説明

分離構造を有する車輪ケーシング

【課題】本発明が対象とするのは、応力の固定および受け取りを行うためのシャシー(2、3、4、5)、およびシャシーに付け加えられ加圧応力を受け取るため構造外殻(6)を備えることを特徴とする、飛行機の着陸装置用の小体積車輪ケーシングである。
【解決手段】シャシーは、車輪展開開口部と同じ高さであって、着陸装置の固定軸受保持手段(10、11)を収納するロンジロン(3、3’、5)を備えるフレーム(2、3、4、5)を含むことができ、さらに、ロンジロンに固定された、着陸装置駆動方杖の固定軸受の収納用多角形(7、8、9)を含み、ロンジロンおよび多角形はトラス構造を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行機の構造体部分と内部空間の保護部分との間で構造が分離されている飛行機の車輪ケーシングに関するものである。
【0002】
飛行機の車輪ケーシングは、ランディング車輪を格納し、加圧されていることが多い飛行機の内部と飛行機の外部とを分離する機能を有する。
【背景技術】
【0003】
先行技術の車輪ケーシングは、着陸時に車輪から伝達される地上応力、内部加圧による圧縮応力のようにそれが受ける応力のため、ならびに同ケーシングが格納位置において車輪を格納しなければならないという理由から、アーチ形の補強フレームを含み、ケーシングに沿って長手方向に分布し車輪ケーシングを囲む胴体のフレーム部材を延長している。補強フレームは、補剛された平面パネルが形成されるよう、車輪ケーシングのパネルを補剛する。
【0004】
先行技術のこれらのパネルは着陸装置の軸受を収納し、車輪ケーシングのゾーンの気密性を確保する。この構造により車輪ケーシングは体積および重量が大きくなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、2種類の応力、すなわち地上応力および加圧応力に対応するのに最適化された小体積の車輪ケーシングを作製することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
地上応力および加圧応力に対応する最適化された小体積の車輪ケーシングの作製を実現するために、着陸装置の応力の固定および受け取りを行うためのシャシーと、加圧応力を受け取るためシャシーに付け加えられた構造外殻とを備える飛行機の着陸装置用小体積車輪ケーシングを提供する。
【0007】
より詳細には、シャシーは、車輪の取り出し開口部と同じ高さであって、着陸装置の固定軸受保持手段を収納するロンジロン(longeron)を備えるフレームを含む。
【0008】
本発明の特定の実施形態によれば、シャシーはさらに、ロンジロンに固定された、着陸装置の駆動方杖の固定軸受収納用多角形を含み、ロンジロンおよび多角形はトラス構造を実現する。
【0009】
地上応力を受け取る構造と加圧応力を受け取る構造とを分離することに基く本発明の解決方法により、これらの構造が耐えなければならない応力の種類にこれらの構造をよりよく適合させ、車輪ケーシングの重量および体積を少なくすることが可能である。
【0010】
本発明のその他の特徴および長所は、添付の図面を参照して行う本発明についての非限定的例に関する以下の説明を読むことにより明らかになろう
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に飛行機の胴体内の格納位置にある着陸装置20を示した。着陸装置は、車輪23、脚12および方杖15を含む前部着陸装置である。
【0012】
胴体は、わかりやすくする配慮からその表面は図示してないが、複数の胴体フレーム18、20、21を基にして作製される。
【0013】
車輪ケーシングのレベルでは、着陸装置およびトラップ部材を配設することができるよう、胴体構造フレーム18が開口している。
【0014】
本発明は、車輪ケーシングの輪郭に配設された湾曲部によりフレーム18を伸長させないで車輪ケーシングの作製を簡単にし、シャシーから車輪ケーシングを作製し、着陸装置の応力の固定および受け取りを行い、構造外殻6をシャシーに加え、加圧応力を受け取るようにすることを提案するものである。
【0015】
図2Aおよび図2Bにより詳細に示すシャシーは車輪のせり出し開口部と同じ高さのフレーム2、3、4、5を含む。
【0016】
フレームは、図2Aにおいて符号3、5を付したロンジロンを備え、これらのロンジロンは飛行機の縦軸に平行であり、着陸装置20の格納部の両側に配設される。
【0017】
フレームはまたフロントおよびリアクロスメンバー2、4を備えるが、これらのクロスメンバーは後でわかるように、車輪ケーシングのフロントおよびリアでこのケーシングの終端となる胴体フレーム21、22の下部部材であるのが有利である。
【0018】
ロンジロンは、着陸装置の固定軸受保持手段10、11を収納するが、図1および図3から図6の例の場合においてはこれらの手段とは、着陸装置の駆動方杖15の固定軸受13、14の収納多角形7、8、9のアーム7である。
【0019】
実際、この実施例によれば、着陸装置は、着陸装置の縦軸方向に配設された連接方杖方式の着陸装置15である。
【0020】
この着陸装置は、脚12を上方に延長するT字形部品を含み、T字形部品の上部分岐の端部は、車輪の格納用の脚12の回転軸受10、11を構成する。
【0021】
方杖は脚12に連接し、それ自体も、車輪ケーシング内に固定される軸受13、14を含む。
【0022】
本発明のこの実施形態によれば、多角形7、8、9はロンジロンに固定された三角形であり、ロンジロン3、5および多角形7、8、9は堅固なトラス構造を実現する。
【0023】
多角形は、方杖15の固定アーム7と、アーム保持用の少なくとも1つのコネクティングロッド8、9とで構成される。図示例によれば、方杖からアームを介してロンジロンに加えられるトラクション応力を分散する目的でアーム7をロンジロン3、4に結合するために、2つのコネクティングロッドが設けられる。
【0024】
方杖15の固定軸受13、14は、アーム端部の収納部内に、ロンジロンから距離を置いた多角形の頂点のレベルで、収納される。
【0025】
したがって、着陸装置の軸受および方杖の軸受はアーム7のそれぞれ第1端部、第2端部に収納され、アーム7は全ての軸受レベルにおける応力を受け取る。
【0026】
図4に示すように、着陸装置の軸受10、11はアーム7の端部の収納部24内に収納され、この端部自体もロンジロン3、5の収納部26内に収納されるフランジ25の形状に成形される。
【0027】
したがってアームの端部はロンジロン3、5に収納されるインサートを形成する。
【0028】
方杖固定軸受13、14は、アーム7の反対側端部に作製された収納部27に直接収納され、またこの端部にはコネクティングロッド8、9が固定される。
【0029】
こうして、着陸装置の軸受ならびに方杖の軸受を収納するアーム7により、方杖を具備する着陸装置で構成される可動装置の剛性が確保される。
【0030】
なおロンジロン3、5は着陸装置全体の応力を受け取る。
【0031】
図2Aおよび図2Bの例のケースは、2つの対角方杖を含む着陸装置の実施の変形形態に相当する。
【0032】
対角方杖は、着陸装置の補強バー31、32に結合された伸縮自在フロント方杖151、152であり、それぞれが軸受13、14を具備し、これら対角方杖の軸受はサイドボックス3、5に収納される着陸装置の軸受と同様である。
【0033】
この実施形態によれば、着陸装置の軸受および対角方杖の第1端部は、ロンジロン3、5上で直接受け取られる。
【0034】
本発明の実施例によれば、シャシーは、車輪ケーシング1のフロント壁およびリア壁を形成する胴体構造フレームの下部で構成される両端クロスメンバー2、4を含む。これによりロンジロンはこれらのフレームによって直接受け取られるため、ロンジロンを結合する中間アーチを追加する必要なく、車輪ケーシングの剛性が増す。
【0035】
図6に示す特定の実施形態においては、ロンジロン3、3’、5は、ロンジロンの堅固な固定を可能にするスクエアリング固定具16により前記フレーム21、22に結合される。
【0036】
この図6により、コネクティングロッド8、9の固定軸29を受け取る固定具28によるロンジロンへのコネクティングロッド8の固定をよりよく区別することができる。
【0037】
図4の実施形態によれば、ロンジロン3、5はC字形であるが、車輪ケーシングの縦方向側面に沿って配設され、ロンジロン3、5に載架するようになる胴体構造の開口フレーム18の部材の結合アングル17を凹形断面部内に収納するよう、反転U字形断面を有するロンジロンを作製することも可能である。
【0038】
図7は、断面斜視図で示したロンジロン3’が、胴体の外殻19が置かれ開口フレーム18が固定されるアングル17を収納する実施形態の詳細図である。
【0039】
胴体のフレーム18は固定軸29によりアングルに固設される。
【0040】
さらに、本発明による車輪ケーシングは、飛行機の内部を外部から隔離し加圧応力に耐える機能を有する構造外殻6も含む。
【0041】
加圧応力に対する車輪ケーシングの強度を最適化するために、構造外殻は、外殻がフレームに載架するよう飛行機の内部においてシャシーのフレーム2、3、4、5とぴったり適合するする輪郭を含む一方、構造外殻6は、曲率が、加えられる加圧圧力の応力を均衡化するのに適した、縦方向および横方向に湾曲した表面構造である。
【0042】
そのような構造は、先行技術の平面パネル方式構造のそのような応力の受け取りによりよく適合している。
【0043】
さらに、本発明によれば、構造外殻6はスティフナーアーチを押圧することがなくなり、下部輪郭がシャシーのフレームに載架し、上部輪郭にぴったり適合するので、構造外殻の作製についてより高い自由度が得られる。
【0044】
こうして外殻は、格納された着陸装置20の断面の外殻とぴったり適合する形状の整形部分を形成する湾曲した縦方向断面構造とすることができ、車輪ケーシングの内部空間占有体積を制限し、当該着陸装置がフロント着陸装置であるとき機材の先端部内にある設備について場所を開放するために飛行機の内側に突出する部材に最も近いところで作製することができる。
【0045】
構造外殻は、着陸装置の大きさに対応し、さらに圧力応力に対し良好な強度を提供するよう計算され形状で成形した複合素材で特に作製することができ、結果として得られる形状は、有利には角稜部も割れ目もない半卵形とすることができる。
【0046】
本発明は、体積および重量が少ないままで堅固な車輪ケーシングを実現することができるものであるが、図示例に限定されるものではなく、特にシャシー構造および構造外殻は、飛行機のフロント着陸装置以外の着陸装置にも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明による車輪ケーシングを備える胴体構造の一部分の斜視図である。
【図2A】本発明の変形形態による車輪ケーシングの上面斜視図である。
【図2B】本発明の変形形態による車輪ケーシングの下面斜視図である。
【図3】図1の車輪ケーシングのロンジロンの斜視図である。
【図4】図1の着陸装置の軸受の固定具の詳細図である。
【図5】図3のロンジロンの側面図である。
【図6】図1のロンジロンの固定具の詳細斜視図である。
【図7】本発明の特定の実施形態による車輪ケーシングのロンジロンの実施例の断面斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
1 車輪ケーシング
2、4 クロスメンバー
3’、3、5 ロンジロン
6 構造外殻
7 固定アーム
8、9 収納多角形(コネクティングロッド)
10、11 固定軸受保持手段(軸受)
12 脚
13、14 固定軸受
15 方杖
16 スクエアリング固定具
17 部材結合アングル
18 胴体構造開口フレーム
19 外殻
20 着陸装置
21、22 構造フレーム
23 車輪
24 収納部
25 フランジ
27 収納部
28 固定具
29 固定軸
31、32 補強バー
151、152 フロント方杖

【特許請求の範囲】
【請求項1】
応力の固定および受け取りを行うためのシャシー(2、3、3’、4、5、7、8、9)、および該シャシーに付け加えられ加圧応力を受け取るため構造外殻(6)を備えることを特徴とする飛行機の着陸装置(20)用の小体積車輪ケーシング(1)。
【請求項2】
シャシーが、車輪展開開口部と同じ高さであって、着陸装置の固定軸受保持手段(10、11)を収納するロンジロン(3、3’、5)を備えるフレーム(2、3、4、5)を含むことを特徴とする請求項1に記載の車輪ケーシング。
【請求項3】
シャシーがさらに、ロンジロンに固定された、着陸装置駆動方杖の固定軸受の収納用多角形(7、8、9)を含み、ロンジロンおよび多角形がトラス構造を実現することを特徴とする請求項2に記載の車輪ケーシング。
【請求項4】
多角形が、方杖(15)の固定アーム(7)と、アーム保持用の少なくとも1つのコネクティングロッド(8、9)とで構成され、方杖(15)の固定軸受(13、14)が、ロンジロンから距離をおいた多角形の頂点のレベルで収納されることを特徴とする、請求項3に記載の車輪ケーシング。
【請求項5】
構造外殻(6)が、飛行機の一部分が内側のシャシーのフレーム(2、3、4、5)とぴったり適合する輪郭を含むことを特徴とする請求項2に記載の車輪ケーシング。
【請求項6】
構造外殻(6)が、格納された着陸装置(20)の断面の外殻とぴったり適合する形状の整形部分を形成する湾曲した縦方向断面構造であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の車輪ケーシング。
【請求項7】
構造外殻(6)が、曲率が、加えられる加圧圧力の応力を均衡化するのに適した、縦方向および横方向に湾曲した表面構造であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の車輪ケーシング。
【請求項8】
シャシーが、車輪ケーシング(1)のフロント壁およびリア壁を形成する胴体の構造フレーム(21、22)で構成された両端サイドメンバ(2、4)を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の車輪ケーシング。
【請求項9】
ロンジロン(3、3’、5)がスクエアリング固定具(16)により前記フレーム(21、22)に結合されることを特徴とする請求項2または8に記載の車輪ケーシング。
【請求項10】
ロンジロン(3’)が、車輪ケーシングの縦方向側面に沿って配設された胴体構造開口フレーム(18)の部材結合アングル(17)をその凹形断面内に収納するU字形断面を有することを特徴とする、請求項2に記載の車輪ケーシング。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の車輪ケーシングを具備する飛行機。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−516612(P2009−516612A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540607(P2008−540607)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068462
【国際公開番号】WO2007/057400
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(501446228)エアバス・フランス (93)