切断装置、切断データ処理装置、切断データ処理プログラム及び記録媒体
【課題】被切断物を余分に切断することなく、且つ切れ残りが生じないように切断することができる切断装置、切断データ処理装置、切断データ処理プログラム及び記録媒体を提供する。
【解決手段】切断装置は、切断開始点及び切断終了点が一致する閉じた形状を被切断物から切抜く場合、抽出手段で抽出した切断開始点の位置及び切断終了点の位置が切断ラインの特定位置にあるとき、切断開始点の位置及び切断終了点の位置を前記特定位置以外の切断ライン上の位置に変更する設定手段を備える。
【解決手段】切断装置は、切断開始点及び切断終了点が一致する閉じた形状を被切断物から切抜く場合、抽出手段で抽出した切断開始点の位置及び切断終了点の位置が切断ラインの特定位置にあるとき、切断開始点の位置及び切断終了点の位置を前記特定位置以外の切断ライン上の位置に変更する設定手段を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断データに基づいて切断刃と被切断物とを相対的に移動させることにより、前記被切断物を所望の形状に切断する切断装置、切断データ処理装置、切断データ処理プログラム及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば紙等のシートを、切断データに基づき自動的に切断するカッティングプロッタが知られている。前記カッティングプロッタは、紙等のシートを、駆動機構のローラで上下方向から挟んで第1方向へ移動させると共に、切断刃を有するキャリッジを前記第1方向と直交する第2方向へ移動させて前記シートを切断する。
例えば、シートから長方形の形状を切り抜く場合、1つの頂点を切断開始点として切断刃の刃先を圧接させる。この状態で、切断刃を、4辺の切断ラインをなぞるようにして前記第1方向及び第2方向へ相対移動させ、切断終了点となる元の頂点(即ち、切断開始点)でシートから離間させる。このように、切断開始点と切断終了点が一致する閉じた形状を切断する場合、切断刃の位置決め精度の影響で、切断開始点と切断終了点との間に切れ残り部分が生じる場合がある。また、シートの材質によっても、切断開始点と切断終了点との間に切れ残り部分が生じる場合がある。
【0003】
そこで、切断データについて、切断開始点からの切断方向とは逆方向の延長上から切断を開始し、切断終了点を越えて切断するように補正した切断制御方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。これによれば、補正後の切断データに基づいて、シートを、切断開始時と切断終了時に余分に切断して、切れ残りが生じないように切り抜くことができる。
尚、切断開始点及び切断終了点は、通常、上記のように切断ラインにおける隣り合う線分の頂点、即ち、切断ラインが長方形や多角形である場合、多角形の辺の交点といった特定の位置(以下、特定位置と称す)に設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−171197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のカッティングプロッタでは、シートを切断開始点及び切断終了点にて余分に切断するため、次のような問題がある。例えばシートから長方形を切り抜く場合、切断開始時には、長方形の外側から切り込みを開始し、切断終了時には、切断開始点を越えて外側まで余分に切断する。このため、切り抜いた長方形ではなく、長方形を除いた外側の部分を完成品として使用したい場合には、完成品に余分な切り込みが入ってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、被切断物を余分に切断することなく、且つ切れ残りが生じないように切断することができる切断装置、切断データ処理装置、切断データ処理プログラム及び記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明の請求項1の切断装置は、切断データに基づいて切断刃と被切断物とを相対的に移動させることにより、前記被切断物を所望の形状に切断するものであって、前記切断データから、前記被切断物の切断ラインにおける切断開始点の位置と切断終了点の位置とを抽出する抽出手段と、前記切断開始点及び前記切断終了点が一致する閉じた形状を前記被切断物から切抜く場合、前記抽出手段で抽出した前記切断開始点の位置及び前記切断終了点の位置が前記切断ラインの特定位置にあるとき、前記切断開始点の位置及び前記切断終了点の位置を前記特定位置以外の前記切断ライン上の位置に変更する設定手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、抽出手段によって、切断データから切断開始点及び切断終了点を抽出する。そして、特定位置にある切断開始点及び切断終了点は、設定手段によって、特定位置以外の切断ライン上の位置へ変更される。このように、切断開始点及び切断終了点は、設定手段による位置変更後においても切断ライン上にあることから、被切断物を余分に切断することがなく、且つ切れ残りが生じないように切断することができる。
【0009】
請求項2の切断装置は、請求項1の発明において、前記切断ラインは、連続した複数の線分を含み、前記設定手段は、前記切断開始点及び前記切断終了点を、前記複数の線分のうち何れかの線分の中間部の位置に設定することを特徴とする。
請求項3の切断装置は、請求項1又は2の発明において、前記切断ラインは、連続した複数の線分を含み、前記設定手段は、前記切断開始点及び前記切断終了点を、隣り合う前記線分のなす角度が所定の閾値以上である鈍角が連続する鈍角連続領域内の線分に設定することを特徴とする。
【0010】
請求項4の切断装置は、請求項2又は3の発明において、前記設定手段は、前記線分上に設定された前記切断開始点又は前記切断終了点について、当該線分に沿って前記切断ラインが重複するように延長させる位置補正を行うことで、切れ残りが生じないように切断することを特徴とする。
請求項5の切断装置は、請求項2から4までの何れかの発明において、前記設定手段は、前記複数の線分の長さを夫々算出する算出手段を備え、前記算出手段で算出された前記複数の線分のうち所定の長さ以上の線分に対して、前記切断開始点及び前記切断終了点を設定することを特徴とする。
【0011】
請求項6の切断データ処理装置は、切断刃と被切断物とを相対的に移動させることにより前記被切断物を所望の形状に切断する切断装置のための切断データを処理するものであって、前記切断データから、前記被切断物の切断ラインにおける切断開始点の位置と切断終了点の位置とを抽出する抽出手段と、前記切断開始点及び前記切断終了点が一致する閉じた形状を前記被切断物から切抜く場合、前記抽出手段で抽出した前記切断開始点の位置及び前記切断終了点の位置が前記切断ラインの特定位置にあるとき、前記切断開始点の位置及び前記切断終了点の位置を前記特定位置以外の前記切断ライン上の位置に変更する設定手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、抽出手段によって、切断データから切断開始点及び切断終了点を抽出する。そして、特定位置にある切断開始点及び切断終了点は、設定手段によって、特定位置以外の切断ライン上の位置へ変更される。このように、切断データ処理装置の処理において、切断開始点及び切断終了点は、設定手段による位置変更後においても切断ライン上にある。このため、設定手段により変更された切断データに基づいて切断装置で被切断物を切断するとき、被切断物を余分に切断することがなく、且つ切れ残りが生じないように切断することができる。
【0013】
請求項7記載の切断データ処理装置は、請求項6の発明において、前記切断ラインは、連続した複数の線分を含み、前記設定手段は、前記切断開始点及び前記切断終了点を、前記複数の線分のうち何れかの線分の中間部の位置に設定することを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の切断データ処理装置は、請求項6又は7の発明において、前記切断ラインは、連続した複数の線分を含み、前記設定手段は、前記切断開始点及び前記切断終了点を、隣り合う前記線分のなす角度が所定の閾値以上である鈍角が連続する鈍角連続領域内の線分に設定することを特徴とする。
【0015】
請求項9記載の切断データ処理装置は、請求項7又は8の発明において、前記設定手段は、前記線分上に設定された前記切断開始点又は前記切断終了点について、当該線分に沿って前記切断ラインが重複するように延長させる位置補正を行うことで、切れ残りが生じないように切断することを特徴とする。
【0016】
請求項10記載の切断データ処理装置は、請求項7から9の何れかの発明において、前記設定手段は、前記複数の線分の長さを夫々算出する算出手段を備え、前記算出手段で算出された前記複数の線分のうち所定の長さ以上の線分に対して、前記切断開始点及び前記切断終了点を設定することを特徴とする。
【0017】
請求項11の切断データ処理プログラムは、切断データに基づいて切断刃と被切断物とを相対的に移動させることにより、前記被切断物を所望の形状に切断する切断装置のコンピュータに実行させるものであって、前記コンピュータに、前記切断データから、前記被切断物の切断ラインにおける切断開始点の位置と切断終了点の位置とを抽出する抽出処理と、前記切断開始点及び前記切断終了点が一致する閉じた形状を前記被切断物から切抜く場合、前記抽出処理で抽出した前記切断開始点の位置及び前記切断終了点の位置が前記切断ラインの特定位置にあるとき、前記切断開始点の位置及び前記切断終了点の位置を前記特定位置以外の前記切断ライン上の位置に変更する設定処理と、を実行させる。
【0018】
上記構成によれば、抽出処理によって、切断データから切断開始点及び切断終了点を抽出する。そして、特定位置にある切断開始点及び切断終了点は、設定処理によって、特定位置以外の切断ライン上の位置へ変更される。このように、切断データ処理プログラムによって、切断開始点及び切断終了点は、設定処理による位置変更後においても切断ライン上にある。このため、設定処理による変更された切断データに基づいて切断装置で被切断物を切断するとき、被切断物を余分に切断することがなく、且つ切れ残りが生じないように切断することができる。
請求項12の記録媒体は、請求項11に記載の切断データ処理プログラムを切断装置のコンピュータに読取り可能に記録したものである。よって、上記した請求項11の発明と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の切断装置によれば、抽出手段によって、切断データから切断開始点及び切断終了点を抽出する。そして、特定位置にある切断開始点及び切断終了点は、設定手段によって、特定位置以外の切断ライン上の位置へ変更される。このように、切断開始点及び切断終了点は、設定手段による位置変更後においても切断ライン上にあることから、被切断物を余分に切断することがなく、且つ切れ残りが生じないように切断することができる。
【0020】
請求項2の切断装置によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、設定手段によって、切断開始点及び切断終了点を線分の中間部の位置に設定した。従って、切断終了点を越えて切断刃を余分に移動させることができる。
請求項3の切断装置によれば、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、設定手段によって、切断開始点及び切断終了点を鈍角連続領域内の線分に設定した。従って、切断終了点を越えて切断刃を余分に移動させることができる。
【0021】
請求項4の切断装置によれば、請求項2又は3に記載の発明の効果に加え、設定手段によって、線分上に設定された切断開始点又は切断終了点について位置補正を行う。これにより、当該線分に沿って切断ラインが重複するように延長するので、切断開始点と切断終了点との間における切れ残りを確実に無くすことができる。
請求項5の切断装置によれば、請求項2から4までの何れかの発明の効果に加え、算出手段により各線分の長さを夫々算出して、所定の長さ以上の線分に対して切断開始点及び切断終了点を設定することができる。従って、確実に、切断終了点を越えて切断刃を余分に移動させることができる。
【0022】
請求項6の切断データ処理装置によれば、抽出手段によって、切断データから切断開始点及び切断終了点を抽出する。そして、特定位置にある切断開始点及び切断終了点は、設定手段によって、特定位置以外の切断ライン上の位置へ変更される。このように、切断データ処理装置の処理において、切断開始点及び切断終了点は、設定手段による位置変更後においても切断ライン上にある。このため、設定手段により変更された切断データに基づいて切断装置で被切断物を切断するとき、被切断物を余分に切断することがなく、且つ切れ残りが生じないように切断することができる。
【0023】
請求項7記載の切断データ処理装置によれば、請求項6に記載の発明の効果に加え、請求項2の発明の効果と同様の効果を奏する。
請求項8記載の切断データ処理装置によれば、請求項6又は7に記載の発明の効果に加え、請求項3の発明の効果と同様の効果を奏する。
請求項9記載の切断データ処理装置によれば、請求項7又は8に記載の発明の効果に加え、請求項4の発明の効果と同様の効果を奏する。
請求項10記載の切断データ処理装置によれば、請求項7から9の何れかに記載の発明の効果に加え、請求項5の発明の効果と同様の効果を奏する。
【0024】
請求項11の切断データ処理プログラムによれば、抽出処理によって、切断データから切断開始点及び切断終了点を抽出する。そして、特定位置にある切断開始点及び切断終了点は、設定処理によって、特定位置以外の切断ライン上の位置へ変更される。このように、切断データ処理プログラムによって、切断開始点及び切断終了点は、設定処理による位置変更後においても切断ライン上にある。このため、設定処理による変更された切断データに基づいて切断装置で被切断物を切断するとき、被切断物を余分に切断することがなく、且つ切れ残りが生じないように切断することができる。
請求項12の記録媒体は、請求項11に記載の切断データ処理プログラムを切断装置のコンピュータに読取り可能に記録したものである。よって、上記した請求項11の発明と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態における切断装置の内部構造を示す斜視図
【図2】切断装置の平面図
【図3】カッタホルダの斜視図
【図4】カッタを下降させた状態で示すカッタホルダの正面図
【図5】カッタを上昇させた状態で示すカッタホルダの断面図
【図6】図4のVI−VI線に沿う断面図
【図7】ギヤ部を拡大して示す正面図
【図8】切断時におけるカッタ先端の近傍部の拡大図
【図9】切断時におけるカッタホルダ近傍部の側面図
【図10】電気的構成を示すブロック図
【図11】(a)及び(b)は、被切断物の切断ラインにおける切断開始点(切断終了点)の変更前の位置及び変更後の位置を比較して説明するための図
【図12】切断ラインにおける鈍角連続領域を拡大して示す図
【図13】切断開始点及び切断終了点を変更する場合における全体の処理の流れを示すフローチャート
【図14】切断開始点及び切断終了点を線分の中間位置に変更する場合の処理の流れを示すフローチャート
【図15】データ並び替え処理の流れを示すフローチャート
【図16】切断開始点及び切断終了点を鈍角連続領域に変更する場合の処理の流れを示すフローチャート
【図17】着目する3点の設定処理の流れを示すフローチャート
【図18】切断ラインでカウントされる3点を説明するための拡大図
【図19】本発明の第2実施形態を示す図10相当図
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図1〜図18を参照しながら説明する。
図1に示すように、切断装置1は、筐体としての本体カバー2と、本体カバー2内に配設されたプラテン3と、カッタホルダ5とを備えると共に、カッタホルダ5のカッタ4(図5参照)と被切断物6とを相対的に移動させるための第1及び第2移動手段7,8を備えている。本体カバー2は横長な矩形箱状をなしており、前面部には、プラテン3上面部に被切断物6を保持した保持シート10をセットするための横長な開口部2aが形成されている。尚、以下の説明では、切断装置1に対しユーザが位置する側を前方とし、その反対側を後方とする。そして、前後方向をY方向とし、Y方向と直交する左右方向をX方向とする。
【0027】
本体カバー2の右側には、ユーザに対して必要なメッセージ等の表示を行う表示手段としての液晶ディスプレイ(LCD)9が設けられると共に、ユーザが各種の指示や選択、入力の操作を行うための複数の操作スイッチ65(図10参照)が設けられている。
前記プラテン3は、前後一対の板材3a,3bからなり、上面部が水平面たるXY平面をなすように構成されている。プラテン3には、被切断物6を保持する保持シート10が載置されるようにセットされ、被切断物6の切断の際、保持シート10をプラテン3で受ける。詳しくは後述するが、保持シート10の上面には、左右両方の縁部10bを除いた部分に粘着剤が塗布された粘着層10aが形成されており、粘着層10aに被切断物6が貼り付けられて保持される。
【0028】
前記第1移動手段7は、プラテン3の上面側で保持シート10をY方向(第1方向)へ移動させるものである。即ち、切断装置1における左右の側壁部11a,11bには、プラテン3の板材3a,3bの間に位置させて、駆動ローラ12とピンチローラ13が設けられている。駆動ローラ12とピンチローラ13は、X方向に延びて、側壁部11a,11bに対して回動可能に支持されている。また、駆動ローラ12とピンチローラ13は、前記XY平面に対して平行で、且つ上下方向に並ぶように配置されている。下側が駆動ローラ12で、上側がピンチローラ13である。図2に示すように、右側壁部11bには、駆動ローラ12の右側に位置させて、クランク状の第1取付フレーム14が設けられている。取付フレーム14の外側には、Y軸モータ15が固定されている。Y軸モータ15は例えばステッピングモータから構成され、回転軸15aは第1取付フレーム14を貫通しており、先端部にギヤ部16aを有する。駆動ローラ12の右端部には、ギヤ部16aと噛合するギヤ部16bが固着されており、これらギヤ部16a、16bにより第1減速ギヤ機構16が構成されている。前記ピンチローラ13は、左右の側壁部11a,11bに形成されたガイド溝17b(図1に右側の溝17bのみ図示)により上下方向へ移動可能にガイドされている。左右の側壁部11a,11bには、ガイド溝17bを外側から囲うバネ収容部18a,18bが夫々設けられている。ピンチローラ13は、バネ収容部18a,18bに収容された図示しない圧縮コイルバネにより下方へ付勢されている。ピンチローラ13には、保持シート10の左右両方の縁部10bに接触して押圧する押圧部13aが設けられている。押圧部13aは、ピンチローラ13の他の部分よりも外径が少し大きく形成されている。
【0029】
ここで、駆動ローラ12とピンチローラ13は、前記圧縮コイルバネの付勢力により、保持シート10を上下方向から押圧挟持する(図9参照)。そして、Y軸モータ15を正転駆動、或は逆転駆動させると、その回転運動が第1減速ギヤ機構16を介して駆動ローラ12に伝わることで、保持シート10を被切断物6と共に後方或いは前方へ搬送させる。これら駆動ローラ12、ピンチローラ13、Y軸モータ15、第1減速ギヤ機構16、前記圧縮コイルバネ等は、第1移動手段7を構成する。
【0030】
前記第2移動手段8は、カッタホルダ5を支持するキャリッジ19を、X方向(第2方向)へ移動させるものである。詳細には、図1、図2に示すように、左右の側壁部11a,11b間には、後端部に位置させて、左右方向に延びるガイド軸20とガイドフレーム21が配設されている。ガイド軸20は、駆動ローラ12及びピンチローラ13と平行に配設されている。ガイド軸20は、プラテン3の直ぐ上側で、キャリッジ19下部(後述の貫通孔部22)を貫通している。ガイドフレーム21は、前縁部21aと後縁部21bが下方へ折り返された断面コ字状をなしている。前縁部21aはガイド軸20と平行に配設されている。ガイドフレーム21は、前縁部21aでキャリッジ19上部(後述の被ガイド体23,23)をガイドするようになっており、側壁部11a,11bの上端部で螺子21cにより固定されている。
【0031】
図2に示すように、切断装置1の後部には、右側壁部11bに第2取付フレーム24が設けられると共に、左側壁部11aに補助フレーム25が設けられている。第2取付フレーム24には、X軸モータ26及び第2減速ギヤ機構27が配設されている。X軸モータ26は、例えばステッピングモータからなり、第2取付フレーム24における前側の取付片24aの前面部に固定されている。X軸モータ26の回転軸26aは取付片24aを貫通しており、先端部に、第2減速ギヤ機構27と噛合するギヤ部26bを有する。第2減速ギヤ機構27にはプーリ28が設けられており、図2において左側の補助フレーム25にプーリ29が回転自在に取付けられている。これらプーリ28とプーリ29との間には、キャリッジ19の後端部(後述の取付部30)に連結された無端状のタイミングベルト31が掛装されている。
【0032】
ここで、X軸モータ26を正転駆動、或は逆転駆動させると、その回転運動が第2減速ギヤ機構27及びプーリ28を介してタイミングベルト31に伝わることで、キャリッジ19をカッタホルダ5ごと左方或いは右方へ移動させる。こうして、キャリッジ19とカッタホルダ5は、被切断物6を搬送するY方向と直交するX方向に移動する。上記のガイド軸20、ガイドフレーム21、X軸モータ26、第2減速ギヤ機構27、プーリ28,29、タイミングベルト31、キャリッジ19等は、第2移動手段8を構成する。
【0033】
前記カッタホルダ5は、キャリッジ19に対して前面側に配置され、Z方向たる上下方向(第3方向)への移動が可能に支持されている。これらキャリッジ19及びカッタホルダ5の構成について、図3〜図7も参照しながら説明する。
【0034】
図2、図3に示すように、キャリッジ19は、後面側が開放された略矩形箱状をなす。キャリッジ19の上壁部19aには、平面視にて円弧状をなすリブであって、上方へ突出する前後一対の被ガイド体23,23が一体に設けられている。被ガイド体23,23は、ガイドフレーム21の前縁部21aを挟むよう対称的に配置されている。図4にも示すように、キャリッジ19における底壁部19bの下側には、ガイド軸20に挿通される左右一対の貫通孔部22,22が下方へ張出すように形成されている。また、キャリッジ19の底壁部19bには、前記タイミングベルト31に連結される取付部30(図5、図6参照)が後方へ突出するように設けられている。こうして、キャリッジ19は、貫通孔部22,22に挿通されるガイド軸20によって左右方向へ摺動可能に支持されると共に、被ガイド体23,23で挟まれるガイドフレーム21によってガイド軸20の回りに回転しないように支持される。
【0035】
図3、図4、図5、図9等に示すように、キャリッジ19の前壁部19cには、前方へ延出する上下一対の支持部32a,32bが一体に設けられている。キャリッジ19には、支持部32a,32bを夫々貫通する左右一対の支持軸33a,33bが上下動自在に支持されている。キャリッジ19内には、例えばステッピングモータからなるZ軸モータ34が、後方から収容されるように配置されている。Z軸モータ34の回転軸34aは(図3、図9参照)、キャリッジ19の前壁部19cを貫通しており、先端部にギヤ部35を有する。また、図5、図6、図9に示すように、キャリッジ19には、その前壁部19c中央からやや下寄りの部位を前後に貫通するギヤ軸37が設けられている。ギヤ軸37には、前壁部19cの前側で前記ギヤ部35に噛合するギヤ部38が回転可能に装着されると共に、ギヤ軸37前端部の止め輪(図示略)により抜け止めされている。ギヤ部38とギヤ部35で第3減速機構41を構成する(図3、図9参照)。
【0036】
ギヤ部38には、図7に示すように、渦巻き溝42が形成されている。渦巻き溝42は、第1端部42aから第2端部42bへ向って右方向に旋回するにつれ中心に近づく渦巻き状をなすカム溝である。渦巻き溝42には、詳しくは後述するが、カッタホルダ5と一体的に上下移動する係合ピン43が係合する(図5、図6参照)。ここで、Z軸モータ34を正転駆動、或は逆転駆動させると、ギヤ部35を介してギヤ部38が回転する。ギヤ部38が回転することにより、渦巻き溝42に係合する係合ピン43が上下方向に摺動する。これに伴い、カッタホルダ5を支持軸33a,33bごと上方或いは下方へ昇降させる。この場合、カッタホルダ5は、係合ピン43が渦巻き溝42の第1端部42aに位置した上昇位置(図5、図7参照)と、係合ピン43が第2端部42bに位置した下降位置(図6、図7参照)との間で移動する。上記の渦巻き溝42を有する第3減速機構41、Z軸モータ34、係合ピン43、支持部32a,32b、支持軸33a,33b等は、カッタホルダ5を上下方向へ移動させる第3移動手段44を構成する。
【0037】
カッタホルダ5は、前記支持軸33a,33bに設けられるホルダ本体45と、カッタ4(切断刃)を有してホルダ本体45に上下動可能に保持される可動筒部46とを備えると共に、被切断物6を押圧するための押圧装置47を備えている。
即ち、図3、図4、図5、図9等に示すように、ホルダ本体45は、上端部45aと下端部45bが後方へ折り返され全体としてコ字状をなしている。ホルダ本体45の上端部45aと下端部45bは、支持軸33a,33bの上下両端部に夫々固定された止め輪48により、支持軸33a,33bに対し移動不能に固定されている。図5、図6に示すように、支持軸33bの中間部には、前記係合ピン43が後向きに設けられた連結部材49が固着されている。こうして、ホルダ本体45、支持軸33a,33b、係合ピン43、及び連結部材49は一体的に構成され、カッタホルダ5は、前記第3移動手段44により係合ピン43に連動して上下方向へ移動する。また、支持軸33a,33bには、支持部32a上面とホルダ本体45の上端部45aとの間に、付勢部材たる圧縮コイルバネ50が夫々外装されている。圧縮コイルバネ50の付勢力により、カッタホルダ5全体がキャリッジ19側に対して上方へ弾性付勢されている。
【0038】
図3、図4に示すように、ホルダ本体45における中間部には、可動筒部46や押圧装置47等を取付けるための取付部材51,52が螺子54a,54bにより夫々固定されている。下側の取付部材52には、可動筒部46を上下動可能に支持する筒状部52a(図5参照)が設けられている。可動筒部46は、筒状部52aの内周面に摺接する径寸法に設定され、上端部には、筒状部52aの上端で支持されるフランジ部46aが径方向外側へ張出すように形成されている。フランジ部46aの上端面にはバネ受け部46bが設けられている。図5、図6に示すように、上側の取付部材51と可動筒部46のバネ受け部46bとの間には、圧縮コイルバネ53が配設されている。圧縮コイルバネ53は、可動筒部46(カッタ4)を下方の被切断物6側に付勢する一方、カッタ4に被切断物6側から上方への力が作用すると、当該付勢力に抗して可動筒部46の上方への移動を許容する。
【0039】
可動筒部46には、その軸線方向に延びるカッタ4が貫通するように配設されている。詳細には、カッタ4は、可動筒部46よりも長尺な丸棒状のカッタ軸4bと、そのカッタ軸4bの下端部に形成された刃部4aとを一体に有する。図8に示すように、刃部4aは略三角形状をなし、最下端の刃先4cが、カッタ軸4bの中心軸線Oから距離dだけ偏心した位置に形成されている。カッタ4は、可動筒部46内部の上下両端部に配設された軸受55(図5参照)により、上下方向の中心軸線O(Z軸)を中心に回動自在に保持されている。こうして、カッタ4は、被切断物6の表面たるXY平面に対して直交するZ方向から刃先4cが圧接する。また、カッタ4は、カッタホルダ5が下降位置へ移動された時に、図8に示すように刃先4cが保持シート10上の被切断物6を貫通し、且つプラテン3の板材3b上面に到達しない高さに設定してある。一方、カッタ4は、カッタホルダ5が上昇位置へ移動されることに伴い、刃先4cも上方へ移動して被切断物6から離間する(図5参照)。
【0040】
前記取付部材52には、筒状部52aの下端部周縁に、3つのガイド孔部52b〜52d(図3、図4、図5、図9参照)が等間隔で形成されている。そして、筒状部52aの下側には、ガイド孔部52b〜52dに挿通される3つのガイド棒56b〜56dを有する押圧部材56が配置されている。押圧部材56の下面側は、浅底な鉢(ボウル)状(或は緩やかな円形椀状)をなす押圧部本体56aとされており、周縁上部には、等間隔をなす前記ガイド棒56b〜56dが一体に設けられている。押圧部材56は、ガイド孔部52b〜52dにてガイド棒56b〜56dがガイドされることにより、上下方向への移動が可能である。押圧部本体56aの中央部には、上下方向に延びて前記刃部4aを下方へ突出させるための貫通孔56eが形成されている。そして、押圧部本体56aの下端面は、刃部4aの周囲で被切断物6に接触する接触部56fとされている。接触部56fは、円環上をなす水平な平坦面であって、被切断物6に対して面接触する。接触部56fは、例えばテフロン(登録商標)等のフッ素樹脂で構成されることで、比較的摩擦係数が低く、被切断物6に対して滑り易くなっている。
【0041】
図3、図4、図5、図9等に示すように、押圧部本体56aの周縁上部には、前方へ延出する案内部56gが一体に設けられている。案内部56gは、接触部56fに対して前側で且つ上方に位置し、当該接触部56f側へ後方に向けて下方に傾斜した傾斜面56gaを含んで構成されている。これにより、被切断物6を保持した保持シート10が、カッタホルダ5に対して後方へ移動する際、案内部56gは、被切断物6を接触部56fに対して引っ掛からないように下側へ案内する。
【0042】
前記取付部材52には、筒状部52aの前側であって案内部56gの上方に位置してソレノイド57用の前側取付部52eが一体に設けられている。ソレノイド57は、押圧部材56を上下動させて被切断物6を押圧するためのアクチュエータであり、押圧部材56並びに後述の制御回路61と共に押圧装置47(押圧手段)を構成する。ソレノイド57は、前側取付部52eに下向きに取付けられており、プランジャ57aの先端部は案内部56g上面に固定されている。詳しくは後述するように、カッタホルダ5の下降位置でソレノイド57が駆動されると、プランジャ57aと共に押圧部材56が下方へ移動して被切断物6を所定の押圧力で押圧する(図9参照)。これに対して、ソレノイド57の非駆動時には、プランジャ57aが上方に位置して押圧部材56が被切断物6に対する押圧力を解除する。ソレノイド57の非駆動状態でカッタホルダ5が上昇位置へ移動されると(図5の2点鎖線参照)、押圧部材56が被切断物6から完全に離間する。
【0043】
前記保持シート10は、被切断物6を保持するための粘着層10a(図8参照)を有する。被切断物6は、切断装置1にて切断する際、粘着層10aの粘着力と前記押圧装置47の押圧力とによって、保持シート10に対して移動不能に保持される。保持部材としての保持シート10は、例えば、合成樹脂材料からなり、平板矩形状(図1参照)に形成されている。図8に示すように、保持シート10の上側の面(カッタ4との対向面)に、粘着剤が塗布された粘着層10aが形成されている。粘着層10aは、例えば紙、布、樹脂フィルム等のシート状の被切断物6を剥離可能に保持する。粘着層10aの粘着力は、被切断物6を粘着層10aから剥がす際、当該被切断物6が破れることがなく且つ簡単に剥がせるよう比較的小さい値に設定されている。
【0044】
次に、切断装置1の制御系の構成について図10のブロック図を参照しながら説明する。
切断装置1全体の制御を司る制御回路(制御手段)61は、コンピュータ(CPU)を主体に構成されており、ROM62、RAM63、外部メモリ64が接続されている。ROM62には、切断動作を制御するための切断制御プログラム、後述する切断データ処理プログラム、切断角度の閾値等が記憶されている。RAM63には、各種処理に必要なデータやプログラムが一時的に記憶される。外部メモリ64には、複数種類の切断データが記憶されている。
【0045】
制御回路61には、各種の操作スイッチ65の操作信号が入力されると共に、液晶ディスプレイ9の表示を制御する。このとき、ユーザは、液晶ディスプレイ9の表示を見ながら、各種操作スイッチ65を操作することによって、所望する形状の切断データを選択指定する。制御回路61には、切断装置1の開口部2aからセットされた保持シート10を検出するための検出センサ等、各種検出センサ66の検出信号が入力される。また、制御回路61には、Y軸モータ15、X軸モータ26、Z軸モータ34、ソレノイド57を夫々駆動する駆動回路67,68,69,70が接続されている。制御回路61は、切断制御プログラムの実行により前記切断データに基づいて、Y軸モータ15、X軸モータ26、Z軸モータ34、ソレノイド57を制御し、保持シート10上の被切断物6に対する切断動作を自動で実行させる。
【0046】
前記切断データは、複数の線分からなる切断ラインの頂点を夫々XY座標によって示した座標点データを含む。具体的には例えば、図11(a)に示すように、被切断物6に対して、「長方形」を切り抜くとする。長方形の4つの頂点をP0〜P3とし、切断開始点をP0、切断終了点をP4とする。長方形の切断ラインAは、線分A1〜A4からなり、切断開始点P0と切断終了点P4が一致する閉じた切断ラインを構成する。切断データとしては、切断開始点P0、頂点P1、頂点P2、頂点P3、切断終了点をP4の夫々に対応する座標点データを含む5つ(n個)の座標点データを有する。このように、長方形や多角形の閉じた形状を切り抜く場合、切断開始点及び切断終了点は、通常、切断ラインにおける隣り合う線分の頂点(この場合、辺の交点)といった特定の位置に設定される。
【0047】
前記RAM63のデータバッファには、外部メモリ64から受信した上記のn個分の座標点データを含む切断データが記憶される。ここで、本実施形態では、切断データが記憶されるRAM63の記憶領域をデータバッファと称する。これにより、切断装置1における被切断物6の切断時には、RAM63に記憶された切断データに基づいて線分が切断される。例えば図11(a)の切断ラインAでは、座標点データがデータバッファの先頭から頂点P0〜P4の順に記憶されており、線分A1〜A4の順に切断される。このように、切断開始点P0は最初に切断される線分A1の始点、切断終了点P4は最後に切断される線分A4の終点であり、切断開始点P0と切断終了点P4の位置は一致している。そして、制御回路61は後述する抽出手段に相当し、RAM63のデータバッファを参照して該当する切断開始点及び切断終了点の座標点データを抽出する。尚、後述する座標点データの並び替えを行うためのRAM63の記憶領域を並び替えバッファと称し、前記データバッファと区別する。
【0048】
切断装置1では、前記長方形を切断する場合、第1移動手段7による保持シート10(被切断物6)のY方向への移動と、第2移動手段8によるカッタホルダ5のX方向への移動とにより、線分A1の切断開始点P0のXY座標へカッタ4を相対的に移動させる。次いで、第3移動手段44によりカッタ4の刃先4cを被切断物6の切断開始点P0に貫通させて、第1移動手段7及び第2移動手段8により線分A1の終点P1の座標へ向けて相対的に移動させ、線分A1に沿って被切断物6を切断する。続く線分A2は、先の線分A1の終点P1を始点として、線分A1と同様の切断が連続的に実行される。こうして、線分A2〜A4についても、順次連続して切断が行われることで、「長方形」の切断ラインAを切断する。
【0049】
前記ROM62には、切断角度θの閾値Tが記憶されている。ここで、切断角度θとは、例えば図12に示すように、切断ラインを構成する隣り合う線分のなす角度であって、180度よりも小さい角度の方とする。また、閾値Tは、前記切断角度θに対して設定される値であって、所定の値(例えば130度)に設定されている。また、詳しくは後述するように、制御回路61は、切断ラインにおいて、連続する3つの座標点データに基づいて前記切断角度θを算出する。そして、算出結果と閾値Tとを比較することで、切断ラインにおいて閾値T以上の鈍角が連続する鈍角連続領域(図12参照)を特定する。
【0050】
また、ROM62には、被切断物6の材質(伸縮特性)に応じた伸縮補正量が予め設定され、被切断物6の種類ごとに対応付けた伸縮補正テーブルが記憶されている。ここで、伸縮補正量とは、切断時に被切断物6がカッタ4で引っ張られて僅かに伸びてしまうことによる切断不良を防止する為、カッタ4と被切断物6の相対移動量を僅かに増加させる補正移動量のことをいう。被切断物6としては、前述のように各種の材料が用いられるが、布のうち例えばフェルトの伸縮補正量は比較的大きな値に設定され、例えばデニムの伸縮補正量は比較的小さな値に設定されている。切断装置1で被切断物6を切断する際、ユーザは、操作スイッチ65の操作により、被切断物6の種類を入力する。制御回路61は、伸縮補正テーブルを参照して、入力された被切断物6の種類に対応する伸縮補正量を特定する。尚、伸縮補正量については、例えばユーザによる操作スイッチ65の操作により数値を直接入力してもよい。
【0051】
上記のように、切断開始点及び切断終了点は、通常、切断ラインにおける隣り合う線分の頂点といった特定位置(図11(a)のP0及びP4参照)に設定される。この為、カッタ4が切断ラインに沿って被切断物6を切断しても、前述したように、切れ残りが生じたり、又は被切断物6を余分に切断してしまうという問題がある。
【0052】
そこで、制御回路61は、切断装置1のソフトウェア的構成(切断データ処理プログラムの実行)によって、切断開始点及び切断終了点を、特定位置以外の切断ライン上の位置に変更する。即ち、制御回路61は算出手段として、前記座標点データに基づいて、切断ラインを構成する各線分の長さを算出する。ここで、座標点データに対応する点P0,P1,…,Pi,Pi+1を有する図形の場合、Pi(Xi、Yi)を始点、その次のPi+1(Xi+1、Yi+1)を終点とする線分の距離Lは、以下の(1)式で算出される。
L=[(Xi+1−Xi)2+(Yi+1−Yi)2]1/2 ・・・(1)
【0053】
算出した長さLが、所定の長さ以上(例えば伸縮補正量の2倍以上)である場合、制御回路61は、該当する線分の中間点を新たな切断開始点及び切断終了点として設定する。この場合、線分の中間点におけるX座標及びY座標は、次の(2)及び(3)式で表わされる。
X=(Xi+Xi+1)/2 ・・・(2)
Y=(Yi+Yi+1)/2 ・・・(3)
【0054】
一方、切断ラインを構成する各線分の何れも所定の長さに満たない場合、制御回路61は、切断ラインにおいて前記鈍角が連続する鈍角連続領域があるか否かを判断する。そして、切断ラインに鈍角連続領域があるとき、当該鈍角連続領域内の線分に新たな切断開始点及び切断終了点として設定する。こうして、制御回路61は、切断開始点の位置及び切断終了点の位置を前記特定位置以外の切断ライン上の位置に変更する。つまり、制御回路61は設定手段として構成されている。
【0055】
切断開始点及び切断終了点の位置変更に係る具体的な処理手順について、図13〜図16も参照しながら説明する。ここで、図13〜図16のフローチャートは、制御回路61が実行する前記切断データ処理プログラムの処理の流れを示している。
先ず、ユーザが例えば外部メモリ64に記憶されている切断データの中から所望の形状の切断データを選択すると、切断データが外部メモリ64から読み出されてRAM63のメモリに展開される。また、ユーザは操作スイッチ65の操作により、被切断物6の種類(例えばデニム)を入力する。これにより、制御回路61は、伸縮補正テーブルを照合して、入力されたデニムに対応する伸縮補正量αを特定する(ステップS11)。
【0056】
また、制御回路61は、読み出した切断データを参照して、座標点データの数nを取得する(ステップS12)。例えば図11(a)の切断ラインAの切断データの場合、データ数nは、前述のように切断開始点P0から切断終了点P4までカウントした5に設定される。そして、ステップS13では、線分の中間点に切断開始点及び切断終了点を設定するための線分中間点設定処理が行われる(図14参照)。
具体的には、ステップS21では、切断開始点の頂点(i=0)とその次の頂点(i+1)との間の線分の長さを求めるべく、頂点Piの切断順に対応する切断番号iを0に設定する。尚、切断開始点P0及び切断終了点P4が一致するため、切断番号iと前記データ数nは、(i=0、1、2、…、n−1)の関係にある。
【0057】
そして、制御回路61は、切断開始点の頂点P0(X0、Y0)から頂点P1(X1、Y1)までの線分A1の長さLを、(1)式により算出する(ステップS22)。また、制御回路61は、算出した線分A1の長さLが、所定の長さ以上(例えば伸縮補正量αの2倍以上)あるか否かを判断する(ステップS23)。ここで、線分A1の長さLが伸縮補正量αの2倍の長さに満たないと判断した場合(No)、その都度、切断番号iをi=i+1に更新する(ステップS24)。また、線分A2の長さLについても(ステップS25にてNo)、頂点P1(X1、Y1)から頂点P2(X2、Y2)までの長さLが、(1)式により算出される(ステップS22)。こうして、ステップS21〜S25が繰り返し実行されることで、線分A2〜A4についても夫々の長さLが算出されると共に、算出した長さLについて所定の長さ以上か否かが判断される(ステップS23)。
【0058】
例えば、前記ステップS23で、線分A2の長さLが所定の長さ以上あると判断した場合(Yes)、当該線分A2の中間点におけるX座標及びY座標を(2)式と(3)式により求める(ステップS26)。次いで、ステップS27では、線分A2の中間点を、新たな切断開始点及び切断終了点とすべく、データ並べ替え処理つまり切断順を変更するための処理が行われる(図15参照)。
【0059】
データ並べ替え処理では、RAM63の並び替えバッファにおける切断データの切断順に対応する切断番号i´を0に設定する(ステップS31)。そして、切断番号0の切断開始点P0´(図11(b))の位置を、ステップS26で算出した値に設定する(ステップS32)。これにより、並び替えバッファの先頭に、線分A2の中間点の座標点データを記憶する。
また、P0´に続くP1´に対応する頂点として、切断開始点P0´が設定された線分A2の終点P2を指定する(ステップS33)。つまり、切断番号i´をi´=i´+1に更新する一方、前記の切断番号iを、頂点P2に対応する2に更新する。そして、P0´に続きP1´について(ステップS34にてNo)、指定したP2の座標点データが記憶される(ステップS35)。
【0060】
次いで、切断番号iをi=i+1に更新して、次の頂点P3を指定する(ステップS36)と共に、当該頂点P3が、元の切断終了点P4を越えたか否か(つまりi≧n−1か否か)を判断する(ステップS37)。この場合、頂点P3は、元の切断終了点P4を越えていない(No)。このため、頂点P3は、その指定を変更することなく、切断番号i´をi´=i´+1に更新したP2´に対応する頂点として扱われる(ステップS38、S34にてNo)。これにより、P2´について、指定したP3の座標点データが記憶される(ステップS35)。こうして、Piの切断番号iが「切断終了点P4を越えた(ステップS37にてYes)」と判断されるまで、ステップS34〜S38が繰り返し実行される。これにより、並び替えバッファの先頭のP0´に続く頂点P1´,P2´,P3´に、順次頂点P2,P3,P4の座標点データが書き込まれることで頂点P2〜P4のデータの並び替えが行われる。
【0061】
元の切断終了点P4までのデータの並び替えを終え、前記ステップS37でYesと判断されても、頂点P1のデータを並び替える必要がある。そこで、頂点Piの切断番号iを1に設定して(ステップS39)、上記の頂点P2〜P4と同様に、頂点P1の並び替えを行う(ステップS34にてNo、ステップS35)。こうして、全ての頂点P1〜P4ついてデータの並び替えを終了したと判断するまで(ステップS34にてYes)、再度ステップS34〜S38が繰り返し実行される。
【0062】
前記ステップS34で、全ての頂点P1〜P4のデータの並び替えを終えたと判断すると(ステップS34にてYes)、新たな切断終了点P5´に、前記ステップS26で求めた座標点データが書き込まれる(ステップS40)。そして、RAM63のデータバッファのデータは、並び替えバッファに記憶されたP1´〜P5´の座標点データで書き換えることにより更新される(ステップS41)。これにより、線分中間点設定処理を終了する(図13のステップS14にリターンする)。
【0063】
上記したように、線分の中間点に切断開始点及び切断終了点が設定されると(ステップS14にてYes)、全体の処理を終了する。一方、切断ラインを構成する全ての線分について何れも所定の長さに満たないと判断された場合(図14のステップ25にてYes)、切断開始点及び切断終了点は依然として前記特定位置にある(図13のステップS14にてNo)。このような場合、ステップS15において、鈍角連続領域内の線分に新たな切断開始点及び切断終了点を設定するための鈍角連続領域設定処理が行われる(図16参照)。
【0064】
鈍角連続領域設定処理では、先ず切断開始点を始点(i=0)とする線分と、この線分と隣り合う線分との間の角度(切断角度)θを求めるべく、切断番号iを0に設定する(ステップS51)。また、鈍角連続領域内の合計線分長Lcを0に初期化すると共に(ステップS52)、前記線分の始点及び終点をカウントするカウンタcnt0を(図18参照)、現在の切断番号iの値で更新する(ステップS53)。次いで、ステップS54では、角度θの算出に係る3つのカウンタcnt0〜cnt2を順次設定するカウンタ設定処理に移行する(図17参照)。カウンタ設定処理では、ステップS71においてカウンタcnt1をcnt1=cnt0+1に設定する。また、ステップS74においてカウンタcnt2をcnt2=cnt1+1に設定する。尚、ステップS72或はS75では、カウンタcnt1或はcnt2のカウント値が、切断終了点の切断番号と一致するか否かが判断される。もっとも、カウンタcnt0が0の場合、カウンタcnt1は1、カウンタcnt2は2となり、ステップS72或はS75で何れもNoと判断されることから、後述することとする(ステップS55にリターンする)。
【0065】
ステップS55では、カウンタcnt0〜2の夫々のカウント値0〜2に対応する3点P0〜P2について係る角度θを算出する。例えば、図18に示す切断ラインCにおいて、左の頂点P0からP1、P2、…の順に切断される場合、P0、P1間の線分C1と、P1、P2間の線分C2とのなす角度θを、これらの座標データに基づき演算する。制御回路61は、演算により得られた角度θが閾値T未満か否かを判断する。ここで、角度θが閾値T以上の鈍角の場合(ステップS55にてNo)、一対の線分C1、C2のうちカウント値が低い方の線分C1の長さを算出する。即ち、カウンタcnt0,1に対応するP0、P1間の距離を前記(1)式により算出し、該当する角部の頂点P1までの長さを、鈍角連続領域内の合計線分長Lcとして求める(ステップS56)。また、制御回路61は、算出した合計線分長Lcが、所定の長さ以上(例えば伸縮補正量αの2倍以上)あるか否かを判断する(ステップS57)。
【0066】
前記合計線分長Lcが伸縮補正量αの2倍の長さに満たないと判断した場合(No)、切断番号iをi=i+1に更新する(ステップS58)。これにより、判断対象を頂点P1から次の頂点P2へ移すべく、再びステップS54のカウンタ設定処理に移行する(図17参照)。そこで、以下では、前記切断ラインCの如き鈍角が連続する鈍角連続領域を有する切断ラインB(図12参照)を例に説明する。
【0067】
カウンタ設定処理では、前述のようにステップS71及びS72においてカウンタcnt1及びcnt2が1つずつインクリメントされ、その後ステップS55にリターンする。ステップS55では、カウンタcnt0〜2のカウント値1〜3に対応するP1〜P3について、係る一対の線分B2、B3のなす角度θ2を、これらの座標データに基づき演算する。ここで、制御回路61は、演算した角度θ2に基づき閾値T以上の鈍角と判断した場合(ステップS55にてNo)、一対の線分B2、B3のうちカウント値が低いB2の長さを算出する。そして、算出したB2の長さと前回算出した線分長Lc(B1)とを足した線分長の総和として、鈍角連続領域内の合計線分長Lcを更新する(ステップS56)。こうして、鈍角が連続する場合には(ステップS55にてNo)、合計線分長Lcが伸縮補正量αの2倍以上あると判断する(ステップS57にてYes)まで、ステップS54〜S58が切断番号i順に繰り返される。また、カウンタcnt0〜2がインクリメントされる度に、合計線分長Lcは、ステップS56で算出した線分の長さが加算されて更新される。尚、図17に示すように、カウンタcnt1は、カウント値が切断終了点の切断番号と一致するまでインクリメントされるとゼロクリアされる(ステップS72にてYes、ステップS73)。カウンタcnt2も、カウンタcnt1と同様に、カウント値が切断終了点の切断番号と一致するとゼロクリアされる(ステップS75にてYes、ステップS76)。これにより、カウンタcnt1,2は、切断開始点の切断番号と対応するように設定されるため、切断ラインの全長(全周)にわたって、間断なく鈍角連続領域を特定することができる。
【0068】
前記鈍角連続領域の合計線分長Lcが伸縮補正量αの2倍以上ある場合(ステップS57にてYes)、制御回路61は、切断開始点及び切断終了点を、特定した鈍角連続領域内の線分に設定する(ステップS59、S60)。即ち、ステップS59では、例えば鈍角連続領域の始点から線分に沿って伸縮補正量αの分、移動させた位置のXY座標が求められる。従って、図12(a)(b)の切断ラインBにおいて、θ1、θ2、θ3が何れも鈍角であることから、頂点P0からαの距離にある「×」印の位置のXY座標が求められる。次いで、ステップS60では、「×」印の位置を、新たな切断開始点及び切断終了点とすべく、データ並べ替え処理が行われる。ステップS60のデータ並べ替え処理は、前述したステップS27でのデータ並べ替え処理と同様、ステップS31〜S41が実行される(図15参照)。この結果、RAM63の並び替えバッファに、ステップS59で求めた位置P0´,Pn´に変更された切断開始点及び切断終了点が記憶される(ステップS32、S40)。また、図12(a)の各頂点P1〜Pn−1について、図12(b)にP1´〜Pn−1´で示すように並び替えたデータが記憶される(ステップS33〜S39)。そして、RAM63のデータバッファのデータは、並び替えバッファに記憶されたP0´〜Pn´の座標点データで書き換えることにより更新される(ステップS41)。これにより、鈍角連続領域設定処理を終了して、全体の処理を終える。
【0069】
尚、鈍角連続領域設定処理において、鈍角が2つ以上連続して検出されない場合、ステップS52〜S55、S61、S62が繰り返し実行される。そして、切断ライン上に鈍角連続領域が存在しない場合には(ステップS62にてYes)、切断開始点及び切断終了点を変更することなく、全体の処理は終了する。
上記した切断データ処理プログラムでは、切断開始点及び切断終了点が一致する閉じた形状を被切断物6から切抜く場合で、且つ切断開始点及び切断終了点が特定位置にある場合を前提として説明した。従って、例えばステップS11の前に、切断データに基づき、切断開始点及び切断終了点が特定位置で一致するか否かを判断し、一致する場合に当該処理を実行すればよい。また、上記したように、制御回路61は、切断データを参照して切断ラインの切断開始点及び切断終了点の位置を抽出する抽出処理を実行すると共に、切断開始点及び切断終了点の位置を前記特定位置以外の切断ライン上の位置に変更する設定処理を実行する(前記ステップS12、S31〜S41等参照)。
【0070】
次に、切断装置1の作用について説明する。
切断装置1において被切断物6の切断開始前の状態では、カッタホルダ5が上昇位置に移動されている(図5参照)。この状態で、ユーザは、被切断物6を粘着層10aに貼り付けるようにして保持シート10に保持させる。そして、保持シート10を、切断装置1の開口部2aからセットする。ここで、ユーザは、例えば上記した切断開始点及び切断終了点の位置を変更した後の切断ラインAの切断データを選択する。そして、操作スイッチ65が操作されると、制御回路61は、その操作信号に基づいて切断動作を開始する。
【0071】
切断動作にあっては、カッタ4の刃先4cを、被切断物6の切断開始点P0´(図11(b)参照)に移動させるべく、Y軸モータ15とX軸モータ26を駆動させる。そして、切断開始点P0´上にカッタ4を移動させた状態で、ソレノイド57の駆動により、押圧部材56で被切断物6を押圧する。また、Z軸モータ34を駆動させて、カッタホルダ5を下降位置に移動させ、カッタ4の刃先4cを被切断物6の切断開始点P0´に貫通させる。そして、カッタ4を、Y軸モータ15とX軸モータ26の駆動により、頂点P1´の座標へ向けて相対的に移動させ、線分A1´に沿って被切断物6を切断する。続く線分A2´は、先の線分A1の頂点P1´を始点として、線分A1と同様の切断が連続的に実行される。こうして、線分A2´〜A5´についても、順次連続して切断が行われることで、「長方形」の切断ラインAを切断する。
【0072】
切断を終了する際、制御回路61は、切れ残りが生じないように切断終了点P5´の位置補正を行う。即ち、カッタ4の刃先4cが、切断終了点P5´を越えて線分A5´の延長上を伸縮補正量αだけ移動するように各モータ15,26を制御する。この場合、伸縮補正量αを加味した位置補正後の切断終了点P5´は、線分A1´上にある。つまり、切断開始点P0´と位置補正後の切断終了点P5´との間は切断ラインが重複している。このため、切れ残りが生じることが無い。
切断開始点及び切断終了点の位置変更後の切断ラインBを切断する場合も、同様に切れ残りが生じないように切断することができる。即ち、図12(b)に示すように、新たな切断開始点P0´及び切断終了点Pn´とされた「×」印は、鈍角連続領域内の線分B1´上に位置する。このとき、伸縮補正量αを加味した位置補正後の切断終了点Pn´は、線分B1´上の切断開始点P0´よりも伸縮補正量αだけ右方(紙面右方)にずれた位置にある。つまり、切断開始点P0´と位置補正後の切断終了点Pn´との間は切断ラインが重複している。このため、切れ残りが生じることが無い。
【0073】
尚、切断時において、ソレノイド57の駆動により被切断物6を接触部56fで押圧すると共に、保持シート10における粘着層10aの粘着力で被切断物6をずれないよう保持することができる。また、この切断の際、押圧部材56は被切断物6に対して相対移動するが、押圧部材56の接触部56fが低摩擦係数の材料で構成されているため、接触部56fと被切断物6との間で生じる摩擦力を極力低減させることができる。よって、当該摩擦力に起因する被切断物6のずれを防止して被切断物6をより確実に保持することができ、正確な切断ラインを形成することができる。
【0074】
以上のように本実施形態の制御回路61は、切断データから、被切断物6の切断ラインにおける切断開始点の位置と切断終了点の位置とを抽出する抽出手段、及び切断開始点の位置及び切断終了点の位置を前記特定位置以外の切断ライン上の位置に変更する設定手段として機能する。
これによれば、特定位置にある切断開始点及び切断終了点は、設定手段によって、特定位置以外の切断ライン上の位置へ変更される。このように、切断開始点及び切断終了点は、設定手段による位置変更後においても切断ライン上にあることから、被切断物6を余分に切断することなく、且つ切れ残りが生じないように切断することができる。
【0075】
前記設定手段は、切断開始点及び切断終了点を、複数の線分A1〜A4のうち何れかの線分A2の中間部の位置P0´(P5´)に設定する。これによれば、例えば切断終了点P5´を越えてカッタ4を余分に移動させたとしても、当該線分A2に沿って本来の切断ライン上を移動するだけなので、被切断物6を余分に切断することがない。
前記設定手段は、切断開始点及び切断終了点を、隣り合う線分のなす角度θが所定の閾値T以上である鈍角が連続する鈍角連続領域内の線分に設定する。従って、図12(b)の切断終了点Pn´を越えてカッタ4を余分に移動させたとしても、被切断物6を余分に切断することがない。
【0076】
前記設定手段は、線分上に設定された切断終了点について、当該線分に沿って切断ラインが重複するように延長させる位置補正を行う。また、前記位置補正は、切断終了点の代わりに、切断開始点について行ってもよい。これにより、当該線分に沿って切断ラインが重複するように延長させるため、切断開始点と切断終了点との間における切れ残りを確実に無くすことができる。
前記設定手段は、算出手段としての制御回路61により各線分A1〜A4の長さを算出し、所定の長さ以上の線分A2に対して、切断開始点及び切断終了点を設定した。従って、例えば前記の位置補正を行うことで、切断終了点P5´を越えてカッタ4を余分に移動させたとしても、被切断物6を余分に切断することがない。
【0077】
<第2実施形態>
図19は、本発明の第2実施形態を示すものであり、第1実施形態と異なるところを説明する。尚、第1実施形態と同一部分には同一符号を付している。
図19に示すパーソナルコンピュータ(PC80と称す)は、上記した切断データを処理する切断データ処理装置として構成されている。即ち、PC80の制御回路81は、コンピュータ(CPU)を主体に構成されており、ROM82、RAM83、EEPROM84が接続されている。また、PC80には、ユーザが各種の指示や選択、入力の操作を行うためのキーボードやマウス等からなる入力部85が接続されると共に、ユーザに対して必要なメッセージ等の表示を行う表示部(例えばLCD)86が設けられる。
【0078】
PC80は、切断装置1に対して有線接続又は無線接続するための通信部87を備えている。通信部87は、例えばケーブル87aを介して切断装置1の通信部79に接続されている。これにより、PC80と切断装置1との間で、切断データを含むデータの授受が可能である。制御回路(制御手段)81は、PC80全体の制御を司り、前記切断データ処理プログラム等を実行する。ROM82には、切断データ処理プログラムや、閾値T、伸縮補正テーブル等が記憶されている。RAM83は、各種処理に必要なデータやプログラムが一時的に記憶されるもので、第1実施形態と同様に、記憶領域としてデータバッファ及び並び替えバッファを有する。EEPROM84には、各種の切断データが記憶されている。
【0079】
そして、制御回路81は、EEPROM84の切断データを読み込んで、切断データ処理プログラムの処理、つまり図13〜図17で示したフローチャートの処理を実行する。これにより、第1実施形態と同様に、切断データの切断開始点の位置及び切断終了点の位置を前記特定位置以外の切断ライン上の位置に変更する。変更後の切断データは、EEPROM84に上書きされて更新される。
以上のように、制御回路81は、第1実施形態の制御回路61と同様、抽出手段及び設定手段として構成されている。従って、切断データを、被切断物6を余分に切断することなく、且つ切れ残りが生じないように切断することができるデータに変更することができる等、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0080】
尚、本発明は上記しかつ図面に示す実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。本発明は、上記したカッティングプロッタとしての切断装置1に限られず、切断機能を備えた各種の装置に適用できるものである。
制御回路61は、切断の際、切れ残りが生じないように切断終了点の位置補正を行い、切断ラインが重複するように制御するが、これに限定されるものではない。即ち、切断データ処理プログラムの処理において、切断開始点と切断終了点を新たに設定する際、例えばステップS40に代えて、前記の位置補正後の切断終了点を記憶させる。これによれば、当該切断データは、切断開始点と切断終了点は、位置補正により一致しないが、何れも本来の切断ライン上にあることから、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0081】
切断装置1やPC80における記憶手段に記憶した切断データ処理プログラムを、USBメモリ、CD−ROM、フレキシブルディスク、DVD、フラッシュメモリ等、コンピュータで読取り可能な記録媒体に記録してもよい。この場合、前記記録媒体を、種々のデータ処理装置のコンピュータにより読み込んで実行させることにより、上記実施形態と同様の作用及び効果を奏する。
【符号の説明】
【0082】
A〜C 切断ライン
1 切断装置
4 切断刃
6 被切断物
61,81 抽出手段、設定手段、算出手段
80 切断データ処理装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断データに基づいて切断刃と被切断物とを相対的に移動させることにより、前記被切断物を所望の形状に切断する切断装置、切断データ処理装置、切断データ処理プログラム及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば紙等のシートを、切断データに基づき自動的に切断するカッティングプロッタが知られている。前記カッティングプロッタは、紙等のシートを、駆動機構のローラで上下方向から挟んで第1方向へ移動させると共に、切断刃を有するキャリッジを前記第1方向と直交する第2方向へ移動させて前記シートを切断する。
例えば、シートから長方形の形状を切り抜く場合、1つの頂点を切断開始点として切断刃の刃先を圧接させる。この状態で、切断刃を、4辺の切断ラインをなぞるようにして前記第1方向及び第2方向へ相対移動させ、切断終了点となる元の頂点(即ち、切断開始点)でシートから離間させる。このように、切断開始点と切断終了点が一致する閉じた形状を切断する場合、切断刃の位置決め精度の影響で、切断開始点と切断終了点との間に切れ残り部分が生じる場合がある。また、シートの材質によっても、切断開始点と切断終了点との間に切れ残り部分が生じる場合がある。
【0003】
そこで、切断データについて、切断開始点からの切断方向とは逆方向の延長上から切断を開始し、切断終了点を越えて切断するように補正した切断制御方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。これによれば、補正後の切断データに基づいて、シートを、切断開始時と切断終了時に余分に切断して、切れ残りが生じないように切り抜くことができる。
尚、切断開始点及び切断終了点は、通常、上記のように切断ラインにおける隣り合う線分の頂点、即ち、切断ラインが長方形や多角形である場合、多角形の辺の交点といった特定の位置(以下、特定位置と称す)に設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−171197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のカッティングプロッタでは、シートを切断開始点及び切断終了点にて余分に切断するため、次のような問題がある。例えばシートから長方形を切り抜く場合、切断開始時には、長方形の外側から切り込みを開始し、切断終了時には、切断開始点を越えて外側まで余分に切断する。このため、切り抜いた長方形ではなく、長方形を除いた外側の部分を完成品として使用したい場合には、完成品に余分な切り込みが入ってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、被切断物を余分に切断することなく、且つ切れ残りが生じないように切断することができる切断装置、切断データ処理装置、切断データ処理プログラム及び記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明の請求項1の切断装置は、切断データに基づいて切断刃と被切断物とを相対的に移動させることにより、前記被切断物を所望の形状に切断するものであって、前記切断データから、前記被切断物の切断ラインにおける切断開始点の位置と切断終了点の位置とを抽出する抽出手段と、前記切断開始点及び前記切断終了点が一致する閉じた形状を前記被切断物から切抜く場合、前記抽出手段で抽出した前記切断開始点の位置及び前記切断終了点の位置が前記切断ラインの特定位置にあるとき、前記切断開始点の位置及び前記切断終了点の位置を前記特定位置以外の前記切断ライン上の位置に変更する設定手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、抽出手段によって、切断データから切断開始点及び切断終了点を抽出する。そして、特定位置にある切断開始点及び切断終了点は、設定手段によって、特定位置以外の切断ライン上の位置へ変更される。このように、切断開始点及び切断終了点は、設定手段による位置変更後においても切断ライン上にあることから、被切断物を余分に切断することがなく、且つ切れ残りが生じないように切断することができる。
【0009】
請求項2の切断装置は、請求項1の発明において、前記切断ラインは、連続した複数の線分を含み、前記設定手段は、前記切断開始点及び前記切断終了点を、前記複数の線分のうち何れかの線分の中間部の位置に設定することを特徴とする。
請求項3の切断装置は、請求項1又は2の発明において、前記切断ラインは、連続した複数の線分を含み、前記設定手段は、前記切断開始点及び前記切断終了点を、隣り合う前記線分のなす角度が所定の閾値以上である鈍角が連続する鈍角連続領域内の線分に設定することを特徴とする。
【0010】
請求項4の切断装置は、請求項2又は3の発明において、前記設定手段は、前記線分上に設定された前記切断開始点又は前記切断終了点について、当該線分に沿って前記切断ラインが重複するように延長させる位置補正を行うことで、切れ残りが生じないように切断することを特徴とする。
請求項5の切断装置は、請求項2から4までの何れかの発明において、前記設定手段は、前記複数の線分の長さを夫々算出する算出手段を備え、前記算出手段で算出された前記複数の線分のうち所定の長さ以上の線分に対して、前記切断開始点及び前記切断終了点を設定することを特徴とする。
【0011】
請求項6の切断データ処理装置は、切断刃と被切断物とを相対的に移動させることにより前記被切断物を所望の形状に切断する切断装置のための切断データを処理するものであって、前記切断データから、前記被切断物の切断ラインにおける切断開始点の位置と切断終了点の位置とを抽出する抽出手段と、前記切断開始点及び前記切断終了点が一致する閉じた形状を前記被切断物から切抜く場合、前記抽出手段で抽出した前記切断開始点の位置及び前記切断終了点の位置が前記切断ラインの特定位置にあるとき、前記切断開始点の位置及び前記切断終了点の位置を前記特定位置以外の前記切断ライン上の位置に変更する設定手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、抽出手段によって、切断データから切断開始点及び切断終了点を抽出する。そして、特定位置にある切断開始点及び切断終了点は、設定手段によって、特定位置以外の切断ライン上の位置へ変更される。このように、切断データ処理装置の処理において、切断開始点及び切断終了点は、設定手段による位置変更後においても切断ライン上にある。このため、設定手段により変更された切断データに基づいて切断装置で被切断物を切断するとき、被切断物を余分に切断することがなく、且つ切れ残りが生じないように切断することができる。
【0013】
請求項7記載の切断データ処理装置は、請求項6の発明において、前記切断ラインは、連続した複数の線分を含み、前記設定手段は、前記切断開始点及び前記切断終了点を、前記複数の線分のうち何れかの線分の中間部の位置に設定することを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の切断データ処理装置は、請求項6又は7の発明において、前記切断ラインは、連続した複数の線分を含み、前記設定手段は、前記切断開始点及び前記切断終了点を、隣り合う前記線分のなす角度が所定の閾値以上である鈍角が連続する鈍角連続領域内の線分に設定することを特徴とする。
【0015】
請求項9記載の切断データ処理装置は、請求項7又は8の発明において、前記設定手段は、前記線分上に設定された前記切断開始点又は前記切断終了点について、当該線分に沿って前記切断ラインが重複するように延長させる位置補正を行うことで、切れ残りが生じないように切断することを特徴とする。
【0016】
請求項10記載の切断データ処理装置は、請求項7から9の何れかの発明において、前記設定手段は、前記複数の線分の長さを夫々算出する算出手段を備え、前記算出手段で算出された前記複数の線分のうち所定の長さ以上の線分に対して、前記切断開始点及び前記切断終了点を設定することを特徴とする。
【0017】
請求項11の切断データ処理プログラムは、切断データに基づいて切断刃と被切断物とを相対的に移動させることにより、前記被切断物を所望の形状に切断する切断装置のコンピュータに実行させるものであって、前記コンピュータに、前記切断データから、前記被切断物の切断ラインにおける切断開始点の位置と切断終了点の位置とを抽出する抽出処理と、前記切断開始点及び前記切断終了点が一致する閉じた形状を前記被切断物から切抜く場合、前記抽出処理で抽出した前記切断開始点の位置及び前記切断終了点の位置が前記切断ラインの特定位置にあるとき、前記切断開始点の位置及び前記切断終了点の位置を前記特定位置以外の前記切断ライン上の位置に変更する設定処理と、を実行させる。
【0018】
上記構成によれば、抽出処理によって、切断データから切断開始点及び切断終了点を抽出する。そして、特定位置にある切断開始点及び切断終了点は、設定処理によって、特定位置以外の切断ライン上の位置へ変更される。このように、切断データ処理プログラムによって、切断開始点及び切断終了点は、設定処理による位置変更後においても切断ライン上にある。このため、設定処理による変更された切断データに基づいて切断装置で被切断物を切断するとき、被切断物を余分に切断することがなく、且つ切れ残りが生じないように切断することができる。
請求項12の記録媒体は、請求項11に記載の切断データ処理プログラムを切断装置のコンピュータに読取り可能に記録したものである。よって、上記した請求項11の発明と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の切断装置によれば、抽出手段によって、切断データから切断開始点及び切断終了点を抽出する。そして、特定位置にある切断開始点及び切断終了点は、設定手段によって、特定位置以外の切断ライン上の位置へ変更される。このように、切断開始点及び切断終了点は、設定手段による位置変更後においても切断ライン上にあることから、被切断物を余分に切断することがなく、且つ切れ残りが生じないように切断することができる。
【0020】
請求項2の切断装置によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、設定手段によって、切断開始点及び切断終了点を線分の中間部の位置に設定した。従って、切断終了点を越えて切断刃を余分に移動させることができる。
請求項3の切断装置によれば、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、設定手段によって、切断開始点及び切断終了点を鈍角連続領域内の線分に設定した。従って、切断終了点を越えて切断刃を余分に移動させることができる。
【0021】
請求項4の切断装置によれば、請求項2又は3に記載の発明の効果に加え、設定手段によって、線分上に設定された切断開始点又は切断終了点について位置補正を行う。これにより、当該線分に沿って切断ラインが重複するように延長するので、切断開始点と切断終了点との間における切れ残りを確実に無くすことができる。
請求項5の切断装置によれば、請求項2から4までの何れかの発明の効果に加え、算出手段により各線分の長さを夫々算出して、所定の長さ以上の線分に対して切断開始点及び切断終了点を設定することができる。従って、確実に、切断終了点を越えて切断刃を余分に移動させることができる。
【0022】
請求項6の切断データ処理装置によれば、抽出手段によって、切断データから切断開始点及び切断終了点を抽出する。そして、特定位置にある切断開始点及び切断終了点は、設定手段によって、特定位置以外の切断ライン上の位置へ変更される。このように、切断データ処理装置の処理において、切断開始点及び切断終了点は、設定手段による位置変更後においても切断ライン上にある。このため、設定手段により変更された切断データに基づいて切断装置で被切断物を切断するとき、被切断物を余分に切断することがなく、且つ切れ残りが生じないように切断することができる。
【0023】
請求項7記載の切断データ処理装置によれば、請求項6に記載の発明の効果に加え、請求項2の発明の効果と同様の効果を奏する。
請求項8記載の切断データ処理装置によれば、請求項6又は7に記載の発明の効果に加え、請求項3の発明の効果と同様の効果を奏する。
請求項9記載の切断データ処理装置によれば、請求項7又は8に記載の発明の効果に加え、請求項4の発明の効果と同様の効果を奏する。
請求項10記載の切断データ処理装置によれば、請求項7から9の何れかに記載の発明の効果に加え、請求項5の発明の効果と同様の効果を奏する。
【0024】
請求項11の切断データ処理プログラムによれば、抽出処理によって、切断データから切断開始点及び切断終了点を抽出する。そして、特定位置にある切断開始点及び切断終了点は、設定処理によって、特定位置以外の切断ライン上の位置へ変更される。このように、切断データ処理プログラムによって、切断開始点及び切断終了点は、設定処理による位置変更後においても切断ライン上にある。このため、設定処理による変更された切断データに基づいて切断装置で被切断物を切断するとき、被切断物を余分に切断することがなく、且つ切れ残りが生じないように切断することができる。
請求項12の記録媒体は、請求項11に記載の切断データ処理プログラムを切断装置のコンピュータに読取り可能に記録したものである。よって、上記した請求項11の発明と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態における切断装置の内部構造を示す斜視図
【図2】切断装置の平面図
【図3】カッタホルダの斜視図
【図4】カッタを下降させた状態で示すカッタホルダの正面図
【図5】カッタを上昇させた状態で示すカッタホルダの断面図
【図6】図4のVI−VI線に沿う断面図
【図7】ギヤ部を拡大して示す正面図
【図8】切断時におけるカッタ先端の近傍部の拡大図
【図9】切断時におけるカッタホルダ近傍部の側面図
【図10】電気的構成を示すブロック図
【図11】(a)及び(b)は、被切断物の切断ラインにおける切断開始点(切断終了点)の変更前の位置及び変更後の位置を比較して説明するための図
【図12】切断ラインにおける鈍角連続領域を拡大して示す図
【図13】切断開始点及び切断終了点を変更する場合における全体の処理の流れを示すフローチャート
【図14】切断開始点及び切断終了点を線分の中間位置に変更する場合の処理の流れを示すフローチャート
【図15】データ並び替え処理の流れを示すフローチャート
【図16】切断開始点及び切断終了点を鈍角連続領域に変更する場合の処理の流れを示すフローチャート
【図17】着目する3点の設定処理の流れを示すフローチャート
【図18】切断ラインでカウントされる3点を説明するための拡大図
【図19】本発明の第2実施形態を示す図10相当図
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図1〜図18を参照しながら説明する。
図1に示すように、切断装置1は、筐体としての本体カバー2と、本体カバー2内に配設されたプラテン3と、カッタホルダ5とを備えると共に、カッタホルダ5のカッタ4(図5参照)と被切断物6とを相対的に移動させるための第1及び第2移動手段7,8を備えている。本体カバー2は横長な矩形箱状をなしており、前面部には、プラテン3上面部に被切断物6を保持した保持シート10をセットするための横長な開口部2aが形成されている。尚、以下の説明では、切断装置1に対しユーザが位置する側を前方とし、その反対側を後方とする。そして、前後方向をY方向とし、Y方向と直交する左右方向をX方向とする。
【0027】
本体カバー2の右側には、ユーザに対して必要なメッセージ等の表示を行う表示手段としての液晶ディスプレイ(LCD)9が設けられると共に、ユーザが各種の指示や選択、入力の操作を行うための複数の操作スイッチ65(図10参照)が設けられている。
前記プラテン3は、前後一対の板材3a,3bからなり、上面部が水平面たるXY平面をなすように構成されている。プラテン3には、被切断物6を保持する保持シート10が載置されるようにセットされ、被切断物6の切断の際、保持シート10をプラテン3で受ける。詳しくは後述するが、保持シート10の上面には、左右両方の縁部10bを除いた部分に粘着剤が塗布された粘着層10aが形成されており、粘着層10aに被切断物6が貼り付けられて保持される。
【0028】
前記第1移動手段7は、プラテン3の上面側で保持シート10をY方向(第1方向)へ移動させるものである。即ち、切断装置1における左右の側壁部11a,11bには、プラテン3の板材3a,3bの間に位置させて、駆動ローラ12とピンチローラ13が設けられている。駆動ローラ12とピンチローラ13は、X方向に延びて、側壁部11a,11bに対して回動可能に支持されている。また、駆動ローラ12とピンチローラ13は、前記XY平面に対して平行で、且つ上下方向に並ぶように配置されている。下側が駆動ローラ12で、上側がピンチローラ13である。図2に示すように、右側壁部11bには、駆動ローラ12の右側に位置させて、クランク状の第1取付フレーム14が設けられている。取付フレーム14の外側には、Y軸モータ15が固定されている。Y軸モータ15は例えばステッピングモータから構成され、回転軸15aは第1取付フレーム14を貫通しており、先端部にギヤ部16aを有する。駆動ローラ12の右端部には、ギヤ部16aと噛合するギヤ部16bが固着されており、これらギヤ部16a、16bにより第1減速ギヤ機構16が構成されている。前記ピンチローラ13は、左右の側壁部11a,11bに形成されたガイド溝17b(図1に右側の溝17bのみ図示)により上下方向へ移動可能にガイドされている。左右の側壁部11a,11bには、ガイド溝17bを外側から囲うバネ収容部18a,18bが夫々設けられている。ピンチローラ13は、バネ収容部18a,18bに収容された図示しない圧縮コイルバネにより下方へ付勢されている。ピンチローラ13には、保持シート10の左右両方の縁部10bに接触して押圧する押圧部13aが設けられている。押圧部13aは、ピンチローラ13の他の部分よりも外径が少し大きく形成されている。
【0029】
ここで、駆動ローラ12とピンチローラ13は、前記圧縮コイルバネの付勢力により、保持シート10を上下方向から押圧挟持する(図9参照)。そして、Y軸モータ15を正転駆動、或は逆転駆動させると、その回転運動が第1減速ギヤ機構16を介して駆動ローラ12に伝わることで、保持シート10を被切断物6と共に後方或いは前方へ搬送させる。これら駆動ローラ12、ピンチローラ13、Y軸モータ15、第1減速ギヤ機構16、前記圧縮コイルバネ等は、第1移動手段7を構成する。
【0030】
前記第2移動手段8は、カッタホルダ5を支持するキャリッジ19を、X方向(第2方向)へ移動させるものである。詳細には、図1、図2に示すように、左右の側壁部11a,11b間には、後端部に位置させて、左右方向に延びるガイド軸20とガイドフレーム21が配設されている。ガイド軸20は、駆動ローラ12及びピンチローラ13と平行に配設されている。ガイド軸20は、プラテン3の直ぐ上側で、キャリッジ19下部(後述の貫通孔部22)を貫通している。ガイドフレーム21は、前縁部21aと後縁部21bが下方へ折り返された断面コ字状をなしている。前縁部21aはガイド軸20と平行に配設されている。ガイドフレーム21は、前縁部21aでキャリッジ19上部(後述の被ガイド体23,23)をガイドするようになっており、側壁部11a,11bの上端部で螺子21cにより固定されている。
【0031】
図2に示すように、切断装置1の後部には、右側壁部11bに第2取付フレーム24が設けられると共に、左側壁部11aに補助フレーム25が設けられている。第2取付フレーム24には、X軸モータ26及び第2減速ギヤ機構27が配設されている。X軸モータ26は、例えばステッピングモータからなり、第2取付フレーム24における前側の取付片24aの前面部に固定されている。X軸モータ26の回転軸26aは取付片24aを貫通しており、先端部に、第2減速ギヤ機構27と噛合するギヤ部26bを有する。第2減速ギヤ機構27にはプーリ28が設けられており、図2において左側の補助フレーム25にプーリ29が回転自在に取付けられている。これらプーリ28とプーリ29との間には、キャリッジ19の後端部(後述の取付部30)に連結された無端状のタイミングベルト31が掛装されている。
【0032】
ここで、X軸モータ26を正転駆動、或は逆転駆動させると、その回転運動が第2減速ギヤ機構27及びプーリ28を介してタイミングベルト31に伝わることで、キャリッジ19をカッタホルダ5ごと左方或いは右方へ移動させる。こうして、キャリッジ19とカッタホルダ5は、被切断物6を搬送するY方向と直交するX方向に移動する。上記のガイド軸20、ガイドフレーム21、X軸モータ26、第2減速ギヤ機構27、プーリ28,29、タイミングベルト31、キャリッジ19等は、第2移動手段8を構成する。
【0033】
前記カッタホルダ5は、キャリッジ19に対して前面側に配置され、Z方向たる上下方向(第3方向)への移動が可能に支持されている。これらキャリッジ19及びカッタホルダ5の構成について、図3〜図7も参照しながら説明する。
【0034】
図2、図3に示すように、キャリッジ19は、後面側が開放された略矩形箱状をなす。キャリッジ19の上壁部19aには、平面視にて円弧状をなすリブであって、上方へ突出する前後一対の被ガイド体23,23が一体に設けられている。被ガイド体23,23は、ガイドフレーム21の前縁部21aを挟むよう対称的に配置されている。図4にも示すように、キャリッジ19における底壁部19bの下側には、ガイド軸20に挿通される左右一対の貫通孔部22,22が下方へ張出すように形成されている。また、キャリッジ19の底壁部19bには、前記タイミングベルト31に連結される取付部30(図5、図6参照)が後方へ突出するように設けられている。こうして、キャリッジ19は、貫通孔部22,22に挿通されるガイド軸20によって左右方向へ摺動可能に支持されると共に、被ガイド体23,23で挟まれるガイドフレーム21によってガイド軸20の回りに回転しないように支持される。
【0035】
図3、図4、図5、図9等に示すように、キャリッジ19の前壁部19cには、前方へ延出する上下一対の支持部32a,32bが一体に設けられている。キャリッジ19には、支持部32a,32bを夫々貫通する左右一対の支持軸33a,33bが上下動自在に支持されている。キャリッジ19内には、例えばステッピングモータからなるZ軸モータ34が、後方から収容されるように配置されている。Z軸モータ34の回転軸34aは(図3、図9参照)、キャリッジ19の前壁部19cを貫通しており、先端部にギヤ部35を有する。また、図5、図6、図9に示すように、キャリッジ19には、その前壁部19c中央からやや下寄りの部位を前後に貫通するギヤ軸37が設けられている。ギヤ軸37には、前壁部19cの前側で前記ギヤ部35に噛合するギヤ部38が回転可能に装着されると共に、ギヤ軸37前端部の止め輪(図示略)により抜け止めされている。ギヤ部38とギヤ部35で第3減速機構41を構成する(図3、図9参照)。
【0036】
ギヤ部38には、図7に示すように、渦巻き溝42が形成されている。渦巻き溝42は、第1端部42aから第2端部42bへ向って右方向に旋回するにつれ中心に近づく渦巻き状をなすカム溝である。渦巻き溝42には、詳しくは後述するが、カッタホルダ5と一体的に上下移動する係合ピン43が係合する(図5、図6参照)。ここで、Z軸モータ34を正転駆動、或は逆転駆動させると、ギヤ部35を介してギヤ部38が回転する。ギヤ部38が回転することにより、渦巻き溝42に係合する係合ピン43が上下方向に摺動する。これに伴い、カッタホルダ5を支持軸33a,33bごと上方或いは下方へ昇降させる。この場合、カッタホルダ5は、係合ピン43が渦巻き溝42の第1端部42aに位置した上昇位置(図5、図7参照)と、係合ピン43が第2端部42bに位置した下降位置(図6、図7参照)との間で移動する。上記の渦巻き溝42を有する第3減速機構41、Z軸モータ34、係合ピン43、支持部32a,32b、支持軸33a,33b等は、カッタホルダ5を上下方向へ移動させる第3移動手段44を構成する。
【0037】
カッタホルダ5は、前記支持軸33a,33bに設けられるホルダ本体45と、カッタ4(切断刃)を有してホルダ本体45に上下動可能に保持される可動筒部46とを備えると共に、被切断物6を押圧するための押圧装置47を備えている。
即ち、図3、図4、図5、図9等に示すように、ホルダ本体45は、上端部45aと下端部45bが後方へ折り返され全体としてコ字状をなしている。ホルダ本体45の上端部45aと下端部45bは、支持軸33a,33bの上下両端部に夫々固定された止め輪48により、支持軸33a,33bに対し移動不能に固定されている。図5、図6に示すように、支持軸33bの中間部には、前記係合ピン43が後向きに設けられた連結部材49が固着されている。こうして、ホルダ本体45、支持軸33a,33b、係合ピン43、及び連結部材49は一体的に構成され、カッタホルダ5は、前記第3移動手段44により係合ピン43に連動して上下方向へ移動する。また、支持軸33a,33bには、支持部32a上面とホルダ本体45の上端部45aとの間に、付勢部材たる圧縮コイルバネ50が夫々外装されている。圧縮コイルバネ50の付勢力により、カッタホルダ5全体がキャリッジ19側に対して上方へ弾性付勢されている。
【0038】
図3、図4に示すように、ホルダ本体45における中間部には、可動筒部46や押圧装置47等を取付けるための取付部材51,52が螺子54a,54bにより夫々固定されている。下側の取付部材52には、可動筒部46を上下動可能に支持する筒状部52a(図5参照)が設けられている。可動筒部46は、筒状部52aの内周面に摺接する径寸法に設定され、上端部には、筒状部52aの上端で支持されるフランジ部46aが径方向外側へ張出すように形成されている。フランジ部46aの上端面にはバネ受け部46bが設けられている。図5、図6に示すように、上側の取付部材51と可動筒部46のバネ受け部46bとの間には、圧縮コイルバネ53が配設されている。圧縮コイルバネ53は、可動筒部46(カッタ4)を下方の被切断物6側に付勢する一方、カッタ4に被切断物6側から上方への力が作用すると、当該付勢力に抗して可動筒部46の上方への移動を許容する。
【0039】
可動筒部46には、その軸線方向に延びるカッタ4が貫通するように配設されている。詳細には、カッタ4は、可動筒部46よりも長尺な丸棒状のカッタ軸4bと、そのカッタ軸4bの下端部に形成された刃部4aとを一体に有する。図8に示すように、刃部4aは略三角形状をなし、最下端の刃先4cが、カッタ軸4bの中心軸線Oから距離dだけ偏心した位置に形成されている。カッタ4は、可動筒部46内部の上下両端部に配設された軸受55(図5参照)により、上下方向の中心軸線O(Z軸)を中心に回動自在に保持されている。こうして、カッタ4は、被切断物6の表面たるXY平面に対して直交するZ方向から刃先4cが圧接する。また、カッタ4は、カッタホルダ5が下降位置へ移動された時に、図8に示すように刃先4cが保持シート10上の被切断物6を貫通し、且つプラテン3の板材3b上面に到達しない高さに設定してある。一方、カッタ4は、カッタホルダ5が上昇位置へ移動されることに伴い、刃先4cも上方へ移動して被切断物6から離間する(図5参照)。
【0040】
前記取付部材52には、筒状部52aの下端部周縁に、3つのガイド孔部52b〜52d(図3、図4、図5、図9参照)が等間隔で形成されている。そして、筒状部52aの下側には、ガイド孔部52b〜52dに挿通される3つのガイド棒56b〜56dを有する押圧部材56が配置されている。押圧部材56の下面側は、浅底な鉢(ボウル)状(或は緩やかな円形椀状)をなす押圧部本体56aとされており、周縁上部には、等間隔をなす前記ガイド棒56b〜56dが一体に設けられている。押圧部材56は、ガイド孔部52b〜52dにてガイド棒56b〜56dがガイドされることにより、上下方向への移動が可能である。押圧部本体56aの中央部には、上下方向に延びて前記刃部4aを下方へ突出させるための貫通孔56eが形成されている。そして、押圧部本体56aの下端面は、刃部4aの周囲で被切断物6に接触する接触部56fとされている。接触部56fは、円環上をなす水平な平坦面であって、被切断物6に対して面接触する。接触部56fは、例えばテフロン(登録商標)等のフッ素樹脂で構成されることで、比較的摩擦係数が低く、被切断物6に対して滑り易くなっている。
【0041】
図3、図4、図5、図9等に示すように、押圧部本体56aの周縁上部には、前方へ延出する案内部56gが一体に設けられている。案内部56gは、接触部56fに対して前側で且つ上方に位置し、当該接触部56f側へ後方に向けて下方に傾斜した傾斜面56gaを含んで構成されている。これにより、被切断物6を保持した保持シート10が、カッタホルダ5に対して後方へ移動する際、案内部56gは、被切断物6を接触部56fに対して引っ掛からないように下側へ案内する。
【0042】
前記取付部材52には、筒状部52aの前側であって案内部56gの上方に位置してソレノイド57用の前側取付部52eが一体に設けられている。ソレノイド57は、押圧部材56を上下動させて被切断物6を押圧するためのアクチュエータであり、押圧部材56並びに後述の制御回路61と共に押圧装置47(押圧手段)を構成する。ソレノイド57は、前側取付部52eに下向きに取付けられており、プランジャ57aの先端部は案内部56g上面に固定されている。詳しくは後述するように、カッタホルダ5の下降位置でソレノイド57が駆動されると、プランジャ57aと共に押圧部材56が下方へ移動して被切断物6を所定の押圧力で押圧する(図9参照)。これに対して、ソレノイド57の非駆動時には、プランジャ57aが上方に位置して押圧部材56が被切断物6に対する押圧力を解除する。ソレノイド57の非駆動状態でカッタホルダ5が上昇位置へ移動されると(図5の2点鎖線参照)、押圧部材56が被切断物6から完全に離間する。
【0043】
前記保持シート10は、被切断物6を保持するための粘着層10a(図8参照)を有する。被切断物6は、切断装置1にて切断する際、粘着層10aの粘着力と前記押圧装置47の押圧力とによって、保持シート10に対して移動不能に保持される。保持部材としての保持シート10は、例えば、合成樹脂材料からなり、平板矩形状(図1参照)に形成されている。図8に示すように、保持シート10の上側の面(カッタ4との対向面)に、粘着剤が塗布された粘着層10aが形成されている。粘着層10aは、例えば紙、布、樹脂フィルム等のシート状の被切断物6を剥離可能に保持する。粘着層10aの粘着力は、被切断物6を粘着層10aから剥がす際、当該被切断物6が破れることがなく且つ簡単に剥がせるよう比較的小さい値に設定されている。
【0044】
次に、切断装置1の制御系の構成について図10のブロック図を参照しながら説明する。
切断装置1全体の制御を司る制御回路(制御手段)61は、コンピュータ(CPU)を主体に構成されており、ROM62、RAM63、外部メモリ64が接続されている。ROM62には、切断動作を制御するための切断制御プログラム、後述する切断データ処理プログラム、切断角度の閾値等が記憶されている。RAM63には、各種処理に必要なデータやプログラムが一時的に記憶される。外部メモリ64には、複数種類の切断データが記憶されている。
【0045】
制御回路61には、各種の操作スイッチ65の操作信号が入力されると共に、液晶ディスプレイ9の表示を制御する。このとき、ユーザは、液晶ディスプレイ9の表示を見ながら、各種操作スイッチ65を操作することによって、所望する形状の切断データを選択指定する。制御回路61には、切断装置1の開口部2aからセットされた保持シート10を検出するための検出センサ等、各種検出センサ66の検出信号が入力される。また、制御回路61には、Y軸モータ15、X軸モータ26、Z軸モータ34、ソレノイド57を夫々駆動する駆動回路67,68,69,70が接続されている。制御回路61は、切断制御プログラムの実行により前記切断データに基づいて、Y軸モータ15、X軸モータ26、Z軸モータ34、ソレノイド57を制御し、保持シート10上の被切断物6に対する切断動作を自動で実行させる。
【0046】
前記切断データは、複数の線分からなる切断ラインの頂点を夫々XY座標によって示した座標点データを含む。具体的には例えば、図11(a)に示すように、被切断物6に対して、「長方形」を切り抜くとする。長方形の4つの頂点をP0〜P3とし、切断開始点をP0、切断終了点をP4とする。長方形の切断ラインAは、線分A1〜A4からなり、切断開始点P0と切断終了点P4が一致する閉じた切断ラインを構成する。切断データとしては、切断開始点P0、頂点P1、頂点P2、頂点P3、切断終了点をP4の夫々に対応する座標点データを含む5つ(n個)の座標点データを有する。このように、長方形や多角形の閉じた形状を切り抜く場合、切断開始点及び切断終了点は、通常、切断ラインにおける隣り合う線分の頂点(この場合、辺の交点)といった特定の位置に設定される。
【0047】
前記RAM63のデータバッファには、外部メモリ64から受信した上記のn個分の座標点データを含む切断データが記憶される。ここで、本実施形態では、切断データが記憶されるRAM63の記憶領域をデータバッファと称する。これにより、切断装置1における被切断物6の切断時には、RAM63に記憶された切断データに基づいて線分が切断される。例えば図11(a)の切断ラインAでは、座標点データがデータバッファの先頭から頂点P0〜P4の順に記憶されており、線分A1〜A4の順に切断される。このように、切断開始点P0は最初に切断される線分A1の始点、切断終了点P4は最後に切断される線分A4の終点であり、切断開始点P0と切断終了点P4の位置は一致している。そして、制御回路61は後述する抽出手段に相当し、RAM63のデータバッファを参照して該当する切断開始点及び切断終了点の座標点データを抽出する。尚、後述する座標点データの並び替えを行うためのRAM63の記憶領域を並び替えバッファと称し、前記データバッファと区別する。
【0048】
切断装置1では、前記長方形を切断する場合、第1移動手段7による保持シート10(被切断物6)のY方向への移動と、第2移動手段8によるカッタホルダ5のX方向への移動とにより、線分A1の切断開始点P0のXY座標へカッタ4を相対的に移動させる。次いで、第3移動手段44によりカッタ4の刃先4cを被切断物6の切断開始点P0に貫通させて、第1移動手段7及び第2移動手段8により線分A1の終点P1の座標へ向けて相対的に移動させ、線分A1に沿って被切断物6を切断する。続く線分A2は、先の線分A1の終点P1を始点として、線分A1と同様の切断が連続的に実行される。こうして、線分A2〜A4についても、順次連続して切断が行われることで、「長方形」の切断ラインAを切断する。
【0049】
前記ROM62には、切断角度θの閾値Tが記憶されている。ここで、切断角度θとは、例えば図12に示すように、切断ラインを構成する隣り合う線分のなす角度であって、180度よりも小さい角度の方とする。また、閾値Tは、前記切断角度θに対して設定される値であって、所定の値(例えば130度)に設定されている。また、詳しくは後述するように、制御回路61は、切断ラインにおいて、連続する3つの座標点データに基づいて前記切断角度θを算出する。そして、算出結果と閾値Tとを比較することで、切断ラインにおいて閾値T以上の鈍角が連続する鈍角連続領域(図12参照)を特定する。
【0050】
また、ROM62には、被切断物6の材質(伸縮特性)に応じた伸縮補正量が予め設定され、被切断物6の種類ごとに対応付けた伸縮補正テーブルが記憶されている。ここで、伸縮補正量とは、切断時に被切断物6がカッタ4で引っ張られて僅かに伸びてしまうことによる切断不良を防止する為、カッタ4と被切断物6の相対移動量を僅かに増加させる補正移動量のことをいう。被切断物6としては、前述のように各種の材料が用いられるが、布のうち例えばフェルトの伸縮補正量は比較的大きな値に設定され、例えばデニムの伸縮補正量は比較的小さな値に設定されている。切断装置1で被切断物6を切断する際、ユーザは、操作スイッチ65の操作により、被切断物6の種類を入力する。制御回路61は、伸縮補正テーブルを参照して、入力された被切断物6の種類に対応する伸縮補正量を特定する。尚、伸縮補正量については、例えばユーザによる操作スイッチ65の操作により数値を直接入力してもよい。
【0051】
上記のように、切断開始点及び切断終了点は、通常、切断ラインにおける隣り合う線分の頂点といった特定位置(図11(a)のP0及びP4参照)に設定される。この為、カッタ4が切断ラインに沿って被切断物6を切断しても、前述したように、切れ残りが生じたり、又は被切断物6を余分に切断してしまうという問題がある。
【0052】
そこで、制御回路61は、切断装置1のソフトウェア的構成(切断データ処理プログラムの実行)によって、切断開始点及び切断終了点を、特定位置以外の切断ライン上の位置に変更する。即ち、制御回路61は算出手段として、前記座標点データに基づいて、切断ラインを構成する各線分の長さを算出する。ここで、座標点データに対応する点P0,P1,…,Pi,Pi+1を有する図形の場合、Pi(Xi、Yi)を始点、その次のPi+1(Xi+1、Yi+1)を終点とする線分の距離Lは、以下の(1)式で算出される。
L=[(Xi+1−Xi)2+(Yi+1−Yi)2]1/2 ・・・(1)
【0053】
算出した長さLが、所定の長さ以上(例えば伸縮補正量の2倍以上)である場合、制御回路61は、該当する線分の中間点を新たな切断開始点及び切断終了点として設定する。この場合、線分の中間点におけるX座標及びY座標は、次の(2)及び(3)式で表わされる。
X=(Xi+Xi+1)/2 ・・・(2)
Y=(Yi+Yi+1)/2 ・・・(3)
【0054】
一方、切断ラインを構成する各線分の何れも所定の長さに満たない場合、制御回路61は、切断ラインにおいて前記鈍角が連続する鈍角連続領域があるか否かを判断する。そして、切断ラインに鈍角連続領域があるとき、当該鈍角連続領域内の線分に新たな切断開始点及び切断終了点として設定する。こうして、制御回路61は、切断開始点の位置及び切断終了点の位置を前記特定位置以外の切断ライン上の位置に変更する。つまり、制御回路61は設定手段として構成されている。
【0055】
切断開始点及び切断終了点の位置変更に係る具体的な処理手順について、図13〜図16も参照しながら説明する。ここで、図13〜図16のフローチャートは、制御回路61が実行する前記切断データ処理プログラムの処理の流れを示している。
先ず、ユーザが例えば外部メモリ64に記憶されている切断データの中から所望の形状の切断データを選択すると、切断データが外部メモリ64から読み出されてRAM63のメモリに展開される。また、ユーザは操作スイッチ65の操作により、被切断物6の種類(例えばデニム)を入力する。これにより、制御回路61は、伸縮補正テーブルを照合して、入力されたデニムに対応する伸縮補正量αを特定する(ステップS11)。
【0056】
また、制御回路61は、読み出した切断データを参照して、座標点データの数nを取得する(ステップS12)。例えば図11(a)の切断ラインAの切断データの場合、データ数nは、前述のように切断開始点P0から切断終了点P4までカウントした5に設定される。そして、ステップS13では、線分の中間点に切断開始点及び切断終了点を設定するための線分中間点設定処理が行われる(図14参照)。
具体的には、ステップS21では、切断開始点の頂点(i=0)とその次の頂点(i+1)との間の線分の長さを求めるべく、頂点Piの切断順に対応する切断番号iを0に設定する。尚、切断開始点P0及び切断終了点P4が一致するため、切断番号iと前記データ数nは、(i=0、1、2、…、n−1)の関係にある。
【0057】
そして、制御回路61は、切断開始点の頂点P0(X0、Y0)から頂点P1(X1、Y1)までの線分A1の長さLを、(1)式により算出する(ステップS22)。また、制御回路61は、算出した線分A1の長さLが、所定の長さ以上(例えば伸縮補正量αの2倍以上)あるか否かを判断する(ステップS23)。ここで、線分A1の長さLが伸縮補正量αの2倍の長さに満たないと判断した場合(No)、その都度、切断番号iをi=i+1に更新する(ステップS24)。また、線分A2の長さLについても(ステップS25にてNo)、頂点P1(X1、Y1)から頂点P2(X2、Y2)までの長さLが、(1)式により算出される(ステップS22)。こうして、ステップS21〜S25が繰り返し実行されることで、線分A2〜A4についても夫々の長さLが算出されると共に、算出した長さLについて所定の長さ以上か否かが判断される(ステップS23)。
【0058】
例えば、前記ステップS23で、線分A2の長さLが所定の長さ以上あると判断した場合(Yes)、当該線分A2の中間点におけるX座標及びY座標を(2)式と(3)式により求める(ステップS26)。次いで、ステップS27では、線分A2の中間点を、新たな切断開始点及び切断終了点とすべく、データ並べ替え処理つまり切断順を変更するための処理が行われる(図15参照)。
【0059】
データ並べ替え処理では、RAM63の並び替えバッファにおける切断データの切断順に対応する切断番号i´を0に設定する(ステップS31)。そして、切断番号0の切断開始点P0´(図11(b))の位置を、ステップS26で算出した値に設定する(ステップS32)。これにより、並び替えバッファの先頭に、線分A2の中間点の座標点データを記憶する。
また、P0´に続くP1´に対応する頂点として、切断開始点P0´が設定された線分A2の終点P2を指定する(ステップS33)。つまり、切断番号i´をi´=i´+1に更新する一方、前記の切断番号iを、頂点P2に対応する2に更新する。そして、P0´に続きP1´について(ステップS34にてNo)、指定したP2の座標点データが記憶される(ステップS35)。
【0060】
次いで、切断番号iをi=i+1に更新して、次の頂点P3を指定する(ステップS36)と共に、当該頂点P3が、元の切断終了点P4を越えたか否か(つまりi≧n−1か否か)を判断する(ステップS37)。この場合、頂点P3は、元の切断終了点P4を越えていない(No)。このため、頂点P3は、その指定を変更することなく、切断番号i´をi´=i´+1に更新したP2´に対応する頂点として扱われる(ステップS38、S34にてNo)。これにより、P2´について、指定したP3の座標点データが記憶される(ステップS35)。こうして、Piの切断番号iが「切断終了点P4を越えた(ステップS37にてYes)」と判断されるまで、ステップS34〜S38が繰り返し実行される。これにより、並び替えバッファの先頭のP0´に続く頂点P1´,P2´,P3´に、順次頂点P2,P3,P4の座標点データが書き込まれることで頂点P2〜P4のデータの並び替えが行われる。
【0061】
元の切断終了点P4までのデータの並び替えを終え、前記ステップS37でYesと判断されても、頂点P1のデータを並び替える必要がある。そこで、頂点Piの切断番号iを1に設定して(ステップS39)、上記の頂点P2〜P4と同様に、頂点P1の並び替えを行う(ステップS34にてNo、ステップS35)。こうして、全ての頂点P1〜P4ついてデータの並び替えを終了したと判断するまで(ステップS34にてYes)、再度ステップS34〜S38が繰り返し実行される。
【0062】
前記ステップS34で、全ての頂点P1〜P4のデータの並び替えを終えたと判断すると(ステップS34にてYes)、新たな切断終了点P5´に、前記ステップS26で求めた座標点データが書き込まれる(ステップS40)。そして、RAM63のデータバッファのデータは、並び替えバッファに記憶されたP1´〜P5´の座標点データで書き換えることにより更新される(ステップS41)。これにより、線分中間点設定処理を終了する(図13のステップS14にリターンする)。
【0063】
上記したように、線分の中間点に切断開始点及び切断終了点が設定されると(ステップS14にてYes)、全体の処理を終了する。一方、切断ラインを構成する全ての線分について何れも所定の長さに満たないと判断された場合(図14のステップ25にてYes)、切断開始点及び切断終了点は依然として前記特定位置にある(図13のステップS14にてNo)。このような場合、ステップS15において、鈍角連続領域内の線分に新たな切断開始点及び切断終了点を設定するための鈍角連続領域設定処理が行われる(図16参照)。
【0064】
鈍角連続領域設定処理では、先ず切断開始点を始点(i=0)とする線分と、この線分と隣り合う線分との間の角度(切断角度)θを求めるべく、切断番号iを0に設定する(ステップS51)。また、鈍角連続領域内の合計線分長Lcを0に初期化すると共に(ステップS52)、前記線分の始点及び終点をカウントするカウンタcnt0を(図18参照)、現在の切断番号iの値で更新する(ステップS53)。次いで、ステップS54では、角度θの算出に係る3つのカウンタcnt0〜cnt2を順次設定するカウンタ設定処理に移行する(図17参照)。カウンタ設定処理では、ステップS71においてカウンタcnt1をcnt1=cnt0+1に設定する。また、ステップS74においてカウンタcnt2をcnt2=cnt1+1に設定する。尚、ステップS72或はS75では、カウンタcnt1或はcnt2のカウント値が、切断終了点の切断番号と一致するか否かが判断される。もっとも、カウンタcnt0が0の場合、カウンタcnt1は1、カウンタcnt2は2となり、ステップS72或はS75で何れもNoと判断されることから、後述することとする(ステップS55にリターンする)。
【0065】
ステップS55では、カウンタcnt0〜2の夫々のカウント値0〜2に対応する3点P0〜P2について係る角度θを算出する。例えば、図18に示す切断ラインCにおいて、左の頂点P0からP1、P2、…の順に切断される場合、P0、P1間の線分C1と、P1、P2間の線分C2とのなす角度θを、これらの座標データに基づき演算する。制御回路61は、演算により得られた角度θが閾値T未満か否かを判断する。ここで、角度θが閾値T以上の鈍角の場合(ステップS55にてNo)、一対の線分C1、C2のうちカウント値が低い方の線分C1の長さを算出する。即ち、カウンタcnt0,1に対応するP0、P1間の距離を前記(1)式により算出し、該当する角部の頂点P1までの長さを、鈍角連続領域内の合計線分長Lcとして求める(ステップS56)。また、制御回路61は、算出した合計線分長Lcが、所定の長さ以上(例えば伸縮補正量αの2倍以上)あるか否かを判断する(ステップS57)。
【0066】
前記合計線分長Lcが伸縮補正量αの2倍の長さに満たないと判断した場合(No)、切断番号iをi=i+1に更新する(ステップS58)。これにより、判断対象を頂点P1から次の頂点P2へ移すべく、再びステップS54のカウンタ設定処理に移行する(図17参照)。そこで、以下では、前記切断ラインCの如き鈍角が連続する鈍角連続領域を有する切断ラインB(図12参照)を例に説明する。
【0067】
カウンタ設定処理では、前述のようにステップS71及びS72においてカウンタcnt1及びcnt2が1つずつインクリメントされ、その後ステップS55にリターンする。ステップS55では、カウンタcnt0〜2のカウント値1〜3に対応するP1〜P3について、係る一対の線分B2、B3のなす角度θ2を、これらの座標データに基づき演算する。ここで、制御回路61は、演算した角度θ2に基づき閾値T以上の鈍角と判断した場合(ステップS55にてNo)、一対の線分B2、B3のうちカウント値が低いB2の長さを算出する。そして、算出したB2の長さと前回算出した線分長Lc(B1)とを足した線分長の総和として、鈍角連続領域内の合計線分長Lcを更新する(ステップS56)。こうして、鈍角が連続する場合には(ステップS55にてNo)、合計線分長Lcが伸縮補正量αの2倍以上あると判断する(ステップS57にてYes)まで、ステップS54〜S58が切断番号i順に繰り返される。また、カウンタcnt0〜2がインクリメントされる度に、合計線分長Lcは、ステップS56で算出した線分の長さが加算されて更新される。尚、図17に示すように、カウンタcnt1は、カウント値が切断終了点の切断番号と一致するまでインクリメントされるとゼロクリアされる(ステップS72にてYes、ステップS73)。カウンタcnt2も、カウンタcnt1と同様に、カウント値が切断終了点の切断番号と一致するとゼロクリアされる(ステップS75にてYes、ステップS76)。これにより、カウンタcnt1,2は、切断開始点の切断番号と対応するように設定されるため、切断ラインの全長(全周)にわたって、間断なく鈍角連続領域を特定することができる。
【0068】
前記鈍角連続領域の合計線分長Lcが伸縮補正量αの2倍以上ある場合(ステップS57にてYes)、制御回路61は、切断開始点及び切断終了点を、特定した鈍角連続領域内の線分に設定する(ステップS59、S60)。即ち、ステップS59では、例えば鈍角連続領域の始点から線分に沿って伸縮補正量αの分、移動させた位置のXY座標が求められる。従って、図12(a)(b)の切断ラインBにおいて、θ1、θ2、θ3が何れも鈍角であることから、頂点P0からαの距離にある「×」印の位置のXY座標が求められる。次いで、ステップS60では、「×」印の位置を、新たな切断開始点及び切断終了点とすべく、データ並べ替え処理が行われる。ステップS60のデータ並べ替え処理は、前述したステップS27でのデータ並べ替え処理と同様、ステップS31〜S41が実行される(図15参照)。この結果、RAM63の並び替えバッファに、ステップS59で求めた位置P0´,Pn´に変更された切断開始点及び切断終了点が記憶される(ステップS32、S40)。また、図12(a)の各頂点P1〜Pn−1について、図12(b)にP1´〜Pn−1´で示すように並び替えたデータが記憶される(ステップS33〜S39)。そして、RAM63のデータバッファのデータは、並び替えバッファに記憶されたP0´〜Pn´の座標点データで書き換えることにより更新される(ステップS41)。これにより、鈍角連続領域設定処理を終了して、全体の処理を終える。
【0069】
尚、鈍角連続領域設定処理において、鈍角が2つ以上連続して検出されない場合、ステップS52〜S55、S61、S62が繰り返し実行される。そして、切断ライン上に鈍角連続領域が存在しない場合には(ステップS62にてYes)、切断開始点及び切断終了点を変更することなく、全体の処理は終了する。
上記した切断データ処理プログラムでは、切断開始点及び切断終了点が一致する閉じた形状を被切断物6から切抜く場合で、且つ切断開始点及び切断終了点が特定位置にある場合を前提として説明した。従って、例えばステップS11の前に、切断データに基づき、切断開始点及び切断終了点が特定位置で一致するか否かを判断し、一致する場合に当該処理を実行すればよい。また、上記したように、制御回路61は、切断データを参照して切断ラインの切断開始点及び切断終了点の位置を抽出する抽出処理を実行すると共に、切断開始点及び切断終了点の位置を前記特定位置以外の切断ライン上の位置に変更する設定処理を実行する(前記ステップS12、S31〜S41等参照)。
【0070】
次に、切断装置1の作用について説明する。
切断装置1において被切断物6の切断開始前の状態では、カッタホルダ5が上昇位置に移動されている(図5参照)。この状態で、ユーザは、被切断物6を粘着層10aに貼り付けるようにして保持シート10に保持させる。そして、保持シート10を、切断装置1の開口部2aからセットする。ここで、ユーザは、例えば上記した切断開始点及び切断終了点の位置を変更した後の切断ラインAの切断データを選択する。そして、操作スイッチ65が操作されると、制御回路61は、その操作信号に基づいて切断動作を開始する。
【0071】
切断動作にあっては、カッタ4の刃先4cを、被切断物6の切断開始点P0´(図11(b)参照)に移動させるべく、Y軸モータ15とX軸モータ26を駆動させる。そして、切断開始点P0´上にカッタ4を移動させた状態で、ソレノイド57の駆動により、押圧部材56で被切断物6を押圧する。また、Z軸モータ34を駆動させて、カッタホルダ5を下降位置に移動させ、カッタ4の刃先4cを被切断物6の切断開始点P0´に貫通させる。そして、カッタ4を、Y軸モータ15とX軸モータ26の駆動により、頂点P1´の座標へ向けて相対的に移動させ、線分A1´に沿って被切断物6を切断する。続く線分A2´は、先の線分A1の頂点P1´を始点として、線分A1と同様の切断が連続的に実行される。こうして、線分A2´〜A5´についても、順次連続して切断が行われることで、「長方形」の切断ラインAを切断する。
【0072】
切断を終了する際、制御回路61は、切れ残りが生じないように切断終了点P5´の位置補正を行う。即ち、カッタ4の刃先4cが、切断終了点P5´を越えて線分A5´の延長上を伸縮補正量αだけ移動するように各モータ15,26を制御する。この場合、伸縮補正量αを加味した位置補正後の切断終了点P5´は、線分A1´上にある。つまり、切断開始点P0´と位置補正後の切断終了点P5´との間は切断ラインが重複している。このため、切れ残りが生じることが無い。
切断開始点及び切断終了点の位置変更後の切断ラインBを切断する場合も、同様に切れ残りが生じないように切断することができる。即ち、図12(b)に示すように、新たな切断開始点P0´及び切断終了点Pn´とされた「×」印は、鈍角連続領域内の線分B1´上に位置する。このとき、伸縮補正量αを加味した位置補正後の切断終了点Pn´は、線分B1´上の切断開始点P0´よりも伸縮補正量αだけ右方(紙面右方)にずれた位置にある。つまり、切断開始点P0´と位置補正後の切断終了点Pn´との間は切断ラインが重複している。このため、切れ残りが生じることが無い。
【0073】
尚、切断時において、ソレノイド57の駆動により被切断物6を接触部56fで押圧すると共に、保持シート10における粘着層10aの粘着力で被切断物6をずれないよう保持することができる。また、この切断の際、押圧部材56は被切断物6に対して相対移動するが、押圧部材56の接触部56fが低摩擦係数の材料で構成されているため、接触部56fと被切断物6との間で生じる摩擦力を極力低減させることができる。よって、当該摩擦力に起因する被切断物6のずれを防止して被切断物6をより確実に保持することができ、正確な切断ラインを形成することができる。
【0074】
以上のように本実施形態の制御回路61は、切断データから、被切断物6の切断ラインにおける切断開始点の位置と切断終了点の位置とを抽出する抽出手段、及び切断開始点の位置及び切断終了点の位置を前記特定位置以外の切断ライン上の位置に変更する設定手段として機能する。
これによれば、特定位置にある切断開始点及び切断終了点は、設定手段によって、特定位置以外の切断ライン上の位置へ変更される。このように、切断開始点及び切断終了点は、設定手段による位置変更後においても切断ライン上にあることから、被切断物6を余分に切断することなく、且つ切れ残りが生じないように切断することができる。
【0075】
前記設定手段は、切断開始点及び切断終了点を、複数の線分A1〜A4のうち何れかの線分A2の中間部の位置P0´(P5´)に設定する。これによれば、例えば切断終了点P5´を越えてカッタ4を余分に移動させたとしても、当該線分A2に沿って本来の切断ライン上を移動するだけなので、被切断物6を余分に切断することがない。
前記設定手段は、切断開始点及び切断終了点を、隣り合う線分のなす角度θが所定の閾値T以上である鈍角が連続する鈍角連続領域内の線分に設定する。従って、図12(b)の切断終了点Pn´を越えてカッタ4を余分に移動させたとしても、被切断物6を余分に切断することがない。
【0076】
前記設定手段は、線分上に設定された切断終了点について、当該線分に沿って切断ラインが重複するように延長させる位置補正を行う。また、前記位置補正は、切断終了点の代わりに、切断開始点について行ってもよい。これにより、当該線分に沿って切断ラインが重複するように延長させるため、切断開始点と切断終了点との間における切れ残りを確実に無くすことができる。
前記設定手段は、算出手段としての制御回路61により各線分A1〜A4の長さを算出し、所定の長さ以上の線分A2に対して、切断開始点及び切断終了点を設定した。従って、例えば前記の位置補正を行うことで、切断終了点P5´を越えてカッタ4を余分に移動させたとしても、被切断物6を余分に切断することがない。
【0077】
<第2実施形態>
図19は、本発明の第2実施形態を示すものであり、第1実施形態と異なるところを説明する。尚、第1実施形態と同一部分には同一符号を付している。
図19に示すパーソナルコンピュータ(PC80と称す)は、上記した切断データを処理する切断データ処理装置として構成されている。即ち、PC80の制御回路81は、コンピュータ(CPU)を主体に構成されており、ROM82、RAM83、EEPROM84が接続されている。また、PC80には、ユーザが各種の指示や選択、入力の操作を行うためのキーボードやマウス等からなる入力部85が接続されると共に、ユーザに対して必要なメッセージ等の表示を行う表示部(例えばLCD)86が設けられる。
【0078】
PC80は、切断装置1に対して有線接続又は無線接続するための通信部87を備えている。通信部87は、例えばケーブル87aを介して切断装置1の通信部79に接続されている。これにより、PC80と切断装置1との間で、切断データを含むデータの授受が可能である。制御回路(制御手段)81は、PC80全体の制御を司り、前記切断データ処理プログラム等を実行する。ROM82には、切断データ処理プログラムや、閾値T、伸縮補正テーブル等が記憶されている。RAM83は、各種処理に必要なデータやプログラムが一時的に記憶されるもので、第1実施形態と同様に、記憶領域としてデータバッファ及び並び替えバッファを有する。EEPROM84には、各種の切断データが記憶されている。
【0079】
そして、制御回路81は、EEPROM84の切断データを読み込んで、切断データ処理プログラムの処理、つまり図13〜図17で示したフローチャートの処理を実行する。これにより、第1実施形態と同様に、切断データの切断開始点の位置及び切断終了点の位置を前記特定位置以外の切断ライン上の位置に変更する。変更後の切断データは、EEPROM84に上書きされて更新される。
以上のように、制御回路81は、第1実施形態の制御回路61と同様、抽出手段及び設定手段として構成されている。従って、切断データを、被切断物6を余分に切断することなく、且つ切れ残りが生じないように切断することができるデータに変更することができる等、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0080】
尚、本発明は上記しかつ図面に示す実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。本発明は、上記したカッティングプロッタとしての切断装置1に限られず、切断機能を備えた各種の装置に適用できるものである。
制御回路61は、切断の際、切れ残りが生じないように切断終了点の位置補正を行い、切断ラインが重複するように制御するが、これに限定されるものではない。即ち、切断データ処理プログラムの処理において、切断開始点と切断終了点を新たに設定する際、例えばステップS40に代えて、前記の位置補正後の切断終了点を記憶させる。これによれば、当該切断データは、切断開始点と切断終了点は、位置補正により一致しないが、何れも本来の切断ライン上にあることから、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0081】
切断装置1やPC80における記憶手段に記憶した切断データ処理プログラムを、USBメモリ、CD−ROM、フレキシブルディスク、DVD、フラッシュメモリ等、コンピュータで読取り可能な記録媒体に記録してもよい。この場合、前記記録媒体を、種々のデータ処理装置のコンピュータにより読み込んで実行させることにより、上記実施形態と同様の作用及び効果を奏する。
【符号の説明】
【0082】
A〜C 切断ライン
1 切断装置
4 切断刃
6 被切断物
61,81 抽出手段、設定手段、算出手段
80 切断データ処理装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断データに基づいて切断刃と被切断物とを相対的に移動させることにより、前記被切断物を所望の形状に切断する切断装置であって、
前記切断データから、前記被切断物の切断ラインにおける切断開始点の位置と切断終了点の位置とを抽出する抽出手段と、
前記切断開始点及び前記切断終了点が一致する閉じた形状を前記被切断物から切抜く場合、前記抽出手段で抽出した前記切断開始点の位置及び前記切断終了点の位置が前記切断ラインの特定位置にあるとき、前記切断開始点の位置及び前記切断終了点の位置を前記特定位置以外の前記切断ライン上の位置に変更する設定手段と、
を備えることを特徴とする切断装置。
【請求項2】
前記切断ラインは、連続した複数の線分を含み、
前記設定手段は、前記切断開始点及び前記切断終了点を、前記複数の線分のうち何れかの線分の中間部の位置に設定することを特徴とする請求項1記載の切断装置。
【請求項3】
前記切断ラインは、連続した複数の線分を含み、
前記設定手段は、前記切断開始点及び前記切断終了点を、隣り合う前記線分のなす角度が所定の閾値以上である鈍角が連続する鈍角連続領域内の線分に設定することを特徴とする請求項1又は2記載の切断装置。
【請求項4】
前記設定手段は、前記線分上に設定された前記切断開始点又は前記切断終了点について、当該線分に沿って前記切断ラインが重複するように延長させる位置補正を行うことで、切れ残りが生じないように切断することを特徴とする請求項2又は3記載の切断装置。
【請求項5】
前記設定手段は、前記複数の線分の長さを夫々算出する算出手段を備え、
前記算出手段で算出された前記複数の線分のうち所定の長さ以上の線分に対して、前記切断開始点及び前記切断終了点を設定することを特徴とする請求項2から4の何れかに記載の切断装置。
【請求項6】
切断刃と被切断物とを相対的に移動させることにより前記被切断物を所望の形状に切断する切断装置のための切断データを処理する切断データ処理装置であって、
前記切断データから、前記被切断物の切断ラインにおける切断開始点の位置と切断終了点の位置とを抽出する抽出手段と、
前記切断開始点及び前記切断終了点が一致する閉じた形状を前記被切断物から切抜く場合、前記抽出手段で抽出した前記切断開始点の位置及び前記切断終了点の位置が前記切断ラインの特定位置にあるとき、前記切断開始点の位置及び前記切断終了点の位置を前記特定位置以外の前記切断ライン上の位置に変更する設定手段と、
を備えることを特徴とする切断データ処理装置。
【請求項7】
前記切断ラインは、連続した複数の線分を含み、
前記設定手段は、前記切断開始点及び前記切断終了点を、前記複数の線分のうち何れかの線分の中間部の位置に設定することを特徴とする請求項6記載の切断データ処理装置。
【請求項8】
前記切断ラインは、連続した複数の線分を含み、
前記設定手段は、前記切断開始点及び前記切断終了点を、隣り合う前記線分のなす角度が所定の閾値以上である鈍角が連続する鈍角連続領域内の線分に設定することを特徴とする請求項6又は7記載の切断データ処理装置。
【請求項9】
前記設定手段は、前記線分上に設定された前記切断開始点又は前記切断終了点について、当該線分に沿って前記切断ラインが重複するように延長させる位置補正を行うことで、切れ残りが生じないように切断することを特徴とする請求項7又は8記載の切断データ処理装置。
【請求項10】
前記設定手段は、前記複数の線分の長さを夫々算出する算出手段を備え、
前記算出手段で算出された前記複数の線分のうち所定の長さ以上の線分に対して、前記切断開始点及び前記切断終了点を設定することを特徴とする請求項7から9の何れかに記載の切断データ処理装置。
【請求項11】
切断データに基づいて切断刃と被切断物とを相対的に移動させることにより、前記被切断物を所望の形状に切断する切断装置のコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記切断データから、前記被切断物の切断ラインにおける切断開始点の位置と切断終了点の位置とを抽出する抽出処理と、
前記切断開始点及び前記切断終了点が一致する閉じた形状を前記被切断物から切抜く場合、前記抽出処理で抽出した前記切断開始点の位置及び前記切断終了点の位置が前記切断ラインの特定位置にあるとき、前記切断開始点の位置及び前記切断終了点の位置を前記特定位置以外の前記切断ライン上の位置に変更する設定処理と、
を実行させるための切断データ処理プログラム。
【請求項12】
請求項11に記載の切断データ処理プログラムを切断装置のコンピュータに読取り可能に記録した記録媒体。
【請求項1】
切断データに基づいて切断刃と被切断物とを相対的に移動させることにより、前記被切断物を所望の形状に切断する切断装置であって、
前記切断データから、前記被切断物の切断ラインにおける切断開始点の位置と切断終了点の位置とを抽出する抽出手段と、
前記切断開始点及び前記切断終了点が一致する閉じた形状を前記被切断物から切抜く場合、前記抽出手段で抽出した前記切断開始点の位置及び前記切断終了点の位置が前記切断ラインの特定位置にあるとき、前記切断開始点の位置及び前記切断終了点の位置を前記特定位置以外の前記切断ライン上の位置に変更する設定手段と、
を備えることを特徴とする切断装置。
【請求項2】
前記切断ラインは、連続した複数の線分を含み、
前記設定手段は、前記切断開始点及び前記切断終了点を、前記複数の線分のうち何れかの線分の中間部の位置に設定することを特徴とする請求項1記載の切断装置。
【請求項3】
前記切断ラインは、連続した複数の線分を含み、
前記設定手段は、前記切断開始点及び前記切断終了点を、隣り合う前記線分のなす角度が所定の閾値以上である鈍角が連続する鈍角連続領域内の線分に設定することを特徴とする請求項1又は2記載の切断装置。
【請求項4】
前記設定手段は、前記線分上に設定された前記切断開始点又は前記切断終了点について、当該線分に沿って前記切断ラインが重複するように延長させる位置補正を行うことで、切れ残りが生じないように切断することを特徴とする請求項2又は3記載の切断装置。
【請求項5】
前記設定手段は、前記複数の線分の長さを夫々算出する算出手段を備え、
前記算出手段で算出された前記複数の線分のうち所定の長さ以上の線分に対して、前記切断開始点及び前記切断終了点を設定することを特徴とする請求項2から4の何れかに記載の切断装置。
【請求項6】
切断刃と被切断物とを相対的に移動させることにより前記被切断物を所望の形状に切断する切断装置のための切断データを処理する切断データ処理装置であって、
前記切断データから、前記被切断物の切断ラインにおける切断開始点の位置と切断終了点の位置とを抽出する抽出手段と、
前記切断開始点及び前記切断終了点が一致する閉じた形状を前記被切断物から切抜く場合、前記抽出手段で抽出した前記切断開始点の位置及び前記切断終了点の位置が前記切断ラインの特定位置にあるとき、前記切断開始点の位置及び前記切断終了点の位置を前記特定位置以外の前記切断ライン上の位置に変更する設定手段と、
を備えることを特徴とする切断データ処理装置。
【請求項7】
前記切断ラインは、連続した複数の線分を含み、
前記設定手段は、前記切断開始点及び前記切断終了点を、前記複数の線分のうち何れかの線分の中間部の位置に設定することを特徴とする請求項6記載の切断データ処理装置。
【請求項8】
前記切断ラインは、連続した複数の線分を含み、
前記設定手段は、前記切断開始点及び前記切断終了点を、隣り合う前記線分のなす角度が所定の閾値以上である鈍角が連続する鈍角連続領域内の線分に設定することを特徴とする請求項6又は7記載の切断データ処理装置。
【請求項9】
前記設定手段は、前記線分上に設定された前記切断開始点又は前記切断終了点について、当該線分に沿って前記切断ラインが重複するように延長させる位置補正を行うことで、切れ残りが生じないように切断することを特徴とする請求項7又は8記載の切断データ処理装置。
【請求項10】
前記設定手段は、前記複数の線分の長さを夫々算出する算出手段を備え、
前記算出手段で算出された前記複数の線分のうち所定の長さ以上の線分に対して、前記切断開始点及び前記切断終了点を設定することを特徴とする請求項7から9の何れかに記載の切断データ処理装置。
【請求項11】
切断データに基づいて切断刃と被切断物とを相対的に移動させることにより、前記被切断物を所望の形状に切断する切断装置のコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記切断データから、前記被切断物の切断ラインにおける切断開始点の位置と切断終了点の位置とを抽出する抽出処理と、
前記切断開始点及び前記切断終了点が一致する閉じた形状を前記被切断物から切抜く場合、前記抽出処理で抽出した前記切断開始点の位置及び前記切断終了点の位置が前記切断ラインの特定位置にあるとき、前記切断開始点の位置及び前記切断終了点の位置を前記特定位置以外の前記切断ライン上の位置に変更する設定処理と、
を実行させるための切断データ処理プログラム。
【請求項12】
請求項11に記載の切断データ処理プログラムを切断装置のコンピュータに読取り可能に記録した記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−206234(P2012−206234A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75578(P2011−75578)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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