説明

分析物測定用生物流体加工方法および装置

本発明は、細胞成分を含む生物流体の熱処理による加工方法に関する。本方法は特に分析物検知のための生物試料製造に有用である。さらには、本発明は本質的に定量的に分解した細胞成分を含む、加工した生物流体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞成分を含む生物流体の熱処理による加工方法および装置に関する。本方法は、特に分析物検知のための生物試料の調整に有用である。さらには、本発明は本質的に定量的に分解した細胞成分を含む加工した生物流体に関する。
【0002】
生物流体からの試料中の分析物の測定は、時として細胞成分を流体試料から除去するために、複雑且つ冗長な前処理工程を必要とする。例えば、全血は成分、即ち赤血球、白血球および血小板を含む。血液試料内の分析物を測定するため、それらの細胞成分を時として前処理工程、例えば遠心分離、濾過、沈殿によって除去し、および/または化学試薬あるいは機械的な処理を用いた溶解によりホモジナイズしなければならない。しかしながらこれらの処理は、時として自動化された試験様式に統合するのが困難である。これは、対象とする分析物が細胞成分内に存在する、例えば赤血球内の免疫抑制剤の状態も含む。この場合、細胞成分を溶解試薬の添加に先だって、遠心分離および/または濾過によって分離あるいは濃縮する、あるいは、元の試料に変性剤、例えばZnSO4とアセトニトリルとの混合物を添加することによってそれらを変性させる、あるいは元の試料を−20〜−170℃の温度で処理する。
【0003】
本発明の課題は、先行技術に伴う欠点のない、生物流体を処理する改良された方法を提供することである。
【0004】
本発明の第一の態様は、細胞成分を含む生物流体の加工方法において、
(i)前記細胞成分の本質的に定量的な分解を提供し、且つ
(ii)流体成分の本質的な沈殿、析出、変性、凝集およびゲル化を引き起こさない、
条件の下で、流体に熱処理を行う方法である。
【0005】
本発明のさらなる態様は、本質的に沈殿、析出、変性、凝集およびゲル化生成物のない、本質的に定量的に分解した細胞成分を含む、加工した生物流体である。
【0006】
本発明のなおさらなる態様は、生物流体を上記のように加工し、且つ前記の加工した生物流体中で分析物を測定する、生物流体試料中の分析物の測定方法である。
【0007】
本発明のなおさらなる態様は、細胞成分を含む生物流体加工用装置において、
(a)流体導入口、
(b)少なくとも部分的に加熱可能な流体加工路、
(c)流体加工路の予め決められた部分を加熱するための加熱要素、
(d)流体輸送要素、例えばポンプ要素、
(e)下記の条件の下で流体の加熱を制御するための制御要素
(i)前記の細胞成分の本質的に定量的な分解を提供し、且つ
(ii)流体成分の本質的な沈殿、析出、変性、凝集およびゲル化を引き起こさない
(f)随意に洗浄要素および
(g)随意に試料分析要素
を含む装置である。
【0008】
驚くべきことに本発明者は、細胞成分、好ましくはより高等な生物からの細胞あるいは細胞集塊、より好ましくは動物の細胞、例えば人間の細胞を含む哺乳動物の細胞、そして最も好ましくは血液細胞、例えば生物試料中の赤血球、白血球および/または血小板の完全な分解が、予め決められた時間および温度条件の下での熱処理によって達成されることを見出した。この熱処理によって、生物流体内に含まれる細胞成分は、流体成分の本質的な沈殿、析出、変性、凝集および/またはゲル化なしに分解される。
【0009】
該熱処理を60〜90℃、好ましくは60〜75℃およびより好ましくは65〜70℃の温度で実施できる。該熱処理を、選択した処理温度で所望の分解に達するのに充分な時間実施する。好ましくは、該熱処理を5秒〜1分、より好ましくは10秒〜40秒間、実施する。特に好ましいのは、70℃の温度で30〜40秒、例えば35秒である。該熱処理を任意の適した容器、例えばガラス細管(55×0.5mm内径)の中で行ってよい。
【0010】
表1に、随意に有機溶剤および/または血液型AB型の血漿を補充した、所定の赤血球数を有する全血試料の熱処理に適した条件を示す。これらの温度/時間条件は、所定の温度での時間の上限(tmax値として示す)によって、および所定の温度での時間の下限(tmin値として示す)によって定義される。該熱処理をtmax値より長い時間行った場合、ゲル化が起きる。熱処理時間がtmin値より短い場合、不完全な分解のみが起きる。該熱処理の前に、他の流体、例えば有機溶剤および/または水性流体、例えば血漿を試料に添加した場合、tmaxおよびtminの値は表2〜6に示されるように変化し得る。
【0011】
試料のゲル化は粘度の増加によって測定できる。分解の完了は、例えばノイバウエル計算盤内で細胞をカウントすることによって、特定の成分の顕微鏡検査によって、および/または遠心分離の後の沈殿物形成がないことによって測定できる。この文脈では、約95%の血液細胞成分が赤血球によって表されることを注記すべきである。従って、血液試料中の細胞数を、好ましくは赤血球をカウントすることによって測定する。
【0012】
本発明によって、試料中の細胞数を好ましくは元の値の0.1%以下に、より好ましくは0.01%以下に減少させる。例えば、1μlあたり5×106個の赤血球の試料に熱処理を行って、細胞数を好ましくは1μlあたり5×103個以下に(実施例1を参照)、より好ましくは1μlあたり500個以下に減少させる。最も好ましくは、試料は検知可能な細胞を有さない。特定の成分の不在は、例えば100倍までの倍率での光学顕微鏡観察によって、および/または3000gまで、好ましくは7400gまでで10分間の遠心分離によって測定できる。
【0013】
流体が静的に保たれているとき、例えば、流体が反応容器内にあるときに熱処理を行うことができる。しかしながら、好ましい実施態様において、特に自動操作には、熱処理を流体が流れている間、例えば流体が流路を通過している間に行うことができる。流動している系内での熱処理は、試料の流体が加熱された流路、例えば好ましくは約0.1〜0.8mm、例えば約0.5mmの内径を有する細管の流路を予め決められた流速で通過している間に行うことができ、ここで流路は加熱された流路内で所望の滞留時間に達するように予め決められた長さを有している。加熱は任意の適したやり方で行うことができ、且つ、例えば誘導加熱、例えばマイクロ波処理、例えばUS6605454号に記載されているように、対流加熱、抵抗加熱、および/またはレーザー励起による加熱を含んでよい。
【0014】
生物流体は体液、例えば全血、尿、髄液、唾液、リンパ液等、あるいは細胞培養からの流体または細胞成分、特に血液細胞を含む流体を含む、他の生物流体であってよい。より好ましくは、該生物流体は全血、例えば静脈血、動脈血または毛細管血、特に凝固阻止処理された全血、例えばEDTA処理、クエン酸処理、またはヘパリン処理された全血である。例えば、試料を凝固阻止剤を含む採血器で採取し、そして以下に記載するようにさらなる加工を直接的に行ってよい。
【0015】
試料の容量は広く変化してよく、例えば1nl以上、好ましくは10nl以上で且つ1mlまでの範囲である。従って、本方法は、小型化した用途、例えばオンチップ形式のマイクロ流体装置、ナノLC−MS分析等に適している。
【0016】
本発明の方法は、沈殿および/または析出および/または遠心分離工程および/または化学溶解および/または分解試薬を必要としない。従って、熱処理を好ましくは前もっての細胞成分の除去および/または溶解なしで実施する。本方法を任意の適した装置、例えば使い捨ての装置あるいは再利用可能な装置の中で行ってもよい。好ましくは、本方法は自動処理であり、一体化装置、即ち、随意に例えばさらなる流体との混合の後、前処理なしで、特に細胞成分の除去および/または溶解なしで、流体試料が中に移送される装置内で実施してよい。装置内で、試料に好ましくは前もっての細胞成分の除去および/または溶解なしで直接的に処理を行う。前記の処理の後、続く工程、例えば分析物の測定を実施できる。最も好ましくは、熱処理を本質的に天然の試料、例えば本質的にそのままの細胞成分を含む試料、例えば全血で行う。
【0017】
本発明の方法は加工の前および/または後で、生物流体へのさらなる流体の添加を含んでもよい。前記のさらなる流体は、生物流体の容量に対して、好ましくは20容量%までの量、より好ましくは10容量%までの量の有機溶剤であってよい。該有機溶剤は好ましくは水混和性の溶剤、例えばメタノール、エタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドおよびそれらの組み合わせから選択される。有機溶剤の添加は、表2および3に示すように、熱処理の温度/時間条件に影響する。
【0018】
好ましくは、さらなる流体は細胞成分の溶解に本質的に影響しない。より好ましくは、さらなる流体は水性の流体、例えば水性の緩衝液あるいはさらなる生物流体であり、好ましくは0.5〜1.4% NaCl、より好ましくは0.7〜1.2% NaCl、および最も好ましくは約0.9% NaClに相当するイオン強度を有する。好ましくは、水性流体は細胞成分のない生物流体、例えば血漿である。より好ましくは、該血漿は血液型AB型の血漿である。さらなる水性流体は、例えば、第二の生物流体に対して、20容量%までの量、好ましくは10容量%までの量の有機溶剤、例えばメタノール、エタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドおよび/またはそれらの組み合わせを含んでよい。第二の生物流体を好ましくは、第一の生物流体の容量に対して、5:1〜1:10の容量比で添加する。好ましくは、第二の流体を熱処理の前に添加する。第二の流体の添加は、表4〜6に示すように熱処理工程のための適した温度/時間条件に影響し得る。驚くべきことに、随意に有機溶剤を伴う、AB血漿の添加は実際に所定の温度での適した処理時間の範囲を増加させることが判明した。
【0019】
さらなる流体は、予め決められた量の少なくとも1つの標準化および/またはキャリブレータ化合物を含む、標準化および/またはキャリブレータ流体であってよい。標準化および/またはキャリブレータ化合物の添加は、熱処理された生物流体がクロマトグラフィー、分光法および/または分光器的な方法によってさらに分析される場合に特に適している。該標準化および/またはキャリブレータ化合物は、安定した同位体、例えば2Hおよび/または13Cを含有する分析物類似物であってよく、従って質量分析法によって検知できる。
【0020】
本方法は、処理の前および/または後で、脂質、タンパク質、ペプチド、核酸および炭水化物用のマーカー/染色化合物の生物流体への添加も含んでよい。
【0021】
本発明のさらなる態様は、AB血漿、血漿の容量に対して20容量%まで、好ましくは10容量%までの量の有機溶剤、例えばメタノール、エタノール、アセトニトリルおよび/またはジメチルスルホキシド、および予め決められた量の少なくとも1つの標準化および/またはキャリブレータ化合物を含む組成物に関する。前記の化合物は、標準化および/またはキャリブレータ流体として、特に上述されたように熱処理工程と組み合わせて使用できる。
【0022】
本発明のなおさらなる態様は、上述したように得られる加工した生物流体に関する。前記の加工した流体は、特に臨床試験に適した新規の基質を表す。加工した流体は4℃で少なくとも1週間、好ましくは少なくとも2週間、および/または25℃で少なくとも1日、好ましくは少なくとも5日間安定である。従って、加工した流体の取り扱いは、未処理の全血試料と比較して、非常により単純である。用語"安定"は特に沈殿が起きないことを意味する。
【0023】
加工した生物流体は、本質的に定量的に分解した細胞成分、例えば血液細胞からの成分を含む。加工した流体は、本質的に沈殿、析出、変性、凝集および/またはゲル化生成物がない。好ましい実施態様において、本発明は本質的に
(i)顕微鏡観察(例えば倍率100倍)で、特定の成分がなく、
(ii)3000gまで、好ましくは7400gまでで10分間の遠心分離の後、沈殿物がなく、
(iii)細胞計算盤内で測定される細胞がない、
加工した流体に関する。
【0024】
加工した流体は好ましくは0.5〜1.4% NaCl、より好ましくは0.7〜1.2% NaClおよび最も好ましくは本質的に生理食塩濃度に相当するイオン強度を有する。加工した流体は、添加される分解試薬および/または溶解試薬および/またはデタージェントがなくてよい。他方で、加工した流体は有機溶剤および/または添加される水性流体、例えば上述されたように血液型AB型の血漿を含んでもよい。最も好ましくは、加工した流体は加工した全血である。
【0025】
本発明は、上述されたように熱処理にさらされた生物流体試料内の分析物の測定方法にも関する。該分析物は、生物流体内で検知される任意の分析物、例えば生物化合物、例えば核酸、ポリペプチド、ペプチド、脂質、糖、ホルモン、代謝物質等であってよい。他方で、該分析物は非生物化合物、例えば薬学的化合物であってよい。好ましい実施態様において、該分析物は免疫抑制薬剤、例えばサイクロスポリン、ラパマイシンあるいはタクロリムスあるいは関連化合物である。
【0026】
加工した流体内での分析物の測定を、任意の公知の方法によって実施してよい。例えば、分析物の測定を化学的、生化学的および/または物理化学的方法によって実施でき、且つハイブリダイゼーション反応、免疫反応、酵素反応、例えば核酸増幅、クロマトグラフィー分析、分光分析、例えば質量分析あるいはNMR分析および/または分光器的な分析を含んでよい。特に好ましい実施態様において、本発明は全血試料内の免疫抑制剤の測定方法に関し、ここでは上述のように熱処理によって全血を加工し、そして標準的な方法、例えば質量分析法によって、加工した全血内で免疫抑制剤を測定する。
【0027】
さらに好ましい実施態様において、分析物は臨床化学的パラメータ、例えば先天性代謝障害、例えばフェニルケトン尿症に関連する臨床化学的パラメータである。この実施態様において、試料は好ましくは新生児から得られた毛細管血試料である。
【0028】
なおさらに好ましい実施態様において、本方法は人間ではない動物、好ましくはマウス、モルモットおよびラットからの血液試料の加工に適している。例えば、該試料を自動システムによって採取し、そして上述のように直接的に加工する。好ましい自動システムは、DiLab(登録商標)からのAccu Sampler(登録商標)である。
【0029】
本発明の装置は、生物流体の試料が装置内に例えば注入される流体導入口を含んでよい。流体を、流体輸送要素、例えばポンプ要素によって該装置内に輸送する。さらには、該装置は少なくとも一部分が加熱可能な流体加工路を含んでよい。該流体加工路の加熱可能な部分は、装置と一体の部品、あるいは取り外せるように装置に取り付けられていてもよい。該流体加工路は好ましくは約0.1〜0.8mmの内径を有している。流路の加熱可能な部分内で所望の滞留時間に達するために、生物流体の予め決められた流量を調整してよい。加熱要素は任意の適した加熱要素、例えば誘導加熱要素、対流加熱要素、抵抗加熱要素および/またはレーザー励起による加熱要素であってよい。例えば、該加熱要素は流体加工路の予め決められた部分の周りを覆う加熱コイル、あるいはマイクロ波放射源であってよい。制御要素は、試料加工の制御、特に流体の加熱を、例えば流体加工路の加熱可能な部分内での加熱強度および/または時間および/または流量を制御することによって提供する。
【0030】
該装置は随意に流体加工路あるいは少なくともその一部分を洗浄するのに適した洗浄要素を含んでよい。例えば、該洗浄要素を、予め決められた回数の生物流体加工サイクルの後、流体加工路あるいはその一部分の洗浄を行うために適合させる。好ましくは、洗浄は洗浄流体が流体加工路あるいはその一部分を通過することを含む。該洗浄流体は加工流路内の生物的、例えばタンパク質残滓を除去できる。好ましくは、該洗浄流体はアルカリ性の次亜塩素酸溶液、例えばアルカリ性のNaOCl溶液である。洗浄は流体加工路あるいはその一部分を洗浄流体で洗い流すことを含んでもよく、該洗浄流体は好ましくは高温、例えば温度T≧60℃である。洗浄効率は、洗浄工程後の流体加工路あるいはその一部分の中の生物材料の存在をモニターすることによって制御できる。モニターは好ましくは生物材料、例えばタンパク質材料の測光検知を含む。前記の検知は、洗浄流体によって可溶化された/加水分解された生物材料を好ましくはオンライン検知モードで検知することによって行ってよい。生物材料を、適した呈色反応、例えばO−フタルジアルデヒドおよびN,N−ジメチル−2−メルカプトエチルアンモニウムクロリドが第一アミン化合物、例えばタンパク質あるいは加水分解生成物と、アルカリ性の条件(例えば0.1mol/l Na247 pH9.3)の下で反応して1−アルキルチオ−2−アルキルイソインドールになるOPA反応によって検知でき、それは340nmで測光的に検知できる。
【0031】
さらには、該装置は随意に試料分析要素を含む。該試料分析要素は、生物試料内で分析物を検知するのに適した任意の要素であってよい。好ましくは、該試料分析要素は、クロマトグラフィー要素、例えばHPLC要素、抽出要素、例えば固相抽出(SPE)要素、分光要素、例えば質量分析あるいはNMR要素、分光器的要素、酵素および/または免疫学的要素および/またはハイブリダイゼーション評価要素を含む。
【0032】
最終的に、装置はデータを転送できる、および/またはリモートコントロールユニットからのデータを受け取れるプロセッサユニットを含んでよい。データ転送は、オンラインで、例えばワイヤレス転送、例えばGSM/GPRS/3Gデータ転送によって行ってよい。例えば予め決められた回数の流体加工工程の実行に対しての支払いを受け取った後(即ち工程量に応じて支払う)、リモートコントロールユニットを適合させてそれぞれの装置に流体の加工を許可してよい。
【0033】
さらに、以下の実施例によって本発明をより詳細に説明する。
【0034】
実施例1:血液試料の熱処理(静止系)
ガラス細管(長さ55mm×内径0.5mm)を約10μlの血液試料(赤血球:5.18×106/μl;ヘモグロビン:17.5g/dl;ヘマトクリット 50.1%)で満たし、片方の端をプラステシンで封止し、そして所定の温度で所定の時間、温度調整された水浴内で加熱する。加熱工程の最後に、ガラス細管を直ちに氷浴(4℃)に浸す。プラステシンの封止を切り離し、ガラス細管を空にし、そして処理した血液試料でさらに、ゲル化および血液細胞の分解の完了を調査する。パラメータtmaxを、試料のゲル化が起きた加熱時間[秒]マイナス1秒として定義する。パラメータtminを、ノイバウエル計算盤を使用して赤血球が検知されなかった最短加熱時間として定義する。
【0035】
実施例2:赤血球カウント
10μlの全血あるいは処理した血液に、990μlのHayemsch溶液(Merck KGaA、ダルムシュタット、ドイツ)を添加する。該混合物を攪拌し、一部分をノイバウエル計算盤に導入する。所定の5個の正方形内に存在する赤血球を、倍率100倍の顕微鏡を使用してカウントする。
【0036】
計算:
【数1】

【0037】
結果を以下の表1〜6に示す。
【0038】
【表1】

表1:全血(赤血球:5.18×106/μl;ヘモグロビン:17.5g/dl;ヘマトクリット 50.1%)の熱処理。
【0039】
【表2】

表2:5容量%のメタノールを含有する全血の熱処理。
【0040】
【表3】

表3:5容量%のアセトニトリルを含有する全血の熱処理。
【0041】
【表4】

表4:全血とAB血漿との1:1の混合物の熱処理。
【0042】
【表5】

表5:5容量%のメタノールを含有する、全血とAB血漿との1:1の混合物の熱処理。
【0043】
【表6】

表6:2.5、5あるいは10容量%のアセトニトリルを含有する、全血とAB血漿との1:1の混合物の熱処理。
【0044】
実施例3:血液試料の熱処理(流動系)
内径0.5mmおよび長さ300mmの寸法を有する、加熱したステンレス鋼細管を使用した血液試料(例えば10μl)の処理のために、所定の温度での加熱時間を所定の試験流体、例えば0.9容量%のNaCl溶液の流速によって、予め調整できる。
【0045】
温度75℃で、流速466μl/分によって、9秒の最短細管保持時間tmin(実施例1、表1参照)に到達し、且つ流速183μl/分によって、23秒の最長細管保持時間tmax(実施例1、表1参照)に到達する。従って、前記の試料容量および細管形状に好ましい流速はそれらの境界の範囲内であり、例えばおよそ325μl/分に達する。この流速は質量分析法におけるエレクトロスプレーイオン化にもまた最適である。
計算:
【数2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞成分を含む生物流体の処理方法において、
(i)前記細胞成分の本質的に定量的な分解を提供し、且つ
(ii)流体成分の本質的な沈殿、析出、変性、凝集およびゲル化を引き起こさない
条件の下で流体を熱処理することを特徴とする方法。
【請求項2】
熱処理を、60〜90℃、好ましくは60〜75℃の温度で実施することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
熱処理を、5秒〜1分の時間、実施することを特徴とする、請求項1あるいは2に記載の方法。
【請求項4】
熱処理を、流体が静止している間に実施することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
熱処理を、流体が流れている間に実施することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
熱処理が、誘導加熱、対流加熱、抵抗加熱、および/またはレーザー励起による加熱を含むことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
生物流体が、体液あるいは細胞培養流体、好ましくは全血であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法において、
(i)沈殿および/または析出工程および/または遠心分離工程および/または
(ii)化学的分解試薬および/または溶解試薬の添加
を含まない方法。
【請求項9】
自動処理として、好ましくは一体化された装置内において実施される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
加工の前および/または後にさらなる流体を添加することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
さらなる流体が、生物流体の容量に対して20容量%までの量の有機溶剤、例えばメタノール、エタノール、アセトニトリルおよび/またはジメチルスルホキシドであることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
さらなる流体が、細胞成分のない水性流体であり、随意に水性流体の容量に対して20容量%までの量の有機溶剤を含むことを特徴とする、請求項10あるいは11に記載の方法。
【請求項13】
さらなる流体が、血漿、特に血液型AB型の血漿であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
さらなる流体が、予め決められた量の少なくとも1つの標準化および/またはキャリブレータ化合物を含む、標準化および/またはキャリブレータ流体であることを特徴とする、請求項10から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法によって得られる、加工した生物流体。
【請求項16】
本質的に沈殿、析出、変性、凝集およびゲル化生成物がなく、本質的に定量的に分解した細胞成分を含む、加工した生物流体。
【請求項17】
本質的に、
(i)顕微鏡観察(例えば倍率100倍)で特定の成分がなく、
(ii)3000gまで、好ましくは7400gまでで10分間の遠心分離の後、沈殿物がなく、および/または
(iii)細胞計算盤内で測定される細胞がない、
請求項15あるいは16に記載の加工した流体。
【請求項18】
本質的に生理食塩濃度を有する、請求項15から17までのいずれか1項に記載の加工した流体。
【請求項19】
添加した試薬、特に化学的分解試薬および/または溶解試薬および/またはデタージェントがない、請求項15から18までのいずれか1項に記載の加工した流体。
【請求項20】
細胞が分解した血液である、請求項15から19までのいずれか1項に記載の加工した流体。
【請求項21】
生物流体試料内の分析物測定方法において、生物流体を請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法によって加工し、且つ前記の加工した生物流体内で分析物を測定することを特徴とする方法。
【請求項22】
分析物が、生物化合物、例えば核酸、ポリペプチド、ペプチド、脂質、糖類、ホルモン、代謝物等および薬学的化合物から選択されることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
分析物が、免疫抑制剤、例えばサイクロスポリン、ラパマイシンあるいはタクロリムスであることを特徴とする、請求項21あるいは22に記載の方法。
【請求項24】
測定が、ハイブリダイゼーション反応、免疫反応、酵素反応、クロマトグラフィー分析、分光分析および/または分光器的な分析を含むことを特徴とする、請求項21から23までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
全血試料中の免疫抑制剤の測定方法において、全血を請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法によって加工し、且つ免疫抑制剤を前記の加工した全血内で測定することを特徴とする方法。
【請求項26】
新生児からの全血試料中の臨床化学的パラメータの測定方法において、全血を請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法によって加工し、且つ臨床化学的パラメータを前記の加工した全血内で測定することを特徴とする方法。
【請求項27】
一体化された装置内で試料を加工および測定することを特徴とする、請求項21から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
血液型AB型の血漿、該血漿の容量に対して20容量%までの量の有機溶剤、例えばメタノールおよび/またはアセトニトリルおよび予め決められた量の少なくとも1つの標準化および/またはキャリブレータ化合物を含む組成物。
【請求項29】
細胞成分を含む生物流体加工用装置において、
(a)流体導入口、
(b)少なくとも部分的に加熱可能な流体加工路、
(c)流体加工路の予め決められた部分を加熱するための加熱要素、
(d)流体輸送要素、例えばポンプ要素
(e)下記の条件の下で流体の加熱を制御する制御要素
(i)前記細胞成分の本質的に定量的な分解を提供し、且つ
(ii)流体成分の本質的な沈殿、析出、変性、凝集およびゲル化を引き起こさない
(f)随意に洗浄要素、および
(g)随意に試料分析要素
を含む装置。
【請求項30】
流体加工路が、加熱可能な流路を含み、好ましくは約0.1〜0.8mmの内径を有することを特徴とする、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
加熱要素が、誘導加熱要素、対流加熱要素、抵抗加熱要素および/またはレーザー励起による加熱要素であることを特徴とする、請求項29あるいは30に記載の装置。
【請求項32】
流体加工路の加熱可能な部分が、装置と一体の部分であることを特徴とする、請求項29から31までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項33】
流体加工路の加熱可能な部分が、着脱可能に装置に取り付けられていることを特徴とする、請求項29から31までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項34】
制御要素が、流体加工路の加熱可能な部分の加熱強度および/または加熱時間および/または流速の制御に適合されていることを特徴とする、請求項29から33までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項35】
洗浄要素が、予め決められた回数の生物流体加工サイクルの後、流体加工路あるいはその一部分を洗浄流体で洗浄することに適合されていることを特徴とする、請求項29から34までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項36】
洗浄流体が、アルカリ性の次亜塩素酸溶液であることを特徴とする、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
洗浄工程を、加熱した洗浄流体で実施することを特徴とする、請求項35あるいは36に記載の装置。
【請求項38】
洗浄要素が、洗浄工程の後、流体加工路あるいはその一部分内の生物材料の存在をモニターすることに適合されていることを特徴とする、請求項29から37までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項39】
モニターが、生物材料の測光検知を含むことを特徴とする、請求項38に記載の装置。
【請求項40】
試料分析要素が、クロマトグラフィー要素、例えばHPLC要素、抽出要素、例えば固相抽出(SPE)要素、分光要素、例えば質量分析あるいはNMR要素、分光器的要素、酵素および/または免疫学的要素および/またはハイブリダイゼーション評価要素を含むことを特徴とする、請求項29から39までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項41】
装置が、データを転送および/またはリモートコントロールユニットからのデータを受け取ることのできるプロセッサユニットを含むことを特徴とする、請求項29から40までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項42】
リモートコントロールユニットが、装置内で流体の加工を許可するように適合されていることを特徴とする、請求項41に記載の装置。

【公表番号】特表2009−541759(P2009−541759A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517023(P2009−517023)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005849
【国際公開番号】WO2008/003451
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(598149507)ゼボ ゲゼルシャフト ミット ベシユレンクテル ハフツング (1)
【氏名又は名称原語表記】SeBo GmbH
【住所又は居所原語表記】Oppertsweg6,D−64711 Erbach,B.R.Deutschland
【Fターム(参考)】