説明

切断装置および通電遮断装置

【課題】切断装置において、通電用部材の表面が擦れることにより生成される金属粉の発生を抑制する。
【解決手段】切断装置(10)は、刃部(31)と絶縁部(32)とを有し、刃部(31)によって通電用部材(12)を切断するブレード部材(30)と、ブレード部材(30)を通電用部材(12)側へ進出させるためのガス発生部(35)と、通電用部材(12)を挟んでブレード部材(30)の反対側に配置され切断時の通電用部材(12)の受け面(25b)を形成する受け部材(25)と、ブレード部材(30)が所定位置で静止するようにブレード部材(30)の進出を規制するストッパ(23)とを備えている。刃部(31)の表面とブレード部材(30)の前端部のガイド部(32a)の内面と受け部材(25)の受け面(25b)には、通電用部材(12)よりも柔らかい絶縁性の保護膜(15)が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電用部材を切断する切断装置、および通電用部材が切断されることにより通電が遮断される通電遮断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電流が流れる通電用部材を切断するための切断装置が知られている。この切断装置は、例えば災害時に電源からの電力を遮断するためのものである。この種の切断装置として、特許文献1には、筒内に充填された火薬の爆発で推力を与えられることにより通電用部材を切断するブレード(ブレード部材)と、通電用部材がブレードにより切断される際に該通電用部材を受け止めるための筒状部材(受け部材)と、通電用部材を切断したブレードを所定の位置で静止させるためのストッパとを備える切断装置が開示されている。上記ブレードは、通電用部材を切断する切断部が形成された刃部と、絶縁性を有する絶縁部とを有している。
【0003】
上記切断装置において筒内の火薬が爆発すると、ブレードが通電用部材側へ進出し、切断部が通電用部材を切断する。その後、ブレードは、該ブレードの絶縁部が通電用部材の切断面に接触する位置まで進出し、上記ストッパにより停止させられる。これにより、切断後の通電用部材の間にはブレードの絶縁部が介在することになるため、通電用部材の通電を確実に遮断できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−86653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、通電用部材が切断される前の状態において切断装置や通電用部材が振動すると、通電用部材がブレード部材の切断部や受け部材と擦れる場合がある。そうなると、通電用部材の表面が削られ、金属粉が発生する。その結果、通電用部材が切断装置により切断された後であっても、上記金属粉を介して通電用部材が再度通電してしまうおそれが生じる。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、通電用部材の表面が擦れることにより生成される金属粉の発生を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、刃部(31)と絶縁性の絶縁部(32)とを有し、上記刃部(31)によって通電用部材(12)を切断するブレード部材(30)と、該ブレード部材(30)を上記通電用部材(12)側へ進出させるための高圧ガスを発生させるガス発生部(35)と、上記通電用部材(12)を挟んで上記刃部(31)の反対側に配置され、切断時の通電用部材(12)の受け面(25b)を形成する受け部材(25)と、上記通電用部材(12)を切断した後の上記ブレード部材(30)の絶縁部(32)が上記通電用部材(12)の切断面の位置で静止するように、上記ブレード部材(30)の進出を規制するストッパ(23)と、上記ブレード部材(30)および受け部材(25)の少なくとも一方と通電用部材(12)との間に位置し、上記通電用部材(12)におけるブレード部材(30)および受け部材(25)の少なくとも一方との対向面を保護する絶縁性の保護部材(15)とを備えていることを特徴としている。
【0008】
上記第1の発明では、ガス発生部(35)により高圧ガスが発生すると、ブレード部材(30)が通電用部材(12)側へ進出し、ブレード部材(30)の刃部(31)の切断部(31a)が通電用部材(12)へ到達する。ブレード部材(30)はそのまま移動し、刃部(31)の切断部(31a)が、受け部材(25)の受け面(25b)によって受けられた状態の通電用部材(12)を切断する。そして、ブレード部材(30)は、該ブレード部材(30)の絶縁部(32)が通電用部材(12)の切断面と接触する位置まで移動した後、ストッパ(23)によってその動きが規制されることにより静止する。これにより、切断後の通電用部材(12)の間には絶縁性の絶縁部(32)が介在することになるため、通電用部材(12)の通電が遮断される。
【0009】
さらに、上記第1の発明では、上記ブレード部材(30)および受け部材(25)の少なくとも一方と通電用部材(12)との間に絶縁性の保護部材(15)が設けられている。よって、通電用部材(12)が切断される前の状態において、切断装置が振動しても、ブレード部材(30)および受け部材(25)の少なくとも一方と通電用部材(12)との擦れが防止される。その結果、通電用部材(12)の表面が削られことによる金属粉の発生が抑制される。また、上記保護部材(15)から削粉が発生しても、その削粉は絶縁性を有しているため、該削粉を介して通電用部材(12)が再度通電することはない。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、上記保護部材(15)が、上記通電用部材(12)のブレード部材(30)と受け部材(25)との対向面を覆うように上記通電用部材(12)に設けられていることを特徴としている。
【0011】
上記第2の発明では、上記保護部材(15)が上記通電用部材(12)に設けられているので、上記通電用部材(12)の削れが確実に抑制される。
【0012】
第3の発明は、第1の発明において、上記保護部材(15)が、上記刃部(31)の表面と、上記ブレード部材の前端部に形成され且つ上記通電用部材(12)を両側から挟むガイド部(32a)の内面と、上記受け部材(25)の受け面(25b)とを覆うように上記刃部(31)と上記ガイド部(32a)と上記受け部材(25)とに設けられていることを特徴としている。
【0013】
上記第3の発明では、上記保護部材(15)が上記刃部(31)と上記ガイド部(32a)と上記受け部材(25)とに設けられているので、上記保護部材(15)が通電用部材(12)に接することとなり、上記通電用部材(12)の削れが確実に抑制される。
【0014】
第4の発明は、第2または第3の発明において、上記保護部材(15)が、上記通電用部材(12)よりも柔らかい材料で構成されていることを特徴としている。
【0015】
上記第4の発明では、上記保護部材(15)が上記通電用部材(12)よりも柔らかいので、上記保護部材(15)が削れるのみであり、上記通電用部材(12)の削れが確実に抑制される。
【0016】
第5の発明は、第2の発明において、上記保護部材(15)が、上記通電用部材(12)の表面に密着して形成されていることを特徴としている。
【0017】
上記第5の発明では、上記保護部材(15)が上記通電用部材(12)に密着してるので、上記保護部材(15)と上記通電用部材(12)との擦れがなく、上記通電用部材(12)が確実に保護される。
【0018】
第6の発明は、第1〜第5の発明の何れかにおいて、上記保護部材が、膜状に形成される保護膜(15)であることを特徴としている。
【0019】
上記第6の発明では、保護部材が膜状の保護膜(15)であるため、該保護膜(15)を介して配置されるブレード部材(30)および受け部材(25)と通電用部材(12)との距離を短くすることができる。この結果、上記通電用部材(12)を挟んで位置するブレード部材(30)と受け部材(25)とが近くなるように配置される。
【発明の効果】
【0020】
上記第1の発明によれば、上記ブレード部材(30)および受け部材(25)と通電用部材(12)との間に絶縁性の保護部材(15)を設けているので、上記ブレード部材(30)および受け部材(25)と通電用部材(12)との擦れを確実に防止することができる。この結果、上記通電用部材(12)の表面が保護部材(15)によって削られることにより生成される金属粉の発生が防止される。これにより、切断された通電用部材(12)が金属粉を介して通電してしまうのを抑制できる。また、上記保護部材(15)は、絶縁性を有する材料で構成されているため、上記保護部材(15)がブレード部材(30)等によって削られて削粉が発生しても、その削粉を介して通電用部材(12)が通電することはない。
【0021】
また、第2の発明では、上記保護部材(15)を上記通電用部材(12)に設けているので、上記通電用部材(12)の削れを確実に抑制することができる。
【0022】
また、上記第3の発明では、上記保護部材(15)を上記刃部(31)と上記ガイド部(32a)と上記受け部材(25)とに設けているので、上記保護部材(15)が通電用部材(12)に接することとなり、上記通電用部材(12)の削れを確実に抑制することができる。
【0023】
上記第4の発明では、上記保護部材(15)が上記通電用部材(12)よりも柔らかいので、上記保護部材(15)が削れるのみであり、上記通電用部材(12)の削れを確実に抑制することができる。
【0024】
上記第5の発明では、上記保護部材(15)が上記通電用部材(12)に密着してるので、上記保護部材(15)と上記通電用部材(12)との擦れがなく、上記通電用部材(12)を確実に保護することができる。
【0025】
また、上記第6の発明によれば、ブレード部材(30)と受け部材(25)とを近づけて配置できるため、装置全体の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本実施形態1に係る通電遮断装置を示す水平断面図である。
【図2】図2は、図1におけるII−II断面図である。
【図3】図3は、図1におけるIII−III断面図である。
【図4】図4は、本実施形態1に係る通電遮断装置の外観を示す斜視図である。
【図5】図5は、本実施形態1に係る通電遮断装置の内部構造を示す斜視図であって、カバーを省略して示す図である。
【図6】図6は、本実施形態1に係る第1内筒部材を示す斜視図である。
【図7】図7は、本実施形態1に係るブレード部材およびハーネスを示す斜視図である。
【図8】図8は、本実施形態1に係るブレード部材を示す斜視図である。
【図9】図9は、本実施形態1に係る通電遮断装置の切断前の状態を示す模式図である。
【図10】図10は、本実施形態1に係る通電遮断装置の切断直後の状態を示す模式図である。
【図11】図11は、本実施形態1に係る通電遮断装置の切断後の状態であって、ブレード部材がストッパにより静止された状態を示す模式図である。
【図12】図12は、本実施形態1の変形例1に係る通電遮断装置を示す水平断面図である。
【図13】図13は、本実施形態1の変形例1に係るハーネスを示す斜視図である。
【図14】図14は、本実施形態2に係るブレーカを示す概略構成図である。
【図15】図15は、本実施形態3に係る接触器を示す概略構成図である。
【図16】図16は、本実施形態4に係る電気回路遮断器を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0028】
《発明の実施形態1》
本実施形態1に係る通電遮断装置(40)は、通電用部材を構成するハーネス(12)と、該ハーネス(12)を切断するための切断装置(10)とを備えている。
【0029】
切断装置(10)は、図1から図5に示すように、ケース(11)と、該ケース(11)の内部に収容されるストッパ(23)、内筒(24)、ブレード部材(30)およびガス発生部(35)を備えている。
【0030】
なお、以下では説明の便宜上、図2における左右方向の左側を「前側」、右側を「後側」と称し、図2における上下方向の上側を「上側」、下側を「下側」と称して説明する。また、図2における紙面に直交する方向の手前側を「左側」、奥側を「右側」と称して説明する。
【0031】
ケース(11)は、図1、図2および図4に示すように、箱状に形成された樹脂ケース(20)と筒状に形成された金属ケース(27)とを備えている。該金属ケース(27)の前側部分(27a)は、樹脂ケース(20)の挿通孔(21)(詳しくは後述する)に収容されている。
【0032】
樹脂ケース(20)は、例えばPC(ポリカーボネート)等の樹脂によって形成されている。樹脂ケース(20)は、略直方体形状に形成された土台部(13)と、該土台部(13)の下面(13a)および後面(13b)以外の面を一体的に覆うカバー部(14)とを有している。なお、樹脂ケース(20)を構成する樹脂材料は、PCに限られず、プラスチック等を含む樹脂材料であればよい。
【0033】
土台部(13)は、上下方向にやや扁平な略直方体形状に形成されている。土台部(13)の上面(13c)には、前側から視た断面が半円形状の溝(21a)が形成されている。該溝(21a)は、土台部(13)の後面(13b)から前面(13d)に向かって延び、後面(13b)のみに開口するように構成されている。
【0034】
カバー部(14)は、土台部(13)の上面(13c)、前面(13d)、左面(13e)および右面(13f)を覆うように構成されている。カバー部(14)における土台部(13)の上面(13c)との対向面(14a)には、前側から視た断面が半円形状の溝(21b)が形成されている。カバー部(14)の溝(21b)は、カバー部(14)の後面(14b)から前面(14c)に向かって延び、後面(14b)のみに開口するように構成されている。
【0035】
樹脂ケース(20)の内部には、土台部(13)の溝(21a)とカバー部(14)の溝(21b)とによって、樹脂ケース(20)の後端面に開口する略円柱形状の挿通孔(21)が形成される。該挿通孔(21)には、前側から後側へ向かって順に、ストッパ(23)、内筒(24)および金属ケース(27)の前側部分が収容されている。
【0036】
樹脂ケース(20)には、ハーネス(12)を設置するための設置孔(22)が土台部(13)とカバー部(14)とに跨って形成されている。該設置孔(22)は、挿通孔(21)の軸心を含む鉛直面に関して対称な形状に形成されている。具体的には、設置孔(22)は、樹脂ケース(20)の前後方向の中央部を左右方向にそれぞれ延びた後、後方向きに折れ曲がって後方へ延び、その後さらに下方向きに折れ曲がって土台部(13)の下面(13a)まで延びている。設置孔(22)は、挿通孔(21)から左右方向に延びる部分によって構成され且つ上下方向の幅の比較的狭い幅狭部(22a)と、該幅狭部(22a)より下方向きに延びる部分によって構成され且つ上記幅狭部(22a)の幅よりも前後方向の幅が広い幅広部(22b)とを備えている。
【0037】
ハーネス(12)は、長板状の金属等で構成されている。ハーネス(12)は、図3および図7に示すように、左右方向に延びる幅狭部(12a)と、該幅狭部(12a)の両端にそれぞれ連続する2つの幅広部(12b)とを有している。各幅広部(12b)は、前側から視て略L字状の板状片となるように構成されている。ハーネス(12)は、樹脂ケース(20)の設置孔(22)において、幅狭部(12a)が設置孔(22)の幅狭部(22a)に位置し、幅広部(12b)のうち上下方向に延びる部分が設置孔(22)の幅広部(22b)に位置するように設置されている。幅狭部(12a)は、ハーネス(12)の被切断部分を構成している。
【0038】
また、樹脂ケース(20)には、挿通孔(21)における後寄りの部分と設置孔(22)の幅広部(22b)とを連通する排出通路(28)が、土台部(13)とカバー部(14)とに跨って形成されている。該排出通路(28)は、後述するガス発生部(35)によってブレード部材(30)を進出させるために生成された高圧ガスを排出する排ガス路の一部を構成する。
【0039】
さらに、樹脂ケース(20)には、挿通孔(21)の前端から空気を排出するための排気孔(29)が形成されている。該排気孔(29)は、挿通孔(21)の前端の中央部から前方に向かって延びた後、下方向きに折れ曲がって土台部(13)の下面(13a)まで延びている。
【0040】
ストッパ(23)は、進出したブレード部材(30)を受け止めて停止させるためのものである。ストッパ(23)は、挿通孔(21)の前端部に配置され、樹脂材料によって有底円筒形状に形成されている。具体的には、ストッパ(23)は、円板状の底部(23a)と円筒状の筒部(23b)とを有し、挿通孔(21)の前端部において底部(23a)が筒部(23b)よりも前方に位置するように配置されている。底部(23a)の中央部には、樹脂ケース(20)の排気孔(29)に連通する孔(23c)が形成されている。また、筒部(23b)は、ブレード部材(30)が移動可能な内径に形成されている。
【0041】
内筒(24)は、挿通孔(21)においてストッパ(23)の後方に配置されている。内筒(24)は、ハーネス(12)を支持するためのものである。内筒(24)は、第1内筒部材(25)と第2内筒部材(26)とで構成され、両部材(25,26)でハーネス(12)を挟持している。
【0042】
第1内筒部材(25)は、ブレード部材(30)がハーネス(12)を切断する際にハーネス(12)を受け止める受け部材を構成している。第1内筒部材(25)は、図6に示すように、略円筒状に形成された内筒部(25a)を備え、該内筒部(25a)の片面は、ハーネス(12)の受け面(25b)に構成されている。さらに、内筒部(25a)は、セラミックス等、比較的剛性の高い絶縁性の材料で構成されている。内筒部(25a)は、挿通孔(21)におけるストッパ(23)の後方において、ストッパ(23)と同軸となるように配置されている。内筒部(25a)は、内径がストッパ(23)の筒部(23b)の内径と概ね等しくなる一方、外径が挿通孔(21)の内径と概ね等しくなるように構成されている。
【0043】
第2内筒部材(26)は、樹脂材料によって略円筒状に形成され、挿通孔(21)の第1内筒部材(25)の後方において、第1内筒部材(25)と同軸となるように配置されている。第2内筒部材(26)は、内径が第1内筒部材(25)の内径と概ね等しくなるように構成されている。また、第2内筒部材(26)は、前側部分の外径が挿通孔(21)の内径と概ね等しくなる一方、後側部分の外径が前側部分の外径よりも小さくなるように構成されている。第2内筒部材(26)の前側部分には、ハーネス(12)を挿通するための2つの切り欠き(26a)が形成されている。2つの切り欠き(26a)は、樹脂ケース(20)の設置孔(22)に対応する位置に形成されている。各切り欠き(26a)は、第2内筒部材(26)の外周縁から内周縁に向かって延びるように形成されている。また、第2内筒部材(26)の後側部分の外周面には、環状の溝が形成され、該溝にはOリング(26b)が設置されている。
【0044】
このように、内筒(24)は、絶縁部材である第1内筒部材(25)および第2内筒部材(26)がハーネス(12)を両側から挟み込むことで、ハーネス(12)を支持している。
【0045】
金属ケース(27)は、金属材料によって略円筒状に形成されている。金属ケース(27)は、略円筒状に形成された前側部分(27a)と、同じく略円筒状に形成され、前側部分(27a)の後側から後方へ延びる後側部分(27b)とを備えている。
【0046】
前側部分(27a)は、外径が挿通孔(21)の内径と概ね等しくなるように形成され、内径が第2内筒部材(26)の外径と概ね等しくなるように形成されている。前側部分(27a)は、第2内筒部材(26)の後側部分に外嵌された状態で、樹脂ケース(20)の挿通孔(21)に内嵌している。前側部分(27a)は、第2内筒部材(26)の後方において第2内筒部材(26)と同軸となるように配置されている。前側部分(27a)と第2内筒部材(26)の後側部分との間は、Oリング(26b)によってシールされている。また、前側部分(27a)には、貫通孔(27c)が形成されている。該貫通孔(27c)は、樹脂ケース(20)の排出通路(28)と対応する位置に形成されている。この貫通孔(27c)は、排ガス路の一部を構成している。
【0047】
後側部分(27b)は、前側部分(27a)と同軸となるように、前側部分(27a)の後側から後方へ向かって延びるように形成されている。後側部分(27b)は、内径が第2内筒部材(26)の内径と概ね等しくなるように形成されている。後側部分(27b)は、前側部分(27a)が樹脂ケース(20)の挿通孔(21)に内嵌した状態で、樹脂ケース(20)から露出している。
【0048】
以上のように挿通孔(21)に収容されたストッパ(23)、内筒(24)および金属ケース(27)によって、その内部に略円柱状の円柱通路(17)が形成される。円柱通路(17)は、前端部がストッパ(23)の底部(23a)によって閉塞される一方、後端部が金属ケース(27)の内部に収容されるガス発生部(35)によって閉塞されている。円柱通路(17)には、設置孔(22)に収容されたハーネス(12)の幅狭部(12a)の一部が露出すると共に、該露出部分とガス発生部(35)との間にブレード部材(30)が収容される。
【0049】
ガス発生部(35)は、ブレード部材(30)を進出させてハーネス(12)を切断させるための高圧ガスを発生させるものである。ガス発生部(35)は、ガス発生剤としての火薬と、該火薬を起爆するための発火部(37)と、該発火部(37)を保持して円柱通路(17)の後端部を閉塞する蓋部材(39)とを備えている。
【0050】
蓋部材(39)は、略円筒状に形成され金属ケース(27)に内嵌される筒部(39a)と、発火部(37)を保持すると共に筒部(39a)の中途部を閉塞する閉塞部(39b)とを有している。筒部(39a)および閉塞部(39b)は、金属材料によって一体に形成されている。閉塞部(39b)によって、円柱通路(17)内のブレード部材(30)の後方には閉空間が形成される。該閉空間は、火薬が充填されたガス発生室(36)を構成している。
【0051】
発火部(37)は、雷管によって構成され、起爆薬を有する前端部がガス発生室(36)内に露出するように蓋部材(39)の閉塞部(39b)に保持されている。
【0052】
ブレード部材(30)は、円柱通路(17)内を進出し、ハーネス(12)を切断するためのものである。ブレード部材(30)は、図7および図8に示すように、金属製(例えば鋼製)の刃部(31)と、該刃部(31)を取り付けるプッシャー(32)とを備えている。刃部(31)の先端面は、ハーネス(12)を切断する切断部(31a)に形成されている。なお、上記刃部(31)は、金属製の他に、セラミックスや樹脂などで形成してもよい。
【0053】
プッシャー(32)は、絶縁性を有する絶縁部で構成され、樹脂材料で形成されている。プッシャー(32)は、刃部(31)を保持すると共に、発火部(37)の高圧ガスの圧力を受けてハーネス(12)の方向に進出するものである。プッシャー(32)は、本体部(32d)と前端部(32c)とで形成されている。
【0054】
前端部(32c)は、本体部(32d)の前端の両側部から前方に突出して一対のガイド部(32a,32a)を形成している。そして、上記プッシャー(32)の先端部は、前端部(32c)によって側方から視て略U字状に形成されている。前端部(32c)は、基端側に刃部(31)が取り付けられている。
【0055】
一対のガイド部(32a,32a)は、上記プッシャー(32)と同じ樹脂材料により、該プッシャー(32)と一体に形成されている。一対のガイド部(32a,32a)は、軸直角断面が、外側の部分が円弧状で、且つ内側の部分が平坦に形成された突出片である。この一対のガイド部(32a,32a)は、互いの内側面(32b,32b)を対向させて配置されている。各ガイド部(32a)は、内側面(32b)の先端が、ハーネス(12)の幅狭部(12a)の側部に当接している。
【0056】
刃部(31)は、プッシャー(32)の前端部(32c)の基端において、一対のガイド部(32a,32a)の間に嵌入されて取り付けられる。該刃部(31)の表面である先端面は、平坦な切断部(31a)に形成されている。
【0057】
−ハーネスの保護部材−
通電遮断装置(40)は、ハーネス(12)の保護部材(15)を更に備えている。該保護部材(15)は、ブレード部材(30)および第1内筒部材(25)とハーネス(12)との間に位置し、上記ハーネス(12)のブレード部材(30)と第1内筒部材(25)との対向面を保護するものである。つまり、保護部材(15)は、切断前のハーネス(12)の表面が、ブレード部材(30)および第1内筒部材(25)と擦れて削られてしまうのを防止するためのものである。
【0058】
保護部材(15)は、刃部(31)の切断部(31a)である表面およびガイド部(32a,32a)の内側面(32b)と第1内筒部材(25)の受け面(25b)との両方を覆う絶縁性の部材で構成されている。保護部材(15)は、内筒側保護膜(25c)と切断側保護膜(31b)とを備えている。
【0059】
内筒側保護膜(25c)は、第1内筒部材(25)の内筒部(25a)の受け面(25b)を覆うように設けられている。内筒側保護膜(25c)は、軸方向から視た内筒部(25a)と概ね同じ円環状であって、比較的薄い膜状に形成されている。内筒側保護膜(25c)は、ハーネス(12)を構成する金属等の材料よりも柔らかい絶縁性の樹脂材料(具体的には、ポリテトラフルオロエチレン:PTFE等)で構成されている。つまり、内筒側保護膜(25c)は、片面が接着処理された樹脂フィルムで構成されている。
【0060】
切断側保護膜(31b)は、刃部(31)の表面である切断部(31a)と、ガイド部(32a,32a)の内側面(32b)を覆う絶縁性の部材で構成されている。切断側保護膜(31b)は、切断部(31a)からガイド部(32a,32a)の内側面(32b)に亘ってU字状に形成され、比較的薄い膜状に形成されている。切断側保護膜(31b)は、ハーネス(12)を構成する材料よりも柔らかい絶縁性の樹脂材料(具体的には、ポリテトラフルオロエチレン:PTFE等)で構成されている。つまり、内筒側保護膜(25c)は、片面が接着処理された樹脂フィルムで構成されている。
【0061】
なお、内筒側保護膜(25c)および切断側保護膜(31b)を構成する材料は、上述のように樹脂材料に限られず、ハーネス(12)を構成する材料よりも柔らかく且つ絶縁性を有する材料であればよい。例えば、内筒側保護膜(25c)や切断側保護膜(31b)を構成する材料として、紙等を用いることもできる。
【0062】
−切断動作−
本実施形態1の通電遮断装置(40)は、電気機器における所定位置に設置されて使用される。
【0063】
通電遮断装置(40)は、発火部(37)が火災報知器や地震警報機などに接続された状態で設置される。発火部(37)には、火災報知器が火災を感知したときや、地震警報機が地震を感知したときに、警告信号が入力される。警告信号が入力されると、発火部(37)はガス発生室(36)内の火薬を爆発させる。
【0064】
火薬が爆発すると、爆発に伴って高圧ガスが発生し、図9の状態におけるプッシャー(32)に前方への推力が与えられる。これにより、ブレード部材(30)は、ハーネス(12)に向かって進出する。ブレード部材(30)は、切断部(31a)およびガイド部(32a,32a)の内側面(32b)を覆う切断側保護膜(31b)と共に移動し、図10に示すように、切断部(31a)がハーネス(12)を瞬時に切断する。なお、図9および図10は、ガイド部(32a)を省略している。
【0065】
ここで、ブレード部材(30)が前方へ進出する際、円柱通路(17)内のブレード(30)の前方の空気は、ストッパ(23)の底部(23a)の孔(23c)および樹脂ケース(20)の排気孔(29)によって構成される排気路を通って切断装置(10)の外部へ排出される。この排気により、ブレード(30)の進出によってブレード(30)の前方の空気が圧縮されてブレード(30)の進出を阻害することがないため、ブレード(30)が円滑に進出する。
【0066】
そして、ブレード部材(30)は、さらに進出し、図11に示すように、ブレード部材(30)の先端を構成するガイド部(32a,32a)がストッパ(23)の底部に衝突する。ガイド部(32a,32a)は、衝突による衝撃により変形する。ブレード部材(30)は、ガイド部(32a,32a)が衝突による衝撃を吸収することでストッパ(23)内で跳ね返ることなく停止する。この状態では、プッシャー(32)がハーネス(12)の切断箇所に位置しているため、ハーネス(12)が刃部(31)を介して再び通電されることはない。なお、図11は、ガイド部(32a)を省略している。
【0067】
また、ブレード部材(30)の前進後、ブレード部材(30)の後方のガス発生室(36)に充満するガスは、金属ケース(27)の前端部と第2内筒部材(26)の後端面との間の隙間、金属ケース(27)の貫通孔(27c)および樹脂ケース(20)の排出通路(28)によって構成される排ガス路を通って切断装置(10)の外部へ排出される。よって、ガス発生室(36)内の火薬の燃えかすや生成物等の導電性物質を含むガスがハーネス(12)側に進出して切断面に導電性物質が付着して放電が生じることが防止される。
【0068】
−保護部材の機能−
上記切断動作前の状態における通電遮断装置(40)において、該通電遮断装置(40)が設置される周辺環境によっては、切断装置(10)およびハーネス(12)が振動する場合がある。具体的には、通電遮断装置(40)付近に振動する装置等が設置されている場合に、切断装置(10)およびハーネス(12)が振動しやすくなる。このように切断装置(10)およびハーネス(12)が振動すると、ブレード部材(30)とハーネス(12)とが互いに接触して擦れ、また、第1内筒部材(25)とハーネス(12)とが互いに接触して擦れ、ハーネス(12)が削られてしまう。そうなると、ハーネス(12)の表面から金属粉が発生し、その結果、切断装置(10)によってハーネス(12)を切断した後であっても、ハーネス(12)が上記金属粉を介して通電してしまう可能性が生じる。
【0069】
しかしながら、本実施形態1においては、ブレード部材(30)の切断部(31a)およびガイド部(32a,32a)の内側面(32b)を切断側保護膜(31b)で覆い、第1内筒部材(25)の受け面(25b)を内筒側保護膜(25c)で覆っている。これにより、金属製の刃部(31)やセラミックス等の剛性の高い第1内筒部材(25)がハーネス(12)と擦れるのを防止できる。また、これらの保護膜(25c,31b)は、ハーネス(12)よりも柔らかい材料で構成されているため、該保護膜(25c,31b)がハーネス(12)と擦れた場合であっても、ハーネス(12)が削られて金属粉が発生することを抑制できる。従って、切断装置(10)の動作によりハーネス(12)が切断された後、ハーネス(12)が上記金属粉に起因して再び通電してしまうのを防止できる。
【0070】
しかも、これらの保護膜(25c,31b)は、絶縁性の材料で構成されているため、該保護膜(25c,31b)がハーネス(12)によって削られて削粉が発生しても、この削粉がハーネス(12)の通電に寄与することはない。
【0071】
また、保護膜(25c,31b)は、比較的薄い膜状に形成されているため、ブレード部材(30)とハーネス(12)との間隔や、第1内筒部材(25)とハーネス(12)との間隔を狭くすることができる。これにより、切断装置(10)を小型化することができる。
【0072】
−実施形態1の効果−
以上のように、本実施形態に係る通電遮断装置(40)の切断装置(10)では、ブレード部材(30)の刃部(31)の切断部(31a)およびガイド部(32a,32a)の内側面(32b)を切断側保護膜(31b)で覆い、第1内筒部材(25)の受け面(25b)を内筒側保護膜(25c)で覆っている。これにより、ハーネス(12)が、ブレード部材(30)および第1内筒部材(25)と擦れるのを防止できる。その結果、ハーネス(12)の表面が削られることによる金属粉の発生が防止されるため、切断後におけるハーネス(12)が上記金属粉を介して通電してしまうのを抑制できる。
【0073】
更に、上記各保護膜(25c,31b)は、絶縁性の材料で形成されているため、これらの保護膜(25c,31b)が切断部(31a)や第1内筒部材(25)と擦れることにより削粉が発生しても、この削粉がハーネス(12)の再通電に寄与することはない。
【0074】
しかも、上記各保護膜(25c,31b)は、ハーネス(12)よりも柔らかい材料で構成されているため、保護膜(25c,31b)がハーネス(12)と擦れてハーネス(12)の表面を削ってしまうのを抑制できる。
【0075】
また、上記各保護膜(25c,31b)は、比較的薄い膜状に形成されているため、各保護膜(25c,31b)を介して配置されるブレード部材(30)とハーネス(12)との距離、または第1内筒部材(25)とハーネス(12)との距離を短くできる。その結果、切断装置(10)を小型化することができる。
【0076】
《発明の実施形態1の変形例》
本実施形態1の変形例に係る通電遮断装置(40)は、上記実施形態1に係る通電遮断装置(40)と比べると、ハーネス(12)の保護部材(15)の取り付け位置が異なる。具体的には、実施形態1に係る通電遮断装置(40)の保護部材(15)は、切断部(31a)およびガイド部(32a)と第1内筒部材(25)の受け面(25b)とに取り付けられているが、実施形態1の変形例に係る保護部材(15)は、図12および図13に示すように、ハーネス(12)に取り付けられている。以下では、実施形態1と異なる点について主に説明する。
【0077】
実施形態1の変形例では、ブレード部材(30)は、実施形態1の場合と同様の刃部(31)およびプッシャー(32)を備えている。しかし、ブレード部材(30)は、切断側保護膜(31b)を備えていない。つまり、刃部(31))およびガイド部(32a)は、切断側保護膜(31b)によって覆われておらず、外部に露出した状態となっている。
【0078】
また、実施形態1の変形例では、第1内筒部材(25)は、実施形態1の場合と同様の形状の内筒部(25a)を備えている。しかし、第1内筒部材(25)は、内筒側保護膜(31b)を備えていない。つまり、第1内筒部材(25)の受け面(25b)は内筒側保護膜(31b)によって覆われておらず、外部に露出した状態となっている。
【0079】
実施形態1の変形例における通電遮断装置(40)が備える保護部材(15)は、図12および図13に示すように、ハーネス(12)に取り付けられている。具体的には、保護部材(15)は、ハーネス(12)の幅狭部(12a)の長手方向における中間部分を覆っている。つまり、保護部材(15)は、ハーネス(12)の表面のうち、刃部(31)の切断部(31a)およびガイド部(32a,32a)の内側面(32b)に対応する部分と第1内筒部材(25)の受け面(25b)に対応する部分との両方を覆っている。保護部材(15)は、膜状に形成された矩形状の保護膜で構成されていて、ハーネス(12)の幅狭部(12a)に巻き付くようにして、該幅狭部(12a)の両面を覆っている。また、実施形態1の変形例の保護部材(15)は、実施形態1の場合と同様、ハーネス(12)を構成する材料よりも柔らかい絶縁性の樹脂材料(具体的にはポリテトラフルオロエチレン:PTFE等)で構成されている。つまり、保護部材(15)は、片面が接着処理された樹脂フィルムで構成されている。
【0080】
上述のような構成により、ハーネス(12)が切断される前の状態で上記通電遮断装置(40)が振動しても、ブレード部材(30)および第1内筒部材(25)がハーネス(12)と擦れ合って金属粉が発生することを防止できる。従って、通電遮断装置(40)が作動してハーネス(12)が切断された後、上記金属粉を介してハーネス(12)が再び通電するのを防止できる。更に、保護部材(15)は絶縁性の材料で構成されているため、保護部材(15)が削られて削粉が発生しても、該削粉が切断後におけるハーネス(12)の通電に寄与することはない。しかも、保護部材(15)はハーネス(12)よりも柔らかい材料で構成されているため、保護部材(15)が切断部(31a)等と擦れることにより、ハーネス(12)および切断部(31a)等から金属粉が発生するのを防止できる。
【0081】
なお、上記変形例において、保護部材(15)は、ハーネス(12)に接着する樹脂フィルムによって構成したが、保護部材(15)は、セラミックス等の絶縁性材料をハーネス(12)の表面に溶射して形成してもよい。その際、保護部材(15)は、ブレード部材(30)および第1内筒部材(25)よりも硬い材料で構成されている。この結果、ブレード部材(30)および第1内筒部材(25)がハーネス(12)と擦れ合ってもハーネス(12)が保護され、金属粉の発生を抑制することができる。
【0082】
《発明の実施形態2》
次に、本実施形態2について説明する。図14に示すように、本実施形態2は、実施形態1に係る通電遮断装置(40)または実施形態1の変形例に係る通電遮断装置(40)を備えたブレーカ(50)である。このブレーカ(50)は、樹脂製のケーシング(図示省略)に設けられた負荷側端子(55)および電源側端子(54)と、負荷側端子(55)と電源側端子(54)とを接続するためのハーネス(12)により構成された端子間部材(51)とを備えている。
【0083】
端子間部材(51)は、負荷側端子(55)に接続された固定接触子(52)と、電源側端子(54)に接続された可動接触子(53)とを備えている。可動接触子(53)は、固定接触子(52)に接触する接触位置と、固定接触子(52)から離れた非接触位置との間で移動可能に設けられている。可動接触子(53)が接触位置に移動すると、可動接触子(53)の可動接点(53a)が固定接触子(52)の固定接点(52a)に接触する。
【0084】
さらに、ブレーカ(50)は、可動接触子(53)を手動で動かすためのリンク機構(58)と、異常電流時に可動接触子(53)を固定接触子(52)から引き離すためのトリップ機構(56)と、可動接触子(53)を固定接触子(52)から引き離すように可動接触子(53)を付勢する付勢バネ(60)とを備えている。リンク機構(58)は、ケーシングに取り付けられ、手動レバー(57)の操作によって可動接触子(53)を接触位置と非接触位置との間で移動させることができるように構成されている。トリップ機構(56)は、バイメタルによって構成され、可動接触子(53)と電源側端子(54)とを接続している。トリップ機構(56)は、過電流時(異常電流時)に熱変形し、その熱変形によってリンク機構(58)を動かして、可動接触子(53)を固定接触子(52)から引き離す。可動接触子(53)が固定接触子(52)から引き離されると、ブレーカ(50)は通電不能になる。
【0085】
さらに、ブレーカ(50)は、上述の通電遮断装置(40)と、可動接点(53a)と固定接点(52a)とが溶着したことを検出する溶着検出部(65)とを備えている。なお、通電遮断装置(40)には、実施形態1、実施形態1の変形例および後述するその他の実施形態の何れの通電遮断装置(40)を用いてもよい。
【0086】
通電遮断装置(40)の切断装置(10)は、端子間部材(51)を切断可能な位置に設けられている。具体的に、切断装置(10)は、端子間部材(51)の裏側(図14における下側)に設けられている。
【0087】
溶着検出部(65)は、例えば端子間部材(51)に接続され、端子間部材(51)の電流値に基づいて可動接点(53a)と固定接点(52a)とが溶着しているか否かを検出するように構成されている。溶着検出部(65)には、切断装置(10)の発火部(37)が接続されている。溶着検出部(65)は、可動接点(53a)と固定接点(52a)とが溶着していると判定すると、発火部(37)を作動させるように構成されている。
【0088】
本実施形態2では、溶着検出部(65)が可動接点(53a)と固定接点(52a)とが溶着していると判定すると、発火部(37)が作動して火薬が爆発し、ブレード(30)が進出する。ブレード(30)は、端子間部材(51)を切断(破断)した後に、プッシャー(32)が端子間部材(51)の切断面に接触する状態で停止する。このため、端子間部材(51)の切断面の間が絶縁され、電源側端子(54)と負荷側端子(55)の間が通電不能になる。
【0089】
−実施形態2の効果−
本実施形態2では、通電遮断装置(40)によって、電源側端子(54)と負荷側端子(55)の間を強制的に通電不能にすることが可能である。このため、例えば可動接触子(53)と固定接触子(52)が溶着した場合であっても、通電遮断装置(40)によって電源側端子(54)と負荷側端子(55)の間を強制的に通電不能にすることで、負荷側の機器の故障を防止することができる。その他の構成、作用・効果は実施形態1または実施形態1の変形例と同様である。
【0090】
《発明の実施形態3》
次に、本実施形態3について説明する。図15に示すように、本実施形態3は、実施形態1に係る通電遮断装置(40)または実施形態1の変形例に係る通電遮断装置(40)を備えた接触器である。この接触器(70)は、図15に示すように、樹脂製のケーシング(86)に設けられた負荷側端子(75)および電源側端子(74)と、負荷側端子(75)と電源側端子(74)とを接続するためのハーネス(12)により構成された端子間部材(71)とを備えている。
【0091】
端子間部材(71)は、負荷側端子(75)に接続された第1固定接触子(68)と、電源側端子(74)に接続された第2固定接触子(69)と、後述する可動鉄心(81)に連結された可動接触子(73)とを備えている。可動接触子(73)は、一対の固定接触子(68,69)に接触する接触位置と、一対の固定接触子(68,69)から離れた非接触位置との間で移動可能に設けられている。可動接触子(73)が接触位置に移動すると、可動接触子(73)の一端の可動接点(73a)が第1固定接触子(68)の第1固定接点(68a)に接触すると共に、可動接触子(73)の他端の可動接点(73b)が第2固定接触子(69)の第2固定接点(69a)に接触する。
【0092】
さらに、接触器(70)は、可動接触子(73)を接触位置と非接触位置の間で動かすための移動機構(76)を備えている。この移動機構(76)は、可動鉄心(81)と固定鉄心(82)と励磁コイル(83)と巻枠(84)とを備えている。固定鉄心(82)はケーシング(86)の底面に固定されている。可動鉄心(81)は、固定鉄心(82)の上側に対面するように設けられている。励磁コイル(83)は巻枠(84)に巻かれている。可動鉄心(81)と巻枠(84)との間には、非通電時に可動鉄心(81)と固定鉄心(82)とを離間させるための一対の復帰バネ(79)が設けられている。
【0093】
移動機構(76)は、外部からの信号によって励磁コイル(83)が通電されると、固定鉄心(82)が励磁されて可動鉄心(81)を引き寄せるように構成されている。可動鉄心(81)から固定鉄心(82)が離れると、接触器(70)は通電状態になる。一方、移動機構(76)は、外部からの信号によって励磁コイル(83)の通電が停止されると、復帰バネ(79)によって可動鉄心(81)が固定鉄心(82)から離れるように構成されている。可動鉄心(81)が固定鉄心(82)に引き寄せられると、接触器(70)は非通電状態になる。
【0094】
さらに、接触器(70)は、上述の通電遮断装置(40)と、上記実施形態2と同様の構成の溶着検出部(65)とを備えている。なお、通電遮断装置(40)には、上記実施形態1、実施形態1の変形例および後述するその他の実施形態の何れの通電遮断装置(40)を用いてもよい。
【0095】
通電遮断装置(40)の切断装置(10)は、端子間部材(71)を切断可能な位置に設けられている。具体的に、切断装置(10)は、進出前のブレード(30)の切断部(31)が可動接触子(73)の前面に対面するように設けられている。
【0096】
本実施形態3では、溶着検出部(65)が可動接点(73a,73b)と固定接点(68a,69a)とが溶着していると判断すると、発火部(37)が作動して火薬が爆発し、ブレード(30)が進出する。ブレード(30)は、可動接触子(73)を切断する。この状態では、プッシャー(32)が可動接触子(73)の切断面に接触している。つまり、ブレード(30)は、プッシャー(32)が可動接触子(73)の切断面に接触するまで進出する。
【0097】
−実施形態3の効果−
本実施形態3では、通電遮断装置(40)によって、電源側端子(74)と負荷側端子(75)の間を強制的に通電不能にすることが可能である。このため、例えば可動接触子(73)と固定接触子(68,69)が溶着した場合であっても、通電遮断装置(40)によって電源側端子(74)と負荷側端子(75)との間を強制的に通電不能にすることで、負荷側の機器の故障を防止することができる。
【0098】
《発明の実施形態4》
次に、本実施形態4について説明する。図16に示すように、本実施形態4は、実施形態1に係る通電遮断装置(40)または実施形態1の変形例に係る通電遮断装置(40)を備えた電気回路遮断器(90)である。この電気回路遮断器(90)は、ブレーカ(50)と接触器(70)と樹脂製のケーシング(91)とを備えている。なお、ブレーカ(50)と接触器(70)についての説明は省略する。
【0099】
ケーシング(91)には、ブレーカ(50)が配置されたブレーカ配置室(88)と、接触器(70)が配置された接触器配置室(89)が障壁を挟んで形成されている。また、ケーシング(91)には、負荷側端子(95)および電源側端子(94)と、ブレーカ(50)と接触器(70)と接続する接続用部材(92)とが設けられている。接続用部材(92)は、ハーネス(12)により構成されている。
【0100】
負荷側端子(95)は、接触器(70)の第1固定接触子(68)に接続されている。電源側端子(94)は、ブレーカ(50)の可動接触子(53)に接続されている。また、接続用部材(92)の一端は、接触器(70)の第2固定接触子(69)に接続されている。接続用部材(92)の他端は、ブレーカ(50)の固定接触子(52)に接続されている。
【0101】
さらに、電気回路遮断器(90)は、上述の通電遮断装置(40)と、上記実施形態2と同様の溶着検出部(65)とを備えている。なお、通電遮断装置(40)には、上記実施形態1、実施形態1の変形例および後述するその他の実施形態の何れの通電遮断装置(40)を用いてもよい。
【0102】
通電遮断装置(40)の切断装置(10)は、接続用部材(92)を切断可能な位置に設けられている。具体的に、切断装置(10)は、進出前のブレード(30)の切断部(31)が接続用部材(92)の前面に対面するよう設けられている。
【0103】
本実施形態4では、ブレーカ(50)において可動接触子(53)と固定接触子(52)が溶着していると判定したり、接触器(70)において可動接触子(73)と固定接触子(68,69)が溶着していると判定した場合に、溶着検出部(65)が発火部(37)を作動させ、ブレード(30)が進出し、ブレード(30)は、接続用部材(92)を切断(破断)する。この状態では、プッシャー(32)が接続用部材(92)の切断面に接触している。つまり、ブレード(30)は、プッシャー(32)が接続用部材(92)の切断面に接触するまで進出する。
【0104】
−実施形態4の効果−
本実施形態4では、切断装置(10)によって接続用部材(92)を切断して、電源側端子(94)と負荷側端子(95)の間を通電不能にすることが可能である。このため、例えばブレーカ(50)や接触器(70)で溶着が生じた場合であっても、切断装置(10)によって電源側端子(94)と負荷側端子(95)の間を通電不能にすることで、負荷側の機器の故障を防止することができる。
【0105】
−その他の実施形態−
上記実施形態については、以下のような構成にしてもよい。
【0106】
上記実施形態1における通電遮断装置(40)は、ブレード部材(30)の刃部(31)およびガイド部(32a)と、第1内筒部材(25)の受け面(25b)との両方を覆う保護部材(15)を備えているが、この限りでなく、ブレード部材(30)の刃部(31)およびガイド部(32a)と第1内筒部材(25)の受け面(25b)とのいずれか一方のみが保護部材によって覆われていてもよい。
【0107】
同様に、上記実施形態1の変形例における通電遮断装置(40)は、ハーネス(12)の表面のうち刃部(31)等のブレード部材(30)に対応する部分と第1内筒部材(25)の受け面(25b)に対応する部分との両方を覆う保護部材(15)を備えているが、この限りでなく、ハーネス(12)の表面のうちブレード部材(30)に対応する部分と第1内筒部材(25)の受け面(25b)に対応する部分とのいずれか一方のみが保護部材(15)によって覆われていてもよい。
【0108】
また、上記各実施形態では、保護部材(15)を薄い膜状に形成したが、この限りでなく、ある程度の厚みを有する板状や柱状に形成してもよい。
【0109】
また、上記実施形態1では、保護部材(15)は刃部(31)および第1内筒部材(25)のみを覆い、上記実施形態1の変形例では、保護部材(15)はハーネス(12)のみを覆っている。しかしこの限りでなく、保護部材が、刃部(31)、第1内筒部材(25)およびハーネス(12)の全てを覆っていてもよい。これにより、ハーネス(12)をより確実に保護できる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上説明したように、本発明は、切断装置および通電遮断装置に特に有用である。
【符号の説明】
【0111】
10 切断装置
12 ハーネス(通電用部材)
15 保護部材(保護部材、保護膜)
23 ストッパ
25 第1内筒部材(受け部材)
25b 受け面
30 ブレード部材
31 刃部
31a 切断部
32 プッシャー(絶縁部)
35 ガス発生部
40 通電遮断装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃部(31)と絶縁性の絶縁部(32)とを有し、上記刃部(31)によって通電用部材(12)を切断するブレード部材(30)と、
該ブレード部材(30)を上記通電用部材(12)側へ進出させるための高圧ガスを発生させるガス発生部(35)と、
上記通電用部材(12)を挟んで上記刃部(31)の反対側に配置され、切断時の通電用部材(12)の受け面(25b)を形成する受け部材(25)と、
上記通電用部材(12)を切断した後の上記ブレード部材(30)の絶縁部(32)が上記通電用部材(12)の切断面の位置で静止するように、上記ブレード部材(30)の進出を規制するストッパ(23)と、
上記ブレード部材(30)および受け部材(25)の少なくとも一方と通電用部材(12)との間に位置し、上記通電用部材(12)におけるブレード部材(30)および受け部材(25)の少なくとも一方との対向面を保護する絶縁性の保護部材(15)とを備えている
ことを特徴とする切断装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記保護部材(15)は、上記通電用部材(12)のブレード部材(30)と受け部材(25)との対向面を覆うように上記通電用部材(12)に設けられている
ことを特徴とする切断装置。
【請求項3】
請求項1において、
上記保護部材(15)は、上記刃部(31)の表面と、上記ブレード部材の前端部に形成され且つ上記通電用部材(12)を両側から挟むガイド部(32a)の内面と、上記受け部材(25)の受け面(25b)とを覆うように上記刃部(31)と上記ガイド部(32a)と上記受け部材(25)とに設けられている
ことを特徴とする切断装置。
【請求項4】
請求項2または3において、
上記保護部材(15)は、上記通電用部材(12)よりも柔らかい材料で構成されている
ことを特徴とする切断装置。
【請求項5】
請求項2において、
上記保護部材(15)は、上記通電用部材(12)の表面に密着して形成されている
ことを特徴とする切断装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項において、
上記保護部材は、膜状に形成される保護膜(15)である
ことを特徴とする切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−151091(P2012−151091A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258491(P2011−258491)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)