説明

冷媒回収装置及び冷媒回収方法

【課題】冷媒回収装置の使用電力が所定の範囲を超えないように冷媒回収装置のモータの回転数を制御して冷媒回収時間の短縮化を図る。
【解決手段】空調機20の冷媒を回収ボンベ31に回収するモータ駆動式の冷媒回収装置100であって、空調機20の冷媒圧力PCが変化した際に、圧力が変化する前の空調機20の冷媒圧力PC1と回収ボンベ31の圧力PB1との圧力差ΔP2と、空調機20の残留冷媒の比重量γ1と、モータ11の回転数N1とを掛け合わせた数値と、圧力が変化した後の空調機20の冷媒圧力PC2と回収ボンベ31の圧力PB2との圧力差ΔP3と、空調機20の残留冷媒の比重量γ2と、モータの回転数N2とを掛け合わせた数値と、が略同一となるように、モータ11の回転数を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒回収装置の構造とその装置による冷媒回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍機や空調機器にはフロンガス等が冷媒として用いられている。フロンガスはオゾン層を破壊して地球環境に悪影響を及ぼす虞のあることから、冷凍機や空調機器の交換或いは、メインテナンスの際には大気に放出させないよう回収容器に回収、処理することが必要となる。冷凍機や空調機器に用いられているフロンガスを回収する場合には、冷凍機や空調機器に滞留しているフロンガスを吸い込んで加圧して回収容器に冷媒を回収する冷媒回収装置が用いられる。
【0003】
冷凍機や空調機器の内部のフロンガスタンクの中には、飽和状態となった液体のフロンガスと気体のフロンガスとが貯留されており、冷媒回収装置は、フロンガスタンクの気相部分からフロンガスを吸い込んで圧縮して回収容器に移送する。フロンガスの気相部分からフロンガスを吸い込むと、フロンガスタンクの中の気相の圧力が低下するので、液体のフロンガスが蒸発する。その際、蒸発潜熱を奪われるので、フロンガスタンクの中のフロンガスの温度が低下する。この蒸発に必要な熱量は外部環境からフロンガスタンクに供給される程度であれば特に問題にならないが、フロンガスの交換作業時間を短縮しようとしてフロンガスタンクから多量にフロンガスを吸引するとフロンガスタンク内の圧力が急激に低下し、外部環境からの入熱ではフロンガスの蒸発潜熱を補うことができなくなるため、液体のフロンガスが蒸発できなくなってしまう。このため、気体のフロンガスをフロンガスタンクから吸引することができず、結果として冷媒の交換に時間が掛ってしまうという問題があった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-180931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、冷凍機や空調機などから冷媒を回収する作業は、機械が設置されている客先のコンセントからの電源を用いて行うことがほとんどで、コンセントの電気容量が決まっている場合が多い。また、冷媒回収装置の圧縮機は容積式のものが多く、冷媒の回収量を多くする場合には、圧縮機の回転数を上げることが必要となる。しかし、圧縮機の動作状態に関わらず圧縮機の回転数を上げると、圧縮機の消費電力が大きくなりすぎて客先のコンセントの電気容量を超えてしまい、場合によっては、客先の配電盤のブレーカーが動作してしまう場合がある。このため、冷媒回収時間の短縮を図るために圧縮機の回転数を上昇させることができない場合が多い。
【0006】
そこで、本発明は、冷媒回収装置の使用電力が所定の範囲を超えないように冷媒回収装置のモータの回転数を制御して冷媒回収時間の短縮化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の冷媒回収装置は、被回収機器の冷媒を回収容器に回収するモータ駆動式の冷媒回収装置であって、動作中の使用電力が略一定となるように、被回収機器の冷媒圧力に応じてモータの回転数を変化させること、を特徴とする。
【0008】
本発明の、冷媒回収装置において、被回収機器の圧力と回収容器の圧力との圧力差と、被回収機器の残留冷媒の比重量とに応じてモータの回転数を変化させること、としても好適である。
【0009】
本発明の、冷媒回収装置において、被回収機器の冷媒圧力が変化した際に、圧力が変化する前の被回収機器の圧力と回収容器の圧力との圧力差と、被回収機器の残留冷媒の比重量と、モータの回転数とを掛け合わせた数値と、圧力が変化した後の被回収機器の圧力と回収容器の圧力との圧力差と、被回収機器の残留冷媒の比重量と、モータの回転数とを掛け合わせた数値と、が略同一となるように、モータの回転数を変化させること、としても好適である。
【0010】
本発明の、冷媒回収方法は、モータ駆動式の冷媒回収装置を用いて被回収機器の冷媒を回収容器に回収する冷媒回収方法であって、被回収機器の冷媒圧力が変化した際に、圧力が変化する前の被回収機器の圧力と回収容器の圧力との圧力差と、被回収機器の残留冷媒の比重量と、モータの回転数とを掛け合わせた数値と、圧力が変化した後の被回収機器の圧力と回収容器の圧力との圧力差と、被回収機器の残留冷媒の比重量と、モータの回転数とを掛け合わせた数値と、が略同一となるように、モータの回転数を変化させること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、冷媒回収装置の使用電力が所定の範囲を超えないように冷媒回収装置のモータの回転数を制御して冷媒回収時間の短縮化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態における冷媒回収装置の構成を示す系統図である。
【図2】本発明の実施形態における冷媒回収装置の各部の圧力の変化を示すグラフである。
【図3】冷媒ガスの圧力に対する比重量の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本実施形態の冷媒回収装置100は、内部に入っている冷媒を回収される被回収機である空調機20から冷媒ガスを吸引して回収容器である回収ボンベ31に圧送する圧縮機10と、圧縮機10を駆動するモータ11と、モータ11の回転数を制御するモータ制御装置12と、を備えている。モータ11にはコンセントに接続されたプラグ13を通して駆動電力が供給される。
【0014】
被回収機である空調機20の中の冷媒タンク或いは冷媒溜りにはその冷媒圧力PCを検出する圧力センサ21が設けられている。空調機20の冷媒溜りと圧縮機10の入り口とは冷媒吸込み管25によって接続され、圧縮機10と冷媒を回収する回収ボンベ31の入り口とは冷媒吐出管35によって接続されている。圧縮機10を駆動するモータ11は交流モータであり、モータ制御装置12によってとその回転数がコントロールされるよう構成されている。圧縮機10は容積式の圧縮機であり、その吐出容量は、回転数に比例する。また、回収ボンベ31の圧力PBを検出する圧力センサ32が回収ボンベ31の直近の冷媒吐出管35に取り付けられている。
【0015】
モータ11の回転数を制御するモータ制御装置12は、内部にインバータ等の周波数変換のできる電力変換装置であり、インバータを構成するスイッチング素子を内蔵している。インバータのオンオフ動作は内部に設けられたコンピュータによる指令によって行われる。また、内蔵されているコンピュータは、圧力センサ21,32からの信号が入力され、内部のメモリに格納した圧力に対する冷媒の比重量のマップに基づいてモータ11の回転数の指令を出力し、その指令によって内部のスイッチング素子がオンオフ動作してモータ11の駆動電力の周波数を変更し、これによってモータ11の回転数を変更するように構成されている。
【0016】
次に図2を参照して、冷媒回収装置100によって空調機20の内部の冷媒溜りにある冷媒を回収ボンベ31に回収する際の各部の圧力の変化について説明する。図2において一点鎖線aは、圧力センサ32によって検出する回収ボンベ31の圧力PBを示し、実線bは、圧力センサ21によって検出する空調機20の冷媒溜りの圧力PCを示す。最初、回収ボンベ31の内部は真空となっているので、図2に示す時間t0において、その圧力PBは、ゼロとなっている。一方、空調機20の冷媒溜りには液体の冷媒とガス状の冷媒とが飽和状態で溜まっており、その圧力は、PC0となっている。そして、冷媒回収装置100が始動し、圧縮機10が空調機20から冷媒を吸込んで回収ボンベ31に吐出すると回収ボンベ31の圧力は次第に上昇していく。一方、空調機20の冷媒溜りには液体の冷媒とガス状の冷媒とが貯留されているので、ガス状の冷媒が圧縮機10によって吸い出されても、液体状の冷媒が蒸発するので、冷媒溜りの中の圧力は略一定に保持されている。そして、図2の時間t0〜時間t2までの間のように、回収ボンベ31の圧力PBの方が空調機20の冷媒溜りの圧力PCよりも低い状態では、圧縮機10の駆動動力はほとんど必要なく、空調機20の冷媒溜りの圧力PCと回収ボンベ31の圧力PBの圧力差によって冷媒は空調機20の冷媒溜りから回収ボンベ31に流れていく。
【0017】
図2に示す時間t2を過ぎると、回収ボンベ31の圧力PBが空調機20の冷媒たまりの圧力PCよりも高くなってくる。すると、空調機20の冷媒溜りから冷媒を回収ボンベ31に送るための圧縮機10の必要駆動力は次第に大きくなってくる。
【0018】
圧縮機10の駆動に必要な動力は、
Power=A×γ×Q×ΔP×η -------- (式1)
によって表される。ここで、Aは比例定数、γ(kg/m3)は冷媒ガスの比重量、Q(m3/sec)は体積流量、ΔP(Pa)は昇圧圧力、η(%)は圧縮機の効率である。
また、流量Qは圧縮機のシリンダ容量V1(m3)、回転数N(rpm)の掛けたものに比例することからCを比例定数として、
Q=C×V1×N --------- (式2)
となる。式2を式1に代入し、圧縮機10のシリンダ容積V1は一定であり、容積効率ηも略一定であることから、それぞれ、比例定数Cとともに定数Bに含ませるものとすると、圧縮機10の駆動に必要な動力は、
Power=B×γ×N×ΔP -------- (式3)
と表される。
【0019】
今、図2に示す時間t3において、圧縮機10の入口、出口の圧力差即ち、空調機20の冷媒溜りの圧力PC1と回収ボンベ31の圧力PB1との圧力差をΔP2=PB1−PC1、冷媒溜り圧力PC1の際の冷媒の比重量をγC1とすると、圧縮機10を回転数N1で駆動する際の必要駆動力Power1は、
Power1=B×γC1×N1×ΔP2 -------- (式4)
で表される。
また、図2に示す時間t4において、空調機20の冷媒溜りの圧力がPC1からPC2に低下し、回収ボンベ31の圧力がPB1からPB2に上昇した場合、空調機20の冷媒たまりと回収ボンベ31との圧力差はΔP3=PB2−PC2となる。そして、冷媒溜り圧力PC2の際の冷媒の比重量をγC2とすると、圧縮機10を回転数N2で駆動するのに必要駆動力Power2は、
Power2=B×γC2×N2×ΔP3 -------- (式5)
となる。
式3からわかるように、圧縮機の必要駆動力は回転数Nが一定の場合には、必要動力は、冷媒の比重量γと空調機20の冷媒溜まりの圧力PCと回収ボンベの圧力PBとの差であるΔP=(PB−PC)=(γ×ΔP)に比例する事となる。
【0020】
一方、図3に示すように圧力に対する冷媒の比重量γ(kg/m3)は圧力が低くなるに従って、小さくなってくることから、従来の冷媒回収装置のように初期の最大必要駆動力が発生する時期に合わせてモータ11、圧縮機10の回転数Nを一定とした場合、空調機20の冷媒溜りの中の圧力PCが低下するにしたがって、必要な駆動力も小さくなり、それに従って圧縮機10が回収ボンベ31に移送する冷媒流量(質量流量)が小さくなり、冷媒回収に時間が掛かってしまう場合があった。この場合、圧縮機10の駆動動力は当初の駆動動力よりも小さくなっているので、プラグ13の接続されるコンセントの電気容量に対して余裕を持つこととなる。そこで、圧縮機10の必要動力が常に略一定となるようにモータ11の回転数Nを変化させることが好ましい。
【0021】
式4、式5で示される各状態での圧縮機10の必要駆動力が同一になるようにモータ11の回転数、即ち圧縮機10の回転数を変化させるとすると、
Power1=Power2
即ち、
B×γC1×N1×ΔP2=B×γC2×N2×ΔP3
これから
N2=(γC1×ΔP2)/(γC3×ΔP3)×N1 -------- (式6)
となるように、圧縮機10或いはモータ11の回転数Nを変化されば良いこととなる。
【0022】
図3に示すように、圧力に対する冷媒の比重量γ(kg/m3)は物理特性として決まっているので、モータ制御装置12は、圧力センサ21によって取得した空調機20の冷媒溜りの圧力PCと内部のメモリに格納した図3に示す圧力に対する冷媒の比重量のマップからその圧力の際の冷媒の比重量を計算する。そして、モータ制御装置12は、圧力センサ32から取得した回収ボンベ31の圧力PBと圧力センサ21によって取得した空調機20の冷媒溜りの圧力PCとから圧力差ΔPを計算し、式6に従ってモータ11の回転数N1を変化させることによって常に同一の駆動力によって圧縮機10を駆動することができる。
【0023】
この場合、空調機20の圧力が低下するに従って、モータ11の回転数が次第に上昇するが、冷媒の比重量γが低下するので、モータ11の消費する駆動電力は略一定に保持される。このため、図2に二点鎖線Cで示す従来技術で回転数Nを一定とした際よりも図2の実線bの様に空調機20の冷媒溜りの圧力PCを早く低下させて、冷媒の回収時間を短縮することができる。また、モータ11の使用電力が一定となるので、プラグ13の接続されるコンセントの電気容量を超えたりすることがなく、安定して冷媒の回収を短時間に行うことができる。
【0024】
以上説明したよう、本実施形態では、冷媒回収装置の使用電力が所定の範囲を超えないように冷媒回収装置のモータの回転数を制御して冷媒回収時間の短縮化を図ることができるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0025】
10 圧縮機、11 モータ、12 モータ制御装置、13 プラグ、20 空調機、21,32 圧力センサ、25 吸込み管、31 回収ボンベ、35 冷媒吐出管、100 冷媒回収装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被回収機器の冷媒を回収容器に回収するモータ駆動式の冷媒回収装置であって、
動作中の使用電力が略一定となるように、被回収機器の冷媒圧力に応じてモータの回転数を変化させること、
を特徴とする冷媒回収装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷媒回収装置であって、
被回収機器の圧力と回収容器の圧力との圧力差と、被回収機器の残留冷媒の比重量とに応じてモータの回転数を変化させること、を特徴とする冷媒回収装置。
【請求項3】
請求項2に記載の冷媒回収装置であって、
被回収機器の冷媒圧力が変化した際に、
圧力が変化する前の被回収機器の圧力と回収容器の圧力との圧力差と、被回収機器の残留冷媒の比重量と、モータの回転数とを掛け合わせた数値と、
圧力が変化した後の被回収機器の圧力と回収容器の圧力との圧力差と、被回収機器の残留冷媒の比重量と、モータの回転数とを掛け合わせた数値と、が略同一となるように、モータの回転数を変化させること、
を特徴とする冷媒回収装置。
【請求項4】
モータ駆動式の冷媒回収装置を用いて被回収機器の冷媒を回収容器に回収する冷媒回収方法であって、
被回収機器の冷媒圧力が変化した際に、
圧力が変化する前の被回収機器の圧力と回収容器の圧力との圧力差と、被回収機器の残留冷媒の比重量と、モータの回転数とを掛け合わせた数値と、
圧力が変化した後の被回収機器の圧力と回収容器の圧力との圧力差と、被回収機器の残留冷媒の比重量と、モータの回転数とを掛け合わせた数値と、が略同一となるように、モータの回転数を変化させること、
を特徴とする冷媒回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−7541(P2013−7541A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141569(P2011−141569)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)