説明

冷陰極放電ランプ

【課題】 電極長が長い電極において、製造が容易で、かつ低コストな冷陰極放電ランプを提供する。
【解決手段】 本発明の冷陰極放電ランプは、内部に放電空間11が形成されたガラスバルブ1と、放電空間11に封入された放電媒体と、ガラスバルブ1の内部に設けられた電極32とを具備しており、電極32は、底部3211と側部3212を有するカップ部材321と軸方向長さが10mm以上である筒状部材322とで構成され、カップ部材321の側部3212と筒状部材322とが重ね合わせ接続されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶テレビやノートパソコンのバックライトの光源などに用いられる冷陰極放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、バックライトに用いられる光源は、冷陰極放電ランプが主流である。冷陰極放電ランプは、例えば、特許文献1に記載のように、ガラスバルブの内部に希ガスや水銀などの放電媒体が封入され、その内端部に一対のカップ状の電極が配置されてなる。
【0003】
このようなカップ状の電極は、トランスファー金型によるプレス加工や深絞り加工、特許文献2〜6に記載のように、カップの底部と側部を別々に作成し、溶接等により一体化することで成形することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−251496号公報
【特許文献2】特開2008−147129号公報
【特許文献3】特開2005−158539号公報
【特許文献4】特開2007−48527号公報
【特許文献5】特開平9−82275号公報
【特許文献6】特開2000−133201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、昨今、バックライトに使用するランプ本数の低減が要求されている。現行のバックライトの明るさを維持しつつ、使用本数を低減するには、ランプ一本あたりの発光光量を多くするしかない。そこで、最近ではランプの発光光量を多くするために、ランプに高電流が投入されるようになっている。ランプに高電流が投入されると電極のスパッタリングなどにより短寿命になるため、電流密度を下げて長寿命化すべく、電極長が10mmを越えるような従来よりも長い電極が設計される傾向がある。
【0006】
このような電極長が長い電極は、従来の加工方法では成形が困難である。成形できたとしても歩留まり低下やタクト上昇、設備投資などによりコストが高い傾向がある。そこで、特許文献2〜6のように底部と側部を別々に作成したのち一体化させて成形する方法を試みたが、この方法でもうまく製造できなかったり、電極マウントの軸に対して側部の軸が傾いて接続されたりするなどの不具合が生じている。
【0007】
本発明の目的は、電極長が長い電極において、製造が容易で、かつ低コストな冷陰極放電ランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の冷陰極放電ランプは、内部に放電空間が形成されたバルブと、前記放電空間に封入された放電媒体と、前記バルブの内部に設けられた電極とを具備する冷陰極放電ランプにおいて、前記電極は、底部と側部を有するカップ部材と軸方向長さが10mm以上である筒状部材とで構成され、前記カップ部材の前記側部と前記筒状部材とが重ね合わせ接続されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電極長が長い電極において、製造が容易で、かつ低コストな冷陰極放電ランプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態の冷陰極放電ランプについて説明するための全体図。
【図2】電極の一製造方法について説明するための図。
【図3】実施例と比較例と従来例の製造試験の結果について説明するための図。
【図4】本発明の第2の実施の形態の冷陰極放電ランプについて説明するための図。
【図5】本発明の第2の実施の形態の冷陰極放電ランプの変形例について説明するための図。
【図6】本発明の第3の実施の形態の冷陰極放電ランプについて説明するための図。
【図7】本発明の第4の実施の形態の冷陰極放電ランプについて説明するための図。
【図8】本発明の第5の実施の形態の冷陰極放電ランプについて説明するための図。
【図9】本発明の変形例について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態の冷陰極放電ランプについて図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態の冷陰極放電ランプについて説明するための図である。
【0012】
冷陰極放電ランプの容器は、軟質ガラスや硬質ガラスからなるガラスバルブ1で構成されている。ガラスバルブ1は両端部が密閉された細長い筒型の形状であり、その内部には放電空間11が形成されている。放電空間11には、水銀および希ガスからなる放電媒体が封入されている。希ガスとしてはネオンとアルゴンの混合ガスが用いられている。ガラスバルブ1の内面には、少なくともランプの光放出領域を覆う範囲にRGBの3波長蛍光体からなる蛍光体層2が形成されている。
【0013】
ガラスバルブ1の両端には、電極マウント3が封着されている。この電極マウント3は、インナーリード31、電極32、アウターリード33およびビーズ34とで構成されている。
【0014】
インナーリード31は、ガラスバルブ1の端部に封着され、その一端は放電空間11に、他端はガラスバルブ1の外部の空間に、管軸に沿うように導出されている。インナーリード31としては、ガラスバルブ1の熱膨張係数に近い材料を選択するのが望ましく、例えば、硬質ガラスの場合にはモリブデンやタングステン、コバール(ニッケルNi、鉄Fe、コバルトCoなどを含む合金)、軟質ガラスの場合には鉄−ニッケル合金などが好適である。
【0015】
電極32はカップ状であり、その開口がガラスバルブ1の中央側を向くように放電空間11の両側に一対配置されている。この電極32は、カップ部材321と筒状部材322の2パーツで構成されている。
【0016】
カップ部材321は、底部3211と側部3212を有する有底開口状の金属部材であり、その管軸方向長さAは0.5mm〜10mmである。底部3211は、厚みが、0.10mm〜0.50mmであり、インナーリード31と溶接により接続されている。側部3212は、厚みは、0.05mm〜0.3mmである。このようなカップ部材321は、例えばプレス加工や深絞り加工により成形することができる。また、カップ部材321としては、ニッケル、モリブデン、タングステン、ニオブ、レニウム、ニッケルを母材とした合金、鉄を母材とした合金などの耐スパッタ性に優れた材料や低コスト材料で構成するのが望ましい。
【0017】
筒状部材322は、円筒状の金属部材であり、軸方向長さBが非常に長いのが特徴的である。具体的には、内径が1.5mm〜4.0mmであるのに対して、軸方向長さBは10mm〜40mmであり、内径の6.67倍以上の長さである。なお、筒状部材322は厚みが0.1mm程度の金属薄板を、端部同士が一部重なるように丸める(重ね巻きする)ことで形成したものである。また、筒状部材322としては、カップ部材321と同様に、耐スパッタ性に優れた材料及び低コスト材料で構成するのが望ましい。
【0018】
電極32は、このカップ部材321の側部3212の外壁面と筒状部材322の内壁面とが重ね合わせ接続されることで一体化されている。これにより、電極マウント32の軸と筒状部材322の扁心を抑制することができる。また、このような軸方向長さの長い筒状部材322において、扁心を抑制するとともに、放電面積を広く確保するため、カップ部材321と筒状部材322の重ね合わせ長さは、0.5〜10mm、さらには1〜5mmに設定するのが望ましい。なお、両部材の接続はレーザー溶接により形成された溶接痕323により行われている。
【0019】
アウターリード33は、例えばジュメット(銅で被覆されたニッケル線)からなり、ランプ軸に沿って外部空間方向に延出するように、インナーリード31と接続されている。
【0020】
ビーズ34は、インナーリード31の軸部材に形成されたガラスバルブ1の熱膨張係数とほぼ同じ材料からなるガラス玉であり、ガラスバルブ1の両端部に気密封着されている。
【0021】
次に、電極32の製造方法について、図2を参照して説明する。
【0022】
まず、(a)のように、金属板を重ね巻きして筒状部材322を形成し、筒状部材322の開口にインナーリード31を接続したカップ部材321を挿入する。カップ部材321の側部3212の軸方向長さAが十分に長く、つまり重ね合わせ長さを十分に確保できるため、筒状部材322の軸方向長さBが長くても製造を容易に行うことができる。また、電極マウント3の軸に対する筒状部材322の偏心も抑制できる。なお、この工程では筒状部材322の内径R’をカップ部材321の直径Rよりも小さく設計することで、筒状部材322の内径を広げながらカップ部材321を挿入するようにするのが望ましい。これにより、カップ部材321の側壁面に筒状部材322の縮径方向の力が残留して圧接した形となるため、仮接続ができるとともに、両部材間に隙間を生じにくくすることができる。
【0023】
次に、(b)のように、カップ部材321と筒状部材322の重ね合わせ部分に、YAGレーザー照射装置4によりレーザーを照射して溶接痕323を形成し、両部材を接合する。このとき、十分な接合強度を得るため、溶接痕323の深さを両壁面を跨る程度に調整するのが望ましい。なお、溶接痕323の幅、深さ、角度、形状、場所、溶接個数などは、レーザーのスポット径、出力、焦点などを変更することにより調整可能である。
【0024】
その後、この重ね合わせ部分の周回りに、1〜5箇所レーザーを照射することで、(c)のように、カップ部材321と筒状部材322が一体化された電極32を形成することができる。
【0025】
下記に本実施の形態の冷陰極放電ランプの一実施例を示す。
【0026】
(実施例)
ガラスバルブ1;硼珪酸ガラス製、全長=730mm、外径=4.0mm、内径=3.0mm、
放電媒体;水銀、ネオン90%とアルゴン10%の混合ガス=40torr、
蛍光体層2;RGB蛍光体で構成、
インナーリード31;コバール製、直径=1.0mm、
カップ部材321;ニッケル製、底部3211の軸方向長さA=6mm、内径=1.9mm、外径=2.1mm、底部厚み=0.20mm、
筒状部材322;ニッケル製、軸方向長さB=25mm、厚み=0.1mm、
アウターリード33;ジュメット製。
【0027】
この実施例の電極を有する電極マウントと、一の金属材料から形成した従来の電極を有する電極マウント(比較例)と、円盤状の底部部材に筒状部材を重ね合わせ接続した従来の電極を有する電極マウント(従来例)について、製造試験を行った。その結果を図3に示す。なお、何れも底部の厚みや全長は同じ長さに設定している。
【0028】
結果からわかるように、歩留まりは実施例と比較例は良いが、従来例は悪い。従来例の歩留まりが悪いのは、溶接範囲が狭いために溶接不良が発生しやすいため、および溶接できても扁心しやすいためである。一方、コストは実施例と従来例は安いが、比較例は高い。比較例のコストが高いのは、電極の軸方向長さが長くなるとプレス加工や深絞り加工では製造が難しくなるためである。以上から、実施例が最も製造が容易で、かつ安価であることがわかる。
【0029】
したがって、本実施の形態では、電極32を底部3211と側部3212を有するカップ部材321と軸方向長さが10mm以上である筒状部材322とで構成し、カップ部材321の側部3212と筒状部材322とを重ね合わせ接合したことにより、電極長が長い電極であっても製造が容易で、かつコストが安い冷陰極放電ランプを提供することができる。
【0030】
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の第2の実施の形態の冷陰極放電ランプについて説明するための図である。これ以降の実施の形態の各部については、第1の実施の形態の各部と同一部分は同一符号で示し、その説明を省略する。
【0031】
第2の実施の形態では、筒状部材322に絞り部3221を形成し、その絞り部3221とカップ部材321を重ね合わせ接続している。このように絞り部3221を形成することで、第1の実施の形態よりも扁心しにくくすることができる。また、ガラスバルブ1の内径に対して外径が小さいカップ部材321を用いる場合でも、放電面積を広く確保しつつ、両部材の接続が可能となる。なお、絞り部3221は、カップ部材321と重ね合わせさせる前にあらかじめ形成しておいてもよいし、カップ部材321に位置を重ね合わせさせた後に形成するようにしてもよい。
【0032】
また、図5のように、カップ部材321にも絞り部3213を形成し、その絞り部3213と筒状部材322の絞り部3221とを重ね合わせ接続してもよい。
【0033】
(第3の実施の形態)
図6は、本発明の第3の実施の形態の冷陰極放電ランプについて説明するための図である。
【0034】
第3の実施の形態では、カップ部材321の側部3212の内壁面と接触するように、筒状部材322を重ね合わせ接続している。この構造であると、筒状部材322の外壁面とカップ部材321の内壁面とを接触させやすくすることができるため、第1の実施の形態よりも扁心しにくくすることができる。
【0035】
(第4の実施の形態)
図7は、本発明の第4の実施の形態の冷陰極放電ランプについて説明するための図である。
【0036】
第4の実施の形態では、カップ部材321を開口がガラスバルブ1の端部側を向くように配置してインナーリード31と接続している。この構造であると、筒状部材322の放電しない部分に溶接を行うことになる。つまり、溶接により貫通等しても問題とならないため、溶接を行いやすくすることができると共に、ランプの有効発光長を伸ばすことが可能となる。
【0037】
(第5の実施の形態)
図8は、本発明の第5の実施の形態の冷陰極放電ランプについて説明するための図である。
【0038】
第5の実施の形態では、電極32の底部側から、筒状部材322の軸方向長さBに対して1/2の寸法までの側壁に、電極32の内側と外側に連通する直径が0.1mm〜1.0mm程度の貫通穴324を設けている。本発明のような軸方向長さが長い電極32では、点灯中に電極32の内底部付近にまで水銀蒸気が入り込みにくくなり、スパッタリングしやすくなるという懸念があるが、このように穴を設けることで貫通穴324を通って電極32の内底部付近に水銀蒸気が供給されるため、スパッタリング等の発生を抑制することができる。なお、貫通穴324は数が多いほど有効である。また、貫通穴324の位置は、電極32の底部に近いほど有効であるので、電極32の底部から筒状部材322の軸方向長さBに対して1/4、さらには1/8であると高い効果が望まれる。
【0039】
以上、本発明の実施の形態をいくつか説明したが、本発明は上記に限られるわけではなく、例えば次のように変更してもよい。
【0040】
カップ部材321も、別々に作成された底部と側部を接続して一体形成してもよい。また、カップ部材321とインナーリード31は一体形成されたものであってもよい。
【0041】
筒状部材322は、図8(a)のように、カップ部材321の側部3212の全体と重ね合わせる必要はないし、図8(b)のように、ビーズ34付近にまで側部3212を延出させてもよい。
【0042】
筒状部材322を重ね巻きにより形成した場合には、その重なり部分に溶接痕323を形成してもよい。これにより、一回のレーザー照射で、カップ部材321と筒状部材322の接合および筒状部材322の重ね巻き部分の開き防止を行うことができる。
【0043】
また、筒状部材322は、端部同士が重ならない円筒巻き形状であってもよい。ただし、この場合には金属板の端部同士間による隙間をできるだけ小さくするのが望ましい。また、筒状部材322は、つなぎ目が存在しない円筒であってもよい。
【0044】
また、カップ部材321と筒状部材322は、それぞれ別の材料で構成してもよい。また、それらの部材の接続は、抵抗溶接、かしめなどの方法で行ってもよい。カップ電極321と筒状部材322に、互いに嵌合する凸部、凹部を形成し、嵌合接続してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 ガラスバルブ
11 放電空間
2 蛍光体層
3 電極マウント
31 インナーリード
32 電極
321 カップ部材
3211 底部
3212 側部
322 筒状部材
323 溶接痕
33 アウターリード
34 ビーズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に放電空間が形成されたバルブと、前記放電空間に封入された放電媒体と、前記バルブの内部に設けられた電極とを具備する冷陰極放電ランプにおいて、
前記電極は、底部と側部を有するカップ部材と、軸方向長さが10mm以上である筒状部材とで構成され、前記カップ部材の前記側部と前記筒状部材とが重ね合わせ接続されてなることを特徴とする冷陰極放電ランプ。
【請求項2】
前記筒状部材は、絞り部が形成されており、前記絞り部と前記カップ部材の前記側部とが重ね合わせ接続されてなることを特徴とする請求項1に記載の冷陰極放電ランプ。
【請求項3】
前記電極の底部側から、前記筒状部材の軸方向長さに対して1/2の寸法までの側壁に、貫通穴を1個以上設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載する冷陰極放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−65778(P2011−65778A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213415(P2009−213415)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】