説明

冷房システム

【課題】特殊な除湿器を用いずに省エネルギーを図ることができる放射冷房システムを提供すること。
【解決手段】冷房システム1は、熱媒体cが保有する冷熱により物体Bの温度よりも低い温度に冷却される放射パネル11と、熱媒体cが保有する熱により絶対湿度が所定の湿度以下の被加熱空気DAの温度を上昇させる再熱装置12と、再熱装置12で昇温された被加熱空気SAを冷房対象室Rに導く被加熱空気ダクト31と、放射パネル11から導出された熱媒体cが再熱装置12に導入され、再熱装置12から導出された熱媒体cが放射パネル11に導入されるように、熱媒体cが循環する流路を形成する熱媒体流路21、22、24とを備える。而して、放射パネル11で吸収した熱を再熱装置12における再熱源として利用することができ、熱の有効利用を図ることができて省エネルギーとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷房システムに関し、特に放射パネルを用いた冷房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーと快適性とを両立する空調方式として、放射空調システムが注目されている。放射空調システムは、天井面や床面等に設置された放射パネルを冷やし(温め)、放射パネルからの放射熱により被空調室内の物体の熱環境を改善するシステムである。放射空調システムでは、放射パネルが処理できるのは顕熱であるため、特に冷房時には、被処理空気を、塩化リチウム溶液に接触させたり、所定の絶対湿度の露点温度まで冷却した後に所定の温度に加熱(除湿再熱)したりすることで除湿して、除湿した空気を被空調室に供給するのが一般的である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−214696号公報(段落0038、0054等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、被空調室の潜熱を処理するための被処理空気の除湿を、塩化リチウム溶液に接触させることで行うこととすると、特殊な除湿器が必要となる。他方、除湿再熱は汎用の空調機で行うことができるが、設定された吹出空気に対して過冷却するエネルギー及び再熱するエネルギーが余分にかかることとなる。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑み、特殊な除湿器を用いずに省エネルギーを図ることができる放射パネルを用いた冷房システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る冷房システムは、例えば図1(又は図2)に示すように、冷房対象室Rの内部に存在する物体Bの熱を吸熱する放射パネル11であって、熱媒体cを導入して熱媒体cが保有する冷熱により物体Bの温度よりも低い温度に冷却される放射パネル11と;絶対湿度が所定の湿度以下の被加熱空気DAの温度を上昇させる再熱装置12(212)であって、熱媒体cを導入して熱媒体cが保有する熱により被加熱空気DAの温度を上昇させる再熱装置12(212)と;再熱装置12(212)で昇温された被加熱空気SAを冷房対象室Rに導く被加熱空気ダクト31と;熱媒体cが流れる熱媒体流路であって、放射パネル11から導出された熱媒体cが再熱装置12(212)に導入され、再熱装置12(212)から導出された熱媒体cが放射パネル11に導入されるように、熱媒体cが循環する流路を形成する熱媒体流路21、22、24とを備える。
【0007】
このように構成すると、放射パネルで吸収した熱を再熱装置における再熱源として利用することができ、熱の有効利用を図ることができて省エネルギーとなる。
【0008】
また、本発明の第2の態様に係る冷房システムは、例えば図1(又は図2)に示すように、上記本発明の第1の態様に係る冷房システム1(2)において、熱媒体c及び外部エネルギーを導入し、導入した外部エネルギーにより熱媒体cを冷却する冷熱源装置41と;冷熱源装置41で冷却された熱媒体cを熱媒体流路21に導く冷却熱媒体供給流路53と;放射パネル11から導出された熱媒体cを冷熱源装置41に導く熱媒体戻り流路54とを備える。典型的には、冷却熱媒体供給流路53は、例えば図1に示すように、冷熱源装置41で冷却された熱媒体cを、放射パネル11から導出されて再熱装置12に導入される熱媒体cを流す熱媒体流路21に導き、又は、例えば図2に示すように、冷熱源装置41で冷却された熱媒体cを、再熱装置212から導出されて放射パネル11に導入される熱媒体cを流す熱媒体流路21に導く。
【0009】
このように構成すると、放射パネルに導入される熱媒体の温度を設定された条件に近づけやすくなって、冷房対象室内を冷房する放射成分(放射パネルからの放射エネルギー)を設定された条件に近づけやすくなる。また、熱媒体が放射パネルで吸収する熱量を再熱装置で放出する熱量以上とすることができる。
【0010】
また、本発明の第3の態様に係る冷房システムは、例えば図1(図2)に示すように、上記本発明の第2の態様に係る冷房システム1(2)において、冷却熱媒体供給流路53から熱媒体流路21に導入される熱媒体cの流量を調節する流量比調節手段25と;放射パネル11に導入される熱媒体cの温度を検出する温度検出器62と;温度検出器62で検出された温度が所定の温度となるように流量比調節手段を制御する制御装置92とを備える。典型的には、流量比調節手段25は、例えば図1に示すように、再熱装置12に導入される熱媒体cのうち、放射パネル11から導出された熱媒体cの流量と冷熱源装置41から導出された熱媒体cの流量との比を調節し、又は、例えば図2に示すように、放射パネル11に導入される熱媒体cのうち、再熱装置212から導出された熱媒体cの流量と冷熱源装置41から導出された熱媒体cの流量との比を調節する。
【0011】
このように構成すると、放射パネルの表面温度を設定された温度に近づけやすくなると共に、除湿過冷却熱の回収あるいは外気冷熱を最大限に利用することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、放射パネルで吸収した熱を再熱装置における再熱源として利用することができ、熱の有効利用を図ることができて省エネルギーとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る冷房システムの模式的系統図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る冷房システムの模式的系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0015】
まず図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る冷房システム1を説明する。図1は、冷房システム1の模式的系統図である。冷房システム1は、放射熱により、冷房対象室の内部としての室内Rに存在する物体Bの熱環境を改善する放射冷房システムである。物体Bは、人や事務機器や壁等の、室内Rの空間に現れているものである。冷房システム1は、放射パネル11と、再熱装置としての空調機12と、冷熱源装置としての熱源機41と、これらを接続する配管類と、空調機12で処理された被加熱空気としてのサプライ空気SAを搬送する被加熱空気ダクトとしての給気ダクト31と、制御装置としての空調制御装置92とを備えている。
【0016】
放射パネル11は、窓Wのある室内Rの窓際(ペリメータゾーン)の天井に設置された外側放射パネル11Pと、室内Rの窓際以外の部分(インテリアゾーン)の天井に設置された内側放射パネル11Qとを含んでいる。以下の説明において、外側放射パネル11Pと内側放射パネル11Qとを特に区別する必要がない場合は、総称して単に「放射パネル11」という。放射パネル11は、板状に形成されたパネルの天井裏側の面に、熱媒体としての冷水cを流すパイプが配置されて構成されている。パネルは、典型的には矩形(長方形又は正方形)の平面形状を有するが、三角形や六角形等の多角形の平面形状を有していてもよい。パイプは、冷水cが保有する冷熱をパネル全体に伝達することができるように、蛇行させて接触配置することにより伝熱面積を大きくすることが好ましい。図1では、説明の便宜上、外側放射パネル11P及び内側放射パネル11Q共に1つずつを示しているが、室内Rの広さと放射パネル11の大きさに応じて設置枚数が決定される。外側放射パネル11Pには、放射面の温度を検出する外側温度検出器61Pが設けられており、内側放射パネル11Qには、放射面の温度を検出する内側温度検出器61Qが設けられている。
【0017】
空調機12は、冷水cを流すコイル12cと、サプライ空気SAを吐出するファン12fとを有している。空調機12は、絶対湿度が所定の湿度以下の被加熱空気としての低湿空気DAを、冷水cが流れるコイル12cに通過させて温度を調節し、温度が調節されたサプライ空気SAを供給先に向けて圧送することができるように構成されている。空調機12は、空調機12に導入される低湿空気DAよりも温度が高い冷水c及び温度が低い冷水cのいずれをもコイル12cに導入することができ、低湿空気DAよりも温度が高い冷水cがコイル12cに導入されたときは低湿空気DAが加熱され、低湿空気DAよりも温度が低い冷水cがコイル12cに導入されたときは低湿空気DAが冷却されるように構成されている。サプライ空気SAを圧送するファン12fは、インバータ制御で回転速度を変えることによりサプライ空気SAの吐出風量を変えることができるように構成されている。空調機12は、典型的には、低湿空気DA又はサプライ空気SAを浄化するフィルタ(不図示)を有しており、必要に応じて加湿器等を有していてもよい。
【0018】
熱源機41は、電気や熱等の外部からのエネルギー(外部エネルギー)を用いて冷水cを冷却することができる機器である。熱源機41は、電気エネルギーにより冷凍サイクルを作動させて冷水cを冷却するターボ冷凍機や、蒸気の熱又は油等の可燃物を燃焼させて発生する熱により冷凍サイクルを作動させて冷水cを冷却する吸収式冷温水発生機等が用いられる。熱源機41は、放射パネル11に導入される冷水cの設定温度(本実施の形態では18℃)まで冷水cを冷却することができる能力を少なくとも有しており、さらに低温度まで冷却することができる能力を有していてもよい。
【0019】
空調機12は、冷水cを放射パネル11に導く循環往管21に配設されている。詳細には、空調機12のコイル12cの内部が循環往管21の内部に連通して接続されている。空調機12の上流側の循環往管21には、冷水cを流動させる循環ポンプ28が設けられている。循環ポンプ28は、インバータ制御で回転速度を変えることにより冷水cの吐出流量を変えることができるように構成されている。循環往管21には、空調機12よりも上流側の冷水cを、空調機12をバイパスして空調機12の下流側に導く導入バイパス管21Bが接続されている。空調機12の下流側の循環往管21と導入バイパス管21Bとの接続部には、空調機12を通過する冷水cの流量と導入バイパス管21Bを通過する冷水cの流量との比率を調節するバイパス調節弁27が配設されている。バイパス調節弁27は、本実施の形態では三方弁が用いられているが、二方弁を2つ用いることで代用してもよい。
【0020】
バイパス調節弁27の下流側の循環往管21には、放射パネル11に導入される冷水cの温度を検出する温度検出器としての冷水温度検出器62が設けられている。循環往管21は、放射パネル11側が分岐しており、一方の外側循環往管21Pが外側放射パネル11Pに接続され、他方の内側循環往管21Qが内側放射パネル11Qに接続されている。外側循環往管21Pには、外側放射パネル11Pに導入される冷水cの流量を調節する外側二方弁26Pが配設されている。内側循環往管21Qには、内側放射パネル11Qに導入される冷水cの流量を調節する内側二方弁26Qが配設されている。
【0021】
外側放射パネル11Pの冷水cの出口には、外側循環還管22Pの一端が接続されている。内側放射パネル11Qの冷水cの出口には、内側循環還管22Qの一端が接続されている。外側循環還管22Pの他端と内側循環還管22Qの他端とは、接合されて1本の循環還管22となっている。このように、外側放射パネル11Pと内側放射パネル11Qとは、並列に接続されている。放射パネル11とは反対側の循環還管22の端部には、循環バイパス管24と、冷水cを熱源機41に導く熱媒体戻り流路を構成する戻り還管54とが接続されている。
【0022】
循環バイパス管24の他端には、循環往管21と、熱源機41で冷却された冷水cを空調機12に向けて流す冷却熱媒体供給流路を構成する供給往管53とが接続されている。このように接続されることで、循環往管21、循環還管22、及び循環バイパス管24は、放射パネル11及び空調機12を介して冷水cが循環する流路(熱媒体流路)を形成している。循環往管21と循環バイパス管24と供給往管53との接合部には、循環バイパス管24から循環往管21へ流入する冷水cの流量と供給往管53から循環往管21流入する冷水cの流量との比率を調節する流量比調節手段としての流量比調節弁25が配設されている。流量比調節弁25は、本実施の形態では三方弁が用いられているが、循環バイパス管24及び供給往管53にそれぞれ二方弁を設けて構成されていてもよい。
【0023】
熱源機41の周囲には、熱源機41で冷却された冷水cを受け入れる往ヘッダ42と、熱源機41で冷却される前の冷水cを受け入れる還ヘッダ43とが設けられている。熱源機41と往ヘッダ42とは、冷却された冷水cを流す導出管44で接続されている。熱源機41と還ヘッダ43とは、冷却されるべき冷水cを熱源機41へ導く導入管45で接続されている。導入管45には、還ヘッダ43内の冷水cを熱源機41を介して往ヘッダ42へ搬送する1次ポンプ46が配設されている。往ヘッダ42と還ヘッダ43とは、熱源バイパス管47を介して連通されており、往ヘッダ42内の冷水cを還ヘッダ43へ戻すことができるように構成されている。
【0024】
往ヘッダ42には、冷却された冷水cを供給先へ向けて流す供給管51が接続されている。供給管51には、供給先へ向けて冷水cを圧送する2次ポンプ52が配設されている。2次ポンプ52よりも下流側の供給管51には供給往管53が接続されており、往ヘッダ42から導出された冷水cを循環往管21へ導くことができるように構成されている。還ヘッダ43には、冷熱が利用された場所から戻ってきた冷水cを流すヘッダ戻り管55が接続されている。ヘッダ戻り管55には戻り還管54が接続されており、循環還管22を流れてきた冷水cを還ヘッダ43へ導くことができるように構成されている。
【0025】
空調機12には、給気ダクト31がファン12fの吐出側に接続されており、低湿空気DAを流す低湿空気ダクト32がファン12fの吸込側に接続されている。給気ダクト31の他端は、室内Rの床Rfの下に形成された床下チャンバCfに接続されており、給気ダクト31を流れるサプライ空気SAを床下チャンバCfに流入させた後に床Rfに形成された制気口Fsを介して室内Rに供給することができるように構成されている。給気ダクト31には、空調機12から吐出されたサプライ空気SAの温度を検出する給気温度検出器63が設けられている。他方、低湿空気ダクト32の他端は、外気OAの絶対湿度を所定の湿度以下に低下させて低湿空気DAとする外調機18の吐出側に接続されている。外調機18の吸込側には、外気OAを外調機18に導く外気ダクト33が接続されている。外調機18は、空調機12と同様に、外気を冷却するコイル(不図示)と、低湿空気DAを吐出するファン(不図示)とを有しており、導入した外気OAを目標とする絶対湿度となる露点温度まで冷却することができるように構成されている。低湿空気ダクト32には、室内Rの空気の一部を還気RAとして低湿空気ダクト32に導く還気ダクト34が接続されている。図1では、室内R側の還気ダクト34を省略している。また、室内Rには、空気の一部を屋外へ導く排気ダクト(不図示)が接続されている。なお、排気ダクトを介して排出される空気と外調機18に導入される外気OAとで熱交換を行わせる熱交換器(不図示)を設けてもよい。
【0026】
空調制御装置92は、外側温度検出器61P、内側温度検出器61Q、冷水温度検出器62、給気温度検出器63、及び室内Rの温度を検出する室内温度検出器68とそれぞれ信号ケーブルで接続されており、検出された値を信号として受信することができるように構成されている。また、空調制御装置92は、空調機12と信号ケーブルで接続されており、室内温度検出器68で検出された値が設定値となるようにファン12fの回転速度を調節するように構成されている。また、空調制御装置92は、流量比調節弁25と信号ケーブルで接続されており、冷水温度検出器62で検出された値が目標温度になるように、循環往管21に流入する冷水cの、循環バイパス管24からの流量と供給往管53からの流量との比率を調節することができるように構成されている。また、空調制御装置92は、外側二方弁26P、内側二方弁26Q、及び循環ポンプ28とそれぞれ信号ケーブルで接続されており、外側温度検出器61P及び内側温度検出器61Qで検出された値が目標温度になるように、外側二方弁26P及び内側二方弁26Qの開度を調節したうえで、外側二方弁26P及び内側二方弁26Qの開度に応じて循環ポンプ28の回転速度を調節することができるように構成されている。また、空調制御装置92は、バイパス調節弁27と信号ケーブルで接続されており、給気温度検出器63で検出された値が目標温度になるように、空調機12のコイル12cを通過する冷水cの流量と導入バイパス管21Bを通過する冷水cの流量との比率を調節することができるように構成されている。さらに、空調制御装置92は、熱源機41の冷凍能力を制御する熱源制御装置94と信号ケーブルで接続されており、熱源制御装置94と相互に電気信号の受け渡しを行うことができるように構成されている。なお、本実施の形態では、空調制御装置92と熱源制御装置94とが別体に構成されている形態で示しているが、一体に構成されていてもよい。
【0027】
引き続き図1を参照して、冷房システム1の作用を説明する。冷房システム1は、放射パネル11で放射冷房を行うと共に除湿されたサプライ空気SAを室内Rに供給するシステムである。冷房システム1においては、放射パネル11が処理できる冷房負荷が顕熱であるため、サプライ空気SAが室内Rの潜熱を処理するべく、サプライ空気SAは、室内Rの湿度を設定値にすることができる絶対湿度(所定の湿度)に調節される。室内Rに供給される空気は、元は外気OAであり、まず、外調機18で絶対湿度が所定の湿度以下になる所定の露点温度まで冷却されることにより除湿されて低湿空気DAとなる。所定の露点温度は、低湿空気DAの絶対湿度が、還気RAと混合した後に所定の湿度となる露点温度である。外調機18は、本実施の形態では、熱源機41とは別の熱源機(不図示)から供給された冷水を導入して外気OAを冷却する。外調機18は、エアハンドリングユニット等の汎用品を用いることができ、特殊な構造の除湿器を用いることなく外気OAを冷却することができる。外調機18で所定の露点温度まで冷却された低湿空気DAは、そのまま室内Rに供給するには温度が低すぎるため、空調機12で室内Rに供給するのに適した温度に加熱されてサプライ空気SAとなり、給気ダクト31及び床下チャンバCfを介して制気口Fsから室内Rに供給される。
【0028】
本実施の形態では、外調機18から導出された11℃の低湿空気DAは、空調機12の上流で還気RAが合流して空調機12に導入され、循環ポンプ28の起動でコイル12c内を流れる冷水cによって加熱されて18℃のサプライ空気SAとなる。コイル12c内を流れる冷水cは、低湿空気DAよりも温度が高い。本実施の形態では、冷水cが、21℃でコイル12cに導入され、低湿空気DAと熱交換して18℃に低下して、コイル12cから導出される。コイル12cから導出された冷水cは、循環往管21を流れてから外側循環往管21P及び内側循環往管21Qに分岐して、外側放射パネル11P及び内側放射パネル11Qにそれぞれ導入される。放射パネル11に導入された冷水cは、放射パネル11のパネル表面を冷却して自身は18℃から21℃に温度が上昇し、外側循環還管22P及び内側循環還管22Qに導出される。その後、冷水cは、循環還管22及び循環バイパス管24を経由して循環往管21を流れて再び空調機12のコイル12cに流入し、還気RAが合流した低湿空気DAを加熱して、以下、上述の作用を繰り返す。このように、冷房システム1では、放射パネル11で吸収した熱を空調機12における低湿空気DAの再熱源として利用することができるので、熱の有効利用を図ることができて省エネルギーとなる。
【0029】
ところで、上述の冷水cの温度条件は、室内Rの熱負荷の変動によって変化することとなるため、冷房システム1では、室内Rの熱負荷に変動が生じても室内Rの熱環境を適切にするための制御が行われる。室内Rに供給されるサプライ空気SAの流量は、空調制御装置92によって、室内温度検出器68の検出温度が上昇すれば増加し、検出温度が低下すれば減少するように、室内温度検出器68の検出温度に応じて調節される。サプライ空気SAの流量が変動すると、空調機12で調節されたサプライ空気SAの温度が変動することとなる。空調制御装置92は、空調機12のコイル12c内を流れる冷水cが還気RAの合流した低湿空気DAよりも温度が高い状況下では、コイル12cに流れる冷水cの流量を、給気温度検出器63の検出温度が低下すれば増加させ、検出温度が上昇すれば減少させるように、バイパス調節弁27を制御する。バイパス調節弁27を調節すると、空調機12から導出されて放射パネル11に導入される冷水cの温度が変化する。空調制御装置92は、冷水温度検出器62の検出温度が目標温度となるように、流量比調節弁25を制御する。
【0030】
流量比調節弁25を制御すると、空調機12のコイル12cに流入する冷水cは、放射パネル11から導出されたものだけでなく、熱源機41から供給されたものが適宜混合されたものとなるため、コイル12cに流入する冷水cの温度が変化する。熱源機41では、1次ポンプ46の起動によって冷水cが熱源機41内を通過する際に冷水cを冷却する。熱源機41から導出された冷水cは導出管44を流れて往ヘッダ42に至り、往ヘッダ42内に流入した冷水cのうち2次ポンプ52の吐出流量よりも多い分は熱源バイパス管47及び還ヘッダ43を経由した後に導入管45を流れて再び熱源機41に流入して冷却される。2次ポンプ52で吐出された冷水cは、冷熱を利用する負荷機器に搬送され、冷熱が利用された後にヘッダ戻り管55を流れて還ヘッダ43に戻り、再び熱源機41で冷却されて負荷機器の利用に供される。本実施の形態では、熱源機41から導出される冷水cの温度が13℃となるように設定されている。このように、熱源機41から導出される冷水cの温度が、一般の空調用途に用いられる冷水の温度である7℃よりも高いため、COPを高くすることができる。熱源機41で冷却された冷水cは、流量比調節弁25の調節により供給往管53を介して循環往管21に流入する。供給往管53を流れる冷水cは循環バイパス管24を流れる冷水cよりも温度が低いため、供給往管53を流れる冷水cを混合させることで、空調機12のコイル12cに流入する冷水cの温度を低下させることができる。したがって、冷水温度検出器62の検出温度が目標温度よりも高い場合に供給往管53を流れる冷水cを循環往管21に流入させるように流量比調節弁25が制御される。このように、熱源機41からの冷水cが空調機12に導入される冷水cに合流するので、サプライ空気SAの温度を調節しやすくなると共に、放射パネル11に導入される冷水cを適切な温度に維持することができる。
【0031】
また、放射パネル11に流入する冷水cの温度や放射パネル11の出力が変動して放射パネル11の表面温度に影響が及ぶ場合があるため、冷房システム1では、外側温度検出器61Pの検出温度が低くなれば外側二方弁26Pの開度を絞り、検出温度が高くなれば外側二方弁26Pの開度を大きくする制御が行われ、外側温度検出器61Pの検出温度が目標温度に近づくように制御される。同様に、内側温度検出器61Qの検出温度が低くなれば内側二方弁26Qの開度を絞り、検出温度が高くなれば内側二方弁26Qの開度を大きくして、内側温度検出器61Qの検出温度が目標温度に近づくように制御される。このような制御により、放射パネル11の表面温度が適切に維持され、室内Rを快適な熱環境にすることができる。
【0032】
上述したように、冷房システム1は、バイパス調節弁27及び流量比調節弁25を適切に制御することにより、放射パネル11で吸収した熱を空調機12における低湿空気DAの再熱源として利用して熱回収を図ることができ、室内Rの熱環境を快適に維持しつつ熱の有効利用を図ることができる。また、冬季などに外気OAの絶対湿度が既に所定の湿度以下の場合は、外調機18の運転を停止させつつ外気OAの冷熱を最大限に利用することができる。なお、冬季であっても人体からの発熱やオフィス機器等の発熱があるために冷房負荷があり、特にペリメーターゾーンに放射の影響を抑制する対策が施されている冷房対象室では冬季であっても冷房負荷が大きくなる場合がある。なお、室内の冷房負荷が大きく、空調機12に導入される還気RAが合流した低湿空気DAの温度がコイル12cに導入される冷水cの温度よりも高い場合は、空調機12は冷却装置として作用することとなり、この場合、放射パネル11で吸収した熱は、空調機12における低湿空気DAの再熱源として用いられずに、熱源機41で処理されることとなる。
【0033】
以上の説明では、外側温度検出器61P及び内側温度検出器61Qで検出された値が目標温度になるように、外側二方弁26P及び内側二方弁26Qの開度を調節したうえで、外側二方弁26P及び内側二方弁26Qの開度に応じて循環ポンプ28の回転速度を調節することとしたが、循環ポンプ28で送水する冷水cの流量を一定にすると共に放射パネル11に供給される冷水cの温度を可変にしつつ、外側二方弁26P及び内側二方弁26Qを通過する冷水cの流量を配分することとしてもよい。
【0034】
次に図2を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る冷房システム2を説明する。図2は、冷房システム2の模式的系統図である。冷房システム2は、冷房システム1(図1参照)と比較して、冷房システム1(図1参照)では流量比調節弁25の下流側の循環往管21に設置されていた空調機12(図1参照)に代えて、再熱装置としての再熱ヒータ212が流量比調節弁25の上流側の循環バイパス管24に設置されている点が主に異なっている。換言すれば、冷房システム2は、熱源機41で冷却された冷水cを放射パネル11に向けて流す供給往管53が、再熱装置(再熱ヒータ212)の下流側に接続されている点が主に異なっている。上述の相違点に付随して、冷房システム2では、冷房システム1(図1参照)で設けられていた導入バイパス管21B(図1参照)及びバイパス調節弁27(図1参照)に相当する構成として、これらの代わりに再熱バイパス管24B及びバイパス調節弁227が設けられている。なお、空調機12(図1参照)に代えて再熱ヒータ212を設けたことに伴い、還気ダクト34(図1参照)が省略されている。
【0035】
再熱ヒータ212は、冷水cを流すコイル(不図示)を有している。再熱ヒータ212は、絶対湿度が所定の湿度以下の低湿空気DAを、冷水cが流れるコイルに通過させて温度を調節する装置である。再熱ヒータ212は、コイルを有するシンプルな構成であるため、空調機12(図1参照)に比べて小型になっている。低湿空気DAは、再熱ヒータ212の上流側の外調機18に内蔵されたファン(不図示)によって圧送される。外調機18内のファン(不図示)は、再熱ヒータ212で加熱されたサプライ空気SAを室内Rに供給することができる静圧を有している。循環バイパス管24には、再熱ヒータ212よりも上流側の冷水cを、再熱ヒータ212をバイパスして再熱ヒータ212の下流側へ導く再熱バイパス管24Bが設けられている。再熱ヒータ212の下流側の循環バイパス管24と再熱バイパス管24Bとの接続部には、再熱ヒータ212へ流入させる冷水cの流量と再熱バイパス管24Bへ流入させる冷水cの流量との比率を調節するバイパス調節弁227が配設されている。バイパス調節弁227は、本実施の形態では三方弁が用いられているが、二方弁を2つ用いることで代用してもよい。冷房システム2の、上記以外の構成は、冷房システム1(図1参照)と同様である。
【0036】
上述のように構成された冷房システム2では、室内Rの湿度を設定値にすることができる絶対湿度(所定の湿度)に調節された低湿空気DAが、再熱ヒータ212において室内Rに供給するのに適した温度に加熱されてサプライ空気SAとなり、給気ダクト31及び床下チャンバCfを介して制気口Fsから室内Rに供給される。再熱ヒータ212において低湿空気DAに熱を与えた冷水cは温度が低下し、温度が低下した冷水cは放射パネル11に導入されて放射パネル11のパネル表面を冷却して自身は温度が上昇し、再び再熱ヒータ212に導入されて低湿空気DAを加熱するように循環する。冷房システム2は、放射パネル11で吸収した熱を再熱装置(再熱ヒータ212)における低湿空気DAの再熱源として利用する点で冷房システム1(図1参照)と共通するが、以下のような制御が行われる。
【0037】
空調制御装置92は、再熱ヒータ212に流れる冷水cの流量を、給気温度検出器63の検出温度が低下すれば増加させ、検出温度が上昇すれば減少させるように、バイパス調節弁227を制御する。そして、空調制御装置92は、冷水温度検出器62の検出温度が目標温度となるように、流量比調節弁25を制御する。流量比調節弁25の制御によって、循環バイパス管24からの冷水cだけでなく、熱源機41から導出されて供給往管53を流れる冷水cも、循環往管21に流入することとなる。冷房システム2では、熱源機41からの冷水cが再熱ヒータ212から導出された冷水cに合流するので、放射パネル11に導入される冷水cの温度を調節しやすくなる。また、冷房システム2においても、冷房システム1(図1参照)と同様、外側温度検出器61Pの検出温度に応じて外側二方弁26Pの開度を調節し、内側温度検出器61Qの検出温度に応じて内側二方弁26Qの開度を調節して、放射パネル11の表面温度を適切な値にして、室内Rを快適な熱環境にしている。
【0038】
上述で説明したように、冷房システム2は、バイパス調節弁227及び流量比調節弁25を適切に制御することにより、放射パネル11で吸収した熱を再熱ヒータ212における低湿空気DAの再熱源として利用して熱回収を図ることができ、冷熱負荷の処理を放射パネル11に最大限にもたせることができる。また、冬季などに外気OAの絶対湿度が既に所定の湿度以下の場合は、外調機18の運転を停止させつつ外気OAの冷熱を最大限に利用することができる。
【0039】
以上の説明では、冷房システム1、2で冷房が行われる場合を説明したが、放射パネルに温水を供給することにより暖房の用途に用いることができる。しかしながら、放射パネル11で吸収した熱を再熱装置(空調機12又は再熱ヒータ212)における低湿空気DAの再熱源として利用可能なのは冷房時である。
【0040】
以上の説明では、外調機18によって外気OAを所定の湿度まで冷却することで除湿することとしたが、外気OAを冷却除湿する必要がない場合は、外調機18を省略することができる。
【0041】
以上で説明した冷房システム1、2では、温度及び湿度が調節されたサプライ空気SAの供給と、放射パネル11による放射冷房とを併用しているため、放射冷房を併用しない場合に比べて室内Rに供給する空気量が少なくて済むので搬送動力を低減でき、また、放射パネル11に供給する冷水cの温度は放射冷房を併用しない場合に比べて高くて足りるので熱源機41のCOPが向上して省エネルギーとなる。
【符号の説明】
【0042】
1、2 冷房システム
11 放射パネル
12 空調機
21 循環往管
22 循環還管
24 循環バイパス管
25 流量比調節弁
31 給気ダクト
41 熱源機
53 供給往管
54 戻り還管
62 冷水温度検出器
92 空調制御装置
212 再熱ヒータ
c 冷水
SA サプライ空気
B 物体
R 室内

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷房対象室の内部に存在する物体の熱を吸熱する放射パネルであって、熱媒体を導入して前記熱媒体が保有する冷熱により前記物体の温度よりも低い温度に冷却される放射パネルと;
絶対湿度が所定の湿度以下の被加熱空気の温度を上昇させる再熱装置であって、前記熱媒体を導入して前記熱媒体が保有する熱により前記被加熱空気の温度を上昇させる再熱装置と;
前記再熱装置で昇温された前記被加熱空気を前記冷房対象室に導く被加熱空気ダクトと;
前記熱媒体が流れる熱媒体流路であって、前記放射パネルから導出された前記熱媒体が前記再熱装置に導入され、前記再熱装置から導出された前記熱媒体が前記放射パネルに導入されるように、前記熱媒体が循環する流路を形成する熱媒体流路とを備える;
冷房システム。
【請求項2】
前記熱媒体及び外部エネルギーを導入し、導入した前記外部エネルギーにより前記熱媒体を冷却する冷熱源装置と;
前記冷熱源装置で冷却された前記熱媒体を前記熱媒体流路に導く冷却熱媒体供給流路と;
前記放射パネルから導出された前記熱媒体を前記冷熱源装置に導く熱媒体戻り流路とを備える;
請求項1に記載の冷房システム。
【請求項3】
前記冷却熱媒体供給流路から前記熱媒体流路に導入される前記熱媒体の流量を調節する流量比調節手段と;
前記放射パネルに導入される前記熱媒体の温度を検出する温度検出器と;
前記温度検出器で検出された温度が所定の温度となるように流量比調節手段を制御する制御装置とを備える;
請求項2に記載の冷房システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−7788(P2012−7788A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143112(P2010−143112)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000175803)三建設備工業株式会社 (38)