説明

分散補償光ファイバ

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は分散補償光ファイバに係り、特に光ファイバを用いた光通信システムにおいて問題となる非線形効果の発生を抑制できるようにした分散補償光ファイバに関する。
【0002】
【従来の技術】近年光増幅技術の進歩に伴い、エルビウム添加光ファイバ増幅器をシステムの前段、後段あるいは中途に挿入して用いることによって、波長1.55μm帯において、伝送光の強度を増大させてよりいっそうの長距離伝送を行うことが検討されている。例えば、超長距離無再生中継、光加入者多分配網などの光増幅器を用いた光通信システムが実用化にむけて盛んに検討されている。これらの伝送線路としては、波長1.55μm帯において波長分散が実質的にゼロとなる特性を有する分散シフト光ファイバが好適である。しかしながら波長1.55μm帯における分散が小さいと、特に光ファイバ内の伝送光のエネルギー密度が大きい場合には非線形効果が発生し、伝送特性が劣化するなどの不都合が生じることがある。
【0003】このため非線形効果を抑制する方法として、通常の波長1.3μmにおいて波長分散がほとんどゼロであるシングルモード光ファイバ(以下1.3μmSMFと記す)と分散補償光ファイバとを組み合わせて波長1.55μm帯で伝送する方法が提案されている。
【0004】すなわち例えば1.3μmSMFの波長分散は、1.55μmにおいて概略+17ps/nm/km(正の分散値)程度なので、これを用いて波長1.55μm帯の光通信を行うと大きな波長分散を生じることになる。これに対して分散補償光ファイバとは、波長1.55μm帯で絶対値が比較的大きい負の波長分散を有し、比較的短い使用長さで例えば数km以上の通常の1.3μmSMFで生じた波長分散を打消すことができるものである。
【0005】そして分散補償光ファイバを、通常の1.3μmSMFを用いた光通信システムに挿入して用いれば、波長1.55μm帯で光通信を行っても光通信システム全体における波長分散量をほとんどゼロにすることが可能である。よって、波長1.55μm帯の光通信システムにおける非線形効果の発生を抑制することができる。
【0006】このため分散補償光ファイバとしては、低損失で、比較的長さが短い場合に波長1.55μm帯において比較的大きな負の波長分散をもつ必要がある。さらに1.3μmSMFの波長1.55μm帯における分散スロープは+0.07ps/nm2/km程度(正の値)なので、この分散スロープもあわせて補償するためには負の分散スロープを有する必要がある。このように分散スロープを補償することができると、波長多重伝送(WDM伝送)のように波長の異なる複数のパルス光を伝送する用途にも使用することができる。
【0007】分散補償光ファイバとしては、例えば単峰型の屈折率プロファイル(以下単峰型プロファイルと記す)を有する光ファイバや、W型の屈折率プロファイル(以下W型プロファイルと記す)を有する光ファイバなどいくつかの提案がなされている。
【0008】図3は単峰型プロファイルの一例を示したものであり、中心にコア11が位置し、その外周にこのコア11よりも低屈折率のクラッド12が設けられて構成されている。前記コア11は例えばGeO2(酸化ゲルマニウム)添加SiO2(石英)からなり、クラッド12は純SiO2からなるものである。Δf1はコア11とクラッド12との比屈折率差である。このような単峰型プロファイルを有する分散補償光ファイバは、Δf1が比較的大きく、負の波長分散を有し、1.3μmSMFの波長分散を補償することができるように設計されているが、分散スロープは負の値をもたず、1.3μmSMFの分散スロープを補償することはできない。しかし、製造法が比較的簡単で、単位損失あたりの波長分散量を大きくすることができるという特性を有している。
【0009】図4はW型プロファイルの一例を示したもので、中心に位置する中心コア部21aと、その外周に設けられ、この中心コア部21aよりも低屈折率の中間部21bと、この中間部21bの外周に設けられ、この中間部21bよりも高屈折率で、かつ前記中心コア部21aよりも低屈折率のクラッド22からなるものである。
【0010】前記中心コア部21aは例えばGeO2添加SiO2からなり、中間部21bはF(フッ素)添加SiO2からなり、クラッド22は純SiO2からなるものである。また2a2は中心コア部21aの外径(a2は外径の1/2を示す)、2b2は中間部21bの外径(b2は外径の1/2を示す)、Δd2はクラッド22と中間部21bとの比屈折率差、Δf2はクラッド22と中心コア部21aとの比屈折率差を示す。このW型プロファイルを有する光ファイバは負の波長分散を有し、1.3μmSMFに対して波長分散を補償できるとともに、分散スロープは負の値を有するので、分散スロープの補償ができるものである。そのため分散補償可能な波長領域が比較的広いものとして近年開発されたものである。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】ところで、一般に使用されている分散補償光ファイバにおいても、入射する伝送光のエネルギー密度があるしきい値をこえると自己位相変調、相互位相変調、4光子混合、誘導ラマン散乱、誘導ブルリアン散乱などの非線形効果が発生し、伝送劣化が生じることが知られている。特に超長距離無再生中継、光加入者多分配網などの光増幅器を用いた光通信システムにおいては、中継器に高出力光ブースターアンプなどが用いられているので、高エネルギー密度の伝送光がこれらの光通信システムに用いられている分散補償光ファイバに入射することがあり、伝送劣化の原因となる。
【0012】非線形効果の大きさは以下の式で表される。
2/Aeffここでn2は光ファイバの非線形屈折率、Aeffは光ファイバの有効コア断面積である。すなわち非線形効果を低減するためにはn2を小さくするか、Aeffを大きくすればよい。
【0013】しかしながらn2は材料固有の値であり、SiO2に対するGeO2やFなどのドーパントの添加量を減らすと小さくすることができるが、分散補償光ファイバとして好ましい波長分散、分散スロープなどの条件を満足すると同時にn2の値を小さくすることができるものを設計することは難しい。また、Aeffを大きくするのは有効な方法であるが、やはり分散補償光ファイバとして好ましい波長分散、分散スロープなどの条件を満足するとともにAeffを拡大したものを設計するのは従来困難とされている。例えば従来の分散補償光ファイバは、その波長分散、分散スロープなどの条件を満足するために、一般に伝送用の光ファイバと比べてAeffの値が小さく、10〜20μm2程度となっており非線形効果が生じやすくなっている。また、上述のW型プロファイルを有する分散補償光ファイバなどの開発においては、単位損失あたりの波長分散量、いわゆる性能指数(FOM)の値の向上と、分散スロープの補償に主眼がおかれており、非線形効果を低減するための検討が十分になされていないのが現状である。
【0014】このため、高エネルギー密度の光を低損失で効率よく伝送するために、非線形効果の発生を抑制することができる分散補償光ファイバが求められている。本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、分散補償光ファイバにおける非線形効果の発生を抑制して高エネルギー密度の光を有効に伝送できる分散補償光ファイバを提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するために本発明の分散補償光ファイバは、以下の(1)〜(3)の条件を満足することを特徴とする。
(1)波長1.55μm帯において、実質的にシングルモード伝搬となり、波長分散が−100ps/nm/km以下であり、かつ分散スロープが負の値をもち、かつ曲げ損失が1.0dB/m以下であり、かつ有効コア断面積が20〜50μm2である。
【0016】(2)中心コア部と、該中心コア部の外周に設けられた中心コア部よりも低屈折率の中間部と、該中間部の外周に設けられた該中間部よりも高屈折率で、かつ前記中心コア部よりも低屈折率のリング状のリングコア部と、該リングコア部の外周に設けられた該リングコア部よりも低屈折率で前記中間部よりも高屈折率のクラッドとからなるリング付プロファイルを有する。
(3)中心コア部の外径を2a、リングコア部の内径を2b、リングコア部の幅をw、クラッドと中間部との比屈折率差をΔd、クラッドとリングコア部との比屈折率差をΔeとしたとき、b/a≧2.5で、w/a≧0.5で、Δdが0.3〜0.7%で、Δeが0.3〜1.0%である。
【0017】
【発明の実施の形態】以下本発明を詳細に説明する。本発明において波長1.55μm帯とは波長1530nmから1580nmの波長領域を指すものである。波長1.55μm帯において、波長分散が−100ps/nm/kmよりも大きく、ゼロに近い場合には、分散補償光ファイバの使用長さが長くなるなどの不都合がある。また、波長1.55μm帯において分散スロープが負の値を有することによって1.3μmSMFの分散スロープを補償することができる。
【0018】そしてこれらの波長分散と分散スロープの条件を満足したうえで、補償対象の1.3μmSMFと分散補償光ファイバとを組み合わせたときの全体の波長1.55μm帯における波長分散の絶対値が、前記1.3μmSMFの波長分散と分散スロープとが前記分散補償光ファイバによって補償されることによって0.5ps/nm以下となるように、分散補償光ファイバの波長分散と分散スロープを調整して設計する。これらを組み合わせて得られる波長分散が0.5ps/nm以下であると伝送劣化が生じにくく、好ましい伝送特性が得られる。
【0019】つまり、光通信システムなどに用いられる1.3μmSMFの長さ、分散値、分散スロープなどの条件は用途などによって様々なので、補償対象の1.3μmSMFの分散値と分散スロープを補償できるように、分散補償光ファイバの分散値と分散スロープを前記1.3μmSMFの条件によって調整する必要がある。つまり分散補償光ファイバの使用長さと波長分散と波長スロープの値は、補償対象の1.3μmSMFの使用長さ、波長分散、波長スロープの値によって定められる。
【0020】例えば波長1.55μm帯における波長分散が+17ps/nm/kmで、分散スロープが+0.07ps/nm2/kmの1.3μmSMFを10km使用したとき、分散補償光ファイバの波長1.55μm帯における波長分散が−170ps/nm/km程度であれば、この分散補償光ファイバを1km用いることによって前記1.3μmSMFの波長分散を補償することができる。このとき1.3μmSMFの分散スロープを同時に補償するためには、この分散補償光ファイバの分散スロープは−0.7ps/nm2/km程度である必要がある。
【0021】また、有効断面積Aeffは、下記関係式で定義されるものである。
【0022】
【数1】


【0023】曲げ損失は波長1.55μmで曲げ直径(2R)が20mmの条件の値をいうものとする。
【0024】Aeffが20μm2未満では非線形効果の低減が十分ではなく、50μm2を越えるものは実際に製造することが難しい。また、曲げ損失が1.0dB/mをこえると、分散補償光ファイバのわずかな湾曲によっても損失が大きくなるため好ましくない。さらに、分散補償光ファイバは、通常1.3μmSMFを補償するものなので、波長1.55μm帯の実際の使用状態において常にシングルモード伝搬を行う必要がある。このためにカットオフ波長は、実際の使用状態において実質的にシングルモード伝搬を保証するものでなければならない。カットオフ波長はCCITTの2m法、もしくは実際の使用状態において測定された値をいうものとする。
【0025】このような特性値を満す分散補償光ファイバは、光通信システムなどにおいて補償対象となる1.3μmSMFと組み合わせたときに、その波長分散と分散スロープを十分に補償することができ、曲げ損失が小さく、非線形効果が発生しにくく、低損失の分散補償光ファイバとなる。
【0026】本発明の分散補償光ファイバが上述の特性を有するための第1の条件は、図1に示す屈折率プロファイルを有することである。図中符号31aは中心コア部であり、この中心コア部31aの外周に、この中心コア部31aよりも低屈折率の中間部31bが設けられ、さらにこの中間部31bの外周に、この中間部31bよりも高屈折率で、かつ前記中心コア部31aよりも低屈折率のリングコア部31cが設けられ、さらにこのリングコア部31cの外周に、このリングコア部31cよりも低屈折率で、かつ前記中間部31bよりも高屈折率のクラッド32が設けられている。以下このような屈折率プロファイルをリング付きプロファイルとよぶ。
【0027】前記中心コア部31aとリングコア部31cは、例えばGeO2添加SiO2からなり、GeO2の添加量によって屈折率が調整されている。中間部31bは、例えばF添加SiO2からなり、クラッド32は純SiO2からなるものである。また、2aは中心コア部31aの外径(aは外径の1/2を示す)、2bはリングコア部31cの内径(bは内径の1/2を示す)、wはリングコア部31cの幅、Δdはクラッド32と中間部31bとの比屈折率差、Δeはクラッド32とリングコア部31cとの比屈折率差、Δfはクラッド32と中心コア部31aとの比屈折率差を示す。
【0028】第2の条件は、図1に示したリング付きプロファイルにおいて、b/a≧2.5で、かつw/a≧0.5であることである。b/aが2.5未満でw/aが0.5未満であると、リング付プロファイルとしたことによる効果が得られず、Aeffを大きくすることができない。リング付プロファイルであって、b/a≧2.5かつw/a≧0.5とすることで、Aeffが大きく、しかも曲げ損失が小さいという領域が初めて形成される。
【0029】また反対に、これらの比をあまり大きくしても、リング付プロファイルとしたことによる効果が得られず、単峰型プロファイルとした場合に近い特性を示すようになり、Aeffを大きくすることができない。このため、実用上、b/aの上限値は約5とされ、w/aの上限値は約2とされる。
【0030】b/aとw/aを上述の範囲に定めておき、さらにΔdとΔeを適宜定めて所望の特性を有する分散補償光ファイバを設計する。このような手順により、Aeffが大きく、曲げ損失が小さく、かつ上述の波長分散、分散スロープの条件を満す本発明の分散補償光ファイバを得ることができる。このときΔfは通常2.5%程度とされる。また、実験的にΔdの範囲は0.3〜0.7%であり、Δeの値は0.3〜1.0%であることがわかっている。
【0031】しかしながらΔdおよびΔeの好適な値は、先に定めるb/aおよびw/aの値によって大きく変化し、上述の実験的に求めたΔdとΔeの範囲内であっても本発明の分散補償光ファイバの特性を有するものが得られるとは限らない。このような観点から、本発明では分散補償光ファイバの構造パラメータの値のみによって発明を特定することが困難であり、特性値によってその特定を行うようにしたものである。そして、かかる特性値は、従来知られている分散補償光ファイバでは取り得ないものであることは言うまでもない。
【0032】本発明の分散補償光ファイバは、通常のVAD法とOVD法との組み合わせや、MCVD法などによって製造できる。リング付プロファイルでは、リングコア部31cの存在により伝送光の光パワーの電界強度分布がクラッド32側に長く尾を引く形となるため、光ファイバ母材の製造の際に、クラッドとなるスートのかなりの部分を中心のコアとなるスートと同時に一括して合成する方法をとることが望ましい。
【0033】このように本発明の分散補償光ファイバは、図1に示すリング付きプリファイルにおいて、b/a、w/a、Δd、Δeの関係からa、b、w、Δd、Δeという5つの構造パラメータを適切に定めることによって以下のような特性を有するものである。すなわち、波長1.55μm帯において、実質的にシングルモード伝搬となり、波長分散が−100ps/nm/km以下であり、かつ分散スロープが負の値をもち、かつ曲げ損失が1.0dB/m以下であり、かつ有効コア断面積(Aeff)が20〜50μm2となるものである。この結果、波長1.55μm帯において低損失で、1.3μmSMFの波長分散と分散スロープを補償することができ、かつ曲げ損失が小さく、非線形効果を抑制することができる。
【0034】
【実施例】
(実施例)図1に示すリング付きプロファイルの屈折率プロファイルを有する4種類(No1〜4)の分散補償光ファイバを作製し、その特性を評価した。作製したNo1〜4の分散補償光ファイバのb/a、w/a、Δd、Δeと、光学特性を表1に示す。表1に示すカットオフ波長(λC)はCITTの2m法によって測定した値である。またMFDはモードフィールド径を示す。
【0035】
【表1】


【0036】表1より、本発明に係る実施例No1〜4の分散補償光ファイバは、全てFOMは200ps/nm/dB前後の値が得られ、Aeffを20μm2以上に拡大することができることがわかる。また損失はいずれも0.7dB/km以下で、比較的小さいものである。また曲げ損失はいずれも1.0dB/m以下となった。
【0037】さらに、図2はNo1の分散補償光ファイバによって1.3μmSMFを補償した際の、波長1500〜1600μmの範囲における波長分散を示したものである。図中曲線Aは1.3μmSMF11.77kmの波長分散を示し、曲線BはNo1の分散補償光ファイバ1kmの波長分散を示し、曲線Cは1.3μmSMF11.77kmをNo1の分散補償光ファイバ1kmで補償したときの波長分散を示したものである。図2より、No1の分散補償光ファイバは1.3μmSMFを広範囲の波長域で補償して波長分散をほとんどゼロにすることができることがわかる。
【0038】No2〜4の分散補償光ファイバにおいても同様にして1.3μmSMFを補償したときの波長分散を測定した。No2の分散補償光ファイバにおいては、1.3μmSMF6.88kmをNo2の分散補償光ファイバ1kmで補償したときの波長分散を測定した。No3の分散補償光ファイバにおいては、1.3μmSMF7.66kmをNo3の分散補償光ファイバ1kmで補償したときの波長分散を測定した。No4の分散補償光ファイバにおいては、1.3μmSMF7.60kmをNo4の分散補償光ファイバ1kmで補償したときの波長分散を測定した。いずれも図2に示したグラフと同等の結果が得られた。
【0039】したがって、本発明に係る実施例No1〜4の分散補償光ファイバは、低損失で、曲げ損失が小さく、1.3μmSMFを比較的広範囲の波長域において補償して波長分散をほとんどゼロにすることができると同時に、Aeffを拡大することができるので非線形効果を抑制することができることが確認できた。
【0040】(比較例1)図3に示す単峰型プロファイルを有する従来の分散補償光ファイバを作製した。このときΔf1は2.5%とした。得られた分散補償光ファイバの光学特性を表2に示す。
【0041】
【表2】


【0042】表2より、FOMは200ps/nm/dBをこえる値が得られたが、Aeffは19μm2と小さいため、非線形効果を抑制することは難しいことがわかる。
【0043】(比較例2)図4に示すW型の屈折率プロファイルを有する分散補償光ファイバを作製した。このとき2a2は2.5、2b2は6.3、Δd2は0.35、Δf2は2.5とした。光学特性を表3に示す。
【0044】
【表3】


【0045】表3より、FOMは200ps/nm/dB前後の値が得られた。また、実施例と同様にして1.3μmSMF7.06kmをこの分散補償光ファイバ1kmによって補償した際の、波長1500〜1600μmの範囲における波長分散を測定したところ、波長分散はほとんどゼロで、図2に示したグラフと同等の結果が得られた。しかし、Aeffは15μm2と小さいため、非線形効果を抑制することは難しいことがわかる。
【0046】
【発明の効果】本発明の分散補償光ファイバにおいては、屈折率プロファイルと、構造パラメータを適切に定めて設計することによって、波長1.55μm帯において、実質的にシングルモード伝搬となり、波長分散が−100ps/nm/km以下であり、かつ分散スロープが負の値をもち、かつ曲げ損失が1.0dB/m以下であり、かつ有効コア断面積(Aeff)が20〜50μm2となるものである。
【0047】この結果、波長1.55μm帯において、低損失で、1.3μmSMFの波長分散と分散スロープを補償することができ、かつ曲げ損失が小さいものである。そして、同時に有効コア断面積を拡大することができることから非線形効果を抑制することができる。したがって、高エネルギー密度の光が入射しても非線形効果を抑制することができるので、超長距離無再生中継、光加入者多分配網などの光増幅器を用いた光通信システムに使用しても伝送劣化を抑制することができ、有効に光を伝送することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の分散補償光ファイバの屈折率プロファイルであるリング付プロファイルの一例を示す図である。
【図2】 実施例No1の分散補償光ファイバを用いて1.3μmSMFを補償したときの波長分散を示すグラフである。
【図3】 従来の分散補償光ファイバに用いられる単峰型の屈折率プロファイルを示す図である。
【図4】 従来の分散補償光ファイバに用いられるW型の屈折率プロファイルを示す図である。
【符号の説明】
31a…中心コア部、31b…中間部、31c…リングコア部、32…クラッド、2a…中心コア部の外径(a…外径の1/2)、2b…リングコア部の内径(b…内径の1/2)、w…リングコア部の幅、Δd…クラッドと中間部との比屈折率差、Δe…クラッドとリングコア部との比屈折率差、Δf…クラッドと中心コア部との比屈折率差

【特許請求の範囲】
【請求項1】 以下の(1)〜(3)の条件を満足することを特徴とする分散補償光ファイバ。
(1)波長1.55μm帯において、実質的にシングルモード伝搬となり、波長分散が−100ps/nm/km以下であり、かつ分散スロープが負の値をもち、かつ曲げ損失が1.0dB/m以下であり、かつ有効コア断面積が20〜50μm2である。
(2)中心コア部と、該中心コア部の外周に設けられた中心コア部よりも低屈折率の中間部と、該中間部の外周に設けられた該中間部よりも高屈折率で、かつ前記中心コア部よりも低屈折率のリング状のリングコア部と、該リングコア部の外周に設けられた該リングコア部よりも低屈折率で前記中間部よりも高屈折率のクラッドとからなるリング付プロファイルを有する。
(3)中心コア部の外径を2a、リングコア部の内径を2b、リングコア部の幅をw、クラッドと中間部との比屈折率差をΔd、クラッドとリングコア部との比屈折率差をΔeとしたとき、b/a≧2.5で、w/a≧0.5で、Δdが0.3〜0.7%で、Δeが0.3〜1.0%である。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【特許番号】特許第3337943号(P3337943)
【登録日】平成14年8月9日(2002.8.9)
【発行日】平成14年10月28日(2002.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−130143
【出願日】平成9年5月20日(1997.5.20)
【公開番号】特開平10−319266
【公開日】平成10年12月4日(1998.12.4)
【審査請求日】平成12年8月7日(2000.8.7)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【参考文献】
【文献】特開 平9−127354(JP,A)
【文献】特開 平6−11620(JP,A)