説明

分離ローラ装置

【課題】分離ローラの内底部に埃が蓄積することを防止し、良好に分離ローラを回転できるようにする。
【解決手段】取出ローラによって取り出される紙葉類の二枚取りを防止するもので、回転軸が垂直な状態で設けられ、周面部にエアー吸引穴列を回転方向に所定間隔を存して複数有する分離ローラと、この分離ローラの内部に固定的に設けられ、前記複数のエアー吸引穴列の一部に対向するエアー吸引流路を有するチャンバと、このチャンバの前記吸引エアー流路に接続され、前記分離ローラのエアー吸引穴列の一部に負圧を発生させて紙葉類を吸着させる真空ポンプと、前記分離ローラの内底部に設けられ、前記エアー吸引流路に対向するエアー吸引穴列以外のエアー吸引穴列から吸引される埃を排出させる排出口とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、分離ローラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
郵便区分機や紙幣処理装置などの紙葉類処理装置では、紙葉類を取り出す取出部を備えている。
【0003】
取出部は、取出ローラとこの取出ローラに対向配置され、前記取出ローラによって取り出される紙葉類を一枚ずつに分離する分離ローラ装置とを備えている。
【0004】
分離ローラ装置は、分離ローラと、この分離ローラ内に固定的に設けられるチャンバとからなる。分離ローラは、その周面部に軸方向に沿うエアー吸引穴列を回転方向に所定間隔を存して複数配列している。チャンバは、その周壁に軸方向に沿って形成されるチャンバ孔を有し、このチャンバ孔は、上記したエアー吸引穴列の例えば1列分に対向する開口面積を有している。また、チャンバはその中心部にチャンバ孔に連通する中心孔を有し、この中心孔に真空ポンプが接続されている。
【0005】
上記した構成において、分離ローラが回転されるとともに、真空ポンプが駆動されると、真空ポンプの吸引力が、チャンバの中心孔、及びチャンバ孔を介して分離ローラの一列分のエアー吸引穴列(以下、吸着用のエアー吸引穴列という)に作用する。これにより、分離ローラに接触する側の紙葉類が吸着され、紙葉類は取出ローラによって一枚ずつ分離されて取り出されることになる。
【0006】
ところで、分離ローラは紙葉類の取出し状態によっては、その回転軸を水平状態、或いは垂直状態にして設置される。
【0007】
しかしながら、分離ローラの回転軸を垂直状態にした場合には、以下に示すような問題が生じていた。
【0008】
即ち、分離ローラは、上記したように吸着用のエアー吸引穴列に生じる負圧で紙葉類を吸着するが、この吸着する紙葉類が吸着用のエアー吸引穴列の近傍にない場合や、紙葉類取出しの一時停止時に真空ポンプをOFFにする制御機構が無い場合などには、上記した吸着用のエアー吸引穴列以外のエアー吸引穴列から周囲の空気が吸引される。
【0009】
このため、吸引される空気に混ざった紙紛などの埃が分離ローラの内周面とチャンバの外周面との間の隙間に入り込む。この埃は、重力で落下し分離ローラの内底面の狭い領域に溜まって蓄積される。そして、この蓄積される埃が、分離ローラを回転させる駆動モータのトルクを越えた抵抗(ブレーキ)となると、分離ローラの回転停止を引き起こすことがある。このように分離ローラが一旦、停止すると、分離ローラを分解して内部の埃を除去(清掃)する必要があり、装置の稼働率低下につながるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−46879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
解決しようとする課題は、分離ローラの内底部に埃が蓄積することを防止し、良好に分離ローラを回転できるようにした分離ローラ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施の形態は、取出ローラによって取り出される紙葉類の二枚取りを防止するもので、回転軸が垂直な状態で設けられ、周面部にエアー吸引穴列を回転方向に所定間隔を存して複数有する分離ローラと、この分離ローラの内部に固定的に設けられ、前記複数のエアー吸引穴列の一部に対向するエアー吸引流路を有するチャンバと、このチャンバの前記吸引エアー流路に接続され、前記分離ローラのエアー吸引穴列の一部に負圧を発生させて紙葉類を吸着させる真空ポンプと、前記分離ローラの内底部に設けられ、前記エアー吸引流路に対向するエアー吸引穴列以外のエアー吸引穴列から吸引される埃を排出させる排出口とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施の形態である紙葉類取出装置を示す平面図。
【図2】図1の分離ローラ装置を示す斜視図。
【図3】図2の分離ローラ装置を分解して示す斜視図。
【図4】図2の分離ローラ装置における吸引エアーの流れと埃の進入を示す図。
【図5】図4の分離ローラ装置を示す横断面図。
【図6】図2の分離ローラを示す斜視図。
【図7】図6の分離ローラを示す縦断面図。
【図8】第2の実施の形態であるチャンバを示す斜視図。
【図9】図8のチャンバが分離ローラ内に収納された状態を示す図。
【図10】第3の実施の形態であるチャンバを示す斜視図。
【図11】図10のチャンバが分離ローラ内に収納された状態を示す図。
【図12】図11の分離ローラの内底部の埃の移動を示す図。
【図13】図12の埃が分離ローラの内底部の排出口から排出される状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態である郵便区分機や紙幣取出装置などの紙葉類処理装置に備えられ、郵便書状や紙幣などの紙葉類を取り出す取出装置1を示す平面図である。
【0016】
取出装置1は、立位状態で集積された紙葉類Pの側面部に当接して紙葉類Pを送り出す送りローラ2と、この送りローラ2の紙葉類送出方向に設けられた取出ローラ3及び分離ローラ装置4とによって構成されている。分離ローラ装置4は、後述するように分離ローラ11とこの分離ローラ11を取出ローラ3とは逆方向に回転駆動する駆動モータ(図示しない)とによって構成されている。上記した送りローラ2、取出ローラ3及び分離ローラ11は、いずれも、その回転軸を垂直状態にして配設されている。
【0017】
紙葉類Pは、送りローラ2の回転によって送り出され、取出ローラ3と分離ローラ11との間に至ると、取出ローラ3の回転により取り出される。このとき、取出ローラ3と分離ローラ11との間に紙葉類Pが重なった状態で送り込まれた場合には、分離ローラ11に接触する側の紙葉類Pは後で詳しく述べるように分離ローラ11に吸着され、この分離ローラ11の回転により紙葉類取出方向と逆方向に送られて分離されるようになっている。なお、立位状態で集積された紙葉類Pは、バネ材6によって付勢される押圧板7によって押圧され、送りローラ2に弾性的に押し付けられるようになっている。
【0018】
図2は、上記した分離ローラ装置4を示す外観斜視図で、図3はその分解斜視図である。
【0019】
この分離ローラ装置4は、分離ローラ11と、この分離ローラ11を回転駆動する駆動モータ(図示しない)とを備えている。分離ローラ11の回転軸13の下端部には従動プーリ14が取り付けられ、この従動プーリ14は、図示しない駆動ベルトを介して駆動モータに連結されている。
【0020】
分離ローラ11の周面にはその軸方向に沿ってエアー吸引穴列11aが形成され、このエアー吸引穴列11aは、分離ローラ11の回転方向に所定間隔を存して複数列形成されている。
【0021】
分離ローラ11内には、図3に示すチャンバ12が固定的に設けられている。このチャンバ12の周面には、その軸方向に沿って縦長のチャンバ孔12aが形成されているとともに、一段掘り込んだ逃げ部15が周方向に沿って形成されている。チャンバ12周面の逃げ部15は、分離ローラ11の内周面との間に隙間を形成するもので、これにより分離ローラ11の回転時における接触を防止するようになっている。
【0022】
図4は分離ローラ11を示す縦断面図で、図5はその横断面図である。
【0023】
チャンバ12はその軸心に沿って中心孔16を有し、この中心孔16は、チャンバ孔12aに連通されている。チャンバ孔12aは、分離ローラ11の2列分のエアー吸引穴列11aに対向する開口面積を有している。チャンバ孔12aと中心孔16とにより、エアー吸引流路が構成されている。
【0024】
チャンバ12の上面部には中心孔16に連通する吸引用の接続口体18が接続され、この接続口体18には図示しない吸引パイプを介して真空ポンプ20が接続されている。
【0025】
上記した構成において、分離ローラ11の駆動モータ(図示しない)が駆動されるとともに、真空ポンプ20が駆動されると、分離ローラ11が回転されるとともに、真空ポンプ20の吸引力が、チャンバ12の中心孔16、及びチャンバ孔12aを介して分離ローラ11のエアー吸引穴列11aに作用し、エアーがエアー吸引穴列11aから矢印aで示すように吸引される。これにより、分離ローラ11側に接触する紙葉類Pが吸着され、取出方向と逆方向に送られて分離される。この分離により、取出ローラ3による紙葉類Pの二枚取りが防止されることになる。
【0026】
ところで、紙葉類Pの取出し状態によって分離ローラ11は、その回転軸13を水平な状態、或いは、垂直な状態にして設置される。この実施の形態では、上記したように分離ローラ11の回転軸13を垂直状態にして設置している。
【0027】
しかしながら、分離ローラ11の回転軸13を垂直状態にして設置した場合には、埃が回転ローラ11の内部に溜まり、それが原因で回転が停止してしまうことがあった。
【0028】
即ち、分離ローラ11の周囲部のエアーに含まれる紙紛や繊維等の埃は、分離ローラ11のエアー吸引穴列11aのうちチャンバ孔12aに対向するエアー吸引穴列11a以外のエアー吸引穴列11aから矢印bで示すように吸引される。この吸引される埃は、回転ローラ11とその内部のチャンバ12との間に形成される隙間に入り込み、その自重で落下して分離ローラ11の内底部に蓄積される。この蓄積される埃が、分離ローラ11を回転させる駆動モータのトルクを越えた抵抗(ブレーキ)になると、分離ローラ11の回転が停止してしまう。
【0029】
分離ローラ11の回転が一旦、停止すると、分離ローラ11を分解して内部の埃を除去(清掃)する必要があり、装置の稼働率低下につながるという問題がある。
【0030】
そこで、この実施の形態では、図6及び図7に示すように、分離ローラ11の内底面部をチャンバ12の底面部から離間する方向に深くなるように掘り下げ、この内底面部に分離ローラ11の回転方向に沿って所定間隔を存して複数個の排出口21を穿設している。
【0031】
このように、分離ローラ11の内底面部に排出口21を穿設することにより、分離ローラ11の内底面部に廻り込んだ埃は、その重力によって自動的に排出口21から落下排出される。従って、分離ローラ11の内底面部に埃が蓄積することがなく、その回転停止を防止することができ、稼働効率を良好に維持できる。
【0032】
また、分離ローラ11の内底面部を掘り下げるため、排出口21から落下しないで蓄積される埃があっても、その許容量を増やすことが可能となる。
【0033】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態であるチャンバを示す斜視図である。
【0034】
なお、上記した実施の形態で示した部分と同一部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0035】
上記した実施の形態で説明したように、分離ローラ11の内底部に溜まった埃は、分離ローラ11の回転に連れられて撹拌されるが、この撹拌される埃は、更に遠心力などで外周に寄せられ、その一部がチャンバ12の逃げ部15のエッジ部に引っ掛かって滞留し始める。そして、この滞留した埃は、次々と衝突して絡まり集まって押し固められ、摩擦抵抗となって分離ローラ11の回転を止めることが判っている。
【0036】
そこで、この第2の実施の形態では、チャンバ12の逃げ部15の下端側にそのエッジ部に連なるように周方向に沿って鍔部22を一体的に突設している。
【0037】
図9は、図8のチャンバ12が分離ローラ11内に設けられた状態を示す断面図である。
【0038】
チャンバ12の逃げ部15の下端側に突設された鍔部22の上端面22aは、分離ローラ11のエアー吸引穴列11aの最下端部に位置する穴11a′の内底面よりも上方に位置されている。
【0039】
この第2の実施の形態によれば、分離ローラ11の内周面とチャンバ12周面の逃げ部15との間の隙間Sの下端側を鍔部22によって狭めることができる。従って、隙間S内を落下してくる埃を鍔部22の上端面22aで受けることができ、分離ローラ11の内底部側に回り込むことを規制できる。しかも、埃が逃げ部15のエッジ部に引っ掛かって押し固めて摩擦抵抗となることもなく、分離ローラ11の回転停止を防止できる。
【0040】
また、チャンバ12の鍔部22の上端面22aは、分離ローラ11のエアー吸引穴列11aの下端側の穴11a′の内底面よりも上部側に位置するため、隙間S内で落下してくる埃を矢印で示すように、エアー吸引穴列11aの下端側の穴11a′から外部に排出でき、より一層確実に分離ローラ11の回転停止を防止することができる。
【0041】
(第3の実施の形態)
図10は、第3の実施の形態であるチャンバを示す斜視図である。
【0042】
なお、上記した実施の形態で示した部分と同一部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0043】
この第3の実施の形態では、チャンバ12の底面部にチャンバ孔12aに対し、180度反対側に位置して突起部としてのネジ部23を螺着している。
【0044】
図11は、図10のチャンバ12が、分離ローラ11内に収納されてそのネジ部23が分離ローラ11の内底面部に対向された状態を示すものである。
【0045】
上記した第1の実施の形態で説明したように、分離ローラ11の内底面に送り込まれた埃は、重力により排出口21から排出されるようになっているが、図12に示すように、埃は分離ローラ11の内底面に付着したまま一緒に移動し、排出口21から排出しないことがある。
【0046】
しかしながら、この第3の実施の形態では、チャンバ12の底面にネジ部23を突設するため、分離ローラ11の内底面に付着して移動してくる埃は、図13に示すようにネジ部23に当接して排出口21に向かってガイドされ、矢印で示すように排出口21から排出される。この第3の実施の形態によれば、埃をより一層確実に排出口21から排出させることが可能になる。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
3…取出ローラ、11…分離ローラ、11a…エアー吸引穴、11a′…最下端部のエアー吸引穴、12a…チャンバ孔(エアー吸引流路)、P…紙葉類、S…隙間、13…回転軸、15…逃げ部、16…中心孔(エアー吸引流路)、20…真空ポンプ、21…排出口、22…鍔部、23…ネジ部(突起部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取出ローラによって取り出される紙葉類の二枚取りを防止するもので、回転軸が垂直な状態で設けられ、周面部にエアー吸引穴列を回転方向に所定間隔を存して複数有する分離ローラと、
この分離ローラの内部に固定的に設けられ、前記複数のエアー吸引穴列の一部に対向するエアー吸引流路を有するチャンバと、
このチャンバの前記吸引エアー流路に接続され、前記分離ローラのエアー吸引穴列の一部に負圧を発生させて紙葉類を吸着させる真空ポンプと、
前記分離ローラの内底部に設けられ、前記吸引エアー流路に対向するエアー吸引穴列以外のエアー吸引穴列から吸引される埃を排出させる排出口と
を具備することを特徴とする分離ローラ装置。
【請求項2】
前記分離ローラの内底部は、前記チャンバの底面から離間する方向に掘り下げられたことを特徴とする請求項1記載の分離ローラ装置。
【請求項3】
前記チャンバの底面に突設され、前記分離ローラの回転に伴って送られてくる前記埃を前記排出口に向かってガイドする突起部を備えることを特徴とする請求項1または2記載の分離ローラ装置。
【請求項4】
前記チャンバの外周面にその周方向に沿って形成され、前記分離ローラの内周面部との間に隙間を形成する逃げ部と、
この逃げ部の下端部にその周方向に沿って突設された鍔部と
を具備することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の分離ローラ装置。
【請求項5】
前記鍔部は、その上端面部を前記分離ローラのエアー吸引穴列の最下端の穴の内底面よりも上方に位置させたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の分離ローラ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate