説明

分析システムにおける機器管理システム

【課題】 記入忘れや記入漏れが少なく、かつ、分析システムの管理を容易にする機器管理システムを提供する。
【解決手段】 検出器ないし測定器を有し測定値を出力する測定装置と、該測定装置からの測定値および所定の演算プログラムに基づいて分析値を算出する情報処理装置とを備えた分析システムにおいて、標準試料を用いて測定・算出した分析値を時系列的に表示する表30および/または図31を、前記情報処理装置に接続した表示器に表示させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は分析システムにおける機器の管理に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、分析システムは、検出器ないし測定器を有し測定値を出力する測定装置と、該測定装置からの測定値および所定の演算プログラムに基づいて分析値を算出する情報処理装置とを備えている。かかる分析システムの測定装置は、一般の産業機器と異なりデリケートで、かつ、劣化によって分析精度の低下を招きやすい。したがって、測定装置の性能を維持し、使用できる状態にするために十分な機器管理が必要となる。そのため、ノートやファイルからなる記録簿を用いて測定装置についての点検、消耗品および予備品等の記録を行っている。
【0003】一方、近年は分析の品質管理が国際的に問われる時代となっており、前記記録簿や管理簿による管理がルール付けられている。そのため、記入漏れや記入忘れがなく記録として残っていることが必須に近いものとなってきている。
【0004】以下に、前記測定装置の機器管理の手順を説明する。分析システムを使用する場合には、まず、始業時に測定装置の点検を行う。測定装置の点検は、予め定められた項目について行い、基準値を外れた項目については、測定装置の各機器の調整、部品の取り替えまたは機器の修理などで基準値内にする。この点検の結果は点検記録簿に書き込む。
【0005】次に、精度管理を行なう。精度管理は、予め定められた標準試料を用いて所定の分析を行い、得られた分析値が許容範囲内か、また、複数回の分析を行って得られた分析値のバラツキが許容範囲内かを見る。この標準試料からの分析結果は精度管理簿に記録する。
【0006】前記分析結果が許容範囲内であれば、使用者は使用記録簿に氏名および使用日時を記録する。また、消耗品や予備品を取り替えた場合、その記録を消耗品使用管理簿や予備品使用管理簿に記録する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記記録簿や管理簿は複数のノートやファイルからなるため、取り扱いが煩雑であり、記入漏れや記入忘れが多発している。また、記録簿や管理簿を紛失する場合もある。
【0008】したがって、本発明の目的は、かかる問題を解決する分析システムにおける機器管理システムを提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、本発明は、検出器ないし測定器を有し測定値を出力する測定装置と、該測定装置からの測定値および所定の演算プログラムに基づいて分析値を算出する情報処理装置とを備えた分析システムにおいて、標準試料を用いて測定・算出した分析値および/または該分析値に基づいて算出した測定装置の測定精度を示す値を時系列的に表示する表および/または図を、前記情報処理装置に接続した表示器に表示させる。また、前記分析装置についての点検結果を時系列的に表示する表を、前記情報処理装置に接続した表示器に表示させる。
【0010】なお、本発明において、「検出器ないし測定器」とは、入力された情報を電気信号に変換するのもをいい、検出器と呼ばれているか測定器と呼ばれているかを問題にしない。
【0011】本発明における「情報処理装置」とは、たとえばパーソナルコンピュータで構成される。該情報処理装置は、測定装置からの測定値と所定の演算プログラムに基づいて分析値を算出すると共に、分析システムの機器(測定装置)を管理するための前記表および/または図を表示器に表示させる。したがって、本発明は分析システムを管理するための装置を別途設けるものではない。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。図1は分析システムを示す。図1R>1において、分析システムは測定装置10と、パーソナルコンピュータからなる情報処理装置(パソコン)11とを有している。前記測定装置10は、たとえば金属分析を行うもので、図示しない検出器を有しており、電気炉において金属が燃焼して発生した燃焼ガスを測定セルに導入し、赤外線検出器で検出した測定値をパソコン11に出力するものである。
【0013】前記パソコン11には、CPU12および記憶装置13(メモリ)が内蔵されていると共に、記録媒体読取装置14、入力操作部(キーボード)15、表示器16、プリンタ17および外部記憶装置18が図示しないインターフェイスを介して接続されている。
【0014】前記記録媒体読取装置14は、たとえばフロッピィディスクドライブやCD−ROMドライブからなる。記録媒体読取装置14は、フロッピィディスクやCD−ROMなどの記録媒体19に記録された機器管理プログラム、後述する各種の記録ファイル、ならびに、分析値を算出するための演算プログラムなどを読み取り、前記CPU12に出力する。前記CPU12は、記録媒体読取装置14から出力されたプログラムや記録ファイルなどを外部記憶装置18に格納する。
【0015】前記外部記憶装置18は、たとえばハードディスクからなる。この、外部記憶装置18には、前記演算プログラムや機器管理プログラムの他に記録ファイルとして、点検結果記録ファイル、精度管理記録ファイル、使用記録ファイル、消耗品使用管理記録ファイルおよび備品使用管理記録ファイルなどの記録ファイルが格納されている。
【0016】CPU12は、機器管理プログラムを外部記憶装置18からメモリ13にロードして起動した後、前記各記録ファイルを外部記憶装置18からメモリ13に逐次ロードして、後述する各記録画面を表示器16に表示させる。また、CPU12は前記外部記憶装置18からメモリ13に転送して起動した演算プログラムと、前記測定装置10からの測定値などに基づいて分析値を算出する。
【0017】前記プリンタ17は前記各記録画面等に対応した内容を必要に応じて印字できるようにCPU12によって制御されている。
【0018】次に、表示器の表示内容について説明する。図2は点検記録画面を示す。図2において、点検記録画面には点検結果を表示する表2が表示されている。点検結果を表示する表2は、点検項目20と、各点検項目20について許容される基準値の範囲21とが表示されていると共に、点検者の氏名、点検年月日および点検の結果得た値を記入する記入欄22を備えている。当該記入欄22は、点検者がキーボードを用いて点検者の氏名、年月日および点検値を記入できるようになっており、点検年月日ごとに古いものから新しいものの順に左から右に表示される。すなわち、時系列的に表示される。なお、時系列的に表示するのは、最も新しいデータが表示されている頁を表示し、古いデータについては、画面を順次前頁に切り換えることにより見ることができるようになっている。
【0019】図3は精度管理記録画面を示す。図3において、精度管理記録画面は標準試料を用いて測定・算出した分析値を表示する精度管理記録表30および管理図31とを備えている。精度の測定は互いに濃度の異なる2種類の標準試料AおよびBを用いて所定の分析を各々複数回行い、標準試料AについてのAV値(分析値)およびSD値(分析値のバラツキ度合(標準偏差))、標準試料BについてのAV値およびSD値(以下、これらの測定精度を示す値も含めて「分析値」という。)を求めることによって行われる。なお、標準試料とは、予め濃度などが既知の試料をいう。
【0020】精度管理記録表30には、標準試料AおよびBについてのそれぞれのAV値およびSD値の管理範囲(許容範囲)32が表示されていると共に、測定日時および分析値の表示欄33および測定者の氏名を表示する記入欄34が表示されている。当該記入欄34は、測定者がキーボード15を用いて測定者の氏名を記入(入力)できるようになっている。前記測定日時および分析値の表示欄33には、標準試料AおよびBについて分析を行うごとに自動的に測定日時および各分析値(AV値,SD値)が表示される。当該各分析値は古いものから新しいものの順に、左から右に時系列的に表示される。
【0021】前記管理図31は、各分析値を表す合計4つのグラフによって構成されている。各管理図には、標準試料について分析を行うごとに自動的にグラフの描画が行われる。当該グラフは、日時ごとに古いものから新しいものの順に、左から右に各々の値が時系列的に折れ線グラフとして表示される。
【0022】したがって、標準試料について所定の分析を行った場合、パソコンによって算出された各分析値(AV値、SD値)は、精度管理記録表30の表示欄33に自動的に表示されると共に、管理図31に当該分析値に基づいて自動的にプロットされる。
【0023】図4は使用記録画面を示す。図4において、使用記録画面には使用記録を表示する表4が表示されている。使用記録を表示する表4は、使用者の氏名、使用の年月日および時刻を記入する記入欄40を備えている。当該記入欄40は、使用者がキーボードを用いて年月日および使用者の氏名を記入(入力)できるようになっており、使用年月日ごとに古いものから新しいものの順に、左から右に時系列的に表示される。
【0024】図5は消耗品使用管理記録画面を示す。図5R>5において、消耗品使用管理記録画面には、消耗品の在庫数を表示する表5が表示されている。消耗品の在庫数を表示する表5には、消耗品の部品名50、当該消耗品についての常備数51および所在52が表示されていると共に、記録者の氏名、消耗品の使用や追加を行った年月日、在庫数を記入する記入欄53を備えている。該記入欄53は、記録者が消耗品を使用・追加するごとに、キーボード15を用いて記録者の氏名、年月日および在庫数を記入(入力)できるようになっており、年月日ごとに古いものから新しいものの順に、左から右に時系列的に表示される。
【0025】図6は備品使用管理記録画面を示す。図6において、備品使用管理記録画面には予備品の在庫数を表示する表6が表示されている。予備品の在庫数を表示する表6は、予備品の部品名60、当該予備品についての常備数61および所在62が予め表示されていると共に、記録者の氏名、記録年月日および在庫数を記入する記入欄63を備えている。記入欄63は、記録者が予備品の使用や追加を行うごとに、管理者の氏名、年月日および在庫数を記入(入力)できるようになっており、年月日ごとに古いものから新しいものの順に、左から右に時系列的に表示される。
【0026】つぎに、作業の流れを図7にしたがって説明する。電源が投入されると、ステップS1において、図8のように、点検記録画面80、精度記録画面81、使用記録画面82、消耗品使用管理記録画面83および備品使用管理記録画面84の各画面の一部が一画面に表示される。
【0027】つぎのステップS2では、オペレータは消耗品や備品の取り替え時期かどうかをオペレータ自身が判断して、取り替え時期であればステップS3に進み、取り替え時期ではない場合はステップS5に進む。ステップS3で消耗品を取り替えた場合は、図5の消耗品使用管理記録画面を表示させ、氏名、消耗品の使用・交換を行った年月日、在庫数を記入欄53に記入し、ステップS4に進む。ステップS4で備品を取り替えた場合は、図6の備品使用管理記録画面を表示させ、氏名、記録年月日および在庫数を記入欄63に記入し、ステップS5に進む。
【0028】ステップS5では、図2の点検記録画面を表示させる。オペレータは各点検項目20について点検を行い、当該点検を行った値が許容される基準値の範囲21内であれば氏名、点検年月日および点検の結果得た値を記入し、ステップS6に進む。なお、当該点検を行った値が許容される基準値の範囲21を外れる場合には、測定装置の各機器の調整、取替、修理等を行って基準値の範囲に入るようにする。
【0029】ステップS6では、図3の精度管理記録画面を表示させ、オペレータは記入欄34に氏名を記入した後、標準試料AおよびBを用いて所定の分析を行うことで測定精度の測定を行う。この分析の結果、後述する精度管理記録が自動的に行われ、表示欄33に各分析値が表示されると共に、管理図31にグラフが描画される。オペレータは表示欄33および管理図31を基に当該分析値が管理範囲32内であればステップS7に進み、管理範囲32を外れる場合には再度ステップS5の装置の点検からやり直す。
【0030】ステップS7では本来の分析を行う。分析終了後、オペレータは図4の使用記録画面を表示させ、記入欄40に氏名、使用の年月日および時刻を記入する。分析終了後、電源を落とさずに分析を再度行う場合には、再びステップS1に戻る。
【0031】つぎに、前述の精度管理記録におけるCPUの動作について説明する。図9のステップS61で測定値が測定装置10からパソコン11のCPU12に入力されると、ステップS62に進んで複数の分析値が算出され、該分析値に基づいてAV値やSD値が算出される。ステップS63では、前記AV値やSD値をメモリ13に記憶させ、更に、これらの値を表示器16の表示欄33に表示させると共に、AV値やSD値を管理図31上にプロットして表示させる。ステップS64では、メモリ13の記憶欄をインクリメントすることによって、次の分析値を表の次の欄に記録できるようにする。つづいて、ステップS65に進み、前述の表示したAV値等に対応した表示内容(メモリ13の記憶内容)を外部記憶装置18にストアする。
【0032】なお、前記各画面の表における記入欄の値は、別の画面が表示される前に自動的に前記外部記憶装置18の各記録ファイルに記録され、機器管理の履歴として保存される。また、AV値やSD値が管理範囲を越えた場合は、たとえば赤色等で色を変えて表示しても良い。
【0033】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、分析値を算出する情報処理装置に接続した表示器に、分析値、点検結果、使用記録、消耗品の在庫数または予備品の在庫数を時系列的に表示する表および/または図を表示させるようにしたので、従来と異なり複数のノートやファイルを取り出す必要がないから、記入忘れや記入漏れが少なくなる。また、ノートやファイルからなる機器管理のための記録簿や管理簿を必要としないので、経済性に優れているだけでなく、記録簿や管理簿を紛失したりするおそれがない。特に、本発明は、分析システムのCPUや表示器を用いて、当該分析システムの機器の管理を行えるので、機器管理のための装置を別途必要としないから、経済性に優れているだけでなく、表示器の表示によってオペレータにメンテナンス等を促すことができると共に、メンテナンス等に伴うオペレータの負担が軽くなり、機器の管理が容易になって、機器の管理が確実に実行されるようになる。
【0034】また、請求項2の発明では、標準試料についての分析値等が自動的に記憶されるので、分析値等を記入する手間も省ける。また、外部記憶装置に格納された記録ファイルに機器管理の履歴(メンテナンス・ログ)を書き込むことによって、前記表および/または図を時系列的に表示させるので、サービスマンはノートやファイルを探さなくても、適切なメンテナンスを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる分析装置を示す概略構成図である。
【図2】点検記録画面の内容を示す図である。
【図3】精度管理記録画面の内容を示す図である。
【図4】使用記録画面の内容を示す図である。
【図5】消耗品使用管理記録画面の内容を示す図である。
【図6】備品使用管理記録画面の内容を示す図である。
【図7】機器管理の手順を示す流れ図である。
【図8】初期画面を示す図である。
【図9】精度管理記録モードの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10:測定装置
11:情報処理装置(パソコン)
12:CPU
13:記憶装置(メモリ)
16:表示器
2:点検結果を時系列的に表示する表
20:点検項目
21:基準値の範囲
22:記入欄
30:分析値を時系列的に表示する表
31:分析値を時系列的に表示する図
4:使用記録を時系列的に表示する表
40:記入欄
5:消耗品の在庫数を時系列的に表示する表
50:消耗品の部品名
51:消耗品についての常備数
52:記入欄
6:予備品の在庫数を時系列的に表示する表
60:予備品の部品名
62:予備品についての常備数
63:記入欄

【特許請求の範囲】
【請求項1】 検出器ないし測定器を有し測定値を出力する測定装置と、該測定装置からの測定値および所定の演算プログラムに基づいて分析値を算出する情報処理装置とを備えた分析システムにおいて、標準試料を用いて測定・算出した分析値および/または該分析値に基づいて算出した測定装置の測定精度を示す値を時系列的に表示する表および/または図を、前記情報処理装置に接続した表示器に表示させるようにした分析システムにおける機器管理システム。
【請求項2】 請求項1において、前記情報処理装置のCPUは、標準試料について算出した分析値および/または前記測定精度を示す値を記憶装置に記憶させて、前記表示器に時系列的に表示させる分析システムにおける機器管理システム。
【請求項3】 請求項1において、前記分析装置についての使用記録を時系列的に表示する表を、前記表示器に表示させるようにすると共に、該表は使用の月日および時刻を記入する記入欄を備えている分析システムにおける機器管理システム。
【請求項4】 検出器ないし測定器を有し測定値を出力する測定装置と、該測定装置からの測定値および所定の演算プログラムに基づいて分析値を算出する情報処理装置とを備えた分析システムにおいて、前記分析装置についての点検結果を時系列的に表示する表を前記情報処理装置に接続した表示器に表示させるようにした分析システムにおける機器管理システム。
【請求項5】 請求項4において、前記点検結果を時系列的に表示する表には、点検項目と、各点検項目について許容される基準値の範囲とが表示されていると共に、点検の結果得た値を記入する記入欄を備えている分析システムにおける機器管理システム。
【請求項6】 請求項5において、前記分析システムは、消耗品の在庫数を時系列的に表示する表および予備品の在庫数を時系列的に表示する表を前記表示器に表示させ、前記消耗品の在庫数を時系列的に表示する表は、消耗品の部品名と当該消耗品についての常備数とが表示されていると共に、在庫数を記入する記入欄を備えており、前記予備品の在庫数を時系列的に表示する表は、予備品の部品名と当該予備品についての常備数とが表示されていると共に、在庫数を記入する記入欄を備えている分析システムにおける機器管理システム。
【請求項7】 コンピュータによって読み取り可能な記録媒体であって、請求項1〜6のいずれか1項に該当する表示のプログラムを記録した記録媒体。

【図2】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開平11−94600
【公開日】平成11年(1999)4月9日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−273941
【出願日】平成9年(1997)9月18日
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)