説明

分取装置

【目的】 バルブを使用せずに試料などの流体の振るい分けの可能な分取装置を提供することを目的とする。
【構成】 反応容器と複数容器の間に反応容器からの流体を複数流路に分岐させる分岐管を設けると共に、該分岐管の下流側より、流体を流したくない流路にガス圧をかける加圧手段を設けてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば、ペプチドのC末端(カルボキシル末端)からフラグメントを切断し、分取する装置に関する。
【0002】
【従来技術】分取装置の一般的な構成としては、例えば、図2に示す如く反応容器(カラム)Rに保持された試料に、試薬1、2を加え、反応容器内で試料の切断あるいは分解反応を起こさせ、切断(分解)された試料を反応容器Rの下流側に設けた回収ボトル12あるいは廃液ボトル13に振り分けるものである。
【0003】ここで、回収ボトル12あるいは廃液ボトル13の振り分けは、バルブVの切り換えによって行っていた。
【0004】なお、図2中、試薬1、2は不活性ガス圧により送られ、V1は2方弁、V2,V3は3方弁を示す。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の分取装置にあっては、反応容器から各種容器への試料の振り分けは、バルブによって行っていたため、バルブにデッドボリュームがある場合には、コンタミネーションを起こす原因になっていた。
【0006】また、尿素などのように乾くと析出する試薬・試料等があり、そのようなものはバルブを通過させるとバルブ内で析出が起き、バルブを通過させるのは好ましくなかった。しかし、かかる制限は、例えば、ペプチドの切断反応を起こさせ、フラグメントを分取することを不可能化させるものである。
【0007】更に、反応容器に充填剤を詰めていた場合には、下流に充填剤が流出し、バルブを破損させることもあった。
【0008】そこで、本発明は、バルブを使用せずに試料などの流体の振るい分けの可能な分取装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するため、反応容器下流に設けた複数の容器に流体の分取を行う装置において、反応容器と複数容器の間に反応容器からの流体を複数流路に分岐させる分岐管を設けると共に、該分岐管の下流側より、流体を流したくない流路にガス圧をかける加圧手段を設けてなることを特徴とする。
【0010】ここで、反応容器としては、例えば、ペプチドよりフラグメントを分取したいときは、ペプチドのアミノ末端を結合させた固体を収容したものを挙げることができるが、これに限定されず、例えば液体クロマトグラフの分離カラム、ペプチド合成装置の反応カラムなどあらゆるものが該当する。
【0011】反応容器下流の複数の容器は、回収用・廃液用の区別を問わず、また、回収容器はターンテーブルに配置し順次回転させる方式のものでも良い。
【0012】分岐管は、反応容器からの流出物を複数容器への各々の流路に分流させるものならば何でも良く、いわゆるマニホールドが該当する。
【0013】加圧手段は、分岐管から複数容器のいずれかの流路が、反応容器から流体が流れてくる圧力より負圧にならぬよう、分岐管の下流側より圧をかけるもので、レギュレータを備えた不活性ガスボンベなどが該当する。加圧する流路は、流体を流したくない流路、すなわち、流体を分取したくない容器につながる流路で、それは一つでも複数個でも構わない。
【0014】
【作用】本発明によれば、流体を流したくない流路に流体の流れる方向と逆の方向よりガス圧をかけることにより、所望の流路にのみ流体を流すことができる。
【0015】
【実施例】本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0016】図1は装置の概略図で、8は反応カラムを示し、例えば、ペプチドのC末端フラグメント分取装置では、酵素(リシルエンドペプチダーゼ)で処理されたアミノ酸残基を、官能基を有する固体(イソチオシアナート基が導入された多孔性ガラス)に結合させたものを充填してある。
【0017】反応カラム8の上流側には、試薬液溜10,11が配設されており、例えば、C末端フラグメント分取装置では、試薬液溜10には洗浄剤、試薬液溜11には切断剤(トリフルオロ酢酸)を収容しておく。これら試薬液溜10,11は密閉容器で、容器内にはそれぞれ2本の配管a1,a2,b1,b2 が収容され、1本はガス供給用(a1,a2) 、もう1本は試薬送液用(b1,b2) に使用される。試薬送液用の配管b1,b2 は、三方バルブ2、3を介して試薬送流路cに接続される。
【0018】また、ガス供給用の配管 a1,a2は、図示されない不活性ガス源からの配管aと接続している。なお、配管aは、ガス圧を直接反応カラム8にかけられるように二方バルブ1を介して、試薬送液流路cに接続される。
【0019】反応カラム8の下流側には、マニホールド9が設けられ、このマニホールド9には、反応液吐出流路d、回収流路e、廃液流路fがそれぞれ接続されている。回収流路eの端部は密閉式の回収ボトル12´内に、廃液流路fの端部は密閉式の廃液ボトル13´内にそれぞれ収容され、回収ボトル12´、廃液ボトル13´には更にガス供給用配管a3,a4 、排気用配管g1,g2 が収容される。ガス供給用配管 a3,a4は、二方バルブ4、5を介して前述と同じように図示されない不活性ガス源からの配管aと接続している。なお、図中6、7は二方バルブを示す。
【0020】以上の構成において、液の廃液は次のように行う。
【0021】<ステップ1>まず、反応カラム8内からの吐出物を廃液ボトル13´に送るときは、バルブ4、6を開き(図の点線方向)、バルブ5、7を閉じる。不活性ガス源からのガスは、二方バルブ4を通ってガス供給用配管 a3 →回収ボトル12´に入り、回収流路e→マニホールド9→廃液流路fを経て廃液ボトル13´に入る。廃液ボトル13´に入ったガスは排気用配管g1、二方バルブ6を通って放出される。
【0022】<ステップ2>かかる状態で、三方バルブ2を開き(図の点線状態)、三方バルブ3を閉じると(図の実線状態)、試薬液溜1内の液は、上面加圧により試薬送液用配管b1→試薬送液流路cを通り反応カラム8へ送られた後、反応液吐出流路d→マニホールド9に至る。マニホールド9では、回収ボトル12´からの圧がかかっているので、マニホールド9に至った液は全て廃液ボトル13´に入ることになる。
【0023】<ステップ3>ステップ2の後、三方バルブ2を閉じ(図の実線状態)、二方バルブ1を開く(図の点線状態)。試薬液溜1内の液の送液は停止され、不活性ガス源からのガス圧は直接反応カラム8にかかり、反応カラム8の液は全て廃液ボトル13´に入る。
【0024】次に液の回収は次のように行う。
【0025】<ステップ4>まず、バルブ5、7を開き(図の点線方向)、バルブ4、6を閉じる。不活性ガス源からのガスは、二方バルブ5を通ってガス供給用配管 a4 →廃液ボトル13´に入り、廃液流路f→マニホールド9→回収流路eを経て回収ボトル12´に入る。回収ボトル12´に入ったガスは排気用配管g2、二方バルブ7を通って放出される。
【0026】<ステップ5>かかる状態で、三方バルブ3を開くと(図の点線状態)、試薬液溜2内の液は、上面加圧により試薬送液用配管b2→試薬送液流路cを通り反応カラム8へ送られた後、反応液吐出流路d→マニホールド9に至る。マニホールド9では、廃液ボトル13´からの圧がかかっているので、マニホールド9に至った液は全て回収ボトル12´に入ることになる。
【0027】<ステップ6>ステップ2の後、三方バルブ2、3を閉じ(図の実線状態)、二方バルブ1を開く(図の点線状態)。試薬液溜2内の液の送液は停止され、不活性ガス源からのガス圧は直接反応カラム8にかかり、反応カラム8の液は回収ボトル12´に全て入る。
【0028】以上の構成では、試薬液溜1、2の液は、流路cを通り直接反応カラムに送るようにしていたが、三方バルブ3、反応カラム8の間に計量管を設けて、そこで一定量サンプリングできるようにしても良い。
【0029】
【発明の効果】本発明によれば、流体の振り分けをバルブによっていないので、反応カラム等の下流にデッドボリュームの無い流路が構成できる。
【0030】また、使用する試薬の制限もなく、しかも反応カラム等から充填剤の流出が起きてもそれに耐えうる流路が構成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構成を実施するための装置を示す図
【図2】従来の装置図
【符号の説明】
2、3:三方バルブ
8:反応カラム
9:マニホールド
12´:回収ボトル
13´:廃液ボトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】 反応容器下流に設けた複数の容器に流体の分取を行う装置において、反応容器と複数容器の間に反応容器からの流体を複数流路に分岐させる分岐管を設けると共に、該分岐管の下流側より、流体を流したくない流路にガス圧をかける加圧手段を設けてなる分取装置。

【図1】
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【図2】
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