説明

冷陰極蛍光ランプの製造方法

【課題】 製造が容易で、かつ初期の輝度が高い冷陰極蛍光ランプの製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の冷陰極蛍光ランプの製造方法は、内部に放電空間11が形成されたガラスバルブ1と、放電空間11に封入された放電媒体と、ガラスバルブ1の内面に形成された蛍光体層2と、放電空間11に配置された電極31とを具備し、電極31の外周面に近接する蛍光体層2上に金属層5が形成された冷陰極蛍光ランプの製造方法において、ガラスバルブ1の外側から高周波加熱コイル65で電極31を加熱し、電極31の外周面に形成された被膜4をスパッタさせることにより、金属層5を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶テレビやパーソナルコンピュータなどのバックライトに用いられる冷陰極蛍光ランプを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、バックライトには冷陰極蛍光ランプが使用されている。冷陰極蛍光ランプは、希ガスや水銀などの放電媒体が封入されるとともに、内面に蛍光体層が形成されたガラスバルブ内部に電極が配置されて構成されている。
【0003】
冷陰極蛍光ランプは、バックライト内部などの暗黒空間に長時間放置された場合の始動特性、いわゆる暗黒始動特性が悪いという欠点がある。これは、暗黒空間では、放電開始に必要な初期電子が供給されないことが原因である。そこで、暗黒始動特性を改善すべく、特許文献1〜5のように、電極付近のガラスバルブの内表面または蛍光体層上に金属層を形成した発明が提案されている。その金属層の形成には、エージングによるスパッタや塗布などの方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−36813号公報
【特許文献2】特開2005−235649号公報
【特許文献3】特開2001−76617号公報
【特許文献4】特開2006−114293号公報
【特許文献5】特開平9−326246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エージングによるスパッタによって金属層を形成する方法では、スパッタさせるために長時間、高電流を流す必要があるため、初期の輝度が低下するという問題がある。一方、塗布によって金属層を形成する方法では、作業性、位置関係の調整に難がある等の問題がある。
【0006】
本発明の目的は、製造が容易で、かつ初期の輝度が高い冷陰極蛍光ランプの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の冷陰極蛍光ランプの製造方法は、内部に放電空間が形成されたガラスバルブと、前記放電空間に封入された放電媒体と、前記ガラスバルブの内面に形成された蛍光体層と、前記放電空間に配置された電極とを具備し、前記電極の外周面に近接する前記蛍光体層上に金属層が形成された冷陰極蛍光ランプの製造方法において、前記ガラスバルブの外側から金属加熱手段で前記電極を加熱し、前記電極の外周面に形成された被膜をスパッタさせることにより、前記金属層を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、容易に製造でき、かつ初期の輝度が高い冷陰極蛍光ランプの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(第1の実施の形態)
以下に、本発明の実施の形態の冷陰極蛍光ランプについて図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態の冷陰極蛍光ランプについて説明するための断面図である。
【0010】
本実施の形態の冷陰極蛍光ランプは、例えば硼珪酸ガラスなどの硬質ガラスからなるガラスバルブ1により放電容器が形成されている。ガラスバルブ1の内部には放電空間11が形成されており、放電空間11にはネオンNeとアルゴンArの混合ガスからなる希ガスと水銀Hgが封入されている。また、ガラスバルブ1の内面には、例えばRGBの3波長蛍光体からなる蛍光体層2が形成されている。
【0011】
ガラスバルブ1の両端部には、電極マウント3が封着されている。電極マウント3は、電極31、インナーリード32、アウターリード33及びビーズガラス34で構成されている。
【0012】
電極31は、先端側、すなわちガラスバルブ1の管軸方向中央側に開口、後端側に底を有するカップ状であり、互いの開口が対向するように放電空間11の両端に一対配置される。その際、ガラスバルブ1の内周面との隙間をdとしたとき、d≦0.30mm、好適にはd≦0.20mm(下限は接触しない程度)とし、グロー放電を電極31の内表面で発生させるようにするのが望ましい。なお、電極材料としては、ニッケル、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、チタン、レニウムから選択された一種の金属、焼結体、又はそれらを主体とする合金を使用することができる。インナーリード32は、例えばモリブデンやコバール(鉄、ニッケル、コバルトの合金)からなり、一端は電極31に接合され、他端はガラスバルブ1を介して外部に導出される。アウターリード33は、例えば、ジュメット線(銅で被覆された鉄+ニッケル合金線)からなり、一端がインナーリード32と接合される。ビーズガラス34は、インナーリード32の外周面に形成され、ガラスバルブ1の端部に封着される。したがって、ガラスバルブ1と同じ材料からなることが望ましい。
【0013】
そして、電極31の外周面には被膜4、蛍光体層2上には金属層5が形成されている。この被膜4および金属層5について、図2、図3を参照してさらに詳しく説明する。図2は、図1の一点鎖線で示したX部分の拡大図、図3は、図1の二点鎖線で示したY−Y’部分の断面図である。
【0014】
被膜4は、電極31の先端側の外周面に全周にわたって形成された膜である。その材料としては、電子放出性に優れたセシウムの化合物、亜鉛、アルミニウムまたはジルコニウムの酸化物などを用いることができる。金属層5は、被膜4をスパッタさせることにより形成された層である。そのため、被膜4が形成された電極31の外周面に近接する蛍光体層2上、すなわち電極31の外周面と対面する範囲付近の蛍光体層2上に形成される。また、金属層5は、主に被膜4を構成する材料によって構成される。
【0015】
なお、金属層5は、電極31の先端よりもガラスバルブ1の管軸方向中央側に突出形成されるのが望ましい。暗黒中でも100msec以内で始動させることができ、暗黒始動時間が数百msec程度である突出形成していない場合よりも、格段に暗黒始動特性を改善することができるためである。ただし、突出させすぎると、非発光長が長くなるというデメリットがある。したがって、金属層5の形成範囲は、電極31の先端と金属層5との距離をLとしたとき、0<L≦1.0mmであるのが望ましい。金属層5をこのような形成範囲にするには、被膜4の電極31外周面上の形成位置を調整すればよく、電極31の先端と被膜4との距離をDとしたとき、0≦D≦0.5mmになるように設定すればよい。
【0016】
ここで、本発明の冷陰極蛍光ランプの製造方法、特に金属層5の形成方法について図4、図5を参照して説明する。
【0017】
まず、ガラスバルブ1を縦に配置して、塗布などの方法で被膜4を電極31の外周面に形成した電極マウント3を、図4(a)のようにガラスバルブ1の一端に封着する。次に、ガラスバルブ1の開口側から、アウターリード3の後端側に膨出部331、電極31の外周面に被膜4が形成された電極マウント3を電極間距離が所望の位置になるようにガラスバルブ1内に配置したのち、径大部331付近のガラスバルブ1をバーナー61で加熱して縮径部1aを形成し、(b)のように径大部331を縮径部1aで支持させる。また、縮径部1aよりも上側に縮径部1bを形成し、水銀ディスペンサー7を開口側から入れて、(c)のように水銀ディスペンサー7を縮径部1bで支持させる。そして、ガラスバルブ1の開口端に脱ガス・ガス導入装置8を設置し、(d)のように放電空間11の脱ガスおよびアルゴン−ネオンの混合ガスを導入する。その後、(e)のように縮径部1bよりも上側をバーナー63で加熱し、(f)のようにガラスバルブ1の他端にチッピング部1cを形成して、仮の封止を行う。
【0018】
次に、図5(a)のように水銀ディスペンサー7を高周波加熱コイル64によって加熱し、水銀をガラスバルブ1内に拡散したのち、(b)のように被膜4の形成付近の電極31を高周波加熱コイル65(金属加熱手段)によって加熱する。この被膜4の加熱工程では、電極31の温度が被膜4の融点にまで上昇すると、一点鎖線Zの拡大図に示したように、被膜4がスパッタすることにより、対面する蛍光体層2上付近に金属層5を形成することができる。ここで、金属加熱手段とは、ガラスを介しても主に金属のみを加熱可能な手段である。
【0019】
その後、ビーズガラス34付近のガラスバルブ1の部分1dを(c)のようにバーナー66で加熱して、(d)のようにガラスバルブ1の他端側も封止し、最後に残余の部分を取り除くことで、(e)のように冷陰極蛍光ランプを実現することができる。
【0020】
下記に本発明の冷陰極蛍光ランプの実施例の一仕様を示す。
【0021】
ガラスバルブ1;硼珪酸ガラス、内径=2.0mm、外径=3.0mm、全長=約200mm、隙間d=0.15mm、
放電媒体;ネオンNe+アルゴンAr=60torr、水銀Hg、
蛍光体層2;3波長蛍光体、
ビーズガラス34;硼珪酸ガラス、
電極31;ニッケル、カップ状、外径=1.7mm、内径=1.5mm、
インナーリード32;モリブデン、直径=0.8mm、
アウターリード33;ジュメット、直径=0.6mm。
【0022】
ビーズガラス34;硼珪酸ガラス、
被膜4;硫酸セシウム(CsSO)、軸方向形成長=3.0mm、距離D=0mm、
金属層5;図5(b)の方法により形成、軸方向形成長=3.2mm、突出長L=0.1mm。
【0023】
高周波加熱によって金属層を形成したのち、通常のエージング(8mA、30分)を経た本実施例のランプと、特許文献1に記載のようなエージング(20mA、30分)によって金属層を形成した従来のランプとで輝度を比較する試験を行った。その結果、本実施例のランプの輝度を100%としたとき、従来のランプの輝度は98%前後であることがわかった。従来の方法は、高電流のエージングによって電極に形成した被膜をスパッタさせて金属層を得る方法であり、そのエージングによって希ガス、水銀の消耗、蛍光体の劣化が発生したことが、従来の方法の所期輝度の低下の原因と考えられる。
【0024】
また、蛍光体層の内面に直接、金属層を塗布する従来の方法では、内径が小さいガラスバルブでは金属層を形成することが難しく、また電極に対する金属層の形成位置や電極間距離を好適な関係に調整するのが難しい等の問題がある。これに対し、本実施例の方法は、金属層の形成および位置関係の調整も容易である。
【0025】
したがって、本実施の形態では、ガラスバルブ1の外側から高周波加熱コイル65によって電極31を加熱し、電極31の外周面に形成された被膜4をスパッタさせることにより、金属層5を形成することにより、金属層5を容易に形成することできるとともに、長時間高電流を流すエージング工程も必要がないため初期の輝度が高い冷陰極蛍光ランプを実現することができる。
【0026】
また、電極31の先端と被膜4との距離をDとしたとき、0≦D≦0.5mmとなるように被膜4を電極31の外周面に形成し、被膜4を電極31の先端よりもガラスバルブ1の管軸方向中央側にスパッタさせることで、電極31の先端と金属層5との距離をLとしたとき、0<L≦1.0mmとなるように金属層5を蛍光体層2上に形成することができるため、暗黒始動特性に優れ、かつ無効発光長が短い冷陰極蛍光ランプを実現することができる。
【0027】
なお、本発明の実施の形態は上記に限られるわけではなく、例えば次のように変更してもよい。
【0028】
被膜4は、金属層5を形成する上では必要だが、冷陰極蛍光ランプにおいては必ずしも必要ない。すなわち、図6のように完成したランプにおいては、電極31の外表面に存在していなくてもよい。このようなランプは、例えば、高周波加熱コイル65で電極41を加熱して被膜4をスパッタさせる工程で、電極31を長時間、高温で加熱し、被膜4を全てスパッタさせることで実現することができる。
【0029】
また、被膜4を金属加熱手段によってスパッタさせて金属層5を形成するタイミングは、図5の(b)のタイミングに限らず、図4(d)の放電空間11の脱ガス後であればどのタイミングでもよく、例えば希ガス導入前や水銀拡散前であってもよい。
【0030】
金属層5は、図7のように、少なくとも一部、特に電極31の先端付近の金属層5が蛍光体層2上に形成されていればよく、残部はガラスバルブ1上に形成されていてもよい。また、金属層5は、図3のように全周に形成する必要はなく、図7のように全周のうち一部であってもよい。
【0031】
また、金属層5は、両方の電極31付近に形成する必要はなく、片方のみでもよい。ただし、片方のみに形成する場合には、高圧側となる電極31側に金属層5を形成するのが望ましい。
【0032】
金属加熱手段としては、高周波加熱コイルに限らず、YAGレーザーやCOレーザーなどを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施の形態の冷陰極蛍光ランプについて説明するための断面図。
【図2】図1の一点鎖線で示したX部分の拡大図。
【図3】図1の二点鎖線で示したY−Y’部分の断面図。
【図4】本発明の冷陰極蛍光ランプの製造方法について説明するための図。
【図5】本発明の冷陰極蛍光ランプの製造方法について説明するための図。
【図6】本発明の冷陰極蛍光ランプの第1の変形例について説明するための図。
【図7】本発明の冷陰極蛍光ランプの第2の変形例について説明するための図。
【図8】本発明の冷陰極蛍光ランプの第3の変形例について説明するための図。
【符号の説明】
【0034】
1 ガラスバルブ
11 放電空間
2 蛍光体層
3 電極マウント
31 電極
32 インナーリード
33 アウターリード
34 ガラスビーズ
4 被膜
5 金属層
65 高周波加熱コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に放電空間が形成されたガラスバルブと、前記放電空間に封入された放電媒体と、前記ガラスバルブの内面に形成された蛍光体層と、前記放電空間に配置された電極とを具備し、前記電極の外周面に近接する前記蛍光体層上に金属層が形成された冷陰極蛍光ランプの製造方法において、
前記ガラスバルブの外側から金属加熱手段で前記電極を加熱し、前記電極の外周面に形成された被膜をスパッタさせることにより、前記金属層を形成することを特徴とする冷陰極蛍光ランプの製造方法。
【請求項2】
前記金属加熱手段は高周波加熱コイルであることを特徴とする請求項1に記載の冷陰極蛍光ランプの製造方法。
【請求項3】
先端から0.5mm以内の前記電極の外周面に前記被膜を形成し、前記被膜を前記電極の先端よりも前記ガラスバルブの管軸方向中央側にスパッタさせることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷陰極蛍光ランプの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate