説明

分離膜の製造法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、分離膜の製造法に関する。更に詳しくは、水透過性を向上せしめた分離膜の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】膜形成性重合体の水溶性有機溶媒溶液を基質上に流延し、水性凝固浴中でゲル化させて得られる分離膜は、緻密な表面層(スキン層)が形成されるため、水透過性が悪いという欠点を有している。そこで、製膜原液(ドープ液)中に膨潤剤などの添加剤を加えておき、それを水性凝固浴中に溶出させて微多孔質化させることも行われているが、この場合には水洗しても分離膜中に残っている添加剤の除去が問題となる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ポリフッ化ビニリデンの水溶性有機溶媒溶液を基質上に流延し、水性凝固浴中でゲル化させて分離膜を製造するに際し、膜分画性能を変えることなく、水透過性を高めた分離膜の製造法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】かかる本発明の目的は、上記分離膜の製造法において、水性凝固浴として平均分子量約200〜20000のポリエチレングリコールの水溶液を用いることによって達成される。
【0005】ポリフッ化ビニリデンの水溶性有機溶媒溶液は、例えばジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルホスフェートなどの約10〜20重量%溶液として用いられる。
【0006】このようなポリフッ化ビニリデンの水溶性有機溶媒溶液よりなる製膜原液を用いての製膜は、これを各種基質上に流延した後、水性凝固浴中に浸漬させ、ゲル化させるという通常の方法に従って行われる。
【0007】この際の水性凝固浴として、平均分子量約200〜20000、好ましくは約600〜10000のポリエチレングリコールの約1〜15重量%水溶液が用いられる。これ以下の平均分子量を有するポリエチレングリコールの水溶液を用いた場合には、透水量を増加させる効果がみられず、一方これより大きい平均分子量のものを用いると、透水量は上がるものの、分画分子量が大きくなり分画性能が低下するようになる。また、水溶液濃度については、これ以下では所期の目的が達成されず、一方これ以上では、透水量は上がるが分画性能が低下するようになる。
【0008】
【発明の効果】本発明方法により、特定の凝固浴を用いるだけで、膜分画性能を変えることなく、水透過性を高めた分離膜を製造することができる。
【0009】
【実施例】次に、実施例について本発明を説明する。
【0010】実施例17.0重量%ポリフッ化ビニリデンのN-メチルピロリドン溶液を、200μmギャップのアプリケータを用いて、ガラス板上に流延した後、ポリエチレングリコール(PEG)水溶液よりなる凝固浴(23℃)中に浸漬してゲル化させた。
【0011】得られた膜(膜厚約120〜130μm)について、有効膜面積9.1cm2、印加圧1kg/cm2で、純水および種々の分子量(600〜50000)のPEG水溶液の透過試験を行った。得られた結果は、用いられたPEGの平均分子量およびその水溶液濃度と共に、次の表1に示される。なお、分画分子量(阻止率90%以上の分子量)は、いずれも50000であった。


【0012】比較例実施例において、ポリフッ化ビニリデン溶液の代わりに、同濃度のポリスルホンのN-メチルピロリドン溶液が用いられた。透過試験の結果は、次の表2に示される。なお、分画分子量は、いずれも50000であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリフッ化ビニリデンの水溶性有機溶媒溶液を基質上に流延し、水性凝固浴中でゲル化させるに際し、水性凝固浴として平均分子量約200〜20000のポリエチレングリコールの水溶液を用いることを特徴とする分離膜の製造法。

【特許番号】特許第3218709号(P3218709)
【登録日】平成13年8月10日(2001.8.10)
【発行日】平成13年10月15日(2001.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−203192
【出願日】平成4年7月8日(1992.7.8)
【公開番号】特開平6−23247
【公開日】平成6年2月1日(1994.2.1)
【審査請求日】平成11年5月21日(1999.5.21)
【出願人】(000004385)エヌオーケー株式会社 (1,527)
【参考文献】
【文献】特開 昭61−28409(JP,A)
【文献】特開 昭63−309536(JP,A)
【文献】特開 昭64−75542(JP,A)
【文献】特開 昭63−296940(JP,A)
【文献】特開 昭62−282606(JP,A)
【文献】特開 昭62−19208(JP,A)