分析用具に対する開口形成方法
【課題】分析用具に対して、安価かつ簡易に開口を形成できるようにする。
【解決手段】試料を移動させるための流路(51)を備えた分析用具(Y3)に対して、上記流路(51)の内部と外部との間を連通する開口を形成する方法であって、上記分析用具(Y3)に設定された目的部位に対して光照射する一方で、上記目的部位において光エネルギを吸収させることにより、上記開口を形成する。
【解決手段】試料を移動させるための流路(51)を備えた分析用具(Y3)に対して、上記流路(51)の内部と外部との間を連通する開口を形成する方法であって、上記分析用具(Y3)に設定された目的部位に対して光照射する一方で、上記目的部位において光エネルギを吸収させることにより、上記開口を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析用具において、試料や試薬などの移動成分を移動させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
試料の分析方法としては、たとえば試料と試薬を反応させたときの反応液を、光学的手法により分析する方法がある。このような手法により試料の分析を行う場合には、反応場を提供する分析用具が利用されている。そして、微量な試薬を分析する場合には、分析用具としては、微細な流路を形成した、いわゆるマイクロデバイスが利用されている。
【0003】
マイクロデバイスの一例として、たとえば図45に示したものがある。同図に示したマイクロデバイス9Aでは、流路90Aの途中に試薬91Aが保持された反応部92Aが設定されており、試料導入口93Aから導入された試料を移動させ、反応部92Aに供給するように構成されている。流路90Aは、矩形断面を有しており、この矩形断面の幅寸法および深さ寸法が、たとえば10〜500μmおよび5〜500μmとされている。反応部92Aでは、供給された試料が試薬91Aと反応する。試料導入口93Aから反応部92Aへの試料の移動は、図示した例のように空気抜き穴94Aを設けておいた上で、毛細管現象を利用して行われる。
【0004】
試料導入口93Aから反応部92Aへの試料の移動は、マイクロデバイスにマイクロポンプやバルブなどを組み込むことにより行うこともできる(たとえば日本国特開2002−219697号公報、日本国特開2001−322099号公報、およびマイクロ化学分析システム(μTAS)調査専門委員会編、「マイクロ化学分析システム(μTAS)に技術動向」、日本国、電気学会技術報告書第812号、電気学会、2000年12月15日、p.64−68参照)。
【0005】
試料と試薬91Aとを反応させるとともに、反応部92Aに向けて試料を移動させる構成では、試料導入口93Aに対する試料の導入から、この試料が反応部92Aに到達するまでの時間、つまり反応の開始タイミングを制御する必要がある場合がある。たとえば、試料導入口93Aに対する試料の導入を基準とし、このタイミングから一定時間経過後に反応部92Aを利用した分析を行う場合には、各回の測定毎に、試料導入口93Aから反応部92Aに至るまでの移動時間を同一となるようにする必要がある。
【0006】
一方、図46に示したように、複数の項目を測定できるように、複数の反応部92Bが形成されたマイクロデバイス9Bもある(日本国特開平10−2875号公報参照)。図示したマイクロデバイス9Bでは、複数の反応部92Bは1つの試料導入口93Bに対して繋がっている。そのため、各反応部92Bでの反応開始タイミングを同一とするために
は、移動成分が試料導入口93Bから各反応部92Bに移動するまでの時間を同一とする必要もある。
【0007】
このような移動時間(反応開始タイミング)の制御は、マイクロポンプやバルブなどを組み込んだマイクロデバイスでは、試料導入口から反応部に至るまでの移動時間を制御することは比較的容易である。しかしながら、マイクロポンプやバルブを形成するのは複雑な工程を要するため、製造コスト的に不利である。そのため、使い捨てとしてマイクロデバイスを構成する場合には、マイクロデバイスが高価なものとなって実用的ではない。これに対して、毛細管現象を利用するマイクロデバイスは、製造が簡易でコスト的には有利である半面、上記移動時間を制御するのが困難である。つまり、流路の寸法誤差に応じた分だけ移動時間に差が生じ、試料導入口から反応部までの距離が大きくなると、その移動時間の差が顕著となる。
【0008】
分析用具としては、本願の図47および図48に示したようなものもある(たとえば日本国特開平8−114539号公報参照)。これらの図に示した分析用具9Cは、試料処理室95Ca,95Cb、測光室92Ca,92Cbおよび廃液溜96Cを有しており、これらが相互に流路90Ca〜90Cdを介して繋げられたものである。試料処理室95Ca,95Cbには、その内部に試薬91Ca,91Cbが保持されており、試料処理室95Caは試料受液口97Cに繋げられている。廃液溜96Cは、ポンプ接続口98Cに繋げられている。この分析用具9Cでは、試料受液口97Cから導入された試料が試料処理室95Caにおいて試薬91Caと反応した後に、ポンプの吸引力により測光室92Caおよび試料処理室95Cbへと順次運ばれる。試料処理室95Cbに運ばれた試料は、この試料処理室95Cbの試薬91Cbと反応した後に、測光室92Cbおよび廃液溜96Cへと順次運ばれる。
【0009】
ポンプの吸引力により試料を移動させる技術に関しては、たとえば日本国特開平09−196920号公報にも記載されている。
【0010】
ポンプを接続して試料を移動させる方法では、たとえばポンプの脈動などに起因して、移動時間(反応開始タイミング)の制御は必ずしも容易ではない。とくに、マイクロデバイスのように流路の断面サイズが小さくなった場合には、移動時間の制御は、より一層困難なものとなる。
【0011】
分析用具9Cではさらに、試料受液口97Cおよびポンプ接続口98Cが開放状態とされている。したがって、試薬91Ca,91Cbの種類によっては、水分などにより試薬91Ca,91Cbが暴露される虞がある。このような不具合を抑制するためには、試料受液口97Cおよびポンプ接続口98Cを閉鎖しておいた上で、分析時に試料受液口97Cやポンプ接続口98Cを開放するようにすればよい。しかしながら、簡易な構成により、安価に試料受液口97Cやポンプ接続口98Cを開放する技術は見当たらない。また、試料受液口97Cやポンプ接続口98Cを開放する場合に限らず、その他の部位を分析時に閉鎖状態から開放状態にする必要が生じることも考えられる。
【0012】
【特許文献1】特開2002−219697号公報
【特許文献2】特開2001−322099号公報
【非特許文献1】マイクロ化学分析システム(μTAS)調査専門委員会編、「マイクロ化学分析システム(μTAS)に技術動向」、日本国、電気学会技術報告書第812号、電気学会、2000年12月15日、p.64−68
【特許文献3】特開平10−2875号公報
【特許文献4】特開平8−114539号公報
【特許文献5】特開平09−196920号公報
【発明の開示】
【0013】
本発明は、分析用具に対して、安価かつ簡易に開口を形成できるようにすることを目的としている。
【0014】
本発明においては、試料を移動させるための流路を備えた分析用具に対して、上記流路の内部と外部との間を連通する開口を形成する方法であって、上記分析用具に設定された目的部位に対して光照射する一方で、上記目的部位において光エネルギを吸収させることにより、上記開口を形成する、分析用具に対する開口形成方法が提供される。
【0015】
本発明の適用対象となる分析用具は、たとえば流路の内部を外部に連通させるための連通孔と、この連通孔を塞ぎ、かつ目的部位を含む閉塞部と、を備えたものである。
【0016】
連通孔は、たとえば流路の内部において試料を移動させるときに、流路の内部の気体を排出するための排気口、あるいは流路の内部に試料または試薬を導入するための導入口である。
【0017】
閉塞部は、たとえば熱可塑性樹脂と、閉塞部に照射される光に対する吸収性を高めるための添加剤と、を含有した材料により形成される。
【0018】
熱可塑性樹脂としては、閉塞部に照射すべき光エネルギ量を低減する観点からは、融点が100℃以下であるものを使用するのが好ましく、さらに好ましくは、融点が85℃以下のものが使用される。実用的には、熱可塑性樹脂として、融点が50〜85℃のものを使用するのが好ましい。熱可塑性樹脂の融点が不当に小さい場合には、保存時などに閉塞部が軟化し、あるいは溶けてしまう一方、融点が不当に大きい場合には、上述のように照射すべき光エネルギ量が大きくなり、ランニングコスト的に不利となるからである。
【0019】
本発明で使用できる熱可塑性樹脂は、目的を達成できる範囲において選択すればよく、単一のモノマを重合させたホモポリマ(ストレートポリマ)に限らず、共重合体(コポリマ)あるいはポリマアロイを使用することができる。共重合体あるいはポリマアロイでは、その組み合わせおよび配合比率を選択することにより、目的とする融点を有する熱可塑性樹脂を形成することができる。
【0020】
ホモポリマとしては、たとえば低融点(ナイロン系)ポリアミド樹脂を使用することができる。共重合体としては、エチレン系のものが好ましく使用され、たとえばエチレン−酢酸ビニル共重合体やエチレン系アイオノマーを使用することができる。エチレン−酢酸ビニル共重合体では、酢酸ビニルの含量を大きくするほど融点を低くすることができ、たとえば酢酸ビニルの含量を6%とすれば融点を100℃程度、酢酸ビニルの含量を28%とすれば融点を58℃程度とすることができる。エチレン−酢酸ビニル共重合体としては、典型的には、酢酸ビニルの含量が5〜35%のものが使用される。エチレン系アイオノマーは、エチレンと不飽和カルボン酸の共重合体の金属塩であり、金属塩の種類やモノマの比率を選択することにより融点を80〜100℃の範囲とすることができる。金属塩としては、ZnやNaを例示することができる。
【0021】
閉塞部は、これを伸長させて張力を付与した状態で開口部を閉塞するように配置してもよい。そうすれば、張力の作用によって開口の形成が助長され、より少ない光エネルギの付与によって開口を形成することが可能となるからである。この場合、熱可塑性樹脂としては、たとえば全体がエラストマで構成されたもの、あるいはプラストマにエラストマをアロイ化させて弾性を付与したものが使用される。
【0022】
一方、添加剤としては、典型的には、色素を使用することができる。色素としては、公知の種々のものを使用することができるが、基本的には閉塞部に照射される光の波長特性に応じて選択される。すなわち、閉塞部における光吸収率が100%近くなるように色素の種類が選択され、閉塞部における光吸収率を、少なくとも90%以上とすることができる色素を使用するのが好ましい。たとえば、閉塞部に対して赤色光を照射する場合には、色素としては緑色や黒色のものが使用される。緑色色素としては、典型的にはコバルトグリーン(CoO・Al2O3・Cr2O3)、チタン・コバルト系グリーン(TiO2・Co
O・NiOZnO)を使用することができ、その他に銅フタロシアニン系染料、ペリレン系の油溶性染料を使用することもできる。黒色色素としては、典型的にはカーボンブラック(C)、銅−クロム系ブラック(CuO・Cr2O3)、銅−鉄系ブラック(CuO・Fe2O3)あるいは鉄黒(FeO4)を使用することができ、その他にアンスラキノン系の
有機顔料を使用することができる。添加剤としては、色素の他に、銅やニッケルなどに代表される金属の粉末を使用することができる。添加剤の含有量は、熱可塑性樹脂100重
量部に対して、たとえば1.0〜3.0重量部とされる。
【0023】
閉塞部は、膜厚が5〜100μmのシート状に形成するのが好ましい。膜厚が不当に小さい場合には、光を十分に吸収することができない一方、膜厚が不当に大きければ光を照射した領域から熱エネルギが拡散し、目的部位の温度を効率良く上昇させることができないからである。
【0024】
閉塞部には、目的部位からの光エネルギの拡散を抑制して目的部位の温度を効率良く上昇させるために、蓄熱用充填剤を含ませてもよい。蓄熱用充填剤としては、金、銀、銅、ニッケル、アルミなどの金属、カーボンブラック、ガラスなどを材料とするものを使用することができる。蓄熱用充填剤の形態は、たとえば粒状もしくは繊維状が好ましい。閉塞部は、蓄熱の高い材料により形成したメッシュに熱可塑性樹脂および色素を保持させた構成としてもよい。メッシュとしては、たとえば合成樹脂繊維、天然繊維あるいはガラス繊維により形成したものを使用することができる。蓄熱用充填剤やメッシュを用いる場合には、これらに色素を含有させて、メッシュを熱可塑性樹脂と同一の色に着色してもよい。また、閉塞部をシート状に形成する場合には、分析用具に閉塞部を形成する際のハンドリング性を考慮して、シート材を補強するために、充填剤やメッシュを用いてもよい。
【0025】
閉塞部などの目的部位に対する光照射は、光源を用いて行われる。光源としては、レーザダイオードを用いるのが好ましい。そうすれば、少ない電力消費において開口を形成することができる。レーザダイオードとしては、赤色、緑色、青色の光、あるいは赤外光や紫外光を出射可能な単色光源を用いるのが好ましいが、白色などの複合光を出射可能なものを使用してもよい。レーザ光のスポット径、出力、および照射時間は、閉塞部の膜厚や光吸収率にもよるが、それぞれ、たとえば50〜300μm、5〜50mW、および0.5〜10秒とされる。光源としては、レーザダイオードの他に、発光ダイオード、ハロゲンランプ、キセノンランプ、あるいはタングステンランプなどを使用することもできる。
【0026】
分析用具として光学的手法を用いて試料を分析するように構成されたものを使用する場合には、目的部位に対する光照射するための光源として、試料の分析時に光照射するための光源を利用してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0028】
まず、本発明の参考例について説明する。
【0029】
図1および図2に示した分析装置X1は、分析用具としてのマイクロデバイスY1を装着して試料液の分析を行うためのものであり、マイクロデバイスY1を装着するための装着部1、光源部2、受光部3および開放機構4を備えている。
【0030】
図3ないし図5に示したように、マイクロデバイスY1は、反応場を提供するものであり、基板5、カバー6、接着層7および分離膜8を有している。
【0031】
基板5は、透明な円盤状に形成されており、周縁部が段下げされた形態を有している。図5Aおよび図6に示したように、基板5は、中央部に設けられた受液部50と、この受液部50に連通し、かつ受液部50から基板5の周縁部に向けて放射状に延びる複数の流路51と、複数の凹部52と、複数の分岐流路53と、を有している。
【0032】
受液部50は、マイクロデバイスY1に供給された試料液を、各流路51に導入するために保持するためのものである。受液部50は、基板5の上面501において、円形状の凹部として形成されている。
【0033】
各流路51は、試料液を移動させるためのものであり、受液部50に連通するように基板5の上面501に形成されている。図5Aに示したように、各流路51は、分岐部511および反応部512を有している。各流路51における反応部512を除いた部分は、略一様な矩形断面とされている。各流路51は、この矩形断面の幅寸法および深さ寸法が、たとえば10〜500μmおよび5〜500μm、幅寸法/高さ寸法が0.5以上となるように形成されている。
【0034】
図4および図6に示したように、分岐部511からは、流路51に連通する分岐流路53が延出している。分岐部511は、反応部512に極力近い部位に設定されており、分岐部511と反応部512との距離が極力小さくなるようになされている。分岐流路53は、略一様な矩形断面を有しており、この矩形断面の寸法は、流路の矩形断面と同様なものとされる。
【0035】
反応部512は、流路51の主断面よりも大きな断面積を有している。個々の反応部512は、同一円周上に設けられている。各反応部512には、図5Aに示したように試薬部513が設けられている。ただし、試薬部513は、必ずしも全ての流路51に設ける必要はなく、たとえば試料液の色味による影響を補正するために利用される流路については試薬部が省略される。
【0036】
試薬部513は、試料液が供給されたときに溶解する固体状とされており、試料液中の特定成分と反応して発色するものである。本実施の形態では、マイクロデバイスY1において複数の項目を測定できるように、たとえば成分または組成の異なる複数種類の試薬部513が準備されている。
【0037】
複数の凹部52は、後述するように反応部512に対して基板5の上面501側から光が照射されたときに、基板5の下面502側に透過光を出射させるための部位である(図1および図2参照)。各凹部52は、基板5の下面502における反応部512に対応した部位に設けられている。その結果、図6に示したように、複数の凹部52は、基板5の周縁部において同一円周上に配置されている。
【0038】
基板5は、たとえばポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル系樹脂あるいはポリジメチルシロキサン(PDMS)といった透明な樹脂材料を用いた樹脂成形により形成されている。受液部50、複数の流路51、複数の凹部52、複数の分岐流路53は、金型の形状を工夫することにより、上記樹脂成形の際に同時に作り込むことができる。
【0039】
受液部50、複数の流路51、および複数の分岐流路53の内面には、親水処理を施しておくのが好ましい。親水処理方法としては、公知の種々の方法を採用することができるが、たとえばフッ素ガスおよび酸素ガスを含む混合ガスを、各内面に接触させた後に、水または水蒸気を各内面に接触させることにより行うのが好ましい。この方法では、ガスや水などを用いて親水処理が行われるため、公知の親水処理方法である紫外線照射では困難な起立面(流路などの側面)に対しても、親水処理を確実に行うことができる。各内面の親水処理は、たとえば純水に対する接触角が0〜80度となるように行われる。
【0040】
カバー6は、周縁部が下方に突出した円盤状に形成されている。カバー6の突出部分60は、基板5における段下げされた部分に当接する部分である。カバー6は、図5A、図5Bおよび図7に示したように、試料液導入口61、複数の第1気体排出口62、複数の凹部63、共通流路64および第2気体排出口65を有している。
【0041】
試料液導入口61は、試料液を導入する際に利用されるものであり、貫通孔として形成されている。試料液導入口61は、図5に良く表れているように、カバー6の中央部において、基板5の受液部50の直上に位置するよう形成されている。
【0042】
各第1気体排出口62は、流路51内の気体を排出するためのものであり、貫通孔として形成されている。各第1気体排出口62は、図5Bによく表れているように、基板5の分岐流路53の直上に位置するように形成されている。その結果、複数の第1気体排出口62は、図4および図7に示したように同一円周上に位置するように設けられている。図5Bによく表れているように、各気体排出口62は、シール材66により上部開口が塞がれている。シール材66は、アルミニウムなどの金属により、あるいは樹脂により形成することができる。シール材66は、たとえば接着材を用いて、あるいは融着により基板5に固定されている。
【0043】
複数の凹部63は、後述するように反応部512に対してカバー6の上面601側から光を照射するための部位である(図1および図2参照)。各凹部63は、図5Aに示したように、カバー6の上面601において反応部512の直上に位置するように設けられている。その結果、図4および図7に示したように、複数の凹部63は、カバー6の周縁部において同一円周上に配置されている。
【0044】
共通流路64は、流路51内の気体を外部に排出する際に、第2気体排出口65に気体を導くための流路となるものである。共通流路64は、図5および図7に示したように、カバー6の周縁部において、環状の凹部として形成されている。共通流路64は、図5Aおよび図6に示したように、基板5の複数の流路51と連通している。
【0045】
マイクロデバイスY1では、共通流路64がカバー6に設けられ、流路51が基板5に設けられている。そのため、流路51を移動した試料が共通流路64に流れ込むことが適切に防止され、その結果、ある流路51を移動した試料が、共通流路64を介して他の流路51に逆流してしまうことを抑制することができるようになる。
【0046】
共通流路64は、カバー6ではなく、基板5に設けてもよい。この場合、共通流路の深さと、流路の深さとを異なったものに設定するのが好ましい。そうすれば、流路と共通流路との間に段差が生じ、共通流路に対して、流路を移動した試料液が流れ込むのを抑制することができるようになる。
【0047】
第2気体排出口65は、図5Aおよび図7に示したように共通流路64に連通する貫通孔として形成されている。第2気体排出口65の上部開口は、シール材67によって塞がれている。シール材67としては、第1気体排出口62を塞ぐためのシール材66と同様なものを使用することができる。
【0048】
カバー6は、基板5と同様に透明な樹脂材料を用いた樹脂成形により形成することができる。試料液導入口61、複数の第1気体排出口62、複数の凹部63、共通流路64および第2気体排出口65は、上記樹脂成形の際に同時に作り込むことができる。カバー6についても、少なくとも基板5の流路51を臨む部分に親水処理を施しておくのが好ましい。親水処理の方法については、基板5に対する親水処理方法と同様な手法を採用することができる。
【0049】
接着層7は、図5Aおよび図5Bに良く表れているように、基板5に対してカバー6を接合する役割を果たしている。図4、図5Aおよび図5Bに示したように、接着層7は、中央部に貫通孔70を備えた接着シートを、基板5とカバー6との間に介在させることにより形成されている。接着層7の貫通孔70の径は、基板5の受液部50やカバー6の試料液導入口61の径よりも大きくされている。接着シートとしては、たとえば基材の両面に接着層を形成したものを使用することができる。
【0050】
分離膜8は、試料液中の固体成分、たとえば血液中の血球成分を分離するためのものである。分離膜8は、図5Aおよび図5Bに示したように、接着層7の貫通孔70の径に対応した径を有しており、接着層7の貫通孔70に嵌まり込むようにして、基板5の受液部50とカバー6の試料液導入口61との間に介在させられている。受液部50は、凹部として形成されていることから、分離膜8は、受液部50の底面に対して間隔を隔てて配置されている。分離膜8の径が受液部50の径よりも大きな貫通孔70の径に対応していることから、各流路51における受液部50に近い部位は分離膜8によって覆われている。このように分離膜8を配置することにより、試料液導入口61から導入された試料液は、分離膜8の厚み方向に透過してから受液部50に到達することとなる。
【0051】
分離膜8としては、たとえば多孔質物質を使用することができる。分離膜8として使用できる多孔質物質としては、たとえば紙状物、フォーム(発泡体)、織布状物、不織布状物、編物状物、メンブレンフィルター、ガラスフィルター、あるいはゲル状物質が挙げられる。試料液として血液を用い、分離膜8において血液中の血球成分を分離する場合には、分離膜8として、その細孔径(ポアサイズ)が0.1〜10μmのものを使用するのが好ましい。
【0052】
図1および図2に示した装着部1は、マイクロデバイスY1を保持するための凹部10を有している。装着部1には、光透過領域11が設定されている。この光透過領域11は、凹部10にマイクロデバイスY1を装着したときに反応部512に対応する部位に設けられている。この光透過領域11は、装着部1の目的部位を透明樹脂などの透明材料により構成することにより形成されている。もちろん、装着部1の全体を透明な材料により形成してもよい。装着部1は、回転軸12により支持されており、この回転軸12を回転させることにより、装着部1が回転するように構成されている。回転軸12は、図外の駆動機構に連結されており、マイクロデバイスY1における反応部512の配置ピッチに対応した角度ずつ回転するように制御される。
【0053】
光源部2は,マイクロデバイスY1の反応部512に対して光を照射するためのものであり、カバー6の凹部63に対向しうる部位に固定されている。光源部2は、たとえば水銀ランプや白色LEDにより構成される。これらの光源を用いる場合には、図面上は省略しているが、光源部2からの光をフィルタに入射させてから、反応部512に光が照射される。これは、フィルタにおいて、反応液中の分析対象成分の光吸収特性に則した波長の光を選択するためである。
【0054】
受光部3は、反応部512を透過した光を受光するためのものであり、光源部2と同軸上において、基板5の凹部52に対向しうる部位に固定されている。この受光部3での受光量は、試料液を分析(たとえば濃度演算)する際の基礎とされる。受光部3は、たとえばフォトダイオードにより構成される。
【0055】
開放機構4は、シール材66に開孔を形成するための第1開孔形成要素41と、シール材67に開孔を形成するための第2開孔形成要素42と、を有している。これらの開孔形成要素41,42は、図外のアクチュエータによって上下方向に往復移動可能とされている。
【0056】
第1開孔形成要素41は、円盤状の基板411の下面から、複数の針状部412が下方に向けて突出したものである。図8に示すように、各針状部412は、その径がカバー6における第1気体排出口62の径よりも小さいものとされている。個々の針状部412は、第1気体排出口62の配置に対応して、同一円周上に配置されている。このため、第1開孔形成要素41の各針状部412と、カバー6の第1気体排出口62とが位置合わせされた状態で第1開孔形成要素41を下動させれば、複数のシール材66に対して一括して開孔を形成することができる。これにより、各第1気体排出口62が開放し、各流路51の内部が分岐流路53および第1気体排出口62を介して、外部と連通した状態とされる。
【0057】
第2開孔形成要素42は、図1および図9に示したように針状部421を有している。針状部421の径は、カバー6における第2気体排出口65の径よりも小さくされている。このため、第2開孔形成要素42の各針状部421と、カバー6の第2気体排出口65とが位置合わせされた状態で第2開孔形成要素42を下動させれば、シール材67に対して開孔を形成することができる。これにより、第2気体排出口65が開放し、各流路51の内部が共通流路64および第2気体排出口65を介して、外部と連通した状態とされる。
【0058】
もちろん、各第1および第2気体排出口62,65を開放させる方法は、上述した例には限定されない。たとえば、シール材66,67にエネルギを付与してシール材66,67を溶融または変形させて第1および第2気体排出口62,65を開放してもよい。エネルギの付与は、レーザなどの光源、超音波発信器あるいは発熱体などを用いて行うこともできる。もちろん、シール材66,67を引き剥がすことにより、第1および第2気体排出口62,65を開放するようにしてもよい。
【0059】
試料液の分析時には、図5に示したように、マイクロデバイスY1に対して、試料液導入口61を介して試料液Sを供給する必要がある。試料液Sの供給は、分析装置X1にマイクロデバイスY1を装着した状態で行ってもよいが、予めマイクロデバイスY1に試料液Sを供給しておいた上で、その後に分析装置X1にマイクロデバイスY1を装着するのが好ましい。
【0060】
マイクロデバイスY1に対して試料液Sを供給した場合には、試料液Sは、図5Aおよび図5Bから予想されるように分離膜8の厚み方向に透過して受液部50に到達する。このとき、試料液S中の固体成分が除去される。たとえば試料液として血液を使用する場合には、血液中の血球成分が除去される。試料液Sの供給時には、第1および第2気体排出口62,65が閉鎖されているので、図10Aに模式的に示したように、試料液Sは受液部50に保持され、流路51内には導入されない。
【0061】
流路51内に試料液Sを導入する場合には、複数のシール材66に対して同時に開孔を形成すればよい。複数のシール材66に対する開孔の形成は、図8に示したように第1開孔形成要素41を下動させて各シール材66に針状部412を差し込んだ後、第1開孔形成要素41を上動させて各シール材66から針状部412を抜くことにより行われる。これにより、複数のシール材66に対して同時に開孔が形成される。第1開孔形成要素41の下動および上動は、たとえば使用者が操作スイッチを操作することにより、分析装置X1において自動的に行われる。
【0062】
シール材66に開孔を形成した場合には、流路51の内部が第1気体排出口62および分岐流路53を介して連通する。したがって、受液部50に保持された試料液Sは、毛細管現象により流路51の内部を移動する。図10Aに矢印で示したように、分岐部511に至った試料液Sは、分岐部511を超えて反応部512に到達することができず、分岐流路53に導入される。これにより、図10Bに模式的に示したように、反応部512のごく近傍に試料液Sが存在する状態が達成され、反応部512において試料液Sと試薬とを反応させるための準備が終了する。
【0063】
一方、試料液Sを反応部512に供給する場合には、シール材67に開孔を形成すればよい。シール材67に対する開孔の形成は、図9に示したように第2開孔形成要素42を下動させてシール部67に針状部421を差し込んだ後、第2開孔形成要素42を上動させてシール材67から針状部421を抜くことにより行われる。第2開孔形成要素42の下動および上動は、たとえば使用者が操作スイッチを操作することにより、分析装置X1において自動的に行われる。
【0064】
シール材67に開孔を形成した場合には、流路51の内部が第2気体排出口65および共通流路64を介して連通する。したがって、反応部512の手前で移動が停止された試料液Sは、再び毛細管現象により流路51を移動する。これにより、各流路51においては、図10Cに示したように分岐部511を超えて試料液Sが移動し、複数の反応部512に対して一括して試料液Sが供給される。
【0065】
このとき、共通流路64がカバー6に設けられ、流路51が基板5に設けられているために、上述したように、流路51を移動した試料が共通流路64に流れ込むことが適切に防止される。
【0066】
反応部512では、試料液により試薬部513が溶解させられて液相反応系が構築される。これにより、試料液Sと試薬が反応し、たとえば液相反応系が試料中の被検知成分の量に相関した呈色を示し、あるいは被検知成分の量に応じた反応物が生成する。その結果、反応部512の液相反応系は、被検知成分の量に応じた透光性(光吸収性)を示すこととなる。反応部512への試料供給から一定時間経過した場合には、図1および図2に示した光源部2により反応部512に光を照射し、そのときの透過光量が受光部3において測定される。光源部2による光照射および受光部3での透過光の受光は、装着部1を一定角度ずつ回転させつつ、各流路51に設定された全ての反応部512に対して行われる。分析装置X1では、受光部3での受光量に基づいて、試料の分析、たとえば被検知成分の濃度演算が行われる。
【0067】
以上に説明した分析手法では、反応部512の近傍(分岐部511)まで試料液Sを導いた後、シール材67を開孔することによって分岐部511からの試料液Sを反応部512に供給するようになされている。つまり、1つの気体排出口を開放するだけで、複数の流路51において、反応部512に対して試料液Sを供給することができる。したがって、試料液Sの供給開始操作(シール材67の開孔)から反応部512に試料液Sが供給されるまでの時間が短くなって、各流路51毎、ひいては各回の測定毎(各分析用具毎)の供給開始操作から試料の供給までに要する時間のバラツキが小さくなる。その結果、反応部512での反応開始タイミングを、シール材67の開孔という動作によって適切に制御できるようになる。
【0068】
図11ないし図14は、本発明の他の参考例を示す。ただし、これらの図においては、流路などの気体や液体が移動する部分について模式的に示してあり、先に説明したマイクロデバイスY1と同様な部材または要素については同一の符号を付してあり、それらについての重複説明を省略するものとする。
【0069】
図11に示した分析用具Y1aでは、複数の流路51が、それぞれの反応部512の手前において追加の共通流路53aによって繋げられている点において、先に説明した分析用具Y1(図6参照)とは異なっている。追加の共通流路53aは、図外の追加の気体排出口と繋げられており、この気体排出口を開放状態とすることにより、各流路51において、試料を一括して各反応部512の手前まで導くことができる。
【0070】
図12に示した分析用具Y1bは、複数の共通流路64bを有しており、各共通流路64bにより、複数の流路51が複数の組に分けられている。各共通流路64bは、図外の気体排出口と連通しており、気体排出口を開放状態とすることによって、各組を構成する流路51に対しては、当該流路の反応部512に対して一括して試料液が導入されるように構成されている。分析用具Y1bは、先に説明した分析用具Y1aと同様に、複数の流路51が追加の共通流路64bによって繋げられている。そのため、複数の流路51に対して、反応部512の手前まで一括して試料液を移動させることができる。分析用具Y1bにおいて、分析用具Y1(図6参照)のように、各流路51を気体排出口に繋がる分岐流路と接続する構成を採用してもよい。
【0071】
図13に示した分析用具Y1cは、複数の反応部512が分析用具Y1cの周縁部において同一円周上に配置されている点において分析用具Y1と同様である。分析用具Y1cでは、分析用具Y1のように各反応部512が1つの流路に設定されているのではなく、流路51Cが枝分かれし、最終的な分岐部分51cに各反応部512が設定されている。各分岐部分51cは、気体排出口(図示略)に連通する共通流路64cと繋げられている。そのため、気体排出口を開放状態とすることにより、複数の反応部512に対して一括して試料液を供給することができる。
【0072】
図14に示した分析用具Y1dは、複数の共通流路64dを有しており、分析用具Y1cにおいて、共通流路64c(図13参照)を複数の領域に分断した格好とされている。つまり、複数の流路51Dから分岐した複数の分岐部分51dが複数の組に分けられ、各組を構成する分岐部分51dどうしが1つの共通流路64dに繋げられた格好とされている。この分岐用具Y1dでは、各組を構成する分岐部分51dに設けられた反応部512に対して一括して試料液を供給することができる。
【0073】
分析用具は、円盤状に限らず、たとえば図15ないし図23に示したように矩形状に形成することもできる。
【0074】
図15に示した分析用具Y1eは、全体として矩形状に形成されているとともに、流路51eの主要部分が互いに平行となるように配置されたものである。各流路51eは、分析用具Y1(図6参照)の各流路51と同様に、反応部512の手前で分岐流路53eに繋げられ、かつ流路51eの端部において共通流路64eに繋げられている。したがって、分析用具Y1eでは、反応部512の手前まで試料液を移動させた後、各反応部512に対して一括して試料液を導入することができる。
【0075】
図16に示した分析用具Y1fは、分析用具Y1e(図15参照)において、複数の流路51fを追加の共通流路53fによって一連に繋げた形態を有している。したがって、分析用具Y1fでは、追加の供給流路53fの外部と連通させることにより、各流路51fに対しては、反応部512の手前まで一括して試料液を供給することができる。一方、各反応部512に対しては、共通流路64fを外部と連通させることにより、一括して試料液を供給することができる。
【0076】
図17に示した分析用具Y1gは、分岐部511までの試料液の移動を共通流路51gによって一括して行い、複数の反応部512に対する試料液の供給を、個別に行えるように構成されている。
【0077】
図18に示した分析用具Y1hは、供給路51Haおよび複数の個別流路51Hbを有する流路51Hを備えている。供給路51Haの端部からは、分岐流路53hが延出している。この構成では、分岐流路53hを外部と連通させることにより、反応部512の手前まで試料液を供給し、共通流路64hを外部と連通させることにより、各反応部512に対して一括して試料液を供給することができる。
【0078】
図19に示した分析用具Y1iは、分析用具Y1e(図15参照)において、各流路51i毎に個別に試料液導入口61iを設けたものである。したがって、分析用具Y1iでは、各流路51iに対して個別に試料液を導入することができる。もちろん、分析用具Y1iにおいて、複数の流路51iを追加の共通流路によって繋げてもよい(図16参照)。
【0079】
図20に示した分析用具Y1jは、複数(図面上は2つ)の流路51Jを有するものであり、各流路51Jが2つの液導入口61jから導入された2液(たとえば試料と試薬)を混合した後に測定部512jに導入するように構成されたものである。各流路51Jは、測定部512jの手前において分岐した分岐流路53jと繋がっている。各流路51Jの終端どうしは、共通流路64jによって繋げられている。したがって、流路51J相互においては、測定部512jに対して試料と試薬の混合液を同時に導入することができる。
【0080】
図21に示した分析用具Y1kは、1つの液導入口61kに対して、複数の流路51kが繋がった構成とされているとともに、分岐部511までの試料液の移動および複数の反応部512に対する試料液の供給を、それぞれ個別に行えるように構成されている。
【0081】
図22に示した分析用具Y1mは、たとえば1つの試料と2つの試薬を反応させる3成分反応系に対して適合できるように構成されたものであり、反応部512に対して、2つのルート(流路51m′,51m″)から2つの移動成分(たとえば試料と試薬、あるいは別種である2つの試薬)が個別かつ同時に供給できるように構成されている。ただし、3成分反応系として構成する場合には、反応部512に対して試薬または試料を予め保持させておく必要があり、2成分反応系として構成する場合には、各流路51m′,51m″から試料と試薬とを供給すればよいため、反応部512には予め試薬や試料を保持しておく必要はない。もちろん、3つ以上のルートから、3つ以上の移動成分を個別かつ同時に供給できるように構成することもできる。
【0082】
図23に示した分析用具Y1nは、試料と試薬とを反応させるための反応部512′と、測定を行うための測定部512″とが別々に設けられており、反応部512′において反応させてから、被検知成分を測定部512″に移動させて測定するように構成されている。反応部512′の手前には、第1分岐部511′が設定されており、この第1分岐部511′から第1分岐流路53n′が延出している。一方、測定部512″の手前には、第2分岐部511″が設定されており、この第2分岐部511″から第2分岐流路53n″が延出している。
【0083】
この分析用具Y1nでは、第1分岐流路53n′の気体排出口62n′のみを開放しておくことにより、同図に実線の矢印で示したように第1分岐流路53n′内に試料を進行させる。これにより、反応部512′の手前(第1分岐部511′)で反応部512′への試料の導入が抑止される。この状態から、第2分岐流路53n″の気体排出口62n″のみを開放することにより、同図に点線の矢印で示したように反応部512′に試料が導入されるとともに、第2分岐流路53n″を試料が進行する。これにより、測定部512″の手前(第2分岐部511″)で測定部512″への試料の導入が抑止される。そして、気体排出口65nを開放することにより、反応部512′の試料が測定部512″に導入される
【0084】
次に、本発明のさらに他の参考例について説明する。ただし、本参考例において参照する図面においては、先に説明した分析装置X1および分析用具(マイクロデバイス)Y1(図1および図4など参照)と同様な部材または要素については同一の符号を付してあり、それらについての重複説明を省略するものとする。
【0085】
図24に示したように、分析用具Y2は、先の分析用具Y1(図4など参照)と同様にマイクロデバイスとして構成されたものであるが、分析用具Y1(図4など参照)とは異なり、1つの流路51pを備え、かつ第1および第2気体排出口62p,65pが側方に開放した構成とされている。
【0086】
気体排出口65pは、閉鎖手段としてのシール材67pにより閉鎖されている。このシール材67pは、アルミニウムなどの金属により、あるいは樹脂により形成することができ、たとえば接着材を用いて、あるいは融着により基板5やカバー6に固定されている。
【0087】
一方、分析装置X2は、気体排出口65pを開放するための開放機構4pを備えている。この開放機構4pは、シール材67pを切開するための刃体43と、この刃体43を図中の矢印A,B方向に往復動させるためのアクチュエータ44と、を有している。この開放機構4pでは、刃体43をアクチュエータ44により矢印A方向に移動させて刃体43によりシール材67pを貫通した後、刃体43をアクチュエータ44により矢印B方向に移動させることによりシール材67pが切開される。これにより、気体排出口65pが開放される。もちろん、気体排出口65pを開放させる方法は、図示した例には限定されない。たとえば、刃体43に代えて針状部材を用いてもよい。
【0088】
試料の分析時には、まず図25に示したようにマイクロデバイスY2に対して、試料液導入口61を介して受液部50に試料液Sが導入される。このとき、図24に良く表れているように、気体排出口65pが閉鎖されている一方、気体排出口62pは開放されている。ここで、試料液Sの導入は、分析装置X2に分析用具Y2を装着した状態で行ってもよいが、予め分析用具Y2に試料液Sを供給しておいた上で、その後に分析装置X2に分析用具Y2を装着するのが好ましい。
【0089】
導入された試料液Sは、毛細管現象により流路51pを移動して、分岐部511に到達する。先に触れたように、分析用具Y2では、気体排出口65pが閉鎖されている一方で気体排出口62pが開放されている。そのため、分岐部511に至った試料液Sは、分岐部511を超えて反応部512に到達することができず、図26に実線の矢印で示したように分岐流路53を進行する。これにより、反応部512のごく近傍に試料液Sが存在する状態が達成され、反応部512において試料と試薬とを反応させるための準備が終了する。
【0090】
一方、試料を反応部512に供給する場合には、開放機構4pにより気体排出口65pを開放する。気体排出口65pの開放は、上述したように刃体43を矢印A,B方向に往復動させてシール材67pを切開することにより行われる(図25参照)。これにより、気体排出口65pが開放し、図26に点線の矢印で示したように分岐部511を超えて試料液Sが移動し、この試料液Sが反応部512に供給される。
【0091】
反応部512では、試料と試薬が反応し、たとえば試料中の被検知成分の量に相関した呈色を示し、あるいは被検知成分の量に応じた反応物が生成する。これにより、反応部512が、被検知成分の量に応じた透過性(吸収性)を示すこととなる。反応部512への試料供給から一定時間経過した場合には、図24に示した光源部2により反応部512に光を照射し、そのときの透過光量が受光部3において測定される。分析装置X2では、受光部3での受光量に基づいて、試料の分析、たとえば被検知成分の濃度演算を行う。
【0092】
以上に説明した分析手法では、反応部512の近傍(分岐部511)まで試料液Sを導いた後、分岐部511から試料液Sを反応部512に供給するようになされている。そのため、シール材67pの切開により気体排出口65pを開放すれば、試料液Sが即座に反応部512に供給される。したがって、試料液Sの供給開始操作(シール材67pの切開)から反応部512に試料液Sが供給されるまでの時間が短くなって、供給開始操作から試料の供給までに要する時間のバラツキが、各回の測定毎(各分析用具毎)に小さくなる。つまり、反応部512での反応開始タイミングを、シール材67pの切開という動作によって適切に制御できるようになる。その結果、各分析用具Y2毎に反応時間を画一化し、測定誤差を小さくできるようになる。
【0093】
このような効果を得るためには、分析用具Y2に分岐流路53を設け、流路51pの気体排出口65pの開閉を制御すればよいだけであるため、分析用具にマクロポンプやバルブを組み込む場合に比べれば、分析用具Y2の構成が簡素化される。そのため、分析用具Y2は製造技術的に困難なく製造でき、製造コスト的にも有利となる。その結果、反応開始タイミングを制御できる分析用具Y2を安価に提供できるようになり、使い捨てとして構成される分析用具に対しても、反応開始タイミングを制御する機能を問題なく適用できるようになる。
【0094】
もちろん、上記各参考例において、たとえば、シール材67pを引き剥がすことにより、気体排出口65pを開放するようにしてもよい。また、気体排出口を形成してこれをシール材により閉鎖しておく必要は必ずしもなく、たとえば分析用具を分析装置にセットした後に、開放機構により基板やカバーに穴を開けてそれを気体排出口としてもよい。さらに、流路の気体排出口を開閉させる手法については、図27〜図31を参照して以下に説明する方法を採用することもできる。
【0095】
図27には、シール材67qにエネルギを付与してシール材67qを溶融または変形させて気体排出口65qを開放する例を示した。エネルギの付与は、エネルギ供給源として光源2q(たとえばレーザ)を用いて行うことができる。エネルギ供給源としては、超音波発信器や発熱体などを用いてもよい。
【0096】
図28Aおよび図28Bには、閉鎖手段として栓体67rを利用し、これを気体排出口65rに対して装着した状態、あるいは抜脱した状態を選択することにより気体排出口65rを開閉する例を示した。この例では、分岐流路53(図26など参照)に試料を導く間は、図28Aに示したように気体排出口65rに栓体67rを差し込んだ状態として気体排出口65rを閉鎖しておく。その一方、反応部512(図26など参照)に試料を供給する場合には、図28Bに示したように気体排出口65rから栓体67rを抜脱して気体排出口65rを開放する。栓体67rの抜脱は、分析装置に開放手段(同図にはクランプ機構4rを例示してある)を設けておいた上で、この開放手段を利用して行われる。
【0097】
図29Aおよび図29Bには、閉鎖手段として栓体67sを気体排出口65sに装着し、栓体67sの先端部を切り離すことにより気体排出口65sを開放させる例を示した。栓体67sは、図29Aに示したように空間部671sが形成されて中空状とされているとともに、この空間部671sの後端が開放している一方で先端が閉鎖されている。空間部671sの先端部に相当する部位には、切欠672sが形成されており、この切欠672sを利用して、図29Bに示したように先端部673sが容易に切り離されるように構成されている。この構成では、先端部673sを切り離すことにより空間部671sと気体排出口65sとが連通し、気体排出口65sを開放するため、反応部512(図26など参照)に試料を供給する場合には、先端部673sを切り離せばよい。なお、先端部673sの切り離しは、たとえば分析装置に対して、先端部673sを打撃可能なハンマーなどを有する打撃機構4sを設けておき、この打撃機構4sを使用して行われる。
【0098】
図30Aおよび図30Bには、閉鎖手段としての切断代67tを切断することにより気体排出口65tを開放させる例を示した。切断代67tは、基板5tの端部において基板5と一体的に設けられており、切欠671tを設けることによって、外力を作用させた場合に基板5tから切り離されるように構成されている。外力は、先の場合と同様にハンマーなどを利用して行われる。
【0099】
図31Aおよび図31Bには、閉鎖手段を用いることなく、気体排出口65uを開閉する例を示した。この例では、分析装置に閉鎖ヘッド4uが設けられており、この閉鎖ヘッド4uが密着して気体排出口65uが閉鎖される状態と、閉鎖ヘッド4uを離間させて気体排出口65uが開放される状態と、を選択できるように構成されている。閉鎖ヘッド4uは、気体排出口65uの閉鎖時に、この気体排出口65tを適切に閉鎖できるように、ゴムなどのシール材41uを気体排出口65uを覆いうる部位に設けておくのが好ましい。
【0100】
次に、本発明の実施の形態について説明する。ただし、本実施の形態において参照する図面においては、先に説明した参考例に係る分析装置X1,X2および分析用具(マイクロデバイス)Y1,Y2(図1および図4、図24など参照)と同様な部材または要素については同一の符号を付してあり、それらについての重複説明を省略するものとする。
【0101】
図32ないし図34に示したように、分析用具Y3は、分析用具Y2と基本的には同様な構成である。ただし、分析用具Y3においては、カバー6vに試料液導入口61v、気体排出口62v,65vが設けられており、試料液導入口61vおよび気体排出口62v,65vがシール材66v,67v,68vにより閉鎖されている。これにより、流路51vの内部が密閉状態とされ、試薬部513が水分などにより暴露されるのが抑制されている。
【0102】
各シール材66v〜68vは、光を吸収したときに照射領域が溶融して開口が形成されるものであり、開口の形成により流路51vの内部が外部に連通した状態とされる。シール材66v〜68vは、たとえば熱可塑性樹脂に色素を分散させて着色したものであり、厚みが5〜100μmに形成されている。このようなシール材66v〜68vは、たとえば接着剤を用いて、あるいは融着によりカバー6vに固定されている。
【0103】
熱可塑性樹脂としては、融点が100℃以下のもの、たとえばエチレン−酢酸ビニル共重合体を使用するのが好ましい。一方、色素としては、公知の種々のものを使用することができるが、シール材66v〜68vに照射される光の波長に応じて選択される。たとえば、シール材66v〜68vに対して赤色光を照射する場合には、色素としては緑色や黒色のものが使用される。緑色色素としては、典型的には銅フタロシアニン系染料、コバルトグリーン(CoO・Al2O3・Cr2O3)やチタン・コバルト系グリーン(TiO2・CoO・NiOZnO)を使用することができる。黒色色素としては、典型的にはカーボン系顔料、たとえばカーボンブラック(C)、銅−クロム系ブラック(CuO・Cr2O3)、銅−鉄系ブラック(CuO・Fe2O3)を使用することができる。
【0104】
シール材66v〜68vには、蓄熱性を確保する目的や強度向上の目的で充填剤を含有させてもよい。蓄熱目的に使用される充填剤としては、たとえば金属粒やガラス粒が使用され、強度向上のための充填剤としては、公知の種々のものを使用することができる。充填剤に代えて、あるいは充填剤に加えてメッシュを用い、蓄熱性や強度を確保するようにしてもよい。
【0105】
一方、分析装置X3は、基本的には分析装置X2と同様であるが、図32に示した光源部2vが反応部512ばかりでなく、シール材66v〜68vに対しても光を照射することができるように構成されている。すなわち、図35に示したように、光源部2vは、各シール材66v〜68vの上方位置A〜Cおよび反応部512の上方位置Dの間を移動可能とされている。ただし、シール材66v〜68vに光を照射するための光源部と、反応部512に光を照射するための光源部とを別々に設け、あるいはシール材512毎に個別に光源部を設けてもよい。
【0106】
光源部2vとしては、レーザダイオードを使用するのが好ましい。そうすれば、少ない電力によって開口を形成し、あるいは分析を行うことができる。光源部2vとしては、レーザダイオードの他に、発光ダイオード、ハロゲンランプ、キセノンランプ、あるいはタングステンランプなどを使用することもできる。ただし、広い波長範囲にわたって一定量の強度がある光(複合光)を出射する光源を用いる場合には、光源部2vからの光をフィルタに入射させてから、目的波長の光をシール材66v〜68vや反応部512に照射するようにしてもよい。
【0107】
試料の分析時には、まず図36Aに示したように、分析装置X3の装着部1に分析用具Y3を装着した状態とする。先にも説明したように、分析用具Y3は、試料液導入口61vがシール材68vにより閉鎖されているため、そのままでは試料を導入することができない。そのため、図36Bに示したようにシール材68vに開口68v′を形成し、試料液導入口61vを開放状態とする必要がある。そのためには、図35および図36Aに示したように、シール材68vの上方Aに光源部2vを位置させ、分析装置X3の光源部2vによりシール材68vに光を照射すればよい。光源部2vとしてレーザダイオードを用いる場合には、シール材68vに対するレーザ光の照射条件は、レーザ光の波長特性あるいはシール材68vの組成や厚さなどに応じて設定されるが、スポット径、出力、および照射時間は、それぞれ、たとえば50〜300μm、15〜50mW、および0.5〜10秒とされる。
【0108】
図36Bに示したように、シール材68vに開口68v′を形成した場合には、開口68v′および試料液導入口61vを介して、受液部50に試料液Sを供給し、図36Bおよび図36Cに示した状態とする。なお、図36Cにおいては、クロスハッチングを施した部分が試料液Sである。
【0109】
次いで、図37Aに示したように、シール材66vの上方に光源部2vを位置させて光源部2vによりシール材66vに光を照射する。これにより、図37Bに示したように、シール材66vに開口66v′が形成され、気体排出口62vが開放状態とされる。気体排出口62vを開放状態とすれば、流路51vにおける分岐部511までの部分および分岐流路53vにおいて毛細管現象が生じ、受液部50の試料液Sが移動して分岐部511に到達する。先に触れたように、分析用具Y3では、気体排出口65vが閉鎖されているために、分岐部511に至った試料液Sは、分岐部511を超えて反応部512に到達することができず、分岐流路53vを進行する。これにより、図37Bおよび図37Cに示したように、反応部512のごく近傍に試料液Sが存在する状態が達成され、反応部512において試料液Sと試薬部513に含まれる試薬とを反応させるための準備が終了する。ただし、開口68v′(図36B参照)を形成したのみでは十分な量の試料液Sを導入できない場合には、図37Bに示したように開口66v′を形成してから試料液Sを導入するようにしてもよい。
【0110】
続いて、図38Aに示したように、シール材67vの上方に光源部2vを位置させて光源部2vによりシール材67vに光を照射する。これにより、図38Bに示したように、シール材67vに開口67v′が形成され、気体排出口65vが開放状態とされる。気体排出口65vを開放状態とすれば、分岐部511と気体排出口65vとの間において毛細管現象が生じ、図38Bおよび図38Cに示したように試料液Sが反応部512に供給される。反応部512では、試料液Sと試薬部513における試薬とが反応し、たとえば試料中の被検知成分の量に相関した呈色を示し、あるいは被検知成分の量に応じた反応物が生成する。これにより、反応部512が、被検知成分の量に応じた透過性(吸収性)を示すこととなる。
【0111】
反応部512への試料供給から一定時間経過した場合には、図39に示したように、光源部2vを反応部512の上方に位置させて光源部2vにより反応部512に光を照射する。このときの反応部512での透過光は、受光部3において受光される。分析装置X3では、受光部3での受光量に基づいて、試料の分析、たとえば被検知成分の濃度演算を行う。
【0112】
本実施の形態では、試料液導入口61vや気体排出口62v,65vをシール材66v〜68vにより閉塞しておき、このシール材66v〜68vに光を照射するといった簡易な手法により、閉鎖状態から開放状態とすることができる。このため、分析用具Y3に開口66v′〜68v′を形成するに当たって、分析装置X3の構成がさほど複雑化することもないため、製造コストの上昇を抑制しつつ分析用具Y3に開口を形成することができる。また、分析用具Y3の反応部512に光を照射するための光源を利用して分析用具Y3に開口66v′〜68v′を形成するようにすれば、分析装置X3の複雑化および製造コストの上昇をより確実に抑制することができる。さらに、光源としてレーザダイオードを用いれば、少ない消費電力で確実に分析用具Y3に対して開口66v′〜68v′を形成することができるため、ランニングコスト的にも有利である。
【0113】
もちろん、本発明に係る開口形成方法は、上述した実施の形態には限定されない。たとえば、本発明は、試料液導入口61vおよび気体排出口62v,65vの全てがシール材66v〜68vにより覆われている場合に限らず、上記した3つの口61v,62v,65vのうち、少なくとも1つの口が塞がれている場合に適用することができる。また、本発明は、図32に示したような分岐流路53vを備えた分析用具Y3に限らず、図40Aおよび図40Bに示したように、分析流路を備えていない分析用具Y3′,Y3″に対しても適用することができる。図40Aには試料液導入口61v′および気体排出口65v′の双方が閉鎖された分析用具Y3′の例を、図40Bには気体排出口65v″のみが閉鎖された分析用具Y3″の例を示した。
【0114】
上記本発明の参考例および本発明の実施形態では、反応部に照射したときの透過光に基づいて分析を行う場合を例にとって説明したが、本発明は反応部からの反射光に基づいて試料の分析を行う場合にも適用可能である。反応部への光照射および透過光の測定は、必ずしも個々の反応部に対して個別に行う必要はなく、複数の反応部に対して一括して行ってもよい。
【0115】
本発明は、毛細管現象を利用して移動成分を移動させる構成の分析用具を用いる場合に適用できるため、光学的手法により分析を行うように構成されたものに限らず、電気化学的手法により分析を行うように構成されたものを用いることもできる。さらには、試料を移動させる場合のみならず、試料に代えて試薬を移動させ、あるいはキャリア液とともに試料や試薬を移動させる分析手法にも適用することができる。もちろん、分析用具としてマイクロデバイスを使用する場合に限らず、その他の構成の分析用具を使用する場合にも本発明を適用できるのはいうまでもない。
【実施例】
【0116】
以下においては、レーザダイオードを用いてシール材に対して開口が形成できるか否かについて検証する。
【0117】
[実施例1]
本実施例においては、酒井硝子エンジニアリング(株)製のレーザダイオードユニットを用いて緑色樹脂シートに開口が形成されるか否かを確認した。レーザダイオードユニットは、光源として中心波長が658nmの赤色光を出射可能なレーザダイオード(HL6501MG;(株)日立製作所)を備えたものであり、焦点距離が3mm、焦点でのスポット径が100μmとなるように構成されたものである。レーザダイオードからの光出力は、27.5mWとし、緑色樹脂シートに対するレーザ光の照射時間は、表1に示した通りとした。一方、緑色樹脂シートとしては、100重量部のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)(酢酸ビニル含量28%、融点58℃)のホットメルトシート(日東シンコー(株)製)に対して、緑色色素としての銅フタロシアニンを2.0重量部となるように添加し、膜厚を10μmに調整したものを使用した。この緑色樹脂シートは、波長が658nmである光に対する光吸収率が約97%のものである。緑色樹脂シートに開口が形成されているか否かは、顕微鏡(SZX9;オリンパス光学工業(株))により観察した。その結果を、表1、図41Aおよび図41Bに示した。図41Aおよび図41Bは、レーザ光の照射時間を0.50secおよび0.60secとしたときの緑色樹脂シートを、顕微鏡によって30倍に拡大した状態を示すものである。
【0118】
【表1】
【0119】
[実施例2]
本実施例においては、緑色樹脂シートの膜厚を50pm(波長658nmの光に対する光吸収率が約100%)に調整し、緑色樹脂シートに対するレーザ光の照射時間を表2に示した通りとした以外は実施例1と同様とし、緑色樹脂シートに開口が形成されるか否かを確認した。その結果を、表2、図42A、図42B、図43Aおよび図43Bに示した。図42Aおよび図42Bは、レーザ光の照射時間を0.50sec、0.80sec、1.00secおよび2.00secとしたときの緑色樹脂シートを、顕微鏡によって30倍に拡大した状態を示すものである。
【0120】
【表2】
【0121】
[実施例3]
本実施例においては、黒色樹脂シートに対してレーザ光の照射により開口が形成されるか否かを確認した。黒色樹脂シートとしては、EVA100重量部に対して黒色色素としてのカーボンブラックを1.5重量部添加して黒色に着色し、膜厚を10μmに調整したものを用いた。この黒色樹脂シートは、波長が658nmの光に対する光吸収率が約99%のものである。レーザ光の照射条件(照射時間を除く)は、実施例1と同様とした。その結果を表3に示した。図44Aおよび図44Bには、レーザ光の照射時間を1.0secおよび3.0secとしたときの黒色樹脂シートを、顕微鏡によって30倍に拡大した状態を示すものである。
【0122】
【表3】
【0123】
[結果の考察]
実施例1の緑色樹脂シート(膜厚10μm、光吸収率約97%)では、レーザダイオードからの光出力を27.5mWに設定した場合には、表1、図41Aおよび図41Bから分かるように、レーザ光を0.5sec以上照射した場合に開口が形成されることが確認された。実施例2の緑色樹脂シート(膜厚50μm、光吸収率約100%)では、表2、図42A、図42B、図43Aおよび図43Bから分かるように、レーザ光を0.9sec以上照射した場合に開口が形成されることが確認された。したがって、光吸収率が100%に近い樹脂シートに対しては、膜厚が10〜50μmの範囲であれば、27.5mWという比較的小さい出力で、かつ1.0sec程度という短時間で、十分な開口を形成することができる。
【0124】
実施例3の黒色樹脂シート(膜厚10μm、光吸収率約99%)については、表3、図44Aおよび図44Bから分かるように、実施例1および実施例2と同様なレーザ光の照射条件(照射時間を除く)においては、数秒程度のレーザ光の照射により十分な開口が形成されることが確認された。
【0125】
以上のように、融点の低い熱可塑性樹脂に色素を添加して光吸収率を高くした樹脂シートに対しては、レーザ光を照射することによって比較的に短時間で開口を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】図1は、本発明の参考例に係る分析装置および分析用具の一例の概略構成を示す模式図である。
【図2】図2は、図1のZ1−Z1線に沿う断面図である。
【図3】図3は、図1に示したマイクロデバイスの全体斜視図である。
【図4】図4は、図3に示したマイクロデバイスの分解斜視図である。
【図5】図5Aは図3のZ2−Z2線に沿う断面図、図5Bは図3のZ3−Z3線に沿う断面図である。
【図6】図6は、マイクロデバイスの基板の平面図である。
【図7】図7は、マイクロデバイスのカバーの底面図である。
【図8】図8は、第1気体排出口を開放させる動作を説明するための断面図である。
【図9】図9は、第2気体排出口を開放させる動作を説明するための断面図である。
【図10】図10は、流路における試料液の移動状態を説明するための模式図である。
【図11】図11は、共通流路を備えた分析用具の他の例を説明するための模式的平面図である。
【図12】図12は、共通流路を備えた分析用具のさらに他の例を説明するための模式的平面図である。
【図13】図13は、共通流路を備えた分析用具のさらに他の例を説明するための模式的平面図である。
【図14】図14は、共通流路を備えた分析用具のさらに他の例を説明するための模式的平面図である。
【図15】図15は、共通流路を備えた分析用具のさらに他の例を説明するための模式的平面図である。
【図16】図16は、共通流路を備えた分析用具のさらに他の例を説明するための模式的平面図である。
【図17】図17は、共通流路を備えた分析用具のさらに他の例を説明するための模式的平面図である。
【図18】図18は、共通流路を備えた分析用具のさらに他の例を説明するための模式的平面図である。
【図19】図19は、共通流路を備えた分析用具のさらに他の例を説明するための模式的平面図である。
【図20】図20は、共通流路を備えた分析用具のさらに他の例を説明するための模式的平面図である。
【図21】図21は、複数の流路を備えた分析用具の他の例を説明するための模式的平面図である。
【図22】図22は、複数の流路を備えた分析用具のさらに他の例を説明するための模式的平面図である。
【図23】図23は、複数の分岐流路を備えた分析用具の例を示す透視平面図である。
【図24】図24は、本発明の他の参考例に係る分析装置および分析用具の一例の概略構成を示す模式図である。
【図25】図25は、図24のZ4−Z4線に沿う断面図である。
【図26】図26は、図25に示したマイクロデバイスの透視平面図である。
【図27】図27は、流路の気体排出口を開閉させるための他の手法を説明するための要部断面図である。
【図28】図28Aおよび図28Bは、流路の気体排出口を開閉させるためのさらに他の手法を説明するための要部断面図である。
【図29】図29Aおよび図29Bは、流路の気体排出口を開閉させるためのさらに他の手法を説明するための要部断面図である。
【図30】図30Aは流路の気体排出口を開閉させるためのさらに他の手法を説明するための分析用具の全体斜視図、図30Bは、図30Aに示した分析用具の要部断面図である。
【図31】図31Aおよび図31Bは、流路の気体排出口を開閉させるためのさらに他の手法を説明するための要部断面図である。
【図32】図32は、本発明の実施の形態に係る分析装置および分析用具の一例の概略構成を示す模式図である。
【図33】図33は、図32のZ5−Z5線に沿う断面図である。
【図34】図34は、図32のZ6−Z6線に沿う断面図である。
【図35】図35は、光源部の移動経路を説明するための分析用具の透視平面図である。
【図36】図36Aは試料導入口の開放動作を説明するための断面図、図36Bは試料導入動作および試料の導入状態を説明するための断面図、図36Cは試料の導入状態を説明するための平面図である。
【図37】図37Aは、排気口の開放動作を説明するための断面図、図37Bおよび図37Cは試料の導入状態を説明するための断面図および平面図である。
【図38】図38Aは、排気口の開放動作を説明するための断面図、図38Bおよび図38Cは試料の導入状態を説明するための断面図および平面図である。
【図39】図39は、試料の分析手法を説明するための断面図である。
【図40】図40Aおよび図40Bは、本発明の開口方法を適用することができる分析用具の他の例を示す全体斜視図である。
【図41】図41Aおよび図41Bは、膜厚が10μmの緑色樹脂シートに対する開口の形成状態を顕微鏡で観察したものであり、図41Aはレーザ光の照射時間が0.5sec、図41Bはレーザ光の照射時間が0.6secのときの結果を示すものである。
【図42】図42Aおよび図42Bは、膜厚が50μmの緑色樹脂シートに対する開口の形成状態を顕微鏡で観察したものであり、図42Aはレーザ光の照射時間が0.5sec、図42Bは光照射時間が0.8secのときの結果を示すものである。
【図43】図43Aおよび図43Bは、膜厚が50μmの緑色樹脂シートに対する開口の形成状態を顕微鏡で観察したものであり、図43Aはレーザ光の照射時間が1.0sec、図43Bはレーザ光の照射時間が2.0secのときの結果を示すものである。
【図44】図44Aおよび図44Bは、膜厚が10μmの黒色樹脂シートに対する開口の形成状態を顕微鏡で観察したものであり、図44Aはレーザ光の照射時間が1.0sec、図44Bはレーザ光の照射時間が3.0secのときの結果を示すものである。
【図45】図45は、従来のマイクロデバイスを説明するための全体斜視図である。
【図46】図46は、従来のマイクロデバイスの他の例を説明するための透視平面図である。
【図47】図47は、従来の分析用具を説明するための平面図である。
【図48】図48は、図47のZ7−Z7線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0127】
Y3 分析用具
51 流路
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析用具において、試料や試薬などの移動成分を移動させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
試料の分析方法としては、たとえば試料と試薬を反応させたときの反応液を、光学的手法により分析する方法がある。このような手法により試料の分析を行う場合には、反応場を提供する分析用具が利用されている。そして、微量な試薬を分析する場合には、分析用具としては、微細な流路を形成した、いわゆるマイクロデバイスが利用されている。
【0003】
マイクロデバイスの一例として、たとえば図45に示したものがある。同図に示したマイクロデバイス9Aでは、流路90Aの途中に試薬91Aが保持された反応部92Aが設定されており、試料導入口93Aから導入された試料を移動させ、反応部92Aに供給するように構成されている。流路90Aは、矩形断面を有しており、この矩形断面の幅寸法および深さ寸法が、たとえば10〜500μmおよび5〜500μmとされている。反応部92Aでは、供給された試料が試薬91Aと反応する。試料導入口93Aから反応部92Aへの試料の移動は、図示した例のように空気抜き穴94Aを設けておいた上で、毛細管現象を利用して行われる。
【0004】
試料導入口93Aから反応部92Aへの試料の移動は、マイクロデバイスにマイクロポンプやバルブなどを組み込むことにより行うこともできる(たとえば日本国特開2002−219697号公報、日本国特開2001−322099号公報、およびマイクロ化学分析システム(μTAS)調査専門委員会編、「マイクロ化学分析システム(μTAS)に技術動向」、日本国、電気学会技術報告書第812号、電気学会、2000年12月15日、p.64−68参照)。
【0005】
試料と試薬91Aとを反応させるとともに、反応部92Aに向けて試料を移動させる構成では、試料導入口93Aに対する試料の導入から、この試料が反応部92Aに到達するまでの時間、つまり反応の開始タイミングを制御する必要がある場合がある。たとえば、試料導入口93Aに対する試料の導入を基準とし、このタイミングから一定時間経過後に反応部92Aを利用した分析を行う場合には、各回の測定毎に、試料導入口93Aから反応部92Aに至るまでの移動時間を同一となるようにする必要がある。
【0006】
一方、図46に示したように、複数の項目を測定できるように、複数の反応部92Bが形成されたマイクロデバイス9Bもある(日本国特開平10−2875号公報参照)。図示したマイクロデバイス9Bでは、複数の反応部92Bは1つの試料導入口93Bに対して繋がっている。そのため、各反応部92Bでの反応開始タイミングを同一とするために
は、移動成分が試料導入口93Bから各反応部92Bに移動するまでの時間を同一とする必要もある。
【0007】
このような移動時間(反応開始タイミング)の制御は、マイクロポンプやバルブなどを組み込んだマイクロデバイスでは、試料導入口から反応部に至るまでの移動時間を制御することは比較的容易である。しかしながら、マイクロポンプやバルブを形成するのは複雑な工程を要するため、製造コスト的に不利である。そのため、使い捨てとしてマイクロデバイスを構成する場合には、マイクロデバイスが高価なものとなって実用的ではない。これに対して、毛細管現象を利用するマイクロデバイスは、製造が簡易でコスト的には有利である半面、上記移動時間を制御するのが困難である。つまり、流路の寸法誤差に応じた分だけ移動時間に差が生じ、試料導入口から反応部までの距離が大きくなると、その移動時間の差が顕著となる。
【0008】
分析用具としては、本願の図47および図48に示したようなものもある(たとえば日本国特開平8−114539号公報参照)。これらの図に示した分析用具9Cは、試料処理室95Ca,95Cb、測光室92Ca,92Cbおよび廃液溜96Cを有しており、これらが相互に流路90Ca〜90Cdを介して繋げられたものである。試料処理室95Ca,95Cbには、その内部に試薬91Ca,91Cbが保持されており、試料処理室95Caは試料受液口97Cに繋げられている。廃液溜96Cは、ポンプ接続口98Cに繋げられている。この分析用具9Cでは、試料受液口97Cから導入された試料が試料処理室95Caにおいて試薬91Caと反応した後に、ポンプの吸引力により測光室92Caおよび試料処理室95Cbへと順次運ばれる。試料処理室95Cbに運ばれた試料は、この試料処理室95Cbの試薬91Cbと反応した後に、測光室92Cbおよび廃液溜96Cへと順次運ばれる。
【0009】
ポンプの吸引力により試料を移動させる技術に関しては、たとえば日本国特開平09−196920号公報にも記載されている。
【0010】
ポンプを接続して試料を移動させる方法では、たとえばポンプの脈動などに起因して、移動時間(反応開始タイミング)の制御は必ずしも容易ではない。とくに、マイクロデバイスのように流路の断面サイズが小さくなった場合には、移動時間の制御は、より一層困難なものとなる。
【0011】
分析用具9Cではさらに、試料受液口97Cおよびポンプ接続口98Cが開放状態とされている。したがって、試薬91Ca,91Cbの種類によっては、水分などにより試薬91Ca,91Cbが暴露される虞がある。このような不具合を抑制するためには、試料受液口97Cおよびポンプ接続口98Cを閉鎖しておいた上で、分析時に試料受液口97Cやポンプ接続口98Cを開放するようにすればよい。しかしながら、簡易な構成により、安価に試料受液口97Cやポンプ接続口98Cを開放する技術は見当たらない。また、試料受液口97Cやポンプ接続口98Cを開放する場合に限らず、その他の部位を分析時に閉鎖状態から開放状態にする必要が生じることも考えられる。
【0012】
【特許文献1】特開2002−219697号公報
【特許文献2】特開2001−322099号公報
【非特許文献1】マイクロ化学分析システム(μTAS)調査専門委員会編、「マイクロ化学分析システム(μTAS)に技術動向」、日本国、電気学会技術報告書第812号、電気学会、2000年12月15日、p.64−68
【特許文献3】特開平10−2875号公報
【特許文献4】特開平8−114539号公報
【特許文献5】特開平09−196920号公報
【発明の開示】
【0013】
本発明は、分析用具に対して、安価かつ簡易に開口を形成できるようにすることを目的としている。
【0014】
本発明においては、試料を移動させるための流路を備えた分析用具に対して、上記流路の内部と外部との間を連通する開口を形成する方法であって、上記分析用具に設定された目的部位に対して光照射する一方で、上記目的部位において光エネルギを吸収させることにより、上記開口を形成する、分析用具に対する開口形成方法が提供される。
【0015】
本発明の適用対象となる分析用具は、たとえば流路の内部を外部に連通させるための連通孔と、この連通孔を塞ぎ、かつ目的部位を含む閉塞部と、を備えたものである。
【0016】
連通孔は、たとえば流路の内部において試料を移動させるときに、流路の内部の気体を排出するための排気口、あるいは流路の内部に試料または試薬を導入するための導入口である。
【0017】
閉塞部は、たとえば熱可塑性樹脂と、閉塞部に照射される光に対する吸収性を高めるための添加剤と、を含有した材料により形成される。
【0018】
熱可塑性樹脂としては、閉塞部に照射すべき光エネルギ量を低減する観点からは、融点が100℃以下であるものを使用するのが好ましく、さらに好ましくは、融点が85℃以下のものが使用される。実用的には、熱可塑性樹脂として、融点が50〜85℃のものを使用するのが好ましい。熱可塑性樹脂の融点が不当に小さい場合には、保存時などに閉塞部が軟化し、あるいは溶けてしまう一方、融点が不当に大きい場合には、上述のように照射すべき光エネルギ量が大きくなり、ランニングコスト的に不利となるからである。
【0019】
本発明で使用できる熱可塑性樹脂は、目的を達成できる範囲において選択すればよく、単一のモノマを重合させたホモポリマ(ストレートポリマ)に限らず、共重合体(コポリマ)あるいはポリマアロイを使用することができる。共重合体あるいはポリマアロイでは、その組み合わせおよび配合比率を選択することにより、目的とする融点を有する熱可塑性樹脂を形成することができる。
【0020】
ホモポリマとしては、たとえば低融点(ナイロン系)ポリアミド樹脂を使用することができる。共重合体としては、エチレン系のものが好ましく使用され、たとえばエチレン−酢酸ビニル共重合体やエチレン系アイオノマーを使用することができる。エチレン−酢酸ビニル共重合体では、酢酸ビニルの含量を大きくするほど融点を低くすることができ、たとえば酢酸ビニルの含量を6%とすれば融点を100℃程度、酢酸ビニルの含量を28%とすれば融点を58℃程度とすることができる。エチレン−酢酸ビニル共重合体としては、典型的には、酢酸ビニルの含量が5〜35%のものが使用される。エチレン系アイオノマーは、エチレンと不飽和カルボン酸の共重合体の金属塩であり、金属塩の種類やモノマの比率を選択することにより融点を80〜100℃の範囲とすることができる。金属塩としては、ZnやNaを例示することができる。
【0021】
閉塞部は、これを伸長させて張力を付与した状態で開口部を閉塞するように配置してもよい。そうすれば、張力の作用によって開口の形成が助長され、より少ない光エネルギの付与によって開口を形成することが可能となるからである。この場合、熱可塑性樹脂としては、たとえば全体がエラストマで構成されたもの、あるいはプラストマにエラストマをアロイ化させて弾性を付与したものが使用される。
【0022】
一方、添加剤としては、典型的には、色素を使用することができる。色素としては、公知の種々のものを使用することができるが、基本的には閉塞部に照射される光の波長特性に応じて選択される。すなわち、閉塞部における光吸収率が100%近くなるように色素の種類が選択され、閉塞部における光吸収率を、少なくとも90%以上とすることができる色素を使用するのが好ましい。たとえば、閉塞部に対して赤色光を照射する場合には、色素としては緑色や黒色のものが使用される。緑色色素としては、典型的にはコバルトグリーン(CoO・Al2O3・Cr2O3)、チタン・コバルト系グリーン(TiO2・Co
O・NiOZnO)を使用することができ、その他に銅フタロシアニン系染料、ペリレン系の油溶性染料を使用することもできる。黒色色素としては、典型的にはカーボンブラック(C)、銅−クロム系ブラック(CuO・Cr2O3)、銅−鉄系ブラック(CuO・Fe2O3)あるいは鉄黒(FeO4)を使用することができ、その他にアンスラキノン系の
有機顔料を使用することができる。添加剤としては、色素の他に、銅やニッケルなどに代表される金属の粉末を使用することができる。添加剤の含有量は、熱可塑性樹脂100重
量部に対して、たとえば1.0〜3.0重量部とされる。
【0023】
閉塞部は、膜厚が5〜100μmのシート状に形成するのが好ましい。膜厚が不当に小さい場合には、光を十分に吸収することができない一方、膜厚が不当に大きければ光を照射した領域から熱エネルギが拡散し、目的部位の温度を効率良く上昇させることができないからである。
【0024】
閉塞部には、目的部位からの光エネルギの拡散を抑制して目的部位の温度を効率良く上昇させるために、蓄熱用充填剤を含ませてもよい。蓄熱用充填剤としては、金、銀、銅、ニッケル、アルミなどの金属、カーボンブラック、ガラスなどを材料とするものを使用することができる。蓄熱用充填剤の形態は、たとえば粒状もしくは繊維状が好ましい。閉塞部は、蓄熱の高い材料により形成したメッシュに熱可塑性樹脂および色素を保持させた構成としてもよい。メッシュとしては、たとえば合成樹脂繊維、天然繊維あるいはガラス繊維により形成したものを使用することができる。蓄熱用充填剤やメッシュを用いる場合には、これらに色素を含有させて、メッシュを熱可塑性樹脂と同一の色に着色してもよい。また、閉塞部をシート状に形成する場合には、分析用具に閉塞部を形成する際のハンドリング性を考慮して、シート材を補強するために、充填剤やメッシュを用いてもよい。
【0025】
閉塞部などの目的部位に対する光照射は、光源を用いて行われる。光源としては、レーザダイオードを用いるのが好ましい。そうすれば、少ない電力消費において開口を形成することができる。レーザダイオードとしては、赤色、緑色、青色の光、あるいは赤外光や紫外光を出射可能な単色光源を用いるのが好ましいが、白色などの複合光を出射可能なものを使用してもよい。レーザ光のスポット径、出力、および照射時間は、閉塞部の膜厚や光吸収率にもよるが、それぞれ、たとえば50〜300μm、5〜50mW、および0.5〜10秒とされる。光源としては、レーザダイオードの他に、発光ダイオード、ハロゲンランプ、キセノンランプ、あるいはタングステンランプなどを使用することもできる。
【0026】
分析用具として光学的手法を用いて試料を分析するように構成されたものを使用する場合には、目的部位に対する光照射するための光源として、試料の分析時に光照射するための光源を利用してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0028】
まず、本発明の参考例について説明する。
【0029】
図1および図2に示した分析装置X1は、分析用具としてのマイクロデバイスY1を装着して試料液の分析を行うためのものであり、マイクロデバイスY1を装着するための装着部1、光源部2、受光部3および開放機構4を備えている。
【0030】
図3ないし図5に示したように、マイクロデバイスY1は、反応場を提供するものであり、基板5、カバー6、接着層7および分離膜8を有している。
【0031】
基板5は、透明な円盤状に形成されており、周縁部が段下げされた形態を有している。図5Aおよび図6に示したように、基板5は、中央部に設けられた受液部50と、この受液部50に連通し、かつ受液部50から基板5の周縁部に向けて放射状に延びる複数の流路51と、複数の凹部52と、複数の分岐流路53と、を有している。
【0032】
受液部50は、マイクロデバイスY1に供給された試料液を、各流路51に導入するために保持するためのものである。受液部50は、基板5の上面501において、円形状の凹部として形成されている。
【0033】
各流路51は、試料液を移動させるためのものであり、受液部50に連通するように基板5の上面501に形成されている。図5Aに示したように、各流路51は、分岐部511および反応部512を有している。各流路51における反応部512を除いた部分は、略一様な矩形断面とされている。各流路51は、この矩形断面の幅寸法および深さ寸法が、たとえば10〜500μmおよび5〜500μm、幅寸法/高さ寸法が0.5以上となるように形成されている。
【0034】
図4および図6に示したように、分岐部511からは、流路51に連通する分岐流路53が延出している。分岐部511は、反応部512に極力近い部位に設定されており、分岐部511と反応部512との距離が極力小さくなるようになされている。分岐流路53は、略一様な矩形断面を有しており、この矩形断面の寸法は、流路の矩形断面と同様なものとされる。
【0035】
反応部512は、流路51の主断面よりも大きな断面積を有している。個々の反応部512は、同一円周上に設けられている。各反応部512には、図5Aに示したように試薬部513が設けられている。ただし、試薬部513は、必ずしも全ての流路51に設ける必要はなく、たとえば試料液の色味による影響を補正するために利用される流路については試薬部が省略される。
【0036】
試薬部513は、試料液が供給されたときに溶解する固体状とされており、試料液中の特定成分と反応して発色するものである。本実施の形態では、マイクロデバイスY1において複数の項目を測定できるように、たとえば成分または組成の異なる複数種類の試薬部513が準備されている。
【0037】
複数の凹部52は、後述するように反応部512に対して基板5の上面501側から光が照射されたときに、基板5の下面502側に透過光を出射させるための部位である(図1および図2参照)。各凹部52は、基板5の下面502における反応部512に対応した部位に設けられている。その結果、図6に示したように、複数の凹部52は、基板5の周縁部において同一円周上に配置されている。
【0038】
基板5は、たとえばポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル系樹脂あるいはポリジメチルシロキサン(PDMS)といった透明な樹脂材料を用いた樹脂成形により形成されている。受液部50、複数の流路51、複数の凹部52、複数の分岐流路53は、金型の形状を工夫することにより、上記樹脂成形の際に同時に作り込むことができる。
【0039】
受液部50、複数の流路51、および複数の分岐流路53の内面には、親水処理を施しておくのが好ましい。親水処理方法としては、公知の種々の方法を採用することができるが、たとえばフッ素ガスおよび酸素ガスを含む混合ガスを、各内面に接触させた後に、水または水蒸気を各内面に接触させることにより行うのが好ましい。この方法では、ガスや水などを用いて親水処理が行われるため、公知の親水処理方法である紫外線照射では困難な起立面(流路などの側面)に対しても、親水処理を確実に行うことができる。各内面の親水処理は、たとえば純水に対する接触角が0〜80度となるように行われる。
【0040】
カバー6は、周縁部が下方に突出した円盤状に形成されている。カバー6の突出部分60は、基板5における段下げされた部分に当接する部分である。カバー6は、図5A、図5Bおよび図7に示したように、試料液導入口61、複数の第1気体排出口62、複数の凹部63、共通流路64および第2気体排出口65を有している。
【0041】
試料液導入口61は、試料液を導入する際に利用されるものであり、貫通孔として形成されている。試料液導入口61は、図5に良く表れているように、カバー6の中央部において、基板5の受液部50の直上に位置するよう形成されている。
【0042】
各第1気体排出口62は、流路51内の気体を排出するためのものであり、貫通孔として形成されている。各第1気体排出口62は、図5Bによく表れているように、基板5の分岐流路53の直上に位置するように形成されている。その結果、複数の第1気体排出口62は、図4および図7に示したように同一円周上に位置するように設けられている。図5Bによく表れているように、各気体排出口62は、シール材66により上部開口が塞がれている。シール材66は、アルミニウムなどの金属により、あるいは樹脂により形成することができる。シール材66は、たとえば接着材を用いて、あるいは融着により基板5に固定されている。
【0043】
複数の凹部63は、後述するように反応部512に対してカバー6の上面601側から光を照射するための部位である(図1および図2参照)。各凹部63は、図5Aに示したように、カバー6の上面601において反応部512の直上に位置するように設けられている。その結果、図4および図7に示したように、複数の凹部63は、カバー6の周縁部において同一円周上に配置されている。
【0044】
共通流路64は、流路51内の気体を外部に排出する際に、第2気体排出口65に気体を導くための流路となるものである。共通流路64は、図5および図7に示したように、カバー6の周縁部において、環状の凹部として形成されている。共通流路64は、図5Aおよび図6に示したように、基板5の複数の流路51と連通している。
【0045】
マイクロデバイスY1では、共通流路64がカバー6に設けられ、流路51が基板5に設けられている。そのため、流路51を移動した試料が共通流路64に流れ込むことが適切に防止され、その結果、ある流路51を移動した試料が、共通流路64を介して他の流路51に逆流してしまうことを抑制することができるようになる。
【0046】
共通流路64は、カバー6ではなく、基板5に設けてもよい。この場合、共通流路の深さと、流路の深さとを異なったものに設定するのが好ましい。そうすれば、流路と共通流路との間に段差が生じ、共通流路に対して、流路を移動した試料液が流れ込むのを抑制することができるようになる。
【0047】
第2気体排出口65は、図5Aおよび図7に示したように共通流路64に連通する貫通孔として形成されている。第2気体排出口65の上部開口は、シール材67によって塞がれている。シール材67としては、第1気体排出口62を塞ぐためのシール材66と同様なものを使用することができる。
【0048】
カバー6は、基板5と同様に透明な樹脂材料を用いた樹脂成形により形成することができる。試料液導入口61、複数の第1気体排出口62、複数の凹部63、共通流路64および第2気体排出口65は、上記樹脂成形の際に同時に作り込むことができる。カバー6についても、少なくとも基板5の流路51を臨む部分に親水処理を施しておくのが好ましい。親水処理の方法については、基板5に対する親水処理方法と同様な手法を採用することができる。
【0049】
接着層7は、図5Aおよび図5Bに良く表れているように、基板5に対してカバー6を接合する役割を果たしている。図4、図5Aおよび図5Bに示したように、接着層7は、中央部に貫通孔70を備えた接着シートを、基板5とカバー6との間に介在させることにより形成されている。接着層7の貫通孔70の径は、基板5の受液部50やカバー6の試料液導入口61の径よりも大きくされている。接着シートとしては、たとえば基材の両面に接着層を形成したものを使用することができる。
【0050】
分離膜8は、試料液中の固体成分、たとえば血液中の血球成分を分離するためのものである。分離膜8は、図5Aおよび図5Bに示したように、接着層7の貫通孔70の径に対応した径を有しており、接着層7の貫通孔70に嵌まり込むようにして、基板5の受液部50とカバー6の試料液導入口61との間に介在させられている。受液部50は、凹部として形成されていることから、分離膜8は、受液部50の底面に対して間隔を隔てて配置されている。分離膜8の径が受液部50の径よりも大きな貫通孔70の径に対応していることから、各流路51における受液部50に近い部位は分離膜8によって覆われている。このように分離膜8を配置することにより、試料液導入口61から導入された試料液は、分離膜8の厚み方向に透過してから受液部50に到達することとなる。
【0051】
分離膜8としては、たとえば多孔質物質を使用することができる。分離膜8として使用できる多孔質物質としては、たとえば紙状物、フォーム(発泡体)、織布状物、不織布状物、編物状物、メンブレンフィルター、ガラスフィルター、あるいはゲル状物質が挙げられる。試料液として血液を用い、分離膜8において血液中の血球成分を分離する場合には、分離膜8として、その細孔径(ポアサイズ)が0.1〜10μmのものを使用するのが好ましい。
【0052】
図1および図2に示した装着部1は、マイクロデバイスY1を保持するための凹部10を有している。装着部1には、光透過領域11が設定されている。この光透過領域11は、凹部10にマイクロデバイスY1を装着したときに反応部512に対応する部位に設けられている。この光透過領域11は、装着部1の目的部位を透明樹脂などの透明材料により構成することにより形成されている。もちろん、装着部1の全体を透明な材料により形成してもよい。装着部1は、回転軸12により支持されており、この回転軸12を回転させることにより、装着部1が回転するように構成されている。回転軸12は、図外の駆動機構に連結されており、マイクロデバイスY1における反応部512の配置ピッチに対応した角度ずつ回転するように制御される。
【0053】
光源部2は,マイクロデバイスY1の反応部512に対して光を照射するためのものであり、カバー6の凹部63に対向しうる部位に固定されている。光源部2は、たとえば水銀ランプや白色LEDにより構成される。これらの光源を用いる場合には、図面上は省略しているが、光源部2からの光をフィルタに入射させてから、反応部512に光が照射される。これは、フィルタにおいて、反応液中の分析対象成分の光吸収特性に則した波長の光を選択するためである。
【0054】
受光部3は、反応部512を透過した光を受光するためのものであり、光源部2と同軸上において、基板5の凹部52に対向しうる部位に固定されている。この受光部3での受光量は、試料液を分析(たとえば濃度演算)する際の基礎とされる。受光部3は、たとえばフォトダイオードにより構成される。
【0055】
開放機構4は、シール材66に開孔を形成するための第1開孔形成要素41と、シール材67に開孔を形成するための第2開孔形成要素42と、を有している。これらの開孔形成要素41,42は、図外のアクチュエータによって上下方向に往復移動可能とされている。
【0056】
第1開孔形成要素41は、円盤状の基板411の下面から、複数の針状部412が下方に向けて突出したものである。図8に示すように、各針状部412は、その径がカバー6における第1気体排出口62の径よりも小さいものとされている。個々の針状部412は、第1気体排出口62の配置に対応して、同一円周上に配置されている。このため、第1開孔形成要素41の各針状部412と、カバー6の第1気体排出口62とが位置合わせされた状態で第1開孔形成要素41を下動させれば、複数のシール材66に対して一括して開孔を形成することができる。これにより、各第1気体排出口62が開放し、各流路51の内部が分岐流路53および第1気体排出口62を介して、外部と連通した状態とされる。
【0057】
第2開孔形成要素42は、図1および図9に示したように針状部421を有している。針状部421の径は、カバー6における第2気体排出口65の径よりも小さくされている。このため、第2開孔形成要素42の各針状部421と、カバー6の第2気体排出口65とが位置合わせされた状態で第2開孔形成要素42を下動させれば、シール材67に対して開孔を形成することができる。これにより、第2気体排出口65が開放し、各流路51の内部が共通流路64および第2気体排出口65を介して、外部と連通した状態とされる。
【0058】
もちろん、各第1および第2気体排出口62,65を開放させる方法は、上述した例には限定されない。たとえば、シール材66,67にエネルギを付与してシール材66,67を溶融または変形させて第1および第2気体排出口62,65を開放してもよい。エネルギの付与は、レーザなどの光源、超音波発信器あるいは発熱体などを用いて行うこともできる。もちろん、シール材66,67を引き剥がすことにより、第1および第2気体排出口62,65を開放するようにしてもよい。
【0059】
試料液の分析時には、図5に示したように、マイクロデバイスY1に対して、試料液導入口61を介して試料液Sを供給する必要がある。試料液Sの供給は、分析装置X1にマイクロデバイスY1を装着した状態で行ってもよいが、予めマイクロデバイスY1に試料液Sを供給しておいた上で、その後に分析装置X1にマイクロデバイスY1を装着するのが好ましい。
【0060】
マイクロデバイスY1に対して試料液Sを供給した場合には、試料液Sは、図5Aおよび図5Bから予想されるように分離膜8の厚み方向に透過して受液部50に到達する。このとき、試料液S中の固体成分が除去される。たとえば試料液として血液を使用する場合には、血液中の血球成分が除去される。試料液Sの供給時には、第1および第2気体排出口62,65が閉鎖されているので、図10Aに模式的に示したように、試料液Sは受液部50に保持され、流路51内には導入されない。
【0061】
流路51内に試料液Sを導入する場合には、複数のシール材66に対して同時に開孔を形成すればよい。複数のシール材66に対する開孔の形成は、図8に示したように第1開孔形成要素41を下動させて各シール材66に針状部412を差し込んだ後、第1開孔形成要素41を上動させて各シール材66から針状部412を抜くことにより行われる。これにより、複数のシール材66に対して同時に開孔が形成される。第1開孔形成要素41の下動および上動は、たとえば使用者が操作スイッチを操作することにより、分析装置X1において自動的に行われる。
【0062】
シール材66に開孔を形成した場合には、流路51の内部が第1気体排出口62および分岐流路53を介して連通する。したがって、受液部50に保持された試料液Sは、毛細管現象により流路51の内部を移動する。図10Aに矢印で示したように、分岐部511に至った試料液Sは、分岐部511を超えて反応部512に到達することができず、分岐流路53に導入される。これにより、図10Bに模式的に示したように、反応部512のごく近傍に試料液Sが存在する状態が達成され、反応部512において試料液Sと試薬とを反応させるための準備が終了する。
【0063】
一方、試料液Sを反応部512に供給する場合には、シール材67に開孔を形成すればよい。シール材67に対する開孔の形成は、図9に示したように第2開孔形成要素42を下動させてシール部67に針状部421を差し込んだ後、第2開孔形成要素42を上動させてシール材67から針状部421を抜くことにより行われる。第2開孔形成要素42の下動および上動は、たとえば使用者が操作スイッチを操作することにより、分析装置X1において自動的に行われる。
【0064】
シール材67に開孔を形成した場合には、流路51の内部が第2気体排出口65および共通流路64を介して連通する。したがって、反応部512の手前で移動が停止された試料液Sは、再び毛細管現象により流路51を移動する。これにより、各流路51においては、図10Cに示したように分岐部511を超えて試料液Sが移動し、複数の反応部512に対して一括して試料液Sが供給される。
【0065】
このとき、共通流路64がカバー6に設けられ、流路51が基板5に設けられているために、上述したように、流路51を移動した試料が共通流路64に流れ込むことが適切に防止される。
【0066】
反応部512では、試料液により試薬部513が溶解させられて液相反応系が構築される。これにより、試料液Sと試薬が反応し、たとえば液相反応系が試料中の被検知成分の量に相関した呈色を示し、あるいは被検知成分の量に応じた反応物が生成する。その結果、反応部512の液相反応系は、被検知成分の量に応じた透光性(光吸収性)を示すこととなる。反応部512への試料供給から一定時間経過した場合には、図1および図2に示した光源部2により反応部512に光を照射し、そのときの透過光量が受光部3において測定される。光源部2による光照射および受光部3での透過光の受光は、装着部1を一定角度ずつ回転させつつ、各流路51に設定された全ての反応部512に対して行われる。分析装置X1では、受光部3での受光量に基づいて、試料の分析、たとえば被検知成分の濃度演算が行われる。
【0067】
以上に説明した分析手法では、反応部512の近傍(分岐部511)まで試料液Sを導いた後、シール材67を開孔することによって分岐部511からの試料液Sを反応部512に供給するようになされている。つまり、1つの気体排出口を開放するだけで、複数の流路51において、反応部512に対して試料液Sを供給することができる。したがって、試料液Sの供給開始操作(シール材67の開孔)から反応部512に試料液Sが供給されるまでの時間が短くなって、各流路51毎、ひいては各回の測定毎(各分析用具毎)の供給開始操作から試料の供給までに要する時間のバラツキが小さくなる。その結果、反応部512での反応開始タイミングを、シール材67の開孔という動作によって適切に制御できるようになる。
【0068】
図11ないし図14は、本発明の他の参考例を示す。ただし、これらの図においては、流路などの気体や液体が移動する部分について模式的に示してあり、先に説明したマイクロデバイスY1と同様な部材または要素については同一の符号を付してあり、それらについての重複説明を省略するものとする。
【0069】
図11に示した分析用具Y1aでは、複数の流路51が、それぞれの反応部512の手前において追加の共通流路53aによって繋げられている点において、先に説明した分析用具Y1(図6参照)とは異なっている。追加の共通流路53aは、図外の追加の気体排出口と繋げられており、この気体排出口を開放状態とすることにより、各流路51において、試料を一括して各反応部512の手前まで導くことができる。
【0070】
図12に示した分析用具Y1bは、複数の共通流路64bを有しており、各共通流路64bにより、複数の流路51が複数の組に分けられている。各共通流路64bは、図外の気体排出口と連通しており、気体排出口を開放状態とすることによって、各組を構成する流路51に対しては、当該流路の反応部512に対して一括して試料液が導入されるように構成されている。分析用具Y1bは、先に説明した分析用具Y1aと同様に、複数の流路51が追加の共通流路64bによって繋げられている。そのため、複数の流路51に対して、反応部512の手前まで一括して試料液を移動させることができる。分析用具Y1bにおいて、分析用具Y1(図6参照)のように、各流路51を気体排出口に繋がる分岐流路と接続する構成を採用してもよい。
【0071】
図13に示した分析用具Y1cは、複数の反応部512が分析用具Y1cの周縁部において同一円周上に配置されている点において分析用具Y1と同様である。分析用具Y1cでは、分析用具Y1のように各反応部512が1つの流路に設定されているのではなく、流路51Cが枝分かれし、最終的な分岐部分51cに各反応部512が設定されている。各分岐部分51cは、気体排出口(図示略)に連通する共通流路64cと繋げられている。そのため、気体排出口を開放状態とすることにより、複数の反応部512に対して一括して試料液を供給することができる。
【0072】
図14に示した分析用具Y1dは、複数の共通流路64dを有しており、分析用具Y1cにおいて、共通流路64c(図13参照)を複数の領域に分断した格好とされている。つまり、複数の流路51Dから分岐した複数の分岐部分51dが複数の組に分けられ、各組を構成する分岐部分51dどうしが1つの共通流路64dに繋げられた格好とされている。この分岐用具Y1dでは、各組を構成する分岐部分51dに設けられた反応部512に対して一括して試料液を供給することができる。
【0073】
分析用具は、円盤状に限らず、たとえば図15ないし図23に示したように矩形状に形成することもできる。
【0074】
図15に示した分析用具Y1eは、全体として矩形状に形成されているとともに、流路51eの主要部分が互いに平行となるように配置されたものである。各流路51eは、分析用具Y1(図6参照)の各流路51と同様に、反応部512の手前で分岐流路53eに繋げられ、かつ流路51eの端部において共通流路64eに繋げられている。したがって、分析用具Y1eでは、反応部512の手前まで試料液を移動させた後、各反応部512に対して一括して試料液を導入することができる。
【0075】
図16に示した分析用具Y1fは、分析用具Y1e(図15参照)において、複数の流路51fを追加の共通流路53fによって一連に繋げた形態を有している。したがって、分析用具Y1fでは、追加の供給流路53fの外部と連通させることにより、各流路51fに対しては、反応部512の手前まで一括して試料液を供給することができる。一方、各反応部512に対しては、共通流路64fを外部と連通させることにより、一括して試料液を供給することができる。
【0076】
図17に示した分析用具Y1gは、分岐部511までの試料液の移動を共通流路51gによって一括して行い、複数の反応部512に対する試料液の供給を、個別に行えるように構成されている。
【0077】
図18に示した分析用具Y1hは、供給路51Haおよび複数の個別流路51Hbを有する流路51Hを備えている。供給路51Haの端部からは、分岐流路53hが延出している。この構成では、分岐流路53hを外部と連通させることにより、反応部512の手前まで試料液を供給し、共通流路64hを外部と連通させることにより、各反応部512に対して一括して試料液を供給することができる。
【0078】
図19に示した分析用具Y1iは、分析用具Y1e(図15参照)において、各流路51i毎に個別に試料液導入口61iを設けたものである。したがって、分析用具Y1iでは、各流路51iに対して個別に試料液を導入することができる。もちろん、分析用具Y1iにおいて、複数の流路51iを追加の共通流路によって繋げてもよい(図16参照)。
【0079】
図20に示した分析用具Y1jは、複数(図面上は2つ)の流路51Jを有するものであり、各流路51Jが2つの液導入口61jから導入された2液(たとえば試料と試薬)を混合した後に測定部512jに導入するように構成されたものである。各流路51Jは、測定部512jの手前において分岐した分岐流路53jと繋がっている。各流路51Jの終端どうしは、共通流路64jによって繋げられている。したがって、流路51J相互においては、測定部512jに対して試料と試薬の混合液を同時に導入することができる。
【0080】
図21に示した分析用具Y1kは、1つの液導入口61kに対して、複数の流路51kが繋がった構成とされているとともに、分岐部511までの試料液の移動および複数の反応部512に対する試料液の供給を、それぞれ個別に行えるように構成されている。
【0081】
図22に示した分析用具Y1mは、たとえば1つの試料と2つの試薬を反応させる3成分反応系に対して適合できるように構成されたものであり、反応部512に対して、2つのルート(流路51m′,51m″)から2つの移動成分(たとえば試料と試薬、あるいは別種である2つの試薬)が個別かつ同時に供給できるように構成されている。ただし、3成分反応系として構成する場合には、反応部512に対して試薬または試料を予め保持させておく必要があり、2成分反応系として構成する場合には、各流路51m′,51m″から試料と試薬とを供給すればよいため、反応部512には予め試薬や試料を保持しておく必要はない。もちろん、3つ以上のルートから、3つ以上の移動成分を個別かつ同時に供給できるように構成することもできる。
【0082】
図23に示した分析用具Y1nは、試料と試薬とを反応させるための反応部512′と、測定を行うための測定部512″とが別々に設けられており、反応部512′において反応させてから、被検知成分を測定部512″に移動させて測定するように構成されている。反応部512′の手前には、第1分岐部511′が設定されており、この第1分岐部511′から第1分岐流路53n′が延出している。一方、測定部512″の手前には、第2分岐部511″が設定されており、この第2分岐部511″から第2分岐流路53n″が延出している。
【0083】
この分析用具Y1nでは、第1分岐流路53n′の気体排出口62n′のみを開放しておくことにより、同図に実線の矢印で示したように第1分岐流路53n′内に試料を進行させる。これにより、反応部512′の手前(第1分岐部511′)で反応部512′への試料の導入が抑止される。この状態から、第2分岐流路53n″の気体排出口62n″のみを開放することにより、同図に点線の矢印で示したように反応部512′に試料が導入されるとともに、第2分岐流路53n″を試料が進行する。これにより、測定部512″の手前(第2分岐部511″)で測定部512″への試料の導入が抑止される。そして、気体排出口65nを開放することにより、反応部512′の試料が測定部512″に導入される
【0084】
次に、本発明のさらに他の参考例について説明する。ただし、本参考例において参照する図面においては、先に説明した分析装置X1および分析用具(マイクロデバイス)Y1(図1および図4など参照)と同様な部材または要素については同一の符号を付してあり、それらについての重複説明を省略するものとする。
【0085】
図24に示したように、分析用具Y2は、先の分析用具Y1(図4など参照)と同様にマイクロデバイスとして構成されたものであるが、分析用具Y1(図4など参照)とは異なり、1つの流路51pを備え、かつ第1および第2気体排出口62p,65pが側方に開放した構成とされている。
【0086】
気体排出口65pは、閉鎖手段としてのシール材67pにより閉鎖されている。このシール材67pは、アルミニウムなどの金属により、あるいは樹脂により形成することができ、たとえば接着材を用いて、あるいは融着により基板5やカバー6に固定されている。
【0087】
一方、分析装置X2は、気体排出口65pを開放するための開放機構4pを備えている。この開放機構4pは、シール材67pを切開するための刃体43と、この刃体43を図中の矢印A,B方向に往復動させるためのアクチュエータ44と、を有している。この開放機構4pでは、刃体43をアクチュエータ44により矢印A方向に移動させて刃体43によりシール材67pを貫通した後、刃体43をアクチュエータ44により矢印B方向に移動させることによりシール材67pが切開される。これにより、気体排出口65pが開放される。もちろん、気体排出口65pを開放させる方法は、図示した例には限定されない。たとえば、刃体43に代えて針状部材を用いてもよい。
【0088】
試料の分析時には、まず図25に示したようにマイクロデバイスY2に対して、試料液導入口61を介して受液部50に試料液Sが導入される。このとき、図24に良く表れているように、気体排出口65pが閉鎖されている一方、気体排出口62pは開放されている。ここで、試料液Sの導入は、分析装置X2に分析用具Y2を装着した状態で行ってもよいが、予め分析用具Y2に試料液Sを供給しておいた上で、その後に分析装置X2に分析用具Y2を装着するのが好ましい。
【0089】
導入された試料液Sは、毛細管現象により流路51pを移動して、分岐部511に到達する。先に触れたように、分析用具Y2では、気体排出口65pが閉鎖されている一方で気体排出口62pが開放されている。そのため、分岐部511に至った試料液Sは、分岐部511を超えて反応部512に到達することができず、図26に実線の矢印で示したように分岐流路53を進行する。これにより、反応部512のごく近傍に試料液Sが存在する状態が達成され、反応部512において試料と試薬とを反応させるための準備が終了する。
【0090】
一方、試料を反応部512に供給する場合には、開放機構4pにより気体排出口65pを開放する。気体排出口65pの開放は、上述したように刃体43を矢印A,B方向に往復動させてシール材67pを切開することにより行われる(図25参照)。これにより、気体排出口65pが開放し、図26に点線の矢印で示したように分岐部511を超えて試料液Sが移動し、この試料液Sが反応部512に供給される。
【0091】
反応部512では、試料と試薬が反応し、たとえば試料中の被検知成分の量に相関した呈色を示し、あるいは被検知成分の量に応じた反応物が生成する。これにより、反応部512が、被検知成分の量に応じた透過性(吸収性)を示すこととなる。反応部512への試料供給から一定時間経過した場合には、図24に示した光源部2により反応部512に光を照射し、そのときの透過光量が受光部3において測定される。分析装置X2では、受光部3での受光量に基づいて、試料の分析、たとえば被検知成分の濃度演算を行う。
【0092】
以上に説明した分析手法では、反応部512の近傍(分岐部511)まで試料液Sを導いた後、分岐部511から試料液Sを反応部512に供給するようになされている。そのため、シール材67pの切開により気体排出口65pを開放すれば、試料液Sが即座に反応部512に供給される。したがって、試料液Sの供給開始操作(シール材67pの切開)から反応部512に試料液Sが供給されるまでの時間が短くなって、供給開始操作から試料の供給までに要する時間のバラツキが、各回の測定毎(各分析用具毎)に小さくなる。つまり、反応部512での反応開始タイミングを、シール材67pの切開という動作によって適切に制御できるようになる。その結果、各分析用具Y2毎に反応時間を画一化し、測定誤差を小さくできるようになる。
【0093】
このような効果を得るためには、分析用具Y2に分岐流路53を設け、流路51pの気体排出口65pの開閉を制御すればよいだけであるため、分析用具にマクロポンプやバルブを組み込む場合に比べれば、分析用具Y2の構成が簡素化される。そのため、分析用具Y2は製造技術的に困難なく製造でき、製造コスト的にも有利となる。その結果、反応開始タイミングを制御できる分析用具Y2を安価に提供できるようになり、使い捨てとして構成される分析用具に対しても、反応開始タイミングを制御する機能を問題なく適用できるようになる。
【0094】
もちろん、上記各参考例において、たとえば、シール材67pを引き剥がすことにより、気体排出口65pを開放するようにしてもよい。また、気体排出口を形成してこれをシール材により閉鎖しておく必要は必ずしもなく、たとえば分析用具を分析装置にセットした後に、開放機構により基板やカバーに穴を開けてそれを気体排出口としてもよい。さらに、流路の気体排出口を開閉させる手法については、図27〜図31を参照して以下に説明する方法を採用することもできる。
【0095】
図27には、シール材67qにエネルギを付与してシール材67qを溶融または変形させて気体排出口65qを開放する例を示した。エネルギの付与は、エネルギ供給源として光源2q(たとえばレーザ)を用いて行うことができる。エネルギ供給源としては、超音波発信器や発熱体などを用いてもよい。
【0096】
図28Aおよび図28Bには、閉鎖手段として栓体67rを利用し、これを気体排出口65rに対して装着した状態、あるいは抜脱した状態を選択することにより気体排出口65rを開閉する例を示した。この例では、分岐流路53(図26など参照)に試料を導く間は、図28Aに示したように気体排出口65rに栓体67rを差し込んだ状態として気体排出口65rを閉鎖しておく。その一方、反応部512(図26など参照)に試料を供給する場合には、図28Bに示したように気体排出口65rから栓体67rを抜脱して気体排出口65rを開放する。栓体67rの抜脱は、分析装置に開放手段(同図にはクランプ機構4rを例示してある)を設けておいた上で、この開放手段を利用して行われる。
【0097】
図29Aおよび図29Bには、閉鎖手段として栓体67sを気体排出口65sに装着し、栓体67sの先端部を切り離すことにより気体排出口65sを開放させる例を示した。栓体67sは、図29Aに示したように空間部671sが形成されて中空状とされているとともに、この空間部671sの後端が開放している一方で先端が閉鎖されている。空間部671sの先端部に相当する部位には、切欠672sが形成されており、この切欠672sを利用して、図29Bに示したように先端部673sが容易に切り離されるように構成されている。この構成では、先端部673sを切り離すことにより空間部671sと気体排出口65sとが連通し、気体排出口65sを開放するため、反応部512(図26など参照)に試料を供給する場合には、先端部673sを切り離せばよい。なお、先端部673sの切り離しは、たとえば分析装置に対して、先端部673sを打撃可能なハンマーなどを有する打撃機構4sを設けておき、この打撃機構4sを使用して行われる。
【0098】
図30Aおよび図30Bには、閉鎖手段としての切断代67tを切断することにより気体排出口65tを開放させる例を示した。切断代67tは、基板5tの端部において基板5と一体的に設けられており、切欠671tを設けることによって、外力を作用させた場合に基板5tから切り離されるように構成されている。外力は、先の場合と同様にハンマーなどを利用して行われる。
【0099】
図31Aおよび図31Bには、閉鎖手段を用いることなく、気体排出口65uを開閉する例を示した。この例では、分析装置に閉鎖ヘッド4uが設けられており、この閉鎖ヘッド4uが密着して気体排出口65uが閉鎖される状態と、閉鎖ヘッド4uを離間させて気体排出口65uが開放される状態と、を選択できるように構成されている。閉鎖ヘッド4uは、気体排出口65uの閉鎖時に、この気体排出口65tを適切に閉鎖できるように、ゴムなどのシール材41uを気体排出口65uを覆いうる部位に設けておくのが好ましい。
【0100】
次に、本発明の実施の形態について説明する。ただし、本実施の形態において参照する図面においては、先に説明した参考例に係る分析装置X1,X2および分析用具(マイクロデバイス)Y1,Y2(図1および図4、図24など参照)と同様な部材または要素については同一の符号を付してあり、それらについての重複説明を省略するものとする。
【0101】
図32ないし図34に示したように、分析用具Y3は、分析用具Y2と基本的には同様な構成である。ただし、分析用具Y3においては、カバー6vに試料液導入口61v、気体排出口62v,65vが設けられており、試料液導入口61vおよび気体排出口62v,65vがシール材66v,67v,68vにより閉鎖されている。これにより、流路51vの内部が密閉状態とされ、試薬部513が水分などにより暴露されるのが抑制されている。
【0102】
各シール材66v〜68vは、光を吸収したときに照射領域が溶融して開口が形成されるものであり、開口の形成により流路51vの内部が外部に連通した状態とされる。シール材66v〜68vは、たとえば熱可塑性樹脂に色素を分散させて着色したものであり、厚みが5〜100μmに形成されている。このようなシール材66v〜68vは、たとえば接着剤を用いて、あるいは融着によりカバー6vに固定されている。
【0103】
熱可塑性樹脂としては、融点が100℃以下のもの、たとえばエチレン−酢酸ビニル共重合体を使用するのが好ましい。一方、色素としては、公知の種々のものを使用することができるが、シール材66v〜68vに照射される光の波長に応じて選択される。たとえば、シール材66v〜68vに対して赤色光を照射する場合には、色素としては緑色や黒色のものが使用される。緑色色素としては、典型的には銅フタロシアニン系染料、コバルトグリーン(CoO・Al2O3・Cr2O3)やチタン・コバルト系グリーン(TiO2・CoO・NiOZnO)を使用することができる。黒色色素としては、典型的にはカーボン系顔料、たとえばカーボンブラック(C)、銅−クロム系ブラック(CuO・Cr2O3)、銅−鉄系ブラック(CuO・Fe2O3)を使用することができる。
【0104】
シール材66v〜68vには、蓄熱性を確保する目的や強度向上の目的で充填剤を含有させてもよい。蓄熱目的に使用される充填剤としては、たとえば金属粒やガラス粒が使用され、強度向上のための充填剤としては、公知の種々のものを使用することができる。充填剤に代えて、あるいは充填剤に加えてメッシュを用い、蓄熱性や強度を確保するようにしてもよい。
【0105】
一方、分析装置X3は、基本的には分析装置X2と同様であるが、図32に示した光源部2vが反応部512ばかりでなく、シール材66v〜68vに対しても光を照射することができるように構成されている。すなわち、図35に示したように、光源部2vは、各シール材66v〜68vの上方位置A〜Cおよび反応部512の上方位置Dの間を移動可能とされている。ただし、シール材66v〜68vに光を照射するための光源部と、反応部512に光を照射するための光源部とを別々に設け、あるいはシール材512毎に個別に光源部を設けてもよい。
【0106】
光源部2vとしては、レーザダイオードを使用するのが好ましい。そうすれば、少ない電力によって開口を形成し、あるいは分析を行うことができる。光源部2vとしては、レーザダイオードの他に、発光ダイオード、ハロゲンランプ、キセノンランプ、あるいはタングステンランプなどを使用することもできる。ただし、広い波長範囲にわたって一定量の強度がある光(複合光)を出射する光源を用いる場合には、光源部2vからの光をフィルタに入射させてから、目的波長の光をシール材66v〜68vや反応部512に照射するようにしてもよい。
【0107】
試料の分析時には、まず図36Aに示したように、分析装置X3の装着部1に分析用具Y3を装着した状態とする。先にも説明したように、分析用具Y3は、試料液導入口61vがシール材68vにより閉鎖されているため、そのままでは試料を導入することができない。そのため、図36Bに示したようにシール材68vに開口68v′を形成し、試料液導入口61vを開放状態とする必要がある。そのためには、図35および図36Aに示したように、シール材68vの上方Aに光源部2vを位置させ、分析装置X3の光源部2vによりシール材68vに光を照射すればよい。光源部2vとしてレーザダイオードを用いる場合には、シール材68vに対するレーザ光の照射条件は、レーザ光の波長特性あるいはシール材68vの組成や厚さなどに応じて設定されるが、スポット径、出力、および照射時間は、それぞれ、たとえば50〜300μm、15〜50mW、および0.5〜10秒とされる。
【0108】
図36Bに示したように、シール材68vに開口68v′を形成した場合には、開口68v′および試料液導入口61vを介して、受液部50に試料液Sを供給し、図36Bおよび図36Cに示した状態とする。なお、図36Cにおいては、クロスハッチングを施した部分が試料液Sである。
【0109】
次いで、図37Aに示したように、シール材66vの上方に光源部2vを位置させて光源部2vによりシール材66vに光を照射する。これにより、図37Bに示したように、シール材66vに開口66v′が形成され、気体排出口62vが開放状態とされる。気体排出口62vを開放状態とすれば、流路51vにおける分岐部511までの部分および分岐流路53vにおいて毛細管現象が生じ、受液部50の試料液Sが移動して分岐部511に到達する。先に触れたように、分析用具Y3では、気体排出口65vが閉鎖されているために、分岐部511に至った試料液Sは、分岐部511を超えて反応部512に到達することができず、分岐流路53vを進行する。これにより、図37Bおよび図37Cに示したように、反応部512のごく近傍に試料液Sが存在する状態が達成され、反応部512において試料液Sと試薬部513に含まれる試薬とを反応させるための準備が終了する。ただし、開口68v′(図36B参照)を形成したのみでは十分な量の試料液Sを導入できない場合には、図37Bに示したように開口66v′を形成してから試料液Sを導入するようにしてもよい。
【0110】
続いて、図38Aに示したように、シール材67vの上方に光源部2vを位置させて光源部2vによりシール材67vに光を照射する。これにより、図38Bに示したように、シール材67vに開口67v′が形成され、気体排出口65vが開放状態とされる。気体排出口65vを開放状態とすれば、分岐部511と気体排出口65vとの間において毛細管現象が生じ、図38Bおよび図38Cに示したように試料液Sが反応部512に供給される。反応部512では、試料液Sと試薬部513における試薬とが反応し、たとえば試料中の被検知成分の量に相関した呈色を示し、あるいは被検知成分の量に応じた反応物が生成する。これにより、反応部512が、被検知成分の量に応じた透過性(吸収性)を示すこととなる。
【0111】
反応部512への試料供給から一定時間経過した場合には、図39に示したように、光源部2vを反応部512の上方に位置させて光源部2vにより反応部512に光を照射する。このときの反応部512での透過光は、受光部3において受光される。分析装置X3では、受光部3での受光量に基づいて、試料の分析、たとえば被検知成分の濃度演算を行う。
【0112】
本実施の形態では、試料液導入口61vや気体排出口62v,65vをシール材66v〜68vにより閉塞しておき、このシール材66v〜68vに光を照射するといった簡易な手法により、閉鎖状態から開放状態とすることができる。このため、分析用具Y3に開口66v′〜68v′を形成するに当たって、分析装置X3の構成がさほど複雑化することもないため、製造コストの上昇を抑制しつつ分析用具Y3に開口を形成することができる。また、分析用具Y3の反応部512に光を照射するための光源を利用して分析用具Y3に開口66v′〜68v′を形成するようにすれば、分析装置X3の複雑化および製造コストの上昇をより確実に抑制することができる。さらに、光源としてレーザダイオードを用いれば、少ない消費電力で確実に分析用具Y3に対して開口66v′〜68v′を形成することができるため、ランニングコスト的にも有利である。
【0113】
もちろん、本発明に係る開口形成方法は、上述した実施の形態には限定されない。たとえば、本発明は、試料液導入口61vおよび気体排出口62v,65vの全てがシール材66v〜68vにより覆われている場合に限らず、上記した3つの口61v,62v,65vのうち、少なくとも1つの口が塞がれている場合に適用することができる。また、本発明は、図32に示したような分岐流路53vを備えた分析用具Y3に限らず、図40Aおよび図40Bに示したように、分析流路を備えていない分析用具Y3′,Y3″に対しても適用することができる。図40Aには試料液導入口61v′および気体排出口65v′の双方が閉鎖された分析用具Y3′の例を、図40Bには気体排出口65v″のみが閉鎖された分析用具Y3″の例を示した。
【0114】
上記本発明の参考例および本発明の実施形態では、反応部に照射したときの透過光に基づいて分析を行う場合を例にとって説明したが、本発明は反応部からの反射光に基づいて試料の分析を行う場合にも適用可能である。反応部への光照射および透過光の測定は、必ずしも個々の反応部に対して個別に行う必要はなく、複数の反応部に対して一括して行ってもよい。
【0115】
本発明は、毛細管現象を利用して移動成分を移動させる構成の分析用具を用いる場合に適用できるため、光学的手法により分析を行うように構成されたものに限らず、電気化学的手法により分析を行うように構成されたものを用いることもできる。さらには、試料を移動させる場合のみならず、試料に代えて試薬を移動させ、あるいはキャリア液とともに試料や試薬を移動させる分析手法にも適用することができる。もちろん、分析用具としてマイクロデバイスを使用する場合に限らず、その他の構成の分析用具を使用する場合にも本発明を適用できるのはいうまでもない。
【実施例】
【0116】
以下においては、レーザダイオードを用いてシール材に対して開口が形成できるか否かについて検証する。
【0117】
[実施例1]
本実施例においては、酒井硝子エンジニアリング(株)製のレーザダイオードユニットを用いて緑色樹脂シートに開口が形成されるか否かを確認した。レーザダイオードユニットは、光源として中心波長が658nmの赤色光を出射可能なレーザダイオード(HL6501MG;(株)日立製作所)を備えたものであり、焦点距離が3mm、焦点でのスポット径が100μmとなるように構成されたものである。レーザダイオードからの光出力は、27.5mWとし、緑色樹脂シートに対するレーザ光の照射時間は、表1に示した通りとした。一方、緑色樹脂シートとしては、100重量部のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)(酢酸ビニル含量28%、融点58℃)のホットメルトシート(日東シンコー(株)製)に対して、緑色色素としての銅フタロシアニンを2.0重量部となるように添加し、膜厚を10μmに調整したものを使用した。この緑色樹脂シートは、波長が658nmである光に対する光吸収率が約97%のものである。緑色樹脂シートに開口が形成されているか否かは、顕微鏡(SZX9;オリンパス光学工業(株))により観察した。その結果を、表1、図41Aおよび図41Bに示した。図41Aおよび図41Bは、レーザ光の照射時間を0.50secおよび0.60secとしたときの緑色樹脂シートを、顕微鏡によって30倍に拡大した状態を示すものである。
【0118】
【表1】
【0119】
[実施例2]
本実施例においては、緑色樹脂シートの膜厚を50pm(波長658nmの光に対する光吸収率が約100%)に調整し、緑色樹脂シートに対するレーザ光の照射時間を表2に示した通りとした以外は実施例1と同様とし、緑色樹脂シートに開口が形成されるか否かを確認した。その結果を、表2、図42A、図42B、図43Aおよび図43Bに示した。図42Aおよび図42Bは、レーザ光の照射時間を0.50sec、0.80sec、1.00secおよび2.00secとしたときの緑色樹脂シートを、顕微鏡によって30倍に拡大した状態を示すものである。
【0120】
【表2】
【0121】
[実施例3]
本実施例においては、黒色樹脂シートに対してレーザ光の照射により開口が形成されるか否かを確認した。黒色樹脂シートとしては、EVA100重量部に対して黒色色素としてのカーボンブラックを1.5重量部添加して黒色に着色し、膜厚を10μmに調整したものを用いた。この黒色樹脂シートは、波長が658nmの光に対する光吸収率が約99%のものである。レーザ光の照射条件(照射時間を除く)は、実施例1と同様とした。その結果を表3に示した。図44Aおよび図44Bには、レーザ光の照射時間を1.0secおよび3.0secとしたときの黒色樹脂シートを、顕微鏡によって30倍に拡大した状態を示すものである。
【0122】
【表3】
【0123】
[結果の考察]
実施例1の緑色樹脂シート(膜厚10μm、光吸収率約97%)では、レーザダイオードからの光出力を27.5mWに設定した場合には、表1、図41Aおよび図41Bから分かるように、レーザ光を0.5sec以上照射した場合に開口が形成されることが確認された。実施例2の緑色樹脂シート(膜厚50μm、光吸収率約100%)では、表2、図42A、図42B、図43Aおよび図43Bから分かるように、レーザ光を0.9sec以上照射した場合に開口が形成されることが確認された。したがって、光吸収率が100%に近い樹脂シートに対しては、膜厚が10〜50μmの範囲であれば、27.5mWという比較的小さい出力で、かつ1.0sec程度という短時間で、十分な開口を形成することができる。
【0124】
実施例3の黒色樹脂シート(膜厚10μm、光吸収率約99%)については、表3、図44Aおよび図44Bから分かるように、実施例1および実施例2と同様なレーザ光の照射条件(照射時間を除く)においては、数秒程度のレーザ光の照射により十分な開口が形成されることが確認された。
【0125】
以上のように、融点の低い熱可塑性樹脂に色素を添加して光吸収率を高くした樹脂シートに対しては、レーザ光を照射することによって比較的に短時間で開口を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】図1は、本発明の参考例に係る分析装置および分析用具の一例の概略構成を示す模式図である。
【図2】図2は、図1のZ1−Z1線に沿う断面図である。
【図3】図3は、図1に示したマイクロデバイスの全体斜視図である。
【図4】図4は、図3に示したマイクロデバイスの分解斜視図である。
【図5】図5Aは図3のZ2−Z2線に沿う断面図、図5Bは図3のZ3−Z3線に沿う断面図である。
【図6】図6は、マイクロデバイスの基板の平面図である。
【図7】図7は、マイクロデバイスのカバーの底面図である。
【図8】図8は、第1気体排出口を開放させる動作を説明するための断面図である。
【図9】図9は、第2気体排出口を開放させる動作を説明するための断面図である。
【図10】図10は、流路における試料液の移動状態を説明するための模式図である。
【図11】図11は、共通流路を備えた分析用具の他の例を説明するための模式的平面図である。
【図12】図12は、共通流路を備えた分析用具のさらに他の例を説明するための模式的平面図である。
【図13】図13は、共通流路を備えた分析用具のさらに他の例を説明するための模式的平面図である。
【図14】図14は、共通流路を備えた分析用具のさらに他の例を説明するための模式的平面図である。
【図15】図15は、共通流路を備えた分析用具のさらに他の例を説明するための模式的平面図である。
【図16】図16は、共通流路を備えた分析用具のさらに他の例を説明するための模式的平面図である。
【図17】図17は、共通流路を備えた分析用具のさらに他の例を説明するための模式的平面図である。
【図18】図18は、共通流路を備えた分析用具のさらに他の例を説明するための模式的平面図である。
【図19】図19は、共通流路を備えた分析用具のさらに他の例を説明するための模式的平面図である。
【図20】図20は、共通流路を備えた分析用具のさらに他の例を説明するための模式的平面図である。
【図21】図21は、複数の流路を備えた分析用具の他の例を説明するための模式的平面図である。
【図22】図22は、複数の流路を備えた分析用具のさらに他の例を説明するための模式的平面図である。
【図23】図23は、複数の分岐流路を備えた分析用具の例を示す透視平面図である。
【図24】図24は、本発明の他の参考例に係る分析装置および分析用具の一例の概略構成を示す模式図である。
【図25】図25は、図24のZ4−Z4線に沿う断面図である。
【図26】図26は、図25に示したマイクロデバイスの透視平面図である。
【図27】図27は、流路の気体排出口を開閉させるための他の手法を説明するための要部断面図である。
【図28】図28Aおよび図28Bは、流路の気体排出口を開閉させるためのさらに他の手法を説明するための要部断面図である。
【図29】図29Aおよび図29Bは、流路の気体排出口を開閉させるためのさらに他の手法を説明するための要部断面図である。
【図30】図30Aは流路の気体排出口を開閉させるためのさらに他の手法を説明するための分析用具の全体斜視図、図30Bは、図30Aに示した分析用具の要部断面図である。
【図31】図31Aおよび図31Bは、流路の気体排出口を開閉させるためのさらに他の手法を説明するための要部断面図である。
【図32】図32は、本発明の実施の形態に係る分析装置および分析用具の一例の概略構成を示す模式図である。
【図33】図33は、図32のZ5−Z5線に沿う断面図である。
【図34】図34は、図32のZ6−Z6線に沿う断面図である。
【図35】図35は、光源部の移動経路を説明するための分析用具の透視平面図である。
【図36】図36Aは試料導入口の開放動作を説明するための断面図、図36Bは試料導入動作および試料の導入状態を説明するための断面図、図36Cは試料の導入状態を説明するための平面図である。
【図37】図37Aは、排気口の開放動作を説明するための断面図、図37Bおよび図37Cは試料の導入状態を説明するための断面図および平面図である。
【図38】図38Aは、排気口の開放動作を説明するための断面図、図38Bおよび図38Cは試料の導入状態を説明するための断面図および平面図である。
【図39】図39は、試料の分析手法を説明するための断面図である。
【図40】図40Aおよび図40Bは、本発明の開口方法を適用することができる分析用具の他の例を示す全体斜視図である。
【図41】図41Aおよび図41Bは、膜厚が10μmの緑色樹脂シートに対する開口の形成状態を顕微鏡で観察したものであり、図41Aはレーザ光の照射時間が0.5sec、図41Bはレーザ光の照射時間が0.6secのときの結果を示すものである。
【図42】図42Aおよび図42Bは、膜厚が50μmの緑色樹脂シートに対する開口の形成状態を顕微鏡で観察したものであり、図42Aはレーザ光の照射時間が0.5sec、図42Bは光照射時間が0.8secのときの結果を示すものである。
【図43】図43Aおよび図43Bは、膜厚が50μmの緑色樹脂シートに対する開口の形成状態を顕微鏡で観察したものであり、図43Aはレーザ光の照射時間が1.0sec、図43Bはレーザ光の照射時間が2.0secのときの結果を示すものである。
【図44】図44Aおよび図44Bは、膜厚が10μmの黒色樹脂シートに対する開口の形成状態を顕微鏡で観察したものであり、図44Aはレーザ光の照射時間が1.0sec、図44Bはレーザ光の照射時間が3.0secのときの結果を示すものである。
【図45】図45は、従来のマイクロデバイスを説明するための全体斜視図である。
【図46】図46は、従来のマイクロデバイスの他の例を説明するための透視平面図である。
【図47】図47は、従来の分析用具を説明するための平面図である。
【図48】図48は、図47のZ7−Z7線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0127】
Y3 分析用具
51 流路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を移動させるための流路を備えた分析用具に対して、上記流路の内部と外部との間を連通する開口を形成する方法であって、
上記分析用具に設定された目的部位に対して光照射する一方で、上記目的部位において光エネルギを吸収させることにより、上記開口を形成する、分析用具に対する開口形成方法。
【請求項2】
上記分析用具は、上記流路の内部を外部に連通させるための連通孔と、この連通孔を塞ぎ、かつ上記目的部位を含む閉塞部と、を備えたものである、請求項1に記載の分析用具に対する開口形成方法。
【請求項3】
上記連通孔は、上記流路の内部において試料を移動させるときに、上記流路の内部の気体を排出するための排気口である、請求項2に記載の分析用具に対する開口形成方法。
【請求項4】
上記連通孔は、上記流路の内部に試料または試薬を導入するための液導入口である、請求項2に記載の分析用具に対する開口形成方法。
【請求項5】
上記閉塞部は、熱可塑性樹脂と、上記閉塞部に照射される光に対する吸収性を高めるための添加剤と、を含有した材料により形成されている、請求項2に記載の分析用具に対する開口形成方法。
【請求項6】
上記熱可塑性樹脂は、融点が100℃以下である、請求項5に記載の分析用具に対する開口形成方法。
【請求項7】
上記熱可塑性樹脂は、エチレン−酢酸ビニル共重合体である、請求項5に記載の分析用具に対する開口形成方法。
【請求項8】
上記閉塞部は、蓄熱用充填剤を含んでいる、請求項5に記載の分析用具に対する開口形成方法。
【請求項9】
上記閉塞部は、膜厚が5〜100μmのシート状に形成されたものである、請求項2に記載の分析用具に対する開口形成方法。
【請求項10】
上記目的部位に対する光照射は、レーザダイオードを用いて行われる、請求項1に記載の分析用具に対する開口形成方法。
【請求項11】
上記分析用具は、光学的手法を用いて試料を分析するように構成されたものであり、かつ、
試料の分析時における光照射と、上記目的部位に対する光照射とを、同一の光源を用いて行う、請求項1に記載の分析用具に対する開口形成方法。
【請求項1】
試料を移動させるための流路を備えた分析用具に対して、上記流路の内部と外部との間を連通する開口を形成する方法であって、
上記分析用具に設定された目的部位に対して光照射する一方で、上記目的部位において光エネルギを吸収させることにより、上記開口を形成する、分析用具に対する開口形成方法。
【請求項2】
上記分析用具は、上記流路の内部を外部に連通させるための連通孔と、この連通孔を塞ぎ、かつ上記目的部位を含む閉塞部と、を備えたものである、請求項1に記載の分析用具に対する開口形成方法。
【請求項3】
上記連通孔は、上記流路の内部において試料を移動させるときに、上記流路の内部の気体を排出するための排気口である、請求項2に記載の分析用具に対する開口形成方法。
【請求項4】
上記連通孔は、上記流路の内部に試料または試薬を導入するための液導入口である、請求項2に記載の分析用具に対する開口形成方法。
【請求項5】
上記閉塞部は、熱可塑性樹脂と、上記閉塞部に照射される光に対する吸収性を高めるための添加剤と、を含有した材料により形成されている、請求項2に記載の分析用具に対する開口形成方法。
【請求項6】
上記熱可塑性樹脂は、融点が100℃以下である、請求項5に記載の分析用具に対する開口形成方法。
【請求項7】
上記熱可塑性樹脂は、エチレン−酢酸ビニル共重合体である、請求項5に記載の分析用具に対する開口形成方法。
【請求項8】
上記閉塞部は、蓄熱用充填剤を含んでいる、請求項5に記載の分析用具に対する開口形成方法。
【請求項9】
上記閉塞部は、膜厚が5〜100μmのシート状に形成されたものである、請求項2に記載の分析用具に対する開口形成方法。
【請求項10】
上記目的部位に対する光照射は、レーザダイオードを用いて行われる、請求項1に記載の分析用具に対する開口形成方法。
【請求項11】
上記分析用具は、光学的手法を用いて試料を分析するように構成されたものであり、かつ、
試料の分析時における光照射と、上記目的部位に対する光照射とを、同一の光源を用いて行う、請求項1に記載の分析用具に対する開口形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【公開番号】特開2009−63597(P2009−63597A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329207(P2008−329207)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【分割の表示】特願2004−502004(P2004−502004)の分割
【原出願日】平成15年4月28日(2003.4.28)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【分割の表示】特願2004−502004(P2004−502004)の分割
【原出願日】平成15年4月28日(2003.4.28)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】
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