説明

冷蔵庫

【課題】本発明は、効率的に臭気成分を除去して、脱臭性能の向上した冷蔵庫を提供することを目的とする。
【解決手段】冷蔵庫本体(1)に設けられた貯蔵室と、この貯蔵室と区画されて冷却器(9)が設けられた冷却器室(8)と、この冷却器室(8)内の冷却器(9)の下流側に設けられた脱臭部材(14)とを備え、この脱臭部材(14)は水分を吸着して保持する吸湿部材と、臭気成分を分解する消臭部材とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の脱臭機能を備えた冷蔵庫として、特許文献1には、冷却器室から貯蔵室へ吐き出す冷気が通過する冷気通路内で、且つ冷却器室から離れた冷気通路に脱臭装置を配置したものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−69249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷蔵庫においては、各貯蔵室を循環して冷却器室に戻る冷気は高湿であり、冷却器には次第に霜が生長する。また、いわゆる、臭気成分は一般的に親水性が高い。そのため、臭気成分は、冷却器に生長する霜と共に、その多くが冷却器室に一旦、蓄積される。そして、定期的に行われる冷却器の除霜運転の際、付着した霜が溶けると共に、霜中に蓄積した臭気成分が大量に放出される。これにより、各貯蔵室内に臭気成分が拡散する、という課題があった。
【0005】
特許文献1に記載の構成では、各貯蔵室を循環して冷却器室に戻る冷気が最も水分を多く含んでおり、臭気成分或いは臭気成分を含む水分を完全に除去するには、脱臭能力上の限界がある、という課題があった。特に、貯蔵室容積が大容量化している現在、貯蔵食品量も増加し、これによって冷気中の水分量は増加傾向にあるため、この課題が顕著となる。
【0006】
そこで、上記課題に鑑みて、本発明は、効率的に臭気成分を除去して、脱臭性能の向上した冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る冷蔵庫は、冷蔵庫本体に設けられた貯蔵室と、前記貯蔵室と区画されて冷却器が設けられた冷却器室と、該冷却器室内の前記冷却器の下流側に設けられた脱臭部材と、を備え、前記脱臭部材は水分を吸着して保持する吸湿部材と臭気成分を分解する消臭部材とを含むことを特徴とする。
【0008】
また、冷蔵庫本体に設けられた貯蔵室と、冷却器が設けられた冷却器室と、前記貯蔵室と前記冷却器室との間に設けられた仕切り壁と、前記冷却器室内に設けられて冷気を前記貯蔵室に送風する送風手段と、前記冷却器室内の前記冷却器の下方に設けられた除霜手段と、前記冷却器室内の前記冷却器の下流側に設けられた脱臭部材と、を備え、
前記脱臭部材は水分を吸着して保持する吸湿部材と臭気成分を分解する消臭部材とを含むことを特徴とする。
【0009】
また、冷蔵庫本体に設けられた貯蔵室と、冷却器が設けられた冷却器室と、前記貯蔵室と前記冷却器室との間に設けられた仕切り壁と、前記冷却器室内に設けられて冷気を前記貯蔵室に送風する送風手段と、前記冷却器室から前記貯蔵室へ冷気が吹き出される冷気吹出通路と、前記冷却器室内の前記冷却器の下方に設けられた除霜手段と、前記送風手段で送風された冷気が通過する位置であって前記冷気吹出通路の上流に設けられた脱臭部材と、を備え、前記脱臭部材は水分を吸着して保持する吸湿部材と臭気成分を分解する消臭部材とを含むことを特徴とする。
【0010】
また、前記脱臭部材は水分を吸着して保持した水分を放出すると共に臭気成分を脱臭することを特徴とする。
【0011】
また、前記脱臭部材は架橋構造を有して金属塩の微粒子を含有したものであることを特徴とする。
【0012】
また、前記脱臭部材は架橋体のカルボキシル基の少なくとも一部に銀イオンを結合させた後、アルカリ処理によって銀を前記脱臭部材表面にナノサイズの微粒子状に析出固着させたことを特徴とする。
【0013】
また、前記吸湿部材はアクリレート系の吸湿部材であり、前記消臭部材はアルカリ金属塩型カルボキシル基と架橋構造とを有するアクリレート系部材に酸化銀の微粒子を含有したことを特徴とする。
【0014】
また、前記脱臭部材は第4級アンモニウム塩を含浸させたことを特徴とする。
【0015】
また、前記消臭部材の占める割合は21〜50重量%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、効率的に臭気成分を除去して、脱臭性能の向上した冷蔵庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態における冷蔵庫の扉を外した状態を示す正面図である。
【図2】図1に示す冷蔵庫の要部拡大側断面図である。
【図3】図2に示す仕切部材の斜視図である。
【図4】図3に示す仕切部材の反対側を示す斜視図である。
【図5】図1に示す冷蔵庫の要部拡大側断面図である。
【図6】本発明の一実施形態における脱臭部材を示す模式図である。
【図7】本発明の一実施形態における脱臭部材の脱臭性能に係る実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態における冷蔵庫の扉を外した状態を示す正面図である。図2は、図1に示す冷蔵庫の要部拡大側断面図である。図3は、図2に示す仕切部材の斜視図である。図4は、図3に示す仕切部材の反対側を示す斜視図である。
【0020】
まず図1において、1は冷蔵庫本体である。この冷蔵庫本体1は、内部に上から冷蔵室2,冷凍室3,野菜室4を有している。そして、図示しないが、各貯蔵室の前面開口には夫々、開閉扉を有している。特に冷凍室3,野菜室4の全面開口を夫々閉塞する扉は、引き出し式に形成されており、後述する各貯蔵室内の容器を扉と共に引き出す構造に形成されている。
【0021】
冷凍室3は、製氷室3a,急速冷凍室3b、及び下段冷凍室3cに区画(断熱的区画又は非断熱的区画)した構成である。製氷室3a内には、自動製氷装置3a1及び貯氷容器3a2が備えられており、貯氷容器3a2は引き出し式の扉を引き出すことによって、扉と共に引き出される。
【0022】
また、急速冷凍3b及び下段冷凍室3cも、夫々引き出し式の扉によって前面開口が閉塞されている。そして、扉を引き出すことによって、各貯蔵室内の容器が引き出される構成となっている。
【0023】
特に下段冷凍室3cは、図1及び図2に示すように、上下3個の容器が収納されている。具体的には、下段から下段冷凍室容器5,中段冷凍室容器6,上段冷凍室容器7が配設されている。図には示していないが、下段冷凍容器5及び中段冷凍容器6は、下段冷凍室扉(図示せず)の引き出し枠に固定され、この下段冷凍室扉の開閉に連動して下段冷凍室3c内を出入する。上段冷凍室容器7は、下段冷凍室3cの側壁を構成する内箱側面に設けられたレールを利用して、下段冷凍室3c内に対して引き出し可能な構成としている。さらには下段冷凍室容器5,中段冷凍室容器6及び上段冷凍室容器7は、互いに深さ寸法が異なる容器であり、大きさの異なる各種の食品の収納に適したものとしている。
【0024】
次に、図2において、8は冷凍室3の背部に形成された冷却器室である。この冷却器室8内には、冷凍サイクルを構成する冷却器9が設けられている。また、冷却器室8内であって、冷却器9の上方には、冷却器9で熱交換した冷気を冷凍室3,冷蔵室2及び野菜室4に送風して強制循環する送風手段である冷気循環ファン10が設けられている。また、冷蔵室2,野菜室4への送風は、送風制御手段であるダンパ11を介して、その送風量が制御される。
【0025】
12は冷凍室3と冷却器室8間を仕切る仕切り部材である。この仕切り部材12の前面には、図3に示すように、各貯蔵室に冷却器9を経由した冷気を送るための吐出口が設けられている。また、この仕切り部材12の裏側(吐出口と反対側の面)には、冷却器9,冷気循環ファン10,ダンパ11等が部組されている。
【0026】
13は冷却器9に付着した霜を溶かす除霜ヒータである。除霜ヒータ13は、冷却器室8内であって、冷却器9の下方に設けられる。
【0027】
冷却器9で熱交換した冷気を冷気循環ファン10で各貯蔵室に循環させる方式において、各貯蔵室の扉を開閉したり、水分量の多い食品を貯蔵したりすると、外気の水分や貯蔵物から蒸発した水分が冷却器9まで運ばれる。そして、冷却器9で熱交換するとき、多湿の空気が冷却されることで、冷却器9に霜が生長する。冷却器9に霜が付着すると、冷却器9を循環空気が通過しにくくなり、空気と冷却器9の接触効率が低下して、冷却効率は低下する。このため、冷却器9に付着した霜は、定期的に除去する必要がある。その除霜手段として、除霜ヒータ13に定期的に通電することで、冷却器9に付着した霜を溶かし、冷却効率(接触効率)を回復する。
【0028】
図4において、14は脱臭部材である。この脱臭部材14は、図4に示すように、冷却器室8内の冷気循環ファン10の近傍で、且つ冷却器9の下流側に設けられている。すなわち、冷却器室8内の空気は、下方から上方に向かって流れ、冷却器9と熱交換する。このため、除霜運転のために除霜ヒータ13が発熱した場合でも、脱臭部材14自体が急激に温度上昇することがなく、脱臭部材14が吸着した臭気成分を分解する前に放出することを抑制できる。
【0029】
次に、脱臭部材14の別の設置例を図5に示す。図5は、図1に示す冷蔵庫の要部拡大側断面図である。
【0030】
図5において、15は仕切り壁である。仕切り壁15は、断熱材料で構成され、冷却器室8と冷気吹出通路16の間を断熱的に仕切る。16は冷却器9で熱交換した冷気を、冷却器室8から各貯蔵空間へ吐き出す冷気吹出通路である。そして、脱臭部材14は仕切り壁15に設けられ、冷気吹出通路16の冷気上流側に位置する。すなわち、冷気循環ファン10で送風された冷気が通過する位置であって冷気吹出通路26の上流に脱臭部材14は設けられている。換言すると、脱臭部材14は冷却器室8と冷気吹出通路16の境界に設けられており、冷却器9で熱交換した後に冷気吹出通路16に向かう前の全ての冷気が脱臭部材14を通過する構成である。
【0031】
この構成では、冷気吹出通路16に近い側に脱臭部材14を配置しているため、除霜ヒータ13の温度影響を受け難く、且つ除霜運転時に発生する臭気成分を効率よく除去(脱臭)することができる。これにより、除霜ヒータ13に通電して冷却器9に付いた霜を溶かす場合、一緒に放出する臭気成分が、冷凍室3,冷蔵室2及び野菜室4へ拡散する前に脱臭を行うことができる。また、臭気成分が冷凍室3,冷蔵室2及び野菜室4に放出することを防止できるため、各貯蔵室の貯蔵物に臭気成分が付着(におい移り)することを防止できる。
【0032】
次に、脱臭部材14について、図6を用いて更に詳細に説明する。図6は、本発明の一実施形態における脱臭部材を示す模式図である。
【0033】
脱臭部材14は、主に繊維からなり、量産における組立性,取り扱い性を考慮して、これを板状に圧縮成形することにより剛性が付与されている。すなわち、脱臭部材14は、機能性繊維の不織布から成る。この脱臭部材14を構成する繊維の種類は、吸放湿性能に優れた吸放湿性繊維81と、脱臭性能の優れた消臭性繊維82と、剛性を持たせるために圧縮成形時に繊維を接着させるための熱融着性繊維83とを含み、これらの繊維を混在または積層して一体的に形成されている。
【0034】
吸放湿性繊維81として、例えば、アクリレート系の日本エクスラン工業社製NX−72を用いる。消臭性繊維82として、例えば、日本エクスラン工業社製商品名ナノアタックを用いる。熱融着性繊維83として、例えば、熱融着性ポリエステル繊維を用いる。なお、本実施例では吸放湿性繊維81を用いているが、これに限らず、水分を吸着して保持する機能の一般的な吸湿性部材を含むものである。
【0035】
吸放湿性繊維81は、アクリル繊維へヒドラジン処理によって架橋結合86が導入される。得られた架橋繊維は、さらに苛性ソーダ溶液で加水分解を行うことで、Na塩型カルボキシル基87が導入され、吸放湿性繊維81が得られる。なお、カルボキシル基の塩型は、アルカリ金属であればよく、Naに限定されない。
【0036】
また、消臭性繊維82は、架橋繊維のカルボキシル基の少なくとも一部に銀イオンを結合させた後、アルカリ処理によって、銀を繊維表面にナノサイズレベルの超微粒子状に析出固着させることにより製造する。
【0037】
脱臭部材14の吸放湿性繊維81は、繊維内部に多くのアルカリ金属塩型カルボキシル基を含有するため、貯蔵室内の水分を多量に吸着して保持することができると共に、繊維内部に架橋結合86を有するため、保持した水分を放出する機能を有している。
【0038】
また、消臭性繊維82は、架橋構造を有すると共に金属塩の微粒子を含有したものであるので、貯蔵室内の臭気成分を吸着又は分解して脱臭する機能を有している。
【0039】
脱臭部材14は、図6に示すように、吸放湿性繊維81及び熱融着性繊維83が混在した吸放湿性シート84と、消臭性繊維82及び熱融着性繊維83が混在した消臭性シート85を張り合わせた構成となっている。なお、本実施例においては、吸放湿性シート84は吸放湿性繊維81及び熱融着性繊維83を一体化し、消臭性シート85は消臭性繊維82及び熱融着性繊維83を一体化したものである。
【0040】
吸放湿性繊維81は、図6に1本を模式的に拡大して示すように、架橋結合86を有するアクリレート系繊維にNa塩型カルボキシル基87を含有している。また、消臭性繊維82は、図6に1本の断面を模式的に拡大して示すように、銀89が架橋繊維90表面にナノサイズレベルの超微粒子状に析出固着している。この脱臭部材14が接する空気中の臭気成分、例えばメチルメルカプタンは、銀の微粒子により酸化分解されて脱臭される。その反応式を次に示す。
〔化式〕
銀2O+CH3SH+3/2O2→銀2S+CO2+2H2
【0041】
ここで生成した水分88は、吸放湿性繊維81中のアルカリ金属塩型カルボキシル基に吸着し、調湿や悪臭成分の捕集に有効に活用される。
【0042】
次に、熱融着性繊維83の混率について、表1を用いて説明する。
【0043】
【表1】

【0044】
脱臭部材14は、量産における組立性,取り扱い性を考慮してこれを板状に圧縮成形することにより強度(剛性)を付与することが望ましいが、そのためには熱融着性繊維83の混在が必要である。この熱融着性繊維83の混率による強度(剛性)の変化は、表1に示す通りであり、熱融着性繊維83の混率が40重量%以下になると、強度が所定以下に低下することが判明した。従って、脱臭部材14を板状に圧縮成形するためには、熱融着性繊維83の混率を40重量%以上にすることが必要である。
【0045】
冷却器室8に上述した脱臭部材14を設置することにより、除霜運転により霜が溶解して発生する高湿な空気又は水分を効果的に脱臭することができる。臭気成分は親水性が高く、空気中の水分と吸着しやすい。特に除霜運転の際は霜が溶解し、且つ冷却器室8の温度が除霜ヒータ13の通電により上昇するため、冷却器室8の空気中の水分が増大する。そして、この水分に臭気成分は吸着しやすい。
【0046】
従って、脱臭部材14は、水分を吸着して保持し、且つ保持した水分を放出すると共に、臭気成分を除去(脱臭)するものであるから、脱臭部材14が水分を吸湿すると、一緒に臭気成分も脱臭部材14に吸着することになる。すなわち、水分の吸湿により脱臭部材14は多くの臭気成分を吸着できるようになり、脱臭反応効率が向上し、多くの臭気成分を素早く除去(脱臭)できる。
【0047】
また、除霜運転が終了した後、冷気循環ファン10による冷気循環に伴って冷気中の湿度は低下する。そのため、脱臭部材14の周囲雰囲気も低湿となり、脱臭部材14に吸湿した水分が冷気中に放出する。すると、脱臭部材14は、次の除霜運転までに吸湿力を回復して、次回の除霜運転のときに同様の脱臭効果を発揮できる。
【0048】
更に、脱臭部材14は水分を吸湿して保持しやすいため、菌の繁殖には優位な環境となるが、繊維の表面を、例えば第4級アンモニウム塩のような抗菌剤で覆うか、又は繊維に抗菌剤を化学的に含有させる等の加工を施し、脱臭部材14に抗菌剤を坦持することにより、菌の繁殖を防ぐことができる。
【0049】
なお、脱臭部材14に第4級アンモニウム塩を含浸させて抗菌性を付与する場合、その加工方法は問わない。すなわち、脱臭部材14を構成する何れかの繊維に、予め含浸処理を施しておいてもよいし、成形された脱臭部材14に含浸処理を施してもよい。
【0050】
本実施形態の冷蔵庫においては、貯蔵室内の水分を吸着して保持する吸放湿性繊維81と、臭気成分を吸着もしくは分解して脱臭する消臭性繊維82とを混在させて形成した脱臭部材14としている。これにより、脱臭部材14に接する水分が吸放湿性繊維81に吸着保持されて、水分と共に存在している臭気成分が脱臭部材14内に集められ、脱臭部材14内に留められる。よって、消臭性繊維82により効果的に吸着もしくは分解されて脱臭され、多量の臭気成分を除去(脱臭)することができる。
【0051】
次に、脱臭性能について、図7を用いて説明する。図7は、図4に示す位置に脱臭部材14を設置し、冷凍室3に臭気成分であるメチルメルカプタンを注入したときの冷却器室8のメチルメルカプタン濃度を測定した結果を示すものである。
【0052】
図7において、30は脱臭部材14がない場合、31は脱臭部材14がある場合の結果を示す。図7に示すように、脱臭部材14がない場合、除霜運転前は冷却器9に生長する霜と共に臭気成分が付着して減少したように変化する。しかし、除霜ヒータ13の通電により、それまでに冷却器9に付着した霜に吸着したメチルメルカプタンが放出して、濃度が上昇する。
【0053】
これに対して、脱臭部材14を設置した場合、除霜運転前までは脱臭部材14を設置しない場合と同様の濃度変化を示すが、除霜ヒータ13に通電後もメチルメルカプタン濃度が上昇しない。
【0054】
したがって、本実施形態では、除霜運転前後に放出されるメチルメルカプタンは、脱臭部材14によって効率的に脱臭されていることがわかる。すなわち、冷蔵室2,冷凍室3及び野菜室4へのメチルメルカプタンの放出を抑制できる。
【0055】
また、臭気成分の濃度減衰が速くなり、除霜ヒータ13の通電に伴う臭気成分の濃度上昇も抑制して、各貯蔵室内の臭気成分を徐々に除去していることがわかる。
【0056】
そして、水分を吸着して保持すると共に保持している水分を放出する吸放湿性繊維81と貯蔵室内の悪臭成分を吸着もしくは分解して脱臭する消臭性繊維82とを一体的に形成して脱臭部材14としているので、コンパクトかつ安価な構成で、水分が吸放湿性繊維81に吸着されて保持されることにより、臭気成分が水分と一緒に集められ、この臭気成分が水分により保持されて脱臭部材14内に留められるため、臭気成分を効果的に脱臭することができる。
【0057】
また、架橋構造を有すると共に、金属塩の微粒子を含有した消臭性繊維82を脱臭部材14に用いることで、より優れた脱臭効果を得ることができる。
【0058】
また、消臭性繊維82は、架橋繊維のカルボキシル基の少なくとも一部に銀イオンを結合させた後、アルカリ処理によって、銀を繊維表面にナノサイズレベルの超微粒子状に析出固着しているので、より一層優れた脱臭効果を得ることができる。
【0059】
また、脱臭部材14に第4級アンモニウム塩を含浸させているので、水分が保持されて菌の繁殖に適した環境にもかかわらず、脱臭部材14が菌等で汚染されるのを確実に防止することができる。なお、ここで言う第4級アンモニウム塩には例えばアルキルトリメチルアンモニウム塩やアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等がある。
【0060】
また、脱臭部材14を構成する消臭性繊維82の占める割合を21〜50重量%にしているので、脱臭性能及び加工性に優れた脱臭部材14を得ることができる。
【0061】
また、脱臭部材14を冷却器室8に配置しているので、除霜運転時に発生する悪臭成分を集中的に除去することができる。
【0062】
また、脱臭部材は冷却器室の各構成部品とは別体に設け、表面積が大きく高い吸着作用と分解作用を持つハニカム体などの形状を有したものを搭載すれば、除霜運転により温められ、拡散速度の増加した臭気成分であっても、表面積の大きい脱臭部材により、臭気成分が冷凍室,冷蔵室及び野菜室に放出することを防止できる。
【0063】
また、冷却器室に設置する脱臭部材は除霜ヒータ温度を活用しなくても悪臭成分を脱臭分解できるものである。除霜ヒータは冷却器の下方に位置するのに対して、脱臭部材は冷却器の上流側に位置する。これにより、除霜ヒータの通電により、脱臭部材が臭気成分を吸着した後、除霜ヒータが通電されても、脱臭部材の温度上昇に伴う臭気成分の脱離がなく、霜が溶けるのと一緒に放出する臭気成分のみを効率よく脱臭でき、高い脱臭効果を得ることができる。
【0064】
以上の本発明に係る実施形態によれば、特に除霜運転による着霜の解凍に伴い、冷却器に付着した霜に含まれる臭気成分が貯蔵室に拡散するのを防止するのに好適な脱臭装置を有する冷蔵庫を得ることができる。
【符号の説明】
【0065】
8 冷却器室
9 冷却器
10 冷気循環ファン
11 ダンパ
12 仕切り部材
13 除霜ヒータ
14 脱臭部材
15 仕切り壁
81 吸放湿性繊維
82 消臭性繊維
83 熱融着性繊維
84 吸放湿性シート
85 消臭性シート
86 架橋結合
87 Na塩型カルボキシル基
88 水分
89 銀
90 架橋繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵庫本体に設けられた貯蔵室と、前記貯蔵室と区画されて冷却器が設けられた冷却器室と、該冷却器室内の前記冷却器の下流側に設けられた脱臭部材と、を備え、
前記脱臭部材は水分を吸着して保持する吸湿部材と臭気成分を分解する消臭部材とを含むことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
冷蔵庫本体に設けられた貯蔵室と、冷却器が設けられた冷却器室と、前記貯蔵室と前記冷却器室との間に設けられた仕切り壁と、前記冷却器室内に設けられて冷気を前記貯蔵室に送風する送風手段と、前記冷却器室内の前記冷却器の下方に設けられた除霜手段と、前記冷却器室内の前記冷却器の下流側に設けられた脱臭部材と、を備え、
前記脱臭部材は水分を吸着して保持する吸湿部材と臭気成分を分解する消臭部材とを含むことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項3】
冷蔵庫本体に設けられた貯蔵室と、冷却器が設けられた冷却器室と、前記貯蔵室と前記冷却器室との間に設けられた仕切り壁と、前記冷却器室内に設けられて冷気を前記貯蔵室に送風する送風手段と、前記冷却器室から前記貯蔵室へ冷気が吹き出される冷気吹出通路と、前記冷却器室内の前記冷却器の下方に設けられた除霜手段と、前記送風手段で送風された冷気が通過する位置であって前記冷気吹出通路の上流に設けられた脱臭部材と、を備え、
前記脱臭部材は水分を吸着して保持する吸湿部材と臭気成分を分解する消臭部材とを含むことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項4】
前記脱臭部材は水分を吸着して保持した水分を放出すると共に臭気成分を脱臭することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記脱臭部材は架橋構造を有して金属塩の微粒子を含有したものであることを特徴とする請求項4記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記脱臭部材は架橋体のカルボキシル基の少なくとも一部に銀イオンを結合させた後、アルカリ処理によって銀を前記脱臭部材表面にナノサイズの微粒子状に析出固着させたことを特徴とする請求項5記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記吸湿部材はアクリレート系の吸湿部材であり、前記消臭部材はアルカリ金属塩型カルボキシル基と架橋構造とを有するアクリレート系部材に酸化銀の微粒子を含有したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記脱臭部材は第4級アンモニウム塩を含浸させたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の冷蔵庫。
【請求項9】
前記消臭部材の占める割合は21〜50重量%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−144969(P2011−144969A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4508(P2010−4508)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】