分岐管のための突出した分岐部を備えたステント
本発明は、主たる分岐部2及び側方分岐部4を有する身体の分岐した内腔において使用するためのステント12に関する。ステント12は基端20及び先端22の相対向する端部を備えた径方向に拡張可能なほぼ管状のステント本体14からなり、該本体の壁14は該端部の間に貫通して延びる面を有する。面は第一のパターンを定義する幾何学的な形態を有し、該第一のパターンは所定の形態に配置された第一のパターンのストラット24及び連結部26を有する。ステント12はまた、第二のパターンからなる分岐部30を含み、該分岐部30はステント本体14から少なくとも部分的に着脱可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用ステントの分野に関し、より詳細には、管分岐部内又は該管分岐部付近における病巣及びその他の問題箇所を治療するためのステントに関する。
【背景技術】
【0002】
本願は、2002年8月21日に出願された米国特許仮出願第60/404756号、2003年7月16日に出願された米国特許仮出願第60/487226号及び2003年7月18日に出願された米国特許仮出願第60/488006号の利益を請求する2003年8月21日に出願された米国特許出願第10/644550号の利益を請求する2003年11月12日に出願された同時に係属する米国特許出願第10/705247号の一部継続出願であり、これらの出願の全体の内容は、本明細書において参照として援用される。
【0003】
本願はまた、米国特許第6325826号として特許化された1999年6月4日に出願された米国特許出願第09/326445号の一部継続出願である2000年9月22日に出願された同時に係属する米国特許出願第09/668687号の一部継続出願である。本願はまた、米国特許第6599316号として特許化された2000年12月27日に出願された米国特許出願第09/750372号の継続出願である2003年5月19日に出願された米国特許出願第10/440401号の一部継続出願である。本願はまた、米国特許出願第09/326445号の継続出願である2001年9月24日に出願された米国特許出願第09/963114号の一部継続出願である。米国特許出願第09/326445号は、1996年11月4日に出願された米国特許出願第08/744002号の一部継続出願である米国特許第6210429号として特許化された1998年1月14日に出願された米国特許出願第09/007265号の利益を請求する1999年1月13日に出願されたPCT出願第US99/00835号の一部継続出願である。上述の文献の全ての全体の内容は、本明細書において参照として援用される。
【0004】
ステントは、生体内人工器官の足場若しくはその他の装置であり、典型的には、静脈、動脈若しくはその他の管状生体器官の管内に配置若しくは移植され、該管を拡大する、若しくは該管壁を補強することにより、閉塞部、狭窄部、動脈瘤、或いは折畳まれた、切開した、脆弱化した、罹患した若しくは異常に拡張した管又は管壁を治療する。特に、ステントは冠状動脈系、心臓系、肺、神経血管系、末梢血管系、腎臓系、消化器官系及び生殖器官系に非常に一般的に移植されており、泌尿器官、胆管、食道、気管気管支樹及び脳内における移植にも成功しつつあり、これらの器官を補強する。現在、ステントに対して汎用される二つの主要な適用は、弾性の反動を回避するとともに管壁を改造することにより血管形成の結果を改善すること、及び冠状動脈並びに末梢動脈のバルーン血管形成術に起因する血管壁内における切開を、該切開部位における内腔内にて血管内膜フラップとともに押圧することにより、治療することである。従来のステントは、血管系の分岐地点であって、より大きな主たる動脈から分岐する第二の動脈が存在する分岐地点又は該分岐地点付近における病巣のような、より複雑な血管の問題箇所を治療するために使用されてはいたが、成功する確率は限られたものであった。
【0005】
従来のステント技術は比較的よく開発されている。従来のステントのデザインは典型的には、真直ぐな管状の、単一のタイプのセル構造、形態、又はパターンであり、長手軸に沿った翻訳を介して繰り返されている。多くのステントのデザインにおいて、この繰り返しの構造、形態又はパターンは、分岐部において血液の流れを妨げるストラット(strut)又は連結部材を有する。更に、ストラット及び連結部材の形態は、管の分岐した領域において、分岐した管を治療するために手術後に装置を使用する場合障害となり得る。例えば、主たる内腔へ第一のステントを展開することは、主たる管の治療が疾病組織の変位(例えば、プラークのシフト、即ち「スノープラウ(snow plowing)」による)、閉塞、管の痙攣、血管内膜フラップを伴うか若しくは伴わない切開、血栓症、塞栓症、及び/又はその他の血管性疾患により不十分であるような場合、管分岐部の分岐した管口を介して分岐ステントを医師が挿入することが阻止される。その結果、医師は、そのような更なる治療が必要ではない場合にステントを分岐部に挿入するか、又は代替的にそのような側部内腔を治療しない又は「犠牲にする」という選択肢を選ぶかのいずれかを選択するであろう。従って、管分岐部又は該管分岐部付近において病巣を備えた管を治療するために通常のステントを使用すると、最初の処置後において、及び将来的に主たる管、分岐した管及び/又は分岐部における更なる処置において、患者に対するステントの使用の利益を妥協する危険性が生ずる。
【0006】
通常のステントは、範囲対アクセスの考慮を対立させてデザインされている。例えば、範囲を広くすると、ステントのセル構造体のサイズは管壁を最適に支持するために最小化され、それにより組織の脱出が阻止されるか又は低減される。アクセスを向上させると、血流及び分岐した管へ将来的に移植する可能性がある分岐ステントのアクセスを提供するために、セルのサイズは最大化され、それにより「ステントの拘束(jailing)」が阻止されるとともに移植材料の量が最小化される。通常のステントのデザインは一般的には、これらの両方に取り組もうと試みるために一方を考慮することを他方を考慮するために妥協している。側方分岐部の拘束、プラークの変位の危険性、全体的な閉塞及び処置の困難性を含む本願の発明者らにより観察された問題点は、本発明の発明者らに、新規な従来にはない特殊なステントであって、上述の多岐にわたる血管系疾患を治療するためのより簡便、安全かつ信頼のおけるステントの開発を行う動機を提供し続けている。
【0007】
従来のステントは臨床上の処置において日常的に使用されてはいるが、これらのステントがステント内再狭窄(ISR)又は内膜過形成に起因する再狭窄を完全に回避することが不可能であることを臨床データは示している。ステント内再狭窄はステントの移植に伴い該ステントにより覆われる領域において動脈の狭窄又は閉塞は再発することである。冠状動脈ステントで処置した患者はステント内再狭窄に苦しむであろう。
【0008】
内膜過形成に起因する再狭窄の量を低減するために種々の薬理学的な試みがなされてきた。これらの試みの多くは、経口又は血管内投与を介して薬物を全身に送達するという処置である。しかしながら、全身への試みの成功は限られたものであった。
【0009】
薬物の全身への送達は生来的に限られたものである。その理由は、負担を与える領域への一定した薬物送達を達成することは困難であり、かつ全身投与された薬物はしばしば濃度のピーク時と最低時とを周期的に繰り返し、毒性となる時期と薬効を示さない時期とを生ずるからである。したがって、効果的とするには、再狭窄抑制薬を局所投与にて送達すべきである。
【0010】
薬物の局所的な送達の一つの試みとして、送達担体としてのステントの使用がある。例えば、細菌のベータガラクトシダーゼ又はヒト組織型プラスミノーゲン活性化因子を発現するトランスフェクト内皮細胞を播種したステントは、治療用蛋白質送達担体として使用されていた。例えば、ディケック(Dichek)ディー.エイ.らによる「血管内ステントへの遺伝子操作された内皮細胞の播種(Seeding of Intravascular Stents With Genetically Engineered Endothelial Cells)」、Ciuculation、第80号、1347−1353頁(1989年)。
【0011】
発明の名称が「管内薬物流出プロテーゼ(Intraluminal Drug Eluting Prosthesis)」である米国特許第5679400号明細書及び国際特許出願第WO91/12779号並びに発明の名称が「徐放性薬物送達を備えたステント(Stent With Sustained Drug Delivery)」である国際特許出願第WO90/13332号は、抗血小板薬、抗凝血薬、抗遊走性(antimigratory)薬、抗代謝薬及びその他の抗再狭窄薬を送達することのできるステント装置を開示している。
【0012】
米国特許第6273913号、第6383215号、第6258121号、第6231600号、第5837008号、第5824048号、第5679400号及び第5609629号明細書は、ラパマイシン、17ベータエストラジオール、タキソール及びデキサメタゾンのような種々の薬剤で被覆したステントを示唆している。
【0013】
従来技術の参考文献は、一つ以上の特定の抗再狭窄薬で被覆された種々のステントの形態を開示してはいるが、本願の独創的なステントのデザインを開示していない。従って、分岐した管に開口分岐支持体を効果的に提供し、かつ再狭窄を回避するのに有用な薬物の送達用担体として効果的に作用するステントのデザインの必要性が存在する。この必要性は、分岐部に配置された病巣のような複雑な場合には特に当てはまる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記した懸案を鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、主たる分岐部と側方分岐部とを有する身体の分岐した内腔において使用するためのステントに関する。ステントは基端側と先端側に相対向する端部を有する径方向に拡張可能なほぼ管状のステント本体からなり、該本体の壁部はその間に延びる面を有する。該面は第一のパターンを定義する幾何学的な形態を有し、該第一のパターンは所定の形態に配置された第一のパターンのストラットと連結部とを有する。該ステントはまた、第二のパターンからなる分岐部からなり、該分岐部は少なくとも部分的にステント本体から着脱可能である。
【0016】
一実施形態において、第二のパターンは少なくとも一つのコネクタが存在しない第一のパターンにしたがって構成され、別の実施形態において、第二のパターンは複数のコネクタが存在していない。第二のパターンは第二のパターンのストラットを有し、かつ第二のパターンのストラットは第一のパターンのストラットより更に密に充填されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、本明細書において添付した図面を参照して例示のみの目的にて記載されている。以下に図面を特に詳細に参照して図示された特定の例は、実施例であり、本発明の好ましい実施形態を例示的にのみ議論するためのものであり、本発明の原理及び概念的な態様の最も有用かつ容易に理解されるべき記載と考えられるものを提供するために示されていることを強調したい。この際、本発明の基本的な理解において必要である以上に更に詳細に本発明の構造的な詳細部を示すことを試みてはおらず、図面において示された詳細な説明は、本発明が実際に如何に具現化されるのかを当業者に対して明らかにすることができるであろう。
【0018】
本発明は管の分岐部に配置するためのステントに関し、主たる管並びに分岐した管の一部を少なくとも部分的に覆うように構成されている。図1を参照すると、例示的な血管分岐部1が示されており、該分岐部1は主たる管の軸3に沿って延びる主たる管2と、分岐した管の軸5に沿って延びる分岐した管4とを有する。主たる管2及び分岐した管4は90度未満の角度11をなして配置されている。閉塞部6は分岐部1内に位置しており、主たる管2と分岐した管4の基端部とにわたって延びているか、又は管2、4を少なくとも部分的に閉塞する。
【0019】
図1に示されるように、主たる管2及び分岐した管4を閉塞部6を取り除くための従来の試みには問題があった。図2乃至4を参照すると、閉塞した分岐部にステントを静置するための従来の方法及び構造の例が示されている。図2に示されるように、第一のステント8は主たる管2に導入され、ステント8の壁部にあるアクセス孔又は側方開口部は、分岐した管4へのアクセス及び閉塞していない血流を提供するためにバルーンを備えた状態にて形成される。典型的には、アクセス孔は主たるステントパターンのストラット及び連結部を変形することにより形成され、それは、形成された開口部を囲むステントの領域を変形し、かつ好ましくない結果を与える。また、仮にステント8がそれのみにて使用される場合、分岐した管4内に配置された閉塞部6の少なくとも一部はステントに被覆されることなく残される。図3及び4を参照すると、一つの従来技術の解決法は例えば、第一のステント8の側方開口部を介して挿入された第二のカテーテルを介して第二のステント10を分岐した管4内に導入することであった。図3及び4に示されるように、そのような形態は更なる問題点を誘導する。例えば、図3に示されるように、第二のステント10は、主たる管2に対する側方分岐管4の角度11のために、そして、ステントの端部は典型的には内腔の長手軸に対して直角をなしているという事実のために、分岐した管4内において閉塞部6の部分を完全に覆うことができないであろう。これに代えて、第二のステント10は図4に示されるように、分岐部を超えて主たる管2内に延びており、主たる管2における血流の停滞の可能性及び/又はステント8及び10の重複部分において問題を引き起こすであろう。
【0020】
図5乃至7を参照すると、本発明の一実施形態に従うステント12は、基端20から先端22まで長手軸16に沿って延びるとともにその内部に内腔18を定義するステント本体又は壁部14からなる。ステント12は種々の寸法(長さ、幅、高さ、深さ、厚み等)を備えた三次元の幾何学的形態を備え得る。好ましい実施形態において、ステント本体14はほぼ管状構造体である。本明細書において定義されているように、「管状の」は変更した断面を有するとともに該断面が必ずしも円形である必要のない細長い構造体を含む。例えば、ステント壁部14の断面はほぼ卵型であり得る。代替的な実施形態において、ステント本体14はほぼ円筒状である。また、ステント本体14はステントの長手軸16に沿って変化する断面形状を備え得る。例えば、ステントの基端部分と先端部分の外周は異なっているかもしれない。例えば、これは、ステント送達時において、送達系がステントを膨張させる場合に起こり得る。内腔18はステント本体14により境界をなす内側の容量空間を示す。好ましい実施形態において、ステント12は、該ステントを径方向に拡張するとともに主たる管を支持することを可能にするために、膨張していない状態から膨張した状態まで径方向に膨張可能であり得る。膨張していない状態において、ステント本体14は第一の容積を有する内腔18を定義し、膨張した状態においては、ステント本体14は第一の容積より大きい第二の容積を有する内腔18を定義する。
【0021】
図5は膨張していない状態のステント12の扁平した正面図を示す。図5に示されるように、ステント本体14はほぼセル状の形態を有するとともに、該ステント12の全長に沿って、所定のほぼ卵型又は主たるパターンに構成された一連の反復可能なストラット24及び連結部26から概してなる。ストラット24は、基端部にて湾曲部27により結合される一対の長手ストラット部25からなる。ストラット24は先端にて湾曲部29により相互に連結されるとともにステント12の外周の周囲に延びるリング28に形成される。一連の外周リング28はステント12の全長に沿って互いに長手方向に離間されており、かつ連結部26は長手方向に互いにリング28を連結する。連結部26は隣接する外周リング28間においてほぼ長手方向に延びており、かつ隣接するリング28の長手方向に隣接するストラット24の対応する湾曲部25,29に連結する。好ましい実施形態において、連結部26はほぼS字型又はジグザグ状であるが、その他のパターンもまた使用され得る。ステント12において使用されるパターンの詳細は、2002年10月20日に出願された同時に係属するPCT出願IL02/00840号により完全に記載されており、当該出願は本明細書においてその全体が参照として援用される。更に、多くのその他のストラット及び連結部のパターンが使用され得、本発明のパターンは例示のみの目的にて示されている。
【0022】
ステント12は更に、該ステント12の全長に沿ったある地点に配置される分岐部30を含む。分岐部30は管分岐部の分岐した管に延びるように構成されたステント壁14の領域又は一部からなる。一般に、分岐部30は伸張していない位置から伸張した位置まで移動可能であるように構成される。伸張していない位置において、分岐部30は拡張していないステント12によって定義された容積内に配置される、即ち、分岐部30はステント壁14から径方向には突出していない。伸張した位置において、分岐部30はステント壁14から外向きに延びるとともに該分岐部30は分岐した管内に延びる。図6に示されるように、分岐部30は、最初はステント本体14の残りの部分と同一平面であるか、同一面であるか、又は同一円筒上である該ステント本体14のステント壁部領域からなり、ステント本体14の残りの部分に対して外向きに伸張可能である。この点に関して、分岐部30は通常、ステント本体14の全体のパターン又は主たるパターンにおいて開口部、スリット、空間、空隙、又はその他の不一致の部分に隣接している。この形態は分岐管へのアクセスを可能にし、同時に展開する前に管内にてステントの外周が整合することを可能にする。その他の実施形態において、複数の分岐部は一つ以上の管へ複数のアクセスを許容するためにステント内に組み込まれる。好ましい実施形態において、分岐部30はステント12の中間領域に配置され得る。代替的な実施形態において、分岐部30はステント12の長さ方向に沿った任意の位置に配置され得る。
【0023】
図6に最適に示されるように、第一の実施形態において、分岐部30は分岐リング32の一部からなり、かつ開口部34に隣接するとともに該開口部34の基端に配置される。分岐部30を伸張すると、開口部34に隣接した分岐リング32の部分は分岐管内へ延びてゆき、一方、分岐リング32に隣接した外周リング28は分岐管内には延びていかない。開口部34は、分岐リング32と、相対向した分岐リング33と、を接合する少なくとも一つの連結部26を取り除くことにより形成される。幾らかの実施形態において、4個の隣接する連結部が取り除かれているが、代替的な実施形態においては、開口部34を形成するために任意の数の連結部を取り除くことができる。この実施形態において、分岐リング32は幾何学的には外周リング28とほぼ同様であり、かつストラット24とほぼ同様な分岐リング用ストラット36からなる。しかしながら、複数の隣接したストラットは開口部34に隣接した連結部26を備えていない。この点に関して、分岐リング32はステント本体14から少なくとも部分的に着脱可能であり、それにより分岐リング32の少なくとも一部がステント本体14に関して容易に外向きに延びる。幾らかの実施形態において、分岐リング32の形状は外周リング28に対して変更可能であり、かつ分岐リング用ストラット36はストラット24とは異なる形態を備え得る。
【0024】
ステント12が図7に示されるように拡張される場合、分岐部30は分岐管内に伸張し、分岐リング32の一部が分岐管4の内面を少なくとも部分的に覆うことになる。従って、好ましい実施形態において、分岐管内のステントの被覆部は分岐管の内壁の基端側の少なくとも部分的な被覆を含む。
【0025】
種々の代替的な実施形態は分岐部30の変更した形状を提供する。例えば、分岐リング32は外周リング28に対して変更され、かつ分岐リング用ストラット36はストラット24と異なる形態を備え得る。一つの代替的な実施形態において、分岐リング用ストラット36はストラット24よりも長い。別の実施形態において、分岐リング用ストラット36は円周方向においてより密に詰まっており、それにより外周リング28と比較して、分岐リング32内に単位面積当たりより多くの数の分岐リング用ストラット36を備えることが可能となる。別の実施形態において、分岐リング用ストラット36はストラット24より細くすることもできる。更に別の実施形態において、分岐リング用ストラット36はストラット24とは異なる材料から形成することもできる。
【0026】
図8を参照すると、別の代替的な実施形態であるステント19が示されており、分岐部30はストラット24より長い分岐リング用ストラット36を有する分岐リング32からなり、該分岐リング用ストラット36の数はと外周リング28におけるストラット24の数と比較してより多くの数が提供され、より密に詰まった分岐リング32が得られる。更に、分岐リング32の両側にある分岐リング用連結部38の分岐ストラット36当りの数は、ストラット24当りの連結部26の数よりも小さい。開口部34は分岐リング32とその先端側にて隣接しており、分岐リング用ストラット40,42及び44の少なくとも一つ、好ましくは複数個の先端46は連結部を備えておらず、かつステント本体14から着脱可能である。この実施形態において、ストラット40,42及び44に隣接して横方向に配置された二つの分岐リング用ストラット48及び50は連結部に連結されていない基端52を有する。この点に関して、連結されていない基端52はステント本体14に対して外向きに拡張する際に分岐リング32の移動に対する抵抗を低減する。同様の手順が、連結部に連結されていないリングにおいて一つ、二つ、三つ又はそれ以上の基端を提供するために使用され得る。付随的に、分岐リング用連結部38の形状及び形態は、連結部26とは異なっている。例えば、分岐リング32の基端側に沿った分岐リング用連結部は連結部26より長く、分岐部30の管の側方分岐部へのより大きな拡張を容易にする。また、分岐リング32の先端側に沿った分岐用リングの連結部は連結部26と異なる形状及び配向であり、分岐部30の管内へのより大きな拡張を容易にする。代替的な実施形態において、分岐リング用連結部38は、該連結部内においても互いに異なるものとすることができる。また、分岐リング用ストラット36が長ければ長いほど、延長された長さに因りより偏向されるので、比較できるほど短いストラットと比べて一般的には可撓性が増大する。また、長さを長くすると、拡張時に分岐管内のより深い部分まで貫通するので、管内壁でのより大きな被覆が得られる。代替的な実施形態において、分岐リング用連結部38の異なる形状及び配向を使用することもできる。
【0027】
図9を参照すると、別の代替的な実施形態であるステント29が示されており、該ステント29は図8の実施形態におけるステントと同様の分岐部30を備えているが、分岐リング用ストラット40,42及び44が別の分岐リング用ストラット36より長く、その先端が開口部34の基端側に対して湾曲したプロファイルを定義する点が異なる。また、中央のストラット42は該ストラット42に隣接するストラット40,44よりも長い。この点に関して、分岐部30が伸張される場合、ストラット40,42及び44は分岐管内へ更に伸張し、図8に記載された実施形態よりも管壁への被覆部分がより多くなる。この点に関し、この実施形態は図1に示されたような分岐管において閉塞物をより容易に被覆することが可能となり、従って分岐管へのより良好な血流が提供される。更に、以下に詳細に記載されるように、この実施形態は分岐管における第二のステントの使用を容易にする。
【0028】
図10を参照すると、図9のステント29が拡張した状態にて示されており、分岐部30は分岐管内に伸張しており、それにより、分岐リング32が分岐管の内面をその基端側において少なくとも部分的に覆った状態となる。分岐リング32のストラット42の先端は、ストラット40,44の先端よりも更に分岐管内に延びている。なぜならば、該ストラット42はこの実施形態においては隣接するストラット40,44よりも長いからである。この点に関して、分岐部30が分岐管内に伸張される場合、該分岐部30の先端周辺部に沿ったほぼテーパ状、直線状又は線形状のプロファイルが形成される。
【0029】
図11及び12を参照すると、図5及び9のステント12,29の概略図が血管分岐部において実施されるような拡張した状態にてそれぞれ示されている。図11に示されるように、図8の実施形態のステント19は、分岐管4内に延びる場合、分岐部30の先端周辺部45に沿ってほぼ湾曲した、又は放射状のプロファイルを備える。ほぼ湾曲した、又は放射状のプロファイルは図8の実施形態のステント19の分岐部30の特殊な形状による。特に、この実施形態においては分岐リング32の分岐リング用ストラット36の全てが等しい長さであるために、ストラット36の先端は分岐管4内に等しい距離にて放射状に拡張しており、それにより分岐部30の先端周辺部45に沿ってほぼ湾曲した、又は放射状のプロファイルが形成される。図12を参照すると、図9の実施形態のステント29は、分岐管4内に延びる場合、該ステントの分岐部30の先端周辺部47に沿ってほぼテーパ状、直線状又は線形状のプロファイルを有する。図12におけるほぼ直線状又は線形状のプロファイルは図9の実施形態のステント29の分岐部30の特殊な形状によるものである。特にこの実施形態においては、分岐リング32の中央のストラット42が該ストラット42に隣接するストラット40,44より長いので、該ストラット42の先端は図10に最適に示されるように該ストラット40,44の先端と比較して更に分岐管4内を深く延びており、それにより分岐部30の先端周辺部に沿ってほぼテーパ状、直線状又は線形状のプロファイルが形成される。好ましい実施形態において、線形状プロファイルは分岐管4の軸に対して直角をなす。しかしながら、代替的な実施形態において、線形状プロファイルは分岐管4の軸に対して任意の角度をなすこともできる。図12に示される分岐部30の先端周辺部に沿った線形状プロファイルの一つの有利な特徴は、仮に第二のステント51が分岐管4において使用された場合、該線形状プロファイルが第二のステントと良好かつ容易に整合し、分岐管壁のより大きな表面積を覆うことが可能となることである。例えば、仮に第二のステント51が図11のステント12との組み合わせにて使用される場合、二つのステントの間には、放射状先端周辺部45と第二のステントの当接する直線状又は線形状の縁部との界面には間隙が存在する一方、接近した当接界面は図12のステント29により達成され得る。
【0030】
図13を参照すると、別の実施形態であるステント39が示されており、図9の実施形態のそれに類似した分岐部30の代替的な実施形態を備えているが、横方向の分岐リング用ストラット48及び50がその他の分岐リング用ストラット36より長い点及び分岐リング用ストラット48,50の基端52がその他の分岐リング用ストラットを超えて分岐リング32と隣接する外周リング28との間にある空間へ基端側に延びている点が異なる。分岐リング用ストラット48,50は連結部に連結されていない基端52を有するとともに、ステント本体14に対して外向きに拡張する際に分岐リング32の移動に対する抵抗を低減する。この点に関して、より長い横方向の分岐リング用ストラット48,50はヒンジと類似の機能を有し、分岐リング部30が更に外向きに伸張することを容易にし、図9の実施形態のステント29と比較して、より大きな角度11(図1)にて配置された分岐管を収容するであろう。繰り返し述べるが、ストラット40、42及び44は分岐リング用ストラット36より長いので、図8に示された実施形態と比較して、更に可撓性であり、かつ管内壁をより広く被覆する。
【0031】
次に図14及び15を参照すると、別の実施形態であるステント49が示されており、該ステント49はメインパターン54とは異なるパターンを有する長手領域53を有するステント本体14を備える。長手領域53はストラット24及び連結部26より小さい寸法であるがメインパターン54と類似した幾何学的パターンにて形成された一連の一般的には繰り返し可能なストラット56及び連結部58からなる。この点に関し、ストラット56はリング28内において単位面積当たりより多くの数であり、リング28は領域53において単位面積当たりより多くの数である。なぜならば、ストラット56の長さはストラット24の長さより短く、連結部58の長さは連結部26の長さより短いからである。好ましい実施形態において、同数の連結部58が隣接するリング28間に延びている。しかしながら、ストラットは長手領域53においてより多くの数であるために連結部58は隣接するリング28の一つおきのストラットの間を長手方向に延びている。図15に示されるように、ステント49は更に、領域53内に配置される分岐部30を含む。分岐部30は開口部34に隣接する分岐リング32からなる。開口部34は、分岐リング32と、相対向する分岐したリング33と、を接合する少なくとも一つの連結部26を除くことにより形成される。好ましい実施形態においては二つの隣接した連結部が除かれるが、代替的な実施形態においては任意の数の連結部が除かれて開口部34が形成される。この実施形態において、分岐リング32は幾何学的には外周リング28とほぼ類似しており、かつストラット56とほぼ類似する分岐リング用ストラット36からなる。しかしながら、複数の隣接したストラットは開口部34に隣接する連結部58とは結合しておらず、かつ分岐リング32は開口部34においてステント本体14から少なくとも部分的に着脱可能であり、該分岐リング32の少なくとも一部がステント本体14に対して外向きに拡大し易くなっている。長手領域53のより小さなストラット及び連結部は該ストラット及び連結部の材料のより自由な移動を提供し、かつ管壁との適合性を促進する。より小さなストラット及び連結部はまた、分岐した管壁の更に密である表面領域の被覆を提供し、開口付近におけるより均一な被覆を達成する点において優れている。特に、この実施形態は、比較的小さなパターンが閉塞物の周囲にて撓み、又は適合し、該閉塞物に対する被覆を提供するので、分岐管の幾何学的に複雑な閉塞物の特に有効な被覆を提供することができる。また、この実施形態はより小さなパターンが閉塞物のより多くの表面積を覆うので比較的小さな閉塞物に対しては有効である。
【0032】
図16を参照すると、別の実施形態であるステント59が示されており、該ステント59は二つの隣接した外周リング28に連結され、かつ該リング28から外周方向に延びる三つの隣接した分岐リング領域60、62、64の一部を含む代替的な分岐部30を含む。分岐リング領域60、62、64は各々が複数の分岐用ストラット66を含み、該ストラット66は分岐連結部68により長手方向に連結されている。ストラット66はリング28のストラット24よりも長手方向においては短く、連結部68は連結部26より小さい。先端リング60は開口部34に隣接しており、該リング60のストラット66の先端は開口部34にてステント本体14から着脱可能であり、ステント本体14に対して外向きに拡張するために、分岐リング領域60、62、64の少なくとも一部の伸張を可能にする。この実施形態において、三つの分岐リング領域60、62、64は更に径方向外向きに延びており、かつこの分岐部30は開口の基端側の形状に適合する又は一致するので特に有利である。更に、この実施形態の分岐部は、図1に示されるような分岐した管の閉塞物の周囲にてより容易に伸張する又は撓む一方で、分岐壁の被覆及び分岐管へのより良好な血液の流れを提供する。
【0033】
図17及び18を参照すると、代替的な実施形態であるステント69が示されており、該ステント69は代替的な分岐部30を含む。この特殊な実施形態において、分岐部30は支持ストラット70及び拡張可能なリング72からなる。分岐部30は少なくとも一つの側方開口部74を定義する。一実施形態において、側方開口部74を定義するセルの寸法は、(ステントが拡張する前に)該側方開口部74がステント本体14内のその他の開口部より大きくなるように構成される。側方開口部74の存在は、該開口部を貫通する側方シースを収容するように一般的には構成され、処置時又は処置後に医師が分岐管へアクセスすることを可能にする。特殊な実施形態において、図17に示されるように、側方開口部74は連続した材料からなる拡張可能なリング72により包囲される。代替的な実施形態において、拡張可能なリング72は、取り付けられていない部分、又は側方開口部74を部分的にのみ覆う一つの部分からなる。一連の支持ストラット70はストラット24及び連結部26を拡張可能なリング72と連結する。支持ストラット70は好ましくは折畳まれた形態又は包み込む形態であって、拡張時に少なくとも部分的に真っ直ぐになり、拡張可能なリング72を分岐管内に突出させる形態であるパターンからなる。
【0034】
この実施形態において、ステント69が拡張される場合、図18に示されるように、分岐部30は分岐管内に延びており、拡張可能なリング74が分岐管の内面を少なくとも部分的に覆う。従って、好ましい実施形態において、分岐管の一部におけるステントの被覆領域は、分岐管内壁の完全な円周を含む。代替的な実施形態において、部分的な被覆領域、又は複数の被覆領域が存在する。
【0035】
図19乃至21を参照すると、別の実施形態であるステント79が示されており、該ステント79は主たるステント本体14と分岐部30の別の実施形態とを有する。図19及び20は、分岐部30が展開していない拡張していない状態におけるステント79を示す。図21は分岐部30が展開した拡張した形態のステント79を示す。図示されるように、主たるステント本体14は、概して繰り返し可能なリング28及び連結部30のパターンを有する主たるステントパターンを含む。分岐部30及び包囲する中間領域80は、ステント79の繰り返し可能なリング28及び連結部26のパターンを中断する。この実施形態において、分岐部30は分岐管内に、そしてその長手軸83に対して、径方向に拡張可能であるとともに長手方向に伸張可能であり、それにより、好ましい実施形態において、分岐部30は拡張した形態において分岐管の内壁の周辺部又は円周の全体と接触する。この点に関して、分岐部30は好ましくは分岐管の壁部を360度にわたって被覆する。即ち、分岐部30はステント79の長手軸81に対して外向きに伸張し、かつ管と接触するために軸83の周囲を径方向にも拡張する(それにより、管の大きさに対して調整可能である。)
【0036】
図20を参照すると、ステント79の領域80の拡大図が示されている。好ましい実施形態において、構造支持部材84は主たるステント本体14と分岐部30との間の遷移部として設けられている。好ましい実施形態の一態様において、構造支持部材84は主たる管へ角度をなして延びる分岐管を収容するために楕円形である。代替的な実施形態において、支持部材84のその他の形状は血管系を収容するために使用され得る。構造支持部材84は連続リングを含む。この実施形態において、構造支持部材に84は完全な拡張不能のリングであり、かつ特定の外周を超えて径方向に拡張することはない。
【0037】
図19及び20に示されるように、二つの同心状リングである内側リング86及び外側リング88は、構造支持部材84内に配置され、ほぼ円形状の中央分岐開口部34を囲み、ステント79が拡張していない状態にある場合、側方分岐管へのアクセスを提供する。リング86及び88は複数の内側連結部90により相互に連結されている。外側リング88は複数の外側連結部92により構造支持部材84に連結されている。リング86及び88は通常、曲線状の部材である。例えば、リング86、88は波状のペタル(petal)、突起又はピーク(peak)94により定義され得る。好ましい実施形態において、各リング86、88は同数の波状ピーク94を有するが、図示されているように、内側リングはより近接して、又はより密に配置され得る。別の好ましい実施形態において、各リング86、88は8個のペタル又は波状ピーク94を有するが、代替的な実施形態において、各リングは任意の数の波状ピークを有し、かつ該ピークの数は各リングにおいて等しくする必要はない。波状ピーク94は通常、湾曲部98により相互に連結される一対のストラット部96を含み、かつ該ストラット部自身は別の湾曲部により隣接するストラット部と連結されている。好ましい実施形態において、八個の外側連結部92は、構造支持部材84と外側リング88との間に延びており、かつ各外側連結部92は、一方の端部が外側リング88のストラット部96のほぼ中央に取り付けられるとともに他方の端部は構造支持部材84に取り付けられている。図示されるように、外側連結部92はまた波状形状を有するが、代替的な実施形態において、外側連結部92は異なる形状を有する。好ましい実施形態の別の態様において、外側連結部92は、構造支持部材84の周囲に等間隔に、又は対称的に離間され得る。内側リング86は複数の内側連結部90により外側リング88に取り付けられており、好ましい実施形態において、8個の内側連結部90がリングを連結する。内側連結部90は外側リング88の湾曲部98から内側リング86の湾曲部まで延びている。図20に示されるように、好ましい実施形態において、内側連結部90は単純な湾曲形である。連結部、リング及び間隙のその他の量、形態、大きさ及び配置が所望の結果に応じて使用され得る。連結部を変更することにより、異なる量の可撓性及び被覆が得られる。図示されたようなリング及び連結部の形態は、分岐部30の径方向及び長手方向への拡張並びに分岐管の被覆の必要性を考慮したものである。分岐部のその他の形態及び配置は本発明に従って使用され得る。
【0038】
図19及び20を再び参照すると、分岐部30を包囲するステントのパターンは、上述の実施形態の全てで可能であるように、分岐部30を収容するために異なるパターンに修正され得る。特に、中間部80のリング28は、分岐部30により占有される領域を補償するべく十分な被覆と可撓性を提供するためにより密に構成され、かつ寸法化されている。
【0039】
次に図21を参照すると、ステント79が拡張した形態にて示されており、分岐部30は展開されている。分岐部30の拡張に伴い、内側及び外側リング86、88は分岐部の長手軸83の周囲に移動し、主たるステント本体14から離間して分岐管内へ横方向に拡張し、分岐被覆部を形成する。拡張に伴い、外側連結部92は外向きに移動し、かつ内側連結部90は分岐長手軸83とほぼ平行な位置まで真っ直ぐに延びる。好ましい実施形態において、拡張したリング86、88はほぼ同一の拡張径を有するが、代替的な実施形態において、該リング86、88は、例えばテーパ状のバルーンが使用される場合はテーパ状の管を収容するために異なる直径を備え得る。分岐部30は、処置されるべき分岐管の形状に応じてステントの長手軸81に異なる角度にて伸張され得る。この実施形態において、分岐部30は好ましくは約1.5乃至3mm分岐管内へ延びている。
【0040】
図22を参照すると、別の実施形態であるステント89が示されており、該ステント89は主たるステント本体14と分岐部30の別の実施形態とを有する。ステント89はステント79とほぼ類似するが、例外として、ステント89は二つの同心状リング86、88構造体を囲む不連続支持部材104を有する。支持部材104はほぼ楕円形であり、周辺部に沿って複数の不連続部106を含む。不連続支持部材の形態は、拡張時に分岐部により一層の可撓性を与えるとともに分岐管形状のより大きな範囲を収容するために一般的には提供される。好ましい実施形態の一態様において、構造支持部材84は主たる管まで所定の角度にて延びる分岐管を収容するために楕円形であり得る。
【0041】
図23及び24を参照すると、ステント99の別の実施形態が拡張していない状態と拡張した状態にてそれぞれ示されている。ステント99は主たる本体14と分岐部30の別の実施形態とを有する。ステント99はステント79にほぼ類似するが、例外として、ステント99は二つの代わりに三つの同心状リング110、112、114を囲む支持部材108を含む。図24に示されるように、ステント99が拡張される場合、別の同心状リングを追加することによって一般的にはより密なパターンが分岐部30に形成されるので、この実施形態の三つの同心状リング構造体は分岐壁の更なる支持を促進する。
【0042】
図34を参照すると、代替的な実施形態であるステント220が示されており、該ステント220は主たるステント本体14と分岐部30の別の実施形態とを有する。図34は拡張していない状態にて示されるステント220の平面図であり、分岐部30は展開されていない。主たるステント本体14は、ほぼ繰り返し可能なリング28及び連結部26のパターンを備えた主たるステントパターンを含む。分岐部30及び包囲する中間部80はステント220の繰り返し可能なリング28及び連結部のパターンを遮断する。分岐部30は、該分岐部30が拡張した形態において分岐管の内壁の周縁部又は外周部全体と接触するように、該分岐管内を拡張可能となるように構成されている。
【0043】
好ましい実施形態において、遷移部材224が主たるステント本体14と分岐部30との間に遷移部として提供されている。遷移部材224は空間246を間に挟んで相対向する関係にて配置されたほぼ楕円状の半円部からなる。遷移部材224は二つの同心状リング228、230構造体及び中央分岐開口部232を囲む。分岐開口部232はステント220が拡張していない状態にある場合は側方分岐管へのアクセスを提供し、側方シースが開口部232を貫通する。リング228及び230は複数の内側連結部234にて相互に連結されている。外側リング230は複数の外側連結部236により遷移部材224に連結されている。リング228、230はほぼ曲線状部材であり、かつ波状のペタル、突起、又はピーク238を含む。この実施形態において、外側リング230は内側リング228より多くの数のピークを含む。好ましくは、8個の外側連結部と8個の内側連結部が遷移部材224とリング228、230とを相互に連結する。この実施形態において、内側及び外側連結部234、236はほぼ直線状の部材であり、好ましくは分岐部30の中心に向かって延びるように径方向に整合されている。操作時において、外側連結部236と遷移部材224との交差点はピボット点を形成し、その周囲にてペタル238が側方分岐管内に外向きに展開されるか、又は回動される。好ましい実施形態において、ほぼ直線状の内側及び外側連結部は共に回動し、それによりペタル238は花のように開く。
【0044】
図35を参照すると、代替的な実施形態であるステント240が示されており、該ステント240は分岐部30の代替的な実施形態を有する。ステント240は、主たるステント本体14と分岐部30との間に遷移部として構造支持部材244を含む。支持部材244は空間246を間に挟んで相対向する関係にて配置されたほぼ楕円状の半円部からなる。支持部材244は二つの同心状リング248、250構造体及び中央分岐開口部252を囲む。リング248及び250は複数の内側連結部254により相互に連結される。外側リング248は複数の外側連結部256により構造支持部材244に連結される。リング248、250はほぼ曲線状の部材であり、かつ波状のペタル、突起、又はピーク258を含む。補助アクセス開口部255はリング248、250を遮断し、ステント240が拡張していない状態において側方の分岐管へのアクセスを提供する。リング部257は補助アクセス開口部255に近接した外側連結部256の間に延びている。この実施形態において、補助アクセス開口部255は中央の分岐開口部252より大きく、該開口部255を貫通する側方シースをより容易に受承するとともに側方分岐部へのより大きなアクセス口を提供する。補助アクセス開口部255は、好ましくは、ステント送達システムに装填された場合、中央の分岐開口部252の基端側に配置されるが、代替的な実施形態においては該補助アクセス開口部255は変更した位置を備え得る。ステント260の代替的な実施形態が図36に示されており、該ステント260はステント240に類似し、かつ空間246を貫通して延びるとともに分岐部30の外側の横方向にて外側リング250とストラット264とを連結する横方向連結部262を更に含む。この点に関し、分岐部30が側方分岐部内に延びる場合、ストラット264は開口の外周を支持するために径方向内側に引かれる。この更なる構造は径方向の強度を改善するとともに管壁への更なる支持を提供する。
【0045】
図37を参照すると、代替的な実施形態であるステント280が示されており、該ステント280はステント260に類似し、かつ空間246を貫通して延びるとともに分岐部30の外側の横方向にて外側リング250とストラット284とを連結する横方向連結部282を含む。ストラット284は一般的には、隣接するストラット用リング286、288の間を長手方向に延びる長手連結部材である。この実施形態において、ストラット284はほぼオメガ形状を有するほぼ湾曲した部材である。ストラット284は上述したステント240のストラット264よりも曲率半径が小さい。分岐部30が側方分岐部内へ延びる場合、ストラット284は開口の外周を支持するために径方向内側に引かれる。加えて、ほぼオメガ形状であり比較的小さい曲率半径であることにより、ストラット284をより大きく拡張することができ、包囲する中間部80の変形に影響を与えることなく分岐部30のより大きな移動又は拡張を可能にする。代替的な実施形態において、ストラット284のその他の形状は、同様の目的を達成するために使用され得る。
【0046】
図38及び39を参照すると、代替的な実施形態であるステント290が示されており、該ステント290は上述したステント280に類似し、かつ分岐部30の外側を長手方向に延びるとともに中間部80を主たるステント本体14の繰り返し可能なリング28及び連結部26のパターンと連結する少なくとも一つのオメガ状の連結部材292を含む。以前の実施形態と同様に、分岐部30は、該分岐部30が拡張した形態において分岐管の内壁の周縁部又は外周全体と接触するように該分岐管内にて拡張可能となるように構成される。また、中間部80は主たるステント本体と異なるパターンであるために、該中間部80は、分岐部30が側方分岐管内を延びる場合、主たるステントパターンとは異なる程度に径方向に拡張する。連結部材292は主たるステント本体に対して中間部80の異なる拡大を収容するように拡張又は収縮すべく構成されている。この点に関し、連結部材292は、クッション性の減衰部材を提供する、又は主たるステント本体14と中間部80との間の拡張に際しての緩衝部として機能し、それにより主たるステント本体14の拡張が操作時に中間部80に対して制限された効果を有するか、又はその逆である。特に、連結部材292のほぼオメガ状の形状は、直線状又はほぼ直線状の連結部の形状と比較した場合、該連結部材292により大きな拡張を提供する。代替的な実施形態において、連結部材292のその他の形状が、同様の目的、即ち主たるステント本体14に対して中間部80の拡張にクッション性、減衰性又は緩衝性を提供する目的を達成するために使用され得る。
【0047】
図40を参照すると、代替的な実施形態であるステント300が示されており、該ステント300は上述のステント290に類似するが、外側リング302及び内側リング304を含む分岐部30を一般的には含む。内側リングは中央の分岐開口部308を包囲する波状のペタル、突起又はピーク306を定義する。分岐開口部308は、ステント300が拡張していない状態にある場合側方の分岐管へのアクセスを提供する。この実施形態において、内側リング304の波状ピーク306は比較的大きな曲率半径を有し、即ち、それらは、例えば、上述のステント220における内側リング228の対応するピーク238ほどは指向しない。例えば、好ましい実施形態において、ピーク306は約0.125mm乃至約0.225mmの範囲の曲率半径を有し、かつ好ましくは0.170mmである。これと比較して、好ましい実施形態において、ステント220のピーク238は一般的には約0.025mm乃至約0.125mmの曲率半径を備え得る。この点に関し、ピーク306の形状は特殊なバルーンのタイプ及びデザインの使用を可能にする、及び/又は容易にする。特に、この実施形態において、ピーク306のデザイン及び形状はある種のバルーンのデザインを破裂させる可能性は少ない。この実施形態において、分岐部30はステント240、260、280及び290と同様の側方分岐管へのアクセスを提供する補助アクセス開口部255を含んではいないが、代替的な実施形態において、分岐部30はそのような補助アクセス開口部を含むことができる。図41及び42を参照すると、代替的な実施形態であるステント320が示されており、上述のステント300に類似するが、内側リング324が上述のピーク308より小さな曲率半径を備えた波状ピーク326を有する点が異なる。また、この実施形態において、各ピーク326は例えば、マーカを収容するように構成又は寸法化された孔を定義する。
【0048】
図43乃至45を参照すると、代替的な実施形態であるステントが示されているが、該ステントは代替的な主たるステントのパターンデザインを備えた主ステント本体14を有する。図43乃至45の実施形態において、主たるステントパターンは開口セル構造を有する。例えば、ステント340、350、360は各々、繰り返し可能なリング28及び連結部26パターンを有する主たるステント本体14を有し、かつ該連結部26は離間されるとともに二つ又は三つのストラットの組が交互に配置され、離間されるとともに各ストラットの組が交互に配置された連結部を提供する場合と比較して、更に開口したセル構造体を定義する。この点に関し、ステント340、350、360は、主たるステント本体を構成するステント材料の量をより少なくするとともにある種の適用においては所望の臨床効果を有する。例えば、ステントが金属材料から形成される場合、該ステントが患者に留置される場合の金属の表面積比率をより小さくできるので有利である。図43乃至45を参照すると、ステント340、350、360の各々は隣接する外周リング28の間をほぼ長手方向に延びるとともに隣接するリング28の長手方向に隣接するストラット24の対応する長手ストラット部25を連結する連結部26を有する。連結部26は、長手方向に隣接するストラットの一つおきの組を離間するとともに交互に連結し、連結部26は、より開口したセル構造を定義する二つ又は三つのストラットの組毎に離間されるとともに互い違いになる。図43に示されるように、ステント340の一実施形態はほぼ直線状であるとともに長手方向に隣接するストラット24の長手ストラット部25の中間部の間を延びる連結部26を有する。また、長手ストラット部25の中間部は、孔、空間又は間隙341を含むこともでき、それにより使用する材料の量を更に減らすことができる。幾らかの実施形態において、間隙341は、連結部26の長手ストラット部25との接合部に隣接して設けられ得るが、代替的な実施形態(例えば、図46)においては、間隙341は各長手ストラット部の中間部に設けられ得る。この点に関し、孔、空間又は間隙は例えば、金属の表面積の比率を更に減少するために、より少ない材料を使用するステントパターンのデザインを可能にする。図44に示されるように、代替的な実施形態であるステント350が示されており、該ステント350はほぼ湾曲し、かつ長手方向に隣接するストラット24の長手ストラット部25の中間部の間に延びる連結部26を有する。図45を参照すると、別の実施形態であるステント360が示されており、該ステント360はオメガ形状の特徴部362を含む連結部26を有し、該特徴部362は連結部26の長手方向への拡張を可能にする。代替的な実施形態において、連結部26のその他の形状が同様の目的を達成するために使用され得る。
【0049】
図43乃至45に示されるステント340、350、360はステント320(図41)と類似の分岐部30を一般的には含んでおり、かつ外側リング342と内側リング344とを含む。リング342及び344は複数の内側連結部346により相互に連結されている。外側リング344は複数の外側連結部352により楕円形の遷移部材348に連結されている。これらの実施形態において、外側連結部352は一組の先端外側連結部354、356、358を含み、該先端外側連結部は外側リング344の先端側部から分岐部30の先端側部の楕円形の遷移部材まで延びている。先端外側連結部354、356、358は一般的には、S字型、ジグザグ型、又は波状である。この点に関し、先端外側連結部の波状形は、例えば、直線状の外側連結部のデザインより更に大きく変形するとともにより大きな拡張部を収容する。これらの実施形態において、先端外側連結部354、356、358は一般的には、移植時において、側方の分岐管への分岐部30の先端部分のより大きな角度の回動を収容し得る。例えば、先端ペタル362、364は、側方の分岐管内への移植時に90度以上回動する。
【0050】
図46及び47を参照すると、代替的な実施形態のステント370が示されており、上述のステント360に類似するが、一般的には外側リング372及び内側リング374を含む分岐部30を含む。リング372、374は一般的には曲線状部材であり、波状のペタル、突起又はピーク376を含む。この実施形態において、外側リング372は一般的には上述のステント340、350、360の外側リング372ほど曲線状ではない。例えば、図46に示されるように、外側リング372は、一続きの相互に連結されたW字型の領域と見ることができ、該W字型の領域の脚部は、上述の外側リング342の比較される領域よりも直線状である。この点に関し、外側リング372の形状は、側方の分岐管内に留置される際に分岐部30の異なるタイプの拡張特性を可能にする、及び/又は促進する。代替的な実施形態において、外側リング372のその他の形状も使用され得る。
【0051】
図48を参照すると、代替的な実施形態のステント380が示されており、該ステント380は上述のステント370に類似し、かつ外側リング382と内側リング384とを含む分岐部30を含む。リング382及び384は複数の内側連結部388にて相互に連結される。外側リング382は複数の外側連結部392により楕円形の遷移部材390に連結される。リング382、384は一般的には曲線状部材であり、波状のペタル、突起又はピーク394を含む。この実施形態において、外側リング382は一般的には内側リング384と同数のピークを含む。例えば、内側リング384は一般的には、中央分岐開口部397に向かって延びるとともに該開口部を包囲する8個の大きなペタル又はピーク396と、該大きなピーク396間に延びるとともに交互に存在する8個の小さなピーク398と、を含む。小さなピーク398は中央分岐開口部397に向かってより小さな程度にて延びている。操作時に、外側連結部392の遷移部材390との交差地点は回動点を形成し、該回動点を中心にして、大きなペタル396が側方の分岐管内に外向きに展開する、又は回動する。好ましい実施形態において、内側及び外側連結部は共に回動し、それにより大きなペタル396は花のように開口する。また、内側リング384の小さなピーク398は、大きなペタルが側方の分岐管内に外向きに回動する際に変形して拡張する。この点に関し、内側リング384の形状は、側方の分岐管内に留置される際に分岐部30の異なるタイプの拡張特性を可能にする、及び/又は促進し、かつ該側方分岐管の壁部の被覆の程度又は径方向の指示を変更するために提供される。代替的な実施形態において、内側リング384のその他の形状も使用され得る。
【0052】
上述の実施形態の全てにおいて、分岐部30は、ステントが完全に拡張された場合には分岐管内に突出する。分岐部は、拡張に伴い、適用に応じて、異なる長さにて該管内を延びていく。拡張の程度は、約0.1乃至10.0mmの範囲において変更可能である。一つの好ましい実施形態において、伸張する長さは1乃至3mmである。別の好ましい実施形態において、伸張する長さは約2mmである。代替的な実施形態において、分岐管内へ伸張する量は、分岐部30の異なる外周セグメントに対して変更可能である。各実施形態に示されるように、分岐部は約2.5mmの幅と、約2.5乃至3.0mmの全長である。しかしながら、分岐部は種々のサイズの分岐管を収容するために寸法化され得る。分岐部は、分岐管を収容するために、例えば卵型又は円形を含む任意の管状形状に形成され得る。
【0053】
一般的に、多岐にわたる送達システム及び展開法が上述のステントの実施形態とともに使用され得る。例えば、カテーテルシステムは挿入に使用され、ステントはバルーン拡張可能であるか、若しくは自己拡張可能であるか、又はステントはバルーン拡張可能であるとともに分岐部は自己拡張可能である若しくはその逆である。ステントが主たる管内に配置され、かつ分岐部が側方分岐部と整合されると、ステントは拡張される。仮にステントがバルーン拡張可能であるとすれば、該ステントは一回の拡張又は複数回の拡張を伴って拡張する。特に、米国特許第6325826号明細書及び第6210429号明細書に記載されているように、バルーンカテーテル及び側方シースを有するステント送達システムにてステントは展開され得、両明細書は、本明細書中において参照としてその全体が援用される。一つの好ましい実施形態において、キッシングバルーン(kissing balloon)技術が使用され、それにより、一つのバルーンはステントを拡張するように構成され、かつ他方のバルーンは分岐部30を拡張するように構成される。ステントの主要部が主たる管内にて拡張された後に、ステント送達システムが取り除かれ、第二のバルーンが分岐部の側部の孔を貫通し、かつステントの分岐部を拡張するために拡張する。代替的な実施形態において、同一のバルーンが主たる管に挿入され、膨張され、収縮され、引っ込められ、かつ分岐管に挿入され、次いで、分岐部30を拡張するために再び膨張され、分岐管内に該分岐部を突出させる。代替的に、ステントは二つのバルーンにて送達され、かつ主要部及び分岐部が同時に拡張され得る。必要に応じて、分岐部は別のバルーン又は複数の別のバルーンを用いて更に拡張され得る。しかしながら、別の代替物においては主要部及び分岐部を同時に拡張することができる特殊な形状のバルーンを使用する。ステントはまた、その他のタイプのステント送達システムを用いて展開することもできる。代替的に、ステント又は該ステントの一部は自己拡張可能な材料から形成され、拡張は、ステント又は該ステントの少なくとも分岐部30に対して、例えば、ニチノール、コバルトクロムのような自己拡張可能な材料を用いることにより、又は当業者に周知のその他の記憶合金を用いることにより、達成され得る。
【0054】
本発明の目的に適したカテーテルの構成及び操作は、2000年9月15日に出願された米国特許出願第09/663111号に更に記載されており、該出願は、1999年6月4日に出願された米国特許出願第09/325996号及び1999年12月6日に出願された米国特許出願第09/455299号の一部継続出願である2000年7月11日に出願された米国特許出願第09/614472号の一部継続出願であり、これら全ての出願の開示は、本明細書中において参照として援用される。上述の適用が示唆されたカテーテルは例示的なものであり、主題の適用のためのステントに適したその他のカテーテルは本発明の範囲内に含まれることを明記すべきである。代替的な実施形態において、バルーンを備えていないカテーテルが使用され得る。例えば、ステントがニチノール又はコバルトクロムのような記憶合金からなり、又は機械的に自己拡張可能なステントからなる場合、バルーンをカテーテルに含ませる必要はない。更に、本明細書に記載されていないようなものも含むその他任意のカテーテルが本発明に従ってステントを配置するために使用され得る。
【0055】
図25乃至28を以下に参照すると、本発明に従ってステントを展開するための方法の一例の工程が示されている。一例として、該方法はステント12を使用して示されている。そのようなカテーテルシステムを管内に配置し、かつ該システムを分岐部に、又は分岐部付近に配置するための方法は、2002年12月17日に出願された同時に係属する米国特許出願第10/320719号により完全に記載されており、該出願はその全体が参照として本明細書中において援用される。図25に示されるように、カテーテルシステム120は公知の任意の方法を用いて分岐部の基端側に配置される。次に、分岐ガイドワイヤ122がステントの開口部を介して進められ、図26に示されるように分岐管4内へと前進する。好ましい実施形態において、開口部は、上述したように、いくつかの連結部26を除くことにより形成された開口部のような指定された側方分岐開口部であり得る。分岐部30は開口部に隣接している。図27に示されるように、仮に側方シース124が主たるカテーテル120に取り付けられる場合、該主たるカテーテル120は側方カテーテル124に沿って進められる。代替的に、仮に側方シース124が主たるカテーテル120から分離される場合、第二のカテーテル又は側方シース124はステントの開口を介して独立して進められ、分岐管内へと進む。分岐部30は、側方シース124が分岐管4内へ挿入されると、該分岐管4の内腔の一部上に配置される。図28を参照すると、主たるカテーテル120に配置された第一のバルーン126が次いで拡張され、ステント本体を拡張し、第二のカテーテル又は側方シース124に配置された第二のバルーン128がまた拡張され、分岐部30がステント本体に対して外向きに押され、分岐管の少なくとも一部をステントが被覆した状態を提供する。次いでバルーンが収縮され、カテーテルシステム及びガイドワイヤが取り除かれる。
【0056】
次に、図29乃至31を参照すると、本発明のステントを展開するための別の方法の工程が示されている。一例として、該方法はステント12を使用して示されている。図示された方法は、脱出バルーン135(herniated balloon)(図32)を含む主たるカテーテル131を有するカテーテルシステムを使用して達成され得る。特に、例えば、ステントは2003年7月18日に出願された米国特許第60/488006号に記載されているような脱出したバルーンを有するステント送達システムにて展開されており、該出願の全体の内容は、本明細書において参照として援用される。図29に示されるように、カテーテル131はバルーン135を含み、該バルーン135は、バルーンの円筒状外面134から外向きに突出する突出部137を有する。
【0057】
図32を参照すると、拡張した状態にて示されている、脱出バルーン135はほぼ円筒形であり、突出部137は、本発明の原理に従って、膨張に伴いバルーンの外面134から外側に移動する任意の付属物又は該バルーンとの一体的な部分であり得る。好ましい実施形態において、突出部137はほぼ円筒形の形状を保持するバルーン壁のその他の部分よりも更に大きな拡張性を有する該バルーン壁の一部である。別の実施形態において、突出部137はバルーン壁に取り付けられる固体構造体であり得る。突出部137は分岐部30の展開に効果的に望ましい任意の形状を有する。一つの好ましい実施形態において、突出部137は半球状である。別の好ましい実施形態において、突出部137は卵型の形状を有する。使用時において、ステント12は突出部137が分岐部に配置されるようにバルーン135上に圧着される。図示されるように、突出部137は分岐部30の径方向内側の側部に隣接して、又は該側部に沿って配置される。脱出したバルーン135は、拡張可能な要素を側方分岐部4に向かって偏向することにより該要素に横方向外向きに応力を付与して、分岐部30を拡張する及び/又はステント12の外向きに展開可能な構造部を展開するために使用される。突出部137はバルーンの全長に沿って任意の位置に配置され得る。例えば、ステントの中間の1/3の位置に配置される。
【0058】
一実施形態において、バルーンは複合材料から構成され得る。弾性材料と、半コンプライアント(semi compliant)から非コンプライアントな(non compliant)材料との組み合わせ、例えば、ウレタン、シリコン及びラテックス(弾性)、ポリエチレン、ハイトレル(hytrel)、ペバックス(pebax)、ポリアリールエーテルエーテルケトン、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリエステル、熱可塑性ポリエーテルエーテルケトン及びポリプロピレン(半コンプライアントから非コンプライアント)が使用され得る。バルーンはまた、上述の材料と、ケブラー(Kevlar)、絹、綿、毛のような織物との組み合わせから構成され得る。この構成において、織物は所望の脱出バルーンの形状を有するロッド上に巻回されるか、又は編み込まれて、次にポリマーが該ロッド上に押し出されるか、又は浸漬コーティングされる。該複合体は硬化されるか、熱硬化されるか、又は共に接着剤にて融合される。次いで、ロッドが取り除かれ、残りの形状が脱出バルーンとなる。該バルーンは、成形されたカラーを使用する、若しくは対象物をバルーンの表面に接着剤で付着することにより、又は脱出部若しくは突出部を形成するために大量の接着剤を使用することにより、付属物を従来のバルーンに加えることによっても構成され得る。代替的な実施形態において、バルーンは三つの小さなバルーンを成形して、それらを形状が円形である中央バルーンと平行に取り付けることによって構成され得る。バルーンは共通の膨張ポートを共有する。バルーンが膨張される時、中央のバルーンが脱出部となる。
【0059】
図29乃至31を参照すると、突出部137はステントの開口部と直接適合するように構成され得る。図29に示されるように、カテーテル131はガイドワイヤ133上を進められ、分岐部の基端側に配置される。図30に示されるように、カテーテルは、バルーンの突出部137が分岐部に配置されるまで進められる。一実施形態において、突出部137は、該突出部137が分岐部と実際に接触するのに十分な程度にカテーテル131から外向きに突出し、それにより、分岐管4と整合する方法を提供する。最終的には図31に示されるように、バルーン135が拡張され、同時にステントが拡張し、分岐部30が分岐管4へ向かって押される。バルーンの膨張に伴って、脱出した部分137が側方分岐部に向かって分岐部30を拡張及び伸張し、閉塞された側方分岐動脈の入り口を開口する。
【0060】
代替的な方法において、ステントは脱出バルーンと二重内腔送達系とを用いて送達される。この系は、同心状のガイドワイヤ内腔及びバルーン膨張内腔を備えた第一の内腔を定義する主カテーテルと、該主カテーテル上に上述の脱出したバルーンと、ガイドワイヤ内腔を備えた側方シースと、ステントとを含む。ステントは、主カテーテル、バルーン及び側方シース上に圧着され、該側方シースは分岐開口部又は側方孔を介してステントを退出させる。側方シースの先端はステント分岐開口部を分岐管4と整合させるために使用される。
【0061】
別の実施形態において、付属物又は脱出物は、図33に示される系138のような送達系において第二のカテーテル又は側方シースに配置される。この場合、系は2個のバルーンからなる系である。小さいほうのバルーン140は脱出部と同様の方法にてステントに配置される。付属物又は脱出物は膨張内腔141と、分岐管4を配置するためにガイドワイヤ142を受承するための内腔とを備え得る。
【0062】
上述されたような分岐部30を備えたステントの使用のための一つの特殊な適用には、薬物の局所送達がある。上記に論ぜられるように、ステント内再狭窄を含む再狭窄は、血管系に関する医療行為に関連した共通の問題である。再狭窄を治療する及び/又は阻止するために有用である薬剤が見出されており、これらは、全身投与というよりは、再狭窄の可能性のある部位又は実際の再狭窄部位に局所的に送達されることが最も好ましい。
【0063】
本明細書に使用されるように、「阻止する」なる用語は、疾病若しくは状態の発生若しくは重症度を、又は疾病若しくは状態の症状を、止めること又は低減することを含む。
本明細書に使用されるように、「治療する」なる用語は、実質的に、疾病若しくは状態の重症度を、又は疾病若しくは状態の症状を低減すること、或いは、疾病若しくは状態の出現を、又は疾病若しくは状態の症状を実質的に低減することを含む。「治療する」なる用語は実質的に、疾病若しくは状態を、又は疾病若しくは状態の症状を完全に根絶することを含む。「治療する」なる用語はまた、疾病若しくは状態の発生若しくは重症度を、又は疾病若しくは状態の症状を、阻止すること、止めること、又は低減することを包含する。
【0064】
例えば、抗再狭窄薬とともに薬物が特定の体内の部位にて主として有用である場合、全身投与は必要ではなく、しばしば望ましからざるものとなる。例えば、薬物の全身投与は時として望ましくない副作用を生ずる。また、全身送達法を用いて治療に必要な部位に一定の薬物送達を行うことは困難である。全身に投与された薬物はしばしば濃度のピークと最下点とを循環するので、毒性の時期と効果を奏しない時期とを生ずることになる。これに対して、局所的に送達された薬物は治療が必要である部位に高濃度にて送達される一方、薬物の全身濃度は最小化されるので、副作用を最小化する、又は回避することができる。更に、局所送達は、望ましくない変動を最小限に留めながら、治療部位において適切な薬物レベルを維持することが容易である。
【0065】
本発明に従うステントは、ステント壁上及び/又はステント壁内に一つ以上の薬物デポを有することもできる。本明細書に使用されるように、「デポ」なる用語は薬物を保持し、その後に放出するためにデザインされた少なくとも一つの薬物の貯蔵所を意味する。現在の技術に従って、薬物を含む材料は、しばしば薬物含有材料をステントの壁上に塗布することにより該ステントと結合される。従って、「塗布」は、デポを参照し、本明細書においては該デポを記述する上において使用されるが、この使用は説明上便利であるためのみのものであって、その方法に限定するものではなく、現在利用可能であるか、又は利用可能になる薬物とステントとを結合するその他の方法も特に考慮される。別の非限定的な例として、以下に更に記載されているように、ステントは、薬物を分泌するか、そうでなければ該薬物を放出する遺伝子操作された細胞で播種され得る。更に別の非限定的な例として、薬物を含有する生物学的に適合可能なポリマーが所望のサイズ及び形状の固形物中に成形され、薬学的に許容される方法を用いてステントに付着される。
【0066】
「デポ」なる用語は、コーティングされているか、又はそうでなければ薬物若しくは薬物を含有する材料と結合されるステントの領域を一般的には参照する。任意の与えたれたデポはその他のデポから分離される。例えば、ある実施形態において、デポは薬物を含有する材料の分離した固体から形成される。別の例として、本発明に従うステントの壁部は開口した空間からなり、デポもまた空間を含む。例えば、薬物若しくは薬物を含む材料がステント上に被覆若しくは播種されてデポを形成する実施形態において、該デポは開口した空間を含む。一つのデポは第二のデポに当接又は隣接しているが、該第二のデポは一般的には、以下に詳細に記載されるように、異なる薬物及び/又は異なる濃度の薬物を一般的には含む。
【0067】
本発明に従うステントのデポは、ステント壁「上」又はステント壁「内」にあることが理解されるであろう。例えば、ステントを留置した部位にて管壁の細胞に対して主として薬物を放出することが望ましい場合、薬物を含有する固体をコーティングする、付着する、又はそうでなければ該薬物をステント壁の外側のみに結合させることが望ましいであろう。別の例として、薬物をステントから下流側にある身体の器官、組織又は領域に送達することが望ましい場合、薬物を含有する固体をコーティングする、付着する、又はそうでなければ該薬物をステント壁の内側のみに結合させることが望ましいであろう。更にその他の実施形態において、薬物を含有する固体をコーティングする、付着する、又はそうでなければ該薬物をステント壁の内側、ステント壁の外側及び/又は壁内部の開口した空間と内向きに対面するステント壁の一部に結合させることが望ましいであろう。
【0068】
「薬物」、「薬物化合物」及び「薬剤」なる用語は、それらがそうでないことが記載されていない限り、本明細書においては相互に変換可能に使用される。これらの用語は、製薬的に許容可能な物質(即ち、ヒトのような哺乳動物の体内における使用に対して安全であり、かつ体細胞に何らかの生物学的効果を有する物質)を意味するために、広く解釈されるべく意味を有する。該用語はまた、ヒトのような哺乳動物の体内における使用に対して安全性が試験されている、及び/又は、それらが体細胞においていかなる生物学的効果を有するかが明らかとなっている物質を含む。本明細書において用語が定義されている薬物であり得る分子のタイプの例としては、たんぱく質及びペプチド、小さな分子、抗体、マルチ循環分子(multi−cyclical molecules)、マクロライド及び核酸を含むが、それらに限定されるものではない。本明細書において提供される一般的な例及び特殊な例並びに同様の物質は、本発明に従う用語「薬物」において含まれる。
【0069】
本発明に従うステントのデポは貯蔵された薬物を放出又は溶出可能である。従って、本発明のデポは、貯蔵される薬物を取り込む、包囲する、付着する又はそうでなければ保持して、後に放出することのできる任意の材料から形成される。本発明に従うステントのデポは好ましくは制御可能に薬物を放出できる。従って、本発明のデポは、貯蔵される薬物を取り込む、包囲する、付着する又はそうでなければ保持して、後に制御可能に放出することのできる任意の材料から形成されることが好ましい。
【0070】
「制御可能に放出する」、「制御可能な放出」及び「制御可能に放出」なる用語は、本明細書において、選択された条件下にて、所定の速度及び持続時間における薬物の放出を記載するものとして使用される。徐放性は制御可能な放出の一つの形態である。
【0071】
ある好ましい実施形態において、本発明のデポは薬物が装填された一つ以上の生物学的に適合可能なポリマーからなる。ある実施形態において、使用される生物学的に適合可能なポリマーはステントが移植された内腔壁への刺激が最小化されている。薬物を装填した生物学的に適合可能なポリマーをステント内又はステント上に組み込むための方法は、ステントをポリマーにてコーティングすることを一般的には含み、当業者には周知である。例えば、米国特許第5679400号明細書を参照されたい。
【0072】
薬物を生物学的に適合可能なポリマーに装填するための幾らかの形態は本発明により予想されている。例えば、薬物はポリマー中に成形され、ポリマー内に取り込まれるか若しくは包囲される、ポリマーに共有結合的に付着される、ポリマーに物理的に接着される、又はそうでなければ、生物学的に適合可能なポリマー内に組み込まれ得る。
【0073】
生物学的に適合可能なポリマーは、例えば、生理学的条件下における所望の放出速度又はポリマーの安定性の所望の程度のような因子に応じて、生物学的に安定なモリマーであるか、又は生物学的に分解可能なポリマーであるかのいずれかであり得る。
【0074】
本発明と関連して使用できる生物学的に分解可能なポリマーは、ポリ(L−乳酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−コ−吉草酸塩)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(グリコール酸−コ−トリメチレンカーボネート)、ポリリン酸エステル、ポリリン酸エステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、コポリ(エーテル−エステル)(例えば、PEO/PLA)、ポリアルキレンシュウ酸塩、ポリフォスファゼン、並びにフィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン及びヒアルロン酸のような生体分子であるが、それらに限定されるものではない。
【0075】
本明細書と関連して使用できる生物学的に安定なポリマーは、ポリウレタン、シリコン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイソブチレン、エチレン−アルファオレフィンコポリマー、アクリル酸ポリマー及びコポリマー、ポリ塩化ビニルのようなハロゲン化ビニルポリマー及びコポリマー、ポリビニルメチルエーテルのようなポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデン及びポリ塩化ビニリデンのようなポリハロゲン化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリスチレンのようなポリビニル芳香族、ポリビニル酢酸のようなポリビニルエステル、エチレン−メチルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂及びエチレンビニル酢酸コポリマーのようなビニルモノマー同士のコポリマー及びビニルモノマーとオレフィンとのコポリマー、ナイロン66及びポリカプロラクタムのようなポリアミド、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、レーヨン、レーヨン−トリアセテート、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロファン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル及びカルボキシメチルセルロースを含むがそれらに限定されるものではない。
【0076】
あるその他の実施形態において、本発明に従うステント上又はステント内のデポは薬物が包含される又は取り込まれたリポソームからなる。薬物が装填されたリポソームをステント内又はステント上に組み込むための方法は、ステントをポリマーにてコーティングすることを含み、当業者には周知である。例えば、Kallinteri P.他の「デキサメタゾン含有リポソーム:被覆された金属ステントからのデキサメタゾンの徐放性の薬物送達系としての適用可能性のインビトロ試験(Dexamethasone incorporating liposomes:an in vitro study of their applicability as a slow releasing delivery system of dexamethasone from covered metallic stents)」、Biomaterials、23(24):4819−26(2002)を参照されたい。更にその他の実施形態において、本発明に従うステント上又はステント内のデポは、例えば治療用たんぱく質のような所望の薬物を分泌、又は放出する遺伝的に操作された細胞からなる。遺伝的に操作された細胞をステント内又はステント上に組み込むための方法は、該細胞をステント上に播種する方法を含み、当業者には周知である。例えば、Dichek,D.A.他の「血管内ステントへの遺伝子操作された内皮細胞の播種(Seeding of Intravasclar Stents With Genetically Engineered Endothelial Cells)」、Circulation,80:1347−1353(1989)、Flugelman M.Y.他による「ステントを展開してインビトロ中にて流速にさらした後に付着し、かつ生存した状態である遺伝子操作された内皮細胞(Genetically engineered endothelial cells remain adherent and viable after stent deployment and exposure to flow in vitro)」、Circ Res、70:348−54(1992)を参照されたい。
【0077】
一つ以上のデポは本発明に従うステントの壁部内又は壁部上の任意の位置に存在し得る。デポは本発明に従う任意のステント及び全てのステントと共に使用され得る。デポは本発明に従うステントの主たる管部の壁部内又は壁部上に存在し得る。同様に、デポは本発明に従うステントの分岐部の壁部内又は壁部上に存在し得る。デポの位置は、高濃度の薬物送達に所望となる位置に依存する。
【0078】
本発明のステント上又はステント内のデポの大きさは、ステント本体が製造される材料、ステント本体及びデポの透過性、デポの薬物を保持する効率、薬物の濃度、並びに薬物放出の所望の濃度及び持続時間のような種々のパラメータに依存する。デポは本発明に従うステントの主たる管部の外周全体、又は外周の一部のみの周囲に延びている。同様に、デポは、本発明に従うステントの主たる管の全長にわたり、又は該長さ方向の一部のみに対して長手方向に延びている。本発明に従うステントの分岐部に関して、デポは壁部の全体若しくは一部のみを覆うか、又は壁部全体中又は該壁部の一部の中に存在する。
【0079】
デポの全容積を増大することが望ましい場合、デポの厚み又は深さよりは、その長さ及び/又は幅を増大させることが時として望ましい。即ち、ステントの内腔内を更に深くデポを延長させるよりはむしろ、ステントの壁部に沿って又は壁部内にてデポのサイズを増大させることが好ましい。ステントの内腔内に更に深く延びすぎるデポはステントを貫通する流体の流れを妨げることになり、外側の壁部上に過剰に厚く存在するデポはステントを管内にて変形し、流体の流れを妨げることになる。しかしながら、管の小さな領域に対して薬物の濃度を最大化するために小さな表面積に大容量のデポを濃縮させることは望ましいであろう。反対に、管の大きな領域に沿って薬物を送達させることが望ましいようなその他の例において、ステントの壁部に沿って、又は壁部において大きな表面積を有するデポを使用することが望ましい。
【0080】
従って、所望の薬物分布並びに治療させるべき主たる管及び分岐管の大きさに従って調整されるデポの長さ、幅及び厚みは変更可能である。例えば、狭い管内において流体の流れを妨げるのに十分な厚みのデポは、より大きな管に対しては最適な厚みであるかもしれない。
【0081】
付随的に、デポの薬物濃度は、デポから溶出される薬物の所望の速度及びデポの局所的な領域における薬物の所望の濃度に従って変更される。従って、デポの長さ、幅及び厚みのパラメータ並びに薬物濃度は、種々のサイズの管内における所望の領域へ所望の濃度の薬物を溶出すべく該デポを調整するために変更される。
【0082】
本発明に従うステント内又は該ステント上のデポに組み込むことのできる抗再狭窄薬の非限定的な例は、抗凝血剤、抗増殖剤、抗遊走剤、抗代謝剤、抗炎症剤及び免疫抑制物質並びにそれらの組み合わせを含む。特に有用な抗再狭窄薬は、パクリタキセル、ラパマイシン及びHDAC阻害剤を含む。平滑筋細胞(SMC)増殖の有効な阻害剤であるヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤の例は、トリコスタチンA(TSA)、スベロイルアニリドヒドロキサミン酸(SAHA),オキサムフラチン、m−カルボキシ桂皮酸ビスヒドロキサミド(CBHA)、環状ヒドロキサム酸含有ペプチド1(CHAP1)、環状ヒドロキサム酸含有ペプチド31(CHAP31)、スベリンビスヒドロキサメート(SBHA)、ピロキサミド及びスクリプタイドのようなヒドロキサミン酸を含むがそれらに限定されるものではない。HDAC阻害剤、それらの使用法、それらを含有するステントに関する更に詳細な説明は、2002年7月24日に出願され、代理人整理番号が03/23768号であり、発明の名称が「ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を制御可能に放出できるステント(STENTS CAPABLE OF CONTROLLABLY RELEASING HISTONE DEACETYLASE INHIBITORS)」である、本発明の共通の譲受人により譲渡された米国特許仮出願に開示されており、本明細書においてはその全体が参照として援用される。
【0083】
抗再狭窄薬に加えて、本発明に従うステントは、その他の薬物を局所送達するための担体としても使用され得る。非限定的な例として、本発明のステントは特に抗血栓薬の局所送達に適している。血栓症(血栓又は傷の凝血塊)は時として、血管に関する医療行為に伴って起こる。例えば、血栓は、経皮経管冠動脈形成(「PTCA」、一種のバルーン形成術)又は冠動脈バイパス手術のような血管インターベンショナル処置により動脈壁が物理的に傷つくことにより生ずる。血栓は死に至らしめることもあるが、副作用として血栓を伴う可能性のある該処置は、それ自身、生命を救い、広く使用される。加えて、血栓はアテローム性動脈硬化のような自然の疾病が進行することによっても生ずる。従って、血管の処置を受けている患者に対して抗血栓薬を投与することはしばしば望ましいものである。
【0084】
多くの抗血栓薬が当該技術分野において公知である。非限定的な例としては、アスピリン(アセチルサリチル酸)、プロスタグランジンE1、選択的なトロンボキサンA2阻害剤、選択的なトロンビン阻害剤、血小板受容体GPIIb/IIIaブロッカー、組織プラスミノーゲン活性剤、ストレプトキナーゼ、ヘパリン、ヒルジン、ビバリルジン及びキストリン並びにその他の血小板及び/又はトロンビン阻害剤である。抗再狭窄薬とともに、血栓の可能性のある部位に局所的に抗血栓薬を投与することは、全身投与であることが大いに好ましい。
【0085】
本発明に従うステント内又は該ステント上のデポに組み込むことのできる更に、非限定的な薬物の例は、抗悪性腫瘍薬、抗有糸分裂性薬、抗血小板薬、抗フィブリン薬、抗トロンビン薬、抗生物質、抗酸化剤及び抗アレルギー物質並びにそれらの組み合わせを含む。
【0086】
本発明に従って使用するためのデポは一つ以上の異なる薬物を含み得る。例えば、相加効果又は相乗効果を有する二つ以上の薬物を含むことがしばしば望ましい。一つ以上の薬物が一つのデポに組み込まれている場合、互いに、干渉しない、分解しない、不安定にならない、又はそうでなければ互いを妨害しない薬物を組み込むことが通常好ましいであろう。しかしながら、幾らかの場合、第一の薬物と、該第一の薬物の活性を所望の様式に低減又は変更する第二の薬物とを含むことが望ましいであろう。同様に、異なるデポが、異なる薬物を含むか又は同様の薬物の異なる濃度を含むであろう。多くの可能な置換により、処置において柔軟性を与えることが可能になる。
【0087】
本発明に従うステントは、ステントの位置において、主たる管及び分岐管の両方の壁部の細胞に対して薬物の局所送達用の担体として使用され得る。ステントに接する領域の細胞の治療に特に適した薬物は、抗再狭窄薬及び抗血栓薬を含む。所望であれば、異なる薬物濃度又は異なる薬物が、ステント壁の異なる領域内又は領域上に配置されるデポに含まれ得る。例えば、主たる管の細胞を第一の薬物、薬物の組み合わせ及び/又は薬物濃度で治療し、分岐管の細胞を第二の異なる薬物、薬物の組み合わせ及び/又は薬物濃度で治療することが望ましいであろう。別の例として、管の分岐部付近に高濃度の抗再狭窄薬を維持することが望ましいであろう。更に別の非限定的な例として、高濃度の再狭窄薬をステントの三つの開口端部(二つは主たる部分であり、一つは分岐部である)に維持させることが望ましいであろう。本明細書の開示を読むことによって、二つ以上のデポの多くの組み合わせが本発明の精神及び範囲内において可能であることを当業者は理解するであろう。
【0088】
本発明に従うステントは、ステントの下流側にある身体の器官、組織又は領域に薬物を送達するために担体として使用され得る。例えば、本発明に従うステントは心臓のような器官に血液を供給する動脈内に、該器官に近い位置において配置され得る。ステント内又はステント上のデポから溶出する薬物は、血流によって器官へ運ばれる。このようにして、組織、器官及び身体の領域の局所送達が達成される。本発明に従うステントを使用して、第一の薬物、薬物の組み合わせ及び/又は薬物濃度がステントの主たる管から下流側にある器官、組織又は領域に送達される一方、第二の異なる薬物、薬物の組み合わせ及び/又は薬物濃度がステントの分岐部から下流側にある器官、組織又は領域に送達される。この差動送達は、第一の薬物、薬物の組み合わせ及び/又は薬物濃度を有するデポを分岐部を貫通して流れる血液と接触することのないステントの主たる部分の領域内又は領域上に配置し、第二の異なる薬物、薬物の組み合わせ及び/又は薬物濃度を有する第二のデポをステントの分岐部内又は分岐部上に配置することにより達成される。本明細書の開示を読むことによって、二つ以上のデポの多くの組み合わせが本発明の精神及び範囲内において可能であることを当業者は理解するであろう。
【0089】
本発明に従うステント内又はステント上のデポに組み込まれ得る薬物の特殊なかつ非限定的な例として以下の薬物が含まれる。抗悪性腫瘍薬及び/又は抗有糸分裂性薬の例としては、ドセタキセル(ドイツ国フランクフルトに所在のアヴェンティス(Aventis)社から入手可能なタキソテール(Taxotere)(登録商標))、メトトレキセート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、塩酸ドキソルビシン(例えば、ニュージャージー州ピーパック(Peapack)に所在のファルマシアアンドアップジョン(Pharmacia & Upjohn)社から入手可能なアドリアマイシン(登録商標))及びマイトマイシン(例えば、コネチカット州スタムフォード(Stamford)に所在のブリストルマイヤーズスクイブ社(Bristol−Myers Squibb Co.)から入手可能なムタマイシン(登録商標))が含まれる。抗血小板薬、抗凝血薬、抗フィブリン薬及び抗トロンビン薬の例としては、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、フォースコリン、バピプロスト、プロスタサイクリン及びプロスタサイクリン類似体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗トロンビン薬)、ジピリダモール、糖タンパクIIb/IIIa血小板膜受容体アンタゴニスト抗体、組み換えヒルジン及びアンジオマックス(登録商標)(マサチューセッツ州ケンブリッジに所在のバイオジェン(Biogen)社から入手可能)等のトロンビン阻害薬を含む。細胞増殖抑制薬及び抗増殖薬の例としては、アンジオペプチン、カプトプリル(例えば、コネチカット州スタムフォードに所在のブリストルマイヤーズスクイブ社から入手可能なカポテン(Capoten)(登録商標)及びカポジド(Capozide)(登録商標))シラザプリル又はリシノプリル(ニュージャージー州ホワイトハウスステーション(Whitehouse Station)に所在のメルク社から入手可能なプリニビル(Prinivil)(登録商標)及びプリンジド(Prinzide)(登録商標))のようなアンジオテンシン変換酵素阻害薬、カルシウムチャネル遮断薬(ニフェジピンのような)、コルチシン、繊維芽細胞増殖因子(FGF)拮抗薬、ヒスタミン拮抗薬、ラボスタチン(ニュージャージー州ホワイトハウスステーションのメルク社(Merck & Co.,Inc.)から入手可能な商標名Mevacor(登録商標)である、HMG−CoAレダクターゼ阻害薬)、モノクロナール抗体(例えば、血小板由来成長因子(PDGF)受容体に特異的なもの)、ニトロプルシッド、ホスホジエステラーゼ阻害薬、プロスタグランジン阻害薬、スラミン、セロトニン遮断薬、ステロイド、チオプロテーゼ阻害薬、トリアゾロピリミジン(PDGF拮抗薬)及び一酸化窒素を含む。抗アレルギー薬の例としてはペミロラストカリウムである。使用され得るその他の治療用物質又は治療剤は、α−インターフェロン及びデキサメタソンである。上述の治療用物質又は治療剤の予防及び治療特性は当業者に周知である。
【0090】
本発明はまた、本発明に従うステント又は複数のステントからなるキットを提供する。ステント又は複数のステントに加えて、本発明に従うキットは、例えば、送達用カテーテル、バルーン及び/又は使用のための指示書を含むことができる。本発明に従うキットにおいて、ステントはバルーン又はカテーテルに装着され得る。代替的に、該ステントはバルーン又はカテーテルから分離され得、使用前にそれらの内部又はそれらの上に取り付けられ得る。
【0091】
本発明は特殊な実施形態及びその実施例と組み合わせて記載されてきたが、本発明の開示を読むことにより、種々の代替物、修正及び変更が当業者に明白であることは明らかであろう。従って、添付した請求の範囲の精神及び広い範囲内にそのような代替物、修正及び変更が包含されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】閉塞物を有する血管分岐部を示す。
【図2】血管分岐部にて実施される従来技術のステントを示す。
【図3】血管分岐部にて実施される従来技術のステントを示す。
【図4】血管分岐部にて実施される従来技術のステントを示す。
【図5】本発明に従う拡張していないステントの一実施形態の平面図である。
【図6】図5に示された拡張していないステントの一部の拡大図である。
【図7】図5のステントの拡張した形態における拡張可能な分岐部の斜視図である。
【図8】本発明に従うステントの別の実施形態の一部の拡大図である。
【図9】本発明に従うステントの代替的な実施形態の一部の拡大図である。
【図10】図9のステントの拡張した形態における拡張可能な分岐部の斜視図である。
【図11】血管分岐部にて導入される図5のステントの拡張した状態における概略図である。
【図12】血管分岐部に導入される図9のステントの拡張した状態における概略図である。
【図13】本発明に従うステントの別の実施形態の一部の拡大図である。
【図14】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図15】図14に示された拡張していないステントの一部の拡大図である。
【図16】本発明に従うステントの別の実施形態の一部の図である。
【図17】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図18】図17のステントの拡張可能な分岐部の拡張した形態の斜視図である。
【図19】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図20】図19のステントの一部の拡大図である。
【図21】図19のステントの拡張可能な分岐部の拡張した形態の図である。
【図22】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図23】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図24】図23のステントの拡張可能な分岐部の拡張した状態における図である。
【図25】一実施形態に従う、本発明のステントを挿入する方法の工程を示す。
【図26】一実施形態に従う、本発明のステントを挿入する方法の工程を示す。
【図27】一実施形態に従う、本発明のステントを挿入する方法の工程を示す。
【図28】一実施形態に従う、本発明のステントを挿入する方法の工程を示す。
【図29】本発明のステントを挿入する別の方法の工程を示す。
【図30】本発明のステントを挿入する別の方法の工程を示す。
【図31】本発明のステントを挿入する別の方法の工程を示す。
【図32】図29乃至31の方法にて使用するための脱出した(herniated)バルーンの図である。
【図33】本発明の別の方法に従うステントを挿入するための別のステント送達システムの図である。
【図34】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図35】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図36】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図37】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図38】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図39】図38のステントの拡張した形態における斜視図である。
【図40】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図41】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図42】図41のステントの拡張した形態における斜視図である。
【図43】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図44】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図45】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図46】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図47】図46のステントの拡張した形態の斜視図である。
【図48】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用ステントの分野に関し、より詳細には、管分岐部内又は該管分岐部付近における病巣及びその他の問題箇所を治療するためのステントに関する。
【背景技術】
【0002】
本願は、2002年8月21日に出願された米国特許仮出願第60/404756号、2003年7月16日に出願された米国特許仮出願第60/487226号及び2003年7月18日に出願された米国特許仮出願第60/488006号の利益を請求する2003年8月21日に出願された米国特許出願第10/644550号の利益を請求する2003年11月12日に出願された同時に係属する米国特許出願第10/705247号の一部継続出願であり、これらの出願の全体の内容は、本明細書において参照として援用される。
【0003】
本願はまた、米国特許第6325826号として特許化された1999年6月4日に出願された米国特許出願第09/326445号の一部継続出願である2000年9月22日に出願された同時に係属する米国特許出願第09/668687号の一部継続出願である。本願はまた、米国特許第6599316号として特許化された2000年12月27日に出願された米国特許出願第09/750372号の継続出願である2003年5月19日に出願された米国特許出願第10/440401号の一部継続出願である。本願はまた、米国特許出願第09/326445号の継続出願である2001年9月24日に出願された米国特許出願第09/963114号の一部継続出願である。米国特許出願第09/326445号は、1996年11月4日に出願された米国特許出願第08/744002号の一部継続出願である米国特許第6210429号として特許化された1998年1月14日に出願された米国特許出願第09/007265号の利益を請求する1999年1月13日に出願されたPCT出願第US99/00835号の一部継続出願である。上述の文献の全ての全体の内容は、本明細書において参照として援用される。
【0004】
ステントは、生体内人工器官の足場若しくはその他の装置であり、典型的には、静脈、動脈若しくはその他の管状生体器官の管内に配置若しくは移植され、該管を拡大する、若しくは該管壁を補強することにより、閉塞部、狭窄部、動脈瘤、或いは折畳まれた、切開した、脆弱化した、罹患した若しくは異常に拡張した管又は管壁を治療する。特に、ステントは冠状動脈系、心臓系、肺、神経血管系、末梢血管系、腎臓系、消化器官系及び生殖器官系に非常に一般的に移植されており、泌尿器官、胆管、食道、気管気管支樹及び脳内における移植にも成功しつつあり、これらの器官を補強する。現在、ステントに対して汎用される二つの主要な適用は、弾性の反動を回避するとともに管壁を改造することにより血管形成の結果を改善すること、及び冠状動脈並びに末梢動脈のバルーン血管形成術に起因する血管壁内における切開を、該切開部位における内腔内にて血管内膜フラップとともに押圧することにより、治療することである。従来のステントは、血管系の分岐地点であって、より大きな主たる動脈から分岐する第二の動脈が存在する分岐地点又は該分岐地点付近における病巣のような、より複雑な血管の問題箇所を治療するために使用されてはいたが、成功する確率は限られたものであった。
【0005】
従来のステント技術は比較的よく開発されている。従来のステントのデザインは典型的には、真直ぐな管状の、単一のタイプのセル構造、形態、又はパターンであり、長手軸に沿った翻訳を介して繰り返されている。多くのステントのデザインにおいて、この繰り返しの構造、形態又はパターンは、分岐部において血液の流れを妨げるストラット(strut)又は連結部材を有する。更に、ストラット及び連結部材の形態は、管の分岐した領域において、分岐した管を治療するために手術後に装置を使用する場合障害となり得る。例えば、主たる内腔へ第一のステントを展開することは、主たる管の治療が疾病組織の変位(例えば、プラークのシフト、即ち「スノープラウ(snow plowing)」による)、閉塞、管の痙攣、血管内膜フラップを伴うか若しくは伴わない切開、血栓症、塞栓症、及び/又はその他の血管性疾患により不十分であるような場合、管分岐部の分岐した管口を介して分岐ステントを医師が挿入することが阻止される。その結果、医師は、そのような更なる治療が必要ではない場合にステントを分岐部に挿入するか、又は代替的にそのような側部内腔を治療しない又は「犠牲にする」という選択肢を選ぶかのいずれかを選択するであろう。従って、管分岐部又は該管分岐部付近において病巣を備えた管を治療するために通常のステントを使用すると、最初の処置後において、及び将来的に主たる管、分岐した管及び/又は分岐部における更なる処置において、患者に対するステントの使用の利益を妥協する危険性が生ずる。
【0006】
通常のステントは、範囲対アクセスの考慮を対立させてデザインされている。例えば、範囲を広くすると、ステントのセル構造体のサイズは管壁を最適に支持するために最小化され、それにより組織の脱出が阻止されるか又は低減される。アクセスを向上させると、血流及び分岐した管へ将来的に移植する可能性がある分岐ステントのアクセスを提供するために、セルのサイズは最大化され、それにより「ステントの拘束(jailing)」が阻止されるとともに移植材料の量が最小化される。通常のステントのデザインは一般的には、これらの両方に取り組もうと試みるために一方を考慮することを他方を考慮するために妥協している。側方分岐部の拘束、プラークの変位の危険性、全体的な閉塞及び処置の困難性を含む本願の発明者らにより観察された問題点は、本発明の発明者らに、新規な従来にはない特殊なステントであって、上述の多岐にわたる血管系疾患を治療するためのより簡便、安全かつ信頼のおけるステントの開発を行う動機を提供し続けている。
【0007】
従来のステントは臨床上の処置において日常的に使用されてはいるが、これらのステントがステント内再狭窄(ISR)又は内膜過形成に起因する再狭窄を完全に回避することが不可能であることを臨床データは示している。ステント内再狭窄はステントの移植に伴い該ステントにより覆われる領域において動脈の狭窄又は閉塞は再発することである。冠状動脈ステントで処置した患者はステント内再狭窄に苦しむであろう。
【0008】
内膜過形成に起因する再狭窄の量を低減するために種々の薬理学的な試みがなされてきた。これらの試みの多くは、経口又は血管内投与を介して薬物を全身に送達するという処置である。しかしながら、全身への試みの成功は限られたものであった。
【0009】
薬物の全身への送達は生来的に限られたものである。その理由は、負担を与える領域への一定した薬物送達を達成することは困難であり、かつ全身投与された薬物はしばしば濃度のピーク時と最低時とを周期的に繰り返し、毒性となる時期と薬効を示さない時期とを生ずるからである。したがって、効果的とするには、再狭窄抑制薬を局所投与にて送達すべきである。
【0010】
薬物の局所的な送達の一つの試みとして、送達担体としてのステントの使用がある。例えば、細菌のベータガラクトシダーゼ又はヒト組織型プラスミノーゲン活性化因子を発現するトランスフェクト内皮細胞を播種したステントは、治療用蛋白質送達担体として使用されていた。例えば、ディケック(Dichek)ディー.エイ.らによる「血管内ステントへの遺伝子操作された内皮細胞の播種(Seeding of Intravascular Stents With Genetically Engineered Endothelial Cells)」、Ciuculation、第80号、1347−1353頁(1989年)。
【0011】
発明の名称が「管内薬物流出プロテーゼ(Intraluminal Drug Eluting Prosthesis)」である米国特許第5679400号明細書及び国際特許出願第WO91/12779号並びに発明の名称が「徐放性薬物送達を備えたステント(Stent With Sustained Drug Delivery)」である国際特許出願第WO90/13332号は、抗血小板薬、抗凝血薬、抗遊走性(antimigratory)薬、抗代謝薬及びその他の抗再狭窄薬を送達することのできるステント装置を開示している。
【0012】
米国特許第6273913号、第6383215号、第6258121号、第6231600号、第5837008号、第5824048号、第5679400号及び第5609629号明細書は、ラパマイシン、17ベータエストラジオール、タキソール及びデキサメタゾンのような種々の薬剤で被覆したステントを示唆している。
【0013】
従来技術の参考文献は、一つ以上の特定の抗再狭窄薬で被覆された種々のステントの形態を開示してはいるが、本願の独創的なステントのデザインを開示していない。従って、分岐した管に開口分岐支持体を効果的に提供し、かつ再狭窄を回避するのに有用な薬物の送達用担体として効果的に作用するステントのデザインの必要性が存在する。この必要性は、分岐部に配置された病巣のような複雑な場合には特に当てはまる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記した懸案を鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、主たる分岐部と側方分岐部とを有する身体の分岐した内腔において使用するためのステントに関する。ステントは基端側と先端側に相対向する端部を有する径方向に拡張可能なほぼ管状のステント本体からなり、該本体の壁部はその間に延びる面を有する。該面は第一のパターンを定義する幾何学的な形態を有し、該第一のパターンは所定の形態に配置された第一のパターンのストラットと連結部とを有する。該ステントはまた、第二のパターンからなる分岐部からなり、該分岐部は少なくとも部分的にステント本体から着脱可能である。
【0016】
一実施形態において、第二のパターンは少なくとも一つのコネクタが存在しない第一のパターンにしたがって構成され、別の実施形態において、第二のパターンは複数のコネクタが存在していない。第二のパターンは第二のパターンのストラットを有し、かつ第二のパターンのストラットは第一のパターンのストラットより更に密に充填されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、本明細書において添付した図面を参照して例示のみの目的にて記載されている。以下に図面を特に詳細に参照して図示された特定の例は、実施例であり、本発明の好ましい実施形態を例示的にのみ議論するためのものであり、本発明の原理及び概念的な態様の最も有用かつ容易に理解されるべき記載と考えられるものを提供するために示されていることを強調したい。この際、本発明の基本的な理解において必要である以上に更に詳細に本発明の構造的な詳細部を示すことを試みてはおらず、図面において示された詳細な説明は、本発明が実際に如何に具現化されるのかを当業者に対して明らかにすることができるであろう。
【0018】
本発明は管の分岐部に配置するためのステントに関し、主たる管並びに分岐した管の一部を少なくとも部分的に覆うように構成されている。図1を参照すると、例示的な血管分岐部1が示されており、該分岐部1は主たる管の軸3に沿って延びる主たる管2と、分岐した管の軸5に沿って延びる分岐した管4とを有する。主たる管2及び分岐した管4は90度未満の角度11をなして配置されている。閉塞部6は分岐部1内に位置しており、主たる管2と分岐した管4の基端部とにわたって延びているか、又は管2、4を少なくとも部分的に閉塞する。
【0019】
図1に示されるように、主たる管2及び分岐した管4を閉塞部6を取り除くための従来の試みには問題があった。図2乃至4を参照すると、閉塞した分岐部にステントを静置するための従来の方法及び構造の例が示されている。図2に示されるように、第一のステント8は主たる管2に導入され、ステント8の壁部にあるアクセス孔又は側方開口部は、分岐した管4へのアクセス及び閉塞していない血流を提供するためにバルーンを備えた状態にて形成される。典型的には、アクセス孔は主たるステントパターンのストラット及び連結部を変形することにより形成され、それは、形成された開口部を囲むステントの領域を変形し、かつ好ましくない結果を与える。また、仮にステント8がそれのみにて使用される場合、分岐した管4内に配置された閉塞部6の少なくとも一部はステントに被覆されることなく残される。図3及び4を参照すると、一つの従来技術の解決法は例えば、第一のステント8の側方開口部を介して挿入された第二のカテーテルを介して第二のステント10を分岐した管4内に導入することであった。図3及び4に示されるように、そのような形態は更なる問題点を誘導する。例えば、図3に示されるように、第二のステント10は、主たる管2に対する側方分岐管4の角度11のために、そして、ステントの端部は典型的には内腔の長手軸に対して直角をなしているという事実のために、分岐した管4内において閉塞部6の部分を完全に覆うことができないであろう。これに代えて、第二のステント10は図4に示されるように、分岐部を超えて主たる管2内に延びており、主たる管2における血流の停滞の可能性及び/又はステント8及び10の重複部分において問題を引き起こすであろう。
【0020】
図5乃至7を参照すると、本発明の一実施形態に従うステント12は、基端20から先端22まで長手軸16に沿って延びるとともにその内部に内腔18を定義するステント本体又は壁部14からなる。ステント12は種々の寸法(長さ、幅、高さ、深さ、厚み等)を備えた三次元の幾何学的形態を備え得る。好ましい実施形態において、ステント本体14はほぼ管状構造体である。本明細書において定義されているように、「管状の」は変更した断面を有するとともに該断面が必ずしも円形である必要のない細長い構造体を含む。例えば、ステント壁部14の断面はほぼ卵型であり得る。代替的な実施形態において、ステント本体14はほぼ円筒状である。また、ステント本体14はステントの長手軸16に沿って変化する断面形状を備え得る。例えば、ステントの基端部分と先端部分の外周は異なっているかもしれない。例えば、これは、ステント送達時において、送達系がステントを膨張させる場合に起こり得る。内腔18はステント本体14により境界をなす内側の容量空間を示す。好ましい実施形態において、ステント12は、該ステントを径方向に拡張するとともに主たる管を支持することを可能にするために、膨張していない状態から膨張した状態まで径方向に膨張可能であり得る。膨張していない状態において、ステント本体14は第一の容積を有する内腔18を定義し、膨張した状態においては、ステント本体14は第一の容積より大きい第二の容積を有する内腔18を定義する。
【0021】
図5は膨張していない状態のステント12の扁平した正面図を示す。図5に示されるように、ステント本体14はほぼセル状の形態を有するとともに、該ステント12の全長に沿って、所定のほぼ卵型又は主たるパターンに構成された一連の反復可能なストラット24及び連結部26から概してなる。ストラット24は、基端部にて湾曲部27により結合される一対の長手ストラット部25からなる。ストラット24は先端にて湾曲部29により相互に連結されるとともにステント12の外周の周囲に延びるリング28に形成される。一連の外周リング28はステント12の全長に沿って互いに長手方向に離間されており、かつ連結部26は長手方向に互いにリング28を連結する。連結部26は隣接する外周リング28間においてほぼ長手方向に延びており、かつ隣接するリング28の長手方向に隣接するストラット24の対応する湾曲部25,29に連結する。好ましい実施形態において、連結部26はほぼS字型又はジグザグ状であるが、その他のパターンもまた使用され得る。ステント12において使用されるパターンの詳細は、2002年10月20日に出願された同時に係属するPCT出願IL02/00840号により完全に記載されており、当該出願は本明細書においてその全体が参照として援用される。更に、多くのその他のストラット及び連結部のパターンが使用され得、本発明のパターンは例示のみの目的にて示されている。
【0022】
ステント12は更に、該ステント12の全長に沿ったある地点に配置される分岐部30を含む。分岐部30は管分岐部の分岐した管に延びるように構成されたステント壁14の領域又は一部からなる。一般に、分岐部30は伸張していない位置から伸張した位置まで移動可能であるように構成される。伸張していない位置において、分岐部30は拡張していないステント12によって定義された容積内に配置される、即ち、分岐部30はステント壁14から径方向には突出していない。伸張した位置において、分岐部30はステント壁14から外向きに延びるとともに該分岐部30は分岐した管内に延びる。図6に示されるように、分岐部30は、最初はステント本体14の残りの部分と同一平面であるか、同一面であるか、又は同一円筒上である該ステント本体14のステント壁部領域からなり、ステント本体14の残りの部分に対して外向きに伸張可能である。この点に関して、分岐部30は通常、ステント本体14の全体のパターン又は主たるパターンにおいて開口部、スリット、空間、空隙、又はその他の不一致の部分に隣接している。この形態は分岐管へのアクセスを可能にし、同時に展開する前に管内にてステントの外周が整合することを可能にする。その他の実施形態において、複数の分岐部は一つ以上の管へ複数のアクセスを許容するためにステント内に組み込まれる。好ましい実施形態において、分岐部30はステント12の中間領域に配置され得る。代替的な実施形態において、分岐部30はステント12の長さ方向に沿った任意の位置に配置され得る。
【0023】
図6に最適に示されるように、第一の実施形態において、分岐部30は分岐リング32の一部からなり、かつ開口部34に隣接するとともに該開口部34の基端に配置される。分岐部30を伸張すると、開口部34に隣接した分岐リング32の部分は分岐管内へ延びてゆき、一方、分岐リング32に隣接した外周リング28は分岐管内には延びていかない。開口部34は、分岐リング32と、相対向した分岐リング33と、を接合する少なくとも一つの連結部26を取り除くことにより形成される。幾らかの実施形態において、4個の隣接する連結部が取り除かれているが、代替的な実施形態においては、開口部34を形成するために任意の数の連結部を取り除くことができる。この実施形態において、分岐リング32は幾何学的には外周リング28とほぼ同様であり、かつストラット24とほぼ同様な分岐リング用ストラット36からなる。しかしながら、複数の隣接したストラットは開口部34に隣接した連結部26を備えていない。この点に関して、分岐リング32はステント本体14から少なくとも部分的に着脱可能であり、それにより分岐リング32の少なくとも一部がステント本体14に関して容易に外向きに延びる。幾らかの実施形態において、分岐リング32の形状は外周リング28に対して変更可能であり、かつ分岐リング用ストラット36はストラット24とは異なる形態を備え得る。
【0024】
ステント12が図7に示されるように拡張される場合、分岐部30は分岐管内に伸張し、分岐リング32の一部が分岐管4の内面を少なくとも部分的に覆うことになる。従って、好ましい実施形態において、分岐管内のステントの被覆部は分岐管の内壁の基端側の少なくとも部分的な被覆を含む。
【0025】
種々の代替的な実施形態は分岐部30の変更した形状を提供する。例えば、分岐リング32は外周リング28に対して変更され、かつ分岐リング用ストラット36はストラット24と異なる形態を備え得る。一つの代替的な実施形態において、分岐リング用ストラット36はストラット24よりも長い。別の実施形態において、分岐リング用ストラット36は円周方向においてより密に詰まっており、それにより外周リング28と比較して、分岐リング32内に単位面積当たりより多くの数の分岐リング用ストラット36を備えることが可能となる。別の実施形態において、分岐リング用ストラット36はストラット24より細くすることもできる。更に別の実施形態において、分岐リング用ストラット36はストラット24とは異なる材料から形成することもできる。
【0026】
図8を参照すると、別の代替的な実施形態であるステント19が示されており、分岐部30はストラット24より長い分岐リング用ストラット36を有する分岐リング32からなり、該分岐リング用ストラット36の数はと外周リング28におけるストラット24の数と比較してより多くの数が提供され、より密に詰まった分岐リング32が得られる。更に、分岐リング32の両側にある分岐リング用連結部38の分岐ストラット36当りの数は、ストラット24当りの連結部26の数よりも小さい。開口部34は分岐リング32とその先端側にて隣接しており、分岐リング用ストラット40,42及び44の少なくとも一つ、好ましくは複数個の先端46は連結部を備えておらず、かつステント本体14から着脱可能である。この実施形態において、ストラット40,42及び44に隣接して横方向に配置された二つの分岐リング用ストラット48及び50は連結部に連結されていない基端52を有する。この点に関して、連結されていない基端52はステント本体14に対して外向きに拡張する際に分岐リング32の移動に対する抵抗を低減する。同様の手順が、連結部に連結されていないリングにおいて一つ、二つ、三つ又はそれ以上の基端を提供するために使用され得る。付随的に、分岐リング用連結部38の形状及び形態は、連結部26とは異なっている。例えば、分岐リング32の基端側に沿った分岐リング用連結部は連結部26より長く、分岐部30の管の側方分岐部へのより大きな拡張を容易にする。また、分岐リング32の先端側に沿った分岐用リングの連結部は連結部26と異なる形状及び配向であり、分岐部30の管内へのより大きな拡張を容易にする。代替的な実施形態において、分岐リング用連結部38は、該連結部内においても互いに異なるものとすることができる。また、分岐リング用ストラット36が長ければ長いほど、延長された長さに因りより偏向されるので、比較できるほど短いストラットと比べて一般的には可撓性が増大する。また、長さを長くすると、拡張時に分岐管内のより深い部分まで貫通するので、管内壁でのより大きな被覆が得られる。代替的な実施形態において、分岐リング用連結部38の異なる形状及び配向を使用することもできる。
【0027】
図9を参照すると、別の代替的な実施形態であるステント29が示されており、該ステント29は図8の実施形態におけるステントと同様の分岐部30を備えているが、分岐リング用ストラット40,42及び44が別の分岐リング用ストラット36より長く、その先端が開口部34の基端側に対して湾曲したプロファイルを定義する点が異なる。また、中央のストラット42は該ストラット42に隣接するストラット40,44よりも長い。この点に関して、分岐部30が伸張される場合、ストラット40,42及び44は分岐管内へ更に伸張し、図8に記載された実施形態よりも管壁への被覆部分がより多くなる。この点に関し、この実施形態は図1に示されたような分岐管において閉塞物をより容易に被覆することが可能となり、従って分岐管へのより良好な血流が提供される。更に、以下に詳細に記載されるように、この実施形態は分岐管における第二のステントの使用を容易にする。
【0028】
図10を参照すると、図9のステント29が拡張した状態にて示されており、分岐部30は分岐管内に伸張しており、それにより、分岐リング32が分岐管の内面をその基端側において少なくとも部分的に覆った状態となる。分岐リング32のストラット42の先端は、ストラット40,44の先端よりも更に分岐管内に延びている。なぜならば、該ストラット42はこの実施形態においては隣接するストラット40,44よりも長いからである。この点に関して、分岐部30が分岐管内に伸張される場合、該分岐部30の先端周辺部に沿ったほぼテーパ状、直線状又は線形状のプロファイルが形成される。
【0029】
図11及び12を参照すると、図5及び9のステント12,29の概略図が血管分岐部において実施されるような拡張した状態にてそれぞれ示されている。図11に示されるように、図8の実施形態のステント19は、分岐管4内に延びる場合、分岐部30の先端周辺部45に沿ってほぼ湾曲した、又は放射状のプロファイルを備える。ほぼ湾曲した、又は放射状のプロファイルは図8の実施形態のステント19の分岐部30の特殊な形状による。特に、この実施形態においては分岐リング32の分岐リング用ストラット36の全てが等しい長さであるために、ストラット36の先端は分岐管4内に等しい距離にて放射状に拡張しており、それにより分岐部30の先端周辺部45に沿ってほぼ湾曲した、又は放射状のプロファイルが形成される。図12を参照すると、図9の実施形態のステント29は、分岐管4内に延びる場合、該ステントの分岐部30の先端周辺部47に沿ってほぼテーパ状、直線状又は線形状のプロファイルを有する。図12におけるほぼ直線状又は線形状のプロファイルは図9の実施形態のステント29の分岐部30の特殊な形状によるものである。特にこの実施形態においては、分岐リング32の中央のストラット42が該ストラット42に隣接するストラット40,44より長いので、該ストラット42の先端は図10に最適に示されるように該ストラット40,44の先端と比較して更に分岐管4内を深く延びており、それにより分岐部30の先端周辺部に沿ってほぼテーパ状、直線状又は線形状のプロファイルが形成される。好ましい実施形態において、線形状プロファイルは分岐管4の軸に対して直角をなす。しかしながら、代替的な実施形態において、線形状プロファイルは分岐管4の軸に対して任意の角度をなすこともできる。図12に示される分岐部30の先端周辺部に沿った線形状プロファイルの一つの有利な特徴は、仮に第二のステント51が分岐管4において使用された場合、該線形状プロファイルが第二のステントと良好かつ容易に整合し、分岐管壁のより大きな表面積を覆うことが可能となることである。例えば、仮に第二のステント51が図11のステント12との組み合わせにて使用される場合、二つのステントの間には、放射状先端周辺部45と第二のステントの当接する直線状又は線形状の縁部との界面には間隙が存在する一方、接近した当接界面は図12のステント29により達成され得る。
【0030】
図13を参照すると、別の実施形態であるステント39が示されており、図9の実施形態のそれに類似した分岐部30の代替的な実施形態を備えているが、横方向の分岐リング用ストラット48及び50がその他の分岐リング用ストラット36より長い点及び分岐リング用ストラット48,50の基端52がその他の分岐リング用ストラットを超えて分岐リング32と隣接する外周リング28との間にある空間へ基端側に延びている点が異なる。分岐リング用ストラット48,50は連結部に連結されていない基端52を有するとともに、ステント本体14に対して外向きに拡張する際に分岐リング32の移動に対する抵抗を低減する。この点に関して、より長い横方向の分岐リング用ストラット48,50はヒンジと類似の機能を有し、分岐リング部30が更に外向きに伸張することを容易にし、図9の実施形態のステント29と比較して、より大きな角度11(図1)にて配置された分岐管を収容するであろう。繰り返し述べるが、ストラット40、42及び44は分岐リング用ストラット36より長いので、図8に示された実施形態と比較して、更に可撓性であり、かつ管内壁をより広く被覆する。
【0031】
次に図14及び15を参照すると、別の実施形態であるステント49が示されており、該ステント49はメインパターン54とは異なるパターンを有する長手領域53を有するステント本体14を備える。長手領域53はストラット24及び連結部26より小さい寸法であるがメインパターン54と類似した幾何学的パターンにて形成された一連の一般的には繰り返し可能なストラット56及び連結部58からなる。この点に関し、ストラット56はリング28内において単位面積当たりより多くの数であり、リング28は領域53において単位面積当たりより多くの数である。なぜならば、ストラット56の長さはストラット24の長さより短く、連結部58の長さは連結部26の長さより短いからである。好ましい実施形態において、同数の連結部58が隣接するリング28間に延びている。しかしながら、ストラットは長手領域53においてより多くの数であるために連結部58は隣接するリング28の一つおきのストラットの間を長手方向に延びている。図15に示されるように、ステント49は更に、領域53内に配置される分岐部30を含む。分岐部30は開口部34に隣接する分岐リング32からなる。開口部34は、分岐リング32と、相対向する分岐したリング33と、を接合する少なくとも一つの連結部26を除くことにより形成される。好ましい実施形態においては二つの隣接した連結部が除かれるが、代替的な実施形態においては任意の数の連結部が除かれて開口部34が形成される。この実施形態において、分岐リング32は幾何学的には外周リング28とほぼ類似しており、かつストラット56とほぼ類似する分岐リング用ストラット36からなる。しかしながら、複数の隣接したストラットは開口部34に隣接する連結部58とは結合しておらず、かつ分岐リング32は開口部34においてステント本体14から少なくとも部分的に着脱可能であり、該分岐リング32の少なくとも一部がステント本体14に対して外向きに拡大し易くなっている。長手領域53のより小さなストラット及び連結部は該ストラット及び連結部の材料のより自由な移動を提供し、かつ管壁との適合性を促進する。より小さなストラット及び連結部はまた、分岐した管壁の更に密である表面領域の被覆を提供し、開口付近におけるより均一な被覆を達成する点において優れている。特に、この実施形態は、比較的小さなパターンが閉塞物の周囲にて撓み、又は適合し、該閉塞物に対する被覆を提供するので、分岐管の幾何学的に複雑な閉塞物の特に有効な被覆を提供することができる。また、この実施形態はより小さなパターンが閉塞物のより多くの表面積を覆うので比較的小さな閉塞物に対しては有効である。
【0032】
図16を参照すると、別の実施形態であるステント59が示されており、該ステント59は二つの隣接した外周リング28に連結され、かつ該リング28から外周方向に延びる三つの隣接した分岐リング領域60、62、64の一部を含む代替的な分岐部30を含む。分岐リング領域60、62、64は各々が複数の分岐用ストラット66を含み、該ストラット66は分岐連結部68により長手方向に連結されている。ストラット66はリング28のストラット24よりも長手方向においては短く、連結部68は連結部26より小さい。先端リング60は開口部34に隣接しており、該リング60のストラット66の先端は開口部34にてステント本体14から着脱可能であり、ステント本体14に対して外向きに拡張するために、分岐リング領域60、62、64の少なくとも一部の伸張を可能にする。この実施形態において、三つの分岐リング領域60、62、64は更に径方向外向きに延びており、かつこの分岐部30は開口の基端側の形状に適合する又は一致するので特に有利である。更に、この実施形態の分岐部は、図1に示されるような分岐した管の閉塞物の周囲にてより容易に伸張する又は撓む一方で、分岐壁の被覆及び分岐管へのより良好な血液の流れを提供する。
【0033】
図17及び18を参照すると、代替的な実施形態であるステント69が示されており、該ステント69は代替的な分岐部30を含む。この特殊な実施形態において、分岐部30は支持ストラット70及び拡張可能なリング72からなる。分岐部30は少なくとも一つの側方開口部74を定義する。一実施形態において、側方開口部74を定義するセルの寸法は、(ステントが拡張する前に)該側方開口部74がステント本体14内のその他の開口部より大きくなるように構成される。側方開口部74の存在は、該開口部を貫通する側方シースを収容するように一般的には構成され、処置時又は処置後に医師が分岐管へアクセスすることを可能にする。特殊な実施形態において、図17に示されるように、側方開口部74は連続した材料からなる拡張可能なリング72により包囲される。代替的な実施形態において、拡張可能なリング72は、取り付けられていない部分、又は側方開口部74を部分的にのみ覆う一つの部分からなる。一連の支持ストラット70はストラット24及び連結部26を拡張可能なリング72と連結する。支持ストラット70は好ましくは折畳まれた形態又は包み込む形態であって、拡張時に少なくとも部分的に真っ直ぐになり、拡張可能なリング72を分岐管内に突出させる形態であるパターンからなる。
【0034】
この実施形態において、ステント69が拡張される場合、図18に示されるように、分岐部30は分岐管内に延びており、拡張可能なリング74が分岐管の内面を少なくとも部分的に覆う。従って、好ましい実施形態において、分岐管の一部におけるステントの被覆領域は、分岐管内壁の完全な円周を含む。代替的な実施形態において、部分的な被覆領域、又は複数の被覆領域が存在する。
【0035】
図19乃至21を参照すると、別の実施形態であるステント79が示されており、該ステント79は主たるステント本体14と分岐部30の別の実施形態とを有する。図19及び20は、分岐部30が展開していない拡張していない状態におけるステント79を示す。図21は分岐部30が展開した拡張した形態のステント79を示す。図示されるように、主たるステント本体14は、概して繰り返し可能なリング28及び連結部30のパターンを有する主たるステントパターンを含む。分岐部30及び包囲する中間領域80は、ステント79の繰り返し可能なリング28及び連結部26のパターンを中断する。この実施形態において、分岐部30は分岐管内に、そしてその長手軸83に対して、径方向に拡張可能であるとともに長手方向に伸張可能であり、それにより、好ましい実施形態において、分岐部30は拡張した形態において分岐管の内壁の周辺部又は円周の全体と接触する。この点に関して、分岐部30は好ましくは分岐管の壁部を360度にわたって被覆する。即ち、分岐部30はステント79の長手軸81に対して外向きに伸張し、かつ管と接触するために軸83の周囲を径方向にも拡張する(それにより、管の大きさに対して調整可能である。)
【0036】
図20を参照すると、ステント79の領域80の拡大図が示されている。好ましい実施形態において、構造支持部材84は主たるステント本体14と分岐部30との間の遷移部として設けられている。好ましい実施形態の一態様において、構造支持部材84は主たる管へ角度をなして延びる分岐管を収容するために楕円形である。代替的な実施形態において、支持部材84のその他の形状は血管系を収容するために使用され得る。構造支持部材84は連続リングを含む。この実施形態において、構造支持部材に84は完全な拡張不能のリングであり、かつ特定の外周を超えて径方向に拡張することはない。
【0037】
図19及び20に示されるように、二つの同心状リングである内側リング86及び外側リング88は、構造支持部材84内に配置され、ほぼ円形状の中央分岐開口部34を囲み、ステント79が拡張していない状態にある場合、側方分岐管へのアクセスを提供する。リング86及び88は複数の内側連結部90により相互に連結されている。外側リング88は複数の外側連結部92により構造支持部材84に連結されている。リング86及び88は通常、曲線状の部材である。例えば、リング86、88は波状のペタル(petal)、突起又はピーク(peak)94により定義され得る。好ましい実施形態において、各リング86、88は同数の波状ピーク94を有するが、図示されているように、内側リングはより近接して、又はより密に配置され得る。別の好ましい実施形態において、各リング86、88は8個のペタル又は波状ピーク94を有するが、代替的な実施形態において、各リングは任意の数の波状ピークを有し、かつ該ピークの数は各リングにおいて等しくする必要はない。波状ピーク94は通常、湾曲部98により相互に連結される一対のストラット部96を含み、かつ該ストラット部自身は別の湾曲部により隣接するストラット部と連結されている。好ましい実施形態において、八個の外側連結部92は、構造支持部材84と外側リング88との間に延びており、かつ各外側連結部92は、一方の端部が外側リング88のストラット部96のほぼ中央に取り付けられるとともに他方の端部は構造支持部材84に取り付けられている。図示されるように、外側連結部92はまた波状形状を有するが、代替的な実施形態において、外側連結部92は異なる形状を有する。好ましい実施形態の別の態様において、外側連結部92は、構造支持部材84の周囲に等間隔に、又は対称的に離間され得る。内側リング86は複数の内側連結部90により外側リング88に取り付けられており、好ましい実施形態において、8個の内側連結部90がリングを連結する。内側連結部90は外側リング88の湾曲部98から内側リング86の湾曲部まで延びている。図20に示されるように、好ましい実施形態において、内側連結部90は単純な湾曲形である。連結部、リング及び間隙のその他の量、形態、大きさ及び配置が所望の結果に応じて使用され得る。連結部を変更することにより、異なる量の可撓性及び被覆が得られる。図示されたようなリング及び連結部の形態は、分岐部30の径方向及び長手方向への拡張並びに分岐管の被覆の必要性を考慮したものである。分岐部のその他の形態及び配置は本発明に従って使用され得る。
【0038】
図19及び20を再び参照すると、分岐部30を包囲するステントのパターンは、上述の実施形態の全てで可能であるように、分岐部30を収容するために異なるパターンに修正され得る。特に、中間部80のリング28は、分岐部30により占有される領域を補償するべく十分な被覆と可撓性を提供するためにより密に構成され、かつ寸法化されている。
【0039】
次に図21を参照すると、ステント79が拡張した形態にて示されており、分岐部30は展開されている。分岐部30の拡張に伴い、内側及び外側リング86、88は分岐部の長手軸83の周囲に移動し、主たるステント本体14から離間して分岐管内へ横方向に拡張し、分岐被覆部を形成する。拡張に伴い、外側連結部92は外向きに移動し、かつ内側連結部90は分岐長手軸83とほぼ平行な位置まで真っ直ぐに延びる。好ましい実施形態において、拡張したリング86、88はほぼ同一の拡張径を有するが、代替的な実施形態において、該リング86、88は、例えばテーパ状のバルーンが使用される場合はテーパ状の管を収容するために異なる直径を備え得る。分岐部30は、処置されるべき分岐管の形状に応じてステントの長手軸81に異なる角度にて伸張され得る。この実施形態において、分岐部30は好ましくは約1.5乃至3mm分岐管内へ延びている。
【0040】
図22を参照すると、別の実施形態であるステント89が示されており、該ステント89は主たるステント本体14と分岐部30の別の実施形態とを有する。ステント89はステント79とほぼ類似するが、例外として、ステント89は二つの同心状リング86、88構造体を囲む不連続支持部材104を有する。支持部材104はほぼ楕円形であり、周辺部に沿って複数の不連続部106を含む。不連続支持部材の形態は、拡張時に分岐部により一層の可撓性を与えるとともに分岐管形状のより大きな範囲を収容するために一般的には提供される。好ましい実施形態の一態様において、構造支持部材84は主たる管まで所定の角度にて延びる分岐管を収容するために楕円形であり得る。
【0041】
図23及び24を参照すると、ステント99の別の実施形態が拡張していない状態と拡張した状態にてそれぞれ示されている。ステント99は主たる本体14と分岐部30の別の実施形態とを有する。ステント99はステント79にほぼ類似するが、例外として、ステント99は二つの代わりに三つの同心状リング110、112、114を囲む支持部材108を含む。図24に示されるように、ステント99が拡張される場合、別の同心状リングを追加することによって一般的にはより密なパターンが分岐部30に形成されるので、この実施形態の三つの同心状リング構造体は分岐壁の更なる支持を促進する。
【0042】
図34を参照すると、代替的な実施形態であるステント220が示されており、該ステント220は主たるステント本体14と分岐部30の別の実施形態とを有する。図34は拡張していない状態にて示されるステント220の平面図であり、分岐部30は展開されていない。主たるステント本体14は、ほぼ繰り返し可能なリング28及び連結部26のパターンを備えた主たるステントパターンを含む。分岐部30及び包囲する中間部80はステント220の繰り返し可能なリング28及び連結部のパターンを遮断する。分岐部30は、該分岐部30が拡張した形態において分岐管の内壁の周縁部又は外周部全体と接触するように、該分岐管内を拡張可能となるように構成されている。
【0043】
好ましい実施形態において、遷移部材224が主たるステント本体14と分岐部30との間に遷移部として提供されている。遷移部材224は空間246を間に挟んで相対向する関係にて配置されたほぼ楕円状の半円部からなる。遷移部材224は二つの同心状リング228、230構造体及び中央分岐開口部232を囲む。分岐開口部232はステント220が拡張していない状態にある場合は側方分岐管へのアクセスを提供し、側方シースが開口部232を貫通する。リング228及び230は複数の内側連結部234にて相互に連結されている。外側リング230は複数の外側連結部236により遷移部材224に連結されている。リング228、230はほぼ曲線状部材であり、かつ波状のペタル、突起、又はピーク238を含む。この実施形態において、外側リング230は内側リング228より多くの数のピークを含む。好ましくは、8個の外側連結部と8個の内側連結部が遷移部材224とリング228、230とを相互に連結する。この実施形態において、内側及び外側連結部234、236はほぼ直線状の部材であり、好ましくは分岐部30の中心に向かって延びるように径方向に整合されている。操作時において、外側連結部236と遷移部材224との交差点はピボット点を形成し、その周囲にてペタル238が側方分岐管内に外向きに展開されるか、又は回動される。好ましい実施形態において、ほぼ直線状の内側及び外側連結部は共に回動し、それによりペタル238は花のように開く。
【0044】
図35を参照すると、代替的な実施形態であるステント240が示されており、該ステント240は分岐部30の代替的な実施形態を有する。ステント240は、主たるステント本体14と分岐部30との間に遷移部として構造支持部材244を含む。支持部材244は空間246を間に挟んで相対向する関係にて配置されたほぼ楕円状の半円部からなる。支持部材244は二つの同心状リング248、250構造体及び中央分岐開口部252を囲む。リング248及び250は複数の内側連結部254により相互に連結される。外側リング248は複数の外側連結部256により構造支持部材244に連結される。リング248、250はほぼ曲線状の部材であり、かつ波状のペタル、突起、又はピーク258を含む。補助アクセス開口部255はリング248、250を遮断し、ステント240が拡張していない状態において側方の分岐管へのアクセスを提供する。リング部257は補助アクセス開口部255に近接した外側連結部256の間に延びている。この実施形態において、補助アクセス開口部255は中央の分岐開口部252より大きく、該開口部255を貫通する側方シースをより容易に受承するとともに側方分岐部へのより大きなアクセス口を提供する。補助アクセス開口部255は、好ましくは、ステント送達システムに装填された場合、中央の分岐開口部252の基端側に配置されるが、代替的な実施形態においては該補助アクセス開口部255は変更した位置を備え得る。ステント260の代替的な実施形態が図36に示されており、該ステント260はステント240に類似し、かつ空間246を貫通して延びるとともに分岐部30の外側の横方向にて外側リング250とストラット264とを連結する横方向連結部262を更に含む。この点に関し、分岐部30が側方分岐部内に延びる場合、ストラット264は開口の外周を支持するために径方向内側に引かれる。この更なる構造は径方向の強度を改善するとともに管壁への更なる支持を提供する。
【0045】
図37を参照すると、代替的な実施形態であるステント280が示されており、該ステント280はステント260に類似し、かつ空間246を貫通して延びるとともに分岐部30の外側の横方向にて外側リング250とストラット284とを連結する横方向連結部282を含む。ストラット284は一般的には、隣接するストラット用リング286、288の間を長手方向に延びる長手連結部材である。この実施形態において、ストラット284はほぼオメガ形状を有するほぼ湾曲した部材である。ストラット284は上述したステント240のストラット264よりも曲率半径が小さい。分岐部30が側方分岐部内へ延びる場合、ストラット284は開口の外周を支持するために径方向内側に引かれる。加えて、ほぼオメガ形状であり比較的小さい曲率半径であることにより、ストラット284をより大きく拡張することができ、包囲する中間部80の変形に影響を与えることなく分岐部30のより大きな移動又は拡張を可能にする。代替的な実施形態において、ストラット284のその他の形状は、同様の目的を達成するために使用され得る。
【0046】
図38及び39を参照すると、代替的な実施形態であるステント290が示されており、該ステント290は上述したステント280に類似し、かつ分岐部30の外側を長手方向に延びるとともに中間部80を主たるステント本体14の繰り返し可能なリング28及び連結部26のパターンと連結する少なくとも一つのオメガ状の連結部材292を含む。以前の実施形態と同様に、分岐部30は、該分岐部30が拡張した形態において分岐管の内壁の周縁部又は外周全体と接触するように該分岐管内にて拡張可能となるように構成される。また、中間部80は主たるステント本体と異なるパターンであるために、該中間部80は、分岐部30が側方分岐管内を延びる場合、主たるステントパターンとは異なる程度に径方向に拡張する。連結部材292は主たるステント本体に対して中間部80の異なる拡大を収容するように拡張又は収縮すべく構成されている。この点に関し、連結部材292は、クッション性の減衰部材を提供する、又は主たるステント本体14と中間部80との間の拡張に際しての緩衝部として機能し、それにより主たるステント本体14の拡張が操作時に中間部80に対して制限された効果を有するか、又はその逆である。特に、連結部材292のほぼオメガ状の形状は、直線状又はほぼ直線状の連結部の形状と比較した場合、該連結部材292により大きな拡張を提供する。代替的な実施形態において、連結部材292のその他の形状が、同様の目的、即ち主たるステント本体14に対して中間部80の拡張にクッション性、減衰性又は緩衝性を提供する目的を達成するために使用され得る。
【0047】
図40を参照すると、代替的な実施形態であるステント300が示されており、該ステント300は上述のステント290に類似するが、外側リング302及び内側リング304を含む分岐部30を一般的には含む。内側リングは中央の分岐開口部308を包囲する波状のペタル、突起又はピーク306を定義する。分岐開口部308は、ステント300が拡張していない状態にある場合側方の分岐管へのアクセスを提供する。この実施形態において、内側リング304の波状ピーク306は比較的大きな曲率半径を有し、即ち、それらは、例えば、上述のステント220における内側リング228の対応するピーク238ほどは指向しない。例えば、好ましい実施形態において、ピーク306は約0.125mm乃至約0.225mmの範囲の曲率半径を有し、かつ好ましくは0.170mmである。これと比較して、好ましい実施形態において、ステント220のピーク238は一般的には約0.025mm乃至約0.125mmの曲率半径を備え得る。この点に関し、ピーク306の形状は特殊なバルーンのタイプ及びデザインの使用を可能にする、及び/又は容易にする。特に、この実施形態において、ピーク306のデザイン及び形状はある種のバルーンのデザインを破裂させる可能性は少ない。この実施形態において、分岐部30はステント240、260、280及び290と同様の側方分岐管へのアクセスを提供する補助アクセス開口部255を含んではいないが、代替的な実施形態において、分岐部30はそのような補助アクセス開口部を含むことができる。図41及び42を参照すると、代替的な実施形態であるステント320が示されており、上述のステント300に類似するが、内側リング324が上述のピーク308より小さな曲率半径を備えた波状ピーク326を有する点が異なる。また、この実施形態において、各ピーク326は例えば、マーカを収容するように構成又は寸法化された孔を定義する。
【0048】
図43乃至45を参照すると、代替的な実施形態であるステントが示されているが、該ステントは代替的な主たるステントのパターンデザインを備えた主ステント本体14を有する。図43乃至45の実施形態において、主たるステントパターンは開口セル構造を有する。例えば、ステント340、350、360は各々、繰り返し可能なリング28及び連結部26パターンを有する主たるステント本体14を有し、かつ該連結部26は離間されるとともに二つ又は三つのストラットの組が交互に配置され、離間されるとともに各ストラットの組が交互に配置された連結部を提供する場合と比較して、更に開口したセル構造体を定義する。この点に関し、ステント340、350、360は、主たるステント本体を構成するステント材料の量をより少なくするとともにある種の適用においては所望の臨床効果を有する。例えば、ステントが金属材料から形成される場合、該ステントが患者に留置される場合の金属の表面積比率をより小さくできるので有利である。図43乃至45を参照すると、ステント340、350、360の各々は隣接する外周リング28の間をほぼ長手方向に延びるとともに隣接するリング28の長手方向に隣接するストラット24の対応する長手ストラット部25を連結する連結部26を有する。連結部26は、長手方向に隣接するストラットの一つおきの組を離間するとともに交互に連結し、連結部26は、より開口したセル構造を定義する二つ又は三つのストラットの組毎に離間されるとともに互い違いになる。図43に示されるように、ステント340の一実施形態はほぼ直線状であるとともに長手方向に隣接するストラット24の長手ストラット部25の中間部の間を延びる連結部26を有する。また、長手ストラット部25の中間部は、孔、空間又は間隙341を含むこともでき、それにより使用する材料の量を更に減らすことができる。幾らかの実施形態において、間隙341は、連結部26の長手ストラット部25との接合部に隣接して設けられ得るが、代替的な実施形態(例えば、図46)においては、間隙341は各長手ストラット部の中間部に設けられ得る。この点に関し、孔、空間又は間隙は例えば、金属の表面積の比率を更に減少するために、より少ない材料を使用するステントパターンのデザインを可能にする。図44に示されるように、代替的な実施形態であるステント350が示されており、該ステント350はほぼ湾曲し、かつ長手方向に隣接するストラット24の長手ストラット部25の中間部の間に延びる連結部26を有する。図45を参照すると、別の実施形態であるステント360が示されており、該ステント360はオメガ形状の特徴部362を含む連結部26を有し、該特徴部362は連結部26の長手方向への拡張を可能にする。代替的な実施形態において、連結部26のその他の形状が同様の目的を達成するために使用され得る。
【0049】
図43乃至45に示されるステント340、350、360はステント320(図41)と類似の分岐部30を一般的には含んでおり、かつ外側リング342と内側リング344とを含む。リング342及び344は複数の内側連結部346により相互に連結されている。外側リング344は複数の外側連結部352により楕円形の遷移部材348に連結されている。これらの実施形態において、外側連結部352は一組の先端外側連結部354、356、358を含み、該先端外側連結部は外側リング344の先端側部から分岐部30の先端側部の楕円形の遷移部材まで延びている。先端外側連結部354、356、358は一般的には、S字型、ジグザグ型、又は波状である。この点に関し、先端外側連結部の波状形は、例えば、直線状の外側連結部のデザインより更に大きく変形するとともにより大きな拡張部を収容する。これらの実施形態において、先端外側連結部354、356、358は一般的には、移植時において、側方の分岐管への分岐部30の先端部分のより大きな角度の回動を収容し得る。例えば、先端ペタル362、364は、側方の分岐管内への移植時に90度以上回動する。
【0050】
図46及び47を参照すると、代替的な実施形態のステント370が示されており、上述のステント360に類似するが、一般的には外側リング372及び内側リング374を含む分岐部30を含む。リング372、374は一般的には曲線状部材であり、波状のペタル、突起又はピーク376を含む。この実施形態において、外側リング372は一般的には上述のステント340、350、360の外側リング372ほど曲線状ではない。例えば、図46に示されるように、外側リング372は、一続きの相互に連結されたW字型の領域と見ることができ、該W字型の領域の脚部は、上述の外側リング342の比較される領域よりも直線状である。この点に関し、外側リング372の形状は、側方の分岐管内に留置される際に分岐部30の異なるタイプの拡張特性を可能にする、及び/又は促進する。代替的な実施形態において、外側リング372のその他の形状も使用され得る。
【0051】
図48を参照すると、代替的な実施形態のステント380が示されており、該ステント380は上述のステント370に類似し、かつ外側リング382と内側リング384とを含む分岐部30を含む。リング382及び384は複数の内側連結部388にて相互に連結される。外側リング382は複数の外側連結部392により楕円形の遷移部材390に連結される。リング382、384は一般的には曲線状部材であり、波状のペタル、突起又はピーク394を含む。この実施形態において、外側リング382は一般的には内側リング384と同数のピークを含む。例えば、内側リング384は一般的には、中央分岐開口部397に向かって延びるとともに該開口部を包囲する8個の大きなペタル又はピーク396と、該大きなピーク396間に延びるとともに交互に存在する8個の小さなピーク398と、を含む。小さなピーク398は中央分岐開口部397に向かってより小さな程度にて延びている。操作時に、外側連結部392の遷移部材390との交差地点は回動点を形成し、該回動点を中心にして、大きなペタル396が側方の分岐管内に外向きに展開する、又は回動する。好ましい実施形態において、内側及び外側連結部は共に回動し、それにより大きなペタル396は花のように開口する。また、内側リング384の小さなピーク398は、大きなペタルが側方の分岐管内に外向きに回動する際に変形して拡張する。この点に関し、内側リング384の形状は、側方の分岐管内に留置される際に分岐部30の異なるタイプの拡張特性を可能にする、及び/又は促進し、かつ該側方分岐管の壁部の被覆の程度又は径方向の指示を変更するために提供される。代替的な実施形態において、内側リング384のその他の形状も使用され得る。
【0052】
上述の実施形態の全てにおいて、分岐部30は、ステントが完全に拡張された場合には分岐管内に突出する。分岐部は、拡張に伴い、適用に応じて、異なる長さにて該管内を延びていく。拡張の程度は、約0.1乃至10.0mmの範囲において変更可能である。一つの好ましい実施形態において、伸張する長さは1乃至3mmである。別の好ましい実施形態において、伸張する長さは約2mmである。代替的な実施形態において、分岐管内へ伸張する量は、分岐部30の異なる外周セグメントに対して変更可能である。各実施形態に示されるように、分岐部は約2.5mmの幅と、約2.5乃至3.0mmの全長である。しかしながら、分岐部は種々のサイズの分岐管を収容するために寸法化され得る。分岐部は、分岐管を収容するために、例えば卵型又は円形を含む任意の管状形状に形成され得る。
【0053】
一般的に、多岐にわたる送達システム及び展開法が上述のステントの実施形態とともに使用され得る。例えば、カテーテルシステムは挿入に使用され、ステントはバルーン拡張可能であるか、若しくは自己拡張可能であるか、又はステントはバルーン拡張可能であるとともに分岐部は自己拡張可能である若しくはその逆である。ステントが主たる管内に配置され、かつ分岐部が側方分岐部と整合されると、ステントは拡張される。仮にステントがバルーン拡張可能であるとすれば、該ステントは一回の拡張又は複数回の拡張を伴って拡張する。特に、米国特許第6325826号明細書及び第6210429号明細書に記載されているように、バルーンカテーテル及び側方シースを有するステント送達システムにてステントは展開され得、両明細書は、本明細書中において参照としてその全体が援用される。一つの好ましい実施形態において、キッシングバルーン(kissing balloon)技術が使用され、それにより、一つのバルーンはステントを拡張するように構成され、かつ他方のバルーンは分岐部30を拡張するように構成される。ステントの主要部が主たる管内にて拡張された後に、ステント送達システムが取り除かれ、第二のバルーンが分岐部の側部の孔を貫通し、かつステントの分岐部を拡張するために拡張する。代替的な実施形態において、同一のバルーンが主たる管に挿入され、膨張され、収縮され、引っ込められ、かつ分岐管に挿入され、次いで、分岐部30を拡張するために再び膨張され、分岐管内に該分岐部を突出させる。代替的に、ステントは二つのバルーンにて送達され、かつ主要部及び分岐部が同時に拡張され得る。必要に応じて、分岐部は別のバルーン又は複数の別のバルーンを用いて更に拡張され得る。しかしながら、別の代替物においては主要部及び分岐部を同時に拡張することができる特殊な形状のバルーンを使用する。ステントはまた、その他のタイプのステント送達システムを用いて展開することもできる。代替的に、ステント又は該ステントの一部は自己拡張可能な材料から形成され、拡張は、ステント又は該ステントの少なくとも分岐部30に対して、例えば、ニチノール、コバルトクロムのような自己拡張可能な材料を用いることにより、又は当業者に周知のその他の記憶合金を用いることにより、達成され得る。
【0054】
本発明の目的に適したカテーテルの構成及び操作は、2000年9月15日に出願された米国特許出願第09/663111号に更に記載されており、該出願は、1999年6月4日に出願された米国特許出願第09/325996号及び1999年12月6日に出願された米国特許出願第09/455299号の一部継続出願である2000年7月11日に出願された米国特許出願第09/614472号の一部継続出願であり、これら全ての出願の開示は、本明細書中において参照として援用される。上述の適用が示唆されたカテーテルは例示的なものであり、主題の適用のためのステントに適したその他のカテーテルは本発明の範囲内に含まれることを明記すべきである。代替的な実施形態において、バルーンを備えていないカテーテルが使用され得る。例えば、ステントがニチノール又はコバルトクロムのような記憶合金からなり、又は機械的に自己拡張可能なステントからなる場合、バルーンをカテーテルに含ませる必要はない。更に、本明細書に記載されていないようなものも含むその他任意のカテーテルが本発明に従ってステントを配置するために使用され得る。
【0055】
図25乃至28を以下に参照すると、本発明に従ってステントを展開するための方法の一例の工程が示されている。一例として、該方法はステント12を使用して示されている。そのようなカテーテルシステムを管内に配置し、かつ該システムを分岐部に、又は分岐部付近に配置するための方法は、2002年12月17日に出願された同時に係属する米国特許出願第10/320719号により完全に記載されており、該出願はその全体が参照として本明細書中において援用される。図25に示されるように、カテーテルシステム120は公知の任意の方法を用いて分岐部の基端側に配置される。次に、分岐ガイドワイヤ122がステントの開口部を介して進められ、図26に示されるように分岐管4内へと前進する。好ましい実施形態において、開口部は、上述したように、いくつかの連結部26を除くことにより形成された開口部のような指定された側方分岐開口部であり得る。分岐部30は開口部に隣接している。図27に示されるように、仮に側方シース124が主たるカテーテル120に取り付けられる場合、該主たるカテーテル120は側方カテーテル124に沿って進められる。代替的に、仮に側方シース124が主たるカテーテル120から分離される場合、第二のカテーテル又は側方シース124はステントの開口を介して独立して進められ、分岐管内へと進む。分岐部30は、側方シース124が分岐管4内へ挿入されると、該分岐管4の内腔の一部上に配置される。図28を参照すると、主たるカテーテル120に配置された第一のバルーン126が次いで拡張され、ステント本体を拡張し、第二のカテーテル又は側方シース124に配置された第二のバルーン128がまた拡張され、分岐部30がステント本体に対して外向きに押され、分岐管の少なくとも一部をステントが被覆した状態を提供する。次いでバルーンが収縮され、カテーテルシステム及びガイドワイヤが取り除かれる。
【0056】
次に、図29乃至31を参照すると、本発明のステントを展開するための別の方法の工程が示されている。一例として、該方法はステント12を使用して示されている。図示された方法は、脱出バルーン135(herniated balloon)(図32)を含む主たるカテーテル131を有するカテーテルシステムを使用して達成され得る。特に、例えば、ステントは2003年7月18日に出願された米国特許第60/488006号に記載されているような脱出したバルーンを有するステント送達システムにて展開されており、該出願の全体の内容は、本明細書において参照として援用される。図29に示されるように、カテーテル131はバルーン135を含み、該バルーン135は、バルーンの円筒状外面134から外向きに突出する突出部137を有する。
【0057】
図32を参照すると、拡張した状態にて示されている、脱出バルーン135はほぼ円筒形であり、突出部137は、本発明の原理に従って、膨張に伴いバルーンの外面134から外側に移動する任意の付属物又は該バルーンとの一体的な部分であり得る。好ましい実施形態において、突出部137はほぼ円筒形の形状を保持するバルーン壁のその他の部分よりも更に大きな拡張性を有する該バルーン壁の一部である。別の実施形態において、突出部137はバルーン壁に取り付けられる固体構造体であり得る。突出部137は分岐部30の展開に効果的に望ましい任意の形状を有する。一つの好ましい実施形態において、突出部137は半球状である。別の好ましい実施形態において、突出部137は卵型の形状を有する。使用時において、ステント12は突出部137が分岐部に配置されるようにバルーン135上に圧着される。図示されるように、突出部137は分岐部30の径方向内側の側部に隣接して、又は該側部に沿って配置される。脱出したバルーン135は、拡張可能な要素を側方分岐部4に向かって偏向することにより該要素に横方向外向きに応力を付与して、分岐部30を拡張する及び/又はステント12の外向きに展開可能な構造部を展開するために使用される。突出部137はバルーンの全長に沿って任意の位置に配置され得る。例えば、ステントの中間の1/3の位置に配置される。
【0058】
一実施形態において、バルーンは複合材料から構成され得る。弾性材料と、半コンプライアント(semi compliant)から非コンプライアントな(non compliant)材料との組み合わせ、例えば、ウレタン、シリコン及びラテックス(弾性)、ポリエチレン、ハイトレル(hytrel)、ペバックス(pebax)、ポリアリールエーテルエーテルケトン、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリエステル、熱可塑性ポリエーテルエーテルケトン及びポリプロピレン(半コンプライアントから非コンプライアント)が使用され得る。バルーンはまた、上述の材料と、ケブラー(Kevlar)、絹、綿、毛のような織物との組み合わせから構成され得る。この構成において、織物は所望の脱出バルーンの形状を有するロッド上に巻回されるか、又は編み込まれて、次にポリマーが該ロッド上に押し出されるか、又は浸漬コーティングされる。該複合体は硬化されるか、熱硬化されるか、又は共に接着剤にて融合される。次いで、ロッドが取り除かれ、残りの形状が脱出バルーンとなる。該バルーンは、成形されたカラーを使用する、若しくは対象物をバルーンの表面に接着剤で付着することにより、又は脱出部若しくは突出部を形成するために大量の接着剤を使用することにより、付属物を従来のバルーンに加えることによっても構成され得る。代替的な実施形態において、バルーンは三つの小さなバルーンを成形して、それらを形状が円形である中央バルーンと平行に取り付けることによって構成され得る。バルーンは共通の膨張ポートを共有する。バルーンが膨張される時、中央のバルーンが脱出部となる。
【0059】
図29乃至31を参照すると、突出部137はステントの開口部と直接適合するように構成され得る。図29に示されるように、カテーテル131はガイドワイヤ133上を進められ、分岐部の基端側に配置される。図30に示されるように、カテーテルは、バルーンの突出部137が分岐部に配置されるまで進められる。一実施形態において、突出部137は、該突出部137が分岐部と実際に接触するのに十分な程度にカテーテル131から外向きに突出し、それにより、分岐管4と整合する方法を提供する。最終的には図31に示されるように、バルーン135が拡張され、同時にステントが拡張し、分岐部30が分岐管4へ向かって押される。バルーンの膨張に伴って、脱出した部分137が側方分岐部に向かって分岐部30を拡張及び伸張し、閉塞された側方分岐動脈の入り口を開口する。
【0060】
代替的な方法において、ステントは脱出バルーンと二重内腔送達系とを用いて送達される。この系は、同心状のガイドワイヤ内腔及びバルーン膨張内腔を備えた第一の内腔を定義する主カテーテルと、該主カテーテル上に上述の脱出したバルーンと、ガイドワイヤ内腔を備えた側方シースと、ステントとを含む。ステントは、主カテーテル、バルーン及び側方シース上に圧着され、該側方シースは分岐開口部又は側方孔を介してステントを退出させる。側方シースの先端はステント分岐開口部を分岐管4と整合させるために使用される。
【0061】
別の実施形態において、付属物又は脱出物は、図33に示される系138のような送達系において第二のカテーテル又は側方シースに配置される。この場合、系は2個のバルーンからなる系である。小さいほうのバルーン140は脱出部と同様の方法にてステントに配置される。付属物又は脱出物は膨張内腔141と、分岐管4を配置するためにガイドワイヤ142を受承するための内腔とを備え得る。
【0062】
上述されたような分岐部30を備えたステントの使用のための一つの特殊な適用には、薬物の局所送達がある。上記に論ぜられるように、ステント内再狭窄を含む再狭窄は、血管系に関する医療行為に関連した共通の問題である。再狭窄を治療する及び/又は阻止するために有用である薬剤が見出されており、これらは、全身投与というよりは、再狭窄の可能性のある部位又は実際の再狭窄部位に局所的に送達されることが最も好ましい。
【0063】
本明細書に使用されるように、「阻止する」なる用語は、疾病若しくは状態の発生若しくは重症度を、又は疾病若しくは状態の症状を、止めること又は低減することを含む。
本明細書に使用されるように、「治療する」なる用語は、実質的に、疾病若しくは状態の重症度を、又は疾病若しくは状態の症状を低減すること、或いは、疾病若しくは状態の出現を、又は疾病若しくは状態の症状を実質的に低減することを含む。「治療する」なる用語は実質的に、疾病若しくは状態を、又は疾病若しくは状態の症状を完全に根絶することを含む。「治療する」なる用語はまた、疾病若しくは状態の発生若しくは重症度を、又は疾病若しくは状態の症状を、阻止すること、止めること、又は低減することを包含する。
【0064】
例えば、抗再狭窄薬とともに薬物が特定の体内の部位にて主として有用である場合、全身投与は必要ではなく、しばしば望ましからざるものとなる。例えば、薬物の全身投与は時として望ましくない副作用を生ずる。また、全身送達法を用いて治療に必要な部位に一定の薬物送達を行うことは困難である。全身に投与された薬物はしばしば濃度のピークと最下点とを循環するので、毒性の時期と効果を奏しない時期とを生ずることになる。これに対して、局所的に送達された薬物は治療が必要である部位に高濃度にて送達される一方、薬物の全身濃度は最小化されるので、副作用を最小化する、又は回避することができる。更に、局所送達は、望ましくない変動を最小限に留めながら、治療部位において適切な薬物レベルを維持することが容易である。
【0065】
本発明に従うステントは、ステント壁上及び/又はステント壁内に一つ以上の薬物デポを有することもできる。本明細書に使用されるように、「デポ」なる用語は薬物を保持し、その後に放出するためにデザインされた少なくとも一つの薬物の貯蔵所を意味する。現在の技術に従って、薬物を含む材料は、しばしば薬物含有材料をステントの壁上に塗布することにより該ステントと結合される。従って、「塗布」は、デポを参照し、本明細書においては該デポを記述する上において使用されるが、この使用は説明上便利であるためのみのものであって、その方法に限定するものではなく、現在利用可能であるか、又は利用可能になる薬物とステントとを結合するその他の方法も特に考慮される。別の非限定的な例として、以下に更に記載されているように、ステントは、薬物を分泌するか、そうでなければ該薬物を放出する遺伝子操作された細胞で播種され得る。更に別の非限定的な例として、薬物を含有する生物学的に適合可能なポリマーが所望のサイズ及び形状の固形物中に成形され、薬学的に許容される方法を用いてステントに付着される。
【0066】
「デポ」なる用語は、コーティングされているか、又はそうでなければ薬物若しくは薬物を含有する材料と結合されるステントの領域を一般的には参照する。任意の与えたれたデポはその他のデポから分離される。例えば、ある実施形態において、デポは薬物を含有する材料の分離した固体から形成される。別の例として、本発明に従うステントの壁部は開口した空間からなり、デポもまた空間を含む。例えば、薬物若しくは薬物を含む材料がステント上に被覆若しくは播種されてデポを形成する実施形態において、該デポは開口した空間を含む。一つのデポは第二のデポに当接又は隣接しているが、該第二のデポは一般的には、以下に詳細に記載されるように、異なる薬物及び/又は異なる濃度の薬物を一般的には含む。
【0067】
本発明に従うステントのデポは、ステント壁「上」又はステント壁「内」にあることが理解されるであろう。例えば、ステントを留置した部位にて管壁の細胞に対して主として薬物を放出することが望ましい場合、薬物を含有する固体をコーティングする、付着する、又はそうでなければ該薬物をステント壁の外側のみに結合させることが望ましいであろう。別の例として、薬物をステントから下流側にある身体の器官、組織又は領域に送達することが望ましい場合、薬物を含有する固体をコーティングする、付着する、又はそうでなければ該薬物をステント壁の内側のみに結合させることが望ましいであろう。更にその他の実施形態において、薬物を含有する固体をコーティングする、付着する、又はそうでなければ該薬物をステント壁の内側、ステント壁の外側及び/又は壁内部の開口した空間と内向きに対面するステント壁の一部に結合させることが望ましいであろう。
【0068】
「薬物」、「薬物化合物」及び「薬剤」なる用語は、それらがそうでないことが記載されていない限り、本明細書においては相互に変換可能に使用される。これらの用語は、製薬的に許容可能な物質(即ち、ヒトのような哺乳動物の体内における使用に対して安全であり、かつ体細胞に何らかの生物学的効果を有する物質)を意味するために、広く解釈されるべく意味を有する。該用語はまた、ヒトのような哺乳動物の体内における使用に対して安全性が試験されている、及び/又は、それらが体細胞においていかなる生物学的効果を有するかが明らかとなっている物質を含む。本明細書において用語が定義されている薬物であり得る分子のタイプの例としては、たんぱく質及びペプチド、小さな分子、抗体、マルチ循環分子(multi−cyclical molecules)、マクロライド及び核酸を含むが、それらに限定されるものではない。本明細書において提供される一般的な例及び特殊な例並びに同様の物質は、本発明に従う用語「薬物」において含まれる。
【0069】
本発明に従うステントのデポは貯蔵された薬物を放出又は溶出可能である。従って、本発明のデポは、貯蔵される薬物を取り込む、包囲する、付着する又はそうでなければ保持して、後に放出することのできる任意の材料から形成される。本発明に従うステントのデポは好ましくは制御可能に薬物を放出できる。従って、本発明のデポは、貯蔵される薬物を取り込む、包囲する、付着する又はそうでなければ保持して、後に制御可能に放出することのできる任意の材料から形成されることが好ましい。
【0070】
「制御可能に放出する」、「制御可能な放出」及び「制御可能に放出」なる用語は、本明細書において、選択された条件下にて、所定の速度及び持続時間における薬物の放出を記載するものとして使用される。徐放性は制御可能な放出の一つの形態である。
【0071】
ある好ましい実施形態において、本発明のデポは薬物が装填された一つ以上の生物学的に適合可能なポリマーからなる。ある実施形態において、使用される生物学的に適合可能なポリマーはステントが移植された内腔壁への刺激が最小化されている。薬物を装填した生物学的に適合可能なポリマーをステント内又はステント上に組み込むための方法は、ステントをポリマーにてコーティングすることを一般的には含み、当業者には周知である。例えば、米国特許第5679400号明細書を参照されたい。
【0072】
薬物を生物学的に適合可能なポリマーに装填するための幾らかの形態は本発明により予想されている。例えば、薬物はポリマー中に成形され、ポリマー内に取り込まれるか若しくは包囲される、ポリマーに共有結合的に付着される、ポリマーに物理的に接着される、又はそうでなければ、生物学的に適合可能なポリマー内に組み込まれ得る。
【0073】
生物学的に適合可能なポリマーは、例えば、生理学的条件下における所望の放出速度又はポリマーの安定性の所望の程度のような因子に応じて、生物学的に安定なモリマーであるか、又は生物学的に分解可能なポリマーであるかのいずれかであり得る。
【0074】
本発明と関連して使用できる生物学的に分解可能なポリマーは、ポリ(L−乳酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−コ−吉草酸塩)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(グリコール酸−コ−トリメチレンカーボネート)、ポリリン酸エステル、ポリリン酸エステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、コポリ(エーテル−エステル)(例えば、PEO/PLA)、ポリアルキレンシュウ酸塩、ポリフォスファゼン、並びにフィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン及びヒアルロン酸のような生体分子であるが、それらに限定されるものではない。
【0075】
本明細書と関連して使用できる生物学的に安定なポリマーは、ポリウレタン、シリコン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイソブチレン、エチレン−アルファオレフィンコポリマー、アクリル酸ポリマー及びコポリマー、ポリ塩化ビニルのようなハロゲン化ビニルポリマー及びコポリマー、ポリビニルメチルエーテルのようなポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデン及びポリ塩化ビニリデンのようなポリハロゲン化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリスチレンのようなポリビニル芳香族、ポリビニル酢酸のようなポリビニルエステル、エチレン−メチルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂及びエチレンビニル酢酸コポリマーのようなビニルモノマー同士のコポリマー及びビニルモノマーとオレフィンとのコポリマー、ナイロン66及びポリカプロラクタムのようなポリアミド、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、レーヨン、レーヨン−トリアセテート、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロファン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル及びカルボキシメチルセルロースを含むがそれらに限定されるものではない。
【0076】
あるその他の実施形態において、本発明に従うステント上又はステント内のデポは薬物が包含される又は取り込まれたリポソームからなる。薬物が装填されたリポソームをステント内又はステント上に組み込むための方法は、ステントをポリマーにてコーティングすることを含み、当業者には周知である。例えば、Kallinteri P.他の「デキサメタゾン含有リポソーム:被覆された金属ステントからのデキサメタゾンの徐放性の薬物送達系としての適用可能性のインビトロ試験(Dexamethasone incorporating liposomes:an in vitro study of their applicability as a slow releasing delivery system of dexamethasone from covered metallic stents)」、Biomaterials、23(24):4819−26(2002)を参照されたい。更にその他の実施形態において、本発明に従うステント上又はステント内のデポは、例えば治療用たんぱく質のような所望の薬物を分泌、又は放出する遺伝的に操作された細胞からなる。遺伝的に操作された細胞をステント内又はステント上に組み込むための方法は、該細胞をステント上に播種する方法を含み、当業者には周知である。例えば、Dichek,D.A.他の「血管内ステントへの遺伝子操作された内皮細胞の播種(Seeding of Intravasclar Stents With Genetically Engineered Endothelial Cells)」、Circulation,80:1347−1353(1989)、Flugelman M.Y.他による「ステントを展開してインビトロ中にて流速にさらした後に付着し、かつ生存した状態である遺伝子操作された内皮細胞(Genetically engineered endothelial cells remain adherent and viable after stent deployment and exposure to flow in vitro)」、Circ Res、70:348−54(1992)を参照されたい。
【0077】
一つ以上のデポは本発明に従うステントの壁部内又は壁部上の任意の位置に存在し得る。デポは本発明に従う任意のステント及び全てのステントと共に使用され得る。デポは本発明に従うステントの主たる管部の壁部内又は壁部上に存在し得る。同様に、デポは本発明に従うステントの分岐部の壁部内又は壁部上に存在し得る。デポの位置は、高濃度の薬物送達に所望となる位置に依存する。
【0078】
本発明のステント上又はステント内のデポの大きさは、ステント本体が製造される材料、ステント本体及びデポの透過性、デポの薬物を保持する効率、薬物の濃度、並びに薬物放出の所望の濃度及び持続時間のような種々のパラメータに依存する。デポは本発明に従うステントの主たる管部の外周全体、又は外周の一部のみの周囲に延びている。同様に、デポは、本発明に従うステントの主たる管の全長にわたり、又は該長さ方向の一部のみに対して長手方向に延びている。本発明に従うステントの分岐部に関して、デポは壁部の全体若しくは一部のみを覆うか、又は壁部全体中又は該壁部の一部の中に存在する。
【0079】
デポの全容積を増大することが望ましい場合、デポの厚み又は深さよりは、その長さ及び/又は幅を増大させることが時として望ましい。即ち、ステントの内腔内を更に深くデポを延長させるよりはむしろ、ステントの壁部に沿って又は壁部内にてデポのサイズを増大させることが好ましい。ステントの内腔内に更に深く延びすぎるデポはステントを貫通する流体の流れを妨げることになり、外側の壁部上に過剰に厚く存在するデポはステントを管内にて変形し、流体の流れを妨げることになる。しかしながら、管の小さな領域に対して薬物の濃度を最大化するために小さな表面積に大容量のデポを濃縮させることは望ましいであろう。反対に、管の大きな領域に沿って薬物を送達させることが望ましいようなその他の例において、ステントの壁部に沿って、又は壁部において大きな表面積を有するデポを使用することが望ましい。
【0080】
従って、所望の薬物分布並びに治療させるべき主たる管及び分岐管の大きさに従って調整されるデポの長さ、幅及び厚みは変更可能である。例えば、狭い管内において流体の流れを妨げるのに十分な厚みのデポは、より大きな管に対しては最適な厚みであるかもしれない。
【0081】
付随的に、デポの薬物濃度は、デポから溶出される薬物の所望の速度及びデポの局所的な領域における薬物の所望の濃度に従って変更される。従って、デポの長さ、幅及び厚みのパラメータ並びに薬物濃度は、種々のサイズの管内における所望の領域へ所望の濃度の薬物を溶出すべく該デポを調整するために変更される。
【0082】
本発明に従うステント内又は該ステント上のデポに組み込むことのできる抗再狭窄薬の非限定的な例は、抗凝血剤、抗増殖剤、抗遊走剤、抗代謝剤、抗炎症剤及び免疫抑制物質並びにそれらの組み合わせを含む。特に有用な抗再狭窄薬は、パクリタキセル、ラパマイシン及びHDAC阻害剤を含む。平滑筋細胞(SMC)増殖の有効な阻害剤であるヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤の例は、トリコスタチンA(TSA)、スベロイルアニリドヒドロキサミン酸(SAHA),オキサムフラチン、m−カルボキシ桂皮酸ビスヒドロキサミド(CBHA)、環状ヒドロキサム酸含有ペプチド1(CHAP1)、環状ヒドロキサム酸含有ペプチド31(CHAP31)、スベリンビスヒドロキサメート(SBHA)、ピロキサミド及びスクリプタイドのようなヒドロキサミン酸を含むがそれらに限定されるものではない。HDAC阻害剤、それらの使用法、それらを含有するステントに関する更に詳細な説明は、2002年7月24日に出願され、代理人整理番号が03/23768号であり、発明の名称が「ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を制御可能に放出できるステント(STENTS CAPABLE OF CONTROLLABLY RELEASING HISTONE DEACETYLASE INHIBITORS)」である、本発明の共通の譲受人により譲渡された米国特許仮出願に開示されており、本明細書においてはその全体が参照として援用される。
【0083】
抗再狭窄薬に加えて、本発明に従うステントは、その他の薬物を局所送達するための担体としても使用され得る。非限定的な例として、本発明のステントは特に抗血栓薬の局所送達に適している。血栓症(血栓又は傷の凝血塊)は時として、血管に関する医療行為に伴って起こる。例えば、血栓は、経皮経管冠動脈形成(「PTCA」、一種のバルーン形成術)又は冠動脈バイパス手術のような血管インターベンショナル処置により動脈壁が物理的に傷つくことにより生ずる。血栓は死に至らしめることもあるが、副作用として血栓を伴う可能性のある該処置は、それ自身、生命を救い、広く使用される。加えて、血栓はアテローム性動脈硬化のような自然の疾病が進行することによっても生ずる。従って、血管の処置を受けている患者に対して抗血栓薬を投与することはしばしば望ましいものである。
【0084】
多くの抗血栓薬が当該技術分野において公知である。非限定的な例としては、アスピリン(アセチルサリチル酸)、プロスタグランジンE1、選択的なトロンボキサンA2阻害剤、選択的なトロンビン阻害剤、血小板受容体GPIIb/IIIaブロッカー、組織プラスミノーゲン活性剤、ストレプトキナーゼ、ヘパリン、ヒルジン、ビバリルジン及びキストリン並びにその他の血小板及び/又はトロンビン阻害剤である。抗再狭窄薬とともに、血栓の可能性のある部位に局所的に抗血栓薬を投与することは、全身投与であることが大いに好ましい。
【0085】
本発明に従うステント内又は該ステント上のデポに組み込むことのできる更に、非限定的な薬物の例は、抗悪性腫瘍薬、抗有糸分裂性薬、抗血小板薬、抗フィブリン薬、抗トロンビン薬、抗生物質、抗酸化剤及び抗アレルギー物質並びにそれらの組み合わせを含む。
【0086】
本発明に従って使用するためのデポは一つ以上の異なる薬物を含み得る。例えば、相加効果又は相乗効果を有する二つ以上の薬物を含むことがしばしば望ましい。一つ以上の薬物が一つのデポに組み込まれている場合、互いに、干渉しない、分解しない、不安定にならない、又はそうでなければ互いを妨害しない薬物を組み込むことが通常好ましいであろう。しかしながら、幾らかの場合、第一の薬物と、該第一の薬物の活性を所望の様式に低減又は変更する第二の薬物とを含むことが望ましいであろう。同様に、異なるデポが、異なる薬物を含むか又は同様の薬物の異なる濃度を含むであろう。多くの可能な置換により、処置において柔軟性を与えることが可能になる。
【0087】
本発明に従うステントは、ステントの位置において、主たる管及び分岐管の両方の壁部の細胞に対して薬物の局所送達用の担体として使用され得る。ステントに接する領域の細胞の治療に特に適した薬物は、抗再狭窄薬及び抗血栓薬を含む。所望であれば、異なる薬物濃度又は異なる薬物が、ステント壁の異なる領域内又は領域上に配置されるデポに含まれ得る。例えば、主たる管の細胞を第一の薬物、薬物の組み合わせ及び/又は薬物濃度で治療し、分岐管の細胞を第二の異なる薬物、薬物の組み合わせ及び/又は薬物濃度で治療することが望ましいであろう。別の例として、管の分岐部付近に高濃度の抗再狭窄薬を維持することが望ましいであろう。更に別の非限定的な例として、高濃度の再狭窄薬をステントの三つの開口端部(二つは主たる部分であり、一つは分岐部である)に維持させることが望ましいであろう。本明細書の開示を読むことによって、二つ以上のデポの多くの組み合わせが本発明の精神及び範囲内において可能であることを当業者は理解するであろう。
【0088】
本発明に従うステントは、ステントの下流側にある身体の器官、組織又は領域に薬物を送達するために担体として使用され得る。例えば、本発明に従うステントは心臓のような器官に血液を供給する動脈内に、該器官に近い位置において配置され得る。ステント内又はステント上のデポから溶出する薬物は、血流によって器官へ運ばれる。このようにして、組織、器官及び身体の領域の局所送達が達成される。本発明に従うステントを使用して、第一の薬物、薬物の組み合わせ及び/又は薬物濃度がステントの主たる管から下流側にある器官、組織又は領域に送達される一方、第二の異なる薬物、薬物の組み合わせ及び/又は薬物濃度がステントの分岐部から下流側にある器官、組織又は領域に送達される。この差動送達は、第一の薬物、薬物の組み合わせ及び/又は薬物濃度を有するデポを分岐部を貫通して流れる血液と接触することのないステントの主たる部分の領域内又は領域上に配置し、第二の異なる薬物、薬物の組み合わせ及び/又は薬物濃度を有する第二のデポをステントの分岐部内又は分岐部上に配置することにより達成される。本明細書の開示を読むことによって、二つ以上のデポの多くの組み合わせが本発明の精神及び範囲内において可能であることを当業者は理解するであろう。
【0089】
本発明に従うステント内又はステント上のデポに組み込まれ得る薬物の特殊なかつ非限定的な例として以下の薬物が含まれる。抗悪性腫瘍薬及び/又は抗有糸分裂性薬の例としては、ドセタキセル(ドイツ国フランクフルトに所在のアヴェンティス(Aventis)社から入手可能なタキソテール(Taxotere)(登録商標))、メトトレキセート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、塩酸ドキソルビシン(例えば、ニュージャージー州ピーパック(Peapack)に所在のファルマシアアンドアップジョン(Pharmacia & Upjohn)社から入手可能なアドリアマイシン(登録商標))及びマイトマイシン(例えば、コネチカット州スタムフォード(Stamford)に所在のブリストルマイヤーズスクイブ社(Bristol−Myers Squibb Co.)から入手可能なムタマイシン(登録商標))が含まれる。抗血小板薬、抗凝血薬、抗フィブリン薬及び抗トロンビン薬の例としては、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、フォースコリン、バピプロスト、プロスタサイクリン及びプロスタサイクリン類似体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗トロンビン薬)、ジピリダモール、糖タンパクIIb/IIIa血小板膜受容体アンタゴニスト抗体、組み換えヒルジン及びアンジオマックス(登録商標)(マサチューセッツ州ケンブリッジに所在のバイオジェン(Biogen)社から入手可能)等のトロンビン阻害薬を含む。細胞増殖抑制薬及び抗増殖薬の例としては、アンジオペプチン、カプトプリル(例えば、コネチカット州スタムフォードに所在のブリストルマイヤーズスクイブ社から入手可能なカポテン(Capoten)(登録商標)及びカポジド(Capozide)(登録商標))シラザプリル又はリシノプリル(ニュージャージー州ホワイトハウスステーション(Whitehouse Station)に所在のメルク社から入手可能なプリニビル(Prinivil)(登録商標)及びプリンジド(Prinzide)(登録商標))のようなアンジオテンシン変換酵素阻害薬、カルシウムチャネル遮断薬(ニフェジピンのような)、コルチシン、繊維芽細胞増殖因子(FGF)拮抗薬、ヒスタミン拮抗薬、ラボスタチン(ニュージャージー州ホワイトハウスステーションのメルク社(Merck & Co.,Inc.)から入手可能な商標名Mevacor(登録商標)である、HMG−CoAレダクターゼ阻害薬)、モノクロナール抗体(例えば、血小板由来成長因子(PDGF)受容体に特異的なもの)、ニトロプルシッド、ホスホジエステラーゼ阻害薬、プロスタグランジン阻害薬、スラミン、セロトニン遮断薬、ステロイド、チオプロテーゼ阻害薬、トリアゾロピリミジン(PDGF拮抗薬)及び一酸化窒素を含む。抗アレルギー薬の例としてはペミロラストカリウムである。使用され得るその他の治療用物質又は治療剤は、α−インターフェロン及びデキサメタソンである。上述の治療用物質又は治療剤の予防及び治療特性は当業者に周知である。
【0090】
本発明はまた、本発明に従うステント又は複数のステントからなるキットを提供する。ステント又は複数のステントに加えて、本発明に従うキットは、例えば、送達用カテーテル、バルーン及び/又は使用のための指示書を含むことができる。本発明に従うキットにおいて、ステントはバルーン又はカテーテルに装着され得る。代替的に、該ステントはバルーン又はカテーテルから分離され得、使用前にそれらの内部又はそれらの上に取り付けられ得る。
【0091】
本発明は特殊な実施形態及びその実施例と組み合わせて記載されてきたが、本発明の開示を読むことにより、種々の代替物、修正及び変更が当業者に明白であることは明らかであろう。従って、添付した請求の範囲の精神及び広い範囲内にそのような代替物、修正及び変更が包含されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】閉塞物を有する血管分岐部を示す。
【図2】血管分岐部にて実施される従来技術のステントを示す。
【図3】血管分岐部にて実施される従来技術のステントを示す。
【図4】血管分岐部にて実施される従来技術のステントを示す。
【図5】本発明に従う拡張していないステントの一実施形態の平面図である。
【図6】図5に示された拡張していないステントの一部の拡大図である。
【図7】図5のステントの拡張した形態における拡張可能な分岐部の斜視図である。
【図8】本発明に従うステントの別の実施形態の一部の拡大図である。
【図9】本発明に従うステントの代替的な実施形態の一部の拡大図である。
【図10】図9のステントの拡張した形態における拡張可能な分岐部の斜視図である。
【図11】血管分岐部にて導入される図5のステントの拡張した状態における概略図である。
【図12】血管分岐部に導入される図9のステントの拡張した状態における概略図である。
【図13】本発明に従うステントの別の実施形態の一部の拡大図である。
【図14】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図15】図14に示された拡張していないステントの一部の拡大図である。
【図16】本発明に従うステントの別の実施形態の一部の図である。
【図17】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図18】図17のステントの拡張可能な分岐部の拡張した形態の斜視図である。
【図19】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図20】図19のステントの一部の拡大図である。
【図21】図19のステントの拡張可能な分岐部の拡張した形態の図である。
【図22】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図23】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図24】図23のステントの拡張可能な分岐部の拡張した状態における図である。
【図25】一実施形態に従う、本発明のステントを挿入する方法の工程を示す。
【図26】一実施形態に従う、本発明のステントを挿入する方法の工程を示す。
【図27】一実施形態に従う、本発明のステントを挿入する方法の工程を示す。
【図28】一実施形態に従う、本発明のステントを挿入する方法の工程を示す。
【図29】本発明のステントを挿入する別の方法の工程を示す。
【図30】本発明のステントを挿入する別の方法の工程を示す。
【図31】本発明のステントを挿入する別の方法の工程を示す。
【図32】図29乃至31の方法にて使用するための脱出した(herniated)バルーンの図である。
【図33】本発明の別の方法に従うステントを挿入するための別のステント送達システムの図である。
【図34】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図35】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図36】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図37】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図38】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図39】図38のステントの拡張した形態における斜視図である。
【図40】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図41】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図42】図41のステントの拡張した形態における斜視図である。
【図43】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図44】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図45】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図46】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【図47】図46のステントの拡張した形態の斜視図である。
【図48】本発明に従う拡張していないステントの別の実施形態の平面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐ステントであって、
内径と外径を有するとともに前記内径と前記外径との間に壁部を定義する管状部材と、前記壁部はパターンを定義する幾何学的形態を有することと、
前記管状構造の壁部に形成されるとともに該壁部のパターンを遮断する拡張可能な分岐構造体と、前記拡張可能な分岐構造体は前記管状部材に連結される第一のリングと前記第一のリングに連結される第二のリングとを有することと、前記第一のリングは前記第二のリングと同心円状であることと、からなる分岐ステントにおいて、
前記第二のリングは中央分岐開口部をほぼ包囲するとともに該開口部を定義し、
前記第一のリング及び前記第二のリングは拡張されていない形態から拡張された形態まで移動可能であり、拡張されていない形態において、前記第一及び第二のリングは壁部に沿って配置され、かつ拡張された形態において、前記第一及び第二のリングは前記管状部材から外向きに延びており、
前記第一のリング及び第二のリングの間に補助アクセス開口部が定義され、それにより、拡張されていない状態における分岐管へのアクセスが提供され、前記補助アクセス開口部は拡張していない形態においては前記中央分岐開口部より大きい分岐ステント。
【請求項2】
前記管状部材は長手軸を有し、かつ前記拡張可能な分岐構造体は拡張した形態において前記長手軸とほぼ垂直に配置される請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記管状部材は前記長手軸に沿って配置される複数の波形リングからなり、かつ前記波形リングは連結部により連結される請求項1に記載のステント。
【請求項4】
前記第一及び第二のリングは拡張されていない形態において前記長手軸とほぼ垂直に配置された共通な軸を有する請求項1に記載のステント。
【請求項5】
前記分岐構造体は遷移リングを含む請求項1に記載のステント。
【請求項6】
前記遷移リングは不連続部を含む請求項5に記載のステント。
【請求項7】
少なくとも一つのオメガ形状の連結部材は前記遷移リングと前記壁部のパターンとの間に延びている請求項5に記載のステント。
【請求項8】
少なくとも一つの連結部材は前記不連続部を貫通して延びるとともに伸張した分岐構造体の外側にて前記壁部パターンの一部に前記第一のリングを連結する請求項6に記載のステント。
【請求項9】
前記少なくとも一つの連結部材は前記第一のリングを伸張した分岐構造体の外側にて前記壁部パターンのオメガ形状のストラット部に連結する請求項8に記載のステント。
【請求項10】
前記第二のリングは複数の内側連結部により前記第一のリングに連結される請求項5に記載のステント。
【請求項11】
前記第一のリングは複数の外側連結部により前記遷移リングに連結される請求項10に記載のステント。
【請求項12】
前記外側連結部の少なくとも一つは前記分岐開口部の中心に向かって延びるほぼ波状の曲線部材である請求項11に記載のステント。
【請求項13】
前記内側及び外側連結部はほぼ直線の部材であるとともに前記分岐開口部の中心に向かって延びる請求項11に記載のステント。
【請求項14】
前記第一及び第二のリングはほぼ連続的な波状曲線部材であるとともに中央分岐開口部に向かって延びる波状ピークを含む請求項13に記載のステント。
【請求項15】
外側連結部の各々と遷移リングとの交点はピボット点を形成し、該ピボット点を中心に前記波状ピークは拡張した形態にて外向きに回動する請求項11に記載のステント。
【請求項16】
前記第一及び第二のリングはほぼ連続的な曲線部材であるとともに波状ピークを含み、前記第二のリングの波状ピークは約0.025mm乃至約0.225mmの曲率半径を有する請求項1に記載のステント。
【請求項17】
前記第二のリングの波状ピークは約0.125mm乃至約0.225mmの曲率半径を有する請求項15に記載のステント。
【請求項18】
分岐ステントであって、
内径と外径を有するとともに前記内径と前記外径との間に壁部を定義する管状部材と、前記壁部はパターンを定義する幾何学的形態を有することと、
前記管状構造の壁部に形成されるとともに該壁部のパターンを遮断する拡張可能な分岐構造体と、前記拡張可能な分岐構造体は前記管状部材に連結される第一のリングと前記第一のリングに連結される第二のリングとを有することと、前記第一のリングは前記第二のリングと同心円状であることと、からなる分岐ステントにおいて、
前記第二のリングは中央分岐開口部をほぼ包囲するとともに該開口部を定義し、
前記第一のリング及び前記第二のリングは拡張されていない形態から拡張された形態まで移動可能であり、拡張されていない形態において、前記第一及び第二のリングは壁部に沿って配置され、かつ拡張された形態において、前記第一及び第二のリングは前記管状部材から外向きに延びており、
前記第一及び第二のリングはほぼ連続的な曲線状部材であるとともに波状ピークを含み、前記第二のリングの波状ピークは約0.025mm乃至約0.225mmの曲率半径を有する分岐ステント。
【請求項19】
前記第二のリングの波状ピークは0.125乃至0.225mmの曲率半径を有する請求項18に記載のステント。
【請求項20】
分岐ステントであって、
内径と外径を有するとともに前記内径と前記外径との間に壁部を定義する管状部材と、前記壁部はパターンを定義する幾何学的形態を有することと、
前記管状構造の壁部に形成されるとともに該壁部のパターンを遮断する拡張可能な分岐構造体と、前記拡張可能な分岐構造体は前記管状部材に連結される第一のリングと前記第一のリングに連結される第二のリングとを有することと、前記第一のリングは前記第二のリングと同心円状であることと、からなる分岐ステントにおいて、
前記第二のリングは中央分岐開口部をほぼ包囲するとともに該開口部を定義し、
前記第一のリング及び前記第二のリングは拡張されていない形態から拡張された形態まで移動可能であり、拡張されていない形態において、前記第一及び第二のリングは壁部に沿って配置され、かつ拡張された形態において、前記第一及び第二のリングは前記管状部材から外向きに延びており、
前記分岐構造体は遷移リングを含み、
前記第二のリングは複数の内側連結部により前記第一のリングに連結され、かつ前記第一のリングは複数の外側連結部により前記遷移部に連結され、
前記外側連結部の少なくとも一つは前記分岐開口部の中心に向かって延びるほぼ波状の曲線状部材である分岐ステント。
【請求項1】
分岐ステントであって、
内径と外径を有するとともに前記内径と前記外径との間に壁部を定義する管状部材と、前記壁部はパターンを定義する幾何学的形態を有することと、
前記管状構造の壁部に形成されるとともに該壁部のパターンを遮断する拡張可能な分岐構造体と、前記拡張可能な分岐構造体は前記管状部材に連結される第一のリングと前記第一のリングに連結される第二のリングとを有することと、前記第一のリングは前記第二のリングと同心円状であることと、からなる分岐ステントにおいて、
前記第二のリングは中央分岐開口部をほぼ包囲するとともに該開口部を定義し、
前記第一のリング及び前記第二のリングは拡張されていない形態から拡張された形態まで移動可能であり、拡張されていない形態において、前記第一及び第二のリングは壁部に沿って配置され、かつ拡張された形態において、前記第一及び第二のリングは前記管状部材から外向きに延びており、
前記第一のリング及び第二のリングの間に補助アクセス開口部が定義され、それにより、拡張されていない状態における分岐管へのアクセスが提供され、前記補助アクセス開口部は拡張していない形態においては前記中央分岐開口部より大きい分岐ステント。
【請求項2】
前記管状部材は長手軸を有し、かつ前記拡張可能な分岐構造体は拡張した形態において前記長手軸とほぼ垂直に配置される請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記管状部材は前記長手軸に沿って配置される複数の波形リングからなり、かつ前記波形リングは連結部により連結される請求項1に記載のステント。
【請求項4】
前記第一及び第二のリングは拡張されていない形態において前記長手軸とほぼ垂直に配置された共通な軸を有する請求項1に記載のステント。
【請求項5】
前記分岐構造体は遷移リングを含む請求項1に記載のステント。
【請求項6】
前記遷移リングは不連続部を含む請求項5に記載のステント。
【請求項7】
少なくとも一つのオメガ形状の連結部材は前記遷移リングと前記壁部のパターンとの間に延びている請求項5に記載のステント。
【請求項8】
少なくとも一つの連結部材は前記不連続部を貫通して延びるとともに伸張した分岐構造体の外側にて前記壁部パターンの一部に前記第一のリングを連結する請求項6に記載のステント。
【請求項9】
前記少なくとも一つの連結部材は前記第一のリングを伸張した分岐構造体の外側にて前記壁部パターンのオメガ形状のストラット部に連結する請求項8に記載のステント。
【請求項10】
前記第二のリングは複数の内側連結部により前記第一のリングに連結される請求項5に記載のステント。
【請求項11】
前記第一のリングは複数の外側連結部により前記遷移リングに連結される請求項10に記載のステント。
【請求項12】
前記外側連結部の少なくとも一つは前記分岐開口部の中心に向かって延びるほぼ波状の曲線部材である請求項11に記載のステント。
【請求項13】
前記内側及び外側連結部はほぼ直線の部材であるとともに前記分岐開口部の中心に向かって延びる請求項11に記載のステント。
【請求項14】
前記第一及び第二のリングはほぼ連続的な波状曲線部材であるとともに中央分岐開口部に向かって延びる波状ピークを含む請求項13に記載のステント。
【請求項15】
外側連結部の各々と遷移リングとの交点はピボット点を形成し、該ピボット点を中心に前記波状ピークは拡張した形態にて外向きに回動する請求項11に記載のステント。
【請求項16】
前記第一及び第二のリングはほぼ連続的な曲線部材であるとともに波状ピークを含み、前記第二のリングの波状ピークは約0.025mm乃至約0.225mmの曲率半径を有する請求項1に記載のステント。
【請求項17】
前記第二のリングの波状ピークは約0.125mm乃至約0.225mmの曲率半径を有する請求項15に記載のステント。
【請求項18】
分岐ステントであって、
内径と外径を有するとともに前記内径と前記外径との間に壁部を定義する管状部材と、前記壁部はパターンを定義する幾何学的形態を有することと、
前記管状構造の壁部に形成されるとともに該壁部のパターンを遮断する拡張可能な分岐構造体と、前記拡張可能な分岐構造体は前記管状部材に連結される第一のリングと前記第一のリングに連結される第二のリングとを有することと、前記第一のリングは前記第二のリングと同心円状であることと、からなる分岐ステントにおいて、
前記第二のリングは中央分岐開口部をほぼ包囲するとともに該開口部を定義し、
前記第一のリング及び前記第二のリングは拡張されていない形態から拡張された形態まで移動可能であり、拡張されていない形態において、前記第一及び第二のリングは壁部に沿って配置され、かつ拡張された形態において、前記第一及び第二のリングは前記管状部材から外向きに延びており、
前記第一及び第二のリングはほぼ連続的な曲線状部材であるとともに波状ピークを含み、前記第二のリングの波状ピークは約0.025mm乃至約0.225mmの曲率半径を有する分岐ステント。
【請求項19】
前記第二のリングの波状ピークは0.125乃至0.225mmの曲率半径を有する請求項18に記載のステント。
【請求項20】
分岐ステントであって、
内径と外径を有するとともに前記内径と前記外径との間に壁部を定義する管状部材と、前記壁部はパターンを定義する幾何学的形態を有することと、
前記管状構造の壁部に形成されるとともに該壁部のパターンを遮断する拡張可能な分岐構造体と、前記拡張可能な分岐構造体は前記管状部材に連結される第一のリングと前記第一のリングに連結される第二のリングとを有することと、前記第一のリングは前記第二のリングと同心円状であることと、からなる分岐ステントにおいて、
前記第二のリングは中央分岐開口部をほぼ包囲するとともに該開口部を定義し、
前記第一のリング及び前記第二のリングは拡張されていない形態から拡張された形態まで移動可能であり、拡張されていない形態において、前記第一及び第二のリングは壁部に沿って配置され、かつ拡張された形態において、前記第一及び第二のリングは前記管状部材から外向きに延びており、
前記分岐構造体は遷移リングを含み、
前記第二のリングは複数の内側連結部により前記第一のリングに連結され、かつ前記第一のリングは複数の外側連結部により前記遷移部に連結され、
前記外側連結部の少なくとも一つは前記分岐開口部の中心に向かって延びるほぼ波状の曲線状部材である分岐ステント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【公表番号】特表2007−523683(P2007−523683A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520245(P2006−520245)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/022206
【国際公開番号】WO2005/009295
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(501467278)アドバンスド ステント テクノロジーズ, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/022206
【国際公開番号】WO2005/009295
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(501467278)アドバンスド ステント テクノロジーズ, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
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