説明

分析用カートリッジ及び吸光度測定装置

【課題】未使用時には分離カラムの性能を維持することができ、使用時には簡易な操作により測定試料を分離カラムで分離することができる。
【解決手段】分析用カートリッジ10は、未使用時には操作プレート50が第1の位置に位置決めされ、流入通路28から分離カラム29、流出通路30を経て廃液口16aの手前まで溶離液Aで充填された状態が維持されるため、分離カラム29は乾燥することなく本来の性能を維持することができる。一方、使用時には、操作プレート50が第2の位置に位置決めされ、血液保持穴52に保持された血液を分離カラム29へ導入可能な状態となる。また、廃液口16aを開放し第1及び第2シリンダ21,22の供給口21a,22aをすべて開放し溶離液A,Bを流入通路28から分離カラム29、流出通路30を経て廃液タンク16に至るようにするため、血液に含まれる成分の分離が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定試料の分析に利用される分析用カートリッジ及びそれに適した吸光度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、病院の検査施設や検査センタなどでは、血液を測定試料としその中に含まれる特定成分を液体クロマトグラフィ(以下「LC」という)装置を用いて測定している。例えば、特許文献1では、糖尿病の長期コントロールの指標となるグリコヘモグロビンを分析するLC装置が開示されている。このLC装置は、2つのボトルに貯蔵された溶離液A,Bが送液ポンプによって吸引され、脱気装置や溶離液切替バルブ、溶離液混合用のマニホルドを介して送液ポンプに吸引される。送液ポンプを通過した溶離液A,Bの混合液は、試料導入部から導入された血液試料と共に分離カラムへ導入される。そして、カラムの下流側に配置された分光光度計によりグリコヘモグロビンの検出を行う。
【特許文献1】特開2001−74721
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
こうしたLC装置は大がかりなシステムであるため、診療や看護の現場で医療スタッフが実施するポイント・オブ・ケア・テスト(Point−of−Care Testing,POCT)には適さない。一方、POCTを考慮したグリコヘモグロビンの検出装置としては、例えばバイエル社のDCA2000のように、分析用カートリッジを吸光度測定システムにセットして使用するものが知られている。しかし、DCA2000はLC法を採用したものではないため、LC法を採用した簡易式の分析用カートリッジの開発が望まれている。LC法を採用した簡易式の分析用カートリッジを開発するにあたっては、未使用時に分離カラムの性能が劣化しないようにすることや、使用時に簡易な操作により測定試料を分離カラムへ導入することが要求される。
【0004】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、未使用時には分離カラムの性能を維持することができ、使用時には簡易な操作により測定試料を分離カラムで分離することができる分析用カートリッジを提供することを目的の一つとする。また、そのような分析用カートリッジを用いたLC分析を実施可能な吸光度測定装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の目的の少なくとも一つを達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の分析用カートリッジは、
分離カラムと、
該分離カラムへ供給する液体を貯蔵する1以上のシリンダと、
前記1以上のシリンダの供給口から供給される液体を前記分離カラムの入口へ案内する流入通路と、
前記分離カラムの出口から流出した液体を廃液口へ案内する流出通路と、
前記流出通路の一部をなすように設けられ液体中の成分検出を外部検出装置により実施可能な検出通路と、
測定試料を保持可能な試料保持部を有し、未使用時には、前記試料保持部を前記流入通路から外れた位置に配置すると共に前記廃液口を閉鎖し前記1以上のシリンダの供給口の開閉を所定の開閉状態にすることにより前記流入通路から前記分離カラム、前記流出通路を経て前記廃液口の手前まで所定の液体で充填された状態が維持されるようにする第1の位置に位置決めされ、使用時には、前記試料保持部を前記流入通路に適合する位置に配置すると共に前記廃液口を開放し前記1以上のシリンダの供給口の少なくとも1つを開放することにより該供給口の開放されたシリンダから前記流入通路へ供給される液体を前記流入通路から前記分離カラム、前記流出通路を経て前記廃液口に至るようにする第2の位置に位置決めされる操作プレートと、
を備えたものである。
【0007】
本発明の分析用カートリッジは、未使用時には、操作プレートを第1の位置に位置決めする。すると、試料保持部は流入通路から外れた位置に配置される。また、廃液口を閉鎖し1以上のシリンダの供給口の開閉を所定の開閉状態にすることにより、流入通路から分離カラム、流出通路を経て廃液口の手前まで所定の液体で充填された状態が維持される。したがって、未使用時には分離カラムは乾燥することなく所定の液体に浸されていることから本来の性能を維持することができる。一方、使用時には、試料保持部に測定試料を保持させた状態で操作プレートを第2の位置に位置決めする。すると、試料保持部は流入通路に適合する位置に配置されるため、測定試料を分離カラムへ導入可能な状態となる。また、廃液口を開放し前記1以上のシリンダの供給口の少なくとも1つを開放して該供給口の開放されたシリンダから流入通路へ供給される液体を流入通路から分離カラム、流出通路を経て廃液口に至るようにするため、測定試料に含まれる成分の分離が可能となる。このように本発明によれば、LC法を採用した簡易式の分析用カートリッジを提供することができる。また、未使用時には分離カラムの性能を維持することができ、使用時には操作プレートを第1の位置から第2の位置に切り替えるという簡易な操作により測定試料を分離カラムで分離することが可能となる。
【0008】
本発明の分析用カートリッジにおいて、前記分離カラムの排出口又は前記流出通路を開閉することにより、前記廃液口を開閉してもよい。分離カラムの排出口から廃液口までは流出通路によって繋がっているため、分離カラムの排出口又は流出通路を開閉すれば結果的に廃液口を開閉することになる。なお、分離カラムの排出口を開閉する場合には廃液口の手前とは分離カラムの排出口を意味し、流出通路を開閉する場合には廃液口の手前とは流出通路を意味する。
【0009】
本発明の分析用カートリッジにおいて、前記操作プレートは、第1の位置に位置決めされたときには、前記1以上のシリンダの供給口をすべて閉鎖してもよい。こうすれば、流入通路から分離カラムを経て廃液口の手前までは閉じた系になるため、そこに充填されている液体とシリンダに貯蔵されている液体とが混ざり合うことがない。また、閉じた系に充填される液体はいずれかのシリンダに貯蔵されている液体と同じ組成にしてもよいが、異なる組成にしてもよい。
【0010】
本発明の分析用カートリッジにおいて、前記操作プレートは、第1の位置に位置決めされたときには、前記1以上のシリンダのうちの1つの供給口又は前記1以上のシリンダのうち同じ組成の液体を貯蔵するシリンダの供給口を開放し残りのシリンダの供給口を閉鎖してもよい。こうすれば、供給口が開放されたシリンダから流入通路及び分離カラムを経て廃液口の手前までは閉じた系となるため、そこに充填されている液体と供給口が閉鎖されているシリンダに貯蔵されている液体とが混ざり合うことがない。なお、この場合には、閉じた系に充填される液体は、供給口が開放されたシリンダに貯蔵されている液体と同じものとなる。また、シリンダが1つのときには、その供給口を開放することになる。
【0011】
本発明の分析用カートリッジにおいて、前記操作プレートは、前記第2の位置に位置決めされたときには、前記試料保持部を前記1以上のシリンダのうちの一つのシリンダの供給口に合致させると共に前記廃液口及び前記1以上のシリンダのすべての供給口を開放してもよい。こうすれば、各シリンダに貯蔵されている液体を所望の比率で混ぜ合わせて分離カラムの入口へ供給することができる。
【0012】
本発明の分析用カートリッジにおいて、前記シリンダを1つ備え、該シリンダは、液密に摺動可能な複数の可動隔壁により複数の部屋に分けられ、該複数の部屋にはそれぞれ組成の異なる液体が貯蔵され、使用時に最末端の可動隔壁が該シリンダの先端に向かって押圧されると前記複数の可動隔壁のうち先端側の可動隔壁が該シリンダの先端面に順次到達しそのたびに前記供給口に面する部屋が変わるように構成されていてもよい。こうすれば、複数のシリンダに別々の組成の液体を貯蔵し各液体を所望の比率で混ぜ合わせる必要がない。
【0013】
本発明の分析用カートリッジは、前記測定試料を希釈する液体を貯蔵する希釈タンクを備え、前記操作プレートは、前記第1の位置と前記第2の位置との間の中間位置に位置決め可能であり、前記希釈タンクは、前記操作プレートが前記中間位置に位置決めされたときに前記試料保持部が該希釈タンクの内部に配置されるように設けられていてもよい。こうすれば、測定試料を希釈して分離カラムに供給することができる。なお、希釈の具体的な手法としては、試料保持部が希釈タンクの内部に配置された状態で手動による振幅撹拌を行ってもよいし、超音波振動子による振動撹拌を行ってもよい。
【0014】
本発明の分析用カートリッジは、外部に通じる内外連通路を備え、前記操作プレートは、前記第1の位置に位置決めされているときには前記試料保持部が前記内外連通路の一部を形成してもよい。こうすれば、操作プレートが第1の位置に位置決めされているときには外部から内外連通路を介して測定試料を試料保持部に保持させることができる。この態様を採用した本発明の分析用カートリッジにおいて、前記内外連通路は、外部に液状の測定試料を付着させることにより毛細管現象を利用して前記試料保持部に前記測定試料を導入可能な通路としてもよい。こうすれば、液状の測定試料を容易に試料保持部に保持させることができる。
【0015】
本発明の分析用カートリッジは、前記操作プレートが脱落するのを防止する脱落防止機構を備えていてもよい。こうすれば、オペレータの操作ミスにより操作プレートが分析用カートリッジから外れてしまうおそれがない。この態様を採用した本発明の分析用カートリッジにおいて、前記脱落防止機構は、前記操作プレートに設けられた係止部と、前記操作プレートが前記第1の位置と前記第2の位置との区間を外れて脱落する方向に移動したときに前記係止部と係止して該操作プレートが移動するのを規制する被係止部と、を含んでなるものとしてもよい。こうすれば、比較的簡単な構成で操作プレートの脱落を防止することができる。
【0016】
本発明の分析用カートリッジは、前記分離カラムの出口から流出した液体を前記廃液口を介して受け入れる廃液タンクを備えていてもよい。こうすれば、分析用カートリッジとは別に廃液タンクを用意する必要がない。この態様を採用した本発明の分析用カートリッジにおいて、前記1以上のシリンダは、前記廃液タンクに収容されていてもよい。こうすれば、廃液タンクと1以上のシリンダとを別々に設ける場合に比べて、分析用カートリッジ全体をコンパクト化することができる。このとき、前記流出通路は、前記検出通路の下流側が前記分離カラムと立体交差するように形成されていてもよい。こうすれば、一層コンパクトにすることができる。
【0017】
本発明の分析用カートリッジにおいて、前記シリンダは、複数個が互いに略平行になるように並べられ、前記分離カラムは、軸方向が前記複数個のシリンダの軸方向と略直交するように且つ前記複数個のシリンダの供給口と対向するように配置されていてもよい。こうすれば、複数個のシリンダや分離カラムを無駄なくレイアウトすることができるため、分析用カートリッジ全体をコンパクト化することができる。この態様を採用した本発明の分析用カートリッジにおいて、前記検出通路は、前記分離カラムのうち前記複数個のシリンダが配置されている側とは反対側で該分離カラムの軸方向と略平行になるように形成されていてもよい。こうすれば、検出通路を含めてコンパクト化することができる。なお、本発明の分析用カートリッジにおけるシリンダや分離カラムのレイアウトは、これに限定されるものではない。
【0018】
本発明の分析用カートリッジにおいて、前記流入通路は、少なくとも一部に乱流混合部又は分流合流混合部が形成されていてもよい。こうすれば、シリンダの供給口から供給される液体を十分に混合したのちに分離カラムへ案内することができるため、分析精度が向上する。なお、本発明の分析用カートリッジは、測定試料の分析に1回使用したあと廃棄するようにしてもよい。
【0019】
本発明の吸光度測定装置は、
上述したいずれかの分析用カートリッジを設置可能な設置部と、
前記設置部に設置された前記分析用カートリッジの前記1以上のシリンダの液体を独立して押圧可能な押圧機構と、
前記検出通路の一方に配置された発光素子と該検出通路の他方に配置された受光素子とを含んで構成され、前記発光素子から発射した光を前記検出通路に入射させ該検出通路を通過したあとの光を前記受光素子で受ける検出器と、
を備えたものである。
【0020】
この吸光度測定装置では、まず、設置部に分析用カートリッジを設置する。分析用カートリッジは、設置部に設置される前に、試料保持部に測定試料が保持された操作プレートを第2の位置に位置決めしておいてもよいし、設置部に設置された後に、操作プレートを第1の位置から第2の位置に位置決めしてもよい。操作プレートが第2の位置に位置決めされた状態では、測定試料は分離カラムへ流入し得る状態であり、分離カラムを通過したあとの液体は廃液タンクに流出し得る状態である。続いて、押圧機構により分析用カートリッジのシリンダの押圧力を個別に調節することにより、分離カラムへ供給する液組成を所望の組成にすることができる。また、分離カラムを通過したあと検出通路を通過する液体を検出器により検出して吸光度を測定することができる。このように、本発明の吸光度測定装置によれば、上述したいずれかの分析用カートリッジを用いたLC分析を容易に実施することができる。
【0021】
なお、押圧機構は、例えば、シリンダに挿入されるピストンロッドと、このピストンロッドをシリンダの軸方向に移動させるアクチュエータ(例えばモータやエア圧シリンダ、油圧シリンダなど)とで構成されていてもよい。また、検出器は、発光素子としてのLEDと、受光素子としてのフォトトランジスタとで構成されていてもよい。
【0022】
本発明の吸光度測定装置において、前記検出器は、前記発光素子と前記検出通路との間に該発光素子の光を拡散する拡散板又は反射光の影響を抑制する偏光板の少なくとも一方を含んで構成されていてもよい。拡散板を用いた場合には、例えば発光素子がLEDのように輝度斑があるものを採用したとしても照度分布を均一にすることができる。また、偏光板を用いた場合には、反射光などの影響を抑制することができる。したがって、いずれの場合も吸光度測定を精度よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態である分析用カートリッジ10の正面図、図2は分析用カートリッジ10の平面図、図3は操作プレート50が第1の位置に位置決めされているときのシリンダユニット12の斜視図、図4はカラムユニット24の斜視図、図5及び図6はそれぞれ操作プレート50が第1の位置に位置決めされているときの図1のA−A断面図及び操作ユニット40の斜視図である。
【0024】
分析用カートリッジ10は、略直方体形状のボディ14の一方の端面の上下にそれぞれ突出板部14a,14bを有するシリンダユニット12と、このシリンダユニット12の一対の突出板部14a,14bの間に挿入されシリンダユニット12と一体化されるカラムユニット24と、このカラムユニット24とシリンダユニット12との間に配置される操作ユニット40とを備えている。本実施形態では、分析用カートリッジ10は、糖尿病の診断を行うことを目的とするものであり、測定試料である血液から安定型グリコヘモグロビンと不安定型グリコヘモグロビンとヘモグロビンとを分離してそれぞれの吸光度を測定する際に用いられるものである。この分析用カートリッジ10は、いわゆる使い捨てタイプであり、測定試料の分析に1回使用したあと廃棄される。また、分析用カートリッジ10の全体の大きさは、幅(W)約20mm、奥行き(D)約55mm、高さ(H)約10mmである。
【0025】
シリンダユニット12は、透明アクリル樹脂製のものであり、ボディ14の内部をくり抜いた形状の廃液タンク16と、この廃液タンク16の内部に略平行に並べられた第1及び第2シリンダ21,22とを有している。廃液タンク16は、ボディ14の端面を貫通する廃液口16aを介して分離カラム29を通過してきた廃液を受け入れるものであり、未使用時には空気で満たされている。この廃液タンク16の上面には、空気抜きの穴18が設けられている。この空気抜きの穴18は、疎水性の多孔質膜で覆われているため、気体は通過できるが液体は通過できない。第1シリンダ21は、ボディ14の端面を貫通する第1供給口21aを介して分離カラム29の入口に繋がる流入通路28に接続され、第2シリンダ22は、ボディ14の端面を貫通する第2供給口22aを介して流入通路28に接続されている。また、第1シリンダ21は、溶離液Aが貯蔵された状態で後端がゴムパッキン21bにより液密に封鎖され、第2シリンダ22は、溶離液Bが貯蔵された状態で後端がゴムパッキン22bにより液密に封鎖されている。なお、溶離液A,Bは塩濃度の異なる液体である。ボディ14の端面には、廃液口16aとは別に、毛細通路36の廃液タンク16側の開口である通気口19が設けられている。
【0026】
カラムユニット24は、透明アクリル樹脂製のものであり、カチオン交換性シリカモノリスディスク(以下「ディスクM」という)と疎水性シリカモノリスディスク(以下「ディスクO」という)とを複数枚積層し熱収縮チューブに充填した分離カラム29を保持するカラム保持部26と、第1及び第2シリンダ21,22の各供給口21a,22aから供給される液体を集合させて分離カラム29の入口へ案内する流入通路28と、分離カラム29の出口から流出した液体を廃液口16aへ案内する流出通路30とを有している。このうち、カラム保持部26は、分離カラム29の軸方向が第1及び第2シリンダ21,22の軸方向と略直交するように且つこれらのシリンダ21,22の供給口21a,22aと対向するように配置されている。また、カラム保持部26に保持されている分離カラム29は、内径3.2mm×厚さ2mmのディスクM及びディスクOをMMMOOOとなるように積層したものであり、分離カラム29の入口側を押圧するゴム栓34により液密に保持されている。ディスクMの平均細孔径は0.5〜5μm、好ましくは1〜2.3μmであり、ディスクOの平均細孔径は1〜5μm、好ましくは2〜4.2μmである。なお、分離カラム29はこれに限られるものではなく、測定試料などに応じて適宜選択すればよい。流入通路28は、第2シリンダ22の供給口22aから下方に延びたあと分離カラム29の軸方向に沿って第1シリンダ21の供給口21aの下方に至りそこから上方に延びて、第1シリンダ21の供給口21aから分離カラム29の入口に至る通路に合流するように形成されている。流出通路30は、分離カラム29からシリンダユニット12と反対側に延びたあと分離カラム29の軸方向に沿って延びその後分離カラム29と立体交差して廃液口16aに繋がるように形成されている。この流出通路30は、分離カラム29と立体交差したあと廃液口16aに至る部分で流入通路28とも立体交差している。また、流出通路30のうち分離カラム29の軸方向に沿って延びている部分が検出通路32となっており、この検出通路32の周壁は黒色のアクリル樹脂で形成されている。検出通路32は、液体中の成分検出を外部検出装置である吸光度測定装置60(図9参照)により実施可能であるが、この点については後述する。カラムユニット24には、操作ユニット40を介してシリンダユニット12の通気口19に連通するL字通路27が形成されている。このL字通路27は、毛細通路36の一部をなすものであり、カラムユニット24の側面で外部に開口している。
【0027】
操作ユニット40は、シリンダユニット12とカラムユニット24との間に挟み込まれたプレートホルダ42と、このプレートホルダ42のスリットに挿入されオペレータによって操作される操作プレート50とを備えている。プレートホルダ42は、シリコーンゴムなどの軟質ゴム製であり、二枚の壁部材を隙間ができるように接着したものであり、この隙間が操作プレート50を保持するスリットとなっている。このプレートホルダ42を構成する二枚の壁部材には、シリンダユニット12に設けられた通気口19とカラムユニット24に設けられたL字通路27とを連通可能な毛細通路連通穴44、第1シリンダ21の供給口21aと流入通路28とを連通する第1シリンダ連通穴45、廃液タンク16の廃液口16aと流出通路30とを連通する廃液口連通穴46、第2シリンダ22の供給口22aと流入通路28とを連通する第2シリンダ連通穴47がこの順に並んで設けられている。操作プレート50は、ポリエステルやポリエチレンなどの合成樹脂製であり、下部中央に長方形状の凹部51を有している。また、操作プレート50には、測定試料である血液を保持する血液保持穴52のほか、オペレータの操作によって第1シリンダ連通穴45と連通するか廃液口連通穴46と連通するかが切り替わる第1貫通穴54、オペレータの操作によって第2シリンダ連通穴47と連通するかしないかが切り替わる第2貫通穴56が設けられている。プレートホルダ42のスリットの出口付近には、操作プレート50の凹部51の奥の垂直エッジ51aと手前の垂直エッジ51bに係止可能なストッパ58が設けられている。なお、プレートホルダ42は疎水性の軟質ゴム製のため、各穴の接続部分において液密が維持される。ここで、プレートホルダ42の各穴の内面は親水性であることが好ましいが、疎水性でも構わない。また、操作プレート50は、表面が疎水性だが血液保持穴52の内面は親水性(例えば親水性材料によりコーティングされている)である。
【0028】
次に、このように構成された本実施形態の分析用カートリッジ10の使用例について説明する。まず、分析用カートリッジ10が未使用のときについて、図5及び図6に基づいて説明する。分析用カートリッジ10が未使用のときには、操作プレート50はプレートホルダ42のスリットに押し込まれており、操作プレート50の凹部51をなす手前の垂直エッジ51bとストッパ58とが係止してそれ以上操作プレート50が奥に押し込まれるのが阻止されている。このときの操作プレート50の位置を第1の位置という。第1の位置では、プレートホルダ42の毛細通路連通穴44と操作プレート50の血液保持穴52とが連通するため、シリンダユニット12の通気口19とカラムユニット24のL字通路27とが連通してこれらが全体として毛細通路36を構成している。また、プレートホルダ42の第1シリンダ連通穴45と操作プレート50の第1貫通穴54とが連通するため、シリンダユニット12の第1シリンダ21の供給口21aとカラムユニット24の流入通路28とが連通している。一方、操作プレート50の第2貫通穴56はプレートホルダ42の廃液口連通穴46と第2シリンダ連通穴47との中間に位置しているため、廃液口16aと流出通路30は操作プレート50により遮断され、第2シリンダ22の供給口22aと流入通路28も操作プレート50により遮断されている。そして、第1シリンダ21には溶離液Aが目一杯充填されているが、第1シリンダ21の供給口21aは流入通路28に連通し廃液口16aは流出通路30と遮断されているため、流入通路28から分離カラム29、流出通路30経て廃液口16aの手前まで溶離液Aで充填された状態となっている。また、第2シリンダ22には溶離液Bが目一杯充填されているが、第2シリンダ22の供給口22aは流入通路28と遮断されているため、溶離液Bは第2シリンダ22の中だけに存在している。更に、廃液口16aは流出通路30と遮断されているため、廃液タンク16は空気で満たされている。そして、毛細通路36は廃液タンク16と外部とを連通している。
【0029】
このように分析用カートリッジ10が未使用のときに、糖尿病の簡易検査を受ける患者は細い針を指先に軽く刺して僅かに出血させたあとその出血した指を毛細通路36の入口に押し当てる。すると、血液は毛細管現象により毛細通路36に導入される。オペレータはもともと透明な毛細通路36が赤い血液で満たされたことを目視することにより、毛細通路36に血液が充填されたことを確認することができる。ここで、操作プレート50の血液保持穴52は毛細通路36の一部をなしているため、血液保持穴52に血液が保持されることになる。また、血液保持穴52は親水性材料でコーティングされているため、隙間なく血液を保持する。
【0030】
続いて、分析用カートリッジ10を未使用状態から使用状態に切り替える。すなわち、オペレータは操作プレート50を手前に引く。すると、ストッパ58は、操作プレート50の凹部51をなす奥の垂直エッジ51aと係止してそれ以上操作プレート50が引き出されるのを阻止する。このときの操作プレート50の位置を第2の位置という。図7及び図8はそれぞれ操作プレート50が第2の位置に位置決めされているときの図1のA−A断面図及び操作ユニット40の斜視図である。第2の位置では、操作プレート50の血液を保持している血液保持穴52とプレートホルダ42の第1シリンダ連通穴45とが連通するため、第1シリンダ21の供給口21aと流入通路28とが連通し、血液保持穴52に保持されている血液を溶離液Aと共に流入通路28へ導入可能となる。また、プレートホルダ42の廃液口連通穴46と操作プレート50の第1貫通穴54とが連通するため、分離カラム29を通過した廃液を流出通路30から廃液タンク16へ排出可能となる。更に、プレートホルダ42の第2シリンダ連通穴47と操作プレート50の第2貫通穴56とが連通するため、第2シリンダ22内の溶離液Bを流入通路28へ導入可能となる。
【0031】
このように使用状態に切り替えたあとの分析用カートリッジ10を吸光度測定装置60のカートリッジ設置部60aにセットする。図9は分析用カートリッジ10をセットした吸光度測定装置60の概略構成図である。吸光度測定装置60は、第1ステッピングモータ61で第1ピストンロッド61aを動かすことにより第1シリンダ21の溶離液Aをゴムパッキン21bを介して押圧し、これとは独立して第2ステッピングモータ62で第2ピストンロッド62aを動かすことにより第2シリンダ22の溶離液Bをゴムパッキン22bを介して押圧する。そして、周知のマイクロコンピュータを内蔵するコントローラ63が第1及び第2ステッピングモータ61,62を駆動制御して溶離液Aの押圧力と溶離液Bの押圧力を調節することにより、分離カラム29へ供給される液組成を所望の組成に設定することができる。一方、分離カラム29を通過した液体は検出通路32を通過する。発光素子であるLED光源64からの光のうち、ダイクロミックミラー76を通過した光は、レンズ65、拡散板66及び偏光板67を経て検出通路32に入り、検出通路32を通過したあとレンズ68を介して受光素子である測定用フォトトランジスタ69に入る。一方、ダイクロミックミラー76で反射された光は、輝度調整用フォトトランジスタ78に入る。測定用フォトトランジスタ69や輝度調整用トランジスタ78に入った光は検波回路70で検波され、検波後のアナログ信号がA/D変換回路72でディジタル信号に変換されてコントローラ63へ入力される。コントローラ63は、輝度調整用フォトトランジスタ78から検波回路70及びA/D変換回路72を介して得られたディジタル信号に基づいて輝度を求め、LED光源64の輝度が均一になるようLED光源64の電流をフィードバック制御する。また、コントローラ63は、LED光源64の点灯、消灯を繰り返すように点灯回路74を制御すると共に、測定用フォトトランジスタ69から検波回路70及びA/D変換回路72を介して得られたディジタル信号に基づいてLED光源64の点灯時と消灯時の差分を求め、その差分に基づいてLCの保持時間と吸光度との関係を表すグラフを図示しないディスプレイ又はプリンタに出力する。このような同期検波を行うことにより、吸光度測定を暗箱の中ではなく蛍光灯の下でも実施可能となる。ここで、吸光度測定条件の一例を表1に示す。表1の吸光度測定条件を採用することにより、安定型グリコヘモグロビンと不安定グリコヘモグロビンとヘモグロビンの各ピークを分離することができ、糖尿病の簡易な検査を行うことができる。
【0032】
【表1】

【0033】
以上詳述した本実施形態によれば、LC法を採用した簡易式の分析用カートリッジ10を提供することができる。また、分析用カートリッジ10は、未使用時には分離カラム29の性能を維持することができ、使用時には操作プレート50を第1の位置から第2の位置に切り替えるという簡易な操作により血液を分離カラム29で分離することが可能となる。すなわち、未使用時には操作プレート50が第1の位置に位置決めされ、流入通路28から分離カラム29、流出通路30を経て廃液口16aの手前まで溶離液Aで充填された状態が維持されるため、分離カラム29は乾燥することなく本来の性能を維持することができる。一方、使用時には、操作プレート50が第2の位置に位置決めされ、血液保持穴52に保持された血液を分離カラム29へ導入可能な状態となる。また、廃液口16aを開放し第1及び第2シリンダ21,22の供給口21a,22aをすべて開放し溶離液A,Bを流入通路28から分離カラム29、流出通路30を経て廃液タンク16に至るようにするため、血液に含まれる成分の分離が可能となる。更に、第1及び第2シリンダ21,22に貯蔵された溶離液A,Bを押圧する力を個別に調節することにより溶離液A,Bを所望の比率で混ぜ合わせて分離カラム29の入口へ供給することができる。
【0034】
また、分析用カートリッジ10は廃液タンク16を内蔵しているため、分析用カートリッジ10とは別に廃液タンクを用意する必要がない。更に、操作プレート50が第1の位置に位置決めされているときに、測定試料である血液を毛細通路36の外部に開口している箇所に付着させることにより、毛細管現象を利用して容易に血液を血液保持穴52に保持させることができる。更にまた、操作プレート50がプレートホルダ42から脱落するのを阻止するストッパ58が設けられているため、オペレータの操作ミスにより操作プレート50が分析用カートリッジ10から外れてしまうおそれがない。なお、操作プレート50の凹部51をなす奥の垂直エッジ51aが本発明の係止部に相当し、ストッパ58が本発明の被係止部に相当する。そしてまた、第1及び第2シリンダ21,22は、廃液タンク16の内部に収容されているため、廃液タンクとこれらのシリンダとを別々に設ける場合に比べて、分析用カートリッジ10全体をコンパクト化することができる。
【0035】
加えて、第1及び第2シリンダ21,22は、互いに略平行になるように並べられ、分離カラム29は、軸方向が第1及び第2シリンダ21,22の軸方向と略直交するように且つこれらのシリンダ21,22の供給口21a,22aと対向するように配置されているため、これらのシリンダ21,22や分離カラム29を無駄なくレイアウトすることができ、分析用カートリッジ10全体をコンパクト化することができる。また、検出通路32は、分離カラム29のうち第1及び第2シリンダ21,22が配置されている側とは反対側で該分離カラム29の軸方向と略平行になるように形成されており、しかも、流出通路30のうち検出通路32の下流側が分離カラム29と立体交差するように形成されているため、廃液タンク16や検出通路32を含めてコンパクト化することができる。
【0036】
一方、吸光度測定装置60のコントローラ63が第1及び第2ステッピングモータ61,62がピストンロッド61a,62aを押圧する押圧力を個別に押圧することにより、分離カラム29へ供給する液組成を所望の組成にすることができることから、分析用カートリッジ10を用いたLC分析を容易に実施することができる。また、LED光源64と検出通路32との間に拡散板66や偏光板67を設けているため、検出通路23への入射率や出射率の変化が小さくなり、安定した測定が可能となる。
【0037】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0038】
例えば、上述した実施形態では、操作プレート50は、第1の位置に位置決めされたときには、第1シリンダ21の供給口21aを開放し第2シリンダ22の供給口22aを閉鎖するとしたが、すべての供給口21a,22aを閉鎖してもよい。こうすれば、流入通路28から廃液口16aの手前までは閉じた系になるため、そこに充填されている液体と各シリンダ21,22に貯蔵されている溶離液A,Bとが混ざり合うことがない。また、閉じた系に充填される液体は第1及び第2シリンダ21,22に貯蔵されている溶離液A,Bの一方と同じ組成にしてもよいが、異なる組成にすることもできる。
【0039】
上述した実施形態では、血液保持穴52に保持された血液を流入通路28へ直接導入するようにしたが、図10に示すように、血液保持穴52に保持された血液を希釈する希釈液を貯蔵する希釈タンク80を毛細通路36の通気口19と第1シリンダ21の供給口21aとの間に設けてもよい。この場合、分析用カートリッジ10の使用開始直前には、操作プレート50を第1の位置と第2の位置との中間の位置に配置し、血液保持穴52に保持された血液を希釈タンク80に入れて希釈液で薄める。そして、その後、操作プレート50を第2の位置に位置決めして希釈された試料を流入通路28へ導くようにする。こうすれば、測定試料である血液を希釈して分離カラム29に供給することができる。なお、希釈タンク80は希釈液で目一杯満たしてもよいが、血液保持穴52内の血液を効率よく希釈することを考慮すると、空気と希釈液とを混在させておくことが好ましい。このとき、血液保持穴52は親水性材料でコーティングされているため、血液保持穴52に空気が混在するおそれはない。
【0040】
上述した実施形態の分析用カートリッジ10において、流入通路28の代わりに、溶離液A,Bを効率よく混合するために図11に示すように流入通路128の一部又は全部をジグザグにして乱流混合部を形成してもよい。乱流混合部としては、流入通路をジグザグに形成するほか、溶離液A,Bの混合を促す多孔質フィルタを流入流路28の途中や分離カラム29の直上に配置したり、径の太い部分と細い部分とを繰り返し形成したり、流入通路の内側に複数の突起を形成したりしてもよい。あるいは、流入通路の所定区間に小径のビーズを入れて該所定区間の両端を網などで蓋をすることにより分流合流混合部とし、ビーズに衝突した混合液が分流しその後合流するようにしてもよい。分流合流混合部としては、そのほかに特開2006−15272号公報に開示された混合器などを用いてもよい。なお、分流合流混合部では、分流後、長さの異なる流路を通って再び合流させてもよい。こうすれば、分流したあと一方が他方に比べて遅延して合流するため、より効率よく混合する。
【0041】
上述した実施形態の分析用カートリッジ10では、操作プレート50が第1の位置に位置決めされているとき、第1シリンダ21の供給口21aを開放し第2シリンダ22の供給口22a及び廃液口16aを閉鎖するようにしたが、図12(a)に示すように、第1及び第2シリンダ21,22の供給口21a,22a並びに廃液口16aを閉鎖してもよい。この場合、操作プレート50が第2の位置に位置決めされると、図12(b)に示すように、上述した実施形態と同様、操作プレート50の血液保持穴52が第1シリンダ21の供給口21aと一致して血液が流入通路28へ導入され、第1貫通穴54が廃液口16aと一致し、第2貫通穴56が第2シリンダ22の供給口22aと一致するため、第1及び第2シリンダ21,22に貯蔵された溶離液A,Bを適宜の比率で流入通路28へ導入することが可能となる。
【0042】
上述した実施形態の分析用カートリッジ10では、検出通路32を分離カラム29の軸方向に沿って形成したが、図13に示すように検出通路132を分離カラム29の軸方向と所定の傾斜角度(例えば40〜50°)をもつように形成してもよい。この場合、吸光度測定装置のLED光源64や測定用フォトトランジスタ69などを光が検出通路132を通過するように配置する。
【0043】
上述した実施形態では、2本のシリンダ21,22に別々の溶離液A,Bを貯蔵するようにしたが、図14に示すように、可動隔壁121,122及びゴムパッキン123により複数の部屋120x,120y,120zに分けられた1本のシリンダ120を用意し、各部屋120x,120y,120zに別々の溶離液X,Y,Zを貯蔵するようにしてもよい。操作プレート150は、上述した実施形態の血液保持穴52と同様の血液保持穴152のほか、第1貫通穴154と第2貫通穴156を有している。そして、操作プレート150が第1の位置に位置決めされているとき、図14(a)に示すように、血液保持穴152は毛細通路36の一部を構成し、第1貫通穴154はシリンダ120の供給口120aと連通し、第2貫通穴155は供給口120aと廃液口116aとの間に位置している。このため、流入通路28から分離カラム29、流出通路30を経て廃液口116aの手前まで、1番目の部屋120x(最先端側の部屋)に貯蔵されている溶離液Xで充填された状態となっている。なお、シリンダ120の内部から供給口120aに至る通路の入口120aaとシリンダ120の先端面との間には逃がし溝124が形成されている。この状態で毛細管現象を利用して毛細通路36に血液を導入し、操作プレート150を第2の位置に位置決めする。すると、図14(b)に示すように、血液保持穴152はシリンダ120の供給口120aと一致するため血液が流入通路28へ導入可能な状態となる。また、第1貫通穴154は供給口120aと廃液口116aとの間に位置しているが、第2貫通穴156は廃液口116aと連通するため、流出通路30は廃液タンク116と連通する。そして、この分析用カートリッジを吸光度測定装置60にセットしたあと、シリンダ120のゴムパッキン123をピストンロッドによってシリンダ120の先端に向かって押圧する。すると、図14(b)に示すように、1番目の部屋120xに貯蔵された溶離液Xが供給口120aから分離カラム29へ供給され、その後、図15(a)に示すように、可動隔壁121が入口120aaを超えると、溶離液Xが逃がし溝124を通って入口120aaに案内されると共に、2番目の部屋120yに貯蔵された溶離液Yも入口120aaから分離カラム29へ供給される。このため、可動隔壁121がシリンダ120の先端面に到達するまでの間の移動相は、溶離液Xの組成から濃度勾配をもって溶離液Yの組成へと切り替わる。その後、図15(b)に示すように、可動隔壁122が入口120aaを超えると、溶離液Yが逃がし溝124を通って入口120aaに案内されると共に、3番目の部屋120zに貯蔵された溶離液Zも入口120aaから分離カラム29へ供給される。このため、可動隔壁122がシリンダ120の先端面に到達するまでの間の移動相は、溶離液Yの組成から濃度勾配をもって溶離液Zの組成へと切り替わる。その後、図15(c)に示すように、ゴムパッキン123がシリンダ120の先端面に到達すると、溶離液が空になる。このように、先端側の可動隔壁から順にシリンダ120の先端面に到達しそのたびに供給口120aに接続される部屋が切り替わり、異なる溶離液が分離カラム29へ供給されるので、複数のシリンダに別々の組成の液体を貯蔵し各液体を所望の比率で混ぜ合わせる必要がない。
【0044】
上述した実施形態では、分析用カートリッジ50の大きさを幅(W)約20mm、奥行き(D)約55mm、高さ(H)約10mmという非常にコンパクトなサイズとしたが、特にこのサイズに限定されるものではなく、例えばこれの2倍や3倍の大きさとしてもよいし、更に大きなサイズとしてもよい。また、使用する分離カラム29の種類やサイズ、溶離液は測定試料に応じて適宜決定すればよい。
【0045】
上述した実施形態では、廃液タンク16を分析用カートリッジ10に内蔵するものとしたが、廃液タンク16を分析用カートリッジ10に外付けにしてもよい。
【0046】
上述した実施形態では、操作プレート50の凹部51をなす手前の垂直エッジ51bとストッパ58とが係止してそれ以上操作プレート50が奥に押し込まれるのを阻止するものとしたが、操作プレート50が第2の位置に位置決めされた状態では操作プレート50の先端(奥の端部)がボディ14の壁に突き当たることによりそれ以上奥に押し込まれるのを阻止するようにしてもよい。この場合、垂直エッジ51bは省略しても構わない。
【0047】
上述した実施形態では、操作プレート50により廃液口16aを開閉するようにしたが、分析用カートリッジの構造によっては、操作プレート50により分離カラム29の排出口や流出通路30を開閉することにより、廃液口16aを開閉してもよい。分離カラム29の排出口から廃液口16aまでは流出通路30によって繋がっているため、分離カラム29の排出口を開閉したり流出通路30を開閉したりすれば、結果的に廃液口16aを開閉することになる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】分析用カートリッジ10の正面図。
【図2】分析用カートリッジ10の平面図。
【図3】操作プレート50が第1の位置に位置決めされているときのシリンダユニット12の斜視図。
【図4】カラムユニット24の斜視図。
【図5】操作プレート50が第1の位置に位置決めされているときの図1のA−A断面図。
【図6】操作プレート50が第1の位置に位置決めされているときの操作ユニット40の斜視図。
【図7】操作プレート50が第2の位置に位置決めされているときの図1のA−A断面図。
【図8】操作プレート50が第2の位置に位置決めされているときの操作ユニット40の斜視図。
【図9】分析用カートリッジ10をセットした吸光度測定装置60の概略構成図。
【図10】他の実施形態の分析用カートリッジの断面図。
【図11】他の実施形態のカラムユニットの断面図。
【図12】他の実施形態の第1の位置及び第2の位置の説明図。
【図13】他の実施形態の分析用カートリッジをセットした吸光度測定装置の説明図。
【図14】他の実施形態の動作説明図(その1)。
【図15】他の実施形態の動作説明図(その2)。
【符号の説明】
【0049】
10 分析用カートリッジ、12 シリンダユニット、14 ボディ、14a,14b 突出板部、16 廃液タンク、16a 廃液口、18 空気抜きの穴、19 通気口、21 第1シリンダ、21a 供給口、21b ゴムパッキン、22 第2シリンダ、22a 供給口、22b ゴムパッキン、24 カラムユニット、26 カラム保持部、27 L字通路、28 流入通路、29 分離カラム、30 流出通路、32 検出通路、34 ゴム栓、36 毛細通路、40 操作ユニット、42 プレートホルダ、44 毛細通路連通穴、45 第1シリンダ連通穴、46 廃液口連通穴、47 第2シリンダ連通穴、50 操作プレート、51 凹部、51a 垂直エッジ、51b 垂直エッジ、52 血液保持穴、54 貫通穴、56 貫通穴、58 ストッパ、60 吸光度測定装置、61 第1ステッピングモータ、61a 第1ピストンロッド、62 第2ステッピングモータ、62a 第2ピストンロッド、63 コントローラ、64 LED光源、65 レンズ、66 拡散板、67 偏光板、68 レンズ、69 測定用フォトトランジスタ、フォトトランジスタ、70 検波回路、72 A/D変換回路、74 点灯回路、76 ダイクロミックミラー、78 輝度調整用フォトトランジスタ、80 希釈タンク、116 廃液タンク、116a 廃液口、120 シリンダ、120a 供給口、120x,120y,120z 部屋、121 可動隔壁、122 可動隔壁、123 ゴムパッキン、128 流入通路、132 検出通路、150 操作プレート、152 血液保持穴、154貫通穴、155 貫通穴、156 貫通穴、X,Y,Z 溶離液。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離カラムと、
該分離カラムへ供給する液体を貯蔵する1以上のシリンダと、
前記1以上のシリンダの供給口から供給される液体を前記分離カラムの入口へ案内する流入通路と、
前記分離カラムの出口から流出した液体を廃液口へ案内する流出通路と、
前記流出通路の一部をなすように設けられ液体中の成分検出を外部検出装置により実施可能な検出通路と、
測定試料を保持可能な試料保持部を有し、未使用時には、前記試料保持部を前記流入通路から外れた位置に配置すると共に前記廃液口を閉鎖し前記1以上のシリンダの供給口の開閉を所定の開閉状態にすることにより前記流入通路から前記分離カラム、前記流出通路を経て前記廃液口の手前まで所定の液体で充填された状態が維持されるようにする第1の位置に位置決めされ、使用時には、前記試料保持部を前記流入通路に適合する位置に配置すると共に前記廃液口を開放し前記1以上のシリンダの供給口の少なくとも1つを開放することにより該供給口の開放されたシリンダから前記流入通路へ供給される液体を前記流入通路から前記分離カラム、前記流出通路を経て前記廃液口に至るようにする第2の位置に位置決めされる操作プレートと、
を備えた分析用カートリッジ。
【請求項2】
前記操作プレートは、第1の位置に位置決めされたときには、前記1以上のシリンダの供給口をすべて閉鎖する、
請求項1に記載の分析用カートリッジ。
【請求項3】
前記操作プレートは、第1の位置に位置決めされたときには、前記1以上のシリンダのうちの1つの供給口又は前記1以上のシリンダのうち同じ組成の液体を貯蔵するシリンダの供給口を開放し残りのシリンダの供給口を閉鎖する、
請求項1に記載の分析用カートリッジ。
【請求項4】
前記操作プレートは、前記第2の位置に位置決めされたときには、前記試料保持部を前記1以上のシリンダのうちの一つのシリンダの供給口に合致させると共に前記廃液口及び前記1以上のシリンダのすべての供給口を開放する、
請求項1〜3のいずれかに記載の分析用カートリッジ。
【請求項5】
前記シリンダは、1つだけ備えられ、液密に摺動可能な複数の可動隔壁により複数の部屋に分けられ、該複数の部屋にはそれぞれ組成の異なる液体が貯蔵され、使用時に最末端の可動隔壁が該シリンダの先端に向かって押圧されると前記複数の可動隔壁のうち先端側の可動隔壁が該シリンダの先端面に順次到達しそのたびに前記供給口に面する部屋が変わるように構成されている、
請求項1〜4のいずれかに記載の分析用カートリッジ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の分析用カートリッジであって、
前記測定試料を希釈する液体を貯蔵する希釈タンクを備え、
前記操作プレートは、前記第1の位置と前記第2の位置との間の中間位置に位置決め可能であり、
前記希釈タンクは、前記操作プレートが前記中間位置に位置決めされたときに前記試料保持部が該希釈タンクの内部に配置されるように設けられている、
分析用カートリッジ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の分析用カートリッジであって、
外部に通じる内外連通路を備え、
前記操作プレートは、前記第1の位置に位置決めされているときには前記試料保持部が前記内外連通路の一部を形成する、
分析用カートリッジ。
【請求項8】
前記内外連通路は、外部に液状の測定試料を付着させることにより毛細管現象を利用して前記試料保持部に前記測定試料を導入可能な通路である、
請求項7に記載の分析用カートリッジ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の分析用カートリッジであって、
前記操作プレートが脱落するのを防止する脱落防止機構
を備えた分析用カートリッジ。
【請求項10】
前記脱落防止機構は、前記操作プレートに設けられた係止部と、前記操作プレートが前記第1の位置と前記第2の位置との区間を外れて脱落する方向に移動したときに前記係止部と係止して該操作プレートが移動するのを規制する被係止部と、を含んでなる、
請求項9に記載の分析用カートリッジ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の分析用カートリッジであって、
前記分離カラムの出口から流出した液体を前記廃液口を介して受け入れる廃液タンク
を備えた分析用カートリッジ。
【請求項12】
前記1以上のシリンダは、前記廃液タンクの内部に収容されている、
請求項11に記載の分析用カートリッジ。
【請求項13】
前記流出通路は、前記検出通路の下流側が前記分離カラムと立体交差するように形成されている、
請求項12に記載の分析用カートリッジ。
【請求項14】
前記シリンダは、複数個が互いに略平行になるように並べられ、
前記分離カラムは、軸方向が前記複数個のシリンダの軸方向と略直交するように且つ前記複数個のシリンダの供給口と対向するように配置されている、
請求項1〜13のいずれかに記載の分析用カートリッジ。
【請求項15】
前記検出通路は、前記分離カラムのうち前記複数個のシリンダが配置されている側とは反対側で該分離カラムの軸方向と略平行になるように形成されている、
請求項14に記載の分析用カートリッジ。
【請求項16】
前記流入通路は、少なくとも一部に乱流混合部又は分流合流混合部が形成されている、
請求項1〜15のいずれかに記載の分析用カートリッジ。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載の分析用カートリッジを設置可能な設置部と、
前記設置部に設置された前記分析用カートリッジの前記1以上のシリンダの液体を独立して押圧可能な押圧機構と、
前記検出通路の一方に配置された発光素子と該検出通路の他方に配置された受光素子とを含んで構成され、前記発光素子から発射した光を前記検出通路に入射させ該検出通路を通過したあとの光を前記受光素子で受ける検出器と、
を備えた吸光度測定装置。
【請求項18】
前記検出器は、前記発光素子と前記検出通路との間に該発光素子の光を拡散する拡散板又は反射光の影響を抑制する偏光板の少なくとも一方を含んで構成されている、
請求項17に記載の吸光度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−175810(P2008−175810A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319240(P2007−319240)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)