説明

切屑圧縮処理装置および方法

【課題】 圧縮された圧縮固形化物をクラッシャーを必要とすることなく、容易に圧縮固形化物を分離することが出来る切屑圧縮処理装置およびその方法を提供する。
【解決手段】 中央部に切屑投入口を設けた切屑圧縮装置において、スクリューコンベア本体内の一端にスクリュー軸と圧縮シリンダー軸が一体に構成されたスクリュー駆動部を設け、該スクリュー駆動部には位置センサーおよびドレン液受け部を設け、他端に切屑圧縮室および出口開閉シリンダー付きシャッターを配設したことを特徴とする切屑圧縮処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械等から排出される切屑等の切屑圧縮処理装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、旋盤加工等による工作機械等から排出される切屑は形状がカール状と呼ばれ見掛け比重がかなり小さな形状となり切屑を受ける切屑箱に短時間で満杯となり作業者の大きな手間となっているのが実状である。例えば、アルミ切屑の場合、真比重が約2.7に対し、見掛け比重は約0.2と10倍以上の容積として発生する。このため、多数の機械台数を稼働させている切削加工業にとっては切屑箱の交換に多大な人件費を要している。
【0003】
一方、近年の工作機械はロボット化され殆ど無人で加工製品が生産されており、一日中、休日等もなく無人で工作機械が自動で加工生産しているが、上記切屑処理だけは人手に頼っているのが現状である。このことは加工製品のコストアップとして加工業者の大きな悩みの種ともなっている。また、切屑に付着する切削液も切削液の消耗、切削の販売価格の低下の原因となっている。
【0004】
上述したような現状に対応して、例えば、特開平9−168941号公報(特許文献1)に開示されているように、シリンダ先端の切粉排出口を閉じてシリンダ内の摩擦発生部に切粉を固く加圧充填した状態で、切粉排出口を開き、加圧ピストンを往復動させながら、側壁に形成された切粉供給口からシリンダ内に未圧縮の切粉を供給すると、切粉供給口から供給された切粉が加圧ピストンで圧され、摩擦発生部で生じた摩擦力と加圧ピストンの押圧力により圧縮成形され、その後、摩擦発生部に加圧充填された切粉の摩擦力に抗して加圧ピストンを奥まで押し込むことにより、摩擦発生部に加圧充填されている切粉を所定量ずつ切粉排出口から押出すようにした切粉圧縮処理装置が提案されている。
【0005】
また、特開平11−48079号公報(特許文献2)に開示されているように、中央部に切粉投入口を設けたスクリューコンベアの両端に切粉圧縮機を配置するとともにスクリューコンベアを構成するスクリューを正転及び反転させることにより、中央部から投入された切粉を夫々の切粉圧縮機に供給するように構成した切粉供給装置が提案されている。
【0006】
さらに、特開2003−326393号公報(特許文献3)に開示されているように、切粉を供給し、該供給された切粉の両側をピストンで圧縮し、圧縮された切粉の両側の内圧が所定の値に到達したときに、ピストンを停止し、このピストンを停止後、圧縮された切粉を、圧縮固形化物として排出する切粉圧縮方法および装置が提案されている。
【特許文献1】特開平9−168941号公報
【特許文献2】特開平11−48079号公報
【特許文献3】特開2003−326393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、特許文献1は摩擦発生部に加圧充填されている切粉を所定量ずつ切粉排出口から押出すようにした切粉圧縮処理装置であり、いわゆるチップブリケッターと呼ばれ、油圧で切屑をせんべいのように固めてしまうもので、クラッシャーと呼ばれる切屑破砕機が必要となり、刃物が消耗品となり高いコストが掛かるという問題がある。また、特許文献2はスクリューコンベアを構成するスクリューを正転及び反転させることにより、中央部から投入された切粉を夫々の切粉圧縮機に供給するように構成した切粉供給装置で生産性は高いが、特許文献1と同様に、クラッシャーと呼ばれる切屑破砕機を必要となり、刃物が消耗品となり高いコストが掛かる問題がある。
【0008】
さらに、特許文献3の場合は、ピストンの圧力を検出する圧力センサとピストンで圧縮された切粉の両側に対応するピストン圧力が圧力センサで検出された場合に圧縮された切粉をピストンと協働して圧縮固形化物として排出する排出機構を有する点で優れているが、しかし、この圧縮された圧縮固形化物は、引用文献1または2と同様に、クラッシャーを必要とすることを前提とした圧縮固形化物を対象としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述したような問題を解消するために発明者らは鋭意開発を進めた結果、圧縮された圧縮固形化物をクラッシャーを必要とすることなく、容易に圧縮固形化物を分離することが出来る切屑圧縮処理装置およびその方法を提供するものである。
その発明の要旨とするところは、
(1)中央部に切屑投入口を設けた切屑圧縮装置において、スクリューコンベア本体内の一端にスクリュー軸と圧縮シリンダー軸が一体に構成されたスクリュー駆動部を設け、該スクリュー駆動部には位置センサーおよびドレン液受け部を設け、他端に切屑圧縮室および出口開閉シリンダー付きシャッターを配設したことを特徴とする切屑圧縮処理装置。
【0010】
(2)前記(1)に記載のスクリューコンベア本体の圧縮切屑の出側に絞り口径部を設けたことを特徴とする切屑圧縮処理装置。
(3)前記(1)または(2)に記載の装置において、圧縮切屑の大きさ(長さ)を切屑の排出工程に指示する位置センサーを設けたことを特徴とする切屑圧縮処理装置。
(4)前記(1)〜(3)のいずれか1に記載の装置において、ドレン液受け部にドレン液出口を設けたことを特徴とする切屑圧縮処理装置。
【0011】
(5)中央部に切屑投入口を設けたスクリューコンベアの一端にスクリュー軸と圧縮シリンダー軸を一体としたスクリュー駆動部を配置すると共に該スクリューコンベアを構成するスクリューを回転させることにより中央部から投入された切屑を出口シャッター側に圧縮し、一定位置迄圧縮された後は排出指示センサーの作動により該スクリューコンベアが停止し、出口シャッターが開き、再びスクリューコンベアが起動し、圧縮切屑を押出し、その後該スクリューコンベアは切屑送りサイクルに戻ることを特徴とする切屑圧縮処理方法にある。
【発明の効果】
【0012】
以上述べたように、本発明によれば、金属を切削加工した際に工作機械等から出る切屑を自動的に圧縮成形でき、かつ被圧縮物を切断することなく切屑圧縮処理装置内から小ブロックで取り出し可能となり、しかも切屑破砕機等を必要としない安価な装置で大量の切屑を容易に処理することができる優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について図面に従って詳細に説明する。
図1は、本発明に係る切屑圧縮処理装置の全体概略説明図とその操作工程を示す図である。図1(a)は切屑圧縮処理装置の全体概略図である。この図1(a)に示すように、スクリューコンベア本体1は中央部にチップコンベアからの切屑投入口2を、またこのスクリューコンベア本体1の左側端部内にスクリュー駆動部3を設け、このスクリュー駆動部3にはスクリュー駆動モータ10および圧縮シリンダー11を有するスクリュー軸と圧縮シリンダー軸が一体に構成されたスクリューコンベア4から構成され、他端には切屑圧縮室5および出口開閉シリンダー6による出口シャッター7を、また、上記スクリュー駆動部には位置センサー8およびドレン液受け部9を配設した切屑圧縮処理装置から構成される。符号12はドレン液出口を示す。
【0014】
図1(b)は切屑圧縮工程を示す図であって、スクリュー駆動部3でのスクリュー駆動モータ10により、スクリューコンベア4が起動し、切屑投入口2からの切屑13が切屑圧縮室5に移動し、その後スクリューコンベアが停止し、切屑を圧縮、脱水、減容する圧縮シリンダースクリューコンベアで圧縮室5に送られた切屑を圧縮シリンダー力でスクリューコンベア本体も一緒に出口シャッター7で閉じられた圧縮室に切屑を圧縮かつ脱水を行う。
【0015】
図1(c)は切屑圧縮物の排出する指示工程を示す図である。この図1(c)に示すように、圧縮室5で圧縮された切屑が堆積し目的の大きさ(長さ)になると圧縮シリンダーで押されても切屑は堆積が発生して圧縮シリンダーの移動位置が切屑の圧縮堆積分移動出来なくなる。この位置を検出し切屑の排出工程に指示する。すなわち、圧縮された切屑を目的の大きさに決めるための位置センサー8によって位置を検出し切屑の排出工程に指示する。この位置センサーは一般的には近接スイッチを採用することが望ましい。この排出指示センサーが作動し、スクリューコンベアが停止し、圧縮シリンダーにより戻り(圧縮しない)、その後出口シャッター7が出口開閉シリンダーにより開きます。
【0016】
例えばスクリューコンベア本体は口径150mmの筒状でスクリューの回転径は135mmに対し、スクリューコンベア本体の切屑出口を口径140mmに絞リ口径部14を設けることにより、切屑排出時の更なる圧縮と脱水された脱水液の出口からの漏れを防止するものである。こうして脱水された液はスクリューコンベア本体下部の切屑排出部とは反対の切屑は落下しないスクリューコンベア本体下部のドレン液受け部9側に戻され、このドレン液受け部9に設けた脱水液の排出穴を介してドレン液出口から排出するように構成する。
【0017】
図1(d)は切屑圧縮物の排出工程を示す図である。この図1(d)に示すように、出口開閉シリンダー6により出口シャッター7が開き、その後、スクリューコンベア4が起動しながら、圧縮シリンダー11により前進し、圧縮切屑15を出口より押し出す。その後、再び切屑送り工程に戻る。以上の工程を自動的に作動させる一連のサイクルが行われる。
【0018】
上述した操作としては、スタート時は、出口シャッターを閉じ、圧縮シリンダー戻り(圧縮しない)。この状態でスクリューコンベアが回転し切屑を圧縮室に送る。その後、サイクルタイマーがセット時間に達するとスクリューコンベアが停止し、圧縮シリンダー送り(圧縮)を一定時間行い、切屑の圧縮が進行し切屑が目的の厚み(長さ)に達すると圧縮時位置センサーが作動し、圧縮シリンダー戻り(圧縮しない)に移り、スクリューコンベアが作動して切屑排出工程に移る。
【0019】
すなわち、切屑排出工程は位置センサーが作動し、圧縮後エアシリンダー戻り(圧縮しない)後、出口開閉シリンダーにより出口シャッターが開き、スクリューコンベアが作動状態で圧縮シリンダー戻り(圧縮)を行い、切屑を排出した後は圧縮シリンダー送り(圧縮しない)が行われ、出口シャッターが閉となり、再びサイクルタイマーが作動する。以上の工程を自動的に繰り返す。この工程でスクリューコンベアは切屑の圧縮室への送りだけでなくその他の重要な役目を行っている。
【0020】
上述のように、スクリューコンベアと圧縮シリンダーの一体構成によって、従来の圧縮シリンダーのみで構成される切屑圧縮装置での圧縮シリンダーの戻り工程で戻り側に残ったり、一般的なチップコンベアから連続的に排出される切屑が戻り側に時間と共に堆積し排出されず、やがて連続運転が不能になることはなく、常に排出方向に切屑を移動させるスクリューコンベアを備えることで圧縮シリンダーの戻り工程でもスクリューコンベアを運転することで戻り側に切屑を堆積することなく連続運転が可能となる極めて優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る切屑圧縮処理装置の全体概略説明図とその操作工程を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1 スクリューコンベア本体
2 切屑投入口
3 スクリュー駆動部
4 スクリューコンベア
5 切屑圧縮室
6 出口開閉シリンダー
7 出口シャッター
8 位置センサー
9 ドレン液受け口
10 スクリュー駆動モータ
11 圧縮シリンダー
12 ドレン液出口
13 切屑
14 絞り口径部
15 圧縮切屑


特許出願人 株式会社 ヨシダ鉄工
代理人 弁理士 椎 名 彊

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部に切屑投入口を設けた切屑圧縮装置において、スクリューコンベア本体内の一端にスクリュー軸と圧縮シリンダー軸が一体に構成されたスクリュー駆動部を設け、該スクリュー駆動部には位置センサーおよびドレン液受け部を設け、他端に切屑圧縮室および出口開閉シリンダー付きシャッターを配設したことを特徴とする切屑圧縮処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスクリューコンベア本体の圧縮切屑の出側に絞り口径部を設けたことを特徴とする切屑圧縮処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の装置において、圧縮切屑の大きさ(長さ)を切屑の排出工程に指示する位置センサーを設けたことを特徴とする切屑圧縮処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置において、ドレン液受け部にドレン液出口を設けたことを特徴とする切屑圧縮処理装置。
【請求項5】
中央部に切屑投入口を設けたスクリューコンベアの一端にスクリュー軸と圧縮シリンダー軸を一体としたスクリュー駆動部を配置すると共に該スクリューコンベアを構成するスクリューを回転させることにより中央部から投入された切屑を出口シャッター側に圧縮し、一定位置迄圧縮された後は排出指示センサーの作動により該スクリューコンベアが停止し、出口シャッターが開き、再びスクリューコンベアが起動し、圧縮切屑を押出し、その後該スクリューコンベアは切屑送りサイクルに戻ることを特徴とする切屑圧縮処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−131630(P2010−131630A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309509(P2008−309509)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(591234488)株式会社ヨシダ鉄工 (13)