説明

冷媒配管の洗浄方法および冷媒配管洗浄装置

【課題】旧冷媒を使用しているセパレート型空気調和機を新冷媒に取り替える際の冷媒配管の洗浄を確実、かつ簡便に行うことができる冷媒配管の洗浄方法および洗浄装置を提供する。
【解決手段】室外機および室内機が外されて冷媒配管の洗浄用管路が形成され、貯留シリンダー内が減圧されて新冷媒が吸引され、窒素ガスが貯留シリンダー内に圧入されて新冷媒との混合流体が作られ、該混合流体が洗浄用管路に圧入されて冷媒配管内が洗浄され、洗浄後の旧冷媒、鉱物油および新冷媒が冷媒回収ボンベに回収され、その後、窒素ガスが洗浄用管路に送出されて冷媒配管内が洗浄される冷媒配管の洗浄方法および洗浄装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旧冷媒を使用しているセパレート型空気調和機を新冷媒に取り替える際の冷媒配管を洗浄する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セパレート型空気調和機の冷媒にはCFC系、HCFC系等のいわゆる旧冷媒と称される塩素を含む弗化炭化水素系冷媒が使用されていたが、地球環境保全等の観点から、いわゆる新冷媒と称される塩素が含まれないHFC系の新冷媒に対応したセパレート型空気調和機に取り替える必要が生じている。この場合、セパレート型空気調和機の室内機と室外機とを接続する冷媒配管は、配管の長さが長い場合、あるいは壁面内や天井裏等に埋設されている場合はその交換が困難であり、仮に交換可能であっても、経済上の理由から既設の冷媒配管を再利用した方が有利なこともあって、旧冷媒機器から新冷媒機器に取り替える際に、既設の冷媒配管内を洗浄し、新設冷媒配管と同様の機能が得られるように処理して再利用することが行われる。
【0003】
このような冷媒配管の洗浄方法や洗浄装置としては、特開2005−188825号公報に開示のものがある。この発明は、「空冷セパレート型の空調機で旧冷媒機を新冷媒機に入れ替えるため、冷媒回収後に既設の冷媒配管を洗浄するにあたり、既設配管の残油、塵埃を確実且つ効率的に除去できるようにする。」ことを課題としていて、「洗浄液に窒素ガスを混合溶解して配管に流入する手段を有する洗浄装置を旧室外機に代えて既設配管に接続する工程と、旧室内機に代えて既設配管に連絡配管を接続する工程と、洗浄装置から既設配管に洗浄液を加圧し一方向に流入させて管内を順次清浄化洗浄する工程と、洗浄装置から既設配管に前記とは逆方向に洗浄液を加圧し流入させて管内を順次清浄化洗浄する工程と、既設配管内に残存した異物を抜き取る工程と、既設配管に窒素ガスボンベから窒素ガスを加圧流入させて、加圧ブローにより洗浄液を抜き取り回収し、同時に管内の異物を排出させる工程とを経て既設配管の洗浄を行う。」方法により、上記課題の解決手段としたものである。
【特許文献1】特開2005−188825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特開2005−188825号公報に開示の洗浄方法では、洗浄装置から既設配管に洗浄液を加圧し一方向に流入させて管内を順次清浄化洗浄した後、再度、洗浄装置から既設配管に前記とは逆方向に洗浄液を加圧し流入させて管内を順次清浄化洗浄し、その後、既設配管に窒素ガスを加圧流入させる、こととしていて、洗浄工程が煩雑とならざるを得ない。その上、「洗浄装置は、洗浄液タンク、ポンプ、窒素ガスボンベ、回収タンク、回収缶、予備タンク、受皿等の各部材を有して構成されている。これら構成部材は、互いに配管で接続された状態で、台車上に収納されて適宜な場所へ一体に持ち運んで利用できるようになって」(段落番号〔0024〕の記載)いて、「洗浄液タンクは、適宜な容量の蓋付きステンレス製タンクであり、図に示されるように、その蓋には打ち抜きによって通孔を列設させた網部が設けられ、当該網部の上面に、活性炭とシリカゲルからなる水分除去フィルターを設置してある」(段落番号〔0025〕の記載)と記されているように、洗浄液タンクの構成が複雑であって、洗浄装置自体も比較的大掛かりなものとなっている。
【0005】
そこで、本願発明は、旧冷媒を使用しているセパレート型空気調和機を新冷媒に取り替える際の冷媒配管の洗浄を確実、かつ簡便に行うことができる冷媒配管の洗浄方法および洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本願発明者は、鋭意研究した結果、新冷媒と窒素ガスを所定の方法で混合流体とすることにより、洗浄液として使用することができることの知見を得た。本願発明はこの知見に基づくものである。
【0007】
すなわち、上記目的を達成するため、本願請求項1に係る冷媒配管の洗浄方法は、室外機および室内機で構成されるセパレート型空気調和機を旧冷媒機器から新冷媒機器へ転換する際の冷媒配管内の冷媒および残油を除去洗浄する方法であって、前記室外機または前記室内機の一方が外された前記冷媒配管の両端に注入管および排出管が接続されるとともに、該室外機または該室内機の他方が外された該冷媒配管の両端を連結する連結管が接続され、前記注入管の他端は貯留シリンダーに接続されるとともに前記排出管の他端は冷媒回収ボンベに接続され、前記貯留シリンダー内は絶対真空に近い状態に減圧されて新冷媒を収納する新冷媒タンクから該新冷媒が吸引され、該貯留シリンダー内に窒素ガスを収納する窒素ガスタンクから該新冷媒に対して所定の容積比の窒素ガスが流入されて該新冷媒と該窒素ガスの混合流体となし、前記貯留シリンダー内が該窒素ガスにより所定の圧力に加圧されて前記混合流体が前記注入管を介して前記冷媒配管内に注入され、前記冷媒配管内の旧冷媒および該混合流体が前記排出管を介して前記冷媒回収ボンベ内に回収され、その後、前記窒素ガスタンクから窒素ガスが所定の圧力下で一気に前記冷媒配管内に注入される、ことを特徴としている。
なお、「絶対真空に近い状態」とは、小数点第1位を有効数字とするMPa表示の圧力計で計測したときの値が「0.0」である状態をいい、「所定の圧力下で一気に」とは、たとえば介装させた開閉弁を「閉」にして窒素ガスを所定の圧力とし、その後、瞬時に当該開閉弁を「開」にして窒素ガスを冷媒配管内に注入させる、ことをいう。
また、本願請求項2に係る冷媒配管の洗浄方法は、請求項1に記載の冷媒配管の洗浄方法であって、1気圧下における前記所定の容積比は新冷媒1に対して窒素ガスが略14〜23である、ことを特徴としている。
そして、本願請求項3に係る冷媒配管の洗浄方法は、請求項1または請求項2に記載の冷媒配管の洗浄方法であって、前記貯留シリンダー内が加圧される所定の圧力は略0.2MPa〜0.3MPaであり、前記窒素ガスタンクから窒素ガスが一気に前記冷媒配管内に注入される所定の圧力は略0.2MPa〜0.3MPaである、ことを特徴としている。
さらに、本願請求項4に係る冷媒配管の洗浄方法は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の冷媒配管の洗浄方法であって、前記窒素ガスが所定の圧力下で一気に前記冷媒配管内に注入される工程においては、前記窒素ガスタンクは前記注入管に直結される、ことを特徴としている。
また、本願請求項5に係る冷媒配管洗浄装置は、室外機と室内機で構成されるセパレート型空気調和機の旧冷媒機器から新冷媒機器への転換時における冷媒配管内の冷媒を除去洗浄する冷媒配管洗浄装置であって、前記室外機または前記室内機の一方が外された前記冷媒配管の一端に注入管を介して接続される円筒状の貯留シリンダーと、該貯留シリンダーに切替え弁を介して接続される真空ポンプと、該貯留シリンダーに切替え弁を介して接続される新冷媒タンクと、該貯留シリンダーおよび前記注入管のそれぞれに切替え弁を介して接続される窒素ガスボンベと、前記室外機または前記室内機の他方が外された前記冷媒配管の両端を連結する連結管と、前記室外機または前記室内機の一方が外された前記冷媒配管の他端に排出管を介して接続される冷媒回収ボンベと、からなり、前記注入管および前記排出管には切替え弁が介装されている、ことを特徴としている。
そして、本願請求項6に係る冷媒配管洗浄装置は、請求項5に係る冷媒配管洗浄装置であり、前記真空ポンプに接続する切替え弁および前記新冷媒タンクに接続する切替え弁は1つの第1の2方向切替え弁であって、該第1の2方向切替え弁と前記貯留シリンダーの間には第2の2方向切替え弁が介装されて該第2の2方向切替え弁には前記窒素ガスボンベが接続される、ことを特徴としている。
さらに、本願請求項7に係る冷媒配管洗浄装置は、請求項5または請求項6に係る冷媒配管洗浄装置であり、前記注入管に介装される切替え弁は第3の2方向切替え弁であって、該第3の2方向切替え弁には前記窒素ガスボンベが接続される、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本願発明は、上記構成により以下の効果を奏する。
(1)貯留シリンダー内を減圧して新冷媒を吸引し、その後、窒素ガスを流入させて加圧するため、貯留シリンダー内では、新冷媒と微細な気泡の窒素ガスが均等に混ざり合った混合流体が瞬時に作られる。
そして、加圧されたこの混合流体が一気に冷媒配管内に注入される上に、この混合流体は新冷媒と加圧された微細な気泡の窒素ガスからなっているため、窒素ガスの気泡が冷媒配管の壁面に接触して減圧し膨張して弾けるときに衝撃波が発生して、冷媒配管内に付着した鉱物油が剥ぎ落とされる。その結果、混合流体により冷媒配管内の旧冷媒が押し出されるとともに、冷媒配管内に付着した鉱物油もまた、押し出されることになる。
(2)本願発明の洗浄方法では、新冷媒と窒素ガスの混合流体を冷媒配管内に流入させた後、窒素ガスのみを一気に流入させる工程により冷媒配管内の洗浄を可能としているため、洗浄工程数が少なく、簡便に冷媒配管内の洗浄をすることができる。
(3)また、洗浄液として新冷媒と窒素ガスの混合流体を使用しているため、仮に洗浄液が冷媒配管内に残留しても、旧新冷媒と新冷媒の混合による不純物が生成されることがない上に、最終工程で窒素ガスのみを流入させるため、洗浄後の冷媒配管内には有害な残留物が残らない。
(4)出願人の知見に拠れば、新冷媒の容積1に対して1気圧下における窒素ガスの容積を略14〜23とし、貯留シリンダー内の圧力を略0.2MPa〜0.3MPaとすることにより、新冷媒と微細な気泡の窒素ガスが均等に瞬時に混ざり合わせることができ、加圧された微細な気泡の弾け効果も大となって、混合流体の流動性および洗浄力の相乗効果が最大となる。
また、窒素ガスを一気に冷媒配管内に注入させる所定の圧力を略0.2MPa〜0.3MPaとして、一気に冷媒配管内に注入することにより、冷媒配管内における窒素ガスが残留物を吹き飛ばす力も最大となる。
(5)窒素ガスを所定の圧力下で一気に冷媒配管内に注入する工程において、窒素ガスタンクを注入管に直結させることにより、窒素ガスは直接冷媒配管内に注入されるため、加圧された窒素ガスの圧力損失が少なくなる。
(6)冷媒配管洗浄装置の主要構成部品は、別体の貯留シリンダー、真空ポンプ、新冷媒タンク、窒素ガスボンベおよび冷媒回収ボンベであり、付属部品として前記の主要構成部品を接続する管、冷媒配管に接続する管および接続する管に介装される切替え弁からなっていて、貯留シリンダーは両端が閉鎖された耐圧性のある円筒である。したがって、冷媒配管洗浄装置は極めてその構成が簡単であり、それ故、維持管理が容易であり、作業性、運搬性および経済性に優れたものとなっている。
(7)貯留シリンダーと新冷媒タンク間、および真空ポンプと新冷媒タンク間に介装する第1の2方向切替え弁と貯留シリンダーの間に第2の2方向切替え弁を介装し、さらに、注入管に第3の2方向切替え弁を介装した場合には、
(ア)第1の2方向切替え弁を切替えない限り、貯留シリンダー内が減圧される前に窒素ガスが流入する、という誤動作を防ぐことができ、
(イ)第2の2方向切替え弁を切替えない限り、新冷媒が貯留シリンダーに流入する前に窒素ガスが流入する、という誤動作を防ぐことができ、
(ウ)第3の2方向切替え弁を切替えない限り、新冷媒と窒素ガスの混合流体が冷媒配管に流入し終わる前に窒素ガスが流入する、という誤動作を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本願発明を実施するための最良の形態に係る実施例について、図1および図2に基づいて説明する。なお、図1は、実施例に係る冷媒配管洗浄装置の構成図であり、図2は、実施例に係る冷媒配管の洗浄方法のフローチャート図である。
また、図1において、符号1は実施例に係る冷媒配管洗浄装置、符号11は貯留シリンダー、符号13は真空ポンプ、符号15は新冷媒タンク、符号17は窒素ガスボンベ、符号19は冷媒回収ボンベ、符号31は注入管、符号33は連結管、符号35は排出管、符号41は真空ポンプ接続管、符号43は新冷媒タンク接続管、符号45は窒素ガスボンベ接続管、符号51は第1の2方向切替え弁、符号52は第2の2方向切替え弁、符号53は第3の2方向切替え弁、符号55は排気切替え弁、符号57は回収切替え弁、符号59はガス逃し管、符号61は冷媒配管、符号63は室外機、符号65は室内機、である。
【0010】
まず、実施例に係る冷媒配管洗浄装置1の構成について、図1に基づいて説明する。
【0011】
冷媒配管洗浄装置1は、主に、両端部が閉鎖された円筒状の貯留シリンダー11と、真空ポンプ13と、新冷媒を収納する新冷媒タンク15と、窒素ガスを収納する窒素ガスボンベ17と、冷媒回収ボンベ19と、前記の各構成要素を着脱自在に連結する接続管とから構成されている。すなわち、貯留シリンダー11と真空ポンプ13とは真空ポンプ接続管41で着脱自在に連結され、貯留シリンダー11と新冷媒タンク15とは新冷媒タンク接続管43で着脱自在に連結され、貯留シリンダー11と窒素ガスボンベ17とは窒素ガスボンベ接続管45で着脱自在に連結され、貯留シリンダー11と冷媒回収ボンベ19とは注入管31、冷媒配管61、連結管33および排出管35を介して着脱自在に連結されている。さらに、窒素ガスボンベ接続管45は途中から分岐して、その先端は注入管31に接続している。
【0012】
また、真空ポンプ接続管41、新冷媒タンク接続管43および窒素ガスボンベ接続管45には、切替え弁が介装されている。すなわち、真空ポンプ接続管41および新冷媒タンク接続管43には第1の2方向切替え弁51が介装されて、第1の2方向切替え弁51を介して真空ポンプ接続管41および新冷媒タンク接続管43が継合し、継合した接続管は貯留シリンダー11方向に延伸していて、第2の2方向切替え弁52を介して貯留シリンダー11に接続している。そして、第2の2方向切替え弁52には窒素ガスボンベ接続管45が接続している。
また、注入管31には第3の2方向切替え弁53が介装され、第3の2方向切替え弁53には前述したように、窒素ガスボンベ接続管45から分岐した分岐管の先端が接続している。
さらに、排出管35は、冷媒回収ボンベ19方向に向かって二股に分岐し、その一方は回収切替え弁57が介装されて冷媒回収ボンベ19に接続し、他方は排気切替え弁55が介装されてその先端は開放されている。なお、排気切替え弁55および回収切替え弁57をまとめて一つの2方向切替え弁としても良い。
【0013】
注入管31の先端は室内機65から外された冷媒配管61の一端に接続され、室内機65から外された冷媒配管61の他端は排出管35に接続される。そして、室外機63から外された冷媒配管61の両端は、連結管33により接続されて、冷媒配管61→連結管33→冷媒配管61からなるバイパス管路が形成される。
なお、注入管31および排出管35は室内機65から外された冷媒配管61に接続し、連結管33は室外機63から外された冷媒配管61に接続しているが、室内機65および室外機63を入れ替えても良いことは勿論である。
【0014】
なお、冷媒回収ボンベ19には、前述したように、排出管35が排出切替え弁55を介して接続されているが、排出管35以外にガス逃し管59が接続されてその先端は外部に開放されている。
【0015】
つぎに、実施例に係る冷媒配管洗浄装置1を使用した冷媒配管の洗浄方法について、図1および図2に基づいて順を追って説明する。
【0016】
冷媒配管の洗浄方法の手順例は、
(1)まず、室外機63、室内機65および冷媒配管61内の旧冷媒をポンプダウンにより回収する(ステップ1)。なお、セパレート型空気調和機のポンプが稼働しない場合は、ステップ1を飛ばしてステップ2から開始する。
【0017】
(2)ポンプダウンによる旧冷媒回収後、冷媒配管61を室内機65から外して、その一端に注入管31を接続し、他端に排出管35を接続するとともに、冷媒配管61を室外機63から外して、その両端に連結管33を接続する(ステップ2)。
【0018】
(3)第1の2方向切替え弁51および第2の2方向切替え弁52を操作して、真空ポンプ13と貯留シリンダー11とを連通させるとともに、第3の2方向切替え弁53を操作して、貯留シリンダー11の排出口を「閉」にする。そして、真空ポンプ13を稼動させて貯留シリンダー11内を絶対真空に近い状態に減圧する(ステップ3)。
【0019】
(4)第1の2方向切替え弁51を操作して、新冷媒タンク15と貯留シリンダー11とを連通させると、減圧された貯留シリンダー11内には、新冷媒タンク15から新冷媒が吸引される(ステップ4)。吸引される新冷媒の量は、既設の冷媒配管61の長さに拠るが、家庭用のセパレート型空気調和機では概ね500g〜800gであり、業務用のセパレート型空気調和機では概ね1kg〜2kgである。
また、実施例では、新冷媒にHFC-365mfc(ハイドロフルオロカーボン-365mfc)を使用している。なお、第1の2方向切替え弁51の操作により、真空ポンプ13と貯留シリンダー11との接続は遮断される。
【0020】
(5)第2の2方向切替え弁52を操作して、窒素ガスボンベ17と貯留シリンダー11とを連通させると、窒素ガスボンベ17から加圧された所定量の窒素ガスが貯留シリンダー11内に流入する(ステップ5)。この工程により、貯留シリンダー11内では、新冷媒と微細な気泡の窒素ガスが均等に混ざり合った混合流体が瞬時に作られる。
なお、家庭用のセパレート型空気調和機の場合の窒素ガスの量は、1気圧下において略9,000cmであることが好ましい。また、第2の2方向切替え弁52の操作により、真空ポンプ13および新冷媒タンク15と貯留シリンダー11との接続は遮断される。
【0021】
(6)窒素ガスボンベ17と貯留シリンダー11を接続した状態で、第3の2方向切替え弁53および回収切替え弁57を操作して、貯留シリンダー11→注入管31→第3の2方向切替え弁53→注入管31→冷媒配管61→連結管33→冷媒配管61→排出管35→回収切替え弁57→排出管35→冷媒回収ボンベ19、からなる冷媒配管の洗浄用の管路を開通させると、新冷媒と窒素ガスとの混合流体は窒素ガスにより加圧された状態でこの洗浄用の管路内を流入し、窒素ガスに押し出されるように冷媒回収ボンベ19内に回収される(ステップ6)。
新冷媒と窒素ガスとの混合流体が上記の洗浄管路内を流通する間に、窒素ガスの微細な気泡が冷媒配管の壁面に接触して弾け、冷媒配管61内に付着した鉱物油が剥ぎ落とされて、混合流体とともに、冷媒配管61内に付着した鉱物油も冷媒回収ボンベ19内に回収される。この工程において、ガス逃し管59により、気体の窒素ガスが冷媒回収ボンベ19外に放出されて、旧冷媒、新冷媒および鉱物油のみが冷媒回収ボンベ19内に貯留する。
なお、セパレート型空気調和機の圧縮機不良の場合には、旧冷媒に含まれるオイルが焼けていることが多いため、ステップ6において、始めに混合流体の略半分の量を冷媒配管61に注入して汚れの程度を確認し、然る後に、残りの略半分の量を冷媒配管61に注入して内部を洗浄するようにしても良い。
【0022】
(7)第2の2方向切替え弁52、第3の2方向切替え弁53、排気切替え弁55および回収切替え弁57を操作して、窒素ガスボンベ17→窒素ガスボンベ接続管45→第3の2方向切替え弁53→注入管31→冷媒配管61→連結管33→冷媒配管61→排出管35→排気切替え弁55、からなる冷媒配管の仕上げ洗浄用の管路を開通させる。そして、第3の2方向切替え弁53を「閉」とした状態で窒素ガスボンベ17から窒素ガスを流入させて所定の圧力とした後、一気に第3の2方向切替え弁53を「全開」すると、加圧された窒素ガスはこの仕上げ洗浄用管路内を流入し、排気切替え弁55を通って外部に放出される(ステップ7)。
なお、この工程は、必要に応じて2回〜4回程度繰り返す。また、第2の2方向切替え弁52および第3の2方向切替え弁53の操作により、窒素ガスボンベ17と貯留シリンダー11との接続は遮断される。
以上の手順により、冷媒配管内が洗浄される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、実施例に係る冷媒配管洗浄装置の構成図である。
【図2】図2は、実施例に係る冷媒配管の洗浄方法のフローチャート図である。
【符号の説明】
【0024】
1 実施例に係る排水管洗浄装置
11 貯留シリンダー
13 真空ポンプ
15 新冷媒タンク
17 窒素ガスボンベ
19 冷媒回収ボンベ
31 注入管
33 連結管
35 排出管
51 第1の2方向切替え弁
52 第2の2方向切替え弁
53 第3の2方向切替え弁
57 回収切替え弁
61 冷媒配管
63 室外機
65 室内機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外機および室内機で構成されるセパレート型空気調和機を旧冷媒機器から新冷媒機器へ転換する際の冷媒配管内の冷媒および残油を除去洗浄する方法であって、
前記室外機または前記室内機の一方が外された前記冷媒配管の両端に注入管および排出管が接続されるとともに、該室外機または該室内機の他方が外された該冷媒配管の両端を連結する連結管が接続され、
前記注入管の他端は貯留シリンダーに接続されるとともに前記排出管の他端は冷媒回収ボンベに接続され、
前記貯留シリンダー内は絶対真空に近い状態に減圧されて新冷媒を収納する新冷媒タンクから該新冷媒が吸引され、
該貯留シリンダー内に窒素ガスを収納する窒素ガスタンクから該新冷媒に対して所定の容積比の窒素ガスが流入されて該新冷媒と該窒素ガスの混合流体となし、
前記貯留シリンダー内が該窒素ガスにより所定の圧力に加圧されて前記混合流体が前記注入管を介して前記冷媒配管内に注入され、前記冷媒配管内の旧冷媒および該混合流体が前記排出管を介して前記冷媒回収ボンベ内に回収され、
その後、前記窒素ガスタンクから窒素ガスが所定の圧力下で一気に前記冷媒配管内に注入される、ことを特徴とする冷媒配管の洗浄方法。
【請求項2】
1気圧下における前記所定の容積比は新冷媒1に対して窒素ガスが略14〜23である、ことを特徴とする請求項1に記載の冷媒配管の洗浄方法。
【請求項3】
前記貯留シリンダー内が加圧される所定の圧力は略0.2MPa〜0.3MPaであり、
前記窒素ガスタンクから窒素ガスが一気に前記冷媒配管内に注入される所定の圧力は略0.2MPa〜0.3MPaである、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷媒配管の洗浄方法。
【請求項4】
前記窒素ガスが所定の圧力下で一気に前記冷媒配管内に注入される工程においては、前記窒素ガスタンクは前記注入管に直結される、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の冷媒配管の洗浄方法。
【請求項5】
室外機と室内機で構成されるセパレート型空気調和機の旧冷媒機器から新冷媒機器への転換時における冷媒配管内の冷媒を除去洗浄する冷媒配管洗浄装置であって、
前記室外機または前記室内機の一方が外された前記冷媒配管の一端に注入管を介して接続される円筒状の貯留シリンダーと、
該貯留シリンダーに切替え弁を介して接続される真空ポンプと、
該貯留シリンダーに切替え弁を介して接続される新冷媒タンクと、
該貯留シリンダーおよび前記注入管のそれぞれに切替え弁を介して接続される窒素ガスボンベと、
前記室外機または前記室内機の他方が外された前記冷媒配管の両端を連結する連結管と、
前記室外機または前記室内機の一方が外された前記冷媒配管の他端に排出管を介して接続される冷媒回収ボンベと、からなり、
前記注入管および前記排出管には切替え弁が介装されている、ことを特徴とする冷媒配管洗浄装置。
【請求項6】
前記真空ポンプに接続する切替え弁および前記新冷媒タンクに接続する切替え弁は1つの第1の2方向切替え弁であって、該第1の2方向切替え弁と前記貯留シリンダーの間には第2の2方向切替え弁が介装されて該第2の2方向切替え弁には前記窒素ガスボンベが接続される、ことを特徴とする請求項5に記載の冷媒配管洗浄装置。
【請求項7】
前記注入管に介装される切替え弁は第3の2方向切替え弁であって、該第3の2方向切替え弁には前記窒素ガスボンベが接続される、ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の冷媒配管洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−78194(P2010−78194A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245076(P2008−245076)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(508288124)有限会社埼空熱学 (1)