説明

冷媒用の遠心式分配器および冷凍サイクル

【課題】簡単な構成で液相冷媒を集めやすい遠心式分配器を提供する。
【解決手段】分配器16は、流入口16aから流入した冷媒が旋回する分離室を有する。分離室には、隔壁16gが設けられている。隔壁16gは、分離室を、上流側の旋回室16d1と、下流側の旋回室16d2とに区画する。隔壁16gには、貫通穴16hが設けられている。貫通穴16hは、遠心分離された気相冷媒を主として加速する。この結果、流出口16cの開口位置における分離室16dの径方向内側には、液相冷媒の厚い膜が形成される。これにより、流出口16cに流入する冷媒の成分を安定化することができる。貫通穴16hは、流出口16cから離れるようにずれていてもよい。また、隔壁16gに代えて、旋回室の上流側部分だけが流出口16cから離れるようにずれた構成を採用してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液相冷媒と気相冷媒とを遠心力によって分離する遠心式の分配器、およびその分配器を備える冷凍サイクルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2は、冷凍サイクルに用いられる遠心式の分配器を開示している。この分配器によると、気液二相冷媒を少なくとも2つの通路に向けて分配することができる。例えば、第1の通路には、気相冷媒が比較的多い気液二相冷媒が分配される。また、第2の通路には、液相冷媒が比較的多い気液二相冷媒、または飽和液冷媒が分配される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−46806号公報
【特許文献2】特開2010−181136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の構成では、冷媒の旋回流によって、旋回室の内壁面上に液相冷媒の膜が形成される。しかし、液相冷媒と気相冷媒とが共に流れるため、気相冷媒が液相冷媒の膜の厚さの増加を妨げる。このため、液相冷媒を多く取り出したい出口において、液相冷媒の膜の厚さが十分に成長しないことがあった。
【0005】
また、別の観点では、液相冷媒の膜は、旋回方向、すなわち周方向に沿って同じ厚さで形成される。このため、液相冷媒を多く取り出したい出口において、液相冷媒の膜の厚さが十分に成長しないことがあった。
【0006】
さらに、上記の問題点は、冷媒流量が減少する低負荷時に特に顕著となる。出口において液相冷媒の膜の厚さが十分に成長しない場合、期待されたより多くの気相冷媒が第2の通路に分配されるという問題点があった。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、液相冷媒を集めやすい遠心式分配器を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、気相冷媒の流れを促進することにより液相冷媒を集めることができる遠心式分配器を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、旋回方向に沿って部分的に液相冷媒を集めることができる遠心式分配器を提供することである。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、液相冷媒を集めやすい遠心式分配器を備えた冷凍サイクルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0012】
請求項1に記載の発明は、冷媒を旋回させ気相冷媒と液相冷媒とに分離するための分離室(16d)を区画形成するとともに、分離室へ冷媒を導入する流入口(16a)、分離室に開口する第1の流出口(16b)、および分離室の径方向外側に開口する第2の流出口(16c、216c)を形成するハウジング(16e)と、第2の流出口の径方向内側における液相冷媒の膜を厚くするために、分離室における冷媒の流れを操作する流れ操作部分(16g、16h、316h、416i、416j、416k)とを備えることを特徴とする。
【0013】
この構成によると、分離室における冷媒の流れを操作する流れ操作部分によって、第2の流出口の径方向内側における液相冷媒の膜を厚くすることができる。この結果、第2の流出口から流出する冷媒の成分を安定化することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、流れ操作部分(16g、16h、316h、416i、416j、416k)は、第2の流出口の径方向内側における気相冷媒の領域を第2の流出口から遠ざけることを特徴とする。この構成によると、第2の流出口の径方向内側における気相冷媒の領域を第2の流出口から遠ざけることによって、第2の流出口の径方向内側における液相冷媒の膜を厚くすることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、流れ操作部分(16g、16h、316h)は、分離室における気相冷媒の領域を細くすることを特徴とする。この構成によると、気相冷媒の領域を細くすることによって、第2の流出口の径方向内側における気相冷媒の領域を第2の流出口から遠ざけることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、流れ操作部分は、分離室を上流側の旋回室と下流側の旋回室とに区画する隔壁(16g)であって、上流側の旋回室における気相冷媒の流れを加速して下流側の旋回室に流出させる貫通穴(16h、316h)が形成された隔壁を含むことを特徴とする。この構成によると、貫通穴によって気相冷媒の流れを加速することによって、気相冷媒の領域を細くすることができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、貫通穴(316h)は、気相冷媒の領域を分離室の軸(AXS)からずらすために、第2の流出口から離れるように軸(AXS)からずれた位置に設けられていることを特徴とする。この構成によると、貫通穴の位置を軸からずらすことによって、気相冷媒の領域を分離室の軸からずらすことができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、流れ操作部分(16g、316h、416i、416j、416k)は、分離室における気相冷媒の領域を分離室の軸(AXS、AXS2)からずらすことを特徴とする。この構成によると、気相冷媒の領域を分離室の軸からずらすことによって、第2の流出口の径方向内側における気相冷媒の領域を第2の流出口から遠ざけることができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、分離室は、流入口が開口し、第1の軸(AXS1)を有する上流側の旋回室(416i)と、上流側の旋回室より下流に位置し、第2の流出口が開口するとともに、第2の軸(AXS2)を有する下流側の旋回室(416j)とを備え、流れ操作部分は、第2の流出口と第1の軸との間の距離(LS1)を第2の流出口と第2の軸との間の距離(LS2)より大きくすることにより提供されていることを特徴とする。この構成によると、軸がずれた2つの旋回室によって、第2の流出口の径方向内側における気相冷媒の領域を第2の流出口から遠ざけることができる。
【0020】
請求項8に記載の発明は、流れ操作部分は、上流側の旋回室(416i)から下流側の旋回室(416j)へ断面積を急拡大させるとともに、下流側の近傍に第2の流出口が位置付けられた段差面(416k)を含むことを特徴とする。この構成によると、段差面によって、第2の流出口の径方向内側における気相冷媒の領域を第2の流出口から遠ざけることができる。
【0021】
請求項9に記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の遠心式分配器と、第1の流出口の下流に設けられたノズル部(14a)と、ノズル部から噴出される冷媒の流れにより冷媒を吸引する吸引口(14b)と、ノズル部から噴出された冷媒と吸引口から吸引された冷媒とを混合する混合部(14c)と、混合部の下流に設けられ冷媒を昇圧するディフューザ部(14d)とを備えるエジェクタと、第2の流出口と吸引口との間に配置された蒸発器(18)とを備えることを特徴とする。この構成によると、分配器によって分配された冷媒は、第2の流出口から蒸発器に供給される。蒸発器において蒸発した冷媒は、エジェクタによって吸引される。この構成によると、蒸発器に供給される冷媒の成分を安定化することができる。
【0022】
請求項10に記載の発明は、さらに、ディフューザ部の下流に設けられた他の蒸発器(15)を備えることを特徴とする。この構成によると、エジェクタを通過した後の冷媒をさらに蒸発させて冷却作用を発揮させることができる。
【0023】
なお、特許請求の範囲および上記手段の項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を適用した第1実施形態のエジェクタ式冷凍サイクルのブロック図である。
【図2】第1実施形態の一体化ユニットの全体構成を示す模式的な斜視図である。
【図3】第1実施形態の一体化ユニットの模式的な分解斜視図である。
【図4】第1実施形態のエジェクタおよび分配器を示す断面図である。
【図5】第1実施形態のエジェクタおよび分配器を示す断面図である。
【図6】第1実施形態のエジェクタおよび分配器を示す断面図である。
【図7】本発明を適用した第2実施形態のエジェクタおよび分配器を示す断面図である。
【図8】本発明を適用した第3実施形態のエジェクタおよび分配器を示す断面図である。
【図9】第3実施形態のエジェクタおよび分配器を示す断面図である。
【図10】本発明を適用した第4実施形態のエジェクタおよび分配器を示す断面図である。
【図11】第4実施形態のエジェクタおよび分配器を示す断面図である。
【図12】第4実施形態のエジェクタおよび分配器を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。また、後続の実施形態においては、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分に百以上の位だけが異なる参照符号を付することにより対応関係を示し、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
(第1実施形態)
図1において、エジェクタ式の冷凍サイクル10は、圧縮機11、放熱器12、膨張弁13、および蒸発器ユニット20を備える。
【0026】
圧縮機11は、冷媒を吸入し、圧縮した後に、高圧冷媒を吐出する。圧縮機11は、電磁クラッチ11a、およびベルト等を介して図示しない車両走行用エンジンにより回転駆動される。圧縮機11は、吐出容量の変化により冷媒吐出能力を調整できる可変容量型圧縮機、あるいは電磁クラッチ11aの断続により圧縮機作動の稼働率を変化させて冷媒吐出能力を調整する固定容量型圧縮機によって提供することができる。また、圧縮機11は、電動圧縮機でもよい。電動圧縮機では、電動モータの回転数調整により冷媒吐出能力を調整できる。
【0027】
圧縮機11の冷媒吐出側には放熱器12が配置されている。放熱器12は室内機または室外機として用いることができる。室外機として利用されるとき、放熱器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と車室外空気との間の熱交換を提供する。放熱器12は、高圧冷媒を冷却する。放熱器12に送風する冷却ファンを備えることができる。冷凍サイクル10は、フロン系、HC系等の冷媒のように高圧圧力が臨界圧力を超えない冷媒を用いている。冷凍サイクル10は、蒸気圧縮式の亜臨界サイクルを構成している。したがって、放熱器12は冷媒を凝縮する凝縮器として機能する。
【0028】
放熱器12の出口側には温度式の膨張弁13が配置されている。膨張弁13は放熱器12からの液冷媒を減圧する減圧手段であって、圧縮機11の吸入側通路に配置された感温部13aを有している。膨張弁13は、圧縮機11の吸入側冷媒の温度と圧力とに基づいて圧縮機吸入側冷媒の過熱度を検出し、圧縮機吸入側冷媒の過熱度が予め設定された所定値となるように弁開度を調整する。吸入側冷媒は、後述の蒸発器の出口側冷媒に対応する。膨張弁13の弁開度に応じて、冷媒流量が調整される。
【0029】
膨張弁13の下流側には、蒸発器ユニット20が接続されている。蒸発器ユニット20は、膨張弁13と圧縮機11との間に位置付けられている。蒸発器ユニット20は、配管を介して冷凍サイクル10の他の構成部品と接続される。蒸発器ユニット20は室内機または室外機として用いることができる。
【0030】
図2および図3において、蒸発器ユニット20は、エジェクタ14、第1の蒸発器15、分配器16、減圧器17、および第2の蒸発器18を備える。蒸発器ユニット20は、これらの構成部品を接続することによって、一体的に取り扱い可能なユニットとして構成されている。蒸発器ユニット20は、複数の構成部品をろう付け、ボルト、ねじ、接着などの固定手段によって一体的に接続することによって構成されている。蒸発器ユニット20は、エジェクタ式冷凍サイクル用の蒸発器ユニット、エジェクタ式冷凍サイクル用の一体化ユニットあるいは、エジェクタ付き蒸発器ユニットとも呼ばれうるものである。2つの蒸発器15、18は、一体的に構成されている。2つの蒸発器15、18の側部には、筒状のエジェクタケース23が配置されている。エジェクタ14は、エジェクタケース23に収納されている。分配器16は、エジェクタケース23内に形成されることによって、エジェクタ14に一体的に設けられている。エジェクタ14は、蒸発器ユニット20の一部品として、蒸発器15、18に一体的に設けられている。蒸発器ユニット20は、エジェクタ式の冷凍サイクル10の一部品である。
【0031】
図1に戻り、膨張弁13の出口側には、エジェクタ14が配置されている。エジェクタ14は冷媒を減圧する減圧手段である。同時に、エジェクタ14は、高速で噴出する冷媒流の吸引作用によって、冷媒の流れを生成する冷媒輸送手段を提供する。エジェクタ14は、冷凍サイクル10内の分岐経路内に冷媒を流す冷媒輸送手段を提供する。エジェクタ14は、運動量輸送式ポンプとも呼ぶことができる。エジェクタ14は、膨張弁13通過後の冷媒の通路面積を小さく絞って冷媒をさらに減圧膨張させるノズル部14aを備える。膨張弁13通過後の冷媒は、中間圧冷媒とも呼ばれる。エジェクタ14は、ノズル部14aの噴出口から噴射される冷媒流によって、巻き込み作用、すなわち吸引力を発生する。エジェクタ14は、ノズル部14aの噴出口の周辺に連絡する吸引口14bを備える。エジェクタ14は、吸引口14bを通して、第2の蒸発器18から気相冷媒を吸引する。
【0032】
エジェクタ14のうちノズル部14aおよび吸引口14bの冷媒流れ下流側部位には、混合部14cが設けられている。混合部14cは、ノズル部14aからの高速度の冷媒流と、冷媒吸引口14bから吸引された冷媒とを混合する。混合部14cの冷媒流れ下流側に昇圧部をなすディフューザ部14dが配置されている。ディフューザ部14dは、冷媒の通路面積を冷媒流れ下流に向けて徐々に大きくする形状に形成されており、冷媒流れを減速して冷媒圧力を上昇させる作用、つまり、冷媒の速度エネルギーを圧力エネルギーに変換する作用を果たす。ディフューザ部14dの先端部は、エジェクタ14の出口部である。エジェクタ14の下流側には、第1の蒸発器15が配置されている。第1の蒸発器15は、ディフューザ部14dの下流に設けられた他の蒸発器である。第1の蒸発器15の出口側は圧縮機11の吸入側に接続されている。
【0033】
膨張弁13の出口側には、冷媒用の遠心式分配器16が配置されている。分配器16は、ノズル部14aに向かう主通路と、吸引口14bに向かう分岐通路とに冷媒を分配する。分配器16は、全体の流量Gを、主通路の流量Gnと、分岐通路の流量Geとに分配する。分配器16は、流量Gnと流量Geとの比を、所定の比に調節する。さらに、分配器16は、主通路に向かう冷媒の成分と、分岐通路に向かう冷媒の成分とを調整する。分配器16は、主通路に向かう冷媒を、気相成分が比較的多い冷媒に調整する。分配器16は、分岐通路に向かう冷媒を、液相成分が比較的多い冷媒に調整する。分配器16は、主通路に向かう冷媒の気相成分が、分岐通路に向かう冷媒の気相成分より多くなるように、冷媒成分を調整する。分配器16は、膨張弁13の出口に接続されて、冷媒が流入する流入口16aを有する。分配器16は、ノズル部14aの入口に接続された第1の流出口16bを備える。さらに、分配器16は、分岐通路に接続された第2の流出口16cを備える。第2の流出口16cから、吸引口14bに向かう冷媒が流出する。
【0034】
分配器16の第2の流出口16cと吸引口14bとの間には、減圧器17と第2の蒸発器18とが配置されている。減圧器17は第2の蒸発器18への冷媒流量の調節作用をなす減圧手段である。減圧器17は、第2の蒸発器18の入口側に配置されている。減圧器17は、キャピラリチューブ、または絞り通路などの絞り機構によって提供することができる。
【0035】
2つの蒸発器15、18は、温度調節の対象である空気流に対して、第1の蒸発器15が上流側に位置し、第2の蒸発器18が下流側に位置するように配置されている。2つの蒸発器15、18は、共通の冷却負荷、すなわち被冷却空気に対して作用するように構成され、配置されている。2つの蒸発器15、18は、図示しない空調ケース内に収納されている。空調ケースは、空調ダクトを提供する。空調ダクト内には、電動の送風機19によって、被冷却空気が、矢印F1のように送風される。2つの蒸発器15、18は、送風機19によって送風される空気を冷却する。2つの蒸発器15、18で冷却された冷風は、共通の冷却対象空間に送り込まれる。これにより2つの蒸発器15、18にて共通の冷却対象空間が冷房される。第1の蒸発器15は、エジェクタ14の下流側の主通路に配置されている。第1の蒸発器15は、空気流れF1の上流側、すなわち風上側に配置された風上側蒸発器とも呼ばれる。第2の蒸発器18は、エジェクタ14の吸引口14bに到達する分岐通路に配置されている。第2の蒸発器18は、空気流れF1の下流側、すなわち風下側に配置された風下側蒸発器とも呼ばれる。
【0036】
図2および図3において、2つの蒸発器15、18は、完全に1つの蒸発器構造体として一体化されている。第1の蒸発器15は1つの蒸発器構造のうち空気流れF1の上流側領域を構成し、第2の蒸発器18は1つの蒸発器構造のうち空気流れF1の下流側領域を構成している。第1の蒸発器15および第2の蒸発器18の基本的構成は同一である。蒸発器15、18は、熱交換のためのコア部15a、18aを備える。蒸発器15、18は、図中の上下方向(TOP−BOTTOM)の両端に、図中の水平方向に延びるタンク部15b、15c、18b、18cを備える。コア部15aの上下にタンク部15b、15cが配置されている。コア部18aの上下にタンク部18b、18cが配置されている。コア部15a、18aは、上下方向に延びる複数の熱交換チューブ21を備えている。複数のチューブ21の間には、被熱交換媒体である被冷却空気が通る通路が形成されている。複数のチューブ21相互間には、チューブ21と接合されたフィン22が配置されている。チューブ21およびフィン22はコア部15a、18aの左右方向に交互に積層配置されている。チューブ21とフィン22との積層構造によってコア部15a、18aが形成されている。フィン22を備えないチューブ21のみの構成によってコア部15a、18aを形成してもよい。チューブ21は冷媒通路を構成する扁平チューブよりなる。フィン22は薄板材を波状に曲げ成形したコルゲートフィンである。フィン22は、チューブ21の平坦な外面に接合され、空気側伝熱面積を拡大している。コア部15aのチューブ21とコア部18aのチューブ21は互いに独立した冷媒通路を構成している。
【0037】
タンク部15b、15c、18b、18cは互いに独立した冷媒通路空間、すなわちタンク空間を構成している。タンク部15b、15cはチューブ21の上下両端に連通している。同様に、タンク部18b、18cはチューブ21の上下両端に連通している。タンク部15b、15c、18b、18cは、対応するコア部15a、18aの複数のチューブ21へ冷媒を分配したり、複数のチューブ21からの冷媒を集合したりする役割を果たす。上側タンク部15bの内部の長手方向における略中央部には、上側タンク部15bの内部空間を第1空間26と第2空間27とに仕切る仕切板28が配置されている。第2空間27は第1蒸発器15に属する複数のチューブ21の第1群に対して冷媒を分配する分配タンクの役割を果たす。第1空間26は第1蒸発器15に属する複数のチューブ21の第2群を通過した冷媒を集合する集合タンクの役割を果たす。下側タンク15cは、第1群のチューブから冷媒を集合させ、その後に、第2群のチューブに冷媒を再分配する再分配タンクの役割を果たす。上側タンク部18bの内部の長手方向における略中央部には、上側タンク部18bの内部空間を第1空間29と第2空間30とに仕切る仕切板31が配置されている。第1空間29は第2蒸発器18に属する複数のチューブ21の第1群に対して冷媒を分配する分配タンクの役割を果たす。第2空間30は第2蒸発器18に属する複数のチューブ21の第2群を通過した冷媒を集合する集合タンクの役割を果たす。下側タンク18cは、第1群のチューブから冷媒を集合させ、その後に、第2群のチューブに冷媒を再分配する再分配タンクの役割を果たす。蒸発器ユニット20の冷媒入口24は、上側タンク部18bの一端部、図中左端部に設けられている。冷媒出口25は、上側タンク部15bの一端部、図中左端部に設けられている。冷媒入口24は流入口16aに連通している。冷媒出口25は上側タンク部15bと連通している。
【0038】
上側タンク部15b、18bの図中の上側(TOP)には、エジェクタ14、分配器16および減圧器17が配置されている。エジェクタ14は、ノズル部14aの軸方向に延びる細長形状となっている。エジェクタ14は、その長手方向が、タンク部の長手方向と平行になるように上側タンク部15b、18b上に配置されている。エジェクタ14の出口部はエジェクタケース23の内部空間に開口する。エジェクタケース23の内部空間は第2空間27に連通している。吸引口14bは第2空間30に連通している。
【0039】
分配器16は、エジェクタ14の長手方向に沿って、エジェクタ14と並ぶように配置されている。分配器16は、円筒状のハウジング16eを備える。ハウジング16eは、ノズル部14aの軸方向に延びる円筒状に形成されている。ハウジング16eは、冷媒を旋回させ気相冷媒と液相冷媒とに分離するための分離室16dを区画形成する。分離室16dは円柱状の空間である。ハウジング16eは、分離室16dへ冷媒を導入する流入口16a、分離室16dに開口する第1の流出口16b、および分離室16dの径方向外側に開口する第2の流出口16cを形成する。流入口16aは、分配器16の一端部、すなわち図中の左端部に設けられている。第1の流出口16bは、分配器16の他端部、すなわち図中の右端部に設けられている。分配器16は、ノズル部14aの入口側に配置されている。第1の流出口16bとノズル部14aとは、直接的に接続されている。第2の流出口16cは、分配器16の筒面部、すなわち外周壁に設けられている。第2の流出口16cには、減圧器17が直接的に接続されている。減圧器17は、第2の蒸発器18の上側タンク部18b内に連通している。
【0040】
図4は、エジェクタ14の軸AXJを含む断面における分配器付エジェクタの縦断面を示す。図5は、流入口16aの開口位置における軸AXSに垂直な断面であって、図4のV−V断面を示す。図6は、第1の流出口16bの近傍における軸AXSに垂直な断面であって、図4のVI−VI断面を示す。軸AXJは、ノズル部14aの中心軸である。軸AXSは、ハウジング16eの中心軸であって、ハウジング16e内に形成される旋回流の中心軸に対応する。軸AXJと軸AXSとは一致している。図示されるように、分配器16とエジェクタ14とは、一体の部品を構成している。
【0041】
分配器16は、遠心式の気液分離器を構成している。ハウジング16eの形状と、流入口16aに向かう通路16fの延在方向とが、分配器16内において冷媒の旋回流を発生させるように設定されている。通路16fは、分配器16のハウジング16eの接線方向に延在している。冷媒は、通路16fを通った後に流入口16aから分離室16dに流入する。これにより、冷媒は、ハウジング16eの内壁面に沿って旋回する。さらに、冷媒は、分配器16内を軸AXSの周りを旋回しながら、ノズル部14aに向かって流れてゆく。この過程において、液相冷媒は遠心力によって分離室16dの外側に集められる。また、気相冷媒は、旋回室の中央、すなわち軸AXS上に集められる。ハウジング16eの内壁面の形状と通路16fの延在方向とによって旋回流を生成する手段が提供されている。
【0042】
分配器16は、分離室16dの軸方向の略中央に設けられた環状の隔壁16gを備える。隔壁16gは、分離室16dを、上流側の旋回室16d1と、下流側の旋回室16d2とに不完全に区画する。隔壁16gは、円板状である。隔壁16gの流入口16a側の面は、旋回室16d1に向けて突出する部位を持たない平面である。一方、隔壁16gの流出口16b側の面は、旋回室16d2に向けてわずかに突出する部位を有している。隔壁16gの外周縁は、ハウジング16eの内壁面に液密に固定されている。隔壁16gは、第1の流出口16bと、第2の流出口16cとの間に配置されている。隔壁16gは、第2の流出口16cの近傍に配置されている。言い換えると、第2の流出口16cは、隔壁16gの近傍であって、かつ、隔壁16gより上流側においてハウジング16eの内部に開口している。第2の流出口16cは、ハウジング16eの内壁面、すなわち旋回室16d1の最も径方向外側に開口している。
【0043】
隔壁16gは、そのほぼ中央に貫通穴16hを有する。貫通穴16hは、上流側の旋回室16d1における気相冷媒の流れを加速して下流側の旋回室16d2に流出させる。貫通穴16hは、旋回室16d1において分離された液相冷媒よりも、気相冷媒を主として導出する位置、および大きさを有する。貫通穴16hは、軸AXSと同軸上に位置している。貫通穴16hは、軸AXS上に、小さく開口している。貫通穴16hは、上流側では、隔壁16gの平面上に開口する。貫通穴16hは、下流側では、隔壁16gの突出部分上に開口する。貫通穴16hは、旋回室16d1によって分離された気相成分を主として導出するように位置付けられている。ただし、貫通穴16hは、気相冷媒を加速しながら、一部の液相冷媒も通過させるように形成されている。貫通穴16hは、隔壁16gの平面上に開口することにより、気相冷媒と液相冷媒を加速させる。このとき、気相冷媒は液相冷媒よりも圧縮性が高いため、気相冷媒の断面積は液相冷媒の断面積に対して小さくなり、気相冷媒の流速は液相冷媒の流速より速くなる。
【0044】
この実施形態では、流れ操作部分は、貫通穴16hが形成された隔壁16gを含む。分配器16に気液二相の冷媒が流れると、旋回室16d1内における旋回流によって気相冷媒と液相冷媒とが分離し、両者の間にぼんやりとした気液境界面が形成される。貫通穴16hは気相冷媒の流れを加速するから、気相冷媒が占める領域は、貫通穴16hに向けて徐々に細くなる。すなわち、流れ操作部分は、分離室16dにおける気相冷媒の領域を細くするように、分離室16dにおける冷媒の流れを操作する。これによって、第2の流出口16cの開口位置における分離室16dの径方向内側の気相冷媒の領域を第2の流出口16cから遠ざけることができる。反対に、液相冷媒が占める膜の厚さは、隔壁16gに向けて徐々に厚くなる。旋回室16d1内には、貫通穴16hに向けてすぼまるファンネル状の気液境界面が形成される。第2の流出口16cの開口位置の径方向内側においては、気液境界面の径が十分に小さくなる。気液境界面は、第2の流出口16cから遠ざけられる。この結果、第2の流出口16cの開口位置の径方向内側における液相冷媒の膜が厚くなる。したがって、流入口16aと隔壁16gとの間の旋回室16d1の内部、特に、径方向外側、さらには隔壁16gの近傍には、液相冷媒が溜まる。この結果、気相冷媒が第2の流出口16cに到達することが抑制されるから、第2の流出口16cから液相冷媒を安定的に流し出すことができる。
【0045】
貫通穴16hを通過した冷媒は、旋回室16d2においてもやや旋回流を維持している。冷媒は、旋回室16d2においても、気相冷媒と液相冷媒とに不完全に分離され、徐々に混ざり合いながら、すなわち気液境界線を徐々に消失させながら、第1の流出口16bに向けて流れてゆく。このとき、隔壁16gの下流側の面がやや突出し、その突出部位に貫通穴16hが開口しているから、貫通穴16hを通過した冷媒はノズル部14aに向けて案内される。
【0046】
図3に戻り、冷媒の流れを説明する。冷媒入口24から分配器16に流入した冷媒は、ノズル部14aに向かう主流と、減圧器17に向かう分岐流とに分岐される。主流はエジェクタ14を通過して減圧され、矢印R1のように第1の蒸発器15に供給される。冷媒は、上側タンク部15bの第2空間27に流入する。冷媒は、第2空間27から下側タンク15cに向けて、コア部15aの右半部の複数のチューブ21を通って、矢印R2のように流れる。冷媒は、下側タンク15c内を矢印R3のように移動する。冷媒は、下側タンク15cから上側タンク15bの第1空間26に向けて、コア部15aの左半部の複数のチューブ21を通って、矢印R4のように流れる。その後、冷媒は、矢印R5のように、冷媒出口25へ向けて流れる。分岐流は減圧器17を通過することによって減圧される。減圧された低圧冷媒は、矢印R6のように、第2の蒸発器18に供給される。冷媒は、上側タンク部18bの第1空間29に流入する。冷媒は、第1空間29から下側タンク18cに向けて、コア部18aの左半部の複数のチューブ21を通って、矢印R7のように流れる。冷媒は、下側タンク18c内を矢印R8のように移動する。冷媒は、下側タンク18cから上側タンク18bの第2空間30に向けて、コア部18aの右半部の複数のチューブ21を通って、矢印R9のように流れる。その後、冷媒は、吸引口14bからエジェクタ14内に吸引される。蒸発器ユニット20は、上述のような流路構成を持つから、蒸発器ユニット20全体として冷媒入口24および冷媒出口25を1つずつ設けるだけでよい。
【0047】
次に、第1実施形態の作動を説明する。圧縮機11が作動すると、高温高圧の冷媒は放熱器12に流入する。放熱器12では高温の冷媒が外気により冷却されて凝縮する。放熱器12から流出した高圧冷媒は膨張弁13を通過するときに減圧される。膨張弁13では、第1の蒸発器15の出口冷媒の過熱度が所定値となるように弁開度が調整される。膨張弁13通過後の中間圧冷媒は冷媒入口24に流入し、さらに流入口16aを通じて分配器16の分離室16dに流入する。冷媒は、分離室16dにおいて、第1の流出口16bからノズル部14aに向かう主流と、第2の流出口16cから減圧器17に向かう分岐流とに分流される。
【0048】
主流の冷媒は、ノズル部14aで減圧され膨張する。ノズル部14aで冷媒の圧力エネルギーが速度エネルギーに変換され、冷媒は、ノズル部14aの噴出口から高速度となって噴出する。高速の冷媒流によって生じる圧力低下により、吸引口14bから第2の蒸発器18を通過した分岐流の冷媒が吸引される。ノズル部14aから噴出した冷媒と吸引口14bから吸引された冷媒は、混合部14cで混合された後に、ディフューザ部14dに流入する。ディフューザ部14dでは通路面積の拡大により、冷媒の速度エネルギーが圧力エネルギーに変換されるため、冷媒の圧力が上昇する。ディフューザ部14dから流出した冷媒は第1の蒸発器15を流れる。この間に、コア部15aでは低温の低圧冷媒が、送風空気から吸熱して蒸発する。冷媒は冷媒出口25から圧縮機11に吸入され、再び圧縮される。
【0049】
一方、分岐流は、減圧器17で減圧されて低圧冷媒、すなわち気液2相冷媒となる。減圧された冷媒は、第2の蒸発器18を流れる。この間に、コア部18aでは、低温の低圧冷媒が、第1蒸発器15を通過した後の送風空気から吸熱して蒸発する。冷媒は吸引口14bからエジェクタ14内に吸引される。
【0050】
以上に説明したこの実施形態によると、第1の蒸発器15の冷媒蒸発圧力よりも第2の蒸発器18の冷媒蒸発圧力を低くすることができる。しかも、冷媒蒸発温度が高い第1の蒸発器15を空気流れ方向F1の上流側に配置し、冷媒蒸発温度が低い第2の蒸発器18を空気流れ方向F1の下流側に配置している。したがって、第2の蒸発器18における冷媒蒸発温度と送風空気との温度差を、大きく維持して、冷却性能を高めることができる。また、ディフューザ部14dでの昇圧作用により圧縮機11の吸入圧を高めることにより、圧縮機11の駆動動力を低減できる。
【0051】
さらに、上記構成によると、簡単な構成で、第2の流出口16cの開口位置の径方向内側における液相冷媒の膜を厚くすることができる。この結果、第2の流出口16cに流入する冷媒の成分を安定化することができる。例えば、第2の流出口16cへの気相冷媒の流入を抑制することができ、安定した冷却能力、冷却効率を得ることができる。
【0052】
(第2実施形態)
図7において、この実施形態では、第2の流出口216cを、隔壁16gより下流側に設けている。この構成においても、第2の流出口216cの開口位置における下流側の旋回室16d2の径方向内側の液相冷媒の膜を厚くすることができる。さらに、第1実施形態と第2実施形態とによると、隔壁16gを設けることにより、液相冷媒の膜が厚くなるから、第2の流出口16c、216cの設置位置の選択自由度が大きくなる。例えば、図2のような一体化ユニットの場合、第2の流出口16cの軸方向の位置が上側タンク部18bの第1空間29に流入する冷媒の位置であり、その位置により複数の熱交換チューブ21への流量分配性を調整することができる。流出口16cの設置位置を分配性を主として考慮して設定した場合であっても、隔壁16gを設けることによって、第2の流出口16cに流入する冷媒の成分を安定化することができる。
【0053】
(第3実施形態)
上記実施形態では、貫通穴16hを軸AXSと同軸上に形成した。これに代えて、図8および図9に示すように、ずれた貫通穴316hを形成してもよい。貫通穴316hは、気相冷媒の領域を分離室16dの軸AXSからずらすために、第2の流出口16cから離れるように軸AXSからずれた位置に設けられている。貫通穴316hは、軸AXSと同軸に形成された場合より第2の流出口16cから遠く離れるように、軸AXSからずれた位置に形成されている。貫通穴316hの縁と第2の流出口16cとの間の径方向距離LSは、貫通穴が軸AXS上に形成された場合の径方向距離LCより大きい。
【0054】
この実施形態によると、気相冷媒が貫通穴316hによって加速される。しかも、貫通穴316hが第2の流出口16cから離れるようにずれているから、気液境界面のファンネルが、貫通穴316hを通るように歪む。ファンネルは、第2の流出口16cから離れるようにうねる。この実施形態によると、貫通穴316hを有する隔壁16gは、分離室16dにおける気相冷媒の領域を細くするとともに、同時に、分離室16dにおける気相冷媒の領域を分離室16dの軸AXSからずらす。この結果、第1の旋回室16d1の旋回方向、すなわち周方向に沿って、液相冷媒の膜が厚い部分と、薄い部分とが形成される。特に、第2の流出口16cの開口位置上の液相冷媒の膜の厚さは、第2の流出口16cの開口位置に対して径方向反対側の位置における液相冷媒の膜の厚さより厚くなる。したがって、第2の流出口16cに流入する冷媒の成分を安定化することができる。
【0055】
(第4実施形態)
上記実施形態では、第2の流出口16c上の液相冷媒の膜を厚くするために、隔壁と貫通穴とを採用した。これに代えて、図10、図11、および図12に示すように、ずれた旋回室416iを採用してもよい。この実施形態では、隔壁は採用されない。円筒状のハウジング416eは、その内部に、上流側の旋回室416iと、下流側の旋回室416jとを形成している。旋回室416jは、旋回室416iの下流側に直列的に配置されている。旋回室416iの直径は、旋回室416jの直径より小さい。軸AXJに沿って見た場合、旋回室416iの円領域は、旋回室416jの円領域の中に含まれている。
【0056】
第1の旋回室416iは、第1の軸AXS1を中心とする円筒内壁面によって区画されている。第1の旋回室416iには、流入口16aが開口している。通路16fを流れた冷媒は、流入口16aから第1の旋回室416iに流入して、旋回流を形成する。第1の旋回室416iは、冷媒流に旋回成分を与える旋回付与部とも呼ぶことができる。
【0057】
第2の旋回室416jは、軸AXS2を中心とする円筒内壁面によって区画されている。第2の旋回室416jには、第1および第2の流出口16b、16cが開口している。第1の旋回室416iで旋回力を与えられた冷媒は、旋回しながら、軸方向に流れ、第1の旋回室416iから第2の旋回室416jへ流れる。冷媒は、第2の旋回室416jにおいても、旋回流を維持している。
【0058】
旋回室416iと旋回室416jとの間には、段差面416kが設けられている。段差面416kは、軸AXS1、AXS2に垂直な面、または旋回室416iから旋回室416jへ向けて内径が徐々に拡大するようにわずかに傾斜した面によって提供される。段差面416kは、旋回室(416i)から下流側の旋回室(416j)へ向かう冷媒の流れ方向に沿って、分離室16dの断面積を急拡大させる。第2の流出口16cは、段差面416kの下流側に位置しており、かつ、段差面416kの近傍に位置している。第2の流出口16cと段差面416kとの間の距離は、第2の流出口16cと第1の流出口15bとの間の距離より十分に短い。流れ操作部分は段差面416kを含む。
【0059】
軸AXS2は、エジェクタ14の軸AXJと一致している。軸AXS1と軸AXS2とは、互いに平行であるが、互いに所定の距離だけ離れている。軸AXS1は、第2の流出口16cから離れるように、軸AXS2からずれている。第2の流出口16cと軸AXS1との間の距離LS1は、第2の流出口16cと軸AXS2との間の径方向距離LS2より大きい。流れ操作部分は、距離LS1を距離LS2より大きくすることにより提供されている。
【0060】
第1の旋回室416iで形成された旋回流は、第2の旋回室416jに到達しても、旋回中心を軸AXS1上に維持しようとする。このとき、軸AXS1が第2の流出口16cから離れるように、軸AXS2からずれているから、気液境界面のファンネルが、軸AXS1上から軸AXS2上へ徐々に推移するように歪む。ファンネルは、第2の流出口16cから離れるようにうねる。この結果、分離室16dの旋回方向、すなわち周方向に沿って、液相冷媒の膜が厚い部分と、薄い部分とが形成される。特に、第2の流出口16c上の液相冷媒の膜の厚さは、第2の流出口16cとは反対側における液相冷媒の膜の厚さより厚くなる。
【0061】
この実施形態によると、流れ操作部分は、分離室16dにおける気相冷媒の領域を分離室16dの軸AXS2からずらす。これにより、分離室16dの径方向内側における気相冷媒の領域を第2の流出口16cから遠ざけることができる。したがって、第2の流出口16cに流入する冷媒の成分を安定化することができる。
【0062】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0063】
例えば、蒸発器ユニット20は、さらに膨張弁13を含むユニットとすることができる。例えば、膨張弁13をボックス型エキスパンションバルブによって提供し、蒸発器ユニット20にボックス型エキスパンションバルブを装着することができる。
【0064】
また、上記実施形態では、蒸発器ユニット20に分配器16を設けたが、分配器16を蒸発器15、18とは別体に設けてもよい。また、上記実施形態では、エジェクタ14と分配器16とを一体に連結して構成したが、分配器16をエジェクタ14とは別体に設けてもよい。
【0065】
また、第1の蒸発器15を備えない構成を採用してもよい。また、図8に図示された実施形態においても、第2の流出口16cを隔壁16gの下流側に設けてもよい。また、図10に図示された実施形態に、先行する実施形態の隔壁を追加的に採用してもよい。
【符号の説明】
【0066】
10 エジェクタ式の冷凍サイクル、 14 エジェクタ、 16 分配器、 16a 流入口、 16b 第1の流出口、 16c、216c 第2の流出口、 16d 分離室、 16d1 上流側の旋回室、 16d2 下流側の旋回室、 16e ハウジング、 16g 隔壁、 16h、316h 貫通穴、 416i 上流側の旋回室、 416j 下流側の旋回室、 20 蒸発器ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を旋回させ気相冷媒と液相冷媒とに分離するための分離室(16d)を区画形成するとともに、前記分離室へ冷媒を導入する流入口(16a)、前記分離室に開口する第1の流出口(16b)、および前記分離室の径方向外側に開口する第2の流出口(16c、216c)を形成するハウジング(16e)と、
前記第2の流出口の径方向内側における液相冷媒の膜を厚くするために、前記分離室における冷媒の流れを操作する流れ操作部分(16g、16h、316h、416i、416j、416k)とを備えることを特徴とする冷媒用の遠心式分配器。
【請求項2】
前記流れ操作部分(16g、16h、316h、416i、416j、416k)は、
前記第2の流出口の径方向内側における前記気相冷媒の領域を前記第2の流出口から遠ざけることを特徴とする請求項1に記載の冷媒用の遠心式分配器。
【請求項3】
前記流れ操作部分(16g、16h、316h)は、
前記分離室における気相冷媒の領域を細くすることを特徴とする請求項2に記載の冷媒用の遠心式分配器。
【請求項4】
前記流れ操作部分は、
前記分離室を上流側の旋回室と下流側の旋回室とに区画する隔壁(16g)であって、
前記上流側の旋回室における気相冷媒の流れを加速して前記下流側の旋回室に流出させる貫通穴(16h、316h)が形成された隔壁を含むことを特徴とする請求項3に記載の冷媒用の遠心式分配器。
【請求項5】
前記貫通穴(316h)は、気相冷媒の領域を前記分離室の軸(AXS)からずらすために、前記第2の流出口から離れるように前記軸(AXS)からずれた位置に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の冷媒用の遠心式分配器。
【請求項6】
前記流れ操作部分(16g、316h、416i、416j、416k)は、
前記分離室における気相冷媒の領域を前記分離室の軸(AXS、AXS2)からずらすことを特徴とする請求項2に記載の冷媒用の遠心式分配器。
【請求項7】
前記分離室は、
前記流入口が開口し、第1の軸(AXS1)を有する上流側の旋回室(416i)と、
前記上流側の旋回室より下流に位置し、前記第2の流出口が開口するとともに、第2の軸(AXS2)を有する下流側の旋回室(416j)とを備え、
前記流れ操作部分は、
前記第2の流出口と前記第1の軸との間の距離(LS1)を前記第2の流出口と前記第2の軸との間の距離(LS2)より大きくすることにより提供されていることを特徴とする請求項6に記載の冷媒用の遠心式分配器。
【請求項8】
前記流れ操作部分は、
前記上流側の旋回室(416i)から前記下流側の旋回室(416j)へ断面積を急拡大させるとともに、下流側の近傍に前記第2の流出口が位置付けられた段差面(416k)を含むことを特徴とする請求項7に記載の冷媒用の遠心式分配器。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の遠心式分配器と、
前記第1の流出口の下流に設けられたノズル部(14a)と、前記ノズル部から噴出される冷媒の流れにより冷媒を吸引する吸引口(14b)と、前記ノズル部から噴出された冷媒と前記吸引口から吸引された冷媒とを混合する混合部(14c)と、混合部の下流に設けられ冷媒を昇圧するディフューザ部(14d)とを備えるエジェクタと、
前記第2の流出口と前記吸引口との間に配置された蒸発器(18)とを備えることを特徴とする冷凍サイクル。
【請求項10】
さらに、前記ディフューザ部の下流に設けられた他の蒸発器(15)を備えることを特徴とする請求項9に記載の冷凍サイクル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−96581(P2013−96581A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236422(P2011−236422)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)