説明

冷暖房システム

【課題】消費エネルギーを抑制しつつペリメータゾーンの温熱環境を改善する冷暖房システムを提供すること。
【解決手段】冷暖房システム1は、ペリメータゾーンZpの天井Cpの温度を周囲の空気の温度とは異なる温度に変える天井変温装置11と、窓ガラスWGを覆うように窓ガラスWGとの間に隙間Sをあけて開閉自在に設けられて日射を遮る遮蔽部材21とを備える。遮蔽部材21は、高さ方向が所定の距離Lhの開口が形成されるように取り付けられている。而して、冷房時は窓ガラスWGと遮蔽部材21との間で温められて上昇した空気が天井Cpで冷やされて遮蔽部材21の周りを上下方向に自然循環する循環気流となって遮蔽部材21の温度上昇を抑制して冷房効果を向上させる。暖房時は外気に冷やされた窓ガラスWG面に生じる下降気流が天井Cpで温められた後に下降気流となるために下降気流の温度低下が抑制されてコールドドラフトが低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷暖房システムに関し、特に放射冷暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーと快適性とを両立する冷暖房方式として、放射冷暖房システムが注目されている。放射冷暖房システムは、天井面等に設置された放射パネルを冷やし(温め)、放射パネルからの放射熱により冷暖房対象室の冷暖房を行うシステムである。他方、建物の熱負荷は、一般に、内部ゾーン(インテリアゾーン)よりも外壁部ゾーン(ペリメータゾーン)の方が大きい。このような特性を考慮した放射冷暖房システムとして、インテリアゾーンに対しては内部に通水用のパイプを有する輻射パネルを天井に多数配置してパイプ内部に通水された水の熱交換により放射冷却(加熱)し、ペリメータゾーンに対しては送風機を用いた強制対流方式の空調機で冷暖房を行うものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−121280号公報(段落0007、図3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ペリメータゾーンを強制対流方式で冷暖房すると、適切な建物の熱負荷処理ができる反面、強制対流させるための搬送動力が必要となる。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑み、消費エネルギーを抑制しつつペリメータゾーンの温熱環境を改善する冷暖房システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る冷暖房システムは、例えば図1に示すように、屋外EXと隣接する側壁SWに窓ガラスWGを有する冷暖房対象室RのペリメータゾーンZpの天井Cpの温度を周囲の空気の温度とは異なる温度に変える天井変温装置11と;冷暖房対象室R内で窓ガラスWGを覆うように窓ガラスWGとの間に隙間Sをあけて、天井変温装置11によって温度が変化させられるペリメータゾーンZpの天井Cppの鉛直下方に設けられ、窓ガラスWGを透過して冷暖房対象室R内に入る日射を遮る開閉自在の遮蔽部材21とを備え;遮蔽部材21が、ペリメータゾーンZpの天井Cppの直近下方に高さ方向が所定の距離Lhの開口が形成されてペリメータゾーンZpの天井Cppに取り付けられている。ここで、ペリメータゾーンの天井の直近下方とは、天井変温装置によって温度が変化させられるペリメータゾーンの天井と熱交換が可能な程度に近い位置である。
【0007】
このように構成すると、遮蔽部材がペリメータゾーンの天井の直近下方に高さ方向が所定の距離の開口が形成されてペリメータゾーンの天井に取り付けられているので、遮蔽部材を越えて空気の流通が可能となり、冷房時は窓ガラスと遮蔽部材との間で温められて上昇した空気がペリメータゾーンの天井で冷やされて室内側で遮蔽部材に沿った下降流となって遮蔽部材の周りを上下方向に自然循環する循環気流となり、遮蔽部材の温度上昇を抑制して冷房効果を向上させることができ、暖房時は外気に冷やされた窓ガラス面に生じる下降気流がこの下降気流となる前にペリメータゾーンの天井で温められているため、下降気流の温度低下が抑制されてコールドドラフトを低減することができる。
【0008】
また、本発明の第2の態様に係る冷暖房システムは、例えば図1及び図2に示すように、上記本発明の第1の態様に係る冷暖房システムにおいて、ペリメータゾーンの天井Cpが、窓ガラスWG側の一部である屋外側天井Cppが遮蔽部材21の一部を収容可能に上方に窪み、窓ガラスWG側とは反対側の残部である屋内側天井Cpcが冷暖房対象室RのインテリアゾーンZcの天井Ccと面一に形成され;屋外側天井Cpp及び屋内側天井Cpcの双方が、天井変温装置11により温度が変化させられるように構成されている。
【0009】
このように構成すると、遮蔽部材が開いているときでも屋内側天井で空気の温度が変化させられるため、遮蔽部材の温度上昇抑制効果及びコールドドラフト低減効果を維持することができる。
【0010】
また、本発明の第3の態様に係る冷暖房システムは、例えば図1に示すように、上記本発明の第1の態様又は第2の態様に係る冷暖房システムにおいて、所定の距離Lhに相当する長さのスペーサ25であって、天井変温装置11によって温度が変化させられるペリメータゾーンZpの天井Cppと遮蔽部材21とを接続するスペーサ25を備える。
【0011】
このように構成すると、ペリメータゾーンの天井と遮蔽部材との間に高さ方向が所定の距離の開口を確実に形成することができる。なお、スペーサが鉄又は鉄よりも熱伝導率が大きい物質で形成されている場合は、ペリメータゾーンの天井の熱(冷熱を含む)を遮蔽部材に伝達することができ、遮蔽部材の温度上昇抑制効果及びコールドドラフト低減効果を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の第4の態様に係る冷暖房システムは、例えば図1に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つの態様に係る冷暖房システムにおいて、冷暖房対象室Rのインテリアゾーンの天井Ccに設けられた放射パネル16であって、熱媒体CHにより温度が変化させられる放射パネル16を備え;天井変温装置11が、放射パネル16と熱交換した後の熱媒体CHによりペリメータゾーンの天井Cpの温度を変化させるように構成されている。
【0013】
このように構成すると、熱媒体が保有する熱をインテリアゾーンの建物熱負荷処理に利用した後により建物熱負荷が大きいペリメータゾーンの建物熱負荷処理に利用することとなり、熱媒体が保有する熱量のうち冷暖房に利用可能な熱量を増大させることができる。なお、本明細書において「建物熱負荷」とは、冷暖房対象室内部に存在する発熱要因(例えば、人体、照明器具、その他電気機器等)に基づく熱負荷を除外した、外気との温度差や日射等による建物の構造に起因する熱負荷を意味する語として用いることとする。
【0014】
また、本発明の第5の態様に係る遮蔽部材収容ボックスは、例えば図4(a)に示すように、上記本発明の第2の態様に係る冷暖房システムに用いられるもの50であって;一面が開口51hした六面体形状のボックス51であって、遮蔽部材21の少なくとも一部を収容し、屋外側天井Cppを構成するボックス51と;ボックス51が開口51hを下に向けて冷暖房対象室のペリメータゾーンに取り付けられたときに開口51hに対向する底面51b及び開口51hと底面51bとの間のインテリアゾーン側の側面51sに取り付けられ、屋外側天井Cppの温度を周囲の空気の温度とは異なる温度に変える放射パネル12、13とを備える。
【0015】
このように構成すると、施工性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、遮蔽部材がペリメータゾーンの天井の直近下方に高さ方向が所定の距離の開口が形成されてペリメータゾーンの天井に取り付けられているので、遮蔽部材を越えて空気の流通が可能となり、冷房時は窓ガラスと遮蔽部材との間で温められて上昇した空気がペリメータゾーンの天井で冷やされて室内側で遮蔽部材に沿った下降流となって遮蔽部材の周りを上下方向に自然循環する循環気流となり、遮蔽部材の温度上昇を抑制して冷房効果を向上させることができ、暖房時は外気に冷やされた窓ガラス面に生じる下降気流がこの下降気流となる前にペリメータゾーンの天井で温められているため、下降気流の温度低下が抑制されてコールドドラフトを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る冷暖房システムを説明する図である。(a)はペリメータゾーンまわりの側面断面図、(b)はペリメータゾーンの窓ガラスまわりの正面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る冷暖房システムの、遮蔽部材を開けている状態のペリメータゾーンまわりを示す側面断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る冷暖房システムの変形例を示すペリメータゾーンの窓ガラスまわりの正面図である。
【図4】ペリメータ放射パネルの設置態様の変形例を示す図である。(a)は屋外側天井まわりの部分側面断面図、(b)は本変形例に用いられる放射パネルの斜視図、(c)は本変形例に用いられる別の形態の放射パネルの部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0019】
まず図1を参照して、本発明の実施の形態に係る冷暖房システム1を説明する。図1は、冷暖房システム1を説明する図であり、(a)はペリメータゾーンZpまわりの側面断面図、(b)はペリメータゾーンZpの窓ガラスWGまわりの正面図である。冷暖房システム1は、冷房又は暖房が行われる対象となる冷暖房対象室としての冷暖房室Rに設置されるシステムであり、天井変温装置としてのペリメータ放射パネル11と、遮蔽部材としてのブラインド21と、ブラインド21と天井Cpとの間を所定の距離Lhに保つスペーサ25とを備えている。
【0020】
冷暖房室Rは、側壁SWによって屋外EXと仕切られている。側壁SWは、建物の外壁を構成し、窓ガラスWGが設けられている。窓ガラスWGが設けられていることにより、冷暖房室R内に日射を取り入れることができるようになっている。冷暖房室Rは、概念上、ペリメータゾーンZpとインテリアゾーンZcとに区別することができる。ペリメータゾーンZpは、側壁SWに隣接した区域であり、日射の影響を受けやすく、建物熱負荷が比較的大きい区域である。インテリアゾーンZcは、側壁SWとの間にペリメータゾーンZpを挟んで側壁SWから離れた冷暖房室R内部の区域であり、建物熱負荷が比較的小さい区域である。
【0021】
冷暖房室Rには天井Cが設けられており、説明の便宜上、インテリアゾーンZcの天井Cをインテリア天井Ccといい、ペリメータゾーンZpの天井Cをペリメータ天井Cpということとする。ペリメータ天井Cpは、側壁SWに沿って上方に窪んだ屋外側天井Cppと、屋外側天井Cppよりも下がっている屋内側天井Cpcとを含んでいる。屋外側天井Cppは、少なくとも窓ガラスWGの幅にわたって上方に窪んでいると、ブラインド21を収容可能なブラインドボックス(遮蔽部材ボックス)として機能することとなり好適である。屋内側天井Cpcは、インテリア天井Ccと面一に設けられている。
【0022】
ペリメータ放射パネル11は、熱が伝わる範囲のペリメータ天井Cpの温度を周囲の空気の温度とは異なる温度に変えることができる放射パネルであり、屋外側天井Cppの水平面に設けられている上水平放射パネル12と、屋外側天井Cppの垂直面に設けられている垂直放射パネル13と、屋内側天井Cpcに設けられている下水平放射パネル14とを含んでいる。上水平放射パネル12、垂直放射パネル13、下水平放射パネル14は、設置場所に応じた区別を容易にするために呼称するものであり、それぞれ機能・構造は同じである。そのため、これらを個別に説明するときはそれぞれを区別して呼称し、共通の事項について言及するときは「ペリメータ放射パネル11」と総称する。
【0023】
ペリメータ放射パネル11は、板状に形成されたパネルの一方の面に、熱媒体としての冷温水CH(冷房時は冷水となり、暖房時は温水となる)を流すパイプが配置されて構成されている。パネルは、典型的には矩形(長方形又は正方形)の平面形状を有するが、三角形や六角形等の多角形の平面形状を有していてもよい。パイプは、冷温水CHが保有する冷熱又は温熱をパネル全体に伝達することができるように、蛇行させて接触配置することにより伝熱面積を大きくすることが好ましい。ペリメータ放射パネル11は、それ自体がペリメータ天井Cpを構成してもよく、ペリメータ天井Cpを形成する天井仕上材とは別体に構成されて該天井仕上材に対して冷熱又は温熱を伝達することができるように取り付けられていてもよい。
【0024】
ブラインド21は、典型的には、金属又はプラスチック製のルーバー(スラット)の複数が糸(紐)で繋がれて構成されたベネシャンブラインドである。ブラインド21は、窓ガラスWGの面積以上の面積を有しており、窓ガラスWGを覆うことができるようになっている。ブラインド21は、一体に形成されていてもよく、複数に分割されていてもよい。ブラインド21が複数に分割される場合は、典型的には、縦長のものが水平方向に並べられて設置される。ブラインド21は、ルーバーの角度を調節することにより採光量や屋外EXの景色の見える方向を変えることができると共に、ルーバーを巻き上げることで窓ガラスWGを露出することができるように構成されている。本実施の形態では、ルーバーを巻き上げて窓ガラスWGが露出している状態をブラインド21が「開」の状態であることとし、ルーバーの角度を変えただけで巻き上げられていない状態はブラインド21が「閉」の状態であることとする。
【0025】
ブラインド21は、スペーサ25を介して、屋外側天井Cppの水平面に取り付けられている。ブラインド21は、窓ガラスWGとの間に隙間Sが形成される位置に取り付けられている。ここで、隙間Sは、窓ガラスWGとブラインド21との間の空気が温度上昇により上方に向かう流れとなったときにその上昇気流を妨げない距離以上で、冷暖房室Rの有効面積を大きくする観点からできるだけ小さい方がよく、例えば10mm〜70mm、好ましくは30mmであり、これら以外の寸法でもよい。ブラインド21は、屋外側天井Cppの水平面に対して、奥行き方向(窓ガラスWGから冷暖房室R内側に離れる方向)の中央に取り付けられていることが好ましい。換言すれば、屋外側天井Cppの水平面の奥行きが、隙間Sの距離の2倍とブラインド21の厚さとを加えた寸法に形成されていることが好ましい。このようにすると、窓ガラスWGとブラインド21との間を上昇してきた空気がブラインド21の上端を越えて冷暖房室R内側に入ったときに、その空気を屋外側天井Cppの垂直面にあてて下向きの流れとすることができる。
【0026】
スペーサ25は、屋外側天井Cppの水平面とブラインド21の上端とが所定の距離Lhを維持できるように介在させる部材である。ここで、所定の距離Lhは、屋外側天井Cppの水平面とブラインド21の上端との間の空気の流通を妨げない距離である。さらに、所定の距離Lhは、屋外側天井Cppの水平面とブラインド21の上端との間を流通する空気が、上水平放射パネル12(屋外側天井Cppの水平面)と熱交換ができる距離であることが好ましい。なお、屋外側天井Cppの垂直放射パネル13の垂直方向の長さが大きいほど、自然循環による熱交換量が大きくなる。このような条件を考慮して、スペーサ25は、10mm〜300mmの範囲の任意の長さに形成されており、特に75mm〜150mmの範囲あるいは150mm〜300mmの範囲の任意の長さに形成されているとよい。また、スペーサ25は、鉄、又は鉄よりも熱伝導率が大きい物質である例えばアルミニウム、銅、亜鉛、ニッケルで形成されていると、上水平放射パネル12の冷熱又は温熱をブラインド21に伝達させやすくなるので好適である。スペーサ25は、ボルト等の締結部材自体でもよく、ボルト等が挿通される筒状の部材であってもよい。スペーサ25はブラインド21の上端の支持枠(レール)に空気の流通を確保する適宜の間隔をあけて複数が設けられており、換言すれば、複数のスペーサ25でブラインド21が屋外側天井Cppの水平面に取り付けられている。
【0027】
冷暖房室Rは、さらに、インテリア天井Ccに、放射パネル(以下、ペリメータ放射パネル11と区別するために「インテリア放射パネル16」という。)が設けられている。インテリア放射パネル16は、ペリメータ放射パネル11と同様に板状のパネルと冷温水CHを流すパイプとを有し、ペリメータ放射パネル11と同様の機能・構造を有している。インテリア放射パネル16は、ペリメータ放射パネル11と同様、それ自体がインテリア天井Ccを構成してもよく、インテリア天井Ccを形成する天井仕上材とは別体に構成されて該天井仕上材に対して冷熱又は温熱を伝達することができるように取り付けられていてもよい。
【0028】
上水平放射パネル12、垂直放射パネル13、下水平放射パネル14、インテリア放射パネル16は、それぞれのパイプが連通するように冷温水管18で接続されている。冷温水管18は、冷温水CHが、最初にインテリア放射パネル16のパイプに流入し、その後下水平放射パネル14のパイプ、垂直放射パネル13のパイプ、上水平放射パネル12のパイプの順に流れる流路を形成する態様で配設されている。冷温水CHは、典型的には、冷温水発生機等の熱源機器(不図示)との間を循環し、冷暖房室R内の温度(周囲環境温度)との差が比較的大きい温度の冷温水CHがインテリア放射パネル16のパイプに導入され、冷暖房室R内の温度との差が比較的小さい温度の冷温水CHが上水平放射パネル12のパイプから導出されるように構成されている。なお、図面における冷温水管18は、主として接続関係を説明する態様で示されており、実際には天井チャンバ中間に配設されるよりも天井Cに沿って配設される。
【0029】
引き続き図1を参照して、冷暖房システム1の作用を説明する。まず、冷暖房システム1の冷房時の作用を説明する。冷房時は、冷暖房室R内への日射を遮断して冷房効率を向上させる観点から、ブラインド21が閉になっている。そして、冷暖房室Rの冷房を行うべく、熱源機器(不図示)で冷却された冷温水CHがインテリア放射パネル16のパイプに導入される。インテリア放射パネル16に導入された冷温水CHは、インテリア放射パネル16を冷却することでインテリア放射パネル16に接する部分のインテリア天井Ccをも冷却して、自身は温度が上昇する(例えば20℃から22℃に上昇)。冷温水CHが保有する冷熱によって冷却された部分のインテリア天井Ccは、冷暖房室R内の物体(人を含む)に冷熱を放射し(厳密に言えば冷暖房室R内の物体から吸熱する)、冷暖房室R内のインテリアゾーンZcを冷却する。
【0030】
インテリア放射パネル16から導出された冷温水CHは、下水平放射パネル14に導入され、その後垂直放射パネル13を経由して上水平放射パネル12を通過後に上水平放射パネル12から導出される。下水平放射パネル14、垂直放射パネル13、上水平放射パネル12をそれぞれ流れた冷温水CHは、ペリメータ放射パネル11に接する部分の屋内側天井Cpc及び屋外側天井Cpp(垂直面及び水平面共)をそれぞれ冷却して自身は温度が上昇する(例えば22℃から24℃に上昇)。冷温水CHが保有する冷熱によって冷却された部分の屋内側天井Cpc及び屋外側天井Cppは、隣接する空気を冷却する。また、冷却された部分の屋内側天井Cpc及び屋外側天井Cppは、冷熱の放射によりブラインド21の冷却にも寄与する。一般に、ペリメータゾーンZpはインテリアゾーンZcよりも建物熱負荷が大きいため、ペリメータ天井Cpを冷却するために、インテリア放射パネル16を冷却した後の冷温水CHを利用することができる。
【0031】
ペリメータ放射パネル11に接する部分のペリメータ天井Cpが冷却されることに伴い隣接する空気が冷却される一方で、窓ガラスWGとブラインド21とに挟まれた隙間Sの空間にある空気は、日射により温度が上昇する(例えば40℃以上となる)。隙間Sの空間にある温められた空気は、密度の低下により屋外側天井Cppの水平面に向かって上昇する。上昇した空気は、屋外側天井Cppの水平面とブラインド21の上端との間を通り、ブラインド21を越えて冷暖房室R内側に移動する。このとき、屋外側天井Cppに接した空気は、冷却され、密度が増大して、冷暖房室R内側をブラインド21に沿って下降する。このような空気の移動が連続して行われることにより、ブラインド21に沿って窓ガラスWG側を上昇し冷暖房室R内側を下降するように空気が密度差によって自然循環し、空気の循環流が形成される。この循環流により、ブラインド21の冷暖房室R内側が冷却され、ブラインド21の温度上昇が抑制されて、冷房効果がさらに向上することとなる。さらに、この循環流は、空気の密度差による自然循環であるため、循環流を発生させるための追加の動力が不要となる。このように、冷暖房システム1によれば、消費エネルギーを抑制しつつペリメータゾーンZpの温熱環境を改善することが可能になる。
【0032】
次に図2を参照して、冷暖房システム1の暖房時の作用を説明する。暖房時は、冷暖房室R内へ日射を取り入れて日射熱を暖房に寄与させる観点から、ブラインド21が開になっている。そして、冷暖房室Rの暖房を行うべく、熱源機器(不図示)で加熱された冷温水CHがインテリア放射パネル16のパイプに導入される。インテリア放射パネル16に導入された冷温水CHは、インテリア放射パネル16を加熱することでインテリア放射パネル16に接する部分のインテリア天井Ccをも加熱して、自身は温度が低下する(例えば30℃から28℃に低下)。冷温水CHが保有する温熱によって加熱された部分のインテリア天井Ccは、冷暖房室R内の物体(人を含む)に温熱を放射し、冷暖房室R内のインテリアゾーンZcを暖房する。
【0033】
インテリア放射パネル16から導出された冷温水CHは、下水平放射パネル14に導入され、その後垂直放射パネル13を経由して上水平放射パネル12を通過後に上水平放射パネル12から導出される。下水平放射パネル14、垂直放射パネル13、上水平放射パネル12をそれぞれ流れた冷温水CHは、ペリメータ放射パネル11に接する部分のペリメータ天井Cpを加熱して自身は温度が低下する(例えば28℃から26℃に低下)。冷温水CHが保有する温熱によって加熱された部分のペリメータ天井Cpは、隣接する空気を加熱する。一般に、ペリメータゾーンZpはインテリアゾーンZcよりも建物熱負荷が大きい(より外気の影響を受けやすい)ため、ペリメータ天井Cpを加熱するために、インテリア放射パネル16を加熱した後の冷温水CHを利用することができる。
【0034】
暖房を行うような温熱環境下では、窓ガラスWGに隣接する空気が、窓ガラスWG以外の壁に隣接する空気よりも冷やされ、密度がより大きくなる。密度が大きくなった窓ガラスWG添いの空気は、下降して、床を這うように流動する。そして、窓ガラスWG添いの空気が下降することに伴い、天井付近の空気が窓ガラスWGの方向に移動して行く。このとき、天井付近の空気は、ペリメータ放射パネル11によって加熱された部分のペリメータ天井Cpにより温められている。このため、天井から降りてきた空気が窓ガラスWGの横を通過して冷やされても、床に到達したときの空気の温度の低下が抑制され、冷暖房室Rにおけるコールドドラフトが抑制される。
【0035】
なお、暖房時においても、例えば夜間に代表されるように、ブラインド21を閉(図1参照)にする場合がある。このような場合でも、冷暖房システム1では、屋外側天井Cppの水平面とブラインド21の上端との間に、スペーサ25の長さに相当する空気が流通する空間が形成されているので、窓ガラスWGとブラインド21とに挟まれた隙間Sの空間にある空気が冷やされて下降したことに伴って、ペリメータ天井Cpで温められた空気がブラインド21を越えて隙間Sに流入し、コールドドラフトを抑制することができる。
【0036】
以上の説明では、天井変温装置が放射パネル(ペリメータ放射パネル11)であるとしたが、放射パネル以外の、例えば、ペルチェ効果を利用して熱の吸収・放出を行う機器のような電気エネルギーで作動する装置を用いてもよい。また、ペリメータ放射パネル11に導入される熱媒体が水(冷温水CH)であるとしたが、水以外の流体(例えばブライン等)であってもよい。熱媒体は、典型的には流体であり、パイプ内を流動可能である。
【0037】
以上の説明では、遮蔽部材がブラインドであるとしたが、カーテン等の、ブラインド以外の日射を遮ることができる部材であってもよい。この場合も、窓ガラスWGの近傍に遮蔽部材が存在せず冷暖房室Rから見て窓ガラスWGが現れている状態(カーテンの場合は寄せて束ねられている状態)が遮蔽部材が開いている状態であり、冷暖房室Rから見て窓ガラスWGとの間に遮蔽部材が存在している状態(カーテンの場合は引かれている状態)が遮蔽部材が閉じている状態である。
【0038】
以上の説明では、ペリメータ天井Cpがブラインド21を収容可能な程度に上方に窪んだ屋外側天井Cppを含んでいるとしたが、ペリメータ天井Cp全体がインテリア天井Ccと面一に構成されていてもよい。また、ペリメータ放射パネル11が、上水平放射パネル12、垂直放射パネル13、下水平放射パネル14を含んでいることとしたが、冷暖房室Rの条件(例えば窓ガラスWGの方角等)によっては、垂直放射パネル13及び/又は下水平放射パネル14を省略してもよい。
【0039】
以上の説明では、ブラインド21がスペーサ25を介してペリメータ天井Cpに取り付けられているとしたが、図3に示すようにブラインド21Aを屋外側天井Cpp(ペリメータ天井Cp)に直に取り付けつつ高さ方向が所定の距離Lhの開口をブラインド21内に形成することとしてもよい。図3に示す変形例に係る冷暖房システム1Aでは、ブラインド21Aの上部のルーバー(スラット)が所定の距離Lhに相当する枚数分だけ取り除かれている。ルーバーが取り除かれた部分は、残りのルーバーを繋ぐ糸(紐)が現れる以外は開口となっている。そして、ブラインド21Aの上端の角柱状の支持枠が取付金具(不図示)を用いて屋外側天井Cppに直に取り付けられている。この、直に取り付けられている状態は、仮にルーバーの取り外しがなければ、自然循環する空気の流通が阻害される態様で取り付けられている状態である。冷暖房システム1Aの上記以外の構成は、冷暖房システム1(図1、図2参照)と同様である。このように構成された冷暖房システム1Aは、屋外側天井Cppに直に取り付けられたブラインド21Aの支持枠の直ぐ下方に、高さ方向が所定の距離Lhの開口が形成されている。そして、例えば冷房時は、隙間Sの空間にある温められた空気が上昇し、屋外側天井Cppの水平面に衝突して向きを変え、冷暖房室R内側に移動する。このとき、ブラインド21Aの支持枠が空気の流通を妨げようとするが、直ぐ下方に所定の距離Lhの開口が形成されているので、暖められた空気は流通が阻害されることなく冷暖房室R内側に移動することができる。なお、空気がブラインド21Aの支持枠を避けるように流れることで屋外側天井Cppの水平面から離れて交換熱量が減少することが生じ得る。この場合でも、屋外側天井Cppの垂直面に垂直放射パネル13が設けられていると、空気が屋外側天井Cppの垂直面に接触することで熱交換を行うことができるので好ましい。冷暖房システム1Aは、ブラインド21Aを開けたときにブラインド21Aと天井面との間に空間がなくなりコンパクトに収納できるという利点がある。
【0040】
また、図4(a)に示すような形態で、ペリメータ放射パネル11が設けられていることとしてもよい。図4は、ペリメータ放射パネル11の設置態様の変形例を示す図であり、(a)は屋外側天井Cppまわりの部分側面断面図、(b)は本変形例に用いられる放射パネルの斜視図、(c)は本変形例に用いられる別の形態の放射パネルの部分側面図である。図4(a)に示す変形例に係る設置態様では、上水平放射パネル12及び垂直放射パネル13が、上方に窪んだ屋外側天井Cppの内側に設置されている。図4(a)に示す変形例では、上方に窪んだ屋外側天井Cppがブラインドボックスとして機能しているので、上水平放射パネル12及び垂直放射パネル13がブラインドボックスの内側に取り付けられていると見ることができる。
【0041】
図4(b)に外観を示すように、図4(a)に示す変形例に用いられるペリメータ放射パネル11B(本変形例で用いられるものを前述のものと区別するために符号「11B」で表す)は、以下のように構成されている。ペリメータ放射パネル11Bは、基本形状が矩形板状のパネル11bと、冷温水CHを流すパイプ11pとを有している。パネル11bは、本変形例では平面視が長方形に形成されており、短辺を2分割して長辺に平行に延びるように、パイプ11pを収容する窪み11bdが形成されている。窪み11bdは、パイプ11pの表面の約半分に接するように、底部がパイプ11pの外周と略一致する断面半円弧状に形成されており、深さはパイプ11pの外径と略等しく形成されている。なお、窪み11bdは、パイプ11pの表面と接する部分が約半分より少なくてもよいが、冷温水CHが保有する熱をパネル11bの広範囲に伝達することができるように構成されているとよい。パネル11bの四隅には、固定用の締結部材(ビス等)を挿通する挿通孔11bhが形成されている。パネル11bは、周辺の空気への伝達熱量を多くする観点からは熱伝導率の高い材料を用いるとよく、施工性を向上させる観点からは軽量な材料を用いるのが好ましいところ、本変形例ではアルミニウムで形成されている。パイプ11pは、冷温水管18(図1(a)参照)に接続され、内部に冷温水CHが流れる構成になっている。典型的には、冷温水管18は天井裏に配設されており、天井仕上材の一部を穿孔してブラインドボックス内に導かれる。冷温水管18を貫通させるために形成された孔は、パネル11bで隠蔽される。また、パイプ11pは、天井仕上材とパネル11bとに挟まれて、冷暖房室R内から見えないようになっている。このように構成されたペリメータ放射パネル11がブラインドボックスの内側に取り付けられると、パイプ11pを流れる冷温水CHの熱がパネル11b全体に広がり、パネル11bから熱放射が行われて、隣接する空気を冷却又は加熱する。
【0042】
また、図4(c)に示す形態のペリメータ放射パネル11C(本変形例で用いられる別の形態のものを前述のものと区別するために符号「11C」で表す)を用いてもよい。ペリメータ放射パネル11Cは、矩形板状のパネル11cと、冷温水CHを流すパイプ11pとを有している。パネル11cは、表面にパイプ11pを把持するサポート11csが一体に取り付けられて構成されている。サポート11csは、パイプ11pの軸直角断面で見て、パイプ11pの外周の概ね3/4程度に接する形状となっている。サポート11csは、パイプ11pを嵌める際には開口が広がるように弾性変形し、パイプ11pが装着されると元に戻ってパイプ11pを把持することとなる。パネル11cも、パネル11b(図4(b)参照)と同様の観点から材質が選定され、典型的にはアルミニウムで形成されている。パイプ11pはペリメータ放射パネル11B(図4(b)参照)で用いられているものと同様の構成であり、内部を流れる冷温水CHの熱がパネル11c全体に広がり、パネル11cから熱放射が行われて、隣接する空気を冷却又は加熱する点もペリメータ放射パネル11B(図4(b)参照)と同様である。ペリメータ放射パネル11Cを用いた場合は、パイプ11pの一部が冷暖房室R内から見える場合もある。
【0043】
本変形例のように、上水平放射パネル12及び垂直放射パネル13がブラインドボックスの内側に取り付けられた構成にすると、隣接する空気の冷却又は加熱を、より効率よく行うことができる。さらに、ブラインドボックスが鋼板で形成された既製品であって、裏面(天井裏に位置する面)に天井下地材への固定用又は補強用のリブ等の突起あるいは分割搬入されたブラインドボックスの接合用のフランジが形成されていて裏面に放射パネルを設置しにくい場合であっても、ブラインドボックスの内側に取り付けられるので、簡便に設置することができる。また、ブラインドボックスが木で造作されている場合であっても、簡便に設置することができると共に、ブラインドボックス内表面を木よりも熱伝導率が大きい材質とすることが可能になる。
【0044】
なお、図4(a)に示す変形例は、ブラインドボックス51の内側にペリメータ放射パネル11B(11C)を取り付けたペリメータ放射パネル付ブラインドボックス50をあらかじめ工場で製造し、これを現場に搬入して取り付けることで、ブラインドボックス51が屋外側天井Cppを構成して、冷暖房システムを構築している。このとき、ブラインドボックス51は、典型的には、基本形状が細長い直方体(六面体の一形態)の一面が開口51hとなった構成となる。また、ペリメータ放射パネル12(11B、11C)はブラインドボックス51の底面51bに取り付けられ、ペリメータ放射パネル13(11B、11C)はブラインドボックス51の側面51sに取り付けられている。ペリメータ放射パネル付ブラインドボックス50は、搬入の便宜上、複数に分割可能(かつ後に組み立てて復元可能)に構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 冷暖房システム
11 ペリメータ放射パネル
16 インテリア放射パネル
21 ブラインド
25 スペーサ
50 ペリメータ放射パネル付ブラインドボックス
51 ブラインドボックス
51b 底面
51h 開口
51s 側面
Cc インテリアゾーンの天井
Cp ペリメータゾーンの天井
Cpp 屋外側天井
Cpc 屋内側天井
CH 冷温水
EX 屋外
SW 側壁
S 隙間
WG 窓ガラス
R 冷暖房室
Zc インテリアゾーン
Zp ペリメータゾーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外と隣接する側壁に窓ガラスを有する冷暖房対象室のペリメータゾーンの天井の温度を周囲の空気の温度とは異なる温度に変える天井変温装置と;
前記冷暖房対象室内で前記窓ガラスを覆うように前記窓ガラスとの間に隙間をあけて、前記天井変温装置によって温度が変化させられる前記ペリメータゾーンの天井の鉛直下方に設けられ、前記窓ガラスを透過して前記冷暖房対象室内に入る日射を遮る開閉自在の遮蔽部材とを備え;
前記遮蔽部材が、前記ペリメータゾーンの天井の直近下方に高さ方向が所定の距離の開口が形成されて前記ペリメータゾーンの天井に取り付けられた;
冷暖房システム。
【請求項2】
前記ペリメータゾーンの天井が、前記窓ガラス側の一部である屋外側天井が前記遮蔽部材の一部を収容可能に上方に窪み、前記窓ガラス側とは反対側の残部である屋内側天井が前記冷暖房対象室のインテリアゾーンの天井と面一に形成され;
前記屋外側天井及び前記屋内側天井の双方が、前記天井変温装置により温度が変化させられるように構成された;
請求項1に記載の冷暖房システム。
【請求項3】
前記所定の距離に相当する長さのスペーサであって、前記天井変温装置によって温度が変化させられる前記ペリメータゾーンの天井と前記遮蔽部材とを接続するスペーサを備える;
請求項1又は請求項2に記載の冷暖房システム。
【請求項4】
前記冷暖房対象室のインテリアゾーンの天井に設けられた放射パネルであって、熱媒体により温度が変化させられる放射パネルを備え;
前記天井変温装置が、前記放射パネルと熱交換した後の前記熱媒体により前記ペリメータゾーンの天井の温度を変化させるように構成された;
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の冷暖房システム。
【請求項5】
請求項2に記載の冷暖房システムに用いられる遮蔽部材収容ボックスであって;
一面が開口した六面体形状のボックスであって、前記遮蔽部材の少なくとも一部を収容し、前記屋外側天井を構成するボックスと;
前記ボックスが前記開口を下に向けて冷暖房対象室のペリメータゾーンに取り付けられたときに前記開口に対向する底面及び前記開口と前記底面との間のインテリアゾーン側の側面に取り付けられ、前記屋外側天井の温度を周囲の空気の温度とは異なる温度に変える放射パネルとを備える;
遮蔽部材収容ボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−94944(P2011−94944A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58371(P2010−58371)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000175803)三建設備工業株式会社 (38)