説明

冷蔵庫

【課題】従来の冷凍冷蔵庫は庫内の悪臭対策として脱臭装置を冷気通路に配置して循環する冷気中の悪臭を取り除くことにより臭気を低減できると考えていたが、食品と食品の間に風の流れはなく、空気より重い悪臭成分は滞留しており、冷蔵庫内の悪臭を冷気循環風路に設置した脱臭装置だけで低減するためには冷気循環量の増加が必要であるが、これにより食品の乾燥が進んでしまうという問題があった。
【解決手段】冷却器で冷却された冷気を冷気循環ファン等の送風手段を用いて冷凍室に強制循環する冷蔵庫において、食品が接する樹脂部品に脱臭加工するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷蔵庫、特に貯蔵している食品から発生する臭気の充満を防止するようにした冷蔵庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
市販の冷凍冷蔵庫は貯蔵している食品から発生する臭気の充満を防止するため冷気通路に脱臭装置を備えている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−50079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の冷凍冷蔵庫は庫内の悪臭対策として脱臭装置を冷気通路に配置して循環する冷気中の悪臭を取り除くことにより臭気を低減できると考えていた。これは、従来の冷凍冷蔵庫がこの循環する冷気で隅々まで貯蔵する食品を冷却できることから冷蔵庫内の空気は隅々まで循環していると考えられていたためである。
【0005】
しかし、冷蔵庫内には多くの食品が貯蔵されている。したがって、冷却風の主な流れは食品の上部の空いた空間を流れ、食品と食品の間等における風の流れは極めて小さい。それでも冷蔵庫内に貯蔵された食品が満遍なく冷却できるのは、温かい空気は冷たい空気より重いため、食品上部の空いた空間を冷却された空気が通ると、冷気は自然に下降し、食品と食品の間の暖気は自然と上昇し、これにより隅々まで冷却されるのである。一方、冷蔵庫の悪臭成分のほとんどは空気より重いため、従来の冷気の循環方式では、暖かい空気は上昇しても、臭気成分は食品と食品の間に留まり続ける。
【0006】
これを解決するためには冷気の循環量を速くし多くの食品があっても隅々まで風が通るようにする必要がある。しかし、これを行うと食品の近傍を通過する冷気により水分が奪われ、食品の乾燥を促進してしまう。たいていの食品はラップをしているが、ラップは水分を透過するため、ラップをしていても乾燥は促進する。
【0007】
また、野菜室のように深い容器を使用した貯蔵室においては容器の外側を冷気が循環することで食品を均一に冷却していた。このため容器内は冷気が循環することがないため、悪臭はこもってしまう。
【0008】
従って、理想的な保存方法としては満遍なく冷える最低の冷気循環量で且つ対流している食品と食品の間の臭気を脱臭できることが必要である。
【0009】
本発明は必要最低限の冷気循環量で食品の乾燥を抑制して且つ冷蔵庫内の悪臭を防止できる冷蔵庫を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するための第一の特徴は、冷却器で冷却された冷気を冷気循環ファン等の送風手段を用いて冷凍室に強制循環する冷蔵庫において、食品が接する樹脂部品に脱臭加工したことにある。
【0011】
さらに好ましくは樹脂部品として少なくとも食品を貯蔵する容器の内側に脱臭加工したことにある。
【0012】
さらに好ましくは脱臭剤は少なくとも亜鉛,銀,シリカを含有するものとしたことにある。
【0013】
さらに好ましくは樹脂部品のうち、外して洗える部品には酸化亜鉛イオンとシラノールイオンを生成する成分を練りこんだことにある。
【0014】
さらに好ましくは樹脂部品のうち、少なくとも透明樹脂部品には1から100μmの脱臭皮膜としたことにある。
【発明の効果】
【0015】
本発明は以上説明した如き構成を有するものであるから、冷凍冷蔵庫内に保存した食品の乾燥を促進することなく悪臭を除去できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明による冷凍室内の湿度保持冷凍冷蔵庫の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
まず図1〜図4をもって本実施例の冷蔵庫について説明する。図1は本実施例の冷蔵庫の扉を外した状態の正面図、図2は冷凍室背面部の要部拡大断面図、図3は図2中の仕切部材纏め品の斜視図であり、図4は図3の仕切部材纏め品の裏側を示す斜視図である。
【0018】
まず図1において、1は冷凍冷蔵庫の本体。この冷凍冷蔵庫本体1は内部に上から冷蔵室2,冷凍室3,野菜室4を有している。そして図には示していないが、上記室の前面開口部には扉を有している。特に冷凍室3,野菜室4の全面開口部を閉塞する扉は引出し式に形成されており、後述する容器を扉とともに引き出す構造に形成されている。
【0019】
冷蔵室2内には、食品が載置される棚2a,冷蔵室の背面を構成する背面パネル2b,食品収納容器などの庫内部品が取り付けられている。また、図1には示されていないが、冷蔵室2の前面開口部を覆う扉体に、主として飲料や調味料などが収納される扉収納容器が取り付けられている。これらの扉収納容器を含む庫内部品には、後述するような脱臭加工が施されている。
【0020】
また、冷凍室3として示した領域は、製氷室3a,急速冷凍室3b、及び冷凍室3cに区画され、これらの各室内は冷凍温度帯の温度に保持されている。製氷室3a内には自動製氷装置及び貯氷容器が備えられており、貯氷容器は引き出し式の扉を引き出すことによって扉と供に引き出される構成となっている。また、急速冷凍室3b及び冷凍室3cもそれぞれ引き出し式の扉によって全面開口部が閉塞されており、庫の扉を引き出すことによって内部の容器が引き出される構成となっている。
【0021】
特に冷凍室3cは、図に示したように上下3個の容器が収納され、下段からそれぞれ下段冷凍室容器5,中段冷凍室容器6,上段冷凍室容器7が配設されている。図には示していないが、下段冷凍室容器5及び中段冷凍室容器6は、冷凍室扉の引き出し枠に固定され、この冷凍室扉の開閉に連動して冷凍室3c内を出入する。上段冷凍室容器7は冷凍室
3cの側壁を構成する内箱側面に設けられたレールを利用し冷凍室3cに対して引き出し可能な構成としている。さらには、各容器5,6,7は互いに深さ寸法が異なる容器であり、大きさの異なる各種の食品の収納に適したものとしている。
【0022】
次に図2において上記の冷凍室3の背部に形成された冷却器室8にて作られた冷気により冷凍室3内が冷却される点について説明する。
【0023】
8は冷凍室3の背部に形成された冷却器室で、この冷却器室8内には冷凍サイクルを構成する冷却器9と冷却器9で作られた冷気を冷凍室3は勿論、ダンパー11を介して、冷蔵室2,野菜室4に強制循環する為の冷気循環ファン10が設けられている。
【0024】
12は冷凍室3と冷却器室8間を仕切る仕切り部材纏め品である。この仕切り部材纏め品12には図3にも示す如く、各容器部に冷却器9を経由した冷気を送る為の吐出口が図の如く設けられている。すなわち、冷気循環ファン10によって送られる冷気は吐出口を経て、製氷室3a,急速冷凍室3b、及び冷凍室3cへとそれぞれ送られ、特に、上下3段の冷凍室容器を備えた冷凍室3cにあっては、冷凍室容器それぞれに冷気を供給するように吐出口が配置されている。
【0025】
また、この仕切り部材纏め品12の裏側は、冷気循環ファン10,ダンパー11等が予め部組され、冷蔵庫本体の前側から冷却器9を覆うように冷凍室3の背部へと取り付けられる構成としている。
【0026】
これらの容器は図2に示すとおり背面の冷気吐出口より容器の上部から冷気が入る構造となっているため、容器内に詰め込まれた食品の隙間に生ずる風の流れは極めて小さいものとなっている。
【0027】
本実施例では、上述した庫内部品や容器そのものに脱臭加工処理を施し、脱臭作用を持たせている。冷蔵室2に送られる冷気は、冷凍室3へ送られる冷気と比較して冷気の量が少なく、全体的に風の流れが穏やかである。しかし、庫内部品や容器に脱臭加工処理を施しているため、冷蔵室2内の脱臭作用が期待できる。容器にあっては、少なくとも食品を貯蔵する内側に脱臭加工を施すことが効果的である。
【0028】
また、食品が積み重ねて収納される冷凍室3や野菜室4の収納容器においても、収納容器内の食品間には冷気の流れが生じにくくなっているが、容器に脱臭加工処理を施しているため、冷凍室3,野菜室4内の脱臭作用が期待できる。
【0029】
脱臭剤は少なくとも亜鉛,銀,シリカを含有するものとし、外して洗浄可能な樹脂部品には酸化亜鉛イオンとシラノールイオンを生成する成分を練りこんでいる。また、少なくとも透明樹脂部品には平均粒径が1から100ナノメートルの酸化チタン粒子を被覆している。
【0030】
以下に本発明の容器に使用した脱臭剤の消臭結果を示す。
【0031】
図5はポリプロピレン樹脂に酸化亜鉛イオンとシラノールイオンを生成する脱臭剤を添加し、成型した容器に蓋を取り付け、密閉とし、悪臭であるメチルメルカプタンを充填して容器内のメチルメルカプタン濃度の減衰を測定した結果を示す。13は脱臭剤無添加の容器、14は脱臭剤添加の容器、15は洗浄後の脱臭剤無添加の容器、16は洗浄後の脱臭剤添加の容器を示す。
【0032】
測定の結果から、脱臭剤添加容器14内の臭気濃度は低減しており、樹脂への練り込みにより脱臭効果のあることが判る。また、脱臭試験後容器を洗浄して脱臭能力の回復を測定した結果、洗浄後の脱臭剤添加容器16内の臭気濃度は低減しており、洗浄により脱臭能力が回復していることがわかる。
【0033】
また、脱臭剤無添加の容器は、洗浄しても直ちにメチルメルカプタン濃度が減衰せず、脱臭剤添加の効果が高いことがわかる。
【0034】
図6に透明なポリスチレン樹脂で成型した容器に平均粒径が1から100ナノメートルの酸化チタン粒子を被覆した容器から10cm角の試験片を切り出し、3Lのテドラバックに入れ、密閉とし、悪臭であるメチルメルカプタンを充填して24時間放置後バック内のメチルメルカプタン濃度の減衰と光触媒反応により生成するジメチルジサルファイドの濃度を測定した結果を示す。17はテドラバッグ内のメチルメルカプタン残存率、18はメチルメルカプタンを光触媒反応により分解したときに生成するジメチルジサルファイドの理論値に対する生成率を示す。
【0035】
試験の結果、初期に対して24時間後ではメチルメルカプタンの残存率が低いことから脱臭されていることがわかる。これは脱臭皮膜に吸着し、さらに光触媒反応により分解するためである。そして、光を当てない状態でも分解生成物であるジメチルジサルファイドが生成していることから光がなくても光触媒反応を発揮できることがわかる。また、温度を上げるとメチルメルカプタンの残存率が下がり、ジメチルジサルファイドの生成率が上がることがわかる。これは光触媒反による分解量が増加するためその分吸着量が増加するためである。従って、加熱によりさらに光触媒反応が進むことが判る。従って、冷蔵庫部品を洗浄の際お湯を使用しての洗浄することは脱臭皮膜に吸着していた悪臭成分が分解され、脱臭能力の回復にさらに効果的である。
【0036】
上記の実施例によれば、次の如き効果を有する。即ち、冷却器で冷却された冷気を冷気循環ファン等の送風手段を用いて冷凍室に強制循環する冷蔵庫において、食品が接する樹脂部品に脱臭加工したことにより、食品と食品の間に溜まっている臭気を脱臭でき、冷蔵庫内に食品を貯蔵しようと空けた際の異臭を感じなくなるものである。また、冷気循環量を増加させて食品と食品の間に臭気がたまらないようにする必要がないため、食品の乾燥を促進することなくニオイのない冷蔵庫内空間を保つことが出来る。
【0037】
また、外して洗浄可能な樹脂部品には酸化亜鉛イオンとシラノールイオンを生成する成分を練りこんだことにより、水洗いで再生するため脱臭能力が持続する。透明樹脂部品には平均粒径が1から100ナノメートルの酸化チタン粒子を被覆したことにより、透明度を損ねることなく脱臭機能を付加でき、光触媒反応で脱臭能力も持続する。
【0038】
特に冷気循環量が比較的少ない冷蔵室や野菜室、あるいは、深い収納容器が取り付けられる冷凍室や野菜室などで臭気成分が溜まり易い傾向にあるため、庫内部品や容器に脱臭処理を施せば、効果的に脱臭を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施例の冷蔵庫の扉を外した状態の正面図である。
【図2】冷凍室背面部の要部拡大断面図である。
【図3】仕切部材纏め品の斜視図である。
【図4】仕切部材纏め品の裏側を示す斜視図である。
【図5】ポリプロピレン樹脂に脱臭剤を添加しメチルメルカプタン濃度の減衰を測定した結果を示す図である。
【図6】透明なポリスチレン樹脂に酸化チタン粒子を被覆した容器のメチルメルカプタン濃度の減衰と光触媒反応により生成するジメチルジサルファイドの濃度を測定した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1…冷蔵庫本体、2…冷蔵室、2a…棚、2b…背面パネル、3,3c…冷凍室、3a…製氷室、3b…急速冷凍室、4…野菜室、5…下段冷凍室容器、6…中段冷凍室容器、7…上段冷凍室容器、8…冷却器室、9…冷却器、10…冷気循環ファン、11…ダンパー、12…仕切り部材纏め品、13…脱臭剤無添加の容器、14…脱臭剤添加の容器、
15…洗浄後の脱臭剤無添加の容器、16…洗浄後の脱臭剤添加の容器、17…メチルメルカプタンの残存率、18…ジメチルサルファイドの生成率。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却器で冷却された冷気を冷気循環ファン等の送風手段を用いて冷凍室に強制循環する冷蔵庫において、食品が接する樹脂部品に脱臭加工したことを特徴とする冷凍冷蔵庫。
【請求項2】
請求項1記載の樹脂部品として少なくとも食品を貯蔵する容器の内側に脱臭加工したことを特徴とする冷凍冷蔵庫。
【請求項3】
脱臭剤は少なくとも亜鉛,銀,シリカを含有するものとしたことを特徴とする請求項1記載の冷凍冷蔵庫。
【請求項4】
請求項1記載の樹脂部品のうち、外して洗浄可能な樹脂部品には酸化亜鉛イオンとシラノールイオンを生成する成分を練りこんだことを特徴とする冷凍冷蔵庫。
【請求項5】
請求項1記載の樹脂部品のうち、少なくとも透明樹脂部品には平均粒径が1から100ナノメートルの酸化チタン粒子を被覆したことを特徴とする冷凍冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−333261(P2007−333261A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163289(P2006−163289)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】