説明

分解抑制された除草剤組成物

【課題】経時安定性に優れたトリアジン系除草剤を有する除草剤製剤を提供すること。
【解決手段】トリアジン系除草剤有効成分を含む除草剤製剤に対し、アミノ酸を0.1〜5%加えることによって得られる除草剤製剤およびその分解抑制方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は除草剤有効成分としてのトリアジン系化合物の経時安定性に優れた除草剤製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
農薬は極少量の有効成分で効力を発揮するが、有効成分のみを低薬量で広範囲に均一散布することは極めて難しい。そのため通常は有効成分を適当な希釈剤と混合し、便宜を図っておりこれを農薬製剤と言う。そしてこれらを設計するに当たっては、利便性・効力の向上・短所の改善・安全性・環境汚染・作業性等を考慮せねばならない。
【0003】
こういった概念から設計する農薬製剤において重要なことは剤型と共に除草剤有効成分の添加量である。有効期間内に許容添加量を下回らないとことは当然ながら、昨今の社会的状況から過度の除草剤有効成分の使用抑制が求められている。そして除草剤製剤に関しても厳格な品質保証が求められている。その中には有効成分管理があり、従来は「下限値管理法」で行われていたが、近年「中央値管理法」に改められた。
【0004】
「下限値管理法」とは製剤有効期限内に登録添加量(表示値)を下回らない様に管理する方法である。即ち、分解しやすい除草剤有効成分はかなりの増し仕込みを行って下限値を下回らないようにしており、極端な増し仕込みが行われている場合もある。
【0005】
「中央値管理法」とは製剤有効期限内に登録添加量(表示値)に一定の許容範囲を設け、その範囲内で管理する方法である。この許容範囲は表示値によって異なってくる。この管理方法は毒物・劇物に該当する医薬品や、FAOや米国、欧州等でも農薬製剤の有効成分含有量の保証濃度についての管理に適用されている。
【0006】
このような社会的背景から過度の除草剤有効成分の添加は好ましくなく、理想としては「最適最小量での施用」が望ましい。
【0007】
一方、除草剤有効成分の一つであるトリアジン系化合物には種々の化合物がある[化1]。
基本骨格に付随する側鎖は非常に多くの構造を取り、不飽和結合を有するなど必ずしも反応性が低いとは言えない。製剤中の他の除草剤有効成分や資材と反応して分解するとも言われている。
【0008】
例えばトリアジン系化合物であるシアナジンを除草剤有効成分としている市販粒剤においてはカルコーン粒剤、草退治粒剤等がある(例えば非特許文献1参照)。これらにおいてもシアナジンの分解抑制を試みてはいるが不十分であり、3割以上の増し仕込みをしているものもある。
【非特許文献1】「農薬要覧2003 日本植物防疫協会」P500
【0009】
このように社会的背景や中央値管理に適合する事を考慮した場合、トリアジン系化合物の分解抑制を行うことが必須と言える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、除草剤製剤中において化学的に安定で増し仕込みの削減が可能であり、除草剤有効成分の中央値管理に適応した、トリアジン系化合物を除草剤有効成分とする除草剤組成物を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は除草剤製剤、その中の一つとして除草剤有効成分がトリアジン系化合物であるものにおいて、長期の保管にも除草剤有効成分が化学的に安定な除草剤製剤を検討した。
その結果トリアジン系化合物にアミノカルボン酸を加えることによって、目的とするような除草剤製剤を得ることを可能としたのである。
【0012】
即ち本発明は、分子中に[化1]式で表されるトリアジン骨格を含む分解性の除草剤有効成分、アミノカルボン酸化合物および界面活性剤を含有する、分解抑制された除草剤組成物である。
【0013】
【化1】

【0014】
また本発明のアミノカルボン酸化合物の好ましいものは[化2]式で表される構造を分子中に含んでいる。
【0015】
【化2】

【0016】
さらに本発明は、分子中に[化1]式で表されるトリアジン骨格を含む分解性の除草剤有効成分を含有する除草剤組成物に[化2]式で表される構造を分子中に含むアミノカルボン酸を含有させることを特徴とする、前記した除草剤組成物の分解抑制方法である。
【0017】
除草剤有効成分としてトリアジン系化合物を含む粒剤としては、他の除草剤有効成分と混合して用いられている場合がある。例えばその一つとして、2,6−Dichlorothiobenzamide(以下DCBNと記す)がある。このトリアジン系化合物とDCBNが混在する粒剤においてはトリアジン系化合物の分解が著しい。この原因について述べる。DCBNは粒剤中及び散布後に2,6−Dichlorobenzonitrile(以下DBNと記す)に分解し、これが植物体に吸収され除草効果を発現する。このDCBNがDBNに分解する際にH2S(硫化水素)が発生する。この硫化水素がトリアジン系化合物を攻撃し、トリアジン系化合物の分解が促進されると考えられている。
【0018】
アトラジン(IUPAC名)とDCBNの混合粒剤にもついても同様の現象が見られ、アトラジンの分解抑制が課題となっていた。そこで分解起因物質である硫化水素の影響を緩和するためにジアミノモノカルボン酸の塩基性アミノ酸であるアルギニンを加える事によって、アトラジンの分解抑制を可能としたのである。
【0019】
またシアナジン(IUPAC名)とDCBNの混合粒剤にも同様の現象が見られ改善を試みた。ここではモノアミノジカルボン酸の酸性アミノ酸であるグルタミン酸を加えることによって、シアナジンの分解抑制を可能としたのである。また、ここでは硫化水素と共に粒剤中に含まれている亜硫酸ナトリウムとベントナイトがシアナジンの分解に関係していることが窺われ、これらの影響緩和にグルタミン酸が寄与したと思われる。
【0020】
トリアジン系化合物を含む除草剤製剤中でもアミノカルボン酸は緩衝剤としての役割を果たしていると考えられる。上記ではDCBNを例として説明したが、実際の除草剤製剤系内にはDCBN以外にも種々の構成物があり、それらが少なからず相互作用を持ちながら存在している。構成物間で化学的反応を起こす場合があり、この影響でトリアジン系化合物が分解するのである。化学反応の多くは酸・塩基反応によるものであり、酸・塩基を緩和することがトリアジン系化合物の分解抑制に重要である。この緩和、即ちトリアジン系化合物を酸・塩基から保護する効果をアミノカルボン酸が持ち合わせているのである。そして各除草剤製剤中での最適なアミノカルボン酸は、除草剤製剤構成物の種類・割合によって異なってくる。
【発明の効果】
【0021】
トリアジン系化合物に対しアミノカルボン酸を加えることによって、トリアジン系化合物の除草剤製剤中での分解抑制ができ、且つ従来品と同等の除草効果を持つ除草剤製剤を作ることができた。これにより除草剤有効成分であるトリアジン系化合物の除草剤製剤への添加量を削減でき、除草剤有効成分の中央値管理にも適応できるようになった。さらに高価な除草剤有効成分の削減により低コスト化も可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の構成成分、製造方法について具体的に説明する。本発明の除草剤製剤の形態の一つとして粒剤が挙げられる。粒剤とは除草剤有効成分、界面活性剤等の助剤、希釈剤からなり、原料粉体を混合後加水し混練・押出造粒・整粒・乾燥して得るものである。また、本発明に用いるトリアジン系化合物としては、2−chloro−4−ethylamino−6−isopropylamino−1,3,5−triazine(以下アトラジンと記す)や、2−(4−Chloro−6−ethylamino−1,3,5−triazin−2−yl)amino−2−methylpropionitrile(以下シアナジンと記す)等があり、以下これらを用いて説明する。
【0023】
アミノカルボン酸としてはジアミノモノカルボン酸やモノアミノジカルボン酸等が挙げられる。これらは一つの構造中に塩基性のアミノ基と酸性のカルボキシル基の両方を持つものである。また構造中のアミノ基とカルボキシル基の数は必ずしも上記に当てはまらなくても良い。そしてアミノカルボン酸の例としてはアミノ酸などが挙げられる。ここでアミノ酸について述べる。アミノ酸とは一つの構造中に陰イオンになるカルボキシル基と、陽イオンになるアミノ基の両方を持つ双性イオン構造を取る有機化合物である。アミノ酸存在下の系内pHが変わることによって、形態を変えて存在している。こういった性質からアミノ酸は各種製剤でのpH調整剤や緩衝剤として用いられている。
【0024】
本発明で使用されるアミノカルボン酸は特に限定されない。一つの構造中にアミノ基とカルボキシル基の双方を持ち合わせていれば良い。一般的にはアミノ酸と呼ばれているもの等で良く必須アミノ酸等でも良い。例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、メチオニン、システイン、トリプトファン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、チロシン、リシン、アルギニン、ヒスチジン等である。
【0025】
添加量として特に制限はないが、0.1〜5%で十分な効果が得ることができる。添加方法は特に制限は無い。原料粉体混合時に同時に添加しても構わないし、練り込み水に溶解、または懸濁させて加えても構わない。
【0026】
本発明に用いられる界面活性剤としては、特に限定はされず、除草剤製剤に使用されている一般的なノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤を使用することができ、これらを単独、又は2種以上組み合わせて使用しても良い。
【0027】
ノニオン系界面活性剤ではポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、など何れでも良い。
【0028】
アニオン系界面活性剤ではリグニンスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、ジアルキルエステルスルホン酸塩、アルケニルスルホネート塩アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリカルボン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、高級脂肪酸塩等何れでも良い。
【0029】
カチオン系界面活性剤では、第4級アンモニウム塩、アルキルアミン塩等何れでも良い。
【0030】
本発明では必要に応じて希釈剤、助剤として、鉱物質粉体、水溶性粉体、植物性粉体を使用しても良く、これらは単独、又は2種以上組み合わせて使用しても良い。鉱物質粉体としては特に制限されないが、珪藻土、クレー、タルク、ベントナイト、炭酸カルシウム、ゼオライト、酸性白土等が挙げられる。水溶性粉体としては特に制限されないが、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、糖類、尿素、硫酸塩、硝酸塩、燐酸塩、塩酸塩、金属塩、アンモニウム塩が挙げられる。植物性粉体としては特に制限されないが、小麦粉、糠、ふすま等の各種植物繊維質が挙げられる。
【0031】
本発明の除草剤製剤は以下の方法で製造されるが、一例であり特に限定はされない。まず、除草剤有効成分、原料粉末(界面活性剤、無機塩、増量剤等)、アミノ酸を均一混合させる。更に液体成分を使用する場合には練り込み水に溶解させて、加えて混練し、押出造粒機を用いて造粒し、乾燥して目的物を得る。無機塩等の水溶性物質は練り込み水に溶解させて添加しても構わない。乾燥は、熱風乾燥機、輻射式乾燥機、熱伝導式乾燥機等を用いる。このようにして得られた目的物の粒径は0.2〜2.0mm、好ましくは0.5〜1.0mmが良い。
【0032】
このようにして得られた除草剤製剤はトリアジン系化合物の経時安定性に優れており、農地、非農耕地で使用可能であるが、非農耕地において優れた性能を発揮する。
【0033】
次に実施例、比較例を挙げて更に本発明の説明を行うが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、以下の例で「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を表す。
また実験に用いた原料は以下の通りである。
ジアルキルエステルスルホン酸塩:東邦化学(株)Sorpol5050
アルキルアリルスルホネート系界面活性剤:東邦化学(株)Sorpol5060
ベントナイト:関東ベントナイト鉱業(株)製、関東ベントナイト天竜
クニミネ工業(株)製、クニゲルV1
クレー:(株)勝光山鉱業所製、勝光山クレー
浅田製粉(株)製、ネオキャリアO2
ポリビニルアルコール:日本合成化学製、ゴーセノールGL−05
亜硫酸ナトリウム:純正化学(株)製、試薬1級品
グルタミン酸:純正化学(株)製、試薬特級品
EDTA−4Na(エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム)塩四水和物:純正化学(株)製、試薬特級品
トリポリ燐酸ナトリウム(三燐酸五ナトリウム):純正化学(株)製、試薬特級品
DCMU:除草剤有効成分で、3−(3,4−Dichlorophenyl)−1,1−dimethylurea の略称。
DCBN:除草剤有効成分で2,6−Dichlorothiobenzamideの略称
シアナジン:トリアジン系化合物の除草剤有効成分で、2−(4−Chloro−6−ethylamino−1,3,5−triazin−2−yl)amino−2−methylpropionitrileの略称。
アトラジン:トリアジン系化合物の除草剤有効成分で、2−Chloro−4−ethylamino−6−isopropylamino−1,3,5−triazineの略称。
【実施例1】
【0034】
シアナジン10部、DCBN5部、ベントナイト(クニゲルV1)15部、クレー(ネオキャリアO2)63部、アルキルアリルスルホネート系界面活性剤1部、ポリビニルアルコール2部、グルタミン酸2部を加え均一に混合した。その後、亜硫酸ナトリウム2部を溶解した水で混練し、孔径0.7mmのスクリーンを装着した押出造粒機を用いて造粒した。その後60℃で乾燥し、篩分けして整粒し目的物を得た。
【実施例2】
【0035】
シアナジン1部、DCBN1.5部、DCMU3部、ベントナイト(関東ベントナイト天竜)30部、クレー(勝光山クレー)55.5部、ジアルキルエステルスルホン酸塩1部、アルキルアリルスルホネート系界面活性剤1部、トリポリ燐酸ナトリウム3部、グルタミン酸2部を加え均一に混合した。その後、亜硫酸ナトリウム1部、EDTA−4Na1部を溶解した水で混練し、孔径0.7mmのスクリーンを装着した押出造粒機を用いて造粒した。その後60℃で乾燥し、篩分けして整粒し目的物を得た。
【実施例3】
【0036】
アトラジン4部、DCBN1.5部、DCMU6部、ベントナイト(関東ベントナイト天竜)30部、クレー(勝光山クレー)54.5部、ジアルキルエステルスルホン酸塩1部、アルキルアリルスルホネート系界面活性剤1部、アルギニン1部を加え均一に混合した。その後、亜硫酸ナトリウム1部を溶解した水で混練し、孔径0.7mmのスクリーンを装着した押出造粒機を用いて造粒した。その後60℃で乾燥し、篩分けして整粒し目的物を得た。
【0037】
[比較例1]
[実施例1]の工程からシアナジンの添加量を10.5部に変更し、且つグルタミン酸を除いた物を得た。そしてこれらの過不足分はクレーで補った。
【0038】
[比較例2]
[実施例2]の工程からシアナジンの添加量を1.2部に変更し、且つグルタミン酸を除いた物を得た。そしてこれら成分の過不足分はクレーで補った。
【0039】
[比較例3]
[実施例3]の工程からアルギニンを除いた物を得た。アルギニンの過不足分はクレーで補った。
【実施例4】
【0040】
トリアジン系化合物の経時安定性試験1
100mlポリプロピレン製容器に[実施例1][実施例2][比較例1][比較例2]の試料を各々50g入れ、40℃恒温槽に静置した。そして1月ごとにサンプリングを行った。サンプリング量は[実施例1]と[比較例1]が0.4g、[実施例2]と[比較例2]が0.8gである。これらサンプルを乳鉢ですり潰した後、アセトニトリルを使って抽出した。そして抽出液を高速液体クロマトグラフィーにて測定し、シアナジンの製剤中の含有量を求め、[表1]にまとめた。
また、各製剤中のシアナジンの分解率を以下の式で求め、[表2]にまとめた。
分解率(%)=〔(A−B)/A〕×100
A:最初(実験開始前)の製剤中のシアナジン存在量
B:サンプル製剤中のシアナジン存在量
【0041】
[実施例4]における各製剤中のシアナジンの含有量を[表1]に表した。
【0042】
【表1】

【0043】
[実施例4]における各製剤中のシアナジンの分解率を[表2]に表した。
【0044】
【表2】

【0045】
[表1]、[表2]を見ると明らかにグルタミン酸を添加することによって、シアナジンの分解抑制がなされていることが確認できた。例えば[実施例2]、[比較例2]の様な添加量1%の場合は「中央値管理法」では±15%が許容範囲とされており、30%以内の減少にしなければならない。[比較例2]はそれ以内に収まってはいるものの、余裕のない状態であり、実保存ではそれ以上の分解も懸念される。しかし[実施例2]の分解抑制でその懸念を払拭できた。
【実施例5】
【0046】
トリアジン系化合物の経時安定性試験2
100mlポリプロピレン製容器に[実施例3]と[比較例3]の試料を各々50g入れ、40℃恒温槽に静置した。そして1月ごとにサンプリングを行った。サンプリング量は0.4gである。これらサンプルを乳鉢ですり潰した後、アセトニトリルを使って抽出した。そして抽出液を高速液体クロマトグラフィーにて測定し、アトラジンの製剤中の含有量を求め、[表3]にまとめた。
また、各製剤中のアトラジンの分解率を以下の式で求め、[表4]にまとめた。
分解率(%)=〔(A−B)/A〕×100
A:最初(実験開始前)の製剤中のアトラジン存在量
B:サンプル製剤中のアトラジン存在量
【0047】
[実施例5]における各製剤中のアトラジンの含有量を[表3]に表した。
【0048】
【表3】

【0049】
[実施例5]における各製剤中のアトラジンの分解率を[表4]に表した。
【0050】
【表4】

【0051】
[表3]、[表4]を見ると明らかにアルギニンを添加することによって、アトラジンの分解抑制がなされていることが確認できた。[実施例3]、[比較例3]の様な添加量4%の場合は「中央値管理法」では±10%が許容範囲とされており、20%以内の減少にしなければならない。[比較例3]はそれ以上分解しておりこのままでは「中央値管理法」には適応できない。しかし[実施例3]ではこの点を解決できた。
【実施例6】
【0052】
トリアジン系化合物を含む農薬製剤の生物試験
苺パックの底に5mm程度の排水孔を15個開け、パック内に土壌を入れ試験区とした。
次に各種雑草(エノコログサ、メヒシバ、ノビエ、アオビユ、コセンダングサ、ヤバスソウ)の種を各20粒ずつパックに散布した。
これに[実施例1]と[比較例1]の製剤を各々5.0g/m2、6.7g/m2、10.0g/m2の割合で散布した。
試験サンプルの散布時期としては、雑草が生えてきたのを確認して散布したもので「雑草発生始期処理」とした。
処理時期:6月
実験開始後、8日後、22日後、32日後に雑草の発生状況を比較して評価した。
【0053】
(評価結果の表し方)
判定は5段階評価で行っている。5が最も効果が高く、対象雑草を全て枯らしていることを意味し、0は全く効果が無いことを意味している。一般に処理量を増加させると効果が高くなり、日数が経つに連れて効果の差がはっきりとしてくる。
【0054】
各雑草に対する評価は[表5]に表した。表の2行目は実験開始後の日数を表している。
【0055】
【表5】

【0056】
各種雑草での除草効果を比較したが[実施例1]の除草効果は[比較例1]よりも優れているかほぼ同等と言える。
【0057】
即ち、グルタミン酸を加えることによってシアナジンの分解抑制がなされた化学的に安定で、且つ従来通りの除草効果を持つ除草剤製剤を作れた事が確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0058】
トリアジン系化合物を有効成分とする除草剤の低コスト化、低環境負荷に利用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に[化1]式で表されるトリアジン骨格を含む分解性の除草剤有効成分、アミノカルボン酸化合物および界面活性剤を含有する分解抑制された除草剤組成物。
【化1】

【請求項2】
前記した分解性の除草剤有効成分がアトラジンである請求項1記載の分解抑制された除草剤組成物。
【請求項3】
前記した分解性の除草剤有効成分がシアナジンである請求項1記載の分解抑制された除草剤組成物。
【請求項4】
前記したアミノカルボン酸化合物が[化2]式で表される構造を分子中に含む事を特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載の分解抑制された除草剤組成物。
【化2】

【請求項5】
前記した除草剤組成物が粒剤、粉剤、水和剤または顆粒水和剤であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかの項に記載の分解抑制された除草剤組成物。
【請求項6】
分子中に[化1]式で表されるトリアジン骨格を含む分解性の除草剤有効成分を含有する除草剤組成物に[化2]式で表される構造を分子中に含むアミノカルボン酸を含有させることを特徴とする、前記した除草剤組成物の分解抑制方法。

【公開番号】特開2007−84513(P2007−84513A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−278357(P2005−278357)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000005315)保土谷化学工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】