説明

分析パラメータ出力方法、分析パラメータ出力装置および分析パラメータ出力プログラム

【課題】画像データを分析するためのパラメータを出力する。
【解決手段】分析パラメータ出力装置1は、画像データに含まれるオブジェクトの位置を記憶したオブジェクト位置データ12aと、基準画像のオブジェクトの密集度と、前記基準画像のパラメータと、を対応づけた基準パラメータデータ14aと、オブジェクト位置データ12aを読み出して、オブジェクトの密集度を算出する密集度算出部23と、基準パラメータデータ14aを読み出して、基準パラメータデータ14aに基づいて、画像データのオブジェクトの密集度に対応するパラメータを算出するパラメータ算出部24と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データを分析するためのパラメータを出力する分析パラメータ出力方法、分析パラメータ出力装置および分析パラメータ出力プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の情報通信の発達により、映像データなどのコンテンツが爆発的に増えている。これに伴い、ユーザがコンテンツを利用する場面も多種多様化している。
【0003】
そこで、チームスポーツの一つであるサッカーの映像から、戦略分析をする方法が提案されている(例えば非特許文献1参照。)。ここで、サッカーの戦略分析の一つとして、パスの成功または失敗の分析が考えられる。サッカーのボールのパスコースは、ボール保持者から味方チームの選手へと緩やかな曲線で表されることが知られている。そこで、非特許文献1に記載の方法では、このような曲線が存在する領域をパスが成功可能な領域として抽出する。
【0004】
ここで、サッカーのパスには、味方である攻撃の選手へのパスと、選手が存在しない領域へのパスがある。従って、パス可能領域は、ボール保持者と味方チームの選手とを結ぶ領域、あるいはボール保持者と選手が存在領域とを結ぶ領域であって、さらに相手チームの選手からの距離が遠い位置を通過する曲線が存在する領域である。非特許文献1においては、このようなパス可能領域をアクティブネットモデルにより、以下の方法で抽出している。
【0005】
まず、選手の位置に基づいて、サッカーフィールドの各場所におけるパスの潜在的な可能性を表現したエネルギー画像を生成する。次に、アクティブネットのエネルギーが最小となるように変形を繰り返すことにより、アクティブネットを用いて画像内のパス可能領域を抽出する。このとき、アクティブネットのエネルギーは、内部歪みエネルギーと、適合性エネルギーの和と定義される。内部歪みエネルギーとは、アクティブネットを収縮させ形状を滑らかに保とうとする力に対応する、アクティブネット自身の内部歪みのエネルギーである。適合性エネルギーとは、アクティブネットを画像内の特徴的な領域に引きつける力に対応する、アクティブネットと画像の適合性のエネルギーである。最後に、アクティブネットの格子点の密度に着目し、パス可能領域を通過するパスが成功する可能性を推定する。
【0006】
非特許文献1において、パス可能領域を分析するためのエネルギー画像の生成方法を説明する。エネルギー画像は、サッカーフィールドにおける選手の位置に基づいて生成される。エネルギー画像において、ボールを保持している選手からパスの対象となる攻撃の選手がいる領域と、選手が存在しない領域とが、低い階調値で表される。また相手方チームの守備の選手が存在する領域が、高い階調値で表される。パスが到達するまでの間、選手は移動することができるので、選手の位置に対して、階調値によって与えられるエネルギーを円形の形状とする。
【0007】
アクティブネットの格子点をボール保持者を中心とした同心円状に配置した後、エネルギー画像と適合させる。エネルギー画像と適合したアクティブネットにおいて、パス可能領域はボール保持者から放射状に存在する曲線によって表現される。
【0008】
ここで、サッカーフィールドを等分した小領域を設定し、各小領域を通過する曲線の本数から、パスが成功する可能性は推定される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】高橋 翔、 今 宏史、 長谷山 美紀、”アクティブネットを用いたサッカー映像におけるパス可能領域の推定”、電子情報通信学会論文誌、Vol.J92−D、No.4、pp.501−510、2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、アクティブネットの格子点の数や、小領域に分割するための分割数などの、画像分析に必要なパラメータは、状況に応じて変わるので、分析対象の場面ごとに設定することが好ましい。
【0011】
例えば、サンプル画像についてパラメータを手動で設定し、そのデータを、分析対象の画像にも適用する方法が考えられる。しかしながら、個々の場面が異なるため、サンプル画像について設定されたパラメータを、そのまま分析対象の画像に適用することはできない場合がある。
【0012】
また、これらのパラメータは、トッププロやアマチュアなど、サッカー選手の属性や競技レベルによっても異なる。従って、サンプル画像について設定されたパラメータをそのまま分析対象の画像に適用する場合でも、選手の属性や競技レベルごとに手動でパラメータを設定しなければなあらない問題がある。
【0013】
従って本発明の目的は、画像データを精度良く分析するためのパラメータを出力する分析パラメータ出力方法、分析パラメータ出力装置および分析パラメータ出力プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の第1の特徴は、画像データを分析するためのパラメータを出力する分析パラメータ出力方法に関する。即ち本発明の第1の特徴に係る分析パラメータ出力方法は、記憶装置から、画像データに含まれるオブジェクトの位置を記憶したオブジェクト位置データを読み出して、オブジェクトの密集度を算出するステップと、記憶装置から、基準画像のオブジェクトの密集度とパラメータと、を対応づけた基準パラメータデータを読み出して、画像データのオブジェクトの密集度と基準画像のオブジェクトの密集度の比率と、基準画像のパラメータとから、画像データのパラメータを出力するステップと、を備える。
【0015】
ここで画像データは、アクティブネットを用いて分析され、パラメータは、アクティブネットの格子点の数であっても良い。また画像データは、小領域に分割されて分析され、パラメータは、画像データの分割数であっても良い。
【0016】
さらに基準パラメータデータは、画像データの属性ごとに設けられ、パラメータ算出ステップは、属性に対応した基準パラメータデータに基づいて、画像データのパラメータを出力しても良い。
【0017】
本発明の第2の特徴は、画像データを分析するためのパラメータを出力する分析パラメータ出力装置に関する。即ち本発明の第2の特徴に係る分析パラメータ出力装置は、画像データに含まれるオブジェクトの位置を記憶したオブジェクト位置データを記憶するとともに、基準画像のオブジェクトの密集度と、基準画像のパラメータと、を対応づけた基準パラメータデータを記憶する記憶装置と、記憶装置から画像データのオブジェクト位置データを読み出して、オブジェクトの密集度を算出する密集度算出部と、記憶装置から基準パラメータデータを読み出して、基準パラメータデータに基づいて、画像データのオブジェクトの密集度に対応するパラメータを算出するパラメータ算出部と、を備える。
【0018】
ここで画像データは、アクティブネットを用いて分析され、パラメータは、アクティブネットの格子点の数であっても良い。また画像データは、小領域に分割されて分析され、パラメータは、画像データの分割数であっても良い。
【0019】
さらに基準パラメータデータは、画像データの属性ごとに設けられ、パラメータ算出部は、属性に対応した基準パラメータデータに基づいて、画像データのパラメータを出力しても良い。
【0020】
本発明の第3の特徴は、コンピュータに、本発明の第1の特徴に記載のステップを実行させるための分析パラメータ出力プログラムに関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、画像データを精度良く分析するためのパラメータを出力する分析パラメータ出力方法、分析パラメータ出力装置および分析パラメータ出力プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る分析パラメータ出力装置の機能ブロックを説明する図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る分析パラメータ出力装置のハードウェア構成を説明する図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る分析パラメータ出力装置の分析対象画像と、分析対象画像から検出した選手の位置を示した図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る分析パラメータ出力装置のオブジェクト位置データのデータ構造とデータの一例を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る分析パラメータ出力装置の基準画像パラメータデータのデータ構造とデータの一例を説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る分析パラメータ出力装置の処理を説明するフローチャートである。
【図7】分析画像生成装置が出力する画像の一例を説明する図である。
【図8】本発明の第1の変形例に係る分析パラメータ出力装置の基準画像パラメータデータのデータ構造とデータの一例を説明する図である。
【図9】本発明の第1の変形例に係る分析パラメータ出力装置の処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。
【0024】
本発明の実施の形態に係る分析パラメータ出力装置1は、図1に示すように、画像データを分析するためのパラメータを、分析画像生成装置2に出力する。分析画像生成装置2は、上述した非特許文献1に記載の方法で、分析対象の画像データの意味内容を分析する。特に本発明の実施の形態に係る分析画像生成装置2は、サッカーのゲーム中の画像データについて、パス可能領域を示した画像を生成する。分析パラメータ出力装置1は、分析画像生成装置2から映像データを取得し、分析に必要なパラメータを算出して、分析画像生成装置2に出力する。
【0025】
ここで、分析パラメータ出力装置1と分析画像生成装置2とは、それぞれ別のコンピュータ上に実装され、通信ネットワークによりデータを送受信できる場合について説明する。別の実施例として、分析パラメータ出力装置1の各データおよび各処理機能と、分析画像生成装置2の各データおよび各処理機能と、が一つのコンピュータ上に実装されても良い。
【0026】
(分析パラメータ出力装置)
図2に示すように、本発明の最良の実施の形態に係る分析パラメータ出力装置1は、中央処理制御装置101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103および入出力インタフェース109が、バス110を介して接続されている。入出力インタフェース109には、入力装置104、表示装置105、通信制御装置106、記憶装置107およびリムーバブルディスク108が接続されている。
【0027】
中央処理制御装置101は、入力装置104からの入力信号に基づいてROM102から分析パラメータ出力装置1を起動するためのブートプログラムを読み出して実行し、さらに記憶装置107に記憶されたオペレーティングシステムを読み出す。さらに中央処理制御装置101は、入力装置104や通信制御装置106などの入力信号に基づいて、各種装置の制御を行ったり、RAM103や記憶装置107などに記憶されたプログラムおよびデータを読み出してRAM103にロードするとともに、RAM103から読み出されたプログラムのコマンドに基づいて、データの計算または加工など、後述する一連の処理を実現する処理装置である。
【0028】
入力装置104は、操作者が各種の操作を入力するキーボード、マウスなどの入力デバイスにより構成されており、操作者の操作に基づいて入力信号を作成し、入出力インタフェース109およびバス110を介して中央処理制御装置101に送信される。表示装置105は、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイなどであり、中央処理制御装置101からバス110および入出力インタフェース109を介して表示装置105において表示させる出力信号を受信し、例えば中央処理制御装置101の処理結果などを表示する装置である。通信制御装置106は、LANカードやモデムなどの装置であり、分析パラメータ出力装置1をインターネットやLANなどの通信ネットワークに接続する装置である。通信制御装置106を介して通信ネットワークと送受信したデータは入力信号または出力信号として、入出力インタフェース109およびバス110を介して中央処理制御装置101に送受信される。
【0029】
記憶装置107は半導体記憶装置や磁気ディスク装置であって、中央処理制御装置101で実行されるプログラムやデータが記憶されている。リムーバブルディスク108は、光ディスクやフレキシブルディスクのことであり、ディスクドライブによって読み書きされた信号は、入出力インタフェース109およびバス110を介して中央処理制御装置101に送受信される。
【0030】
本発明の最良の実施の形態に係る分析パラメータ出力装置1の記憶装置107には、分析パラメータ出力プログラムが記憶される。さらに記憶装置107は、映像データ記憶部11、オブジェクト位置記憶部12、オブジェクト群密集度記憶部13、基準画像パラメータ記憶部14およびパラメータ記憶部15を備える。また、分析パラメータ出力プログラムが分析パラメータ出力装置1の中央処理制御装置101に読み込まれ実行されることによって、画像取得部21、オブジェクト位置検出部22、オブジェクト群密集度算出部23、パラメータ算出部24およびパラメータ出力部25が分析パラメータ出力装置1に実装される。
【0031】
画像取得部21は、分析画像生成装置2から画像データ11aを取得して、画像データ記憶部11に記憶する。画像データ記憶部11は、記憶装置107のうち、画像データ11aが記憶された記憶領域である。画像データ11aは、本発明の実施の形態に係る分析対象の画像のデータである。
【0032】
オブジェクト位置検出部22は、記憶装置107から画像データ11aを読み出して、画像データ11aに含まれるオブジェクトの位置を検出し、オブジェクト位置データ12aを生成し、オブジェクト位置記憶部12に記憶する。
【0033】
本発明の実施の形態において画像データ11aはサッカーのゲーム中のデータであるので、オブジェクトは、選手とボールである。オブジェクト位置検出部22は、まず、サッカーフィールドの背景画像を生成する。さらに、オブジェクト位置検出部22は、生成した背景画像と、各フレームの画像データとの差分によって、選手およびボールの領域を検出する。また、オブジェクト位置検出部22は、差分領域のサイズや形状によって、選手であるか、ボールであるかを判別する。ここで、サッカーフィールドの形状やラインは、既知である。映像を撮影したカメラの位置や方向を表すカメラパラメータを推測することで、背景差分で求めた選手やボールの領域から、サッカーフィールドにおける選手やボールの位置を検出することができる。
【0034】
図3を参照して、オブジェクト位置検出部22の処理を説明する。図3(a)は、例えば、画像データ11aである。オブジェクト位置検出部22は、図3(a)に示す画像データ11aから、カメラパラメータを推測するとともに、オブジェクトの位置とオブジェクトの種別を判別する。この結果得られた画像データを図3(b)に示す。図3(b)に示す画像データは、サッカーフィールドにおけるオブジェクトの位置を視覚的に表したものである。図3(b)に示す○印はボールの位置を、□印は選手の位置を示している。
【0035】
オブジェクト位置記憶部12は、記憶装置107のうち、オブジェクト位置データ12aが記憶された記憶領域である。オブジェクト位置データ12aは、画像データ11aに含まれるオブジェクトの位置を対応づけて記憶したデータである。本発明の実施の形態においてオブジェクトは、サッカーをプレーしている選手と、ボールであるところ、オブジェクト位置データ12aは、少なくとも、選手のオブジェクトの位置情報を含む。
【0036】
オブジェクト位置データ12aは、例えば図4に示すようなデータ構造を備える。図4に示すオブジェクト位置データ12aは、オブジェクト識別子とをキーとして、そのオブジェクトの位置情報と、種別と、が関連づけられている。オブジェクトの「位置情報」は、画像データにおいて、オブジェクトが位置している座標のデータである。図4に示す例で位置情報は、X軸方向の座標と、Y軸方向の座標とで示している。オブジェクトの「種別」は、オブジェクトが、「選手」であるか、「ボール」であるか、を示している。
【0037】
オブジェクト群密集度算出部23は、記憶装置107からオブジェクト位置データ12aを読み出して、画像データ11aについて、オブジェクトの密集度を算出する。本発明の実施の形態においてオブジェクト群密集度算出部23は、選手の位置情報から、選手の密集度を算出する。オブジェクト群密集度算出部23は、算出した選手の密集度を含むオブジェクト群密集度データ13aを、オブジェクト群密集度記憶部13に記憶する。
【0038】
オブジェクト群密集度算出部23は、まず、画像データ11aについて、密集度を算出する領域を検出する。この領域は、例えば、カメラによって撮影された領域であって、画像データで示された領域である。またオブジェクト群密集度算出部23は、オブジェクト位置データ12aから、画像データ11aのボールの位置情報と選手の位置情報とを取得し、ボールの周辺で選手が密集している領域を検出しても良い。さらにオブジェクト群密集度算出部23は、検出した領域内に位置する選手の数と、検出した領域の面積の比とから、画像データ11aについて、選手の密集度を算出する。また別の方法として、領域が検出された後、オブジェクト群密集度算出部23は、検出された領域に位置する各選手について、他の選手とのサッカーフィールド上での最短距離を算出し、それらの距離の平均を密集度とする。
【0039】
オブジェクト群密集度記憶部13は、記憶装置107のうち、オブジェクト群密集度データ13aが記憶された記憶領域である。オブジェクト群密集度データ13aは、分析対象の画像データについて算出されたオブジェクトの密集度のデータである。本発明の実施の形態に係るオブジェクト群密集度データ13aは、選手のオブジェクト群の密集度のデータである。
【0040】
基準画像パラメータ記憶部14は、記憶装置107のうち、基準画像パラメータデータ14aが記憶された記憶領域である。基準画像パラメータデータ14aは、基準画像のオブジェクトの密集度と、基準画像のパラメータと、を対応づけたデータである。基準画像パラメータデータ14aは、基準画像のオブジェクトの密集度と、基準画像のパラメータと、を対応づけた対応テーブルであっても良いし、基準画像のオブジェクトの密集度と、基準画像のパラメータの関係を示す関数のデータであっても良い。基準画像のパラメータは、予め設定されたデータである。選手の属性や競技レベルごとに、基準画像パラメータデータ14aを用意しても良い。基準画像パラメータデータ14aは、少なくとも、画像データ11aの選手の属性や競技レベルに適応可能なパラメータを含む。
【0041】
本発明の実施の形態においてパラメータは、アクティブネットの格子点の数である。図5を参照して、基準画像パラメータデータ14aの一例を説明する。図5に示す基準画像パラメータデータ14aは、対応テーブルの形式で、基準画像の密集度と、アクティブネットの格子点の数が対応づけられている。
【0042】
パラメータ算出部24は、記憶装置107から基準パラメータデータ14aを読み出して、基準パラメータデータ14aに基づいて、画像データ11aのオブジェクトの密集度に対応するパラメータを算出する。基準パラメータデータ14aが対応テーブルの形式の場合、パラメータ算出部24は、基準パラメータデータ14aから、画像データ11aのオブジェクトの密集度に対応するパラメータを取得する。このとき、パラメータ算出部24は、オブジェクト群密集度と基準画像の密集度の比を、基準画像のパラメータに乗じた結果を、画像データ11aのパラメータとして出力しても良い。
【0043】
また、基準パラメータデータ14aが関数のデータの場合、パラメータ算出部24は、画像データ11aのオブジェクトの密集度を、基準パラメータデータ14aの関数に入力して、この関数によりパラメータを算出する。
【0044】
画像データ11aが例えばトッププロのサッカー画像である場合、基準パラメータデータ14aには、トッププロのサッカー画像におけるアクティブネットの格子点の数が記憶されている。パラメータ算出部24は、トッププロの基準画像についての密集度とアクティブネットの格子点の数とを取得して、画像データ11aのオブジェクトの密集度に対応するパラメータを取得する。
【0045】
パラメータ記憶部15は、記憶装置107のうち、パラメータデータ15aを記憶した記憶領域である。本発明の実施の形態に係るパラメータデータ15aは、分析対象の画像データ11aについてのアクティブネットの格子点の数である。
【0046】
パラメータ出力部25は、記憶装置107からパラメータデータ15aを読み出して、分析画像生成装置2に出力する。分析画像生成装置2において、パラメータデータ15aに基づいて画像データが分析される。本発明の実施の形態においては、パラメータ出力部25は、分析対象の画像データ11aに対応するアクティブネットの格子点の数のデータを分析画像生成装置2に出力する。分析画像生成装置2は、分析パラメータ出力装置1から出力されたアクティブネットの格子点の数を使って、分析対象の画像データ11aについて、パス可能領域を算出する。
【0047】
次に図6を参照して、本発明の実施の形態に係る分析パラメータ出力装置1における分析パラメータ出力方法を説明する。
【0048】
まずステップS101において分析パラメータ出力装置1の映像取得部21は、分析画像生成装置2から画像データ11aを取得し、画像データ記憶部11に記憶する。画像データ11aは、分析対象の画像データである。
【0049】
次にステップS102ないしステップS104において、オブジェクト位置検出部22は、画像データ11aのオブジェクト位置を算出する。オブジェクト位置検出部22は、ステップS102において、画像データ11a中の選手の位置を検出し、位置情報を取得し、ステップS103において、画像データ11a中のボールの位置を検出し、位置情報を取得する。ステップS104においてオブジェクト位置検出部22は、オブジェクトの識別子と、各オブジェクトの位置情報と、を関連づけてオブジェクト位置データ12aに記録する。
【0050】
ステップS105においてオブジェクト群密集度算出部23は、画像データ11aについて、選手の密集度を算出する。
【0051】
ステップS106およびステップS107において、パラメータ算出部24は、画像データ11aのパラメータを算出する。パラメータ算出部24は、記憶装置107からステップS106で基準画像パラメータデータ14aを読み出す。さらにステップS107においてパラメータ算出部24は、ステップS106で読み出された基準パラメータデータ14aと、ステップS105で算出された選手の密集度と、から、アクティブネットの格子点の数を算出する。パラメータ算出部24は、算出したアクティブネットの格子点の数を、パラメータデータ15aとして、パラメータ記憶部15に記憶する。
【0052】
最後にステップS108においてパラメータ出力部25は、ステップS107で算出された分析対象の画像データのアクティブネットの格子点の数を、分析画像生成装置2に出力する。
【0053】
このように、本発明の実施の形態に係る分析パラメータ出力装置1によれば、分析対象の画像データから、アクティブネットを用いたパス可能領域の分析に必要なパラメータを算出することができる。これにより、パス可能領域を高精度に分析することができる。
【0054】
(分析画像生成装置)
分析画像生成装置2の処理を説明する。本発明の実施の形態において分析画像生成装置2は、分析パラメータ出力装置1に分析対象の画像データ211aを出力するとともに、分析パラメータ出力装置1から出力されたパラメータを用いて、分析画像データ213aを生成する。
【0055】
本発明の実施の形態に係る分析画像生成装置2は、図2に示すような一般的なコンピュータに所定の処理を実行するプログラムがインストールされることにより実現される。
【0056】
図1に示すように本発明の実施の形態に係る分析画像生成装置2は、画像データ記憶部211、パラメータ記憶部212、分析画像記憶部213および分析画像生成部221を備える。画像データ記憶部211、パラメータ記憶部212および分析画像記憶部213は、分析画像生成装置2の記憶装置に実装される。分析画像生成部221は、分析画像生成装置2の中央処理制御装置に実装される。
【0057】
画像データ記憶部211は、本発明の実施の形態において、分析対象となる画像データ211aが記憶された記憶領域である。本発明の実施の形態において画像データ211aは、サッカーのゲーム中の画像データである。分析画像生成装置2は、画像データ211aについて、パス可能領域を分析する。
【0058】
パラメータ記憶部212は、本発明の実施の形態に係る分析画像生成装置2が、パス可能領域を分析する際に必要なパラメータデータ212aが記憶された記憶領域である。パラメータデータ212aは、分析パラメータ出力装置1から出力される。本発明の実施の形態においてパラメータデータ212aは、アクティブネットを適用する際の格子点の数である。
【0059】
分析画像記憶部213は、本発明の実施の形態に係る分析画像生成装置2が出力する分析画像データ213aが記憶された記憶領域である。本発明の実施の形態において分析画像データ213aは、サッカーのゲーム中の画像データについて、パス可能領域を示した画像データである。
【0060】
分析画像生成部221は、画像データ211aについて、パラメータデータ212aを考慮して分析画像データ213aを生成する。以下、分析画像生成部221の処理を説明する。分析画像データ213aは、図7(a)ないし(h)に示す画像のデータである。
【0061】
分析画像生成部221は、分析対象の画像データについて、オブジェクト位置を検出する。このとき、上述したオブジェクト位置検出部22と同様の処理でオブジェクト位置を検出する。ここで、分析画像生成装置2は、味方チームの選手へのパスと、スペースへのパスとのそれぞれについて分析する。従って、分析画像生成部221は、予め記憶した各チームの選手のユニフォームの色分布と、選手のオブジェクトの色分布に基づいて、味方チームの選手のユニフォームか、相手チームの選手のユニフォームかなどを決定し、選手のオブジェクトが、味方チームの選手であるか、相手チームの選手であるかを判定する。これにより分析画像生成部221は、サッカーフィールドに味方チームの選手の位置、相手チームの選手の位置およびボールの位置を示した画像を生成することができる。
【0062】
分析画像生成部221は、各オブジェクトの位置を示した画像データに基づいて、パスをした際のボールの軌跡を推定する。ここでパスには、ボール保持者から味方チームの選手へのパスと、選手が存在しない領域(スペース)へのパスとが考えられる。パス可能領域を推定するためには、ボール保持者と味方チームの選手あるいはスペースを結び、相手チームの選手からの距離が遠い位置を通過する曲線が存在する領域を抽出する。
【0063】
ここで本発明の実施の形態に係る分析画像生成部221は、アクティブネットを用いる。本発明の実施の形態において、このアクティブネットは、分析パラメータ出力装置1により出力されたパラメータの格子点の数を有する。アクティブネットは、内部ひずみエネルギーと画像の適合性エネルギーの和を最小化する形状へと変形を繰り返すことにより、領域を抽出することができる。アクティブネットを適用することで、格子点は抽出対象のエッジに引き寄せられ、領域抽出が実現する。このとき内部ひずみエネルギーにより格子点が平行性を有するため、抽出された領域のエッジには急激な曲率の変化が生じない。このようなエネルギーの収束により得られた最終結果における格子点の密度が高い領域は、緩やかな曲率を示す。そこで分析画像生成部221は、その曲線をボールの軌跡と仮定し、曲線が存在する領域をパス可能領域として推定することができる。
【0064】
味方チームの選手へのパスについて説明する。味方チームの選手にパスが到達するまでの間に選手は移動することができる。従って、味方チームの選手へのパスについて、エネルギーは選手位置に対する円形の形状とする。この距離は、上述した様に、ボールが到達するまでのエネルギーの円の半径rは、ボール保持者との距離d1を用いて上記の式(1)の様に表される。このように、味方チームの選手へのパスについて、味方チームの選手のエネルギーと、相手チームの選手のエネルギーとを示した画像を、図7(a)に示す。図7(a)において、階調値の低い円が味方チームの選手のエネルギーを、階調の高い円が相手チームの選手のエネルギーを、それぞれ示している。このうち階調値の低い領域が、味方チームの選手へのパスの対象となるスペースと推定される。
【0065】
スペースへのパスについて説明する。スペースへのパスにおいて分析画像生成部221は、味方チームの選手が到着可能なスペースである度合いを定義し、これを選手へのパスにおける選手位置と見なすことにより、選手へのパスと同様にパス可能領域を推定することができる。分析画像生成部221は、相手チームの選手の位置からフィールド状の各点におけるスペース度を定義し、その点にパスよりも早く味方チームの選手が到達する可能性を推定することで、スペースへのパスの対象となるスペースを推定することができる。このようにスペースへのパスの対象となるスペースを示した画像を、図7(b)に示す。図7(b)において、階調値の低い領域が、スペースへのパスの対象となるスペースと推定される。
【0066】
分析画像生成部221は、図7(a)および図7(b)について作成したそれぞれの画像に対してアクティブネットを適用する。ここで、アクティブネットの性質は、抽出対象となる物体の性質から初期形状、内部ひずみエネルギーおよび画像の適合性エネルギーを定義することで決まる。図7(c)に示す図は、このように定義したアクティブネットを図7(a)に示す画像に適用した図であって、図7(d)に示す図は、このように適用したアクティブネットを図7(b)に示す画像に適用した図である。また、図7(e)および図7(f)は、それぞれ、図7(c)および図7(d)の一部を拡大した図である。
【0067】
さらに分析画像生成部221は、図7(c)および図7(d)に示す図において、アクティブネットの格子点の密度に着目し、パス可能領域を通過するパスが成功する可能性(パスコース可能性)を推定する。分析画像生成部221は、サッカーフィールドを予め小領域に分割する。ここで、この分割数を細かくすればパスのずれを許容する幅が小さくなり、大きくすれば、パスのずれを許容する幅が大きくなる。後述する第1の変形例においては、この小領域に分割する際の分割数について、分析パラメータ出力装置1により出力されたパラメータの分割数を用いる。
【0068】
パス可能領域は、アクティブネットにおいてボール保持者から放射状に存在する曲線によって表現され、その曲線の単位面積あたりの本数に従って、パスコース可能性が決まる。そのため、分割された領域に対してパスコース可能性を推定するためには、各領域を通過する曲線の本数をカウントする。各領域について、この曲線の数が多い場合、その領域へのパスコース可能性が高いと判断する。さらに、各領域のパスコース可能性について、閾値で2値化することで、図7(g)に示すように、パス可能領域を決定することができる。図7(h)は、図7(g)の拡大図である。
【0069】
(第1の変形例)
本発明の実施の形態においては、分析パラメータ出力装置1がパラメータとしてアクティブネットの格子点の数を出力する場合について説明したが、第1の変形例において、小領域に分割する際の分割数である場合について説明する。
【0070】
分析画像生成装置2において、アクティブネットの格子点をボール保持者を中心とした同心円状に配置した後、エネルギー画像と適合させこのアクティブネットにおいて、パス可能領域はボール保持者から放射状に存在する曲線によって表現される。ここで、サッカーフィールドを等分した小領域を設定し、各小領域を通過する曲線の本数から、パスが成功する可能性は推定される。第1の変形例においては、この小領域に分割するための分割数を、分析パラメータ出力装置1が出力する。
【0071】
第1の変形例に係る基準パラメータデータ14aは、例えば、図8に示すようなデータ構造を備える。画像データ11aが例えばトッププロのサッカー画像である場合、基準パラメータデータ14aには、トッププロのサッカー画像における分割数が記憶されている。パラメータ算出部24は、トッププロの基準画像についての密集度と分割数とを取得して、画像データ11aのオブジェクトの密集度に対応する分割数を取得する。
【0072】
図9を参照して、第1の変形例に係る分析パラメータ出力装置1における分析パラメータ出力方法を説明する。図6で説明した本発明の実施の形態に係る分析パラメータ出力方法と比べて、ステップS207の処理が異なる。
【0073】
ステップS207においてパラメータ算出部24は、ステップS206で読み出された基準パラメータデータ14aと、ステップS205で算出された選手の密集度と、から、分割数を算出する。パラメータ算出部24は、算出した分割数を、パラメータデータ15aとして、パラメータ記憶部15に記憶する。
【0074】
ここで、第1の変形例においては、小領域に分割する際の分割数をパラメータとしたが、
小領域に分割する際の各領域のブロックサイズをパラメータとしても良い。また、X軸方向の分割数と、Y軸方向の分割数のそれぞれを、パラメータとしても良い。
【0075】
(第2の変形例)
本発明の実施の形態においてパラメータは、アクティブネットの格子点の数とし、第1の変形例においては、分割数としたが、第2の変形例においては、これらの両方のパラメータを、分析パラメータ出力装置1は出力する。
【0076】
第2の変形例に係る分析パラメータ出力装置1において、画像データ11aが例えばトッププロのサッカー画像である場合、基準パラメータデータ14aには、トッププロのサッカー画像におけるアクティブネットの格子点の数と、分割数が記憶されている。パラメータ算出部24は、トッププロの基準画像についての密集度とアクティブネットの格子点の数と分割数とを取得して、画像データ11aのオブジェクトの密集度に対応するアクティブネットの格子点の数と分割数を取得する。
【0077】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明の実施の形態とその変形例1および2によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなる。
【0078】
例えば、本発明の実施の形態においては、画像分析に必要なプロセスを、分析パラメータ出力装置1と分析画像生成装置2と、別々のコンピュータで実装する場合を説明したが、同じコンピュータで実装されても良い。
【0079】
本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0080】
1 分析パラメータ出力装置
2 分析画像生成装置
11、211 画像データ記憶部
12 オブジェクト位置記憶部
13 オブジェクト群密集度記憶部
14 基準画像パラメータ記憶部
15、212 パラメータ記憶部
21 画像取得部
22 オブジェクト位置検出部
23 オブジェクト群密集度算出部
24 パラメータ算出部
25 パラメータ出力部
101 中央処理制御装置
102 ROM
103 RAM
104 入力装置
105 表示装置
106 通信制御装置
107 記憶装置
108 リムーバブルディスク
109 入出力インタフェース
110 バス
213 分析画像記憶部
221 分析画像生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを分析するためのパラメータを出力する分析パラメータ出力方法であって、
記憶装置から、画像データに含まれるオブジェクトの位置を記憶したオブジェクト位置データを読み出して、前記オブジェクトの密集度を算出するステップと、
前記記憶装置から、基準画像のオブジェクトの密集度とパラメータと、を対応づけた基準パラメータデータを読み出して、前記画像データのオブジェクトの密集度と前記基準画像のオブジェクトの密集度の比率と、前記基準画像のパラメータとから、前記画像データのパラメータを出力するステップと、
を備えることを特徴とする分析パラメータ出力方法。
【請求項2】
前記画像データは、アクティブネットを用いて分析され、
前記パラメータは、前記アクティブネットの格子点の数である
ことを特徴とする請求項1に記載の分析パラメータ出力方法。
【請求項3】
前記画像データは、小領域に分割されて分析され、
前記パラメータは、前記画像データの分割数である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の分析パラメータ出力方法。
【請求項4】
前記基準パラメータデータは、前記画像データの属性ごとに設けられ、
前記パラメータ算出ステップは、前記属性に対応した前記基準パラメータデータに基づいて、前記画像データのパラメータを出力する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の分析パラメータ出力方法。
【請求項5】
画像データを分析するためのパラメータを出力する分析パラメータ出力装置であって、
画像データに含まれるオブジェクトの位置を記憶したオブジェクト位置データを記憶するとともに、
基準画像のオブジェクトの密集度と、前記基準画像のパラメータと、を対応づけた基準パラメータデータを記憶する記憶装置と、
前記記憶装置から前記画像データの前記オブジェクト位置データを読み出して、前記オブジェクトの密集度を算出する密集度算出部と、
前記記憶装置から前記基準パラメータデータを読み出して、前記基準パラメータデータに基づいて、前記画像データのオブジェクトの密集度に対応するパラメータを算出するパラメータ算出部と、
を備えることを特徴とする分析パラメータ出力装置。
【請求項6】
前記画像データは、アクティブネットを用いて分析され、
前記パラメータは、前記アクティブネットの格子点の数である
ことを特徴とする請求項5に記載の分析パラメータ出力装置。
【請求項7】
前記画像データは、小領域に分割されて分析され、
前記パラメータは、前記画像データの分割数である
ことを特徴とする請求項5または6に記載の分析パラメータ出力装置。
【請求項8】
前記基準パラメータデータは、前記画像データの属性ごとに設けられ、
前記パラメータ算出部は、前記属性に対応した前記基準パラメータデータに基づいて、前記画像データのパラメータを出力する
ことを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の分析パラメータ出力装置。
【請求項9】
コンピュータに、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のステップを実行させるための分析パラメータ出力プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−4824(P2012−4824A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137599(P2010−137599)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】