説明

分波回路

【課題】入力信号から複数の帯域の信号を分離する際に、各帯域の信号の損失の増加を抑えることができる分波回路を提供する。
【解決手段】
分波回路100において、バンドパスフィルタ1は、入力信号50のうち、第1帯域の信号51を通過させる。バンドパスフィルタ2は、入力信号50のうち、第2帯域の信号52を通過させる。バンドパスフィルタ1は、前段共振回路11と、後段共振回路12と、コイル13とを備える。前段共振回路11は、コイル111と、コイル111と直列に接続されたコンデンサ112とを有し、バンドパスフィルタ1の入力端子14に接続される。後段共振回路12は、コイル121と、コイル121と直列に接続されたコンデンサ122とを有し、前段共振回路11とバンドパスフィルタ1の出力端子15との間に接続される。コイル13は、前段共振回路11の出力端子113と接地15との間に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分波回路に関し、さらに詳しくは、入力信号から、第1帯域の信号と、第1帯域と異なる第2帯域の信号とを分離する分波回路に関する。
【背景技術】
【0002】
分波回路は、入力信号から複数の周波数帯域の信号を分離する回路である。分波回路を用いることにより、たとえば、DAB(Digital Audio Broadcast)の周波数帯域(174〜240MHz)の信号と、FM(Frequency Modulation)放送の周波数帯域(76〜108MHz)の信号とを、入力信号から分離することができる。分波回路は、DABの周波数帯域の信号を通過させるバンドパスフィルタと、FM放送の周波数帯域の信号を通過させるバンドパスフィルタを備える。バンドパスフィルタは、所望の帯域の信号を通過させ、所望の帯域以外の信号を減衰させる回路である。
【0003】
従来から、オペアンプを用いたバンドパスフィルタなどが知られている。また、コイルと、コイルに並列に接続されたコンデンサとを備える並列共振回路を用いた共振器結合型バンドパスフィルタが知られている。特許文献1には、2つの並列共振回路を備える共振器結合型バンドパスフィルタが記載されている。特許文献1に係るバンドパスフィルタは、2つの並列共振回路がπ型に接続されることにより形成される。
【0004】
共振器結合型バンドパスフィルタの特徴の一つとして、急峻な周波数特性がある。共振器結合型バンドパスフィルタを用いることにより、入力信号から狭帯域の信号を分離することができる。
【0005】
しかし、従来の共振器結合型バンドパスフィルタにおいて、通過帯域の入力インピーダンスは、通過帯域以外の帯域における入力インピーダンスよりも高い。共振器結合型バンドパスフィルタでは、並列共振回路が接地されているため、通過帯域以外の信号は、並列共振回路を通過して接地へ出力される。したがって、入力信号から第1帯域の信号と第2帯域の信号とを分離する際に、第1帯域の信号を通過させるために共振器結合型バンドパスフィルタを用いた場合、第2帯域の信号の損失が増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−298202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、入力信号から複数の帯域の信号を分離する際に、各帯域の信号の損失の増加を抑えることができる分波回路を提供することである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明による分波回路は、入力信号から、第1帯域の信号と、第1帯域と異なる第2帯域の信号とを分離する。分波回路は、第1バンドパスフィルタと、第2バンドパスフィルタとを含む。第1バンドパスフィルタは、入力信号のうち、第1帯域の信号を通過させる。第2バンドパスフィルタは、入力信号のうち、第2帯域の信号を通過させる。第1バンドパスフィルタは、前段共振回路と、後段共振回路と、第3コイルとを備える。前段共振回路は、第1コイルと、第1コイルと直列に接続された第1コンデンサとを有し、第1バンドパスフィルタの入力端子に接続される。後段共振回路は、第2コイルと、第2コイルと直列に接続された第2コンデンサとを有し、前段共振回路と第1バンドパスフィルタの出力端子との間に接続される。第3コイルは、前段共振回路の出力端子と接地との間に接続される。
【0009】
本発明によれば、第1バンドパスフィルタの第1帯域における入力インピーダンスは、第1帯域以外の帯域の入力インピーダンスよりも低くなる。第2帯域の信号が第1バンドパスフィルタを介して接地に出力されることが防止されるため、第2帯域の信号の損失を防ぐことができる。
【0010】
好ましくは、第1バンドパスフィルタはさらに、第3コンデンサを含む。第3コンデンサは、第3コイルと接地との間に接続される。
【0011】
これにより、第1バンドパスフィルタの第1帯域における遮断特性を急峻にすることができる。
【0012】
好ましくは、第1バンドパスフィルタのインピーダンスをZとし、第1バンドパスフィルタの中心周波数をfとし、第1バンドパスフィルタの帯域幅をΔfとし、定数をg1,g2とした場合、第1コイルのインダクタンスLs1及び第2コイルのインダクタンスLs2は、下記(式1)により表わされる。第1コンデンサのキャパシンタンスCs1及び第2コンデンサのキャパシタンスCs2は、(式2)により表わされる。第3コイルのインダクタンスLは、(式3)によって表わされる。
【数1】

【数2】

【数3】

【0013】
上記(式1)、(式2)及び(式3)を用いることにより、第1バンドパスフィルタを構成する各素子のパラメータを決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態による分波回路の回路図である。
【図2】従来のローパスフィルタの回路図である。
【図3】図1に示される共振器結合型バンドパスフィルタのゲインの周波数特性を示すボーデ線図である。
【図4】図1に示される共振器結合型バンドパスフィルタの入力インピーダンスの周波数特性を示すグラフである。
【図5】図1に示される分波回路のゲインの周波数特性を示すボーデ線図である。
【図6】図1に示される分波回路の入力インピーダンスの周波数特性を示すグラフである。
【図7】従来の共振器結合型バンドパスフィルタの回路図である。
【図8】図7に示される共振器結合型バンドパスフィルタのゲインの周波数特性を示すボーデ線図である。
【図9】図7に示される共振器結合型バンドパスフィルタの入力インピーダンスの周波数特性を示すグラフである。
【図10】図1に示される共振器結合型バンドパスフィルタの変形例の回路図である。
【図11】図10に示されるバンドパスフィルタのゲインの周波数特性を示すボーデ線図である。
【図12】図10に示されるバンドパスフィルタの入力インピーダンスの周波数特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0016】
{分波回路の構成}
図1は、本実施の形態に係る分波回路100の回路図である。図1を参照して、分波回路100は、バンドパスフィルタ1,2と、入力端子101と、出力端子102,103とを備える。バンドパスフィルタ1は、入力端子101と出力端子102との間に接続される。バンドパスフィルタ2は、入力端子101と出力端子103との間に接続される。
【0017】
分波回路100は、入力端子101から入力信号50を入力する。バンドパスフィルタ1は、入力信号50のうち、第1帯域の信号51を通過させる。バンドパスフィルタ1を通過した第1帯域の信号51は、出力端子102から出力される。バンドパスフィルタ2は、入力信号50のうち、第2帯域の信号52を通過させる。バンドパスフィルタ2を通過した第2帯域の信号52は、出力端子103から出力される。
【0018】
たとえば、第1帯域は、DABの周波数帯域(174〜240MHz)である。第2帯域は、FM放送の周波数帯域(76〜108MHz)である。第1帯域及び第2帯域は、これらの周波数帯域に限定されない。第2帯域は、第1帯域よりも高い周波数帯域であってもよいし、第1帯域よりも低い周波数帯あってもよい。
【0019】
バンドパスフィルタ1の構成を説明する。バンドパスフィルタ1は、共振器結合型バンドパスフィルタである。バンドパスフィルタ1は、前段共振回路11と、後段共振回路12と、コイル13と、入力端子14と、出力端子15とを備える。
【0020】
前段共振回路11は、コイル111と、コイル111と直列に接続されるコンデンサ112とを有する直列共振回路である。前段共振回路11は、入力端子14に接続される。前段共振回路11は、さらに、出力端子113を備える。コイル111の一端は、入力端子14に接続され、コイル111の他端は、コンデンサ112に接続される。コンデンサ112は、コイル111と出力端子113との間に接続される。
【0021】
後段共振回路12は、コイル121と、コイル121に直列に接続されるコンデンサ122とを有する直列共振回路である。後段共振回路12は、前段共振回路11の出力端子15と、バンドパスフィルタ1の出力端子113との間に接続される。コイル121の一端は、出力端子113に接続され、他端は、コンデンサ122に接続される。コンデンサ122は、コイル121と出力端子15との間に接続される。
【0022】
コイル13は、出力端子113と接地15との間に接続される。
【0023】
バンドパスフィルタ2の構成を説明する。バンドパスフィルタ2は、コンデンサ21,23と、コイル22,24と、出力端子26とを備える。
【0024】
コンデンサ21の一端は、入力端子101に接続され、コンデンサ21の他端は、コイル22の一端に接続される。コイル22の他端は、コンデンサ23の一端に接続される。コンデンサ23の他端は、出力端子26に接続される。コイル24は、コンデンサ21の他端と、接地27との間に接続される。
【0025】
バンドパスフィルタ2の構成は、上記の構成に限定されない。
【0026】
{バンドパスフィルタ1の特性}
バンドパスフィルタ1は、2つの直列共振回路(前段共振回路11及び後段共振回路12)を備える共振器結合型バンドパスフィルタである。バンドパスフィルタ1において、第1帯域以外の周波数帯域における入力インピーダンスは、第1帯域における入力インピーダンスよりも高い。
【0027】
このため、バンドパスフィルタ2の第2帯域における入力インピーダンスが、バンドパスフィルタ1の第2帯域における入力インピーダンスよりも低い場合、入力信号50に含まれる第2帯域の信号52は、バンドパスフィルタ2に入力される。すなわち、第2帯域の信号52が、前段共振回路11とコイル13とを通過して、接地15へ出力されることを防止できる。したがって、分波回路100は、第2帯域の信号52の損失を防止しつつ、第1帯域の信号51及び第2帯域の信号52を入力信号50から分離することができる。
【0028】
{バンドパスフィルタ1を構成する各素子の関係}
バンドパスフィルタ1を構成する各素子の関係について説明する。前段共振回路11の共振周波数と、後段共振回路12の共振周波数とは、一致する。これにより、急峻なゲインの周波数特性を得ることができる。
【0029】
さらに、コイル111のインダクタンスとコイル121のインダクタンスとが一致する。この場合、コンデンサ112のキャパシタンスとコンデンサ122のキャパシタンスとが一致する。一致しない場合、前段共振回路11及びコイル13により構成される共振回路の中心周波数と、後段共振回路12及びコイル13により構成される共振回路の中心周波数とがずれる。この結果、バンドパスフィルタ1の帯域幅が広がるため、急峻なゲインの周波数特性を得ることができなくなる。
【0030】
以下、バンドパスフィルタ1を構成する各素子の値の算出方法を説明する。素子の値の算出には、バターワース特性を有する正規化ローパスフィルタの素子の値を使用する。
【0031】
図2は、正規化ローパスフィルタ60の回路図である。正規化ローパスフィルタ60は、コイル61と、コンデンサ62と、入力端子63と、出力端子64とを備える。コイル61の一端は、入力端子63に接続され、コイル61の他端は、出力端子64に接続される。コンデンサ62は、コイル61の他端と接地65との間に接続される。
【0032】
正規化ローパスフィルタ60において、インピーダンスは1Ωである。遮断周波数は、(1/2π)Hzである。したがって、コイル61のインダクタンスは、1.41421Hである。コンデンサ62のキャパシタンスは、1.41421Fである。
【0033】
バンドパスフィルタ1の中心周波数、帯域幅、インピーダンスを、それぞれf、Δf、Zとする。これらのパラメータを用いて、コイル13,111,121及びコンデンサ112,114のそれぞれの値を算出する。
【0034】
最初に、コイル61のインダクタンス及びコンデンサ62のキャパシタンスに基づいて、下記(式4)に示すように、定数g1,g2を定義する。
【数4】

【0035】
定数g1,g2は、正規化ローパスフィルタ60のコイル61又はコンデンサ62の値に一致する。定数g1,g2を用いて、正規化結合定数k12を下記(式5)により定義する。
【数5】

【0036】
正規化結合定数k12を用いて、下記(式6)により定数K12を定義する。
【数6】

【0037】
定数K12は、中心周波数f及び帯域幅Δfに合わせて、正規化結合定数k12を変更した数値である。定数K12は、前段共振回路11と後段共振回路12とを結合する結合回路の特性値である。本実施の形態では、結合回路は、コイル13に相当する。
【0038】
コンデンサ112,122のキャパシンタンスの暫定値(以下、暫定キャパシタンスと呼ぶ)をCt1とする。暫定キャパシタンスCt1は、どのような値でもよい。コイル111,121のインダクタンスの暫定値(以下、「暫定インダクタンス」と呼ぶ。)Lt1を、下記(式7)を用いて算出する。暫定インダクタンスLt1は、暫定キャパシタンスCt1に共振するコイルのインダクタンスとして算出される。
【数7】

【0039】
結合回路(コイル13)のインダクタンスの暫定値(以下、「暫定結合インダクタンス」と呼ぶ。)Lctは、下記(式8)により算出される。
【数8】

【0040】
次に、下記(式9)に示すように、コイル111,121の暫定インダクタンスLt1から、コイル13のインダクタンスLctを差し引く。結合回路(コイル13)は、コイル111とともにコンデンサ112と共振する。また、結合回路(コイル13)は、コイル121とともにコンデンサ122と共振する。このため、暫定インダクタンスLt1のコイル111,121をそのまま使用した場合、バンドパスフィルタ1の中心周波数が、fからずれる。ずれが発生しないように、下記(式9)を用いて、暫定インダクタンスLt1を調整する。これにより、コイル111,121の暫定インダクタンスLt2が算出される。
【数9】

【0041】
次に、インピーダンス変換を行う。バンドパスフィルタ1の入力インピーダンスRに合わせて、暫定キャパシンタンスCt1、暫定インダクタンスLt2、暫定結合インダクタンスLctを変更する。
【0042】
下記(式10)及び(式11)を用いて、バンドパスフィルタ1の入力インピーダンスZ1及び出力インピーダンスZ2をそれぞれ算出する。
【数10】

【数11】

【0043】
正規化ローパスフィルタ60がバターワース特性を有すると仮定しているため、入力インピーダンスZ1と出力インピーダンスZ2とは、同一の値となる。また、入力インピーダンスZ1及び出力インピーダンスZ1は、暫定キャパシタンスCt1を含んでいるため、バンドパスフィルタ1のインピーダンスの暫定値に相当する。
【0044】
下記(式12)を用いて、バンドパスフィルタ1のインピーダンスRと、インピーダンスZ1の比率Rを算出する。
【数12】

【0045】
下記(式13)に示すように、暫定インダクタンスLt2に比率Rを乗算することにより、コイル111のインダクタンスLs1及びコイル121のインダクタンスLs2が得られる。
【数13】

【0046】
下記(式14)に示すように、暫定キャパシタンスCt1に比率Rの逆数を乗算することにより、コンデンサ112のキャパシタンスCs1及びコンデンサ122のキャパシタンスCs2が得られる。
【数14】

【0047】
バンドパスフィルタ1において、結合回路は、コイル13により構成される。したがって、コイル13のインダクタンスLは、下記(式15)に示すように、結合暫定インダクタンスLctに比率Rを乗算することにより算出される。
【数15】

【0048】
上述のように、g1,g2は、定数である。したがって、コイル13,111,121のインダクタンスL,Ls1,Ls2及びコンデンサ112,122のキャパシタンスCs1,Cs2は、バンドパスフィルタ1のインピーダンスR、中心周波数f及び帯域幅Δfにより決定されることが分かる。
【0049】
{周波数特性のシミュレーション}
以下、バンドパスフィルタ1の周波数特性を説明する。バンドパスフィルタ1に関するパラメータを設定して、バンドパスフィルタ1の周波数特性をシミュレーションした。
【0050】
シミュレーションにあたり、バンドパスフィルタ1の中心周波数f、帯域幅Δf及びインピーダンスZを、207MHz、105MHz及び75Ωに設定した。コイル111,121のインダクタンスLs1,Ls2を103.1nHに設定し、コンデンサ112,122のキャパシンタンスCs1,Cs2を3.667pFに設定した。コイル13のインダクタンスLを、57.66nHに設定した。
【0051】
図3は、バンドパスフィルタ1のゲインの周波数特性(遮断特性)のシミュレーション結果を示すボーデ線図である。図4は、バンドパスフィルタ1の入力インピーダンスの周波数特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【0052】
図3を参照して、バンドパスフィルタ1のゲインは、第1帯域(174〜240MHz)にピークを有する。図4を参照して、バンドパスフィルタ1の入力インピーダンスが、中心周波数f(207MHz)を中心に減少している。すなわち、第1帯域における入力インピーダンスは、第1帯域以外の帯域における入力インピーダンスよりも低い。
【0053】
次に、分波回路100の周波数特性をシミュレーションした。図5は、分波回路100のゲインの周波数特性(遮断特性)のシミュレーション結果を示すボーデ線図である。図6は、分波回路100の入力インピーダンスの周波数特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【0054】
分波回路100のシミュレーションにおいて、バンドパスフィルタ1の各素子の値は、上述のバンドパスフィルタ1のシミュレーション時に設定した値と同じである。バンドパスフィルタ2において、コンデンサ21のキャパシタンスを18pFに設定し、コンデンサ23のキャパシタンスを5.6pFに設定した。コイル22のリアクタンスを560mHに設定し、コイル24のリアクタンスを270mHに設定した。
【0055】
図5を参照して、曲線71は、バンドパスフィルタ1のゲインの周波数特性に相当し、曲線72は、バンドパスフィルタ2のゲインの周波数特性に相当する。第1帯域及び第2帯域にピークが存在しているため、分波回路100は、入力信号50から、第1帯域の信号51及び第2帯域の信号52を分離できることが分かる。
【0056】
図6を参照して、曲線81は、バンドパスフィルタ1の入力インピーダンスの周波数特性に相当する。曲線82は、バンドパスフィルタ2の入力インピーダンスの周波数特性に相当する。第1帯域において、バンドパスフィルタ1の入力インピーダンスは、バンドパスフィルタ2の入力インピーダンスよりも低い。したがって、第1帯域の信号51は、バンドパスフィルタ1に入力される。一方、第2帯域において、バンドパスフィルタ2の入力インピーダンスは、バンドパスフィルタ1の入力インピーダンスよりも低い。したがって、第2帯域の信号52は、バンドパスフィルタ2に入力される。
【0057】
この結果、第2帯域の信号52が、バンドパスフィルタ1を経由して接地15側へ出力されることが防止される。したがって、バンドパスフィルタ1を原因とした第2帯域の信号52の損失を防ぐことができる。
【0058】
次に、比較例として、従来の共振器結合型バンドパスフィルタのシミュレーション結果を説明する。図7は、従来の共振器結合型バンドパスフィルタの回路図である。図7に示すバンドパスフィルタ3は、コンデンサ31,33,35と、コイル32,34と、入力端子36と、出力端子37とを備える。
【0059】
コンデンサ31の一端は、入力端子36に接続され、コンデンサ31の他端は、出力端子37に接続される。コイル32の一端は、入力端子36に接続され、コイル32の他端は、接地される。コンデンサ33の一端は、入力端子36に接続され、コンデンサ33の他端は、接地される。すなわち、コンデンサ33は、コイル32と並列に接続される。コイル34の一端は、コンデンサ31の他端に接続され、コイル34の他端は、接地される。コンデンサ35の一端は、コンデンサ31の他端に接続され、コンデンサ35の他端は、接地される。すなわち、コンデンサ35は、コイル34と並列に接続される。
【0060】
図8は、バンドパスフィルタ3のゲインの周波数特性(遮断特性)のシミュレーション結果を示すボーデ線図である。図9は、バンドパスフィルタ3の入力インピーダンスの周波数特性のシミュレーション結果を示すグラフである。バンドパスフィルタ3の中心周波数f、帯域幅Δf及びインピーダンスZを、バンドパスフィルタ1と同じ値に設定した。コンデンサ31のキャパシタンスを10.25pFに設定し、コンデンサ33,35のキャパシンタンスを18.32pFに設定した。コイル32,34のインダクタンスを20.68mHに設定した。
【0061】
図3及び図8を参照して、バンドパスフィルタ1のゲインの周波数特性と、バンドパスフィルタ2のゲインの周波数特性とが一致している。
【0062】
図4及び図9を参照して、バンドパスフィルタ3の入力インピーダンスの周波数特性は、バンドパスフィルタ1の入力インピーダンスの周波数特性と逆になっている。すなわち、バンドパスフィルタ3において、第1帯域の入力インピーダンスが、第1帯域以外の帯域の入力インピーダンスよりも高い。
【0063】
したがって、分布回路100において、バンドパスフィルタ1をバンドパスフィルタ3に置き換えた場合、以下の問題が発生する。バンドパスフィルタ2の第2帯域における入力インピーダンスが、バンドパスフィルタ3の第2帯域における入力インピーダンスよりも高ければ、第2帯域の信号は、バンドパスフィルタ3を経由して接地へ出力される。第2帯域の信号は、バンドパスフィルタ2に入力されないため、第2帯域の信号の損失が大きくなる。
【0064】
{変形例}
図10は、バンドパスフィルタ1の変形例であるバンドパスフィルタ4の回路図である。図10を参照して、バンドパスフィルタ4は、バンドパスフィルタ1の構成に加えて、コンデンサ16を備えている。コンデンサ16は、コイル13と接地15の間に接続される。コイル13及びコンデンサ16は、直列共振回路130を構成する。
【0065】
図11は、バンドパスフィルタ4のゲインの周波数特性(遮断特性)のシミュレーション結果を示すボーデ線図である。図12は、バンドパスフィルタ4の入力インピーダンスの周波数特性を示すグラフである。バンドパスフィルタ1の各素子の値は、上述のバンドパスフィルタ1のシミュレーション時に設定した値と同じである。コンデンサ16のキャパシンタンスを56pFに設定した。
【0066】
図11を参照して、第2帯域における減衰量が著しく増加している。この理由は、直列共振回路130の共振周波数(約92MHz)が、第2帯域に含まれるためである。つまり、直列共振回路130は、ノッチフィルタとして機能する。直列共振回路130の共振周波数をfとし、コイル13のインダクタンスをL13とし、コンデンサ16のキャパシタンスをC16とした場合、共振周波数fは、下記(式16)によって表わされる。
【数16】

【0067】
図3及び図11を参照して、バンドパスフィルタ4のゲインの周波数特性が、バンドパスフィルタ1のゲインの周波数特性よりも急峻となっている。
【0068】
図4及び図12を参照して、バンドパスフィルタ1の入力インピーダンスの周波数特性と、バンドパスフィルタ4の入力インピーダンスの周波数特性との間に大きな差はない。したがって、分波回路100において、バンドパスフィルタ1をバンドパスフィルタ4に置き換えた場合であっても、バンドパスフィルタ4を原因とした第2帯域の信号の損失を防ぐとともに、入力信号50から第1帯域の信号51及び第2帯域の信号52を分離することができる。
【0069】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
100 分波回路
1,2 バンドパスフィルタ
11 前段共振回路
12 後段共振回路
22,24,31,33,35,61,111,121 コイル
21,23,32,34,62,112,122 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号から、第1帯域の信号と、前記第1帯域と異なる第2帯域の信号とを分離する分波回路であって、
前記入力信号のうち、前記第1帯域の信号を通過させる第1バンドパスフィルタと、
前記入力信号のうち、前記第2帯域の信号を通過させる第2バンドパスフィルタとを備え、
前記第1バンドパスフィルタは、
第1コイルと、前記第1コイルと直列に接続される第1コンデンサとを有し、前記第1バンドパスフィルタの入力端子に接続される前段共振回路と、
第2コイルと、前記第2コイルと直列に接続される第2コンデンサとを有し、前記前段共振回路と前記第1バンドパスフィルタの出力端子との間に接続される後段共振回路と、
前記前段共振回路の出力端子と接地との間に接続される第3コイルとを含む、分波回路。
【請求項2】
請求項1に記載の分波回路であって、
前記第1バンドパスフィルタはさらに、
前記第3コイルと接地との間に接続される第3コンデンサを含む、分波回路。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の分波回路であって、
前記第1バンドパスフィルタのインピーダンスをZとし、前記第1バンドパスフィルタの中心周波数をfとし、前記第1バンドパスフィルタの帯域幅をΔfとし、定数をg1,g2とした場合、前記第1コイルのインダクタンスLs1及び前記第2コイルのインダクタンスLs2は、下記(式1)により表わされ、
前記第1コンデンサのキャパシンタンスCs1及び前記第2コンデンサのキャパシタンスCs2は、(式2)により表わされ、
前記第3コイルのインダクタンスLは、(式3)によって表わされる分波回路。
【数1】

【数2】

【数3】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−74496(P2013−74496A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212677(P2011−212677)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(710014351)オンキヨー株式会社 (226)