説明

分散液の降伏値を定期的に測定するための方法および装置ならびにそれらの使用

本発明は流動性物質の降伏値を測定するための方法および装置であって、測定素子が測定対象の流動性物質によって定期的に湿潤される方法および装置について記載する。さらに、前記装置の使用が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動性物質の降伏値を測定するための方法および装置であって、測定素子を測定対象の流動性物質によって定期的に湿潤させる方法および装置について記載する。さらに、本装置の使用についても言及する。
【背景技術】
【0002】
高粘度分散液は、非ニュートン流動挙動を示さない。つまり高粘度分散液は、移動する塊の特定の粘度に加え、その塊の降伏値を有する。この降伏値は、高密度充填物中に分散した粒子の内部摩擦と理解すべきであり、塊が静止状態から移動してその移動を持続するためにはまずこの降伏値を超える必要がある。
【0003】
チョコレート塊の流動挙動は、公定法(OICCC)に従い40℃で溶融物中において試験かつ測定される。これにより粘度および降伏値は区別される。現在は、約0〜200s−1の剪断勾配の範囲内で測定するためにレオメータが使用されている。この範囲内で上昇もしくは下降する剪断勾配の連続進行中には、剪断速度の上方に剪断力を表示する、いわゆる流動曲線が記録される。
【0004】
40℃での溶融チョコレートの流動曲線の測定および評価は、文献において広範に記載されている(例えば非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4参照)。流動曲線および降伏値の近似計算についての評価は、現在まではカッソン(Casson)法(非特許文献5参照)およびWindhabによる改訂版(非特許文献6参照)にしたがって実施されてきた。降伏値に対する可能な他の近似法については、他の文献にて考察されている(非特許文献7参照)。降伏値の原理については、一般にさらなる2点の刊行物(非特許文献8、非特許文献9参照)に記載されており、図1に明示されている。
【0005】
チョコレート塊およびチョコレートコーティングについての簡単な付着量試験は、文献(非特許文献10参照)から公知である。しかし、該文献に提示の方法は手作業でのみ実施可能であり、チョコレート溶融物の準連続的な監視を行うには適切ではない。この方法のさらなる欠点は、現場での方法制御に非常に手間がかかる構成になっていることであるが、付着している残留付着量を測定するためには、使用する被験体がチョコレート塊によって湿潤された後にまず冷却する必要があることがその理由である。さらに、この方法では複雑な複数回の測定が規定されている。
【0006】
傾斜面の原理は、様々な刊行物に記載されている(非特許文献11、非特許文献12、非特許文献13、非特許文献14参照)。降伏値は、規定表面からのチョコレート塊の流動挙動によって測定および算出することができる。したがって、試験面は、特定の角度αで傾斜してもよく(「傾斜面」)、または垂直に立っていてもよい(α=90)。塊が流動し始める角度αが測定されるか、もしくは所定の角度α>αで流動工程の完了後に表面上に残留している塊が測定される。垂直試験プレートおよび残留塊の測定を行う測定方法は、チョコレート溶融物が及ぼす影響を試験するために、Bartuschによって初めて、40℃での統計学的実験室試験において使用された。さらに別の刊行物(非特許文献15または非特許文献16参照)において記載されている単純な流下漏斗は、同様に傾斜面上での流下原理にしたがって機能するが、流下の速度を測定、すなわち降伏値ではなく粘度を検出する。
【0007】
傾斜角度αの湿潤した斜面もしくは傾斜面については、降伏値τを計算するために下記の方程式が適用される。
【0008】
【数1】

式中、
A=湿潤した表面
α=傾斜角度
m=残留付着量の質量
g=加速度(9.81m/s
測定素子の垂直面(α=90°、したがってsin α=1)に対しては、下記の式が適用される。
【0009】
【数2】

【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】S.T.Beckett:Moderne Schokoladentechnologie(Modern Chocolate Technology),Behr Press 1990,211〜231頁,J.Chevalley,“Die Flieβeigenschaften von Schokolade(The Flow Properties of Chocolate)”
【非特許文献2】D.Weipert, H.D.Tscheuschner, E.Windhab,“Rheologie der Lebensmttel(Rheology of Foods)”,Behr Press 1993,431〜470頁,H.D.Tscheuschner,“Schokolade,Sueβwaren(Chocolate,Confectionery)”
【非特許文献3】H.D.Tscheuschner,“Rheologische Eigenschaften von Schokoladenmassen und deren prozessrelevanten Bedeutung(Rheological Properties of Chocolate Mass and the Process−Relevant Meaning thereof)”,Zucker−und Sueβwarenwirtschaft(ZSW)(Sugar and Confectionery Industry),1993,136−147
【非特許文献4】Windhab E., Rolfes L.,“Messung des Flieβverhaltens von Schokoladenmassen(Measurement of the flow behaviour of Chocolate Masses)”,ZSW 1991,401
【非特許文献5】Office International du Cacao et du Chocolat,Methode Blattの試験方法,様式10−D/1973,“Viskositaet von Schokolade−Bestimmung der Casson−Flieβgrenze und der Casson Viscositaet(Viscosity of Chocolate−determination of the Casson yield value and the Casson viscosity)(Glaettli Press, postcode CH−6934 Bioggio(Switzerland)
【非特許文献6】International Confectionery Association,“Viscosity of Cocoa and Chocolate Products”;Analytical Method 46,1〜17頁,ICA,rue Defacqz 1,1000 Brussels (Belgium),“Bestimmung der dynamischen Viscositaet(Determination of the Dynamic Viscosity)”
【非特許文献7】G.R.Ziegler:Confectionery Science,Proceedings Penn State University 1997,Dep. Food Science,104−126,Windhab E.“Structure−Rheology Relationships in Chocolate Processing”
【非特許文献8】Coussot P., Boyer S.“Determination of yield stress fluid behaviour from inclined plane test”, Rheol.Acta 34:534−543(1995)
【非特許文献9】Cousset P.“Avalanche behaviour in yield stress fluids”,Physical Review Letters,Vol.88,No.17,175501−175504,(2002)
【非特許文献10】J.Kleinert:Handbuch der Kakaoverarbeitung und Schokoladeherstellung(Handbook of Cocoa Processing and Chocolate Production), Behr Press, 1997,402頁以降)
【非特許文献11】Coussot P,Boyer S,“Determination of yield stress fluid behaviour from inclined plane test”,Rheol.Acta 34:534−543(1995)
【非特許文献12】Cousset P.“Avalanche behaviour in yield stress fluids”,Physical Review Letters,Vol.88,No.17,175501−175504,(2002)
【非特許文献13】W.Bartusch,“Der Einfluss von Ruettelstoeβen auf die Flieβeigenschaften von Schokoladenmassen”(The Influence of Vibrations on the Flow Properties of Chocolate Masses),Fette Seifen Anstrichmittel 63(1961)721−729
【非特許文献14】A.Beaury,Semester dissertation Fraunhofer IVV/FH Weihenstephan,in preparation,2006
【非特許文献15】S.T.Beckett, The Science of chocolate, RSC Paperbacks, ISBN0−85404−600−3,112頁
【非特許文献16】The Bostwick Consistometer (Bostwick Consistometer,CSC Scientific Company Inc.,2003
【非特許文献17】G.Ziegleder, M.Kegel, C.Santos,“Flieβverhalten vorkristallisierter Schokoladenmassen(Flow behaviour of precrystallised Chocolate Masses)”,ZSW 1990,316−321
【非特許文献18】J.Kleinert, Rheologie der Schokolade(Rheology of chocolate),ZSW 28(1975,187−191)
【非特許文献19】G.Ziegleder,M. Kegel,C. Santos,“Flieβverhalten vorristallisierter Schokoladenmassen(Flow behaviour of precrystallised Chocolate Masses)”,ZSW 1990,316−321
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、分散液の降伏値の準連続的測定を簡単かつ再現可能な方法で実施可能な、簡単な方法および装置を提供することである。また本発明の別の目的は、可能な限り広範囲の流動性物質を前記測定方法の対象とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的は、請求項1に記載の方法、請求項16に記載の測定装置、および請求項24に記載の使用によって達成される。従属請求項は、有意に発展した形態を表している。
【0013】
本発明においては、流動性物質の降伏値を前記各流動性物質の流れの中で測定するための方法であって、測定素子を所定の一定温度で測定対象の流動性物質によって繰り返し湿潤させ、続いて流動性物質を測定素子がほぼ一定重量に達するように算出された所定の流下時間にわたり部分的に流下させ、降伏値を測定素子に付着している残留付着量によって測定する方法が提供される。
【0014】
流下時間についての選択基準は、測定素子がほぼ一定重量に達するように流下時間を算出することにある。したがって、本発明によれば測定素子の重量における相対変化は1秒間当たり<1%であると理解されている。一般に、流下時間は測定対象の流動性物質の粘度に左右される。測定対象の物質の粘度が高いほど、流下時間も長くなる。
【0015】
一方で、本測定方法は、測定素子を流動性物質中に浸漬し、再び抜去されるように実施することができる。図2にその原理を示す。
【0016】
また代替の実施形態では、測定素子は流動性物質で浸される。かかる実施形態は図3において実施される。
【0017】
それぞれの場合において、測定素子の浸漬もしくは浸し時間は、測定対象の流動性物質の粘度の関数として選択され、測定素子の完全な湿潤および/または流動性物質の完全な交換が保証されるように算出される。測定対象の物質の流動挙動に従って、異なる時間が必要とされる。これらは、浸漬時間を所定の時間に制限することを望まなくても、例えば1mPas〜1Pasの動的粘度の低粘性物質では10〜30秒間の範囲内で、例えば1Pas〜100Pasの範囲内の粘度の高粘性物質では30〜300秒間の範囲内で変動する。本方法の重要な利点は、選択された浸漬時間によって、付着している残留付着量が完全に交換され、測定素子は検査対象の流動性物質と同一温度に調節されることが保証されることである。表1は、例として、選択された分散液の動的粘度の一覧を示しており、その降伏値は本方法により決定できる。図4は、様々な物質の粘度の温度への依存性を示している。これらの事実から、測定対象の物質のレオロジー特性をできる限り一定に維持するためには、測定素子を測定対象の物質と同一温度に調節することが不可欠であることが明らかである。
【0018】
流動性物質を部分的に流下させた後、測定素子に付着している流動性物質の残留付着量の重量および/または体積の測定が行われる。
【0019】
残留付着量の重量および/または体積の測定は、有利には、スケール、力変換器、振動センサ、光学センサ、電磁センサ、圧電センサおよび/または圧力変換器からなる群より選択されるセンサによって行われる。
【0020】
本方法の別の有利な実施形態では、測定素子の垂直面および/または傾斜面が湿潤される。
【0021】
有意には、本方法は、測定中に付着する残留量が、その残留量を取り除いた流動性物質とほぼ同一のレオロジー特性を示すように実施される。例えば、動的粘度、降伏値、および温度に依存するすべての物理的特性が特に意図される。測定対象の流動性物質を用いた、測定素子の繰り返しの定期的浸漬もしくは浸しにより、流動性物質の恒常的な交換が行われるため、この条件は保証される。その結果、測定素子が常に測定対象の物質と同一温度であり、そのため測定素子が検査対象物質のレオロジー特性の歪曲に寄与しないことも保証される。
【0022】
さらに別の代替実施形態は、測定素子が2回の測定サイクル間に流動性物質中で温度調節および/または浸される点で、この条件をさらに保証するのに役立つ。
【0023】
好ましくは、得られた測定データは電子的に処理および/または保存される。
【0024】
本発明によれば、測定対象の分散液は食品もしくは医薬品分野における粘性塊、化粧品、分散液塗料および/またはセラミック塊からなる群より選択することができる。
【0025】
食品、化粧品および/または医薬品分野からの分散液は、例えばチョコレート溶融物、ヨーグルト、ケチャップ、サンドイッチスプレッド、ジャムおよび/またはハチミツ、またはクリーム、軟膏、ローション、口紅などからなる群より選択することができる。
【0026】
驚くべきことに、本方法は、チョコレート塊の場合には簡単な方法でテンパリング度、即ちチョコレート塊の結晶化度を測定するのに特に良好に適合する。
【0027】
本発明のさらに別の好ましい実施形態では、降伏値の測定は、流動性物質の温度の測定と組み合わされる。即ち、本発明によれば、測定パラメータ、例えば浸漬時間および流下時間は、流動性物質の温度の関数として選択される。
【0028】
特に、測定対象の物質のレオロジーを明確に決定するすべての要素を考慮することにより、可能な限り正確で、再現性および信頼性のある降伏値の測定が可能となる。特に、温度は、測定対象の物質の動的粘度、すなわちレオロジーに大きな影響を及ぼす。選択された物質の動的粘度の依存性を図4に示す。
【0029】
同様に、本発明においては、流動性物質の降伏値を定期的に測定するための測定装置であって、流下時間後に測定素子上に残留して付着している流動性物質の残留付着量を測定するための機能ユニットと連絡している規定表面を備える測定素子と、前記測定素子の前記分散液による定期的湿潤を保証するための手段とを有する測定装置が提供される。
【0030】
1つの実施形態では、測定素子の定期的測定を保証するために含有される手段は、測定素子を流動性物質の内もしくは外へ下降および上昇させるための昇降装置であってもよい。
【0031】
また代替的実施形態では、前記手段は、部分量の流動性物質を分離するため、および前記部分量を測定素子へ方向転換させるための装置である。かかる手段は、例えば、機械的スライド、フラップおよび/またはバルブであってもよい。
【0032】
原則として、測定素子は任意の形状、例えばロッド、プレート、漏斗、円錐体および/または球の形状である。
【0033】
好ましくは、測定素子は流動性物質によって湿潤される垂直面および/または傾斜面を有する。
【0034】
測定素子上に付着している流動性物質の残留量を測定する機能ユニットは、有利には、スケール、力変換器、振動センサ、光学センサ、電磁センサ、圧電センサおよび/または圧力変換器からなる群より選択される。
【0035】
有利には、測定データを処理および/または保存するために電子的分析装置、好ましくはコンピュータがさらに提供される。
【0036】
本方法は、製造プラントにおいて流動性物質を連続的に監視することに特に適している。
【0037】
同様に、本発明はテンパリング度、即ちチョコレート塊の結晶化度を測定することに適している。
【0038】
本発明を図面を参照してより詳細に説明する。尚、本発明は図面に示す実施形態には限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】カッソン法により実施される、流動曲線および降伏値の近似計算についての評価を示す図である。
【図2】測定素子が上昇および下降工程によって測定対象の流動性物質中に浸漬される、本発明の実施形態を示す図である。
【図3】測定対象の前記流動性物質の流動中の流れの一部が、分離する工程によって前記測定素子へ方向転換させられる、本発明の実施形態を示す図である。
【図4】選択された物質の動的粘度の温度への依存性を明示する図である。
【図5】プレーンチョコレートおよびカカオ脂の例を参照し、脂肪結晶の含有量が降伏値に及ぼす影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
規定表面を備える測定素子1は、流動している塊(例えば、チョコレート塊)中に定期的に浸漬される(図2)か、もしくは該塊4により定期的に浸される(図3)。測定素子と塊5もしくは4との所定の接触時間後、測定素子1は塊の流れ5から抜去される、または塊の供給4が中断される。かかる中断は、図2に示す実施形態においては測定素子1を塊の流れ5から抜去することによって、また図3に示す実施形態では、塊の流れ4を方向転換させるスライド2を作動させることによって行われる。自由に流動する塊が測定素子1から流下した後、なおも付着している残留塊2(図2)もしくは5(図3)が測定される。かかる測定は、測定素子1上に残留している塊層2(図2)もしくは5(図3)の重量または体積を測定することによって行われるが、この際、各溶液の経路にしたがってスケール、磁石、力変換器もしくは振動センサを使用してもよい。付着している残留塊2(図2)もしくは5(図3)から、傾斜面の公知の法則にしたがって降伏値を算出することができる。これらのデータは電子的に記録される。この測定は極めて迅速に行われるため、塊は測定中に変化しないまま残留する、即ち、例えばチョコレート塊が結晶化によって凝固することはあり得ない。
【0041】
繰り返しの浸漬もしくは浸しの結果、先の測定から付着している残留塊2(図2)もしくは5(図3)は再び洗い流され、新たな測定が可能になることが保証される。同時に、繰り返しの浸漬および抜去4(図2)または浸しは、部分的流れ2(図3)を定期的に分離するための2方向弁の動作により、測定素子1を塊の現在温度に持続的に温度調節することに役立つ。定期的な浸漬4は昇降機構3によって(図2)、また定期的な浸しは例えばバルブ2の規則的な開閉による部分的流れの分離によって(図3)可能になる。本方法の1つの利点は、降伏値の実際的測定が塊の流れ工程によって阻害されないことにある。
【0042】
テンパリングされたチョコレート塊では、テンパリング度が降伏値に大きな影響を及ぼすために、測定された降伏値からテンパリング度(即ち、予備結晶化)を導き出すことができる。このテンパリング度(=予備結晶化したが、依然として流動性の塊内の結晶化脂肪の比率)の測定は、テンパリング度およびテンパリングされた塊の流動挙動を過去の方法で連続的に把握することが極めて困難であり、このため産業上の慣例において測定されることは極めてまれであったため、特に重要である。
【0043】
(比較例)
チョコレートの予備結晶化
液状のチョコレート塊は、脂肪およびココア含有量により、典型的にはおよそ1〜20Pasの動的粘度を有する。予備結晶化のために、チョコレート溶融物は、冷却および剪断により脂肪層中に一次結晶核を生成するため、テンパリング機を通過する。その後に予備結晶化した(テンパリングされた)チョコレート塊は約27〜33℃の温度範囲内でのみ安定性があり、より低温に冷却すると自然に結晶化し、さらに加熱すると結晶核は融解する。典型的には、例えば34℃でのチョコレート溶融物の動的粘度はおよそ10Pasであり、降伏値は20Paである。かかるテンパリングは、チョコレート塊をさらに加工し、かつ成形するために必要である。予備結晶化した塊は、溶融物に比較して大きく変化する流動挙動を示す。このように、予備結晶化した塊は実質的により高い降伏値を有することが分かった(非特許文献17、非特許文献18参照)。実験室装置内での予備結晶化した塊についてのレオロジー測定は、温度差が生じる可能性があるために困難であるが、その理由は、その塊の重要な特性(脂肪結晶の含有量)におけるわずかな温度偏差により塊が変化することにある。脂肪結晶の含有量が降伏値に及ぼす影響を、プレーンチョコレートおよびカカオ脂の例を参照して図5に示す。降伏値における大幅な増加は、結晶含有量の増加に伴い検出される。塊は製造プラントから実験室への搬送中にも変化するが、その理由は、予備結晶化した塊(30℃の温度で典型的なレオロジー測定値:動的粘度:15Pas、降伏値:50Pa)は短時間の等温保持時間中であっても顕著なチキソトロピック挙動を示すことにある(非特許文献19参照)。即ち降伏値が増加するほど、より高粘性になる。そこで、製造中の予備結晶化もしくはテンパリングされた塊に降伏値および粘度が及ぼす影響を測定するための要件が明らかになる。
【0044】
(適用例)
表2は、最新のレオメータで測定された、もしくはCassonおよびOICCCにしたがって算出された溶融チョコレートおよび菓子類塊の降伏値を示す表であり、垂直測定素子(もしくは傾斜面)上の残留付着量から上述した方程式によって決定した降伏値との比較を示してある。OICCCデータと傾斜面による測定との間に比較的良好な相関関係があることは明らかである。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性物質の降伏値を前記流動性物質の流れの中で測定するための方法であって、測定素子を所定の一定温度で測定対象の前記流動性物質で繰り返し湿潤させ、続いて前記流動性物質を前記測定素子がほぼ一定重量に達成するように算出した所定の流下時間にわたり部分的に流下させ、前記降伏値を前記測定素子に付着している残留付着量によって測定すること、を特徴とする方法。
【請求項2】
前記測定素子は前記流動性物質中に浸漬および抜去されること、を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定素子は前記流動性物質で浸されること、を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記測定素子の浸漬もしくは浸し時間は、前記測定対象の流動性物質の粘度の関数として選択し、前記測定素子の完全な湿潤および/または前記流動性物質の完全な交換が保証されるように算出すること、を特徴とする先行する請求項のうちの少なくとも一項に記載の方法。
【請求項5】
前記流下時間後に前記測定素子に付着している前記流動性物質の残留付着量の重量および/または体積を測定すること、を特徴とする先行する請求項のうちの少なくとも一項に記載の方法。
【請求項6】
前記重量および/または体積の測定は、スケール、力変換器、振動センサ、光学センサ、電磁センサ、圧電センサおよび/または圧力変換器からなる群より選択されるセンサによって行われること、を特徴とする先行する請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記測定素子の垂直面および/または傾斜面を湿潤させること、を特徴とする先行する請求項のうちの少なくとも一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、前記測定時に付着している残留付着量が、残留付着量を取り除いた前記流動性物質とほぼ同一のレオロジー特性を示すように実施されること、を特徴とする先行する請求項のうちの少なくとも一項に記載の方法。
【請求項9】
前記測定素子は、2回の測定サイクル間に前記流動性物質中で温度調節されること、および/または洗い流されること、を特徴とする先行する請求項のうちの少なくとも一項に記載の方法。
【請求項10】
さらに前記測定データは、電子的に処理および/または保存されること、を特徴とする先行する請求項のうちの少なくとも一項に記載の方法。
【請求項11】
分散液は流動性物質として測定されること、を特徴とする先行する請求項のうちの少なくとも一項に記載の方法。
【請求項12】
食品もしくは医薬品分野における粘性塊、化粧品、分散液塗料および/またはセラミック塊からなる群より選択される分散液の降伏値を測定すること、を特徴とする先行する請求項のうちの少なくとも一項に記載の方法。
【請求項13】
食品、化粧品および/または医薬品分野における、チョコレート溶融物、ヨーグルト、ケチャップ、サンドイッチスプレッド、ジャムおよび/またはハチミツもしくはクリーム、軟膏剤、ローション、口紅からなる群より選択される粘性塊の降伏値を測定すること、を特徴とする先行する請求項に記載の方法。
【請求項14】
さらにチョコレートのテンパリング度が算出されること、を特徴とする先行する請求項に記載の方法。
【請求項15】
前記降伏値の測定は、前記流動性物質の温度の測定と組み合わされること、を特徴とする先行する請求項のうちの少なくとも一項に記載の方法。
【請求項16】
流動性物質の降伏値を定期的に測定するための測定装置であって、流下時間後に測定素子上に付着している前記流動性物質の残留付着量を測定するための機能ユニットと連絡している規定表面を備える測定素子と、前記分散液による前記測定素子の定期的湿潤を保証するための手段とを備えること、を特徴とする測定装置。
【請求項17】
測定素子の定期的な湿潤を保証するために備わる前記手段は、前記測定素子を前記流動性物質の中もしくは外へ下降および上昇させるための昇降装置であること、を特徴とする請求項16に記載の測定装置。
【請求項18】
前記測定素子の定期的な湿潤を保証するために備わる手段は、前記流動性物質の部分量を分離するため、および前記部分量を前記測定素子へ方向転換させるための装置であること、を特徴とする請求項16に記載の測定装置。
【請求項19】
前記流動性物質の部分量を分離するための前記装置は機械的スライド、フラップおよび/またはバルブであること、を特徴とする先行する請求項に記載の測定装置。
【請求項20】
前記測定素子はロッド、プレート、漏斗、円錐体および/または球の形状を有すること、を特徴とする請求項16から19のうちの少なくとも一項に記載の測定装置。
【請求項21】
前記測定素子は、前記流動性物質によって湿潤される垂直面および/または傾斜面を有すること、を特徴とする請求項16から20のうちの少なくとも一項に記載の測定装置。
【請求項22】
前記測定素子上に滴下時間後に残留している前記流動性物質の残留付着量を測定するための機能ユニットはスケール、力変換器、振動センサ、光学センサ、電磁センサ、圧電センサおよび/または圧力変換器からなる群より選択される、重量および/または体積を測定するためのセンサから選択されること、を特徴とする請求項16から21のうちの少なくとも一項に記載の測定装置。
【請求項23】
さらに前記測定データを処理および/または保存するための電子的分析装置、好ましくはコンピュータが提供されること、を特徴とする請求項16から22のうちの少なくとも一項に記載の測定装置。
【請求項24】
製造プラントにおいて流動性物質を連続的に監視するための、請求項16から23のうちの少なくとも一項に記載の測定装置の使用。
【請求項25】
チョコレート塊のテンパリング度を測定するための、請求項1から15のうちの少なくとも一項に記載の方法の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−544949(P2009−544949A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521138(P2009−521138)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006257
【国際公開番号】WO2008/011996
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(597159765)フラウンホーファーゲゼルシャフト ツール フォルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシユング エー.フアー. (68)