされる。
【0047】
一方、伝熱盤Pを低温(例えば40°Cより低い温度)で温度制御するときは、制御装置60は循環ポンプ27を駆動する。循環ポンプ27は、低温タンク25内の冷媒24を冷凍機22の熱交換器23に送ると共に、冷却液供給配管33及び伝熱盤接続配管35を通して伝熱盤Pの冷却通路29に送る。
【0048】
熱交換器23の冷却液通路に送られた冷媒24は、熱交換器23の冷媒通路を流れる冷凍機22側冷媒と熱交換して温度を下げ、流量調整弁28を通って低温タンク25に戻される。この際、低温タンク25に戻される冷媒24の流量は、流量調整弁28により制御される。この流量調整弁28の制御は制御装置60により行なわれるが、この制御装置60による流量調整弁28の制御については、説明の便宜上、後述するものとする。
【0049】
このようにして、循環ラインL1を流れる冷媒24は熱交換器23によって徐々に温度が下げられていく。他方、伝熱盤Pの冷却通路29に送られた冷媒24は、冷却通路29を通る間に温度を上げ、伝熱盤接続配管36、冷却液供給配管34を通って低温タンク25に戻される。
【0050】
ところで、上記のように伝熱盤Pを冷媒24と伝熱盤ヒーター30によって温度制御するとき、循環ラインL1,L2の冷媒24がその揮発や収縮などによって減少することがある。このようにして循環ラインL1,L2の冷媒24が減少すると、低温タンク25に設けた液面センサー41からの信号により制御装置60は冷媒24の減少を検知する。
【0051】
これにより、制御装置60は補給ポンプ40を駆動し、常温タンク38内の冷媒24を低温タンク25に補給する。また、常温タンク38から低温タンク25に冷媒24が補給され、液面センサー41が冷媒24の減少を検知しなくなると、制御装置60によって補給ポンプ40の運転が停止される。
【0052】
一方、冷媒24の膨張に伴い低温タンク25の液面25aが上昇し、冷媒24がオーバーフロー管42の冷却液入口42aを超えると、冷媒24はオーバーフロー管42に流れ込み、重力によってオーバーフロー管42内を下降して常温タンク38へ移動する。
【0053】
これによって低温タンク25内の余分な冷媒24は常温タンク38に流れるため、低温タンク25内の液面25aがオーバーフロー管42の冷却液入口42aの高さ以上となるようなことはない。これにより、チラーユニット10に必要な最小限の冷媒24以外は、常温タンク38に溜められることになる。
【0054】
また、常温タンク38内の冷媒が一定量以下になると、液面センサー43がそれを検知し、その検知信号が制御装置60に送信される。制御装置60はこの検知信号を受信すると、接続されたアラーム駆動指令手段(図示せず)駆動してアームを発する。これにより、冷媒24の不足により、チラーユニット10の稼動に不都合が生じることを防止できる。
【0055】
次に、制御装置60による流量調整弁28の制御動作について説明する。
【0056】
制御装置60は、低温タンク25内に設けた温度センサー28aの検知温度、及びチャック12に設けられた温度センサー30aの検知温度に基づいて流量調整弁28を制御し、低温タンク25内の冷媒24の温度が伝熱盤Pの設定温度に対応した所定の設定温度になるように循環ラインL1を流れる冷媒24の液量を調整する。
【0057】
図6は、制御装置60による流量調整弁28の制御処理を示すフローチャートである。同図に示す流量調整弁制御処理が起動すると、制御装置60はステップ10(図ではステップをSと略称している)において、入力装置61から入力されたチャック設定温度(X)を読み込む。また、チャック設定温度(X)が読み込まれると、制御装置60はチャック設定温度(X)に基づき低温タンク25の低温タンク設定温度(X')を演算する。この低温タンク設定温度(X')は、X'=X−α(αは定数)で求められる。本実施形態では、この定数αは一例として7℃に設定されている。
【0058】
即ち、チャック12は低温タンク25から供給される冷媒24により冷却されるが、冷媒24の温度は低温タンク25からチャック12に至る経路(冷却液供給ホース34,伝熱盤接続ホース36等)において熱侵入が必然的に発生する。このため、低温タンク25内の冷媒24の温度をチャック設定温度(X)とすると、この熱侵入によりチャック12に至ったときの冷媒24の温度は、チャック設定温度(X)よりも高い温度となり、チャック12をチャック設定温度(X)とすることができない。このため、予め低温タンク25内の冷媒24の温度を温度は低温タンク25からチャック12に至る経路で発生する昇温分だけ低く設定している。定数αは、この低温タンク25からチャック12に至る経路で発生する昇温温度に基づき設定されている。
【0059】
上記のようにステップ10において、チャック設定温度(X)が指定されると共に、これに伴い低温タンク設定温度(X')が演算されると、制御装置60は低温タンク25内の冷媒24の温度(以下、低温タンク内温度(θ)という)が低温タンク設定温度(X')となるよう制御し、又伝熱盤Pを低温タンク25から追った冷媒24と、伝熱盤Pに内蔵したヒーター30aにより制御する。また、これと同時に制御装置60は、ステップ12において内蔵されているタイマーを起動する。よって、チャック設定温度(X)の設定後の時間は、このタイマーにより求めることができる。
【0060】
尚、本実施形態では入力装置61からチャック設定温度(X)を入力する構成を示しているが、冷却システムが被温度制御対象の試験を行う試験装置のホストコンピュータに接続されている場合には、このホストコンピュータから直接指定される構成とすることも可能である。
【0061】
続くステップ14では、温度センサー28aから低温タンク内温度(θ)を検出する。更に、制御装置60は、前記したステップ12で起動したタイマーから、チャック設定温度(X)を設定した後の経過時間(t)を演算する。
【0062】
続くステップ18では、ステップ10で求められた低温タンク設定温度(X')、ステップ14で求められた低温タンク内温度(θ)、ステップ16で演算された経過時間(t)に基づき、制御装置60はPID制御により流量調整弁指令値(Z)を演算する。このように流量調整弁指令値(Z)が演算されると、続くステップ20において、制御装置60はステップ18で求められた流量調整弁指令値(Z)に基づき流量調整弁28を駆動する。
【0063】
続くステップ22では、ステップ10による新たなチャック設定温度(X)の入力があったか否かを判定する。新たなチャック設定温度(X)の入力があった場合、タイマーのリセットを行う必要がある。このため、ステップ24で肯定判断(YES)が行なわれた場合、経過時間(t)をリセット(t=0)とした上で、処理をステップ10に戻す。
【0064】
一方、ステップ22において否定判断がされた場合は、ステップ26の処理により5秒の経過するのを待って処理をステップ14に戻す。
【0065】
図5は、上記した流量調整弁制御を実施したときのチャック現在温度(Y)の変化を示している。同図では、チャック設定温度(X)が+25℃から−40℃に切替えられた例を示している。例えば、入力装置61からチャック設定温度(X)が−40℃に切替えられたとすると、ステップ10の処理により、低温タンク設定温度(X')は−47℃に設定される(X'=−40−7=−47)。
【0066】
また、低温タンク25に対する流量調整弁指令値(Z)は、前記のように低温タンク設定温度(X')、低温タンク現在温度(θ)、及び経過時間(t)に基づきPID制御により決められる。よって、例えば図5においてチャック設定温度(X)が切替えられた直後である経過時間(t1)では、流量調整弁指令値(Z)は約100%(100%が全開)となっている。PID制御によりこの流量調整弁指令値(Z)の値は低温タンク現在温度(θ)の値等により変化し、例えば経過時間(t1)よりも所定時間経過した後である経過時間(t)では、流量調整弁指令値(Z)は約80%とされる。
【0067】
そして、この流量調整弁28に対する制御により、低温タンク25内の冷媒24の温度も変化し、チャック12に供給される冷媒24の温度も低下する。このため、図5に破線で示すように、チャック現在温度(Y)の温度はチャック設定温度(X)である−40℃に収束する温度変化となる。図5に示す例では、経過時間(t)においてチャック12の温度はチャック設定温度(X)である−40℃に安定した状態となる。このように、図6に示流量調整弁制御を実施することにより、チャック12の温度をチャック設定温度(X)となるよう制御することができる。尚、同図において実線で示すのはチャック設定温度(X)である。
【0068】
ところで、チャック設定温度(X)が設定されてから、実際にチャック12のチャック現在温度(Y)がチャック設定温度(X)となるまでの時間は、正常状態である場合(後述するような氷詰まりが発生していない場合)では常に略一定の時間となる(以下、この時間を基準収束時間tという)。
【0069】
そこで、記憶装置62には、設定前後のチャック設定温度(X)の組み合わせと、この時にチャック現在温度(Y)が設定後のチャック設定温度(X)となるまでの時間である基準収束時間tとが関連付けられて各種格納されている。具体的には、上記の例では設定前(前回)のチャック設定温度(Xとする)が(X=+25℃)であり、設定後のチャック設定温度(Xとする)が(X=−40℃)であり、この時の基準収束時間がtである。よって、組み合わせは(X=+25℃,X=−40℃,t)となるが、この組み合わせも記憶装置62に格納されている。
【0070】
この組み合わせは種々考えられるが、実際の流量調整弁制御において用いられると想定される各種組み合わせが記憶装置62に格納されている。従って、制御装置60は、前回設定された前回チャック設定温度(X)と、今回設定された今回チャック設定温度(X)により、記憶装置62からこの時の基準収束時間を求めることができる。
【0071】
ところで、本実施形態に係る冷却ユニットは、流量調整弁28に熱交換器23で冷媒24に混入する氷が詰まるのを防止するため、冷媒24に混入された氷を流量調整弁28に至る前にトラップする氷フィルタ装置50を設けている。しかしながら、この氷フィルタ装置50自体に氷が詰まった場合には、冷媒24の流れが氷フィルタ装置50により阻害され、流量調整弁28に適正に冷媒24が供給されず、結果としてチャック12を適正に冷却することができなくことは前述した通りである。
【0072】
そこで、制御装置60は、氷フィルタ装置50に氷詰まりが発生したことを流量調整弁28の開弁度により検出し、この検出結果に基づき氷フィルタ装置50に対して氷を除去する再生処理を行う構成とされている。以下、この制御装置60が実行する氷詰まりに対応する制御処理(氷詰まり制御処理)について説明する。
【0073】
図7は制御装置60が実行する氷詰まり発生確認処理を示すフローチャートであるが、同図を用いた具体的な制御処理の説明に先立ち、本実施形態において氷詰まりの発生を検出する原理について説明する。
【0074】
図5を用いて説明したように、チャック設定温度(X)が設定されてから、実際にチャック12のチャック現在温度(Y)がチャック設定温度(X)となるまでの時間は、氷詰まりが発生していない正常である場合では常に一定の時間(基準収束時間t)となる。
【0075】
図4は、チャック現在温度(Y)がチャック設定温度(X)に達し、定常状態となった状態における定常時流量調整弁指令値とチャック設定温度との関係を示している。同図に示す基準弁開度値は、各種のチャック設定温度(X)が設定されたとき、当該チャック設定温度(X)において定常状態となったときにおける流量調整弁28の流量調整弁指令値(特に、定常時流量調整弁指令値という)を示している。
【0076】
同図より、上記のようにチャック設定温度(X)を−40℃に設定した場合の定常時流量調整弁指令値を求めるには、基準弁開度値を示す線分と−40℃との交点を求めればよい。よって、チャック設定温度(X)を−40℃に設定した場合の定常時流量調整弁指令値は、18%であることが分る。
【0077】
以上の事項を纏めると、氷詰まりが発生していない正常状態においては、基準収束時間tが経過した際、制御装置60から流量調整弁28に指定されている流量調整弁指令値(Z)は18%となる。
【0078】
しかしながら、氷フィルタ装置50に氷詰まりが発生し、流量調整弁28から冷媒24が低温タンク25に供給されない状態となると、低温タンク25の低温タンク内温度(θ)は上昇してしまう。従って、低温タンク25からチャック12に供給される冷媒24の温度も高くなり、チャック12のチャック現在温度(Y)も上昇してしまう。
【0079】
図5に一点鎖線で示す特性は、氷フィルタ装置50に氷詰まりが発生した状態を示している。同図に示すように、氷フィルタ装置50に氷詰まりが発生した場合は、基準収束時間tが経過した後も、チャック現在温度(Y)はチャック設定温度(X)よりも高い温度を維持した状態となっている。よって、制御装置60は、このようにチャック現在温度(Y)がチャック設定温度(X)よりも高い場合は、図6のステップ18,20で説明したPID制御により、流量調整弁28に対する流量調整弁指令値(Z)を基準弁開度値である18%よりも大きな値に設定する。
【0080】
従って、基準収束時間tの経過後において、流量調整弁指令値(Z)が基準弁開度値(本実施形態の場合は18%)よりも大きい場合、氷フィルタ装置50に氷詰まりが発生していると判定することができる。本実施形態では、上記の原理に基づき氷フィルタ装置50に氷詰まりが発生したか否かを判定している。
【0081】
また検出精度を向上させるため、次に述べる二つの手段を講じている。即ち、上記した原理によれば、流量調整弁指令値(Z)が基準弁開度値よりも大きいか否かを判定するタイミングは、基準収束時間tであればよい。しかしながら本実施形態では、第1の手段として、基準収束時間tよりも所定時間遅い時間であるt(図5参照)に設定している(以下、この時間を判定時間tという)。
【0082】
このように、実際に氷詰まりが発生しているか否かの判定タイミングを基準収束時間tよりも遅い判定時間tとすることにより、機器誤差等により発生する基準収束時間tのばらつきの影響を排除することができ、氷詰まりの発生検出の精度を高めることができる。尚、基準収束時間tは、前記のように前回のチャック設定温度(X)と今回のチャック設定温度(X)とに相関している。このため、判定時間tも前回のチャック設定温度(X)と今回のチャック設定温度(X)とに相関しており、これらは関連付けられて記憶装置62に記憶されている。
【0083】
一方、上記した原理によれば、氷詰まりの発生は、現在の流量調整弁28に対する流量調整弁指令値(Z)と、基準弁開度値(図4参照)との値を比較すればよいこととなる。しかしながら図4に示すように、基準弁開度値には実線で示す平均値に対して一定の誤差分布を有している(図4に、誤差分布を矢印Aで示す)。この誤差は、チラーユニット10及びプローバ11を構成する機器や環境に起因して発生する。そこで本実施形態では、この基準弁開度値の誤差範囲の最大値である値を判定値Wとし、これと流量調整弁28の実際の流量調整弁指令値(Z)とを比較することにより、氷詰まりの発生を検出する構成としている。この判定値Wは、今回のチャック設定温度(X)に関連付けられて記憶装置62に格納されている。
【0084】
次に、上記した事項に基づき実施される氷詰まり発生確認制御について、図7を参照して説明する。尚、図7に示す詰まり制御処理は、図6に示した流量調整弁制御が起動することにより、同時に起動するよう構成されている。
【0085】
この氷詰まり制御処理が起動すると、制御装置60はステップ30において、経過時間(t)の読み込み、及び判定開始時間tの読み込みを行う。ここで読み取られる経過時間(t)は、図6に示すステップ16で演算されるものである。また判定開始時間tは前記のように記憶装置62に記憶されているものであり、前回のチャック設定温度(X)と今回のチャック設定温度(X)とを指標として求められる。
【0086】
ステップ30において判定開始時間t及び経過時間(t)が読み込まれると、続くステップ32では制御装置60は経過時間(t)が判定開始時間tとなったか否かを判定する。経過時間(t)が判定開始時間tとなっていない場合は、ステップ34以降の氷フィルタ装置50の氷詰まり処理を行うことができないため、氷詰まり処理を終了する。
【0087】
一方、ステップ32において、経過時間(t)が判定開始時間tとなったと判断されると、処理はステップ34に進み、判定値Wの読み込みと流量調整弁指令値(Z)の読み込みを行う。
【0088】
ここで、判定値Wは記憶装置62に格納されたものであり、図6のステップ10で設定されたチャック設定温度(X)を指標として求められるものである。本実施形態のようにチャック設定温度(X)が−40℃である場合、図4に示すように、判定値Wの値は25%である。また、流量調整弁指令値(Z)は、制御装置60が現在流量調整弁28に与えている流量調整弁指令値の値を読み込む(図6のステップ18,20参照)。
【0089】
上記のようにステップ34で判定値W及び流量調整弁指令値(Z)が読み込まれると、続くステップ36において、制御装置60は流量調整弁指令値(Z)が判定値Wを超えているか否か(Z>W)の比較判断を行う。前記のように、流量調整弁指令値(Z)が判定値Wよりも小さい場合は、氷フィルタ装置50に氷詰まりは発生しておらず、冷媒24を適正に流量調整弁28に供給している状態である。このため、ステップ36で否定判断(NO)がされた場合は、ステップ38以下の再生処理を実施することなく、氷詰まり制御処理を終了する。
【0090】
一方、ステップ36で流量調整弁指令値(Z)が判定値Wを超えていると判断された場合は、氷フィルタ装置50に氷詰まりが発生している状態である。よって、ステップ36で肯定判断(YES)がされた場合は、ステップ38以下の再生処理を実施する。
【0091】
本実施形態では、伝熱盤ヒーター30及び循環ポンプ27を熱源として氷フィルタ装置50内に詰まった氷を溶かす再生方法を採用している。具体的には、制御装置60は冷凍機22を停止させると共に伝熱盤ヒーター30を駆動する。また、循環ポンプ27を駆動して、循環ラインL1,L2に冷媒24が循環するように設定する。これにより、冷媒24は伝熱盤ヒーター30で加熱され、これにより昇温した冷媒24は氷フィルタ装置50に至る。これにより、氷フィルタ装置50内の氷は溶解されて液状となる。
【0092】
このチラーユニット10の再生運転は、氷フィルタ装置50に発生している氷詰まりの具合に応じて運転時間を切替える必要がある。具体的には、判定開始時間tの経過時における流量調整弁指令値(Z)の大きさに応じて運転時間を切り替え、流量調整弁指令値(Z)が大きい場合には運転時間を長く設定し、流量調整弁指令値(Z)が小さい場合には運転時間を短く設定する構成としてもよい。また、低温タンク25内の温度センサー28aを利用し、運転時間を自動で設定する構成とすることも可能である。
【0093】
このステップ38の再生処理は、流量調整弁指令値(Z)が判定値Wより小さくなるまで実施される(ステップ40)。そして、流量調整弁指令値(Z)が判定値Wより小さくなると、換言すると氷フィルタ装置50の氷が溶融されて冷媒24が円滑に氷フィルタ装置50内を通過するようになると、ステップ42において再生処理は停止され、図7に示す氷詰まり制御処理が終了する。
【0094】
上記のように本実施形態に係る冷却システムによれば、熱交換器23で発生する氷が冷媒24に混入し、これにより氷フィルタ装置50に氷詰まりが発生しても、流量調整弁28に供給される流量調整弁指令値(Z)に基づき、これを直ちに検出することができる。よって、氷フィルタ装置50に対する再生処理を早期に実施することができ、チャック12による被温度制御対象に対する恒温処理を確実に行うことができる。また、再生処理は自動的に開始され、かつチラーユニット10を停止させる必要もないため、冷却ユニットの信頼性及び稼動の効率性を高めることができる。
【0095】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。
【0096】
また、上記した実施形態では、判定開始時間tの設定に際し、基準収束時間tよりも遅い時間とすることのみ説明したが、例えばチラーユニット10がチャック12の温度制御異常としてエラーを発生させるアラーム機能を有している場合には、このアラーム機能が起動する時間(図5に示すアーム発生時間t)よりも判定開始時間tを短く設定することが望ましい。
【0097】
これは、このようなアラーム機能が起動した場合、通常チラーユニット10を停止させる必要があり、そのメンテナンスには多大の時間を要しチラーユニット10の使用効率が低下する。しかしながら本実施形態では、図7を用いて説明したように、氷フィルタ装置50に氷詰まりが発生しても、これを自動的に解凍することが可能であるため、チラーユニット10を停止させる必要がなく、チラーユニット10の効率を高めることができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である冷却ユニットの全体構成図である。
【図2】図2は、流量調整弁の断面図である。
【図3】図3は、氷フィルタ装置の断面図である。
【図4】図4は、チャック設定温度に達し、定常状態となった状態における定常時流量調整弁指令値とチャック設定温度との関係を示す図である。
【図5】図5は、流量調整弁制御時におけるチャック現在温度の変化の一例を示す図である。
【図6】図6は、流量調整弁の制御処理を示すフローチャートである。
【図7】図7は、氷詰まりの発生確認処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0099】
P 伝熱盤
L1,L2 循環ライン
10 チラーユニット
11 プローバ
12 チャック
22 冷凍機
23 熱交換器
24 冷媒
25 低温タンク
27 循環ポンプ
28 流量調整弁
28a 温度センサー
29 冷却通路
30 伝熱盤ヒーター
30a 温度センサー
31,32 冷却液循環配管
33,34 冷却液供給配管
35,36 伝熱盤接続配管
38 常温タンク
40 補給ポンプ
41 液面センサー
42 オーバーフロー管
43 液面センサー
50 氷フィルタ装置
60 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を循環させる冷媒流路に設けられた循環ポンプと、
該冷媒流路に設けられ前記冷媒を冷却させる冷凍機と、
被温度制御対象を保持するため、前記冷媒流路に接続されたチャックと、
該チャックに設けられ、前記冷媒流路を加熱するヒーターと、
前記冷凍機で冷却された前記冷媒の流量調整を行う流量調整弁と、
前記冷凍機と前記流量調整弁との間に配設され、前記冷凍機で発生する氷を前記冷媒から除去することにより氷詰まりの発生を防止する氷詰まり防止装置と、
前記チャックのチャック温度を検出するチャック温度検出手段と、
チャック設定温度を設定する温度設定手段と、
該チャック設定温度の設定時からの経過時間を演算する時間演算手段と、
前記流量制御弁に対する流量調整弁指令値を演算する指令値演算手段と、
前記氷詰まり防止装置が正常時において前記チャック温度が前記チャック設定温度となるのに要する経過時間に基づき設定された判定開始時間を格納すると共に、該判定開示時間の経過後における前記流量調整弁の正常な弁開度を基準弁開度値として格納してなる格納手段と、
前記判定開始時間の経過後に、前記基準弁開度値に基づく判定値と前記流量調整弁指令値とを比較し、該流量調整弁指令値が前記判定値よりも大きいと判断したとき、前記氷詰まり防止装置に対する再生処理を開始する氷詰まり防止制御手段と、
を有することを特徴とする冷却システム。
【請求項2】
前記氷詰まり防止装置に対する再生処理は、
前記循環ポンプを駆動し、前記冷凍機を停止させ、かつ前記ヒーターを駆動する処理である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−144998(P2009−144998A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323865(P2007−323865)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)