説明

凹凸状電子式文字表示装置

【課題】視覚障害者の生活を支援する道具として、小型で手軽に知覚できる表示装置が求められていることから、装置内部に設けたCPUをプログラムにより、即座に日付や文字を凹凸状の形状文字に表現し表示することができ、視覚障害者への文章情報、時刻情報の提供や信頼性の高い電子式文字表示装置(時計、はんこ)を提供する。
【解決手段】時刻等の日付情報を計時する時計機能部の情報または自ら備えた入力部や外部入力装置からの入力文字情報を受けて人工筋肉のオン、オフ電流情報に変換し、人工筋肉の稼動、静止状況を凹凸の文字情報に表現する。凹凸の数字情報は、人工筋肉の7つのセグメントで1文字を表現し、複雑な文字はマトリックス状の点を用いた集合体で表現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視覚障害者に、文字、数値情報を人工筋肉を用いて接触によって伝達するための表示システムに関するものである。また、視覚障害者用電子印鑑として、受付日時を種々の紙類に日時、氏名等を印字する人口筋肉による電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の視覚障害者用の表示装置は、文字の拡大表示や音声表示が多く、点字表示に関してもPCと接続した点字ディスプレイや卓上の電子接触式皮膚感覚提示装置が開発されたり(特許文献1)はしているが、入力が直ちに点字に変換されて認識できる小型の装置はない。時計では通常の指針時計の表面カバーを取って指針を直接接触感知するもの、あるいは電子式にて時刻を音声によって表現するシステムである。また、電子式表示装置や印鑑としてはコンピューター上で画面に文字、時刻を表示するもの、電子文書に印鑑を押すものが実用化されているが、これは健常者用で視覚障害者にとっては利用できるものではない。また、日時等を表示する一般の印鑑はゴムベルトの一面に形成された数字を自らスライド移動して横一列に数字を並べる方式での印字装置である。こうした日付、時刻印字の場合、リアルタイムでの確認印鑑が必要な時は即時の対応は困難であり、特に視覚障害者の対応は困難である。こうした点での改善ではこれまでほとんど実例はなく、視覚障害者にとっては社会参加の障害にもなっている。なお、印鑑においては感熱式のセグメントを活用して電子的に時刻表示して、感熱紙に表示したりインキを感熱セグメントのみに供給するシステム(特許文献7)が考えられているが実用化には至っていない。これは主として装置の大きさ、耐久性、メンテナンス上の問題があり、視覚障害者の利用に適さないことや、手軽に使用できない欠点があった。
【0003】
なお、既に言及した文献を含め、視覚障害者用表示装置に関する文献の例としては特許文献1及び非特許文献2が挙げられる。また、電子式印鑑表示装置に関する文献の例としては特許文献2〜5及び非特許文献2が挙げられる。また、人工筋肉に関する文献の例としては特許文献6〜9が挙げられる。
【特許文献1】特開2003−248540
【特許文献2】特開2000−238397
【特許文献3】特開平5−62041
【特許文献4】特開平8−104047
【特許文献5】特開平8−132719
【特許文献6】特開2001−170884
【特許文献7】特開平8−182698
【特許文献8】特開平11−169394
【特許文献7】特開2000−504951
【非特許文献1】視覚障害者用表示装置に関して:論文「皮膚感覚利用機械に関する調査研究」笠井洋
【非特許文献2】人工筋肉に関して:「人工筋肉」1998年 三宅仁編著 ISBN4−906364−24−1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
視覚障害者の生活を支援する道具としては、小型で手軽で指の感覚で知覚できる機能が不可欠である。本発明では、第1に身近な道具としての時計や印鑑でのリアルタイムでの時刻情報を表示する機能を改善して携帯の用に供する装置として実現した。小型で省電力の装置として文字、数字をリアルタイム性をもって凹凸表現する方法は、従来、歯車、モーター、などの機械部品を多数使用した複雑な構造となり、携帯できるほどの小型・省電力性は実現できていない。また、指で接触感知する場合は、故障、耐久性から稼動部分に抵抗を与えることも問題となり、これらの解決が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために成された本発明に係る電子式文字表示装置は、時刻等の日付情報を計時する時計機能部の情報または自ら備えた入力部や外部入力装置からの入力文字情報を受けて人工筋肉のオン、オフ電流情報に変換し、人工筋肉の稼動、静止状況を凹凸の文字情報に表現することを特徴としている。
【0006】

凹凸型表示は、電極を付加することにより伸縮する機能素材(人工筋肉)を応用し、マイクロコンピュータで電極のON−OFFを制御する。電気が通電していないOFF時はセグメントが伸びた状態で表現され、文字を形成するすべてのセグメントが凸になっている。通電されてONになるとセグメントは収縮して凹状態となり、セグメントの凹凸が表現される。こうした人工筋肉を用いた電極端子で凹凸を機能させるセグメントによって指で知覚できる数字、文字を表現できるようにした。このセグメントをマトリックス状の点を用いた集合体で編成し、各電極のON−OFFをマイクロコンピュータで制御すれば、すべての文字、数字他のパターンを凹凸表現することができる。また、8つのセグメントでは簡易な数字が表現することができる。
【発明の効果】
【0007】
このセグメントのマトリックスは触感で認識できることから、視覚障害者への情報伝達手段として用いることができる。電子式表示に用いるマイクロクロックの出力を4ケタのセグメントに接続すればリアルタイムの時刻が表現できる。また、スタンプインクパッド等を用いて小型化すれば、リアルタイムの時刻印鑑として使用できる。電子式制御で省力起動することにより、視覚障害者が携帯できる時計、文字、数値等の伝達手段、表示装置として使用できる。さらに、リアルタイムの時刻表示付き印鑑も指の知覚確認が可能な道具として使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の電子式接触時計表示装置の電気系統のブロック図である。同図において、例えば1チップマイクロコンピュータからなる中央処理装置(1)は、全体を制御するもので、時計用IC(2)からの時計データを表示部(3)に送ることができるが、例えば押ボタン型のスイッチ(4)がオン操作されると、計時データに基づき通電を制御し、セグメントを作動させてその時の時刻を表現する。
【0009】
図2は、接触時計表示装置により表現される図形を示す。この例では、日付表示と時刻表示を表す可変文字を例示してある。従って、可変文字は年月日を表す日付表示のための6桁の数字と「時」と「分」とを表す時刻表示のための4桁の数字とにより形成されている。年月日の表示が不要の場合は4ケタの数字のみでよい。
各数字は、7個の人工筋肉セグメントで構成されており、時計用IC(図1の(2))からの情報を受けて、日付情報を人工筋肉セグメントの電極にオン、オフ情報として伝達する。7個の人工筋肉セグメントのオン情報を受けたセグメントが縮むことより凹となり、オフの凸部分が数字を形成して表示する。
【0010】
図3は、固定文字または可変文字を表現する人工筋肉セグメントの縦断面構図のイメージ図を示す。電極に通電されると収縮する構造となり、ヘッドの部分が下がることにより、隣接セグメントとの間で凹凸ができる。この凹凸が組み合わされて数字が表現される。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明は、以下のような形で利用することが可能である。
【0012】
数字を表すために必要な7個のセグメントとマイクロコンピュータとIC時計を組み合わせて年月日時分を凹凸で表示する電子時計を実現する。
【0013】
凹凸で表示した電子時計をスタンプとした時計ハンコを実現する。
凹凸表現を時計に応用して実現したものが視覚障害者用時計であるが、この時刻の凹凸を印鑑の印字部に応用したものが電子式日付表示印鑑である。凹凸により表現された数字にインクや朱肉をつけて押せば印字が可能となる。この場合はリアルタイムの日付、時間印字が可能となり時間管理を必要とする確認印等は時刻の変更を実施することなく、自動的に変更してくれることから確認時間の間違いや訂正のミスがなくなり、確実な時間確認印が実施できる。
【0014】
以上の電子時計や電子ハンコの利用事例を応用して、セグメントを複数個マトリックス状のポイント群に編成すれば、視覚障害者のための点字表示機器が実現できる。文字データを事前に文章として準備し、この点字表示機に送れば文字データが点字に変換されて表示できる。
【0015】
また、点字表示機器と図書電子データを組み合わせることにより、視覚障害者のための電子文庫や電子図書館が実現できる。
【0016】
以上のように、本発明によれば、主として視覚障害者用の表示装置としてすべての文字、数字が点字表現に変換が可能となる。このため、視覚障害者への伝達に特別な展示作成装置が不要となり、現在普及しているあらゆる機具、道具への組み込みにより、視覚障害者の利用や普及が大幅に改善される。また、電子文字データが視覚障害者に伝達可能となり、現在普及しつつある電子手帳、電子辞書、電子ブックが視覚障害者が利用できるようになる。さらに、電子図書館としてデータ化された図書館が通常の健常者と同じように利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の電子式接触時計表示装置の電気系統のブロック図。
【図2】接触時計表示装置により表現される図形を示す図。
【図3】固定文字または可変文字を表示する人工筋肉セグメントの縦断面構図のイメージ図。
【符号の説明】
【0018】
(1)制御部CPU
(2)時計機能部
(3)セグメント
(4)スタートボタン
(A)ゴム等
(B)人工筋肉
(C)電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻等の日付情報を計時する時計機能部の情報または自ら備えた入力部や外部入力装置からの入力文字情報を受けて人工筋肉のオン、オフ電流情報に変換し、人工筋肉の稼動、静止状況を凹凸の文字情報に表現する電子式文字表示装置。
【請求項2】
請求項1において、前記文字情報は数字を含み、その数字はそれぞれ人工筋肉を備える7個のセグメントで各数字を構成し、表示したい数字に応じたパターンで各人工筋肉で駆動することによりその数字を表示することを特徴とする電子式文字表示装置。
【請求項3】
請求項1において、数字以外の文字は、マトリックス状の点(ドット)の集合体によって構成されたセグメント群を表示文字数に対応して配置することを特徴とする電子式文字表示装置。
【請求項4】
請求項1において、文字のセグメント及びドットは人工筋肉のオン、オフによって凹凸による接触感知が可能な電子式文字表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−3528(P2006−3528A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178326(P2004−178326)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(302006382)株式会社 地域環境システム研究所 (1)
【出願人】(504232491)