説明

冷蔵庫

【課題】引き出し式の貯蔵室の実収納容積の増加を図りつつ、構造的強度の低下を抑止する。
【解決手段】断熱箱体101の内方に形成される前面が開口する引出式の貯蔵室と、貯蔵室の前面開口を開閉自在に閉塞する引出扉201と、断熱箱体の貯蔵室を区画する仕切壁と、固定レール222と移動レール221とを有し、固定レール222と移動レール221とを予め組み込んだ状態で内箱110に固定し、引出扉201と断熱箱体101とを伸縮自在に接続するとともに貯蔵室の内部に備えた容器を前後に移動可能とするレール装置202と、を備えた冷蔵庫において、レール装置202は、引出扉201の上下方向中央部より下方、かつ左右方向両端部に接続されるとともに、ケース300は食品を収納する容器206と容器206の上面開口周縁部に固定するフレーム枠206aとから形成され、容器206とフレーム枠206aとは異なる樹脂材料で形成し強度を確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に関し、特に引出式の貯蔵室を形成する引き出し構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷蔵庫は、奥まで無駄なく貯蔵できる、使い勝手がよい等の観点から、冷蔵庫の下段に引き出し式の貯蔵室を備えることが多い。このような引き出し式の貯蔵室は、貯蔵室を出し入れする際の円滑性、貯蔵室への食品の出し入れの容易性、および、貯蔵室を形成する容器の着脱の容易性などが求められている。
【0003】
そこで、引き出し式の貯蔵室の使い勝手を向上させる技術も開示されている(例えば、特許文献1または特許文献2参照)。
【0004】
図6は、従来の冷蔵庫100の側断面を示す図である。
【0005】
図6に示す従来の冷蔵庫100は、断熱箱体101内に、冷蔵室102、温度変更が可能な切換室106、切換室106に併設された製氷室(図示せず)、野菜室103、および冷凍室104を貯蔵室として備えている。
【0006】
断熱箱体101は、外箱112と内箱110と、外箱112および内箱110の間に充填された断熱材111と、で形成されている。
【0007】
野菜室103の構成要素である容器206は、野菜室103の引出扉201に接続された2つのレール装置202に支持されている。
【0008】
また、冷凍室104の構成要素である容器は、冷凍室104の引出扉201に接続された2つのレール装置202に支持されている。
【0009】
野菜室103および冷凍室104はそれぞれこのような構成であることにより、断熱箱体101に対して出し入れ可能な引き出し式の貯蔵室となっている。
【0010】
ここで、従来の冷蔵庫において前面開口を閉塞するための引出扉201について説明する。
【0011】
図7は、引出扉を奥側から示す斜視図である。
【0012】
図7に示すように、引出扉201には、扉フレーム205が引出扉201に対して垂直突出状に取り付けられている。当該扉フレーム205は、引出扉201に取り付けられ、移動レールと固定レールを備えたレール装置202(図示せず)がスライド可能に係合し、引出扉201を垂直方向に起立させた状態のまま水平方向に引き出し押し戻すことができるようになっている。
【0013】
図8は、引出扉と容器との関係を冷蔵庫の奥側から示す断面図である。
【0014】
図8に示すように、容器206は、2本のレール装置202の間に配置され、容器206の高さ方向略中央部で2本のレール装置202に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006−177653号公報
【特許文献2】特開2006−214642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところが近年、冷蔵庫の構成要素の配置等を工夫することなどにより実収納可能な内容積を増加させる傾向にある。
【0017】
従来の引出式の貯蔵室が備える容器は、レール装置に載置しているだけであり、容器の内容積を増加することで、さらに容器に収納される収納物が増大し負荷も大きくなり、引出扉を開放すると、レール装置に大きな負荷がかかり、特にレール装置と引出扉との取り付け部分であるレール装置の端部にかかる応力が増大する。
【0018】
また、レール装置にかかる負荷量増大により、レール装置が変形し内側に倒れ込む虞があり、引出扉を前後にスムーズに移動できなくなるという虞がある。
【0019】
これは、引出扉の最大開放時、引出扉の開放と連動する容器206を支えているのはレール装置202のみであり、さらに内部に断熱発泡された引出扉がレール装置202の端部にあるため、容器206の荷重に加えて引出扉201の荷重がレール装置202の端部に加わる。また引出扉201内には省エネの観点から真空断熱材が埋設されている場合もあり、さらにレール装置202への荷重は増大する方向である。このため長期間の引出扉201の開閉動作によりレール装置202が変形し、これによって引出扉201が野菜室103または冷凍室104の開口部を閉塞しても、開口部に対して引出扉201が歪んで閉塞されたり、開口部を引出扉201のシール部(図示しない)でシールできないことが起こり、室内の冷気が漏れて所定温度に冷却できないというおそれがある。
【0020】
本願発明は、上記従来の課題を解決するもので、引き出し式の貯蔵室を備える冷蔵庫であって、引出式の貯蔵室に広い実収納容積を確保し、ケースの剛性を確保した冷蔵庫の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記従来の課題を解決するために、本願発明の冷蔵庫は、内箱と外箱と前記内箱と前記外箱との間に充填した断熱材とよりなる断熱箱体と、前記断熱箱体の内方に形成される前面が開口する引出式の貯蔵室と、前記貯蔵室の前面開口を開閉自在に閉塞する引出扉と、前記断熱箱体の貯蔵室を区画する仕切壁と、固定レールと移動レールとを有し、前記固定レールと前記移動レールとを予め組み込んだ状態で前記内箱壁に固定し、前記引出扉と前記断熱箱体とを伸縮自在に接続するとともに前記貯蔵室の内部に備えたケースを前後に移動可能とするレール装置と、前記引出扉に固定され前記レール装置と接合されて前記ケースを保持する扉フレームとを備えた冷蔵庫において、前記ケースは食品を収納する容器と前記容器の上面開口周縁部に固定するフレーム枠とから形成され、前記容器と前記フレーム枠とは異なる樹脂材料で形成し、前記フレーム枠の方が前記容器よりも剛性に優れているので、容器の下部を扉フレームで支持しても、上面開口部を剛性に優れたフレーム枠で形成しているので、食品を収納されてもケースの変形を抑制することができるものである。
【0022】
これによって、さらに引出扉の強度を確保でき、左右方向でねじれるのを防止することができるので、扉の不平衡によるシール部の隙を抑制し冷却性能の確保を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の冷蔵庫は、引出式の貯蔵室において、広い実収納空間およびケースの剛性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1における冷蔵庫の正面図
【図2】図1のA−A線切断面を示す図
【図3】本発明の実施の形態1における冷蔵庫のレール装置を示す斜視図
【図4A】本発明の実施の形態1における冷蔵庫の接続した引出扉とレール装置と着脱可能な容器を示す斜視図
【図4B】図4Aの容器を装着したときの要部断面図
【図4C】本発明の実施の形態1における冷蔵庫のレール装置の間に容器を配置した状態を奥側から示す断面図
【図4D】図4Aの要部A−A断面図
【図5】本発明の実施の形態1における冷蔵庫のレール装置と容器の配置を示した要部拡大図
【図6】従来の冷蔵庫を示す断面図
【図7】従来の引出扉とレールとの関係を示す斜視図
【図8】従来のレールと容器との関係を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
請求項1に記載の発明は、内箱と外箱と前記内箱と前記外箱との間に充填した断熱材とよりなる断熱箱体と、前記断熱箱体の内方に形成される前面が開口する引出式の貯蔵室と、前記貯蔵室の前面開口を開閉自在に閉塞する引出扉と、前記断熱箱体の貯蔵室を区画する仕切壁と、固定レールと移動レールとを有し、前記固定レールと前記移動レールとを予め組み込んだ状態で前記内箱壁に固定し、前記引出扉と前記断熱箱体とを伸縮自在に接続するとともに前記貯蔵室の内部に備えたケースを前後に移動可能とするレール装置と、前記引出扉に固定され前記レール装置と接合されて前記ケースを保持する扉フレームとを備えた冷蔵庫において、前記ケースは食品を収納する容器と前記容器の上面開口周縁部に固定するフレーム枠とから形成され、前記容器と前記フレーム枠とは異なる樹脂材料で形成し、前記フレーム枠の方が前記容器よりも剛性に優れているので、容器の下部を扉フレームで支持しても、上面開口部を剛性に優れたフレーム枠で形成しているので、食品を収納されてもケースの変形を抑制することができる。
【0026】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記容器を構成する底面部と左右両側面部で、前記左右両側面部は前記底面部に対して略垂直面となった成形されているので、冷蔵庫本体の内壁とケースとの間にできる無効空間を低減でき、ケース内へ食品を収納した時の、内部の無効空間も抑制できる。
【0027】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、ケースのフレーム枠に載置され、前後方向に移動可能な上部ケースを有し、前記フレーム枠に形成した摺動部を前記上部ケースが摺動することで前後移動可能にしたので、剛性に優れているので上部ケースの前後移動時、または下部ケース内へ食品を収納した時の変形を抑制でき、フレーム枠から脱落するのを防止できる。
【0028】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記容器はPP樹脂で、前記フレーム枠はABS樹脂で成形されているので、上部ケースと接触しやすいフレーム枠を耐衝撃性、耐摩耗性に優れたABS樹脂としたので信頼性を確保でき、また寸法安定性にも優れているので、ロットごとでの誤差が少なく上部ケースとの寸法精度を確保でき、摺動性を維持することができる。
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、従来例または先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0030】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の正面図である。
【0031】
図1に示すように、本実施の形態にかかる冷蔵庫100は、観音開き式の扉を上部に備える冷蔵庫100であり、冷蔵庫100の内方と外方とを断熱状態で隔てる断熱箱体101内に複数に区画された貯蔵室を備えている。
【0032】
冷蔵庫100の内の複数に区画された貯蔵室は、その機能(冷却温度)によって冷蔵室102、製氷室105、庫内の温度が変更できる切換室106、野菜室103、および冷凍室104等と区別して称されることがある。
【0033】
冷蔵庫100の最上部に位置する冷蔵室102の前面開口部には、例えばウレタンのような発泡断熱材を発泡充填した回転式の断熱扉107が設けられ、棚状の収納空間となっている。
【0034】
また、冷蔵室102の下方に配置される製氷室105、切換室106、野菜室103、および冷凍室104は引出式の収納空間となされている。
【0035】
断熱箱体101は、金属製の外箱112と樹脂製の内箱110との間に例えば硬質発泡ウレタンなどの断熱材111を充填して形成される少なくとも一面が開口した直方体の箱体である。この断熱箱体101は、外方の雰囲気(大気)から断熱箱体101の内方に流入しようとする熱を遮断する機能を有している。
【0036】
冷蔵室102は、冷蔵保存のために収容物が凍らない程度の低い温度に維持される貯蔵室である。具体的な温度の下限としては、通常1〜5℃で設定されている。
【0037】
野菜室103は、断熱箱体101の最下部に配置され、主として野菜の冷蔵を目的とした貯蔵室である。また、野菜室103は、冷蔵室102と同等もしくは若干高い温度設定となされている。具体的な温度の下限としては、2℃〜7℃である。なお、低温にするほど葉野菜の鮮度を長期間維持することが可能である。
【0038】
冷凍室104は、冷凍温度帯に設定される貯蔵室である。具体的には、冷凍保存のために通常−22〜−18℃で設定されているが、冷凍保存状態の向上のために、たとえば−30〜−25℃の低温で設定されることもある。
【0039】
製氷室105は、内方に製氷機(図示せず)を設け製氷機で氷を作りその氷を保存する貯蔵室である。設定温度は冷凍室104とほぼ同等である。
【0040】
切換室106は、冷蔵庫100に取り付けたれた操作盤により、用途に応じ冷蔵温度帯から冷凍温度帯まで切り換えることができる。
【0041】
これらの異なる温度帯を複数に区画するために、断熱箱体101内のそれぞれの温度帯の間には仕切壁108が設置されている。
【0042】
図2は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の縦断面図であり、図1におけるA−A
線で切断した状態を示している。
【0043】
図2に示すように、冷蔵庫100に備えられる貯蔵室のうち引出式の貯蔵室には、前面開口を閉塞する引出扉201と、引出扉201と断熱箱体101とを伸縮自在に接続するとともに貯蔵室の内部に備えた容器206を前後に移動可能とするレール装置202とが設けられている。さらに、冷蔵庫100は、扉フレーム205と、容器206と、を備えている。
【0044】
ここで、扉フレーム205は、強化部材に相当する。
【0045】
引出扉201は、貯蔵室の開口を開閉自在に閉塞することができる断熱性を備えた板状の部材であり、奥側周縁にパッキン207を備えている。当該パッキン207は、引出扉201が貯蔵室の開口を閉塞した状態で断熱箱体101等と密着し、冷気が漏れるのを防いでいる。
【0046】
図3は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫のレール装置を示す斜視図である。
【0047】
図3に示すように、レール装置202は、三段に重ねられた三つのレールを有し、第2レール(ミドルレール221)が第1レール(キャビネットレール222)に対して移動可能であり、かつ、第3レール(トップレール203)が第2レール(ミドルレール221)に対して移動可能であることにより、全体として伸縮可能である。
【0048】
トップレール203とミドルレール221とが、特許請求の範囲での「移動レール」に相当し、キャビネットレール222が、特許請求の範囲での「固定レール」に相当する。
【0049】
固定レールと移動レールは、それぞれ回転支持部材(図示せず)で支持され、固定レールと移動レールを予め組み込んだ状態で、レール装置202を内箱110壁に固定する。
【0050】
レール装置202は、キャビネットレール222のレール取付部223が断熱箱体101の内箱110に取り付けられ、また、レール装置202は、トップレール203とミドルレール221とキャビネットレール222とが相互にスライド自在となされることで、レール装置202全体として伸縮自在となっている。従って、引出扉201は、レール装置202の伸縮軌道に沿って断熱箱体101に対し引き出されたり押し戻されたりすることが可能となっている。
【0051】
具体的には、ミドルレール221の上下のフランジのうち、下のフランジを中心とする部分をキャビネットレール222が複数のベアリング145で保持している。
【0052】
また、キャビネットレール222は、当該断面においては複数のベアリング145を介して三方向からミドルレール221を支持することで、ミドルレール221を長手方向に移動可能に保持している。
【0053】
また、ミドルレール221の上フランジを中心とする部分をトップレール203が複数のベアリング145で保持している。また、トップレール203も、当該断面においては複数のベアリング145を介して三方向からミドルレール221を支持することで、ミドルレール221を長手方向に移動可能に保持している。
【0054】
キャビネットレール222、ミドルレール221およびトップレール203がこのように組み合わされていることにより、ミドルレール221は、キャビネットレール222上をその長手方向に移動可能である。
【0055】
さらに、トップレール203は、ミドルレール221上をその長手方向に移動可能である。つまり、トップレール203、ミドルレール221を介してキャビネットレール222上をその長手方向に移動可能である。
【0056】
また、ミドルレール143およびトップレール144は、このように移動する際、複数のベアリング145が回転することによりスムーズに移動することができる。
【0057】
図4Aは、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の扉フレームによって引出扉とレール装置とを接続した状態を示す斜視図である。
【0058】
図4Aに示すように、引出扉201は、断熱箱体の前面を覆う内板211と、扉フレーム205と、を備えている。内板211は、引出扉201を構成する部材の一つであり、真空成形により形成される板状の部材である。内板211に直接に固定された扉フレーム205は、ビスなどを用いてトップレール203に接続されることにより、引出扉201は、レール装置202の機能により引き出されたり押し戻されたりすることが可能となっている。
【0059】
引出扉201、特に引出扉201の上端部を持って引き出したり押し戻したりしたときに発生する応力が、トップレール203の基端部に集中するのを緩和するため、容器206と引出扉201とを固定する第1固定手段301が引出扉201の内板211に備えられており、第1固定手段301は、容器206をレール装置202に載置したとき、容器206の上面開口部に形成された断面略L字状の前面フランジ部206aが固定される位置に設置されている。そして前面フランジ部206aは断面略L字状の差込状体に形成された第1固定手段301に上方から差込まれて固定される。
【0060】
また第1固定手段301は金属製の部材で、内板211の裏側の発泡断熱材内に固定された平板状の金属板(図示せず)に、内板211を介してビス等により固定されている。そして前面フランジ部206aは第1固定手段301に上方から差込んで固定されている。扉フレーム205は、扉フレーム205の一辺に対応する端縁が引出扉201の内板211に沿うように折曲される折曲部241を備えており、折曲部241は内板211の裏側の発泡断熱材内に固定された平板状の金属板(図示せず)に、内板211を介してビス等により固定されている。
【0061】
このように容器206の前面フランジ部206aを引出扉201の内板211の上部に備えた第1固定手段301に固定することにより、引出扉201に対して下部に取り付けられているレール装置202と引出扉201との取付部の強度不足を補い、スムーズな引出扉の開閉を行うことが可能となる。
【0062】
また、内板211に一体で形成され第2固定手段303は容器206の上面開口部を形成する周縁部304に当接して前面フランジ部206aが上方へ浮上るのを防止する凸部形状の浮上り防止部材303である。
【0063】
第2固定手段303は図のように、左右両側に備えた第1固定手段301の間に備えられている。
【0064】
また、図のように着脱可能な容器206は引出扉201の上方から嵌められ、上記のように前面フランジ部206aを第1固定手段301に差込み、容器206の上面開口部を形成する周縁部304が第2固定手段303に上方から当接することで、すなわち第1固定手段301で容器206の前面部を下から支持固定し、第2固定手段303で容器20
6の前面部を上から支持固定して内板211に固定されるので、容器206の上部が内板211に支持されて固定されるので、さらに引出扉201に対して下部に取り付けられているレール装置202と引出扉201との取付部の強度不足を補い、スムーズな引出扉の開閉を行うことが可能となる。
【0065】
また、引出扉201を持って引き出したり押し戻したりした場合であっても、応力がトップレール203の取付部に集中することはなく、折曲部241や扉フレーム205を介して接続されている部分に分散するため、全体として引出扉201とトップレール203との取付強度を向上することが可能となる。これは、トップレール203が引出扉201の下部に取り付けられている本実施の形態のような場合には、特に有効である。
【0066】
仮に、レール装置202を引出扉201の上下方向中央部付近に取り付けた場合において必要となる最低限の強度を確保した扉フレーム205を用いて、本実施の形態の位置と同様に、レール装置202を引出扉201の上下方向中央部より下方に配置した状態で、引出扉201を前後に開閉操作を行った場合、扉フレーム205の引出扉201との固定部側の強度不足により、扉フレーム205、若しくは内板211に変形が起こり、結果として、引出扉201に備えられているパッキン207が断熱箱体101から離れ、隙が発生し、冷蔵庫内に着霜等の品質不良へと繋がる可能性もある。
【0067】
引出扉201とトップレール203との取付部が引出扉201の下部に有ると、引出扉201の上部を持って引き出したり押し戻したりした場合、取付部にかかるモーメントが比較的大きくなるが、本実施の形態は、取付部よりも上方に第1固定手段301または第2固定手段303、あるいは第1固定手段301と第2固定手段303の両方を設けて、容器206を固定するため、取付部にかかるモーメントが小さくなるためトップレール203の取付部を破損から保護することが可能となる。つまり、本実施の形態では、第1固定手段301または/および第2固定手段303を設けた引出扉201を設けることで、引っ張り力の支点となる位置を上方とすることができる。
【0068】
また上記のように、第1固定手段301は内板211と別体で形成され、第2固定手段303は内板211と一体で形成されており、特に容器206の前面フランジ部206aの固定構造を形成する第1固定手段301は内板211と別体の金属性部品で形成することで、容器206内に収納物を入れられても引出扉201の可動に対して容器206との固定状態を維持できる。また第2固定手段303を内板211と一体成形することで部品点数を低減できる。
【0069】
図4Cは、本発明の実施の形態1における冷蔵庫のレール装置の間に容器を配置した状態を奥側から示す断面図である。
【0070】
図4Cに示すように、容器206は、野菜やペットボトルに充填された飲料、冷凍食品などを収容するための容器であり、上面が開口した樹脂製の箱体である。容器206は、下部の両端部に内方に向く段部262が形成されるように幅が狭い狭幅部261を備えている。そして容器206は、狭幅部261が2本のトップレール203の間に配置され、段部262が扉フレーム205の上面に載置されることで、トップレール203に支持される。
【0071】
また、容器206の底面となる狭幅部261は、レール装置202よりも上方に配置されて前後方向に移動可能に形成されている。
【0072】
このように、トップレール203が引出扉201の下部の両角に設けられているため、容器206の内、幅を狭くしなければならない狭幅部261をできる限り短く抑えること
が可能となる。従って、容器206は、収納容積ができる限り広くなるような形状を採用することが可能となる。
【0073】
図5は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫のレール装置と容器の配置を示した要部拡大図である。
【0074】
本実施の形態では、図5の(A)に示すように、容器206は、下部の両端部に内方に向く段部262が容器206の奥行き方向に形成されるように幅が狭い狭幅部261を備えるものとしたが、図5の(B)や図5の(C)に示すように、容器206の側面はほぼストレート形状とし、容器206は段部262を設けないで、レール装置202は、容器206の底部の左右両端の側方で支持したり(図5の(B)参照)、あるいは、容器206の底部の左右両端の下方で支持したり(図5の(C)参照)してもよい。なお、図5では、レール装置202と容器206の位置関係を示すものであって、扉フレーム205は、省略して図示していない。
【0075】
図5(A)のような場合、容器206の両側部に備えた段部262には、図4Aのように容器206と一体成形された突起部206b、206cがあり、容器206の前側部に形成された前側突起部206bと、容器206の後側部に形成された後側突起部206cとで形成されていて、これらの突起部は、扉フレームに形成された固定孔部205a、205bに挿入される。
【0076】
固定孔部205aは切欠き形状であってもよく、前側突起部206bを固定孔部205aに挿入して位置決めし、扉フレーム205の後方に形成した固定孔部205bに後側突起部206cを挿入する。
【0077】
図4Aや図6のように、後側突起部206cは扉フレーム205の後方に向かって下向き傾斜した形状にしておけば、固定孔部205bに挿入した状態から簡単に外れるのを防止することができる。
【0078】
特に上記のように、前側は容器206の前面フランジ部206aを引出扉201に固定した状態で、後側は後側突起部206cと扉フレーム205の固定孔部205bとを固定することで、引出扉201に対して下部に取り付けられているレール装置202と引出扉201との取付部の強度不足を補い、スムーズな引出扉の開閉を行うことが可能となる。
【0079】
つまり取付部にかかるモーメントが小さくなるためトップレール203の取付部またはレール固定部の取付部を破損から保護することが可能となる。つまり、本実施の形態では、第1固定手段301または/および第2固定手段304を設けた引出扉201に容器206の前面フランジ部206aを固定し、さらに容器206の後側突起部206cを扉フレーム205に設けた固定孔部205bに挿入固定することで、引っ張り力の支点となる位置を引出扉201よりも後方とすることができる。
【0080】
また図4Aに示すように、下部ケース300は容器206と容器206の上縁部に嵌め込まれたフレーム枠206aの2部品で形成されている。この構成について具体的に説明する。
【0081】
容器206は底部近傍の左右両端をレール装置202により支持され固定される。容器206は実収納容積の増加を図るため、容器206の側面と底面との角度がほぼ垂直に近づくように、金型をスライドさせて成型する射出成型によって形成されている。
【0082】
また、底面に対し、垂直に近い状態で形成された前後および左右の側面により形成し、
側面壁の上部に凹凸部が極力少なくなるように形成することで、凹凸部によって収納食品と側面壁との間に無効空間ができるのを防止し、実質的に収納容積が低下するのを防止することができる。
【0083】
また図4Dのように、容器206の上面開口周縁部206dにはフレーム枠206aが容器206とは別部品で構成されている。具体的には、上面開口周縁部206dにフレーム枠206aが上部から嵌め込み固定されている。この時、容器206の内壁面とフレーム枠206aとが段差を形成しないように、上面開口周縁部206dは、フレーム枠206aの断面厚み分だけ段差形状206fとなっていて、側面壁に凹凸ができないように形成されている。
【0084】
したがって、ケース300の容器206の下部を扉フレーム205で支持しても、容器206の側面壁や前後面壁の立ち上がり部分は、食品が収納されても上面開口部を剛性に優れたフレーム枠206aで形成しているので、食品を収納されてもケースの変形を抑制することができる。
【0085】
さらにフレーム枠206aの上面開口周縁部206dに対する左右両側部には、上部ケース208が前後に摺動する摺動部206eが形成されている。
【0086】
摺動部206eは溝形状に形成され、上部ケース208の底部の両側部に形成された摺動面部が摺動部206eを前後に移動することで、上部ケース208の前後移動を可能にしている。
【0087】
また容器206の成型材料としてはPP樹脂を使用し、フレーム枠206aにはPP樹脂よりも剛性や硬度が高いABS樹脂を使用している。このように上部ケース208が摺動し、また収納食品の出し入れ時に接触しやすいフレーム枠206aをPP樹脂よりも耐摩耗性、耐衝撃性に優れたABS樹脂を使用することで信頼性を確保でき、また底面部に凹凸形状を有する容器206を成形性の良い、また収納物による傷つきがしにくいPP樹脂で成型することで、表面の品質を確保することができる。
【0088】
またフレーム枠206aの硬度が高いので、前後方向でのたわみを低減し、上部ケース208が容器206の摺動部206eから脱落することを防止できる。また上部ケース208と接触するフレーム枠206aを耐衝撃性、耐摩耗性に優れたABS樹脂としたので信頼性を確保でき、また寸法安定性にも優れているので、ロットごとでの誤差が少なく上部ケース208との寸法精度を確保でき、摺動性を維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上のように、本願発明にかかる冷蔵庫は、広い実収納空間を確保することができるので、引き出し式の貯蔵室を備える冷蔵庫に利用可能であり、さらに、引き出しを備えたユニットキッチンなどにも展開が可能である。
【符号の説明】
【0090】
100 冷蔵庫
101 断熱箱体
108 仕切壁
110 内箱
111 断熱材
112 外箱
201 引出扉
202 レール装置
206 容器
211 内板
270、280 レール保持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内箱と外箱と前記内箱と前記外箱との間に充填した断熱材とよりなる断熱箱体と、前記断熱箱体の内方に形成される前面が開口する引出式の貯蔵室と、前記貯蔵室の前面開口を開閉自在に閉塞する引出扉と、前記断熱箱体の貯蔵室を区画する仕切壁と、固定レールと移動レールとを有し、前記固定レールと前記移動レールとを予め組み込んだ状態で前記内箱壁に固定し、前記引出扉と前記断熱箱体とを伸縮自在に接続するとともに前記貯蔵室の内部に備えたケースを前後に移動可能とするレール装置と、前記引出扉に固定され前記レール装置と接合されて前記ケースを保持する扉フレームとを備えた冷蔵庫において、前記ケースは食品を収納する容器と前記容器の上面開口周縁部に固定するフレーム枠とから形成され、前記容器と前記フレーム枠とは異なる樹脂材料で形成し、前記フレーム枠の方が前記容器よりも剛性に優れていることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記容器を構成する底面部と左右両側面部で、前記左右両側面部は前記底面部に対して略垂直面となった成形されていることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
ケースのフレーム枠に載置され、前後方向に移動可能な上部ケースを有し、前記フレーム枠に形成した摺動部を前記上部ケースが摺動することで前後移動可能にしたことを特徴とする請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記容器はPP樹脂で、前記フレーム枠はABS樹脂で成形されていることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−68382(P2013−68382A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208582(P2011−208582)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)