説明

冷却塔におけるエリミネータの設置方法

【課題】冷却塔内部のエリミネータや充填材の点検・洗浄を容易にする、冷却塔におけるエリミネータの設置方法を提供する。
【解決手段】エリミネータ21は、塔内部空間19において、左右一対の充填材14の内面側(塔内部側)の側面の上端部14a、14a間に溝形状(溝底部21a、溝側部21b)に架け渡されており、充填材14を通過した後の空気17がそこを通過するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却塔におけるエリミネータの設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空調設備や工業設備等の冷却機器の冷却水(循環水)を冷却するために、冷却塔が用いられている。冷却塔では、冷却水(循環水)を空冷することにより、循環水の温度を下げる。
【0003】
循環水の流量が1000m/hを超える大型の冷却塔では、塔上部から循環水を散水するとともに、塔頂部に設置された冷却ファンにより塔内に空気を吸い込み、塔内で循環水と空気による熱交換を行い、循環水の温度を下げる方法が一般的である(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
その際に、通常、塔内での熱交換効率をよくするために、塔内には充填材が設置されている。充填材には、循環水中のSS濃度(浮遊物濃度)に応じて、フィルム型やスプラッシュ型等の種類があり、例えば、スプラッシュ型の充填材の場合には、散水された循環水を充填材によって小径粒子状に飛散させ、空気との接触を増加させるようにしている。
【0005】
そして、散水された循環水が熱交換した空気に同伴して冷却ファンから塔外に飛散しないように、エリミネータと呼ばれる邪魔板(フィルター)が塔内に設置されているのが一般的である。
【0006】
図2は、そのような従来の冷却塔80を示す縦断面図である。
【0007】
図2に示すように、従来の冷却塔80においては、塔頂部に設置された冷却ファン88と、塔上部に設置された温水槽82と、塔下部に設置された冷水槽85と、温水槽82と冷水槽85の間に左右一対で設置された外形が略直方体の充填材84とを備えており、温水槽82から循環水81(温水81a)を充填材84に向けて散水し、充填材84を流下する循環水81(温水81a)と、冷却ファン88によって塔内に導入されて充填材84を通過する空気(外気)87との間で熱交換をさせて、循環水81(温水81a)を冷却した後、冷却された循環水81(冷水81b)を冷水槽85に回収するようになっている。
【0008】
その際、循環水81(温水81a)と熱交換して充填材84を通過した後の空気87は、左右を充填材84で囲まれた塔内部空間89を経由して冷却ファン88から塔外に排出されるが、循環水81が空気87に同伴して冷却ファン88から塔外に飛散しないように、それぞれの充填材84の内面側(塔内部空間89側)の側面全面にエリミネータ91を設置している。
【0009】
エリミネータ91はラビリンス構造になっており、空気87は通過させるが、空気87に同伴した循環水81は捕捉して通過させないようになっている。すなわち、内部に壁があり、壁に循環水81が衝突することにより、循環水81の飛散を防止する構造となっている。
【0010】
なお、左右のエリミネータ91の中間で冷水槽85の上面に点検歩廊92が設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−287568号公報
【特許文献2】特開2001−349693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、図2に示したような従来の冷却塔80においては、循環水81が塔外に飛散しないように、エリミネータ91を設置しているが、エリミネータ91に循環水81中の浮遊物が付着して通風効率が悪化して熱交換効率が低下し、冷水槽85に回収された循環水(冷水)81bの温度上昇を招く場合がある。
【0013】
すなわち、従来の冷却塔80においては、充填材84とエリミネータ91は100mm程度しか離れておらず、冷却ファン88により吸い込まれた空気87の流れにより、循環水81がエリミネータ91に接触しやすいので、エリミネータ91に浮遊物が堆積しやすい。
【0014】
そこで、エリミネータ91への浮遊物の付着状態(閉塞状況)を観測し、適宜エリミネータ91に付着した浮遊物を除去することが必要になるが、充填材84の内面側の側面全面にエリミネータ91を設置しているのと、冷水槽85の上面に点検歩廊92を設置していることから、以下のような問題が生じている。
【0015】
(a)エリミネータ91の高さが5mを超えるため、点検歩廊92上でエリミネータ91の閉塞状況を確認することが難しい。また、塔上部のエリミネータ91が閉塞した場合には、浮遊物の除去作業に仮設足場等が必要になるため、除去作業(清掃作業)も容易ではない。
【0016】
(b)エリミネータ91は、内部に壁があり、壁に循環水81が衝突することにより、循環水81の飛散を防止する構造となっているため、循環水81中の浮遊物が堆積しやすいので、ジェット洗浄等により浮遊物の除去を行いたいが、内部の壁構造が邪魔をして、片面からの洗浄では十分に浮遊物を除去するのが難しい。
【0017】
(c)エリミネータ91だけでなく、充填材84も時間が経過すると、脱落、変形や浮遊物の堆積が生じるので、定期的に充填材84を点検・清掃したいが、エリミネータ91が邪魔して点検・清掃することが難しい。
【0018】
(d)そして、エリミネータ91や充填材84に浮遊物が堆積して除去できず、循環水(冷水)81bの温度が許容上限値を超えるような場合には、そのエリミネータ91や充填材84を交換することになり、復帰までに長時間を要し、ダウンタイムを発生させてしまう。
【0019】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、冷却塔内部のエリミネータや充填材の点検・洗浄を容易にする、冷却塔におけるエリミネータの設置方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
【0021】
[1]塔頂部に設置された冷却ファンと、塔上部に設置された温水槽と、塔下部に設置された冷水槽と、前記温水槽と前記冷水槽の間に左右一対で設置された充填材とを備えた冷却塔において、エリミネータを左右一対の充填材の内面側の上端部間に架け渡すように設置することを特徴とする冷却塔におけるエリミネータの設置方法。
【0022】
[2]前記エリミネータに点検歩廊を設けることを特徴とする前記[1]に記載の冷却塔におけるエリミネータの設置方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明においては、冷却塔内部のエリミネータや充填材の点検・洗浄が容易となる。その結果、エリミネータや充填材に浮遊物が付着・堆積して、空気と熱交換後の循環水(冷却水)の温度が上昇しても、エリミネータや充填材を付着・堆積した浮遊物を容易に除去して、迅速に復帰させることができる。特に、夏季等の冷却塔の負荷が高い時期には、その効果が一層大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】従来技術を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態における冷却塔10を示す縦断面図である。
【0027】
図1に示すように、本発明の一実施形態における冷却塔10は、塔頂部に設置された冷却ファン18と、塔上部に設置された温水槽12と、塔下部に設置された冷水槽15と、温水槽12と冷水槽15の間に左右一対で設置された外形が略直方体の充填材14とを備えており、温水槽12から循環水11(温水11a)を充填材14に向けて散水し、充填材14を流下する循環水11(温水11a)と、冷却ファン18によって塔内に導入されて充填材14を通過する空気(外気)17との間で熱交換をさせて、循環水11(温水11a)を冷却した後、冷却された循環水11(冷水11b)を冷水槽15に回収するようになっている。
【0028】
その際、循環水11(温水11a)と熱交換して充填材14を通過した後の空気17は、左右を充填材14で囲まれた塔内部空間19を経由して冷却ファン18から塔外に排出されるが、循環水11が空気17に同伴して冷却ファン18から塔外に飛散しないように、塔内部空間19にエリミネータ21を設置している。
【0029】
すなわち、図1に示すように、エリミネータ21は、塔内部空間19において、左右一対の充填材14の内面側(塔内部側)の側面の上端部14a、14a間に溝形状(溝底部21a、溝側部21b)に架け渡されており、充填材14を通過した後の空気17がそこを通過するようになっている。
【0030】
そして、エリミネータ21はラビリンス構造になっており、空気17は通過させるが、空気17に同伴した循環水11は捕捉して通過させないようになっている。すなわち、内部に壁があり、壁に循環水11が衝突することにより、循環水11の飛散を防止する構造となっている。
【0031】
なお、エリミネータ21の中間部(溝底部)21aの上面に点検歩廊23が設置されている。また、冷水槽15の上面にも点検歩廊22が設置されている。
【0032】
そして、エリミネータ21の溝側部21bと充填材14との間には、点検歩廊22や点検歩廊23からエリミネータ21の溝側部21bと充填材14を直接目視で点検できるような隙間が形成されている。
【0033】
なお、エリミネータ21の輪郭(溝側部21b+溝底部21a+溝側部21b)の長さLは、充填材14の高さHの1.3倍〜1.7倍が好ましい。エリミネータ21の長さLが短すぎると通風抵抗が増加するからであり、エリミネータ21の長さLが長すぎると不経済であるからである。
【0034】
これによって、この実施形態においては、以下のような効果を得ることができる。
【0035】
(A)エリミネータ21と充填材14が離れていることで、エリミネータ21への浮遊物の付着量を低減することができる。
【0036】
(B)エリミネータ21の中間部の上面に点検歩廊23が設置されているので、エリミネータ21を直接目視で点検でき、浮遊物の付着・堆積等の異常を早期に検知できる。また、エリミネータ21を上下からジェット洗浄することができ、短期間で効率的に洗浄することができる。
【0037】
(C)充填材14も直接目視で点検でき、充填材14への浮遊物の付着・堆積等の異常を早期に検知できる。また、充填材14も容易に洗浄が可能になる。
【実施例1】
【0038】
本発明の実施例として、上記の本発明の一実施形態を含油循環水設備の冷却塔に適用した。なお、循環水量(冷却水量)は1800m/hであった。
【0039】
その結果、夏季に、エリミネータの閉塞等によって、冷却塔から供給される循環水(冷却水)の温度が35℃に上昇しても、半日の清掃で32℃に低下させることができた。
【符号の説明】
【0040】
10 冷却塔
11 循環水
11a 循環水(温水)
11b 循環水(冷水)
12 温水槽
14 充填材
15 冷水槽
17 空気
18 冷却ファン
19 塔内部空間
21 エリミネータ
22 点検歩廊
23 点検歩廊
80 冷却塔
81 循環水
81a 循環水(温水)
81b 循環水(冷水)
82 温水槽
84 充填材
85 冷水槽
87 空気
88 冷却ファン
89 塔内部空間
91 エリミネータ
92 点検歩廊

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塔頂部に設置された冷却ファンと、塔上部に設置された温水槽と、塔下部に設置された冷水槽と、前記温水槽と前記冷水槽の間に左右一対で設置された充填材とを備えた冷却塔において、エリミネータを左右一対の充填材の内面側の上端部間に架け渡すように設置することを特徴とする冷却塔におけるエリミネータの設置方法。
【請求項2】
前記エリミネータに点検歩廊を設けることを特徴とする請求項1に記載の冷却塔におけるエリミネータの設置方法。

【図1】
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【図2】
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