説明

分流器及びこの分流器を備えた膨張弁並びにこの膨張弁を備えた冷凍装置

【課題】各分流管に冷媒の気液の均一化を図る分流器、この分流器を備える膨張弁並びにこの膨張弁を備える冷凍装置を提供する
【解決手段】分流器7は、内部に冷媒が流通する分流室70Aを有する分流器本体部70と、この分流器本体部70に設けられた第1配管取付孔71a、及びこの第1配管取付孔71aを介して分流室70A内に流入した冷媒を分流して流出するための分流管CP3が接続される第2配管取付孔72cとを備えている。分流室70Aには、第1配管取付孔71aから流入される冷媒が旋回流を形成する旋回流形成室70Bと、この旋回流形成室70Bから流出した冷媒の旋回速度を増加させる増速室70Cと、この増速室70Cから流出した冷媒の動圧の一部を静圧に変換する噴霧室70Dとが設けられ、噴霧室70Dは、第2配管取付孔72cと接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に冷媒が流通する分流室を有する分流器本体部と、この分流器本体部に設けられた冷媒導入口及びこの冷媒導入口を介して分流室内に流入した冷媒を分流するための分流管が接続される分流管接続口とを備える分流器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記分流器としては、この分流器内に設けられた分流室に冷媒を流入し、分流室に接続された複数の分流管により冷媒が各分流管に分流する構成が知られている。このような分流器として、例えば特許文献1に記載の分流器(冷媒分岐配管)では、膨張弁を介して共通配管に流入した冷媒は、分岐配管によって分流するように構成されている。そして、分岐配管の位置を冷媒がスラグ流及びプラグ流が形成される以前の位置に設けることにより、冷媒の分流の均一化を図っている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の分流器では、膨張弁を介した冷媒は各方向に対して均一に拡散しないため、共通配管内を流通する冷媒が共通配管内において対称に流通せずに、所定の方向に偏りを持って流通する場合がある。そのため、各分岐配管の冷媒の気液の比率及び冷媒の分配量の均一化には改善の余地があった。
【0004】
そこで、本出願人は、分流室内に旋回流形成室を設けて、冷媒を同旋回流形成室内において旋回させることにより、膨張弁による冷媒への上記影響を抑制した上で分流管に冷媒を供給する構成を提案している(例えば、特許文献2参照)。以下、図27を参照して、上述の従来の分流器の構成について説明する。
【0005】
図27に示すように、分流器100には、その円筒形状の分流器本体110内に接続管101が接続される略円筒形状の空間である旋回流形成室111と、各分流管102が接続される略円筒形状の空間である噴霧室112とが設けられている。旋回流形成室111と噴霧室112との間には、旋回流形成室111と噴霧室112とを互いに連通する略円筒形状の空間である連通室113が設けられている。この連通室113は、旋回流形成室111及び噴霧室112よりも小径に形成されている。これにより連通室113はオリフィスの役割を果たすようになる。
【0006】
このような構成により、接続管101から噴出される冷媒は、旋回流形成室111において旋回成分が付与された上で、連通室113に流入する。そして連通室113から噴霧室112に流入した冷媒は、各分流管102に分配されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−74340号公報
【特許文献2】特開2001−304722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図27の分流器100では、旋回流形成室111内を旋回する冷媒に遠心力が加わるため、旋回流形成室111内には、旋回流形成室111の外周側に気体よりも液体の比率が高い冷媒(以下、「液リッチ冷媒」)、及び旋回流形成室111の内周側に液体よりも気体の比率が高い冷媒(以下、「ガスリッチ冷媒」)が並存するようになる。しかしながら、これら液リッチ冷媒及びガスリッチ冷媒は、連通室113を介して噴霧室112に流通したときにオリフィスの効果により冷媒の気液の比率がある程度均一となり、この点において特許文献1の構造よりも効果がある。
【0009】
しかしながら、旋回流形成室111内の冷媒の旋回流の旋回中心と、連通室113の中心とが必ずしも一致するわけではないため、連通室113内を通過する冷媒は連通室113内において所定方向に偏った旋回流を形成する場合がある。これに伴い、連通室113から噴霧室112に流通する冷媒の旋回流が不安定となってしまう。したがって、各分流管102に流通する冷媒の気液の比率及び冷媒の分配量の均一化を図ることが困難となり、その点において未だ改善の余地があった。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、各分流管に流通する冷媒の気液の比率及び分配量の均一化を図る分流器、この分流器を備える膨張弁並びにこの膨張弁を備える冷凍装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
(1)請求項1に記載の発明は、内部に冷媒が流通する分流室を有する分流器本体部と、この分流器本体部に設けられた冷媒導入口、及びこの冷媒導入口を介して前記分流室内に流入した冷媒を分流して流出するための分流管が接続される分流管接続口とを備える分流器において、前記分流室には、前記冷媒導入口から流入される冷媒が旋回流を形成する旋回流形成室と、この旋回形成室から流出した冷媒の旋回速度を増加させる増速室と、この増速室から流出した冷媒を霧状に拡散させる噴霧室とが設けられ、前記噴霧室は、前記分流管接続口と接続することを要旨とする。
【0012】
この発明によれば、増速室内においては、冷媒が噴霧室側に流通するに従い、冷媒が旋回する速度が加速するようになるため、冷媒の旋回流が安定するようになる。そして、噴霧室に増速室からの冷媒が流入するため、旋回成分を持った噴霧状に拡散され、気液が均一化されるようになる。
【0013】
以上により、本発明によれば、噴霧室内において気液の比率を均一化した冷媒となるため、気液の比率を均一化した冷媒を各分流管接続口への供給の均一化を図ることができるようになる。
【0014】
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の分流器において、前記増速室は、前記噴霧室に向かうにつれてこの増速室の内径が小さくなる略円錐形状に形成されることを要旨とする。
【0015】
この発明によれば、増速室が噴霧室に向かうにつれて同増速室の内径が小さくなる略円錐形状に形成されるため、この増速室を流通する冷媒の旋回径が噴霧室に向かうにつれて小さくなり、冷媒の旋回流速を増加させることができるようになる。これにより冷媒の旋回流が安定するため、増速室内の円形流路断面における冷媒密度が、この増速室と中心を同一とする円形の等高線状に分布するようになる。その結果、分流器本体部の形状のみによって冷媒の旋回流速の増加及び冷媒の密度分布の安定化の両方を実現することができるため、冷媒の旋回流速の増加及び冷媒の密度分布の安定化のための特別な器具等が省略することができる。したがって、分流器の構成を簡単化することができる。
【0016】
(3)請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の分流器において、前記噴霧室は、前記増速室の出口の面積よりも大きい断面積を有することを要旨とする。
この発明によれば、噴霧室の断面積が増速室の出口の面積よりも大きく形成することにより、当該分流器に冷媒として気液二相流が流入された場合には、旋回成分を持った気液
二相流が噴霧室において攪拌されるようになる。したがって、分流器本体部の形状のみによって冷媒の攪拌を実現することができるため、冷媒の攪拌のための特別な器具等が省略することができる。したがって、分流器内において冷媒を攪拌するための構成を簡単化することができる。
【0017】
(4)請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の分流器において、前記分流器本体部には、前記旋回形成室を形成する周壁部が設けられ、前記周壁部には、前記冷媒導入口から流入する冷媒に旋回成分を付与する曲面部が設けられ、前記冷媒導入口は、前記曲面部の接線方向に設けられることを要旨とする。
【0018】
この発明によれば、冷媒導入口が周壁部の曲面部の接線方向に設けられることにより、冷媒導入口から旋回形成室内に流入する冷媒は、曲面部に沿って流れることとなり、旋回成分が付与されるようになる。したがって、旋回形成室から増速室に冷媒が流入する際に、冷媒が予め旋回成分を有しているため、増速室内において冷媒が旋回しやすくなる。
【0019】
(5)請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の分流器において、前記周壁部には、前記増速室に向かい冷媒を案内する案内部が設けられることを要旨とする。
この発明によれば、冷媒導入口から旋回形成室内に流入する冷媒が案内部に衝突することにより、この冷媒は増速室側に向きを変えながら流れるようになる。したがって、冷媒導入口から旋回形成室内に流入する冷媒が効率よく増速室に向かう旋回流が形成されるようになる。
【0020】
(6)請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の分流器において、前記冷媒導入口に対し接続される冷媒配管は、前記旋回形成室の中心軸からの偏心量が大きくなるように、前記旋回形成室の外方に配設されていることを要旨とする。
【0021】
この発明によれば、旋回流形成室の径を大きくすることなく、流入部の偏心量のみを大きくすることができるので中心部への流れの影響を小さくすることができ、分流室の中心軸に近い中心を有する冷媒の旋回流が形成されやすくなる。
【0022】
(7)請求項7に記載の発明は、請求項4〜請求項6のいずれか一項に記載の分流器において、前記分流室には、前記増速室と前記旋回形成室との間において、前記増速室に接続されるとともに、この増速室の内径よりも大きい内径を有する拡大空間が設けられることを要旨とする。
【0023】
この発明によれば、拡大空間が増速室と旋回形成室との間に設けられることにより、冷媒導入口から増速室へ流入する冷媒は、拡大空間において滞留するため、旋回形成室において旋回成分を付与された冷媒は、拡大空間においても旋回するようになる。これにより冷媒の旋回成分を向上させることができる。
【0024】
(8)請求項8に記載の発明は、請求項4〜請求項6のいずれか一項に記載の分流器において、前記旋回形成室と前記増速室とは互いに接続され、前記旋回形成室は、前記増速室に向かい拡径する略円錐形状、または略円筒形状に形成されるとともに、この旋回形成室の内径は前記増速室の入口の内径よりも大きく形成されることを要旨とする。
【0025】
この発明によれば、旋回形成室の内径が増速室の入口の内径よりも大きく形成されるため、旋回形成室と増速室との間に段差が設けられるようになる。そして冷媒導入口から旋回形成室に流入した旋回成分を付与された冷媒は、この段差により滞留するようになる。これにより冷媒の旋回成分を向上させることができる。
【0026】
(9)請求項9に記載の発明は、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の分流器において、前記分流室における前記増速室と前記噴霧室との間には接続空間が設けられることを要旨とする。
【0027】
この発明によれば、増速室からの冷媒が接続空間に流入することにより、噴霧室に流入する冷媒の旋回成分が冷媒導入口における冷媒の変動の影響を受けにくくなり、同冷媒が安定するようになる。これにより、接続空間から噴霧室に流入した冷媒の噴霧室内におけ
る旋回が安定するようになる。
【0028】
(10)請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の分流器において、前記接続空間は、内径一定の空間に形成されているか、又は、少なくとも噴霧室側に、前記噴霧室に向かうにつれて拡径する略円錐形状の拡径室が形成されていることを要旨とする。
【0029】
この発明によれば、接続空間が内径一定の空間に形成されている場合は、この内径一定の空間により冷媒の旋回流がより一層安定化する。また、接続空間は、少なくとも噴霧室側に、前記噴霧室に向かうにつれて拡径する略円錐形状の拡径室が形成されている場合は、噴霧室に流入する冷媒は、急激に乱されることなく拡径室内に沿って旋回して流れるようになる。したがって、増速室から噴霧室へ冷媒が滑らかに流入することができる。
【0030】
(11)請求項11に記載の発明は、請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の分流器において、前記分流管接続口は、前記分流室の周囲方向に円環状に配列され、この配列された前記分流管接続口の内縁を結ぶことによって形成される円の内径は、前記増速室の出口の内径よりも大きいことを要旨とする。
【0031】
この発明によれば、増速室の出口から分流室に流入する冷媒の旋回が不十分であることにより気液が十分に攪拌されていない場合においても、増速室の出口からの冷媒が直接分流管接続口に衝突することが回避することができるようになる。したがって、噴霧室を構成する壁部に冷媒が衝突することになるが、旋回成分を有することにより衝突による拡散効果が増大し、噴霧室内において冷媒の気液の比率の均一化を図るとともに、各分流管接続口に供給する冷媒の分配量の均一化を図ることができる。
【0032】
(12)請求項12に記載の発明は、膨張弁であって、請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の分流器と併用することを要旨とする。
この発明によれば、膨張弁に本発明の分流器を併用することにより、膨張弁を介して分流器に流通する冷媒がスラグ流等の不連続性のある流動形式になったとしても、気液の比率を均一化した冷媒を各分流管接続口への供給の均一化を図ることができる。
【0033】
(13)請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の膨張弁において、当該膨張弁と前記分流器とが一体化構造として形成されることを要旨とする。
膨張弁と分流器とが各別に設けられる場合、膨張弁と分流器とを接続するための接続配管が必要となる。その点において、本発明では、膨張弁と分流器とが一体化構造として形成されるため、上記接続配管を省略することができ、膨張弁のコンパクト化を図ることができる。また、旋回流を形成するための流動エネルギとして膨張弁からの噴流エネルギを有効利用することができるようになる。
【0034】
(14)請求項14に記載の発明は、請求項12または請求項13に記載の膨張弁において、当該膨張弁には、弁体と弁孔との間に形成された、絞り作用を行う絞り部が設けられ、前記絞り部は、冷凍負荷に対応して開度可変に構成されることを要旨とする。
【0035】
この発明によれば、絞り部が冷凍負荷に対応して開度可変に構成されるため、絞り部は冷凍負荷に対して冷媒流量を可変に調整することができる。これにより絞り部の開度が一定に形成された絞り部の構成と比較して、流量及び乾き度等の運転状況に応じて適切な絞り度(開度)とすることができ、冷媒の分流特性を向上させることができる。
【0036】
(15)請求項15に記載の発明は、冷凍装置であって、請求項12〜請求項14のいずれか一項に記載の膨張弁を用いることを要旨とする。
この発明によれば、冷凍装置に本発明の膨張弁を用いることにより、気液の比率を均一化した冷媒を各分流管接続口への供給の均一化を図ることができる冷凍装置を構成することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、各分流管に流通する冷媒の気液の比率及び分配量の均一化を図る分流器、この分流器を備える膨張弁並びにこの膨張弁を備える冷凍装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の分流器を備えた冷凍装置の冷媒回路を示す回路図。
【図2】同実施形態の分流器を備えた膨張弁について、(a)同膨張弁の正面構造を示す正面図、(b)同膨張弁の側面構造を示す側面図。
【図3】同実施形態の膨張弁について、(a)同膨張弁の一部断面構造を示す部分断面図、(b)弁体が閉弁している状態の同膨張弁の弁体付近の拡大構造を示す拡大図、(c)弁体が開弁している状態の同膨張弁の弁体付近の拡大構造を示す拡大図。
【図4】同実施形態の分流器について、(a)同分流器をこの分流器の中心軸を含む平面にて切った断面構造を示す断面図、(b)同分流器の第1形成部材をこの分流器の中心軸に対して垂直な平面にて切った断面構造を示す断面図、(c)同分流器の第2形成部材をこの分流器の中心軸に対して垂直な平面にて切った断面構造を示す断面図。
【図5】同実施形態の分流器について、(a)同分流器をこの分流器の中心軸に対して垂直な平面にて切った断面構造を示す断面図、(b)同分流器をこの分流器の中心軸を含む平面にて切った断面構造を示す断面図。
【図6】本発明の分流器を具体化した第2の実施形態について、同分流器をこの分流器の中心軸を含む平面にて切った断面構造を示す断面図。
【図7】本発明の分流器を具体化した第3の実施形態について、同分流器をこの分流器の中心軸を含む平面にて切った断面構造を示す断面図。
【図8】本発明の分流器を具体化した第4の実施形態について、同分流器をこの分流器の中心軸を含む平面にて切った断面構造を示す断面図。
【図9】本発明の分流器を具体化した第5の実施形態について、同分流器をこの分流器の中心軸を含む平面にて切った断面構造を示す断面図。
【図10】本発明の分流器を具体化した第6の実施形態について、同分流器をこの分流器の中心軸を含む平面にて切った断面構造を示す断面図。
【図11】本発明の分流器を具体化した第7の実施形態について、同分流器をこの分流器の中心軸を含む平面にて切った断面構造を示す断面図。
【図12】本発明の分流器を具体化した第8の実施形態について、(a)同分流器をこの分流器の中心軸を含む平面にて切った断面構造を示す断面図、(b)同分流器の側面構造を示す側面図。
【図13】本発明の分流器を具体化した第9の実施形態について、同分流器をこの分流器の中心軸を含む平面にて切った断面構造を示す断面図。
【図14】本発明の分流器を具体化した第10の実施形態について、同分流器をこの分流器の中心軸に対して垂直な平面にて切った断面構造を示す断面図。
【図15】本発明の分流器を具体化した第11の実施形態について、同分流器をこの分流器の中心軸に対して垂直な平面にて切った断面構造を示す断面図。
【図16】本発明の分流器を具体化した第12の実施形態について、同分流器をこの分流器の中心軸に対して垂直な平面にて切った断面構造を示す断面図。
【図17】本発明の分流器を具体化した第13の実施形態について、同分流器をこの分流器の中心軸を含む平面にて切った断面構造を示す断面図。
【図18】本発明の膨張弁及び分流器を具体化した第14の実施形態について、(a)同膨張弁及び同分流器の正面構造を示す一部断面図、(b)同膨張弁及び同分流器の側面構造を示す一部断面図。
【図19】本発明の分流器のその他の実施形態について、(a)同分流器をこの分流器の中心軸を含む平面にて切った断面構造を示す断面図、(b)同分流器をこの分流器の中心軸を含む平面にて切った断面構造を示す断面図、(c)同分流器をこの分流器の中心軸を含む平面にて切った断面構造を示す断面図。
【図20】本発明の分流器のその他の実施形態について、同分流器をこの分流器の中心軸を含む平面にて切った断面構造を示す断面図。
【図21】本発明の分流器のその他の実施形態について、同分流器をこの分流器の中心軸を含む平面にて切った断面構造を示す断面図。
【図22】本発明の分流器のその他の実施形態について、同分流器をこの分流器の中心軸を含む平面にて切った断面構造を示す断面図。
【図23】本発明の分流器のその他の実施形態について、同分流器をこの分流器の中心軸を含む平面にて切った断面構造を示す断面図。
【図24】本発明の分流器のその他の実施形態について、(a)同分流器をこの分流器の中心軸を含む平面にて切った断面構造を示す断面図、(b)(a)の一部拡大図、(c)縮径部を左右方向の左側より見た平面構造を示す平面図。
【図25】本発明の分流器のその他の実施形態について、同分流器をこの分流器の中心軸に対して垂直な平面にて切った断面構造を示す断面図。
【図26】本発明の分流器のその他の実施形態について、同分流器の側面構造を示す側面図。
【図27】従来の分流器について、同分流器の断面構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(第1の実施形態)
図1〜図5を参照して、本発明の分流器をヒートポンプ方式の冷凍装置に搭載される膨張弁に接続される分流器として具体化した第1の実施形態について説明する。
【0040】
図1を参照して、冷凍装置の冷媒回路図の回路構成及び冷凍装置の運転動作について説明する。なお、図中の実線矢印は暖房運転時の冷媒の流れを示し、破線矢印は冷房運転中の冷媒の流れを示す。まず、以下に回路構成について説明する。
【0041】
図1に示すように、冷凍装置1では、室内側熱交換器2、室外側熱交換器3、室内側膨張弁4、室内側分流器5、室外側膨張弁6、室外側分流器7、四路切替弁8及び圧縮機9のそれぞれを冷媒配管によって接続されることにより、冷媒回路が構成されている。具体的には、圧縮機9は、四路切替弁8を介して室内側熱交換器2及び室外側熱交換器3とそれぞれ接続されている。室内側熱交換器2には、室内側分流器5を介して室内側膨張弁4が接続されている。室外側熱交換器3には、室外側分流器7を介して室外側膨張弁6が接続されている。そして室内側膨張弁4及び室外側膨張弁6が互いに接続されている。
【0042】
次に、冷凍装置1の運転動作について説明する。冷凍装置1の運転動作は冷房運転及び暖房運転に大別される。
冷房運転時では、四路切替弁8が図中の破線側に設定される。この四路切替弁8の状態において、圧縮機9から吐出した冷媒は、四路切替弁8の破線側、室外側熱交換器3、室外側分流器7、室外側膨張弁6、室内側膨張弁4、室内側分流器5、室内側熱交換器2及び四路切替弁8の破線側を循環して圧縮機9に吸入される。このような冷媒の循環によって、室外側熱交換器3が凝縮器として動作し、室内側熱交換器2が蒸発器として動作する。ここで、室外側熱交換器3では、同冷媒が室外空気と熱交換を行って凝縮することによって、冷媒は室外空気に対して放熱する。また、室内側熱交換器2では、冷媒が室内空気と熱交換を行って蒸発することによって、室内空気が冷媒によって吸熱されることにより冷却される。
【0043】
暖房運転時では、四路切替弁8が図中の実線側に設定される。この四路切替弁8の状態
において、圧縮機9から吐出した冷媒は、四路切替弁8の実線側、室内側熱交換器2、室内側分流器5、室内側膨張弁4、室外側膨張弁6、室外側分流器7、室外側熱交換器3及び四路切替弁8の実線側を循環して圧縮機9に吸入される。このような冷媒の循環によって、室内側熱交換器2が凝縮器として動作し、室外側熱交換器3が蒸発器として動作する。ここで、室内側熱交換器2では、冷媒が室内空気と熱交換を行って凝縮することにより、冷媒は室内空気に対して放熱する。また、室外側熱交換器3では、冷媒が室外空気と熱交換を行って蒸発することによって、冷媒は室外空気から吸熱する。以上により、室内側膨張弁4と室内側分流器5及び室外側膨張弁6と室外側分流器7は、それぞれ冷媒を可逆に流通可能な冷暖房兼用の膨張弁及び分流器として使用されるようになる。
【0044】
図2及び図3を参照して、冷凍装置1に搭載された膨張弁の構成について説明する。ここで、室内側膨張弁4及び室外側膨張弁6の構成が互いに概ね同一であり、室内側分流器5及び室外側分流器7の構成は互いに概ね同一であるため、以降の説明では、室外側膨張弁6及び室外側分流器7の構成の説明を行い、室内側分流器5及び室内側膨張弁4の説明を省略する。
【0045】
また、以下の説明において上下左右方向をいうときは、各図における上下左右方向をいうものとする。また、各図における実線矢印は、所定運転時の冷媒の流れ方向を示すものとする。ただし、膨張弁としては逆方向にて冷媒を流通して使用することは可能であるので、例えば上述の冷凍装置の冷房運転を正方向流れとした場合の逆方向流れ、即ち暖房運転に用いることは可能である。ただし、以下の記載においては、特に断りのない限りは正方向に冷媒を流通させるときについてのみ説明するものとし、その説明を簡略化する。
【0046】
図2(a)に示すように、室外側膨張弁6(以下、「膨張弁6」)には、膨張弁6の外枠を構成するとともに中心軸J1を上下方向とする略円筒形状に形成された弁本体部60が設けられている。この弁本体部60には、室内側膨張弁4に接続される冷媒配管CP1が取り付けられる第1配管取付孔61(図2(b)参照)と、室外側分流器7(以下、「分流器7」)に接続される冷媒配管CP2が取り付けられる第2配管取付孔62(図3(a)参照)とが設けられている。
【0047】
図3(a)に示すように、弁本体部60の内部には、中心軸J1と同軸の円筒形状の空間である弁室60Aが形成されている。この弁室60Aは、第1配管取付孔61を介して冷媒配管CP1と連通し、第2配管取付孔62を介して冷媒配管CP2と連通している。
【0048】
図3(b)に示すように、弁本体部60には、第2配管取付孔62と弁室60Aとの間に形成されるとともに互いを連通する円筒形状の空間である弁孔60Bが設けられている。この弁孔60Bは、弁本体部60の弁座となる壁部63により形成されている。この弁孔60Bの内径R1が第2配管取付孔62の内径R2よりも小さく形成されることにより、弁孔60Bは絞り部として作用する。
【0049】
弁室60A内には、弁棒64が収納されている。この弁棒64は、上方の弁駆動装置(不図示)から下方に延びるものであって、中心軸J1と同軸に配置されている。また、弁棒64の先端には、弁体65が設けられている。そして、弁体65は、弁駆動装置の駆動により弁棒64を介して弁孔60Bに対して進退自在に移動するように構成されている。以上により、弁体65と弁孔60Bとにより、冷凍負荷に対応して開度可変、且つ全閉可能とした絞り部60Cが形成されるようになる(図3(c)参照)。なお、図3(b)は、絞り部60Cが全閉状態を示している。
【0050】
この膨張弁6は、冷媒配管CP1から弁室60A内に高圧の液単相流の冷媒または気液二相流の冷媒が入ってきた場合、同冷媒は絞り部60Cにおいて減圧される。そして、絞
り部60Cにおいて減圧された冷媒は、低圧の気液二相流であるとともに噴霧状態にて絞り部60Cから冷媒配管CP2に向かい噴出される。
【0051】
次に、図4及び図5を参照して、分流器7の構成について説明する。なお、図5中の実線矢印は、冷媒の流れを示している。
図4に示すように、分流器7は、中心軸J2を中心とした略円錐形状を有する分流器本体部70に1つの冷媒配管CP2及び複数の分流管CP3がそれぞれ取り付けられる態様にて設けられている。分流器本体部70の内部には、冷媒配管CP2と分流管CP3とを連通する空間である分流室70Aが形成されている。
【0052】
分流器本体部70は、例えば金属板をプレス加工することにより形成される第1形成部材71と第2形成部材72との2部材が例えば溶接にて互いに接続されることにより一体的に形成されている。第1形成部材71は、冷媒配管CP2と接続され、第2形成部材72は分流管CP3に接続されている。具体的には、第1形成部材71には、冷媒配管CP2を取り付けるための配管取付孔71aが設けられ、この配管取付孔71aに冷媒配管CP2が嵌合する態様にて接続されている。また、第2形成部材72には、分流管CP3のそれぞれを取り付けるための分流管取付孔72cが設けられ、これら分流管取付孔72cに分流管CP3がそれぞれ嵌合する態様にて接続されている。
【0053】
第1形成部材71には、配管取付孔71aが設けられる中心軸J2を中心とした円筒形状の配管接続部73が設けられている。この配管接続部73の左方向には、中心軸J2を中心とした略円錐形状の縮径部74が設けられている。この縮径部74は、左方向に向かうにつれて内径が縮小している。
【0054】
配管接続部73は、左方向に開口するとともに配管取付孔71aが設けられる円筒部73aと、この円筒部73aの右方向を覆う底部73bとにより構成されている(図4(a)参照)。また、冷媒配管CP2は、円筒部73aの接線方向に沿って取り付けられている(図4(b)参照)。
【0055】
第2形成部材72は、右方向に開口する円筒部72aと、この円筒部72aの左方向を覆う底部72bとが設けられている。円筒部72aは、縮径部74に接合されている。底部72bには、分流管取付孔72cが設けられている。この分流管取付孔72cは、円筒部72aの中心軸J2を中心とした周方向に等ピッチにて設けられている(図4(c)参照)。
【0056】
第1形成部材71の内部の空間には、分流室70Aの一部を構成する空間として、旋回流形成室70Bと増速室70Cとが形成されている。旋回流形成室70Bは、配管接続部73の円筒部73aと底部73bとにより囲まれた空間として区画形成されている。増速室70Cは、縮径部74内の空間として区画形成されている。また旋回流形成室70Bと増速室70Cとは、円筒部73aと縮径部74との接続部分において仕切られるようになる。
【0057】
第2形成部材72の内部の空間には、分流室70Aの一部を構成する空間として、噴霧室70Dが形成されている。この噴霧室70Dは、円筒部72aと底部72bとにより囲まれた空間から第2形成部材72内に形成された増速室70Cを除いた空間として区画形成されている。
【0058】
ここで、増速室70Cにおいて、縮径部74の右方向の端部における中心軸J2に対して垂直な平面として形成された開口面を増速室70Cの入口70C1とする。一方、増速室70Cにおいて、縮径部74の右方向の端部における中心軸J2に対して垂直な平面と
して形成された開口面を増速室70Cの出口70C2とする。入口70C1は、旋回流形成室70Bと接続する接続口となり、出口70C2は、噴霧室70Dと接続する接続口となる。また、入口70C1の面積は、増速室70Cを中心軸J2に対して垂直な平面にて切った断面積のうちの最大となり、出口70C2の面積は、同断面積のうちの最小となる。
【0059】
また、図4(c)に示すように、噴霧室70Dの断面積は、増速室70Cの出口70C2の面積よりも大きくなるように形成されている。具体的には、噴霧室70Dにおいて円筒部72aの内径R3により規定される断面積が、出口70C2を構成する縮径部74の右方向の端部の内径R4により規定される面積よりも大きくなるように形成されている。これにより、増速室70Cから噴霧室70Dに冷媒が流通するときに、その冷媒流路が拡大されている。
【0060】
以上の分流室70Aの構成により、冷媒配管CP2から分流室70A内に流通する冷媒は、旋回流形成室70B、増速室70C及び噴霧室70Dの順に経て各分流管CP3に流通するようになる。以下に、図5を参照して冷媒の流通態様について説明する。
【0061】
図5(a)に示すように、冷媒配管CP2から旋回流形成室70Bに噴出される冷媒は、円筒部73aの内周面に沿って流れる。これにより、冷媒は旋回成分が付与されるようになる。即ち冷媒は、中心軸J2付近を中心とした旋回流が形成されるようになる。ただし、配管取付孔71aが1つしかないため、完全に冷媒の旋回中心が中心軸J2に一致することはない。そして図5(b)に示すように、旋回流形成室70B内の冷媒は、旋回しつつ増速室70Cに流通する。増速室70C内に流通した冷媒は、縮径部74の内周面に沿って流れるため、左方向に向かうにつれて冷媒の旋回径が小さくなっていく。これにより増速室70C内を左方向に向かうにつれて冷媒の速度が増大するようになる。またこの冷媒の旋回径が小さくなること及び増速作用により、増速室70C内の旋回流が安定し、特に膨張弁6に気液二相流の冷媒が流入する際に問題となる間欠的な気液二相流が配管取付孔71aから流入しても、その密度分布の不連続性は解消されるようになる。また、増速室70Cが左方向に向かうにつれて冷媒の旋回径を小さくすることにより、冷媒の旋回流の中心を中心軸J2に近づけることができる。また、冷媒の旋回流が安定するため、増速室70C内の円形断面(即ち、第1形成部材71を中心軸J2に対して垂直な平面にて切った断面)における冷媒密度が、中心軸J2と中心を同一とする円形の等高線状に分布するようになる。
【0062】
そして増速室70C内の冷媒は、噴霧室70Dに流通する。この噴霧室70Dは、増速室70Cの出口70C2よりも冷媒流路が拡大されるため、滑らかな密度分布を持った気液二相流の冷媒が、旋回成分を持ったまま増速室70Cから押し出される形で噴霧室70Dに霧状に拡散される。これにより、冷媒の気液の比率の均一化が図られるようになる。
【0063】
また、噴霧室70D内の冷媒は、旋回成分を有しているため、円筒部72aの内周面に沿って流れる。即ち噴霧室70D内においても、冷媒の旋回流が形成されている。これにより、噴霧室70D内の冷媒は、各分流管CP3に均等に分流されるようになる。
【0064】
以上のように、膨張弁6の絞り部60C(図3(c)参照)から流速が高く霧状噴流である気液二相流の冷媒を分流器7に供給する上、分流室70A内を流通する冷媒は旋回流を形成するため、分流室70A内を流通する冷媒は重力の影響を排除することができるようになる。
【0065】
また、本実施形態の分流器7及び膨張弁6は、冷房運転時において、各分流管CP3から高圧液冷媒が分流室70Aに流れるようになる。具体的には、分流室70Aにおいて、
噴霧室70D、増速室70C及び旋回流形成室70Bの順に冷媒が流通する。そして分流室70A内の高圧液冷媒は、冷媒配管CP1を介して絞り部60Cに流通する。ここで、絞り部60Cは、高圧液冷媒の過冷却度を制御する目的にて絞り作用するように形成される。したがって、絞り部60Cを通過する高圧液冷媒は、絞り作用により噴霧化した気液二相流となる。そしてこの冷媒は、冷媒配管CP1に流通する。
【0066】
本実施形態の分流器7及び膨張弁6によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施形態によれば、分流器本体部70に形成された分流室70Aは、旋回流形成室70B、増速室70C及び噴霧室70Dにより構成されている。この構成によれば、増速室70Cにより冷媒が旋回する速度が増大するため、冷媒の旋回流が安定するようになる。その結果、増速室70C内の円形断面における冷媒密度の分布が安定化するようになる。そして、噴霧室70Dに冷媒が流入したときには、冷媒は旋回成分を持った霧状に拡散され、気液が均一化するようになる。以上により、本実施形態の分流器7においては、冷媒の旋回流の安定化と気液を均一化との両立を図ることができるようになる。
【0067】
また、噴霧室70D内に流通する冷媒は旋回成分を有しているため、冷媒が円筒部73aの内周面に沿って流れるようになる。したがって、周方向に等ピッチに配列された各分流管CP3に流通する冷媒の流量を均一にすることができるようになる。
【0068】
(2)本実施形態によれば、増速室70Cは略円錐形状の縮径部74の内部の空間により区画形成されている。この構成によれば、分流器本体部70の一部の形状のみによって冷媒の旋回する速度の増大を実現することができるようになる。したがって、冷媒の旋回する速度の増大を図るための専用の器具等を省略することができるため、分流器7の構成を簡単化することができるようになる。その結果、分流器7のコストダウンを図ることができるようになる。
【0069】
(3)本実施形態によれば、噴霧室70Dの断面積は、増速室70Cの出口70C2の面積よりも大きくなるように形成されている。この構成によれば、分流器本体部70の一部の形状の関係のみによって旋回成分を持った気液二相流の冷媒が噴霧室70Dにおいて拡散されるようになる。したがって、分流器7内において冷媒を攪拌するための構成を簡単化することができるようになる。その上、分流器本体部70の一部の形状の関係のみによって、均一な霧状に拡散するノズルを形成することができるようになる。
【0070】
(4)本実施形態によれば、冷媒配管CP2は、分流器本体部70の円筒部73aの接線方向に沿って接続される構成である。この構成によれば、冷媒配管CP2から旋回流形成室70Bに流通する冷媒は、円筒部73aの内周面に沿って流れることとなり、冷媒に旋回成分が付与されるようになる。したがって、予め冷媒が旋回成分を有するため、旋回流形成室70Bから増速室70Cに冷媒が流通するときに、この増速室70C内において冷媒が旋回しやすくなる。
【0071】
(5)本実施形態によれば、膨張弁6の絞り部60Cが冷凍負荷に対応して開度可変に絞られる構成である。この構成によれば、従来の分流器に取り付けられているような開度一定の絞り部と異なり、流量及び乾き度などの運転状況に応じて適切な絞り度に変化し、これにより冷媒分流特性を向上させることができるようになる。
【0072】
(6)本実施形態によれば、膨張弁6からの霧状噴流としての気液二相流の冷媒が分流室70A内において旋回流を形成するため、分流室70Aを流通する冷媒は重力の影響が大幅に低減されるようになる。したがって、膨張弁6及び分流器7の配置を重力の影響によって制約されることが回避されるため、同配置の自由度を向上することができる。
【0073】
(7)本実施形態によれば、膨張弁6と分流器7とが互いに近接して配置される構成である。この構成によれば、膨張弁6に気液二相流の冷媒が流入する場合でも、分流室70A内の旋回流による整流作用が間欠的な噴流の変動を緩和するため間欠冷媒音を低減することができるようになる。
【0074】
(第2の実施形態)
図6を参照して、本発明の分流器をヒートポンプ方式の冷凍装置に搭載される膨張弁に接続される分流器として具体化した第2の実施形態について説明する。本実施形態の分流器7は、第1の実施形態の分流器7と比較して、分流器本体部70の配管接続部73の形状が異なる。以下、第1の実施形態の相違点を中心に説明する。なお、分流器本体部70内の実線矢印は冷媒の流れを示している。
【0075】
図6に示すように、配管接続部73は、左方向が開口するとともに左方向に向かうにつれて拡径する拡径部73cと、この拡径部73cの右方向の端部を覆う底部73dとにより構成されている。この拡径部73cには、配管取付孔71aが設けられている。また、拡径部73cの左方向の端部と縮径部74の右方向の端部とが互いに接続されている。即ち拡径部73cの上記端部にて形成された開口面の面積と縮径部74(増速室70C)の入口70C1の面積とは同一となる。
【0076】
ここで、旋回流形成室70Bは、拡径部73cと底部73dとにより囲まれた空間によって区画形成されている。また、冷媒配管CP2は、第1の実施形態と同様に拡径部73cの接線方向に沿って取り付けられている。
【0077】
このような構成により、冷媒配管CP2から旋回流形成室70Bに流通する冷媒は、拡径部73cによって旋回成分が付与されることに加えて、増速室70Cに向かう流れ成分が付与されるようになる。これにより、拡径部73cは、冷媒を増速室70Cに案内する案内部の役割を果たしている。そしてこのような冷媒の状態において、旋回流形成室70Bから増速室70Cに冷媒が流通するようになる。なお、増速室70C及び噴霧室70Dにおける冷媒の流れは第1の実施形態と同様である。
【0078】
本実施形態の分流器によれば、第1の実施形態の効果(1)〜(7)に加え、以下の効果を奏することができる。
(8)本実施形態によれば、冷媒配管CP2から旋回流形成室70Bに流通する冷媒は拡径部73cによって旋回成分と増速室70Cに向かい流れ成分とが付与されるため、配管接続部73の底部73dに向かう冷媒の流量が抑制されるようになる。したがって、旋回流形成室70B内の冷媒が効率よく増速室70Cに流通するようになる。
【0079】
(第3の実施形態)
図7を参照して、本発明の分流器をヒートポンプ方式の冷凍装置に搭載される膨張弁に接続される分流器として具体化した第3の実施形態について説明する。本実施形態の分流器7は、第1の実施形態の分流器7と比較して、分流器本体部70の配管接続部73の形状が異なる。以下、第1の実施形態の相違点を中心に説明する。なお、分流器本体部70内の実線矢印は冷媒の流れを示している。
【0080】
図7に示すように、配管接続部73は、左方向が開口するとともに左方向に向かい下方向に傾斜する略円筒形状の円筒部73eと、この円筒部73eの右方向の端部を覆う底部73fとにより構成されている。この円筒部73eには、配管取付孔71aが設けられている。また、円筒部73eの左方向の端部と縮径部74の右方向の端部とが互いに接続されている。即ち円筒部73eの上記端部にて形成された開口面の面積と縮径部74(増速室70C)の入口70C1の面積とは同一となる。
【0081】
ここで、旋回流形成室70Bは、円筒部73eと底部73fとにより囲まれた空間によって区画形成されている。また、冷媒配管CP2は、拡径部73cの接線方向に沿って取り付けられている。
【0082】
このような構成により、冷媒配管CP2から旋回流形成室70Bに流通する冷媒は、円筒部73eによって旋回成分が付与されることに加えて、増速室70Cに向かう流れ成分が付与されるようになる。これにより、円筒部73eは、冷媒を増速室70Cに案内する案内部の役割を果たしている。そしてこのような冷媒の状態において、旋回流形成室70Bから増速室70Cに冷媒が流通するようになる。なお、増速室70C及び噴霧室70Dにおける冷媒の流れは第1の実施形態と同様である。以上により、本実施形態の分流器によれば、第1の実施形態の効果(1)〜(7)及び第2の実施形態の効果(8)に準じた効果を得ることができるようになる。
【0083】
(第4の実施形態)
図8を参照して、本発明の分流器をヒートポンプ方式の冷凍装置に搭載される膨張弁に接続される分流器として具体化した第4の実施形態について説明する。本実施形態の分流器7は、第1の実施形態の分流器7と比較して、分流器本体部70の配管接続部73と縮径部74との寸法関係が異なる。以下、第1の実施形態の相違点を中心に説明する。
【0084】
図8に示すように、配管接続部73の円筒部73aの内径R5は、縮径部74の右方向の端部の内径R6よりも大きくなるように形成されている。即ち、旋回流形成室70Bの内径が増速室70Cの入口70C1の内径よりも大きくなるように形成されている。この寸法関係に伴い、円筒部73aの左方向の端部には、略円環形状の連結部75が設けられている。ここで、旋回流形成室70Bは、円筒部73aと底部73bと連結部75とにより囲まれた空間によって区画形成されている。また、冷媒配管CP2は、第1の実施形態と同様に円筒部73aの接線方向に沿って取り付けられている。
【0085】
このような構成により、冷媒配管CP2から旋回流形成室70Bに流通する冷媒は、円筒部73aによって旋回成分が付与されるようになる。そして、この旋回流形成室70B内の冷媒は、増速室70Cに流通する前に連結部75により一旦滞留するため、冷媒の旋回成分が増大するようになる。詳細には、連結部75により旋回流形成室70Bから増速室70Cに向かう流れ成分が制限されることにより、旋回流形成室70B内において冷媒が旋回する頻度が増加するようになる。そしてこの冷媒の状態において、増速室70Cに流通する。なお、増速室70C及び噴霧室70Dにおける冷媒の流れは第1の実施形態と同様である。
【0086】
本実施形態の分流器7によれば、第1の実施形態の効果(1)〜(7)に加え、以下の効果を奏することができる。
(9)本実施形態によれば、連結部75により旋回流形成室70B内の冷媒が増速室70Cに流通する前に一旦滞留する構成である。この構成によれば、旋回流形成室70Bにおいて付与された冷媒の旋回成分を増大させることができるようになる。その結果、増速室70Cに流入する冷媒の旋回流を安定化させることができるようになる。
【0087】
(第5の実施形態)
図9を参照して、本発明の分流器をヒートポンプ方式の冷凍装置に搭載される膨張弁に接続される分流器として具体化した第5の実施形態について説明する。本実施形態の分流器7は、第1の実施形態の分流器7と比較して、分流器本体部70の旋回流形成室70Bと増速室70Cとの間に拡大空間70Eが設けられた点において異なる。以下、第1の実
施形態の相違点を中心に説明する。
【0088】
図9に示すように、配管接続部73の左方向の端部と縮径部74の右方向の端部との間には、配管接続部73と縮径部74とを互いに接続する連結部76が設けられている。この連結部76は、中心軸J2に対して外方に向かい凹む形状にて形成されている。ここで、連結部76、縮径部74の右方向の端部及び配管接続部73の左方向の端部により囲まれた空間によって拡大空間70Eが形成されている。
【0089】
また、連結部76の内周面による内径R7は、円筒部73aの内径R5及び縮径部74の右方向の端部の内径R6の両方ともよりも大きくなるように形成されている。即ち拡大空間70Eの内径が、旋回流形成室70Bの内径及び増速室70Cの入口70C1の内径よりも大きくなるように形成されている。なお、円筒部73aの内径R5と縮径部74の内径R6とは互いに等しくなるように形成されている。即ち旋回流形成室70Bの内径と増速室70Cの入口70C1の内径とは互いに等しくなるように形成されている。
【0090】
このような構成により、冷媒配管CP2から旋回流形成室70Bに流通する冷媒は、円筒部73aによって旋回成分が付与されるようになる。そして、この旋回流形成室70B内の冷媒は、拡大空間70Eによって一旦滞留して、増速室70Cに流通するようになる。これにより、拡大空間70Eにより旋回成分を増大した冷媒が増速室70Cに流通するようになる。なお、増速室70C及び噴霧室70Dにおける冷媒の流れは第1の実施形態と同様である。本実施形態の分流器7によれば、第1の実施形態の効果(1)〜(7)に加え、第4の実施形態の効果(9)に準じた効果を奏することができるようになる。
【0091】
(第6の実施形態)
図10を参照して、本発明の分流器をヒートポンプ方式の冷凍装置に搭載される膨張弁に接続される分流器として具体化した第6の実施形態について説明する。本実施形態の分流器7は、第2の実施形態の分流器7と比較して、分流器本体部70の増速室70Cと噴霧室70Dとの間に接続空間70Fが設けられた点、及び拡径部73cと縮径部74との間に連結部75aが設けられた点において異なる。以下、第2の実施形態の相違点を中心に説明する。なお、本実施形態では、分流器本体部70が単一部材として構成されている。
【0092】
図10に示すように、配管接続部73の拡径部73cの左方向の端部と縮径部74の右方向の端部との間には、これらを互いに連結する略円環形状の連結部75aが設けられている。また縮径部74の左方向の端部と第2の実施形態の第2形成部材72に対応する分流管接続部77の右方向の端部との間には、円筒形状の接続通路部78が設けられている。
【0093】
また、拡径部73cの左方向の端部の内径R8(最大径)は、縮径部74の右方向の端部の内径R6(最大径)よりも大きくなるように形成されている。即ち旋回流形成室70Bの内径は、増速室70Cの入口70C1の内径よりも大きくなるように形成されている。接続通路部78の内周面の内径R9は、縮径部74の左方向の端部の内径R10(最小径)と同一となるように形成されている。即ち接続空間70Fの内径と増速室70Cの出口70C2の内径とは同一となるようにそれぞれ形成されている。そしてこの内径R9は、接続通路部78の全体に亘り一定となるように形成されている。
【0094】
ここで、旋回流形成室70Bは、拡径部73c、底部73d及び連結部75aにより囲まれた空間によって形成されている。また接続空間70Fは、接続通路部78の内部に形成された空間によって形成されている。この接続空間70Fは、増速室70Cと噴霧室70Dとを互いに連通している。
【0095】
このような構成により、冷媒配管CP2から旋回流形成室70Bに流通した冷媒は、拡径部73cにより旋回成分と増速室70Cに向かう流れ方向成分とが付与されるようになる。そして、旋回流形成室70B内の冷媒は、連結部75aにより増速室70Cに流通する前に一旦滞留するようになる。これにより、冷媒の旋回成分を増大させることができるようになる。そして増速室70C内の冷媒は、接続空間70Fに向かうにつれてその旋回する速度が増大するようになる。
【0096】
そして増速室70Cから接続空間70Fに流通した冷媒は、接続空間70Fがその内径が一定の円筒形状の空間であるため、冷媒の旋回速度が安定するようになる。そして接続空間70Fから噴霧室70Dに流通する冷媒は、増速室70Cの出口70C2よりも冷媒流路が拡大されるため、噴霧室70D内において冷媒の噴出エネルギが拡散される。その結果、増速室70Cの出口70C2は均一な冷媒を噴出するためのノズルとして作用するようになる。また、噴霧室70D内の冷媒は、旋回成分を有しているため、円筒部73aの内周面に沿って流れる。これにより、噴霧室70D内の冷媒は、各分流管CP3に均等に分流されるようになる。
【0097】
本実施形態の分流器7によれば、第2の実施形態の効果(8)に加え、以下の効果を奏することができる。
(10)本実施形態によれば、分流器本体部70に拡径部73c及び連結部75aが設けられる構成である。この構成によれば、冷媒配管CP2から旋回流形成室70Bに流通する冷媒が拡径部73cによって旋回成分と増速室70Cに向かう流れ方向成分とが付与されるとともに、連結部75aによって冷媒の旋回成分が増大するようになる。これにより、旋回流形成室70Bの冷媒が効率よく増速室70Cに流通するとともに冷媒の旋回流の安定化を図るができる。
【0098】
(11)本実施形態によれば、増速室70Cと噴霧室70Dとの間に接続空間70Fが設けられる構成である。この構成によれば、増速室70Cから接続空間70Fに冷媒が流通することにより、噴霧室70Dが配管取付孔71aから遠ざかることとなり、この接続空間70F内において配管取付孔71aにおける冷媒の変動の影響を緩和させ冷媒の旋回流の安定化を図ることができるようになる。その後に、冷媒が接続空間70Fから噴霧室70Dに流入するため、噴霧室70D内の冷媒の旋回流も安定化を図ることができるため、各分流管CP3に冷媒流量を均一に分配させることができるようになる。
【0099】
(第7の実施形態)
図11を参照して、本発明の分流器をヒートポンプ方式の冷凍装置に搭載される膨張弁に接続される分流器として具体化した第7の実施形態について説明する。本実施形態の分流器7は、第6の実施形態の分流器7と比較して、接続空間70Fの構成が異なる。以下、第6の実施形態の相違点を中心に説明する。
【0100】
図11に示すように、接続通路部78には、内径が一定の円筒形状にて形成された円筒部78aと、この円筒部78aの左方向の端部に接続されるとともに左方向に向かうにつれて拡径する拡径部78bとが設けられている。この拡径部78bは、その断面がテーパ状に形成されている。ここで、接続空間70Fは、円筒部78a及び拡径部78bにより囲まれた空間によって区画形成されている。この接続空間70Fは、円筒部78aの内部空間によって区画形成された定径室70F1と、拡径部78bの内部空間によって区画形成された拡径室70F2とにより構成されている。
【0101】
また、拡径部78bの左方向の端部の内径R11は、分流管接続部77の内径R12と等しくなるように形成されている。即ち接続空間70Fの噴霧室70Dとの接続口の面積
は、噴霧室70Dの断面積と等しくなるように形成されている。
【0102】
このような構成により、増速室70Cから接続空間70Fに流通する冷媒は、定径室70F1においてその旋回流を安定させる。そして定径室70F1から拡径室70F2に流通した冷媒は、拡径室70F2内において徐々に冷媒の旋回径を大きくすることにより噴霧室70Dへの流入の安定化を図る。なお、旋回流形成室70B、増速室70C及び噴霧室70D内の冷媒の流れは、第6の実施形態と同様である。
【0103】
本実施形態の分流器7によれば、第6の実施形態の効果(10)及び(11)に加え、以下の効果を奏することができる。
(12)本実施形態によれば、接続通路部78に定径室70F1と拡径室70F2とが設けられる構成である。この構成によれば、定径室70F1により冷媒の旋回流が安定するとともに拡径室70F2により冷媒を噴霧室70Dに円滑に流通することができるようになる。
【0104】
(第8の実施形態)
図12を参照して、本発明の分流器をヒートポンプ方式の冷凍装置に搭載される膨張弁に接続される分流器として具体化した第8の実施形態について説明する。本実施形態の分流器7は、第6の実施形態の分流器7と比較して、噴霧室70Dと増速室70Cとの寸法関係が異なる点及び接続空間70Fが省略された点において異なる。以下、第6の実施形態の相違点を中心に説明する。
【0105】
図12(a)に示すように、増速室70Cと噴霧室70Dとは互いに直接連通している。また、分流管接続部77を構成する円筒部77aの内周面77bは、左方向に向かうにつれて、即ち分流管CP3に向かうにつれて縮径している。そして内周面77bは、各分流管CP3の内周面に滑らかに接続されている。
【0106】
図12(b)に示すように、各分流管CP3の内縁を結ぶことによって形成された仮想円C1の内径R13は、増速室70Cの出口70C2の内径R10(最小径)よりも大きくなるように形成されている。即ち、各分流管CP3は、出口70C2の内径R10よりも外側となるように配列されている。
【0107】
このような構成により、増速室70Cから噴霧室70Dに流通する冷媒は、分流管CP3に直接衝突することが回避されるようになる。即ち増速室70Cの出口70C2から噴霧室70Dに流通する冷媒は、底部72bに衝突するようになる。
【0108】
ここで、冷凍装置の運転状態が過渡状態によって旋回流形成室70B内における冷媒の旋回流が不安定になったときには、増速室70Cにおいて形成される冷媒の旋回流も不安定となってしまう。即ち増速室70Cにおいて気液密度の不連続性が十分に解消されていない状態となってしまう。その状態において、分流管CP3の仮想円C1が増速室70Cの内径R10よりも小さい構造では、増速室70Cから噴霧室70Dに冷媒が流通すると、気液が十分に均一でない状態の冷媒が各分流管CP3に流通してしまう場合がある。その点において、本実施形態では、上記仮想円C1が増速室70Cの内径R10よりも大きくなるように形成されるため、増速室70Cから噴霧室70Dに流通する冷媒は底部73dに衝突することとなり、旋回成分とあいまって噴霧室70D内において冷媒が拡散されやすく、過渡状態の不安定性を軽減することができるようになる。これにより、噴霧室70D内において冷媒が攪拌された上で各分流管CP3に流通するようになる。なお、旋回流形成室70B及び増速室70C内の冷媒の流れは、第6の実施形態と同様である。
【0109】
本実施形態の分流器7によれば、第6の実施形態の効果(10)に加え、以下の効果を
奏することができる。
(13)本実施形態によれば、各分流管CP3の仮想円C1が増速室70Cの出口70C2の内径R10(最小径)よりも大きくなるように形成されている。この構成によれば、増速室70Cから噴霧室70Dに流通する冷媒が直接各分流管CP3に流通することを回避することができるようになる。これにより、増速室70C内の冷媒の旋回流が不安定となることにより、冷媒の気液が十分に攪拌されていない場合においても、分流管CP3に冷媒が流入する前に噴霧室70Dにおいて冷媒を攪拌することができる。
【0110】
(14)本実施形態によれば、分流管接続部77の円筒部77aの内周面77bが分流管CP3に向かうにつれて縮径するとともに、各分流管CP3の内周面と滑らかに接続される構成である。この構成によれば、噴霧室70D内において旋回した冷媒が各分流管CP3に滑らかに流通するようになる。
【0111】
(第9の実施形態)
図13を参照して、本発明の分流器をヒートポンプ方式の冷凍装置に搭載される膨張弁に接続される分流器として具体化した第9の実施形態について説明する。本実施形態の分流器7は、第6の実施形態の分流器7と比較して、噴霧室70Dの形状が異なる点及び接続空間70Fが省略された点において異なる。以下、第6の実施形態の相違点を中心に説明する。
【0112】
図13に示すように、増速室70Cと噴霧室70Dとは互いに直接連通している。また、各分流管CP3の内径R14が、第6の実施形態の各分流管CP3の内径R15よりも大きくなるように形成されている。これに伴い分流管取付孔72cの内径も第6の実施形態の分流管取付孔72cの内径よりも大きくなるように形成されている。
【0113】
このような構成により、噴霧室70Dから各分流管CP3に流通する冷媒の速度が減少するようになる。ここで、一般に、分流管の内径が小さくなるにつれて、分流器の分流性能に依存せずに分流特性が向上する傾向となる。しかしながら、分流管の内径が小さくなるにつれて、冷媒が完全噴霧状態である場合においては複数の分流器のうちの一つの分流器にガスリッチ冷媒が流通し始めると、流速が速くなるためジェット作用により密度の小さいガスリッチ冷媒がさらにその分流管に集中的に流通してしまい、各分流管に均等な流量にて冷媒を分配することが困難となる問題がある。その点において、本実施形態では、噴霧室70D内において冷媒が旋回しているため、分流管の内径に殆ど依存せずに各分流管に均一な流量にて冷媒を分配することができる。したがって、分流管CP3の内径R14を大きくして冷媒の流通する速度が低減したとしても各分流管に均一な流量にて分配することができるようになる。
【0114】
本実施形態の分流器7によれば、第6の実施形態の効果(10)に加え、以下の効果を奏することができる。
(15)本実施形態によれば、各分流管CP3の内径R14が第6の実施形態の各分流管CP3の内径R15よりも大きくなるように形成される構成である。この構成によれば、噴霧室70Dから各分流管CP3に流通する冷媒の速度が低減され、且つ噴霧室70D内において冷媒が旋回するため、過渡状態等において、一旦分配特性がアンバランスになったとしても、旋回成分によって各分流管取付孔72cを冷媒が横切ることによってそのアンバランスを解消することができるようになる。
【0115】
(第10の実施形態)
図14を参照して、本発明の分流器をヒートポンプ方式の冷凍装置に搭載される膨張弁に接続される分流器として具体化した第10の実施形態について説明する。本実施形態の分流器7は、第1の実施形態の分流器7と比較して、冷媒配管CP2と配管接続部73と
の接続態様が異なる。また、冷媒配管CP2と分流器本体部70とがつなぎ目のない一体化構造として形成されている点にて異なる。以下、第1の実施形態の相違点を中心に説明する。
【0116】
図14に示すように、冷媒配管CP2は配管接続部73の円筒部73aよりも外方に配設されている。具体的には、冷媒配管CP2の中心軸J2からの偏心量H1が第1の実施形態の冷媒配管CP2の中心軸J2からの偏心量H2(図4(b)参照)よりも大きくなるように形成されている。
【0117】
ここで、冷媒配管CP2の中心軸J2からの偏心量H1が第1の実施形態の冷媒配管CP2の中心軸J2からの偏心量H2(図4(b)参照)よりも大きくなるとは、より具体的には次のことを意味する。
【0118】
すなわち、r>H1>H2、H1a>rを満たすことである。ただし、
r=円筒部73aの内壁面の半径
H1a=冷媒配管CP2の中心軸J2から最も遠い壁の外壁面と中心軸J2との間隔
H1=偏心量、すなわち、冷媒配管CP2の中心軸J2から最も近い壁の内壁面と中心軸J2との間隔
H2=第1の実施の形態における偏心量、すなわち、H1aがrに等しくなるように冷媒配管が設置されたときの、冷媒配管CP2の中心軸J2から最も近い壁の内壁面と中心軸J2との間隔
である。
【0119】
そして、冷媒配管CP2と円筒部73aとの間には、冷媒配管CP2と円筒部73aとを互いに連結する連結部73gが設けられている。この連結部73gは、冷媒配管CP2内の冷媒を円筒部73aの内周面に対し接線方向に案内する役割を果たしている。なお、この連結部73gは、円筒部73aの内周面に対し厳密には接線方向に接続されることが好ましいが、この図14においては製作上の容易性を加味し、略接線方向と成されたものであって、やや中心軸J2側を向いた状態となっている。
【0120】
このような構成により、冷媒配管CP2から旋回流形成室70Bに流通する冷媒は、冷媒配管CP2から連結部73gに沿った流れとなる。そして連結部73gに沿った流れの冷媒は、円筒部73aに向かい流れる。なお、増速室70C及び噴霧室70Dの冷媒の流れは、第1の実施形態と同様である。
【0121】
本実施形態の分流器7によれば、第1の実施形態の効果(1)〜(7)に加え、以下の効果を奏することができる。
(16)本実施形態によれば、冷媒配管CP2が円筒部73aよりも外方に配設されるとともに冷媒配管CP2と円筒部73aとの間に連結部73gが設けられる構成である。ここで、冷媒配管CP2から流入する冷媒の流速が高すぎると、配管取付孔71a周辺において局所的な渦が発生し、旋回中心が中心軸J2からずれ易くなる。その場合、冷媒配管CP2の内径を大きくすることによって、冷媒配管CP2に流入する冷媒の流速を下げることができる。しかしながら、その内径を大きくすることによって冷媒配管CP2と中心軸J2との偏心量が小さくなってしまう。旋回流形成室70Bの内径を大きくすることにより、冷媒配管CP2と中心軸J2との偏心量を大きくすることができるが、旋回流形成室70Bの内径を大きくすることによって分流器7が大型化してしまう。その点において、本実施形態の構成では、旋回流形成室70Bの径を大きくすることなく、その偏心量を確保した上で、分流室70Aに流入する冷媒の流速を下げることができる。したがって、旋回流形成室70B内において分流室70Aの中心軸J2に近い中心を有する冷媒の旋回流が形成されやすくなる。
【0122】
(第11の実施形態)
図15を参照して、本発明の分流器をヒートポンプ方式の冷凍装置に搭載される膨張弁に接続される分流器として具体化した第11の実施形態について説明する。本実施形態の分流器7は、第1の実施形態の分流器7と比較して、冷媒配管CP2と配管接続部73との接続態様が異なる。また、冷媒配管CP2と分流器本体部70とがつなぎ目のない一体化構造として形成されている点にて異なる。以下、第1の実施形態の相違点を中心に説明する。
【0123】
図15に示すように、冷媒配管CP2は、配管接続部73の円筒部73aよりも外方に配設されている。この冷媒配管CP2には、円筒部73aより外方に配置された円筒配管部P1と、この円筒配管部P1から円筒部73aに向けて湾曲する湾曲配管部P2と、この湾曲配管部P2と円筒部73aとを互いに接続する接続配管部P3とが設けられている。この接続配管部P3は、円筒部73aとの接続位置においてこの円筒部73aの接線方向に延びる平面壁として形成されている。
【0124】
このような構成により、冷媒配管CP2内の冷媒は、湾曲配管部P2を通過する際に遠
心力の作用によりこの湾曲配管部P2の外方に液リッチ冷媒が流通し、同湾曲配管部P2の内方にガスリッチ冷媒が流通するようになる。そして冷媒は、接続配管部P3を沿って円筒部73aに流入するようになる。なお、増速室70C及び噴霧室70D内の冷媒の流れは、第1の実施形態と同様である。
【0125】
本実施形態では、湾曲配管部P2の外方に液リッチ冷媒が流通し、湾曲配管部P2の内方にガスリッチ冷媒が流通することにより、旋回流形成室70Bに流入する冷媒の密度分布が安定化されるようになる。
【0126】
本実施形態の分流器7によれば、第1の実施形態の効果(1)〜(7)に加え、以下の効果を奏することができる。
(17)本実施形態によれば、冷媒配管CP2に湾曲配管部P2が設けられる構成である。この構成によれば、湾曲配管部P2により旋回流形成室70Bに流入する冷媒の不安定性を低減することができるようになる。したがって、旋回流形成室70B内の冷媒が形成する旋回流が安定するようになる。
【0127】
(第12の実施形態)
図16を参照して、本発明の分流器をヒートポンプ方式の冷凍装置に搭載される膨張弁に接続される分流器として具体化した第12の実施形態について説明する。本実施形態の分流器7は、第1の実施形態の分流器7と比較して、冷媒配管CP2と配管接続部73との接続態様が異なる。以下、第1の実施形態の相違点を中心に説明する。
【0128】
図16に示すように、冷媒配管CP2は、配管接続部73の円筒部73aよりも外方に配設されている。この冷媒配管CP2には、円筒部73aより外方に配置された円筒配管部P4と、この円筒配管部P4から円筒部73aに向けて湾曲する湾曲配管部P5と、この湾曲配管部P5から円筒部73aより内方に延設する内側配管部P6とが設けられている。この内側配管部P6は、分流器7(配管接続部73)の中心軸J2付近に位置するように設けられている。
【0129】
このような構成により、冷媒配管CP2内の冷媒は、湾曲配管部P2を通過する際に遠心力の作用によりこの湾曲配管部P2の外方に液リッチ冷媒が流通し、同湾曲配管部P2の内方にガスリッチ冷媒が流通するようになる。そして、内側配管部P6が中心軸J2付近に設けられているため、ガスリッチ冷媒は、その中心軸J2付近を中心として旋回流を形成するようになる。なお、増速室70C及び噴霧室70D内の冷媒の流れは、第1の実施形態と同様である。
【0130】
本実施形態の分流器7によれば、第1の実施形態の効果(1)〜(7)に加え、以下の効果を奏することができる。
(18)本実施形態によれば、冷媒配管CP2には、湾曲配管部P5と内側配管部P6が設けられるとともに、内側配管部P6は、円筒部73aの中心である中心軸J2付近に位置するように設けられている。この構成によれば、ガスリッチ冷媒が中心軸J2に流入しやすくなるため、同冷媒が中心軸J2付近を中心として旋回流を形成しやすくなる。したがって、旋回流形成室70B内の冷媒の旋回流が安定することができるようになる。
【0131】
(第13の実施形態)
図17を参照して、本発明の分流器をヒートポンプ方式の冷凍装置に搭載される膨張弁に接続される分流器として具体化した第13の実施形態について説明する。本実施形態の分流器7は、第1の実施形態の分流器7と比較して、多孔質透過材79を設けた点において異なる。以下、第1の実施形態の相違点を中心に説明する。
【0132】
図17に示すように、縮径部74の内部には、多孔質透過材79が設けられている。この多孔質透過材79は、縮径部74の右方向の端部と全周に亘り接続されるとともに左方向に向かい円錐状に凹む形状にて形成されている。多孔質透過材79の素材としては、発泡金属、セラミック、発泡性樹脂、メッシュ状のもの、多孔板などが用いられている。
【0133】
このような構成により、旋回流形成室70Bから増速室70Cに流通する冷媒は、多孔質透過材79により冷媒に含まれた塵埃等が捕捉されるようになる。なお、旋回流形成室70B、増速室70C、噴霧室70D内における冷媒の流れは、第1の実施形態と同様である。
【0134】
本実施形態の分流器7によれば、第1の実施形態の効果(1)〜(7)に加え、以下の効果を奏することができる。
(19)一般に、膨張弁の絞り部はコンタミやゴミ詰まりによりその絞り性能が低下する可能性が高い。そのため、膨張弁の絞り部の付近には、コンタミ等を補足するフィルタ(多孔質透過材)を設けている。しかしながら、絞り部の付近にフィルタを設けることにより、フィルタを設置するためのスペースが必要となり、膨張弁が大型化する問題があった。その点において、本実施形態によれば、分流器7の内部に多孔質透過材79が設けられるため、膨張弁6内に多孔質透過材79が設けられる構成と比較して、多孔質透過材を設けるためのスペースを省略することができる。したがって、膨張弁6の大型化を抑制することができるようになる。
【0135】
(第14の実施形態)
図18を参照して、本発明の分流器をヒートポンプ方式の冷凍装置に搭載される膨張弁に接続される分流器として具体化した第14の実施形態について説明する。本実施形態の分流器7は、第1の実施形態の分流器7と比較して、膨張弁6に対する接続構造が異なる。以下、第1の実施形態の相違点を中心に説明する。
【0136】
図18に示すように、分流器7は、冷媒配管CP1に接続されている。即ち膨張弁6と分流器7とは冷媒配管CP1によって互いに接続されている。そして膨張弁6と室内側膨張弁4(図1参照)とは冷媒配管CP2によって互いに接続されている。このような構成により、高圧冷媒は、単相または気液二相の冷媒として冷媒配管CP2を通過し、膨張弁6の絞り部60Cにより減圧されて気液二相流となり冷媒配管CP1に流通するようになる。そして冷媒配管CP1から分流器7の分流室70Aに冷媒が流通するようになる。なお、分流室70A内における冷媒の流れは、第1の実施形態と同様である。また、本実施形態の分流器7によれば、第1の実施形態の効果(1)〜(7)に準じた効果を奏することができる。
【0137】
(その他の実施形態)
本発明の分流器は、上記各実施形態に限定されることなく、上記各実施形態は、異なる実施形態同士を互いに組み合わせて実施する場合にも適用することができる。また本発明の分流器は、上記各実施形態に限定されることなく、以下の変更も可能である。なお、以下の変形例は、上記各実施形態についてのみ適用されるものでなく、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施する場合にも適用することもできる。
【0138】
・上記各実施形態では、縮径部74が右方向から左方向に向かうにつれて一定の割合にて縮径する略円錐形状にて設けられたが、縮径部74の形状はこれに限定されることはない。
【0139】
例えば図19(a)に示すように、縮径部74として、配管接続部73に接続される第1縮径部74aと第2形成部材72に接続される第2縮径部74bとの2つの縮径部から
構成することもできる。この場合において、第1縮径部74aと第2縮径部74bとは、互いに縮径する割合、即ち縮径部74の断面としてのテーパ角が異なるように設けられている。具体的には、第1縮径部74aのテーパ角θ1よりも第2縮径部74bのテーパ角θ2のほうが大きくなるように形成されている。
【0140】
また、例えば図19(b)に示すように、第2縮径部74bのテーパ角θ2よりも第1縮径部74aのテーパ角θ1のほうが大きくなるように形成することもできる。また第1縮径部74a及び第2縮径部74bの左右方向の長さは、図19(a)及び(b)に示す関係に限定されることはない。また、例えば図19(c)に示すように、縮径部74として、その断面が左右方向において湾曲形状に形成することもできる。
【0141】
・第6の実施形態では、配管接続部73に拡径部73cを設け、この拡径部73cと縮径部74との間を連結部75aにより連結する構成であったが、配管接続部73の構成及び配管接続部73と縮径部74との接続構造はこれに限定されることはない。例えば、図20に示すように、第1の実施形態における配管接続部73の構成及び配管接続部73と縮径部74との接続構造を用いることもできる。この構成によれば、第6の実施形態の効果(10)に準じた効果を奏することができる。また、図20の構成に限定されることなく、例えば図20の構成の配管接続部73の円筒部73aを第2の実施形態における拡径部73cに変更することもできる。この構成においても、第6の実施形態の効果(10)に準じた効果を奏することができる。
【0142】
・第7の実施形態も第6の実施形態と同様に、配管接続部73に拡径部73cを設け、この拡径部73cと縮径部74との間を連結部75aにより連結する構成であったが、配管接続部73の構成及び配管接続部73と縮径部74との接続構造はこれに限定されることはない。例えば、図21に示すように、第1の実施形態における配管接続部73の構成及び配管接続部73と縮径部74との接続構造を用いることもできる。この構成によれば、第7の実施形態の効果(12)に準じた効果を奏することができる。また、図21の構成に限定されることなく、例えば図20の構成の配管接続部73の円筒部73aを第2の実施形態における拡径部73cに変更することもできる。この構成においても、第7の実施形態の効果(12)に準じた効果を奏することができる。
【0143】
・第8の実施形態も第6の実施形態と同様に、配管接続部73に拡径部73cを設け、この拡径部73cと縮径部74との間を連結部75aにより連結する構成であったが、配管接続部73の構成及び配管接続部73と縮径部74との接続構造はこれに限定されることはない。例えば、図22に示すように、第1の実施形態における配管接続部73の構成及び配管接続部73と縮径部74との接続構造を用いることもできる。この構成によれば、第8の実施形態の効果(13)に準じた効果を奏することができる。また、図22の構成に限定されることなく、例えば図22の構成の配管接続部73の円筒部73aを第2の実施形態における拡径部73cに変更することもできる。この構成においても、第8の実施形態の効果(13)に準じた効果を奏することができる。
【0144】
・第9の実施形態も第6の実施形態と同様に、配管接続部73に拡径部73cを設け、この拡径部73cと縮径部74との間を連結部75aにより連結する構成であったが、配管接続部73の構成及び配管接続部73と縮径部74との接続構造はこれに限定されることはない。例えば、図23に示すように、第1の実施形態における配管接続部73の構成及び配管接続部73と縮径部74との接続構造を用いることもできる。この構成によれば、第9の実施形態の効果(15)に準じた効果を奏することができる。また、図23の構成に限定されることなく、例えば図23の構成の配管接続部73の円筒部73aを第2の実施形態における拡径部73cに変更することもできる。この構成においても、第9の実施形態の効果(15)に準じた効果を奏することができる。
【0145】
・上記各実施形態では、縮径部74の左方向の端部の開口面が上下方向に沿った平面にて形成されていたが、上記開口面の形状はこれに限定されることはない。例えば、図24(a)及び(b)に示すように、上記開口面が上下方向に対して傾斜する構成とすることもできる。この構成によれば、増速室70Cから噴霧室70Dに向かい流通する冷媒の噴霧室70D内への流れ方向を調整することができるようになる。したがって、各分流管CP3の冷媒の流量を敢えて異なるように調整する場合において、上記構造は好適である。
【0146】
・また図24(c)に示すように、縮径部74の左方向の端部に切り込み部74cを設ける構成とすることもできる。この場合においては、縮径部74の開口面は上下方向に沿った平面にて形成することもできる。この構成によれば、増速室70Cから噴霧室70Dに冷媒が流入する際に、切り込み部74cによって冷媒の流れに乱れを生じさせることができる。したがって、噴霧室70D内において冷媒の攪拌効果を向上させることができる。
【0147】
・第11の実施形態では、冷媒配管CP2の湾曲配管部P2が円筒部73aよりも外方に設けられたが、図25に示すように湾曲配管部P2は円筒部73aの内方に設けることもできる。この構成においても、第11の実施形態の効果(17)に準じた効果を奏することができる。
【0148】
・上記各実施形態では、分流管CP3を周方向に等ピッチにて3つ設けられる構成であったが、分流管CP3の個数や配列態様はこれに限定されることはない。例えば、図26に示すように、分流管CP3を周方向に等ピッチにて3つ設けることに加えて、中心に分流管CP3を1つ設けることもできる。
【0149】
・第5の実施形態では、連結部76が外方に向かい凹む形状にて形成されたが、連結部76の形状はこれに限定されることはない。例えば連結部76の右方向の一部の形状が、左方向に向かい拡径するテーパ形状とすることもできる。この構成によれば、旋回流形成室70Bの冷媒を拡大空間70Eに円滑に流通させることができるようになる。
【0150】
・第1〜第5の実施形態では、分流器本体部70を第1形成部材71及び第2形成部材72の2部材を互いに接合することにより形成され、第6〜第9の実施形態では、分流器本体部70を単一部材として形成されたが、分流器本体部70の構成はこれに限定されることはない。例えば、第1〜第5の実施形態の分流器本体部70を単一部材として構成することもできる。一方、第6〜第9の実施形態の分流器本体部70を第1形成部材71及び第2形成部材72の2部材から構成することもできる。また、第10〜第14の実施形態については、分流器本体部70の構成の記載はないが、同様に単一部材として構成することもできるし、2部材から構成することもできる。
【0151】
・また、分流器本体部70の分割構成としては、第1形成部材71及び第2形成部材72の2部材に限定されることはない。例えば、配管接続部73と縮径部74とを各別の部材によって形成することもできる。
【0152】
・第8の実施形態において、分流管接続部77の円筒部77aの内周面77bが分流管CP3に向かうにつれて縮径するとともに、各分流管CP3の内周面と滑らかに接続される構成は、他の実施形態においても適用することができる。これにより他の実施形態においても、第8の実施形態の効果(14)に準じた効果を得ることができる。
【0153】
・上記各実施形態では、膨張弁6として弁駆動装置により絞り部60Cが開度可変に形成される構成であったが、絞り部60Cはこれに限定されることはない。弁駆動装置、弁
棒64及び弁体65を省略して弁孔60Bのみが形成される構成とすることもできる。この構成においても、第1の実施形態の効果(5)以外の効果を奏することができる。
【0154】
・第1〜第9の実施形態及び第13の実施形態では、膨張弁6と分流器7とを接続配管である冷媒配管CP2によって互いに接続された構成であったが、膨張弁6と分流器7との接続構造はこれに限定されることはない。膨張弁6と分流器7とを一体型構造として構成することもできる。具体的には、膨張弁6の第2配管取付孔62と分流器本体部70の配管取付孔71aとが直接接続される構成となる。この構成によれば、冷媒配管CP2を省略することができるため、膨張弁6及び分流器7の組立体全体としての大型化の抑制を図ることができるようになる。また、膨張弁6に気液二相流の冷媒が流入する場合において発生する間欠冷媒音を低減することができるようになる。
【0155】
・第10、第11及び第14の実施形態では、分流器本体部70と冷媒配管CP2とがつなぎ目のない一体化構造として構成されたが、分流器本体部70と冷媒配管CP2との接続態様はこれに限定されることはない。第1〜第9の実施形態及び第13の実施形態に示すように、分流器本体部70と冷媒配管CP2とを各別の部材にて構成した上で、互いに固定する構成とすることもできる。
【0156】
・上記各実施形態では、膨張弁6を冷凍装置1に適用したが、膨張弁6の適用例はこれに限定されることはない。
・上記各実施形態では、分流器7を膨張弁6に接続する態様として適用したが、分流器7の適用例はこれに限定されることはない。例えば、オリフィス、ノズル、エジェクタ等の気液二相流を発生させるものであれば、分流器7を適用することができる。
【符号の説明】
【0157】
H1,H2…偏心量、J2…中心軸、R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8,R9,R10,R11,R12,R13,R14,R15…内径、CP1…冷媒配管、CP2…冷媒配管、CP3…分流管、P1…円筒配管部、P2…湾曲配管部、P3…接続配管部、P4…円筒配管部、P5…湾曲配管部、P6…内側配管部、1…冷凍装置、2…室内側熱交換器2…室外側熱交換器、4…室内側膨張弁、5…室内側分流器、6…室外側膨張弁(膨張弁)、7…室外側分流器(分流器)、8…四路切替弁、9…圧縮機、60…弁本体部、61…第1配管取付孔、62…第2配管取付孔、63…壁部、64…弁棒、65…弁体、60A…弁室、60B…弁孔、60C…絞り部、70…分流器本体部、71…第1形成部材、71a…配管取付孔(冷媒導入口)、72…第2形成部材、72c…分流管取付孔(分流管接続口)、73…配管接続部、73a…円筒部(周壁部、曲面部)、73b…底部、73c…拡径部(周壁部、曲面部、案内部)、73d…底部、73e…円筒部(周壁部、曲面部、案内部)、73f…底部、73g…連結部、74…縮径部、74a…第1縮径部、74b…第2縮径部、75…連結部、75a…連結部、76…連結部、77…分流管接続部、77a…円筒部、77b…内周面、78…接続通路部、78a…円筒部、78b…拡径部、79…多孔質透過材、70A…分流室、70B…旋回流形成室、70C…増速室、70C1…入口、70C2…出口、70D…噴霧室、70E…拡大空間、70F…接続空間、70F1…定径室、70F2…拡径室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に冷媒が流通する分流室を有する分流器本体部と、この分流器本体部に設けられた冷媒導入口、及びこの冷媒導入口を介して前記分流室内に流入した冷媒を分流して流出するための分流管が接続される分流管接続口とを備える分流器において、
前記分流室には、前記冷媒導入口から流入される冷媒が旋回流を形成する旋回流形成室と、この旋回形成室から流出した冷媒の旋回速度を増加させる増速室と、この増速室から流出した冷媒を霧状に拡散させる噴霧室とが設けられ、
前記噴霧室は、前記分流管接続口と接続する
ことを特徴とする分流器。
【請求項2】
請求項1に記載の分流器において、
前記増速室は、前記噴霧室に向かうにつれてこの増速室の内径が小さくなる略円錐形状に形成される
ことを特徴とする分流器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の分流器において、
前記噴霧室は、前記増速室の出口の面積よりも大きい断面積を有する
ことを特徴とする分流器。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の分流器において、
前記分流器本体部には、前記旋回形成室を形成する周壁部が設けられ、前記周壁部には、前記冷媒導入口から流入する冷媒に旋回成分を付与する曲面部が設けられ、前記冷媒導入口は、前記曲面部の接線方向に設けられる
ことを特徴とする分流器。
【請求項5】
請求項4に記載の分流器において、
前記周壁部には、前記増速室に向かい冷媒を案内する案内部が設けられる
ことを特徴とする分流器。
【請求項6】
請求項5に記載の分流器において、
前記冷媒導入口に対し接続される冷媒配管は、前記旋回形成室の中心軸からの偏心量が大きくなるように、前記旋回形成室の外方に配設されている
ことを特徴とする分流器。
【請求項7】
請求項4〜請求項6のいずれか一項に記載の分流器において、
前記分流室には、前記増速室と前記旋回形成室との間において、前記増速室に接続されるとともに、この増速室の内径よりも大きい内径を有する拡大空間が設けられる
ことを特徴とする分流器。
【請求項8】
請求項4〜請求項6のいずれか一項に記載の分流器において、
前記旋回形成室と前記増速室とは互いに接続され、
前記旋回形成室は、前記増速室に向かい拡径する略円錐形状、または略円筒形状に形成されるとともに、この旋回形成室の内径は前記増速室の入口の内径よりも大きく形成される
ことを特徴とする分流器。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の分流器において、
前記分流室における前記増速室と前記噴霧室との間には、接続空間が設けられている
ことを特徴とする分流器。
【請求項10】
請求項9に記載の分流器において、
前記接続空間は、内径一定の空間に形成されているか、または、少なくとも噴霧室側に、前記噴霧室に向かうにつれて拡径する略円錐形状の拡径室が形成されている
ことを特徴とする分流器。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の分流器において、
前記分流管接続口は、前記分流室の周囲方向に円環状に配列され、この配列された前記分流管接続口の内縁を結ぶことによって形成される円の内径は、前記増速室の出口の内径よりも大きい
ことを特徴とする分流器。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の分流器と併用することを特徴とする膨張弁。
【請求項13】
請求項12に記載の膨張弁において、
当該膨張弁と前記分流器とが一体化構造として形成される
ことを特徴とする膨張弁。
【請求項14】
請求項12または請求項13に記載の膨張弁において、
当該膨張弁には、弁体と弁孔との間に形成された、絞り作用を行う絞り部が設けられ、前記絞り部は、冷凍負荷に対応して開度可変に構成される
ことを特徴とする膨張弁。
【請求項15】
請求項12〜請求項14のいずれか一項に記載の膨張弁を用いることを特徴とする冷凍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2011−17527(P2011−17527A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128265(P2010−128265)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)