説明

分離装置

【課題】シリコン屑を含む廃液を効率よく、再利用し易い状態でシリコン屑と水とに分離することができる分離装置を提供すること。
【解決手段】水にシリコン屑5が含まれる廃液4を溜める水槽2と、この水槽2内に配置されたシリコン分離機構3と、を備え、シリコン分離機構3は、水槽2内に配置され廃液4中でシリコン屑5を吸着する吸着板8と、吸着板8と対向するように離間して配置され、廃液4中の水4Aのみの通過を許容し、シリコン屑5の通過を規制する網目状のシリコン通過規制板9Aと、を備え、吸着板8を陽極、シリコン通過規制板9Aを陰極として、電界を形成させるために、電界形成手段としての電圧印加回路10が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン屑を含む廃液をシリコン屑と液体とに分離する分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンデバイスの製造においては、シリコンインゴットを切断してシリコンウェーハを形成する工程や、シリコンウェーハを研磨する工程や、シリコンウェーハの表面に格子状に配列された多数の領域にIC、LSI等の回路を形成し、各領域を所定のストリート(切断ライン)に沿って切断して個々のシリコンチップを形成する工程などがある。これらの工程では、例えば切削ブレードや加工点や研磨部分などを冷却したり、シリコン屑を押し流したりするために、水が用いられている。
【0003】
近年、水の再利用や、シリコンの再利用の観点からシリコン屑を含む廃液をシリコン屑とシリコンを含まない水に分離させる技術が求められている。シリコン屑は微細な粒子であり、廃液中に懸濁した状態となって含まれている。この種の従来技術として、濾過や遠心分離を行う物理的な方法や、薬品を使用した化学的な方法(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−164304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような物理的な方法では、濾過の際に目詰まりが起こったり、そもそもシリコン粒子が通過してしまったりするという問題がある。特に、遠心分離法では、水分に対してシリコン粒子の濃度が薄すぎて遠心分離の効率が悪い場合がある。また、上記のような化学的な方法では、薬品を使用するため、液体(水)を再利用することが難しくなるという問題がある。
【0006】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、シリコン屑を含む廃液を効率よく、再利用し易い状態でシリコン屑と水とに分離することができる分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、シリコン屑を含む廃液をシリコン屑とシリコンを含まない液体に分離する分離装置であって、該廃液を溜める水槽と、該水槽の中に配置されたシリコン分離機構と、を有し、該シリコン分離機構は、該廃液中でマイナスに帯電した該シリコン屑を吸着するプラスに帯電した吸着板と、該吸着板に対向して配設され、該廃液の液体のみの通過を許容し、マイナスに帯電した該シリコン屑の通過を規制するシリコン通過規制板を含むシリコン通過規制手段と、を有し、該シリコン通過規制手段は、該シリコン通過規制板を通過した液体が存在する領域を区画する筺体と、該筺体内に配置され、該シリコン通過規制板を通過した該廃液を該水槽外へ搬出する搬出部と、を有し、該吸着板を陽極とし、該シリコン通過規制板を陰極とし、該吸着板と該シリコン通過規制板との間に電界を形成する電界形成手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、シリコン屑を含む廃液を効率よく、再利用し易い状態でシリコン屑と水とに分離することができる分離装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、この発明の実施の形態1にかかる分離装置の斜視図である。
【図2】図2は、図1のII−II断面図である。
【図3】図3は、この発明の実施の形態2にかかる分離装置の分解斜視図である。
【図4】図4は、この発明の実施の形態2にかかる分離装置の斜視図である。
【図5】図5は、図4のV−V断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態である分離装置について図面を参照して説明する。但し、図面は模式的なものであり、粒子の大きさや部材の大きさなどは現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。したがって、具体的な寸法や寸法の比率は以下の説明を参酌して判断すべきものである。
【0011】
(実施の形態1)
図1および図2は、この発明の実施の形態1にかかる分離装置1を示している。図1は分離装置1の斜視図、図2は図1のII−II断面図である。この分離装置1は、水にシリコン屑5が含まれる廃液4を溜める水槽2と、この水槽2内に配置されたシリコン分離機構3と、を備えている。
【0012】
水槽2は、上部が開放された直方体形状の容器である。図2に示すように、この水槽2の上方には、廃液供給管6の供給ノズル6Aが配置され、この供給ノズル6Aから廃液4が供給されるようになっている。また、図2に示すように、水槽2における供給ノズル6Aが配置される領域と離れている側の側壁2Bには、シリコン屑5が除去された水4Aを外部へ搬出する搬出部(搬出口)7が設けられている。
【0013】
シリコン分離機構3は、水槽2内に配置され廃液4中でシリコン屑5を吸着する吸着板8と、吸着板8と対向するように離間して配置され、廃液4中の水4Aのみの通過を許容し、シリコン屑5の通過を規制する網目状のシリコン通過規制板9Aと、を備える。シリコン屑5は、水中でマイナスに帯電する。このため、吸着板8はマイナスに帯電したシリコン屑5を吸着するようにプラスに帯電され、シリコン通過規制板9Aはシリコン屑5を近づけないように斥力を発生させるためにマイナスに帯電される。この実施の形態では、吸着板8を陽極、シリコン通過規制板9Aを陰極として、電界を形成させるために、電界形成手段としての電圧印加回路10が設けられている。
【0014】
吸着板8は、電気化学的に貴となる材料で形成されることが好ましく、銅(Cu)、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)などを挙げることができるが、本実施の形態ではステンレス(SUS316、SUS304など)を適用している。
【0015】
図1および図2に示すように、吸着板8は水槽2における一つの側壁2Aの内壁に沿うように配置されている。シリコン通過規制板9Aは、吸着板8から例えば4mm程度の距離を離して吸着板8と略平行となるように配置されている。このように、吸着板8とシリコン通過規制板9Aとの距離を4mm程度とする理由は、距離が離れると電界が弱まるため、吸着板8のシリコン吸着力を確保するうえで、なるべく近い方がよいためである。なお、シリコン通過規制板9Aは、このシリコン通過規制板9Aを通過した水4Aを水槽2内で区画している。このシリコン通過規制板9Aを通過した水4Aが収容された区画領域と搬出部7とは、シリコン通過規制手段を構成している。
【0016】
シリコン通過規制板9Aは、上記の吸着板8と同様に、電気化学的に貴となる材料である、銅(Cu)、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)などで形成することが好ましく、本実施の形態では、ステンレス(SUS316、SUS304など)を適用している。このシリコン通過規制板9Aは、網目状の構造であるが、網目でシリコン屑5を引っ掛ける機能を有さなくてもよく、マイナスに帯電させることで、マイナスに帯電しているシリコン屑に対して斥力を発生する程度の網目粗さでよい。因みに、この実施の形態では、シリコン通過規制板9Aを500本/インチのメッシュに設定している。
【0017】
図2に示すように、この実施の形態にかかる分離装置1では、水槽2内における吸着板8とシリコン通過規制板9Aとの間に、廃液4を供給しつつ、吸着板8とシリコン通過規制板9Aに電圧印加回路10から電圧を印加して電界を形成させる。これにより、シリコン分離機構3では、吸着板8で廃液4中のシリコン屑5を吸着し、シリコン通過規制板9Aで廃液4中のシリコン屑5を斥力により近づけないようにする作用を有する。シリコン通過規制板9Aでは、廃液4中のシリコン屑5を通さずに水4Aのみを通過させる。
【0018】
シリコン通過規制板9Aを通過した水4Aは、シリコン通過規制板9Aで区画される領域に溜められ、搬出部7から外部に搬出されて再利用することが可能となる。吸着板8に吸着されたシリコン屑5は、吸着板8を水槽2から引き上げて、例えば、乾燥させた後、吸着板8から掻き落として再利用を図ることが可能となる。このように、本実施の形態では、シリコン屑5を含む廃液4を効率よく、再利用し易い状態でシリコン屑5と水4Aとに分離することができる。
【0019】
(実施の形態2)
図3〜5は、この発明の実施の形態2にかかる分離装置20を示している。図3は、分離装置20の分解斜視図、図4は、分離装置20の斜視図、図5は、図4のV−V断面図である。この分離装置20は、水にシリコン屑5が含まれる廃液4を溜める水槽21と、この水槽21内に配置されたシリコン分離機構22と、を備えている。
【0020】
水槽21は、上部が開放された直方体形状の容器である。この水槽21の一方の壁部21Aには、廃液供給管23が貫通して設けられ、この廃液供給管23の先端の供給ノズル23Aが水槽21の内部に配置されている。この供給ノズル23Aから廃液4が水槽21内に供給されるようになっている。また、水槽21の壁部21Aにおける廃液供給管23が配置された位置と異なる位置に、水槽21外に廃液4が溢れることを防止するドレイン管24が設けられている。
【0021】
図3〜5に示すように、シリコン分離機構22は、水槽21内に配置され廃液4中でシリコン屑5を吸着する吸着板25と、吸着板25と対向するように離間して配置され、廃液4中の水4Aのみの通過を許容し、シリコン屑5の通過を規制するシリコン通過規制手段26と、が交互に配置されている。図5に示すように、シリコン通過規制手段26は、矩形状の枠体26Aと、この枠体26Aの両側開口面を塞ぐように互いに平行をなすように設けられた網目状の一対のシリコン通過規制板26Bとを備える。また、枠体26Aの上部中央には、一対のシリコン通過規制板26B間に下端開口部が位置する筒状の搬出部26Cが設けられている。この搬出部26Cの上端には、搬出パイプ27が接続され、この搬出パイプ27を介して外部へ水4Aを搬出するようになっている。
【0022】
シリコン屑5は、水中でマイナスに帯電するため、吸着板25はマイナスに帯電したシリコン屑5を吸着するようにプラスに帯電され、網目状のシリコン通過規制板26Bはシリコン屑5を近づけないように斥力を発生させるためにマイナスに帯電される。図3に示すように、この分離装置20では、吸着板25を陽極、シリコン通過規制板26Bを陰極として、電界を形成させるために、電界形成手段としての電圧印加回路28が設けられている。
【0023】
吸着板25は、上記の実施の形態1と同様の材料を用いることができる。図3〜5に示すように、吸着板25は、シリコン通過規制手段26の表裏両面側にシリコン通過規制板26Bに対向するように配置されている。この実施の形態におけるシリコン通過規制板26Bは、吸着板25から例えば4mm程度の距離を離して吸着板25と略平行となるように配置されている。このように、吸着板25とシリコン通過規制板26Bの距離を4mm程度とする理由は、上記実施の形態1と同様である。なお、一対のシリコン通過規制板26Bおよび枠体26Aは、このシリコン通過規制板26Bを通過した水4Aを区画する筐体を構成している。すなわち、枠体26Aおよび一対のシリコン通過規制板26Bでなる筐体と搬出部26Cとで、シリコン通過規制手段26を構成している。
【0024】
シリコン通過規制板26Bは、上記の吸着板25と同様の材料で形成されている。この実施の形態においても、シリコン通過規制板26Bは、網目状の構造であるが、網目でシリコン屑5を引っ掛ける機能を有さなくてもよく、マイナスに帯電させることで、マイナスに帯電しているシリコン屑5に対して斥力を発生する程度の網目粗さでよい。因みに、この実施の形態では、シリコン通過規制板26Bを500本/インチのメッシュに設定している。
【0025】
この実施の形態にかかる分離装置20では、水槽21内における吸着板25とシリコン通過規制手段26とは、水槽21の幅寸法よりも短く設定されており、これら吸着板25およびシリコン通過規制手段26と水槽21の内壁との間隙を通して廃液4が水槽21全体に流通可能となっている。このため、水槽21内の各所に存在する吸着板25とシリコン通過規制手段26との間の空間に廃液4が存在するようになっている。
【0026】
この実施の形態では、電圧印加回路28から電圧を印加して電界を形成させると、シリコン分離機構22では、吸着板25で廃液4中のシリコン屑5を吸着し、シリコン通過規制手段26のシリコン通過規制板26Bで廃液4中のシリコン屑5を斥力により近づけないようにする作用を有する。シリコン通過規制板26Bでは、廃液4中のシリコン屑5を通さずに水4Aをシリコン通過規制手段26内へ通過させる。
【0027】
シリコン通過規制手段26内に溜まった水4Aは、搬出部26Cから外部に搬出されて再利用することが可能となる。吸着板25に吸着されたシリコン屑5は、吸着板25を水槽21から引き上げて、例えば、乾燥させた後、吸着板25から掻き落として再利用を図ることが可能となる。このように、本実施の形態では、複数のシリコン通過規制手段26と吸着板25との対で、シリコン屑5を含む廃液4をさらに効率よく、再利用し易い状態でシリコン屑5と水4Aとに分離することができる。
【0028】
(その他の実施の形態)
以上、この発明の実施の形態について説明したが、上記の実施の形態の開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものではない。この開示から当業者に様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0029】
例えば、上記した各実施の形態における吸着板8,25やシリコン通過規制板9A,26Bは、板状に形成されているが、実際には板でなくても面があればよい。
【0030】
また、上記の実施の形態1のように、シリコン通過規制板9Aで区画するとは、液体的に隔離されていれば空間的に隔離されている必要はなく、図1および図2に示すように、空間的には上面は開いているが、液体的には廃液4と水4Aとで隔離されていればよい。
【0031】
さらに、上記した各実施の形態における吸着板8、25は、平板状であるが、表面に凹凸を形成し表面積を大きくしてシリコン屑5を多く捕捉できるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上のように、本発明にかかる分離装置は、シリコンの切断、分離などで発生した廃液の再利用化に有用であり、特に、半導体加工分野に適している。
【符号の説明】
【0033】
1,20 分離装置
2,21 水槽
3,22 シリコン分離機構
4 廃液
4A 水
5 シリコン屑
7,26C 搬出部
8,25 吸着板
9A,26B シリコン通過規制板
26 シリコン通過規制手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン屑を含む廃液をシリコン屑とシリコンを含まない液体に分離する分離装置であって、
該廃液を溜める水槽と、
該水槽の中に配置されたシリコン分離機構と、を有し、
該シリコン分離機構は、
該廃液中でマイナスに帯電した該シリコン屑を吸着するプラスに帯電した吸着板と、
該吸着板に対向して配設され、該廃液の液体のみの通過を許容し、マイナスに帯電した該シリコン屑の通過を規制するシリコン通過規制板を含むシリコン通過規制手段と、を有し、
該シリコン通過規制手段は、
該シリコン通過規制板を通過した液体が存在する領域を区画する筺体と、
該筺体内に配置され、該シリコン通過規制板を通過した該廃液を該水槽外へ搬出する搬出部と、を有し、
該吸着板を陽極とし、該シリコン通過規制板を陰極とし、該吸着板と該シリコン通過規制板との間に電界を形成する電界形成手段を有する分離装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−24661(P2012−24661A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163279(P2010−163279)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】