説明

冷陰極放電管用電極及び冷陰極放電管

【課題】ニッケル以外の希少金属(例えば、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、クロム(Cr)、等)を実質的に用いることなく、耐スパッタ性と深絞り加工性とを両立できる冷陰極放電管用電極を提供する。
【解決手段】含有量17.0質量%以上23.0質量%以下の鉄(Fe)を含有し、残部がニッケル(Ni)及び不可避的不純物である合金を用いてなる冷陰極放電管用電極21,22である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷陰極放電管用電極及び冷陰極放電管に関する。
【背景技術】
【0002】
冷陰極放電管は、例えば、表示装置(例えば、液晶表示装置等)用バックライト等、各種の光源として用いられている。
冷陰極放電管は、一般に、気密に封止されたガラス管と、ガラス管の内部空間内の両端部に配置された一対の電極(冷陰極放電管用電極)と、を有し、前記内部空間にアルゴン(Ar)やネオン(Ne)等の不活性ガス及び水銀(Hg)が封入されて構成される。
【0003】
冷陰極放電管を用いた光の放出では、まず、一対の電極間に電圧が印加されることにより、一方の電極から電子が放出され、放出された電子が水銀(Hg)原子に衝突し、紫外線が発生する。発生した紫外線は、ガラス管内の壁面に塗布された蛍光体を励起し、励起された蛍光体から可視光線(光)が発生する。このようにして生じた可視光線(光)が、ガラス管外に放出される。従って、冷陰極放電管の寿命は、水銀の有効量に大きく影響される。
【0004】
従来、冷陰極放電管に備えられる電極の材質としては、純ニッケル(Ni)が一般的であった。
純ニッケル製の電極を用いた場合、電極にアルゴン等の不活性ガスが衝突することにより、ニッケル原子がガラス管内に飛散する。この現象はスパッタと呼ばれている。スパッタにより飛散したニッケル原子は、水銀原子と結合してアマルガムを形成するため、水銀原子の有効量が減少する。水銀原子の有効量が減少することにより、紫外線の放射量が減少するため、冷陰極放電管から照射される可視光線の輝度が低下する。このようにして冷陰極放電管は寿命に至る。
以上のように、純ニッケル製の電極ではスパッタが起こりやすく、該電極を用いた冷陰極放電管は寿命が短い傾向がある。
【0005】
そこで、近年では、電極の耐スパッタ性(スパッタが低減される性質)を向上し、冷陰極放電管を長寿命化するために、冷陰極放電管用電極の材料として、純ニッケルに代えて、ニッケル及びニッケル以外の元素からなるニッケル合金を用いることが検討されている。
ニッケル合金を用いた冷陰極放電管用電極として、具体的には、鉄−モリブデン−ニッケル合金を用いた電極(例えば、特許文献1参照)、モリブデン−ニッケル合金を用いた電極(例えば、特許文献2参照)、ニオブ−ニッケル合金を用いた電極(例えば、特許文献3参照)、バナジウム−モリブデン−ニッケル合金を用いた電極(例えば、特許文献4参照)、チタン、ジルコニウム、又はハフニウムを含むニッケル合金を用いた電極(例えば、特許文献5参照)、ニッケル又はクロムを3.0〜8.0mass%含み残部が鉄及び不可避不純物からなる鉄(Fe)合金を用いた電極(例えば、特許文献6参照)、などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4394748号公報
【特許文献2】特許第4168983号公報
【特許文献3】特許第4091508号公報
【特許文献4】特開2007−220669号公報
【特許文献5】特開2006−228615号公報
【特許文献6】特開2009−37920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ニッケル合金を用いた電極の組成を耐スパッタ性に優れた組成(例えば、ニッケル以外の元素が比較的多い組成)とした場合、深絞り加工性が悪化することがある。一方、ニッケル合金を用いた電極の組成を深絞り加工性に優れた組成(例えば、ニッケル以外の元素が比較的少ない組成)とした場合、耐スパッタ性が悪化することがある。
更に、電極の材料コスト低減の観点より、ニッケル合金中に含有させる、ニッケル以外の希少金属(例えば、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、クロム(Cr)、等)の使用量を抑える要求がある。
この点に関し、特許文献6に記載の鉄(Fe)合金は、上記要求を満たし、かつ耐スパッタ性にも優れるものの、鉄の含有量が非常に多いため(鉄の含有量は90質量%以上と考えられる)、深絞り加工性に劣る。
また、特許文献1に記載の鉄−モリブデン−ニッケル合金を用いた電極については、材料コストの観点から、ニッケル以外の希少金属であるモリブデンの量を更に抑えることが望まれているが、当該合金の組成からモリブデンの量を更に減らすと耐スパッタ性が悪化する傾向がある。
【0008】
従って、本発明は、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、ニッケル以外の希少金属(例えば、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、クロム(Cr)、等)を実質的に用いることなく、耐スパッタ性と深絞り加工性とを両立できる冷陰極放電管用電極を提供することである。
また、本発明の目的は、前記冷陰極放電管用電極を備え、安価で長寿命な冷陰極放電管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための具体的手段は以下のとおりである。
<1> 含有量17.0質量%以上23.0質量%以下の鉄(Fe)を含有し、残部がニッケル(Ni)及び不可避的不純物である合金を用いてなる冷陰極放電管用電極である。
<2> 含有量17.5質量%以上23.0質量%以下の鉄(Fe)を含有し、残部がニッケル(Ni)及び不可避的不純物である合金を用いてなる冷陰極放電管用電極である。
<3> 含有量19.0質量%以上23.0質量%以下の鉄(Fe)を含有し、残部がニッケル(Ni)及び不可避的不純物である合金を用いてなる冷陰極放電管用電極である。
<4> 前記合金中におけるニッケル(Ni)の含有量が76.5質量%以上である<1>〜<3>のいずれか1つに記載の冷陰極放電管用電極である。
<5> <1>〜<4>のいずれか1つに記載の冷陰極放電管用電極を備えた冷陰極放電管である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ニッケル以外の希少金属(例えば、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、クロム(Cr)、等)を実質的に用いることなく、耐スパッタ性と深絞り加工性とを両立できる冷陰極放電管用電極を提供することができる。
また、本発明によれば、前記冷陰極放電管用電極を備え、安価で長寿命な冷陰極放電管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の冷陰極放電管の一例を示す模式断面図である。
【図2】本発明の冷陰極放電管用電極の一例及びリード線を示す模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<冷陰極放電管用電極>
本発明の冷陰極放電管用電極は、含有量17.0質量%以上23.0質量%以下の鉄(Fe)を含有し、残部がニッケル(Ni)及び不可避的不純物である合金を用いてなる。
本発明の冷陰極放電管用電極は、上記構成としたことにより、ニッケル以外の希少金属(例えば、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、クロム(Cr)、等)を実質的に用いることなく、耐スパッタ性と深絞り加工性とを両立できる。
【0013】
従来は、ニッケルを用いた冷陰極放電管用電極の耐スパッタ性を向上させるために、ニッケル中に、ニッケル以外の希少金属(例えば、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、クロム(Cr)、等)を添加することが考案されていた。
本発明者は、ニッケル中に、特定の量の鉄を添加することにより、耐スパッタ性を向上できるだけでなく、深絞り加工性をも維持できるとの知見を得、この知見に基づき本発明を完成した。
【0014】
また、本発明では、合金中に17.0質量%以上23.0質量%以下の鉄を含有させることにより、ニッケル以外の希少金属を実質的に用いることなく、耐スパッタ性と深絞り加工性とを両立できる。
このため、ニッケル以外の希少金属を含有するニッケル合金を用いる場合と比較して、材料コストを低減できる。
さらに、純ニッケルを用いる場合と比較しても、希少金属であるニッケルの含有量を減少させることができるため、材料コストを低減できる。
【0015】
前記合金中における鉄の含有量が17.0質量%未満であると、耐スパッタ性が悪化する傾向(即ち、スパッタが顕著になる傾向)がある。
耐スパッタ性をより向上させる観点からは、前記鉄の含有量は、17.5質量%以上23.0質量%以下であることが好ましく、19.0質量%以上23.0質量%以下であることがより好ましい。
【0016】
一方、前記合金中における鉄の含有量が23.0質量%を超えると、深絞り加工性が悪化する傾向がある。
深絞り加工性をより向上させる観点からは、前記鉄の含有量は、17.0質量%以上22.5質量%以下であることが好ましく、17.0質量%以上21.0質量%以下であることがより好ましい。
【0017】
耐スパッタ性と深絞り加工性とを、より高い次元で両立させる観点からは、前記鉄の含有量は、17.5質量%以上22.5質量%以下であることが好ましく、19.0質量%以上21.0質量%以下であることがより好ましい。
【0018】
また、本発明の冷陰極放電管用電極は、ニッケルを主成分として構成されるため、延性及び展性に優れており、深絞り加工性に優れる(即ち、純ニッケル電極の有する優れた深絞り加工性が維持される)。
ここで、「深絞り加工性に優れる」とは、前記合金を冷陰極放電管用電極の形状(例えばカップ形状)に深絞り加工する際、破裂や損傷等の加工不良が抑制されている性質を指す。
深絞り加工性をより向上させる観点より、前記合金中におけるニッケルの含有量は、76.5質量%以上が好ましく、77.0質量%以上がより好ましく、78.5質量%以上が特に好ましい。
ニッケル含有量の上限は、耐スパッタ性向上の観点から、82.5質量%が好ましい。
【0019】
本発明における合金は、ニッケル及び鉄以外に不可避的不純物を含む。
ここで、不可避的不純物とは、合金の製造工程において不可避的に混入される不純物を指す。
前記不可避的不純物としては、例えば、炭素、酸素、窒素、硫黄、マンガン、ケイ素、クロム、コバルト、アルミニウム、等が挙げられる。
本発明における合金中における不可避的不純物の含有量は、2.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましい。
【0020】
本発明における合金は、公知の方法により製造できる。
例えば、ニッケル及び鉄の各単体(粉末状でも塊状でもよい)を真空溶解炉に投入して金属溶湯を作製し、作製された金属溶湯を用いて真空鋳造によりインゴットとすることで、インゴットの形態の合金を製造できる。更に、前記インゴットを熱間圧延し、圧延板材を作製し、冷間圧延と熱処理とを繰り返し行い、板状の形態の合金とすることもできる。
【0021】
本発明の冷陰極放電管用電極は、例えば、上記板状の形態の合金を、公知の深絞り加工により、カップ形状に加工することで作製される。
前記合金はニッケルを主成分として構成されるため、展性や延性に優れており、深絞り加工により容易にカップ形状に加工される(即ち、深絞り加工性に優れる)。
本発明の冷陰極放電管用電極の大きさには特に限定はない。
例えば、従来、カップ形状の冷陰極放電管用電極は、カップ径2.1mm程度、カップ長さ5mm程度の大きさであったが、近年は、光度向上(電流増大)の観点よりカップ径2.7mm以上4.0mm以下、カップ長さ10mm以上20mm以下の大きさが検討されている。
本発明は、上記従来の大きさの冷陰極放電管用電極から上記近年の大きさの冷陰極放電管用電極まで、特に制限なく適用できる。
【0022】
<冷陰極放電管>
本発明の冷陰極放電管は、既述の本発明の冷陰極放電管用電極を備えて構成される。
本発明の冷陰極放電管は、耐スパッタ性に優れた本発明の冷陰極放電管用電極を備えるため、長寿命である。更に、ニッケルの一部を、より一般的で安価な金属である鉄に置き換えているため、純ニッケルと比較しても材料コストが低減される(即ち、安価である)。
【0023】
図1は、本発明の一例である、液晶表示装置用バックライトとしての冷陰極放電管の一例を示す概略断面図である。
図1に示すように、本発明の冷陰極放電管の一例である冷陰極放電管100は、ガラス管10と、ガラス管10の両端部を封止する封止ガラス11及び12と、を有している。ガラス管10と、封止ガラス11及び12と、により内部空間16が画定されている。
前記ガラス管10の外径は、例えば、2.5mm以上6.0mm以下の範囲内、好ましくは3.0mm以上6.0mm以下の範囲内である。ガラス管10の材質としては、例えば、硼・珪酸ガラス、鉛ガラス、ソーダガラス、低鉛ガラス等が用いられる。
前記内部空間16には、アルゴン、キセノン、ネオン等の希ガスおよび水銀が封入されており、内部圧力は大気圧の数十分の一程度に減圧されている。
【0024】
前記ガラス管10の内壁14には、図示しない蛍光体層が設けられている。
前記蛍光体層を構成する蛍光体は、ハロリン酸塩蛍光体や希土類蛍光体などの蛍光体から、目的や用途に応じて適宜選択される。前記蛍光体層は、2種類以上の蛍光体を含んでいてもよい。
【0025】
本発明の冷陰極放電管用電極の一例である、冷陰極放電管用電極21及び冷陰極放電管用電極22は、前記内部空間16内のガラス管10両端部に配置されている。
冷陰極放電管用電極21及び冷陰極放電管用電極22はいずれもカップ形状である。
冷陰極放電管用電極21及び冷陰極放電管用電極22は、冷陰極放電管用電極21の開口部17と、冷陰極放電管用電極22の開口部18と、が対向する向きに配置されている。
冷陰極放電管用電極21の底面部23(詳しくは、該底面部23の封止ガラス11側の表面)には、リード線31の一端が接続されている。リード線31は、封止ガラス11を貫通してガラス管10の外部に至り、他端側で不図示の電源部に接続されている。
同様に、冷陰極放電管用電極22の底面部24(詳しくは、該底面部24の封止ガラス12側の表面)には、リード線32の一端が接続されている。リード線32は、封止ガラス12を貫通してガラス管10の外部に至り、他端側で不図示の電源部に接続されている。
冷陰極放電管用電極21及び冷陰極放電管用電極22の詳細な形態は、既述の「冷陰極放電管用電極」の項で説明したとおりであり、好ましい範囲も既述のとおりである。
リード線31及び32は、例えば、コバール等の導電性材料により構成される。または、コバールからなる外周部と銅又は銅合金からなる内部とを有する2層構造のリード線などであってもよい。
【0026】
図2は、図1中の冷陰極放電管用電極21及びリード線31を拡大して表した斜視図である。図1中の冷陰極放電管用電極22及びリード線32も同様の構成である。
冷陰極放電管用電極21の形状は、円筒形状の一端が底面部23により閉塞された、カップ形状である。冷陰極放電管用電極21は、合金板をカップ形状に深絞り加工して作製される。リード線31は、一方の端面が冷陰極放電管用電極21の底面部23の外側に、例えば溶接により接続されている。
【0027】
図1に示した冷陰極放電管100による光の放出では、まず、冷陰極放電管用電極21と冷陰極放電管用電極22との間に電圧が印加されることにより、一方の電極から電子が放出され、放出された電子が内部空間16内の水銀(Hg)原子に衝突し、紫外線が発生する。発生した紫外線は、ガラス管10内の内壁14に設けられた蛍光体層を励起し、励起された蛍光体から可視光線(光)が発生する。このようにして生じた可視光線(光)が、ガラス管10外に放出される。
冷陰極放電管用電極21及び冷陰極放電管用電極22は、本発明における合金を用いたものであるため耐スパッタ性に優れている。
従って、冷陰極放電管100は、経時による輝度の低下が抑制されており、長寿命である。
【0028】
以上、本発明の冷陰極放電管用電極及び冷陰極放電管の一例を、図1及び図2を用いて説明したが、本発明は上記一例に限定されることはなく、公知の冷陰極放電管用電極及び冷陰極放電管の構成を広く適用することができる。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0030】
〔実施例1〕
<冷陰極放電管用電極(試料1)の作製及び評価>
ニッケル及び鉄を真空溶解炉に投入して金属溶湯を作製し、真空鋳造によりインゴットを作製した。
得られたインゴットを熱間圧延し、圧延板材を作製した。
得られた圧延板材に対し、冷間圧延と熱処理とを繰り返し行い、板厚0.2mm、ビッカース硬度147Hvの板状の合金材を作製した。
得られた板状の合金材を用いて組成分析用の試験片を作製し、ICP発光分光分析法及び赤外線吸収法(JIS Z2616)により組成分析を行ったところ、下記表1に示す値であった。
【0031】
次に、上記で得られた板状の合金材を、板幅18.4mmのコイル材にスリット加工した。
得られたコイル材を、順送金型及びトランスファー金型を用いて深絞り加工し、カップ径3.6mm×カップ長さ15mmのカップ形状の冷陰極放電管用電極(試料1)を得た。
【0032】
(耐スパッタ性の評価)
上記冷陰極放電管用電極(試料1)と同組成の試験片(5mm×10mm×10mm)を作製し、日立製作所製IML−250により、加速電圧500V、加速電流210mA、減速電圧250V、入射角度45°、入射ガスAr、及び真空度2.7×10−4Paの条件にてスパッタ試験を行い、1分間当たりのスパッタ量を測定した。
別途、純Niの試験片(5mm×10mm×10mm)を作製し、得られた純Niの試験片についても上記と同様のスパッタ試験を行った。
合金のスパッタ量と純Niのスパッタ量との相対比較を行い、下記評価基準に従って評価した。
評価結果を下記表1に示す。
【0033】
−耐スパッタ性の評価基準−
◎ … 純Niのスパッタ量を100%とした場合、スパッタ量が60%未満
○ … 純Niのスパッタ量を100%とした場合、スパッタ量が60%以上75%未満
△ … 純Niのスパッタ量を100%とした場合、スパッタ量が75%以上90%未満
× … 純Niのスパッタ量を100%とした場合、スパッタ量が90%以上
【0034】
(深絞り加工性の評価)
上記冷陰極放電管用電極(試料1)の作製と同様の深絞り加工により、冷陰極放電管用電極を10000個作製し、作製数(深絞り加工数)10000個中、破裂や損傷が発生したものの個数を確認し、下記評価基準に従って評価した。
評価結果を下記表1に示す。
【0035】
−深絞り加工性の評価基準−
◎ … 深絞り加工数10000個中、破裂や損傷の発生 0個
○ … 深絞り加工数10000個中、破裂や損傷の発生 1個以上50個以下
△ … 深絞り加工数10000個中、破裂や損傷の発生 51個以上300個以下
× … 深絞り加工数10000個中、破裂や損傷の発生 301個以上
【0036】
<冷陰極放電管用電極(試料2〜試料15)の作製及び評価>
真空溶解炉に投入するニッケル及び鉄の組成を種々変化させたこと以外は試料1と同様にして冷陰極放電管用電極(試料2〜試料15)を作製し、試料1と同様の組成分析及び評価を行った。
組成分析の結果及び評価結果を下記表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
表1に示すように、含有量17.0質量%以上23.0質量%以下の鉄(Fe)を含有し、残部がニッケル(Ni)及び不可避的不純物である合金を用いて作製された冷陰極放電管用電極(試料5〜試料11)では、ニッケル以外の希少金属(例えば、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、クロム(Cr)、等)を実質的に用いることなく、耐スパッタ性及び深絞り加工性を両立できた。
このような耐スパッタ性及び深絞り加工性に優れた冷陰極放電管用電極(試料5〜試料11)を、図1及び図2中の冷陰極放電管用電極21、22として用いることで、安価で長寿命な冷陰極放電管100を作製することができる。
【符号の説明】
【0039】
10 ガラス管
11、12 封止ガラス
14 ガラス管の内壁
16 内部空間
21、22 冷陰極放電管用電極
31、32 リード線
100 冷陰極放電管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含有量17.0質量%以上23.0質量%以下の鉄(Fe)を含有し、残部がニッケル(Ni)及び不可避的不純物である合金を用いてなる冷陰極放電管用電極。
【請求項2】
含有量17.5質量%以上23.0質量%以下の鉄(Fe)を含有し、残部がニッケル(Ni)及び不可避的不純物である合金を用いてなる冷陰極放電管用電極。
【請求項3】
含有量19.0質量%以上23.0質量%以下の鉄(Fe)を含有し、残部がニッケル(Ni)及び不可避的不純物である合金を用いてなる冷陰極放電管用電極。
【請求項4】
前記合金中におけるニッケル(Ni)の含有量が76.5質量%以上である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の冷陰極放電管用電極。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の冷陰極放電管用電極を備えた冷陰極放電管。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−238397(P2011−238397A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107311(P2010−107311)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【特許番号】特許第4531125号(P4531125)
【特許公報発行日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(500413250)クリーン電工株式会社 (2)
【Fターム(参考)】