説明

切り花輸送用ゲル状組成物の離水減少方法

【課題】従来のアセチル基除去のジェランガムのみを主剤とする切り花輸送用ゲル状組成物は硬くて脆く、離水が多いという性質になっていた。
【解決手段】ゲル状組成物の主剤であるアセチル基を除去したジェランガムに対し、その配合量の1/20〜1/5重量部の高アセチル基含有ジェランガムを添加後、破砕処理した方法で調製した切り花輸送用ゲル状組成物により、給水性能を損なわず、過剰離水を抑えることで切り花輸送中の事故を減少させることが可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切り花の輸送方法に係るゲル状組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許第2509083号記載の切り花輸送用ゲル状組成物、及び特願2003−139482号公報記載の切り花輸送用ゲル状組成物の破砕処理品は、アセチル基を除去したジェランガムのみを主剤とするものであった。
【特許文献1】特許第2509083号
【特許文献2】特願2003−139482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のアセチル基除去のジェランガムのみを主剤とする場合、得られる切り花輸送用ゲル状組成物は硬くて脆く、離水が多いという性質となっていた。また、特許第2509083号記載の多糖類やタンパク質などの吸水抑制剤を添加した場合は、ゲル状組成物の脆さの改善や離水の減少は可能であったが、切り花への給水性能も低下するものであった。
【0004】
また破砕処理品の場合は、破砕することで未破砕品よりも離水は減少するが、梱包時 の結束が弱いときや切り花輸送用箱が転倒されるときは、ゲル状組成物の破砕品からの 離水の流出を完全に防ぐことはできず、花束や輸送用箱を汚すと共に、保水量の減少に より本来の鮮度保持性能が低下するという不都合があった。
【0005】
本発明は係る実情に鑑みてなされたもので、ゲル状組成物本来の切り花に対する給水性能は損なわず、ゲル状組成物の破砕品からの離水を減少し、切り花輸送中の事故を少なくすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための本発明の具体的な方法は、ゲル状組成物の主剤であるアセチル基を除去したジェランガムに対し、その配合量の1/20〜1/5重量部の高アセチル基含有ジェランガムを添加し、特許第2509083号記載の方法で調製することである。
【0007】
この場合、ジェランガムの増量に合わせ、ジェランガムの架橋のためのカルシウム塩を増量することが必要である。また上記にて調製したゲル状組成物は、特願2003−139482号公報記載の方法で所定の粒度に破砕を行うことができる。
【0008】
高アセチル基含有ジェランガム(構造式1)、及びアセチル基除去ジェランガム(構造式2)の構造式は以下のとおりである。
【0009】
【化1】

【0010】
【化2】

【0011】
構造式2のアセチル基除去ジェランガムは、従来の切り花用ゲル状組成物の主剤であり、低濃度で強固なゲルを形成することが特徴であるが、親水基であるアセチル基が除去されているために離水が多いという欠点がある。これに対し、構造式1の高アセチル基含有ジェランガムは、離水が少なく弾性に富むゲルを形成するが、本来のゲル状組成物の性状を維持できないほど柔らかいものとなる。
【0012】
このように、高アセチル基含有ジェランガムは粘弾性に富むゲルを形成するが、ゲル強度の増強には寄与しないものであるため、主剤であるアセチル基除去ジェランガムの上に添加してもゲル強度は高くならず、粘性のある離水の少ないゲル状組成物となる。
【0013】
一方、ジェランガムの総量を一定として、アセチル基除去のジェランガムの一部を高アセチル基含有ジェランガムで置換すると、ゲル状組成物のゲル強度が低下するだけで軟弱になり、求める離水抑制効果は得られないものとなる。
【発明の効果】
【0014】
このようにして得られるゲル状組成物は、切り花に対する優れた鮮度保持性能を維持し、離水が少なくなって切り花輸送時の水漏れ事故を大幅に抑えるものとなる。
【実施例1】
【0015】
(主剤のアセチル基除去ジェランガムに高アセチル基含有ジェランガムを添加した場合)
食品添加物規格のアセチル基を除去したジェランガム2.5g、高アセチル基含有ジェランガム0.25g、塩化カルシウム0.6g、ブドウ糖1g、抗菌剤1gを原料とし、溶解、冷却して1kgのゲル状組成物を別途調製した。このものを、20g〜30gの大きさの塊状として2リットルのポリビーカーに投入し、4枚翼のプロペラ式攪拌機(翼の幅16mm、長さ72mm、400回転/分)により10分間破砕して低離水性ゲル状組成物の破砕品(表1の試料1)を得た。同様の方法で、他の成分はそのままとし、高アセチル基含有ジェランガム0.50g、塩化カルシウム0.65gとしたゲル状組成物の破砕品(表1の試料2)、及び、他の成分はそのままで高アセチル基含有ジェランガムを配合せず、塩化カルシウム0.55gとした通常組成のゲル状組成物の破砕品(表1の試料3)を調製した。
【0016】
これらにつき、約100gの試料を採取して、30°に傾斜させた直径160mm、篩目の開き106μm の標準篩の上で3 分間放置したときの離水率を測定した。各試料について離水率を5回測定したときの平均値は表−1のとおりである。
【0017】
【表1】

【0018】
次に、バラ(ローテローゼ)を対象切り花とし、各試料を用いて実施した鮮度保持性能評価試験の結果を表3(離水減少処方/高アセチル基含有ジェランガム(ケルコゲルHT:登録商標)配合エコゼリーによる鮮度保持性能評価試験タイムスケジュール)、図1、2に示す。
【0019】
【表3】

【実施例2】
【0020】
(主剤のアセチル基除去ジェランガムを高アセチル基含有ジェランガムで置換した場合)
食品添加物規格のアセチル基を除去した。ジェランガム2.25g、高アセチル基含有ジェランガム0.25g、塩化カルシウム0.55g、ブドウ糖1g、抗菌剤1gを原料とし、溶解、冷却して1kgのゲル状組成物を別途調製した。このものを、20g〜30gの大きさの塊状として 2リットルのポリビーカーに投入し、4枚翼のプロペラ式攪拌機(翼の幅16mm、長さ72mm、400回転/分)により10分間破砕して低離水性ゲル状組成物の破砕品(表2の試料4)を得た。同様の方法で、他の成分はそのままとし、食品添加物規格のアセチル基を除去したジェランガム2.0g、高アセチル基含有ジェランガム0.50g、塩化カルシウム0.55gとしたゲル状組成物の破砕品(表2の試料5)、及び、他の成分はそのままで、食品添加物規格のアセチル基を除去したジェランガム2.50g、塩化カルシウム0.55gとした通常組成のゲル状組成物の破砕品(表2の試料6)を調製した。
【0021】
これらにつき、約100gの試料を採取して、30゜に傾斜させた直径160mm、篩目の開き106μmの標準篩の上で 3 分間放置したときの離水率を測定した。各試料について離水率を5回測定したときの平均値は表−2のとおりである。
【0022】
【表2】

【0023】
次に、バラ(ローテローゼ)を対象切り花とし、各試料を用いて実施した鮮度保持性能評価試験の結果を表4(高アセチル基含有ジェランガム(ケルコゲルHT:登録商標)置換エコゼリーによる鮮度保持性能評価試験タイムスケジュール)、図3、4に示す。
【0024】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】離水減少エコゼリーによる鮮度保持性能評価試験(アセチル基含有ジェランガムを添加した場合の相対重量の推移)
【図2】離水減少エコゼリーによる鮮度保持性能評価試験(アセチル基含有ジェランガムを添加した場合の相対吸水量の推移)
【図3】離水減少エコゼリーによる鮮度保持性能評価試験(ジェランガムをアセチル基含有ジェランガムで置換した場合の相対重量の推移)
【図4】離水減少エコゼリーによる鮮度保持性能評価試験(ジェランガムをアセチル基含有ジェランガムで置換した場合の相対吸水量の推移)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセチル基を除去したジェランガムを主剤とし、高アセチル基を含有するジェランガムを配合することで、切り花に対する給水性能を損なわず、離水を減少できる切り花輸送用ゲル状組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−137799(P2007−137799A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−331584(P2005−331584)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(591286270)株式会社伏見製薬所 (50)
【Fターム(参考)】