説明

分与器用カバー解放機構

【課題】ハンドフリー分与器カバーの開動作に適した構造の提示。
【解決手段】分与器はカバーを包含し、このカバーは背面に枢動可能に取り付けられて、分与器を再充填することができる開き位置と分与器を作動せしめることができる閉じ位置との間を動くようにされている。前記カバーはラッチを包含し、このラッチは前記背板に保持したキャッチャに係合する。前記背板に取り付けた細長い棒が、前記ラッチに係合し、前記ラッチを前記キャッチャから外して前記カバーを前記開き位置に動かすことができるようにするために設けられている。前記細長い棒はヨークを包含し、このヨークは分与器の分与区域の外側で接近可能な左側終末端及び右側終末端にまで延びている。本発明は、特に、分与区域に使用者の手が存在することを検知するセンサを用いている分与器に適用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には分与器に関し、より詳細には分与器用カバー解放機構に関する。本発明は、特に“ハンドフリー”型の壁掛け分与器に有益であるものであり、このような“ハンドフリー”型の壁掛け分与器は、使用者が分与器の一部分を人為的に操作することにより分与するものではなくて、分与装置を作動せしめるセンサを有している。
【背景技術】
【0002】
本発明は、特に当分野においていろいろと知られている壁掛け分与器に関する。一般に、壁掛け分与器は背板とカバーとを包含し、カバーは開くことができ、これにより、分与しようとする所望した材料を入れている交換自在なカートリッジ又は再充填パッケージを分与器が収納することができるようにしている。これらの分与器は、レストラン、劇場などの便所、公衆便所、食物調理場所、病院などの場所における多少永久的な装置である。幾つかの具体例においては、カバーはヒンジを介して背板に枢動可能に取り付けられ、これにより、カバーは分与器を作動せしめて材料を分与することができる閉じ位置から又は分与器を点検又は再充填することができる開き位置から枢動することができる。米国特許第6,877,642号明細書に示されているような具体例において、カバーはラッチング機構を介して閉じ位置に保持されている。より詳細には、カバーにより担持したラッチが背板により担持したキャッチャに係合し、そして、背板により担持した細長い棒がラッチに係合してラッチをキャッチャから外すように動くことができ、これにより、分与器を開くことができる。細長い棒には、分与器の中央底部で接近可能である。
【0003】
これらのラッチング機構は、“ハンドフリー”型の分与器に組み込まれたときには問題があることがわかっている。より詳細には、ハンドフリー型の分与器は、使用者の手がひとつ又はそれ以上のセンサにより分与区域にあることが検知されたときに、製品を分与する。これは、非常に評判のよいものである。なぜなら、分与器を各使用者が使用するのに、分与器のいかなる部分も人為的に操作しなくてもよいからである。もっと正確にいえば、各使用者は簡単に自分の手を分与区域に差し出すだけでよく、分与器はその手をセンサにより検知することにより製品を分与せしめる。従来技術において、ラッチをキャッチャから外すために用いられている細長い棒は分与区域に配設されている。したがって、この構成はハンドフリー型の分与器に組み入れることはできない。なぜなら、各使用者が分与区域にある細長い棒を操作して分与器を開こうと試みたときに、分与器が製品を分与してしまうからである。
【0004】
したがって、当分野においては、分与区域に使用者が操作する要素を有していない壁掛け分与器のカバー部分のための解放機構が必要とされている。そして、多くの壁掛け分与器の分与区域はほぼ中央に配設されているので、当分野においては、分与器を開くための機構にはほぼ中央に配設されている分与区域の左側又は右側で接近可能である必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、分与器を開くために従来技術では提供されていない特徴を有する壁掛け分与器を提供することにある。本発明は特にハンドフリー型の壁掛け分与器に有益であるけれども、本発明の実施はこれに限定されるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一般に、本発明は、壁掛け分与器において、分与器を壁構体に備え付けるために取り付けられている背板を包含する壁掛け分与器を提供する。前記背板は、この背板の頂部に近接するキャッチャを有する。カバーが前記背板の底部に近接して前記背板に枢動可能に取り付けられて、分与器を再充填することができる開き位置と分与器を作動せしめることができる閉じ位置との間を動くようにされている。前記カバーは、前記閉じ位置で前記キャッチャに係合してこのキャッチャとの係合により前記カバーを前記閉じ位置に保持する働きをするラッチを包含する。また、細長い棒が前記背板に取り付けられていると共にラッチ解放端及びこのラッチ解放端と反対側のヨーク端を有する。前記細長い棒は、偏倚されて前記ラッチ解放端が前記ラッチに近接して前記カバーに載っていると共に、前記ラッチ解放端が前記ラッチから離れる方向へ偏倚されている。更に、ヨークが前記細長い棒の前記ヨーク端から前記カバーの左側穴で接近可能な左側終末端及び前記カバーの右側穴で接近可能な右側終末端にまで延びている。前記左側終末端又は前記右側端終末端を押すことにより、前記細長い棒をその偏倚力に抗して動かし、前記ラッチ解放端を前記キャッチャに接触せしめて前記ラッチを前記キャッチャから外し、これにより前記カバーをその開き位置に動かすことができる。
【0007】
特別の実施例において、前記壁掛け分与器は、更に、分与出口とハンドフリー分与センサとを包含し、前記ハンドフリー分与センサが、前記分与出口の近くの物体の存在を検知することにより、分与器の人為的操作を必要することなしに製品の分与を行う。前記ハンドフリー分与センサは、このセンサが前記ヨークの前記左側終末端又は前記右側終末端を押す物体の存在を検知することがないように配設されている。
【0008】
他の実施例によれば、本発明は、分与器において、分与区域と、この分与区域を取り囲む検知区域を有する、少なくともひとつのセンサとを包含し、前記少なくともひとつのセンサが前記検知区域で物体の存在を検知したときには、分与器が前記分与区域で製品を分与する分与器を提供する。前記分与器は、更に、背板とカバーとを包含し、前記背板はキャッチャを有し、前記カバーは前記背板に枢動可能に取り付けられて、分与器を再充填することができる開き位置と分与器を作動せしめることができる閉じ位置との間を動くようにされ、かつ前記カバーは前記閉じ位置で前記キャッチャに係合してこのキャッチャとの係合により前記カバーを前記閉じ位置に保持する働きをするラッチを包含する。また、細長い棒が前記背板に取り付けられていると共にラッチ解放端を有する。前記細長い棒は、偏倚されて前記ラッチ解放端が前記ラッチに近接して前記カバーに載っていると共に、前記ラッチ解放端が前記ラッチから離れる方向へ偏倚されている。更に、ヨークが前記細長い棒の前記ヨーク端から前記カバーの左側穴で接近可能な左側終末端及び前記カバーの右側穴で接近可能な右側終末端にまで延びている。前記ヨークの前記左側終末端及び前記右側終末端は、前記検知区域の外側に配設され、前記左側終末端又は前記右側端終末端を押すことにより、前記細長い棒をその偏倚力に抗して動かし、前記ラッチ解放端を前記キャッチャに接触せしめて前記ラッチを前記キャッチャから外し、これにより前記カバーをその開き位置に動かすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
最初に図1−図4を参照するに、本発明による壁掛け分与器は符号10により示されている。分与器10は背板12を包含し、背板12は壁掛け分与器において一般的に知られているように壁構体に掛けることができるようにされている。カバー14は、背板12の底部縁に接近するヒンジ16を介して背板12に枢動可能に取り付けられている。カバー14は、図1及び図5に示されている閉じ位置と、図3に示されている開き位置との間を枢動することができる。閉じ位置においては、カバー14と関連させられてカバー14の頂部縁22に設けられているラッチ20が、背板12と関連させられているキャッチャ24に係合し、これにより、分与器10を閉じて使用準備の状態に維持する。
【0010】
図5及び図6を参照するに、ラッチ20は、カバー14が背板12上に閉じられたときにキャッチャ24を受け入れる穴21を包含することを見ることができる。更に、ラッチ20は、カバー14が背板12上に閉じられたときにキャッチャ20の傾斜表面25上に乗ることを認識すべきである。これは、キャッチャ24が穴21に整列してラッチ20が適所にスナップ係合するまで、ラッチ20をその通常の休止位置の外へ付勢せしめる。例えば保守点検又は再充填のためにカバー14を開き位置に動かすためには、ラッチ20とキャッチャ24とを非係合にしなければならない。この目的のために、従来技術においては、分与器の背板の底部縁の中央部で接近可能な細長い棒が設けられている。しかし、センサが分与器の中央底部縁に使用者の手が存在することを検知するために設けられている現在のハンドフリー分与技術の場合では、このような従来技術の細長い棒は実用的ではない。なぜなら、分与器のカバーを開くために使用者の手が中央に設けられている細長い棒へ接近すると、センサがこの使用者の手の存在を検知してしまい、分与器がそのカバーを開くことを試みた使用者の手に又は床上に製品を分与してしまい、どちらの場合であっても散らかった無駄な製品を生じてしまうからである。
【0011】
従来技術がハンドフリー分与器の技術において直面するこのような厄介な問題を解決していないことを考えると、本発明は恐らく最も適当であって、ハンドフリー分与器に最大に有益に適用可能であろう。しかしながら、本発明はここに開示した構成が他の型式の分与器においても有益であるとわかっているので、ハンドフリー分与器への適用に限定されるものではない。
【0012】
しかして、本発明の好適な実施例によれば、分与器10はベース広がり部29の分与区域28(図2)に近接するひとつ又はそれ以上のハンドフリー分与器用センサ26を担持し、分与区域28はカバー14若しくは背板12又はここに示しているように両方を欠いた広がり部から形成することができる。センサ26は、分与区域28に使用者の手が存在することを検知し、分与器の人為的操作の必要なしに、分与区域28で製品を分与せしめることを生じせしめる。
【0013】
次に図3−図6を参照するに、細長い棒30は、例えばガイドスリーブ18により背板12に担持され、矢印Aにより示されるように垂直に動くことができる。より詳細には、細長い棒30は、この細長い棒30から背板12のアームガイド36,38を通して斜めに延びている弾性アーム32,34により、矢印Bの方向へ下向きに動くように偏倚されている。そして、細長い棒30は、この細長い棒30のヨーク端46に枢動可能に取り付けられているヨーク44の左側終末端40又は右側終末端42を上向きに押すことにより、弾性アーム32,34の偏倚力に抗して矢印Cの方向へ上向きに動くことができる。
【0014】
特に図5及び図6を参照するに、矢印C方向へ動いた細長い棒30は、この細長い棒30のラッチ解放端48をラッチ20の一部分に接触させることを生じせしめ、細長い棒30の矢印Cの方向への更なる動きは、したがって、ラッチ20を付勢してキャッチャ24から離し、これによりカバー14の開きを可能にすることを見ることができよう。他の構成を用いることができるけれども、本実施例においては、ラッチ解放端48がラッチ20のラッチ延長部50に係合し、ラッチ20の穴21を付勢してキャッチャ24から離す。
【0015】
図7に見られるように、もし細長い棒30が上向きに動かされた場合には、弾性アーム32,34はアームガイド36,38によって動きを規制されて異常な形状に変形させられ、それから、細長い棒30を上向きに動かす力が取り除かれたときには、弾性アーム32,34は図4に示されている、それらの正常の形状に戻ることを認識されよう。また、図7に示されているように、左側終末端40及び右側終末端42の一方が上向きに動かされたときには、左側終末端40及び右側終末端42の他方はヨーク44の上向き動きのための支持体又は支点として働く。より詳細には、左側終末端40は左側解放穴52と整列させられ、この穴52を越えて延びて、ベース広がり部29の一部分上に載るピボットフランジ54を提供する。同様に、右側終末端42は右側解放穴56と整列され、この穴56を越えて延びて、ベース広がり部29の一部分上に載るピボットフランジ58を提供する。図7においては、右側終末端42が上向きに押され、ヨーク44がピボットフランジ54を支点として上向きに枢動する。
【0016】
図2に最も良く見られるように、左側及び右側終末端40,42には、それぞれ、分与区域28の左側及び右側で接近可能である。したがって、細長い棒30を操作することができ、それ故、左側終末端40又は右側終了端42を押すことにより分与器10を開くことができる。
【0017】
以上述べた説明から、本発明の手段は壁掛け分与器、特に、分与区域に使用者の手が存在することを検知するセンサを用いるハンドフリー型の壁掛け分与器の分野において改善を提供することが明白になったであろう。また、特許法にしたがって本発明の好適な実施例についてのみ詳細に上述したけれども、本発明はこのような特定の実施例に又はこれにより限定されるものではない。したがって、本発明の範囲には特許請求の範囲の記載の範囲内に含まれる変形の全てが含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の分与器の正面図であって、この分与器は流体製品を入れて分与するのに用いることができる。
【図2】図1に示されている分与器の底面図である。
【図3】開き位置のカバーを示す右側面図であって、背板は断面にして示されている。
【図4】背板の正面図であって、背板の内部に取り付けられているカバーロッキング機構の一部分を示す。
【図5】断面にして示されている背板の頂部端を示す一部側面図であって、閉じ位置のカバーロッキング機構を示す。
【図6】図5と同様な一部側面図であるが、カバーを開くためにカバーロッキング機構が非係合位置である状態を示す。
【図7】図4と同様な正面図であるが、背板に取り付けられているカバーロッキング機構の一部分がその終末端から上向きに押されている状態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁掛け分与器において、背板と、カバーと、細長い棒と、ヨークとを包含し、
前記背板が分与器を壁構体に備え付けるために取り付けられ、かつ前記背板がこの背板の頂部に近接するキャッチャを有し、
前記カバーが前記背板の底部に近接して前記背板に枢動可能に取り付けられて、分与器を再充填することができる開き位置と分与器を作動せしめることができる閉じ位置との間を動くようにされ、かつ前記カバーが前記閉じ位置で前記キャッチャに係合してこのキャッチャとの係合により前記カバーを前記閉じ位置に保持する働きをするラッチを包含し、
前記細長い棒が前記背板に取り付けられていると共にラッチ解放端及びこのラッチ解放端と反対側のヨーク端を有し、かつ前記細長い棒が偏倚されて前記ラッチ解放端が前記ラッチに近接して前記カバーに載っていると共に、前記ラッチ解放端が前記ラッチから離れる方向へ偏倚されており、
前記ヨークが前記細長い棒の前記ヨーク端から前記カバーの左側穴で接近可能な左側終末端及び前記カバーの右側穴で接近可能な右側終末端にまで延びており、前記左側終末端又は前記右側端終末端を押すことにより、前記細長い棒をその偏倚力に抗して動かし、前記ラッチ解放端を前記キャッチャに接触せしめて前記ラッチを前記キャッチャから外し、これにより前記カバーをその開き位置に動かすことができるようにした壁掛け分与器。
【請求項2】
請求項1記載の壁掛け分与器において、更に、分与出口とハンドフリー分与センサとを包含し、前記ハンドフリー分与センサが、前記分与出口の近くの物体の存在を検知することにより、分与器の人為的操作を必要することなしに製品の分与を行い、前記ハンドフリー分与センサは、このセンサが前記ヨークの前記左側終末端又は前記右側終末端を押す物体の存在を検知することがないように配設されている壁掛け分与器。
【請求項3】
請求項1記載の壁掛け分与器において、前記細長い棒がこの細長い棒から前記背板のアームガイドの中を通して延びている弾性アームにより偏倚され、前記弾性アームは、前記ヨークの前記左側終末端又は前記右側終末端が押されたときには前記アームガイド内で変形させられ、それから、前記左側終末端又は右側終末端を押す圧力が取り除かれたときにはその正常の形状に戻るようにしている壁掛け分与器。
【請求項4】
分与器において、分与区域と、少なくともひとつのセンサと、背板と、カバーと、細長い棒と、ヨークとを包含し、
前記少なくともひとつのセンサが前記分与区域を取り囲む検知区域を有して、前記少なくともひとつのセンサが前記検知区域で物体の存在を検知したときには、分与器が前記分与区域で製品を分与し、
前記背板がキャッチャを有し、
前記カバーが前記背板に枢動可能に取り付けられて、分与器を再充填することができる開き位置と分与器を作動せしめることができる閉じ位置との間を動くようにされ、かつ前記カバーが前記閉じ位置で前記キャッチャに係合してこのキャッチャとの係合により前記カバーを前記閉じ位置に保持する働きをするラッチを包含し、
前記細長い棒が前記背板に取り付けられていると共にラッチ解放端を有し、かつ前記細長い棒が偏倚されて前記ラッチ解放端が前記ラッチに近接して前記カバーに載っていると共に、前記ラッチ解放端が前記ラッチから離れる方向へ偏倚されており、
前記ヨークが前記細長い棒の前記ヨーク端から前記カバーの左側穴で接近可能な左側終末端及び前記カバーの右側穴で接近可能な右側終末端にまで延びており、前記左側終末端又は前記右側端終末端を押すことにより、前記細長い棒をその偏倚力に抗して動かし、前記ラッチ解放端を前記キャッチャに接触せしめて前記ラッチを前記キャッチャから外し、これにより前記カバーをその開き位置に動かすことができるようにし、かつ前記ヨークの前記左側終末端及び前記右側終末端が前記検知区域の外側に配設されている分与器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−56354(P2008−56354A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−225917(P2007−225917)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(500095425)
【氏名又は名称原語表記】Joseph S. Kanfer
【住所又は居所原語表記】4445 Everett Road, Richfield, Ohio U. S. A.
【Fターム(参考)】