説明

出隅部保護材

【課題】 クロスが貼られていて粘着テープなどの使用が困難な出隅部であっても、これに傷を付けることなく効果的に保護でき、取り付けや取り外しが簡単である出隅部保護材を提供する。
【解決手段】 長尺で長手方向に沿って折曲した添設部11と、該添設部11の少なくとも一方の端部に形成された開脚部12a,12bとを備えた出隅部保護材10である。これに複数の貫通孔13を穿孔することにより、これを長期設置した場合でも、出隅部Dと保護材10との間に湿気がこもらないようにでき、出隅部Dにカビが発生しにくい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の出隅部を保護するための出隅部保護材に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物には、壁面が突き出るように折曲した出隅部が多く存在し、そのうち建築物内の出隅部には、建築業者などの運搬物や携帯物がぶつかりやすく、傷つきやすい。特に、建築物の内壁にクロスが貼られた後に、例えば内装業者がその携帯物などを出隅部にぶつけて傷つけてしまうと、クロスの貼り直しが必要となる場合が多く、工期、コストなどの面から問題である。
そこで従来は、合板などを適当な大きさにカットし、それを出隅部の前に立て掛けるなどして仮置し、出隅部を保護していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、クロス貼りが終了し建築物の完成が近づいた工期の終盤で、合板などの大物を建築物内に持ち込むことは、廃棄物の増加につながるため好ましくない。また、各種養生材を使用する方法も考えられるが、その場合には、粘着テープで養生材を出隅部に固定せざるを得ず、粘着テープの貼着跡やクロスの損傷などを考慮すると、クロスが貼られた後の出隅部にこの方法を適用することは不適切であった。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、クロスが貼られていて粘着テープなどの使用が困難な出隅部であっても、これに傷を付けることなく効果的に保護でき、取り付けや取り外しが簡単である出隅部保護材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の出隅部保護材は、長尺で長手方向に沿って折曲した添設部と、該添設部の少なくとも一方の端部に形成された開脚部とを備えたことを特徴とする。
この出隅部保護材には、複数の貫通孔が穿孔されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の出隅部保護材によれば、クロスが貼られ粘着テープの貼着が困難な出隅部であっても、これに傷を付けることなく効果的に保護でき、取り付けや取り外しが簡単である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態例である出隅部保護材(以下、保護材という。)10が、出隅部Dの前方に配置され、この出隅部Dを保護している状態を示すものである。
この保護材10は、長尺で長手方向に沿って折曲した形状を有し、出隅部Dに添ってこれを保護する樹脂製の添設部11と、この添設部11の一方の端部に形成され、この保護材10を支持する開脚部12a,12bとを備えて構成されている。図中符号14は粘着テープであり、開脚部12a,12bをそれぞれ床面Yに固定している。また、この例の保護材10においては、一方の面から他方の面に貫通する多数の貫通孔13が穿孔されている。
【0008】
この例の保護材10は、例えば図2(a)に示すような、断面L字状の長尺物20に切り込みを入れるとともに、折曲することにより形成できる。この長尺物20は、多数の貫通孔13が穿孔された厚さ(d)0.5〜1.5mm、幅(wおよびw’)30〜100mmの2つの板状体21,22が境界線23を介して連続した、長さ(l)1.6mのPET押出成形品である。
具体的には、この長尺物20における境界線23を、図2(b)に示すように、一方の端部から例えば10cm程度切り込んで切り込み部24を形成し、2つの板状体21,22を部分的に分断する。
ついで、図2(c)に示すように、この分断により形成された2片21a,22aを、それぞれ図示のように前方に折り曲げる。
その結果、このように折り曲げられた部分が開脚部12a,12bとなり、この開脚部12a,12bに連続して断面L字状の添設部11が形成された、図1に示す保護材10が得られる。なお、ここで2片21a,22aを折り曲げやすいように、あらかじめ折り曲げ箇所に沿う溝を形成するなどの加工を施しておいてもよい。
【0009】
このような保護材10によれば、添設部11の一方の端部に、これを支持する開脚部12a,12bが形成されているので、図1に示すように、この保護材10を出隅部Dの前方の床面Y上に、添設部11を出隅部Dに添えるように設置するだけで、出隅部Dを保護できる。よって、添設部11と出隅部Dとを粘着テープで固定するなど、他の固定手段を使用する必要がなく、保護材11の取り付け作業が実質的に不要である。また、保護材10の取り外しも同様に不要であり、その際出隅部Dに粘着テープの貼着跡を残したり、クロスを損傷するなどの不都合も生じない。なお、床面Yには、通常、内装材は施工されていないので、その場合には、必要に応じて、図1に示すように、開脚部12a,12bを床面Yに粘着テープ14で固定することが好ましい。
【0010】
また、この例で開脚部12a,12bは、図2に示したように、樹脂からなる板状体21,22の下端がそれぞれ折り曲げて形成されたものであるので、図1中αで示す角度(押え角)が大きくなる方向に作用する力、すなわち反発力を有している。その結果、この保護材10を図1のように配置した場合、添設部11が出隅部Dにより近づくような力が作用し、保護材10を配置している間中、確実に出隅部Dに添い、これを保護することができる。さらに、例えば図3に示すように、出隅部D’の下端に巾木Hが形成されていて、出隅部D’において巾木Hの形成されている部分と、それ以外の部分とに若干の段差がある場合でも、このような反発力により、添設部11がそのような段差を吸収するように、下方から上方にむけて徐々に出隅部D’に接近するように添い、これを保護することができる。また、例えば、このような段差が比較的大きく、上述の反発力をより大きく作用させたい場合には、通常、略90°とされる図1中βで示す角度(開き角)を若干小さく90°未満とした状態で開脚部12a,12bを粘着テープ14で固定するなどして、反発力が大きくなるように調整することもできる。
【0011】
また、このように保護材10が樹脂製であると、軽量で運搬しやすく作業性に優れるうえ、破損しにくく、繰り返し使用することもできる。また、この保護材10を運搬する際には、開脚部12a,12bを容易に閉じて図2(b)のようなコンパクトな形態にすることができる。一方、作業者がこれを使用する際には、現場で開脚部12a,12bを広げるだけでよいので、使用性にも優れている。
【0012】
この保護材10を形成する樹脂としては特に制限はなく、PVC、ABS、PP、PEなど、PET以外の樹脂を使用してもよい。また、保護材10は、断面L字状の押出成形品から製造されたものに限定されず、例えば、樹脂製平板を加工して製造されたものであってもよい。
さらに、保護材10の厚さは、この保護材10が自立性を備え、添設部11が出隅部Dに添ってこれを保護可能である限り制限はないが、0.5〜1.5mm程度の厚さであれば、加工性に優れるうえ自立性も備え、さらには上述の反発力も発現でき好ましい。
なお、この保護材10は樹脂以外の材料から形成されてもよく、例えば段ボール紙から形成されてもよい。
【0013】
また、この例の保護材10には、一方の面から他方の面に貫通する貫通孔13が複数形成されているので、この保護材10を、例えば1ケ月以上の長期にわたって出隅部Dの前方に配置しておく場合でも、保護材10と出隅部Dとの間に湿気がこもることなく、添設箇所におけるカビの発生などを防ぐこともできる。貫通孔13の大きさ、形状、形成密度などに制限はなく、使用環境などに応じて適宜設定できる。
【0014】
保護材10の長さには制限はなく、保護対象である出隅部Dに応じて適宜設定できるが、出隅部Dのうち物品などがぶつかって傷つきやすいのは、一般に高さ1.5m程度までである。よって、通常は、添設部11の長さが1.5m程度となるようにこれを形成すればよい。また、図4に示すように、高さが例えば3m程度である出隅部D”を全長にわたって保護する必要がある場合には、2つの保護材10を組み合わせて使用することもできる。その場合には、一方の保護材10の開脚部12a,12bを床面Yに粘着テープ14で固定し、2つの保護材12a,12bを粘着テープ14で連結することにより、それぞれの添設部11が確実に出隅部D”に添うように配置することが好ましい。
【0015】
また、以上の例においては、図2に示すように、2つの板状体21,22の幅wおよび幅w’が同じである長尺物20を使用して、この保護材10を形成しているが、2つの板状体の幅wと幅w’とが異なる長尺物20から形成してもよく、保護材10を配置する出隅部の形状などに応じて設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一例である保護材を、出隅部Dの前方に配置した状態を示す斜視図である。
【図2】図1で使用された保護材の製造方法を示す斜視図である。
【図3】図1で使用された保護材を他の出隅部D’の前方に配置した状態を示す斜視図である。
【図4】図1で使用された保護材を2つ使用して、他の出隅部D”を保護している状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0017】
10 出隅部保護材
11 添設部
12a,12b 開脚部
13 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺で長手方向に沿って折曲した添設部と、該添設部の少なくとも一方の端部に形成された開脚部とを備えたことを特徴とする出隅部保護材。
【請求項2】
複数の貫通孔が穿孔されていることを特徴とする請求項1に記載の出隅部保護材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−52585(P2006−52585A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235158(P2004−235158)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)