説明

切断装置

【課題】切断後の通電用部材を確実に絶縁できる切断装置を提供する。
【解決手段】収容部材(47)には、ブレード部材(30)が通電用部材(12)を切断する前の状態の背圧室(49)と遮断され、且つブレード部材(30)が通電用部材(12)を切断した後の状態の背圧室(49)と連通する逃がし空間(100)が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電用部材を切断する切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電流が流れる通電用部材を切断するための切断装置が知られている。この種の切断装置は、例えば災害時において電源からの電力を遮断するために用いられる。
【0003】
特許文献1には、ガス発生室(背圧室)で高圧のガスを発生させ、このガスの圧力によってブレードを変位させて通電用部材を切断する切断装置が開示されている。具体的に、切断装置は、ブレードを変位可能に収容するケース部材を有している。ブレードの前側には通電用部材が配置され、ブレードの後側(背面側)には背圧室が形成される。切断装置は、背圧室で高圧ガスを発生させるガス発生部を有している。ガス発生部によって背圧室中で高圧ガスが発生されると、背圧室内の圧力が上昇してブレードが前方へ移動する。これにより、ブレードの刃部が通電用部材の被切断部と接触し、この被切断部が切断される。その結果、通電用部材が2つの導電部に分断され、両者の導電部が絶縁状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−86653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような切断装置では、ガス発生部により背圧室中で高圧ガスが発生されると、このガスがブレードとケース部材の隙間等を通じて、通電用部材側に漏れ込んでしまうことがある。従って、通電用部材が切断された後に、分断された2つの導電部の周囲にガスが充満してしまうことがある。このようにして2つの導電部が発生ガスに曝されると、両者の導電部の間では、この発生ガスを通じて放電が生じてしまう虞がある。その結果、切断後の通電用部材の絶縁性が損なわれてしまうという問題が生じる。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、切断後の通電用部材を確実に絶縁できる切断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、切断装置を対象とし、通電用部材(12)の被切断部(40)を切断するためのブレード部材(30)と、筒状に形成されて上記ブレード部材(30)を移動可能に収容するとともに、軸方向の一端側に上記被切断部(40)を露出させる開口(48)を形成し、軸方向の他端側に上記ブレード部材(30)に臨む背圧室(49)を区画する収容部材(47)と、該背圧室(49)中で上記ブレード部材(30)を上記被切断部(40)側に向かって変位させるための高圧ガスを発生させるガス発生部(35)とを備え、上記収容部材(47)には、上記ブレード部材(30)が通電用部材(12)を切断する前の状態の上記背圧室(49)と遮断され、且つ上記ブレード部材(30)が通電用部材(12)を切断した後の状態の上記背圧室(49)と連通する逃がし空間(100)が形成されていることを特徴とする。
【0008】
第1の発明では、ガス発生部(35)によって発生された高圧ガスが、背圧室(49)中に充満する。これにより、背圧室(49)の圧力が上昇し、ブレード部材(30)が収容部材(47)の内部を軸方向に移動する。この収容部材(47)は収容部材(47)の開口(48)を通じて通電用部材(12)の被切断部(40)と接触し、この被切断部(40)に剪断力を作用させる。その結果、この被切断部(40)が切断されて通電用部材(12)が分断される。
【0009】
本発明の収容部材(47)には、逃がし空間(100)が形成される。ブレード部材(30)が通電用部材(12)を切断する前の状態では、逃がし空間(100)が背圧室(49)と遮断される。このため、背圧室(49)では、高圧ガスの発生に伴い圧力を確実に上昇させることができる。
【0010】
一方、高圧ガスが発生してブレード部材(30)が通電用部材(12)を切断した後には、背圧室(49)と逃がし空間(100)とが連通する。このため、背圧室(49)で発生させた高圧ガスを逃がし空間(100)側へ送ることができる。また、背圧室(49)と逃がし空間(100)とを連通させることで、背圧室(49)の圧力上昇を緩和させることができる。よって、本発明では、背圧室(49)の高圧ガスが、収容部材(47)とブレード部材(30)との間の隙間等を通じて、通電用部材(12)の被切断部(40)の近傍へ漏れてしまうことが回避される。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、上記逃がし空間は、上記ブレード部材(30)が通電用部材(12)を切断した後の状態の上記背圧室(49)と上記収容部材(47)の外部とを連通する排ガス通路(100)を構成していることを特徴とする。
【0012】
第2の発明では、収容部材(47)の逃がし空間(100)が、高圧ガスの排ガス通路(100)を構成する。具体的に、ブレード部材(30)が通電用部材(12)を切断した後には、背圧室(49)が排ガス通路(100)と連通する。これにより、高圧ガスは排ガス通路(100)を流れて収容部材(47)の外部へ流出する。その結果、背圧室(49)内の高圧ガスを速やかに外部へ逃がすとともに、背圧室(49)の内圧を速やかに低下できる。従って、背圧室(49)の高圧ガスが、収容部材(47)とブレード部材(30)との間の隙間等を通じて、通電用部材(12)の被切断部(40)の近傍へ漏れてしまうことが回避される。
【0013】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記逃がし空間(100)は、上記収容部材(47)のうち上記ブレード部材(30)の外周部位に形成されていることを特徴とする。
【0014】
第3の発明の収容部材(47)では、ブレード部材(30)の周囲に位置する外周部位に逃がし空間(100)が形成される。これにより、背圧室(49)で発生した高圧ガスは、ブレード部材(30)の外周側に案内されて逃がし空間(100)へ送られる。よって、高圧ガスが、通電用部材(12)の被切断部(40)側へ流れてしまうことを回避し易くなる。
【0015】
第4の発明は、第3の発明において、上記逃がし空間(100)は、上記ブレード部材(30)の外周部位を径方向に延びる少なくとも1本の径方向通路(102,103,110,120)を含んでいることを特徴とする。
【0016】
第4の発明では、背圧室(49)で発生させた高圧ガスが、径方向通路(102,103,110,120)を経由してブレード部材(30)の径方向外方へ流れる。よって、高圧ガスが、通電用部材(12)の被切断部(40)側へ流れてしまうことを回避し易くなる。
【0017】
第5の発明は、第1乃至第4のいずれか1つの発明において、上記逃がし空間(100)の流入端には、上記ブレード部材(30)が通電用部材(12)を切断する前の状態で上記収容部材(47)の内周面を構成するように該逃がし空間(100)を閉塞し且つ上記ガス発生部(35)の高圧ガスによって破れる薄壁部(151)が形成されていることを特徴とする。
【0018】
第5の発明では、逃がし空間(100)の流入端に薄壁部(151)が形成される。ブレード部材(30)が通電用部材(12)を切断する前の状態では、薄壁部(151)によって逃がし空間(100)の流入端が閉塞される。これにより、収容部材(47)の内部では、薄壁部(151)がブレード部材(30)に面する内周面を構成する。ガス発生部(35)から高圧ガスが発生してブレード部材(30)が通電用部材(12)を切断すると、高圧ガスの圧力によって薄壁部(151)が破断する。その結果、背圧室(49)と逃がし空間(100)とが連通し、高圧ガスが逃がし空間(100)へ流出する。
【0019】
第6の発明は、第1乃至第5のいずれか1つの発明において、上記収容部材(47)は、上記ブレード部材(30)を移動可能に収容する内筒部(24)と、該内筒部(24)及び上記通電用部材(12)を収容するケース(20)とを有し、上記逃がし空間(100)は、上記内筒部(24)に形成され流出端が該内筒部(24)の外周面に開口する内筒側通路(110)と、該内筒側通路(110)の流出端と連通するようにケース(20)に形成されるケース側通路(120)とを含み、上記内筒部(24)とケース(20)との間には、上記内筒側通路(110)を流出したガスが切断後の通電用部材(12)側へ流れるのを防止するシール部(152,153,154,155,156)が設けられていることを特徴とする。
【0020】
第6の発明では、高圧ガスが発生してブレード部材(30)が通電用部材(12)を切断することで、背圧室(49)の高圧ガスが、内筒側通路(110)、ケース側通路(120)を順に流れて、収容部材(47)の外部へ排出される。この際、高圧ガスは、内筒部(24)と該内筒部(24)を収容するケース(20)との隙間を通じて、切断状態の通電用部材(12)側へ流れようとする。しかしながら、本発明では、内筒部(24)とケース(20)との間にシール部(152,153,154,155,156)を形成したので、このような高圧ガスの漏れを回避できる。
【0021】
第7の発明は、第1乃至第6のいずれか1つの発明において、上記収容部材(47)は、上記ブレード部材(30)を移動可能に収容する内筒部(24)と、該内筒部(24)及び上記通電用部材(12)を収容する収容部(13)と、該収容部(13)を覆うカバー部(14)とを有し、上記逃がし空間(100)は、上記内筒部(24)に形成される内筒側通路(110)と、該内筒側通路(110)の流出端と連通するように収容部(13)に形成され且つ流出端が上記カバー部(14)の壁面に向かって開口するケース側通路(120)とを含んでいることを特徴とする。
【0022】
第7の発明では、高圧ガスが発生してブレード部材(30)が通電用部材(12)を切断することで、背圧室(49)の高圧ガスが、内筒側通路(110)、ケース側通路(120)を順に流れる。ケース側通路(120)を流れた高圧ガスは、カバー部(14)の壁面に向かって流出する。これにより、排ガス通路(100)から流出したガスの圧力をカバー部(14)によって低減できる。
【0023】
第8の発明は、第7の発明において、上記収容部(13)と上記カバー部(14)との間には、上記ケース側通路(120)を流出したガスが切断後の通電用部材(12)側へ流れるのを防止するシール部(133,144)が設けられていることを特徴とする。
【0024】
第8の発明では、収容部(13)とカバー部(14)との間にシール部(133,144)が設けられる。これにより、ケース側通路(120)を流出したガスが、収容部(13)とカバー部(14)との隙間を通じて、通電用部材(12)側へ漏れ込んでしまうことが回避される。
【0025】
第9の発明は、第1乃至6のいずれか1つの発明において、上記逃がし空間(100)は、上記通電用部材(12)のうち上記被切断部(40)と異なる部位の導電部(41)に向かって開口するガス流出口(103a)を含んでいることを特徴とする。
【0026】
第9の発明では、背圧室(49)から逃がし空間(100)に送られた高圧ガスが、ガス流出口(103a)を介して通電用部材(12)の導電部(41)に向かって流出する。これにより、逃がし空間(100)から流出したガスの圧力を導電部(41)によって緩和できる。
【0027】
第10の発明は、第1乃至第9のいずれか1つの発明において、上記通電用部材(12)は、上記被切断部(40)が上記ブレード部材(30)によって切断されることで該被切断部(40)の両側に分断して形成される一対の導電部(41,41)を有し、上記逃がし空間(100)は、上記一対の導電部(41,41)のうちの片側に寄った部位に形成されることを特徴とする。
【0028】
第10の発明では、ブレード部材(30)によって通電用部材(12)が切断されることで、一対の導電部(41,41)が電気的に分断される。この状態において、仮に逃がし空間(100)から漏洩した高圧ガスが両者の導電部(41,41)に跨ってしまうと、この高圧ガスを介して両者の導電部が導通してしまう。これに対し、本発明では、逃がし空間(100)が一方の導電部(41)に片寄る部位に形成される。このため、仮に逃がし空間(100)から高圧ガスが漏洩したとしても、この高圧ガスが両者の導電部(41,41)に跨ってしまうことを抑制できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、被切断部(40)が切断された後の状態の背圧室(49)を逃がし空間(100)と連通させることで、高圧ガスが通電用部材(12)の被切断部(40)側へ流れてしまうことを抑制している。よって、通電用部材(12)において、分断された部位が高圧ガスを介して導通してしまうことを回避できる。従って、通電用部材(12)では、分断された部位の間の絶縁を確実に確保できるので、この切断装置の信頼性を向上できる。
【0030】
第2の発明では、背圧室(49)の高圧ガスを排ガス通路(100)を介して収容部材(47)へ排出しているため、背圧室(49)の高圧ガスが通電用部材(12)の被切断部(40)側へ流れるのを確実に防止できる。
【0031】
また、このようにして背圧室(49)の内圧を低下させると、切断装置の使用後において、切断装置を安全に取り扱うことができる。即ち、切断装置の使用後において、背圧室(49)内の圧力が高い状態であると、切断装置を廃棄した後、あるいは分解する際、背圧室(49)の高圧ガスが噴出して危険を伴う可能性がある。これに対し、本発明では、通電用部材(12)の切断後には、背圧室(49)の内圧が低下する。よって、切断装置の使用後の安全性を確保できる。
【0032】
第3の発明では、収容部材(47)の外周部位に逃がし空間(100)を形成しているため、高圧ガスが通電用部材(12)側へ流れてしまうのを確実に防止できる。特に第4の発明では、収容部材(47)に径方向通路(102,103,110,120)を延ばしているため、高圧ガスを通電用部材(12)の被切断部(40)と異なる方向へ確実に案内できる。
【0033】
第5の発明では、逃がし空間(100)の流入端に薄壁部(151)を形成することで、ブレード部材(30)の外周面が逃がし空間(100)の流入口の縁部に引っ掛かることを防止できる。これにより、ブレード部材(30)の外周面や収容部材(47)の内壁に凹み傷等が形成されて背圧室(49)の高圧ガスが通電用部材(12)側に漏れてしまうことを回避できる。このように逃がし空間(100)の流入端に薄壁部(151)を形成すれば、逃がし空間(100)の射出成形時に、この流入端にバリが発生することもない。従って、逃がし空間(100)の加工における品質の向上、工数の削減を図ることができる。
【0034】
第6の発明では、内筒部(24)とケース(20)との間の隙間を通じて、高圧ガスが通電用部材(12)側へ届いてしまうのを防止できる。また、第8の発明では、収容部(13)とカバー部(14)との間の隙間を通じて、高圧ガスが通電用部材(12)側へ届いてしまうのを防止できる。従って、これらの発明によれば、通電用部材(12)において、分断された部位の間の絶縁を確実に確保できるので、この切断装置の信頼性を向上できる。
【0035】
第7の発明では、ケース側通路(120)を流出した高圧ガスをカバー部(14)に当てるようにしているため、この高圧ガスの圧力を緩和できる。従って、高圧ガスが収容部材(47)の外部へ比較的大きな流速で吹き出されてしまうのを回避できる。
【0036】
また、第9の発明では、逃がし空間(100)の高圧ガスをガス流出口(103a)を介して導電部(41)に当てるようにしているため、この高圧ガスの圧力を低減できる。従って、逃がし空間(100)に送った高圧ガスの圧力により、収容部材(47)が破損したり、高圧ガスが収容部材(47)の外側へ急激に噴出されたりすることを回避できる。また、逃がし空間(100)を通過する高圧ガスは比較的高温である。しかしながら、本発明では、高圧ガスが収容部材(47)に直接的に吹き付けられるのを防止できるので、熱の影響により、収容部材(47)が溶融/破損してしまうことも防止できる。また、比較的高温の高圧ガスが収容部材(47)の外側へ急激に噴出されてしまうことも回避できる。
【0037】
第10の発明では、通電用部材(12)の両側の導電部(41,41)のうちの一方に片寄るように高圧ガスを案内できる。従って、これらの発明では、通電用部材(12)の分断箇所の絶縁を一層確実に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、本実施形態1に係る切断装置を示す平面図であり、高圧ガスが発生する前の状態を表したものである。
【図2】図2は、図1のII−II断面図である。
【図3】図3は、図1のIII−III断面図である。
【図4】図4は、本実施形態1に係る切断装置の外観構造を示す斜視図である。
【図5】図5は、本実施形態1に係る切断装置の内部構造を示す斜視図である。
【図6】図6は、本実施形態1に係るブレード及びハーネスを示す斜視図である。
【図7】図7は、本実施形態1に係るブレードを示す斜視図である。
【図8】図8は、本実施形態1に係る切断装置を示す平面図であり、高圧ガスが発生した後の状態を表したものである。
【図9】図9は、実施形態2に係る切断装置の平面断面図であり、高圧ガスが発生する前の状態を表したものである。
【図10】図10は、図9のX−X線に沿う断面図である。
【図11】図11は、ハーネスの一部を省略した図10のXI−XI線に沿う断面図である。
【図12】図12は、実施形態2に係る切断装置の外観構造を示す斜視図である。
【図13】図13は、実施形態2に係る切断装置の内部構造を示す斜視図である。
【図14】図14は、実施形態2に係るカバー部の内部構造を示す斜視図である。
【図15】図15は、実施形態2に係る第2内筒部材の外観構造を示す斜視図である。
【図16】図16は、実施形態2に係るブレードの切断部を示す斜視図である。
【図17】図17は、図10のXVII−XVII線に沿う断面図である。
【図18】図18は、実施形態2に係る切断装置の平面断面図であり、高圧ガスが発生した後の状態を表したものである。
【図19】図19(A)は、変形例1に係る切断装置の排ガス通路の近傍を模式的に表した構成図であり、薄壁部が破断される前の状態を示したものである。図19(B)は、変形例1に係る切断装置の排ガス通路を模式的に表した構成図であり、薄壁部が破断された後の状態を示したものである。
【図20】図20は、変形例2に係る切断装置の排ガス通路の近傍を模式的に表した構成図である。
【図21】図21は、変形例3に係る切断装置の排ガス通路の近傍を模式的に表した構成図である。
【図22】図22は、変形例4に係る切断装置の排ガス通路の近傍を模式的に表した構成図である。
【図23】図23は、変形例5に係る切断装置の排ガス通路の近傍を模式的に表した構成図である。
【図24】図24は、本実施形態3に係るブレーカを示す概略構成図である。
【図25】図25は、本実施形態4に係る接触器を示す概略構成図である。
【図26】図26は、本実施形態5に係る電気回路遮断器を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0040】
〈発明の実施形態1〉
図1〜図5に示すように、本実施形態1に係る切断装置(10)は、ガス発生剤の反応により発生した高圧ガスを用いてブレード(30)を進行させることによって、通電用部材を構成するハーネス(12)を切断するように構成されている。この切断装置(10)は、高圧ガスを発生させるためのガス発生剤として火薬を用いている。
【0041】
切断装置(10)は、図1及び図5に示すように、ケース(11)を備え、該ケース(11)の内部に、ストッパ(23)と内筒(24)とブレード(30)とガス発生部(35)とが収容されている。
【0042】
なお、以下では説明の便宜上、図2における左右方向の左側を「前側」、右側を「後側」と称し、図2における上下方向の上側を「上側」、下側を「下側」と称して説明する。また、図2における紙面に直交する方向の手前側を「左側」、奥側を「右側」と称して説明する。
【0043】
〈切断装置の基本構造〉
図1、図2、図4及び図5に示すように、上記ケース(11)は、箱状に形成された樹脂ケース(20)と筒状に形成された金属ケース(27)とを備えている。金属ケース(27)の前側部分は樹脂ケース(20)内の後述する挿通孔(21)に収容されている。
【0044】
樹脂ケース(20)は、例えばPC(ポリカーボネート)等の樹脂によって形成されている。樹脂ケース(20)を構成する樹脂材料は、これに限られず、プラスチック等を含む樹脂材料であればよい。また、上記樹脂ケース(20)は、略直方体形状に形成されて収容部を構成する土台部(13)と、該土台部(13)の下面(13a)及び後面(13b)以外の面を一体的に覆うカバー部(14)とを有している
土台部(13)は、上面(13c)に断面が半円形状の溝(21a)が形成されている(図5を参照)。溝(21a)は、土台部(13)の後面(13b)から前面(13d)に向かって延び、後面(13b)のみに開口するように構成されている。
【0045】
カバー部(14)は、土台部(13)の上面(13c)、前面(13d)、左面(13e)及び右面(13f)を覆うように構成されている。カバー部(14)における土台部(13)の上面(13c)に対する対向面(14a)には、土台部(13)の溝(21a)に対応する溝(21b)が形成されている。溝(21b)は、カバー部(14)の後面(14b)から前面(14c)に向かって延び、後面(14b)のみに開口するように構成されている。
【0046】
このような構成により、樹脂ケース(20)の内部には、上記土台部(13)の溝(21a)と上記カバー部(14)の溝(21b)とによって、樹脂ケース(20)の後端面に開口する略円柱形状の挿通孔(21)が形成される。挿通孔(21)には、前端から後端に向かって、上記ストッパ(23)、内筒(24)、及び金属ケース(27)の前側部分が収容されている。
【0047】
ストッパ(23)は、進行したブレード(30)を受け止めて停止させるためのものである。ストッパ(23)は、挿通孔(21)の前端部に配置され、樹脂材料によって有底円筒形状に形成されている。具体的には、ストッパ(23)は、円板状の底部(23a)と円筒状の筒部(23b)とを有し、挿通孔(21)の前端部において底部(23a)が筒部(23b)よりも前方に位置するように配置されている。底部(23a)の中央部には、上記樹脂ケース(20)の排気孔(29)に連通する孔(23c)が形成されている。
【0048】
内筒(24)は、挿通孔(21)において上記ストッパ(23)の後方に配置されて、ハーネス(12)を支持するためのものである。内筒(24)は、第1内筒部材(25)と第2内筒部材(26)とで構成され、両部材(25,26)でハーネス(12)を挟持している。
【0049】
第1内筒部材(25)は、セラミックスによって略円筒状に形成され、挿通孔(21)におけるストッパ(23)の後側に、ストッパ(23)と同軸となるように配置されている。第1内筒部材(25)は、ブレード(30)が挿通可能な内径に構成されている。
【0050】
第2内筒部材(26)は、樹脂材料によって略円筒状に形成され、挿通孔(21)における第1内筒部材(25)の後側において、第1内筒部材(25)と同軸となるように配置されている。第2内筒部材(26)は、内径が第1内筒部材(25)の内径と概ね等しくなるように構成されている。また、第2内筒部材(26)は、後側部分が前側部分よりも肉薄に構成されて外径が小さくなっている。第2内筒部材(26)の前側部分には、ハーネス(12)を挿通するための2つの切り欠き(26a)が形成されている。2つの切り欠き(26a)は、樹脂ケース(20)の設置孔(22)に対応する位置に形成されている。各切り欠き(26a)は、第2内筒部材(26)の外周縁から内周縁に向かって延び、断面がハーネス(12)の矩形断面よりも僅かに大きな矩形断面となるように形成されている。また、第2内筒部材(26)の肉薄の後側部分の外周面には、環状の溝が形成され、該溝にはOリング(26b)が設置されている。
【0051】
このように、内筒(24)では、絶縁部材である第1内筒部材(25)、及び第2内筒部材(26)がハーネス(12)を両側から挟み込むことで、ハーネス(12)を支持している。
【0052】
金属ケース(27)は、略円筒状に形成された金属製の部材で構成され、前側部分が挿通孔(21)に収容される一方、後側部分は樹脂ケース(20)から露出している。金属ケース(27)の前側部分は、挿通孔(21)の第2内筒部材(26)の後方において、第2内筒部材(26)と同軸となるように配置されている。また、金属ケース(27)は、前端部が第2内筒部材(26)の肉薄の後側部分に外嵌されている。第2内筒部材(26)の後側部分と該後側部分に外嵌された金属ケース(27)の前端部との間は、上記Oリング(26b)によってシールされている。金属ケース(27)の前側部分であって上記前端部以外の部分は、内径が第2内筒部材(26)の内径と概ね等しくなるように構成されている。
【0053】
以上のように、挿通孔(21)に収容されたストッパ(23)、内筒(24)及び金属ケース(27)によって、その内部に略円柱状の通路(17)が形成され、該円柱通路(17)の一部がブレード(30)の進行路を構成している。また、上記円柱通路(17)は、前端部はストッパ(23)の後述する底部(23a)によって閉塞される一方、後端部は上記金属ケース(27)の内部に収容されたガス発生部(35)によって閉塞されている。上記円柱通路(17)には、設置孔(22)に収容されたハーネス(12)の幅狭部(12a)の一部が露出すると共に、該露出部分と上記ガス発生部(35)との間にブレード(30)が収容されている。
【0054】
ガス発生部(35)は、ブレード(30)を進行させてハーネス(12)を切断させるための高圧ガスを発生させるものである。ガス発生部(35)は、ガス発生剤としての火薬と、該火薬を起爆するための発火部(37)と、該発火部(37)を保持して上記円柱通路(17)の後端部を閉塞する蓋部材(39)とを備えている。
【0055】
蓋部材(39)は、略円筒状に形成されて金属ケース(27)に内嵌された筒部(39a)と、上記発火部(37)を保持すると共に筒部(39a)の中途部を閉塞する閉塞部(39b)とを有している。筒部(39a)及び閉塞部(39b)は、金属材料によって一体に形成されている。閉塞部(39b)によって、上記円柱通路(17)内のブレード(30)の後方には閉空間が形成され、この閉空間が上記火薬が充填されたガス発生室(36)を構成している。
【0056】
発火部(37)は、雷管によって構成され、起爆薬を有する前端部が上記ガス発生室(36)内に露出するように蓋部材(39)の閉塞部(39b)に保持されている。
【0057】
このような構成により、発火部(37)によってガス発生室(36)内の火薬が爆発すると、ガス発生室(36)内で高圧ガスが発生し、該高圧ガスがガス発生室(36)内の圧力を上昇させることによってブレード(30)を前方に進行させる。
【0058】
ブレード(30)は、高圧ガスを受けて上記円柱通路(17)内を前方に進行してハーネス(12)の被切断部(40)を切断するためのブレード部材を構成している。ブレード(30)は、図6及び図7に示すように、金属材料(例えば、鋼材)によって形成された切断部(31)と、該切断部(31)を取り付けるプッシャー(32)とを備えている。
【0059】
プッシャー(32)は、切断部(31)を保持すると共に、上記ガス発生室(36)において発生した高圧ガスの圧力を受けて切断部(31)を前方に進行させるものである。プッシャー(32)は、樹脂材料によって略円柱状に形成され、上記円柱通路(17)のガス発生部(35)の前方に収容されている。プッシャー(32)は、後述する切断部(31)よりも僅かに大径に形成されている。
【0060】
切断部(31)は、プッシャー(32)の前端部に取り付けられ、刃部(31a)と、該刃部(31a)と一体に形成された一対のガイド部(31b,31b)とを有している。刃部(31a)は、肉厚の円板状の部材によって構成され、前面の上下方向中央部が後方に凹んだ形状に構成されている。一方、一対のガイド部(31b,31b)は、上記刃部(31a)の前面の上端部と下端部とから前方に突出する突起によって構成されている。一対のガイド部(31b,31b)は、刃部(31a)の前面からハーネス(12)を避けて該ハーネス(12)よりも前方に突出している。各ガイド部(31b,31b)の内面はハーネス(12)の側面に沿う形状に形成される一方、外面は円柱通路(17)を形成する壁面に沿う形状に形成されている。また、刃部(31a)の前面の外縁部であって一対のガイド部(31b,31b)によって挟まれる部分が、ハーネス(12)を切断する刃先部に構成されている。
【0061】
〈ハーネスの構成〉
ハーネス(12)は長板状の金属板が折り返されて成形されている。図1〜図6に示すように、ハーネス(12)は、ブレード(30)の切断部(31)に対応する被切断部(40)と、該被切断部(40)の左右両側に形成される一対の導電部(41)とを有している。各導電部(41)は、一対の縦板部(42,42)、一対の屈曲板部(43,43)、一対の横板部(44,44)、及び一対の支持板部(45,45)が一体的に連接して構成されている。
【0062】
各縦板部(42,42)は、被切断部(40)と同一面を成すように左右方向にそれぞれ延びている。縦板部(42,42)は、ブレード(30)の変位方向と直交する方向に延びる一対の導電部を構成している。各屈曲板部(43,43)は、各縦板部(42)の側端から後方に屈曲する、水平断面が略L字状の部材で構成されている。各横板部(44)は、屈曲板部(43,43)の後端と連接しており、縦板部(42)よりも上下の幅が大きく形成されている。横板部(44,44)のうち右側の横板部(44a)は、詳細は後述するガス流出口(103a)に面する衝突板(導電部)を構成している。支持板部(45,45)は、横板部(44,44)の下端から左右両側にそれぞれ広がっている。支持板部(45,45)には、切断装置(10)を所定の固定部材に締結するための締結穴(45a,45a)が形成されている。
【0063】
〈ハーネスの設置構造〉
切断装置(10)には、上記ハーネス(12)を設置するための設置孔(22)が形成されている。設置孔(22)は、樹脂ケース(20)の土台部(13)及びカバー部(14)に跨って形成される。設置孔(22)は、挿通孔(21)の軸心を含む鉛直面を基準として対象な形状に形成されている。具体的に、設置孔(22)は、一対の縦孔(22a,22a)と、一対の横孔(22b,22b)とを有している。縦孔(22a,22a)は、第2内筒部材(26)の各切り欠き(26a)と連通しながら、ハーネス(12)の被切断部(40)の左右両側にそれぞれ形成されている。各縦孔(22a)には、対応する縦板部(42,42)がそれぞれ設置される。各横孔(22b,22b)は、隣接する縦孔(22a)と連通しながら、ブレード(30)の径方向外方の左右両側にそれぞれ形成されている。各横孔(22b,22b)には、対応する横板部(44,44)がそれぞれ設置される。各横孔(22b)は、その上端及び後端が樹脂ケース(20)によって閉塞される。一方、各横孔(22b)は、土台部(13)の下端面まで延びている(図3を参照)。
【0064】
〈ブレード収容部材及び排ガス通路の構成〉
切断装置(10)では、樹脂ケース(20)、金属ケース(27)、及び第2内筒部材(26)が、ブレード(30)を移動可能に収容する筒状のブレード収容部材(47)を構成している。つまり、ブレード収容部材(47)は、軸方向の一端側(前端側)にハーネス(12)の被切断部(40)を露出させる露出開口部(48)を形成している。また、ブレード収容部材(47)は、軸方向の他端側(後端側)にブレード(30)の後端部に臨む背圧室(49)を区画している。背圧室(49)は、上述したガス発生室(36)の一部を構成している。
【0065】
ブレード収容部材(47)には、ブレード(30)の周囲に形成される筒部に、ガス発生室(36)で発生した高圧ガスを背圧室(49)の外部へ排出するための排ガス通路(100)が形成されている。この排ガス通路(100)は、高圧ガスが発生した後の背圧室(49)と連通することで、背圧室(49)の圧力を低減させる逃がし空間を兼ねている。この排ガス通路(100)の構成について、図1及び図3を参照しながら詳細に説明する。
【0066】
排ガス通路(100)は、高圧ガスの流れの上流側から下流側に向かって順に、環状通路(101)、連通路(102)、溝内通路(103)、及び排出通路(104)を含んでいる。
【0067】
環状通路(101)は、第2内筒部材(26)の後端側に形成されている。具体的に、ブレード収容部材(47)では、第2内筒部材(26)の後端面に対して金属ケース(27)の内壁面(該後端面に対向する面)が離間するように、金属ケース(27)に第2内筒部材(26)が嵌合している。これにより、第2内筒部材(26)と金属ケース(27)との間に、環状の空間から成る環状通路(101)が形成される。
【0068】
環状通路(101)は、ブレード(30)の変位に伴って、背圧室(49)との連通状態が切り換えられるように構成されている。具体的に、ガス発生室(36)内で高圧ガスが発生する前の状態(即ち、ブレード(30)が例えば図1に示す位置であり、ハーネス(12)がブレード(30)によって切断される前の状態)において、環状通路(101)は背圧室(49)と遮断される。一方、ガス発生室(36)内で高圧ガスが発生した後の状態(即ち、ブレード(30)が例えば図8に示す位置であり、ハーネス(12)がブレード(30)によって切断された後の状態)において、環状通路(101)が背圧室(49)と連通する。
【0069】
連通路(102)は、金属ケース(27)の外周面に貫通形成される。連通路(102)は、流入端が環状通路(101)と接続して連通している。連通路(102)の流出端は、溝内通路(103)と接続して連通している。連通路(102)は、ブレード収容部材(47)を径方向外方へ延びる通路を構成している。連通路(102)は、ハーネス(12)の一対の導電部(41,41)のうち片側(図1における右側)の導電部(41)に寄った部位に形成されている。連通路(102)の縦断面(通路断面)は、円形状に形成されている。
【0070】
溝内通路(103)は、土台部(13)の上面(13c)に形成されている(例えば図5を参照)。溝内通路(103)は、連通路(102)と同様、ブレード収容部材(47)を径方向外方に延びている。溝内通路(103)の流出端は、排出通路(104)と接続して連通している。溝内通路(103)は、縦断面が例えば半円形状、あるいは矩形状の溝によって構成されている。溝内通路(103)の通路面積は、連通路(102)の通路面積よりも大きくなっている。なお、樹脂ケース(20)のカバー部(14)において、溝内通路(103)と対向する部位にも溝を形成してもよい。これにより、樹脂ケース(20)に形成される溝内通路(103)の通路断面積を更に拡大できる。
【0071】
上述した連通路(102)及び溝内通路(103)は、ブレード(30)の変位方向と直交するように延びる1本の径方向通路を構成している。
【0072】
土台部(13)の上面(13c)には、ブレード収容部材(47)の軸線を含む鉛直面を挟んで、上述した溝内通路(103)と反対側の部位に、補助溝内通路(105)が形成されている。この補助溝内通路(105)は、通常、連通路(102)と連通しておらず、よって排ガス通路(100)の一部を構成していない。しかしながら、切断装置(10)の組立工程において、仮に作業者が図3の状態の金属ケース(27)を軸周りに180°回転させた状態で組立ててしまった場合、連通路(102)が補助溝内通路(105)と連通する。この場合には、補助溝内通路(105)が、上述した溝内通路(103)と同様の排ガス通路(100)の一部として機能する。つまり、補助溝内通路(105)は、金属ケース(27)を180°反転させて組立ててしまった場合にも、ガス排出通路(100)を確実に形成するための予備用の通路である。
【0073】
排出通路(104)は、片側の横孔(22b)(右側の横孔(22b))のうちハーネス(12)の横板部(44a)の内側に仕切られた空間によって構成されている。排出通路(104)は、左右に扁平な直方体形状に形成されている。排出通路(104)は、流入端から流出端に向かって土台部(13)を鉛直下方に延びている。排出通路(104)の流出端(104a)は、土台部(13)の下面(13a)に開口している。この流出端(106)は、ブレード収容部材(47)内の高圧ガスを外部へ排出するガス排出口を構成している。
【0074】
排出通路(104)では、ハーネス(12)の横板部(44a)が、排出通路(104)を区画するための壁面の一部を形成している。また、この横板部(44a)は、溝内通路(103)のガス流出口(103a)に面する衝突板を構成している。横板部(44a)は、ブレード収容部材(47)の樹脂ケース(20)と比べて剛性が高い材料で構成されている。よって、ガス流出口(103a)から流出した高圧ガスの圧力を、横板部(44a)によって受けることで、樹脂ケース(20)が破損してしまうことを防止できる。
【0075】
−切断動作−
本実施形態の切断装置(10)の基本的な動作について説明する。
【0076】
本実施形態1の切断装置(10)は、例えば工場などの電気機器のハーネス(12)が第1内筒部材(25)と第2内筒部材(26)との間を通るように、設置孔(22)に挿通されて設置される。ハーネス(12)は、第1内筒部材(25)及び第2内筒部材(26)に挟まれて支持される。
【0077】
切断装置(10)は、発火部(37)が火災報知器や地震警報機などに接続された状態で設置される。発火部(37)には、火災報知器が火災を感知したときや、地震警報機が地震を感知したときに、警告信号が入力される。警告信号が入力されると、発火部(37)はガス発生室(36)内の火薬を爆発させる。
【0078】
図1に示す状態の切断装置(10)において、ガス発生室(36)内の火薬が爆発すると、ガス発生室(36)で高圧ガスが発生する。これにより、ブレード(30)の後側の背圧室(49)の圧力が急上昇する。すると、ブレード(30)は背圧室(49)の圧力を駆動源として、前方へ移動する。ブレード(30)が前方へ進行して刃部(31a)が、ハーネス(12)に衝突すると、ハーネス(12)の被切断部(40)に剪断力が作用する。これにより、ハーネス(12)は、一対の導電部(41,41)を残すようにして被切断部(40)が切断され、これらの導電部(41,41)が分断される。その結果、ハーネス(12)が非導電状態となる。
【0079】
ハーネス(12)を切断したブレード(30)は、被切断部(40)を保持するようにしながら更に前方へ移動する。このブレード(30)は、ストッパ(23)の内周面に摺接しながら更に前方へ移動して推進力を徐々に失い、ストッパ(23)の底部(23b)に当接して停止する(図8を参照)。
【0080】
ブレード(30)がハーネス(12)を切断した後に静止すると、ハーネス(12)の各縦板部(42,42)の切断箇所が、絶縁性のプッシャー(32)と軸直角方向に連なる状態となる。このため、一対の導電部(41,41)が、ブレード(30)を介して再び通電状態となってしまうことが確実に阻止される。
【0081】
−高圧ガスの排出動作−
切断装置(10)によるハーネス(12)の切断動作時には、火薬の爆発に伴いガス発生室(36)で高圧ガスが発生する。このようにして、背圧室(49)中で高圧ガスが発生されると、この高圧ガスがブレード(30)の外周面と円柱通路(17)の内周面との間の隙間を通じて、ハーネス(12)の被切断部(40)の近傍の空間まで流出してしまう虞がある。このようにして、切断された後の各導電部(41,41)の切断箇所に高圧ガスが流出すると、この高圧ガスを介して両者の導電部(41,41)の間でスパーク等の放電が生じうる。特に、火薬の爆発に伴って生成される高圧ガス中には、導電性を有する不純物(例えばスス等の炭素成分)が含まれているため、高圧ガスの導電率が増大し易い。よって、このような高圧ガスが被切断部(40)の近傍へ流出することで、両者の導電部(41,41)の間の絶縁性が損なわれてしまい、切断装置(10)の信頼性を確保できないという問題が生じる。そこで、本実施形態では、このような高圧ガスの漏洩を回避すべく、切断装置(10)に排ガス通路(100)を形成し、高圧ガスを排出するようにしている。このような高圧ガスの排出動作について、図1、図3、及び図8を参照しながら説明する。
【0082】
ガス発生室(36)の爆薬が爆発する前の状態では、ブレード(30)が図1に示すように、後方寄りに位置している。この状態では、排ガス通路(100)の環状通路(101)が、背圧室(49)と遮断される。従って、この状態からガス発生室(36)で高圧ガスが発生した時点においては、背圧室(49)の高圧ガスが排ガス通路(100)側へ流出してしまうことがない。つまり、高圧ガスの発生時には、背圧室(49)が所定の容積の閉空間となるため、背圧室(49)の圧力を確実に上昇できる。よって、この圧力を利用して、ブレード(30)を確実に前方へ進行させることができる。
【0083】
このようにして、ブレード(30)が前方へ移動し、ハーネス(12)を切断した後には、背圧室(49)が環状通路(101)と連通する。背圧室(49)と環状通路(101)とが連通するタイミングは、ブレード(30)が切断された後であって、ブレード(30)が静止する前のタイミングであることが好ましい。ブレード(30)の切断前から背圧室(49)と環状通路(101)とが連通してしまうと、ハーネス(12)を確実に切断できない可能性があるからである。一方、ハーネス(12)が切断された後には、背圧室(49)と環状通路(101)とをできる限り早いタイミングで連通される方がよい。ハーネス(12)の切断後においては、背圧室(49)の高圧ガスを速やかに排ガス通路(100)側に逃がした方が、一対の導電部(41,41)の間に高圧ガスが漏れてしまうことを確実に回避できるからである。
【0084】
背圧室(49)と環状通路(101)とが連通すると、背圧室(49)内の高圧ガスは、環状通路(101)へ流入する。これに伴い背圧室(49)の圧力が低下する。従って、背圧室(49)内の高圧ガスが、ブレード(30)の周囲の隙間を通じて、ハーネス(12)の被切断部(40)側へ漏れてしまうことが回避される。
【0085】
環状通路(101)に流入した高圧ガスは、連通路(102)を介して溝内通路(103)へ流れる。このように、高圧ガスは、一対の横板部(44,44)うち片側寄り(横板部(44a)寄り)へ送られる。これにより、ハーネス(12)の被切断部(40)側へ高圧ガスが流れ込んでしまうことが確実に回避される。
【0086】
溝内通路(103)の高圧ガスは、ガス流出路(103a)から排出通路(104)へ流出する。この高圧ガスは、比較的剛性の高いハーネス(12)の横板部(44a)に受け面に衝突した後、この横板部(44a)に沿うように下方へ案内される。このように高圧ガスをハーネス(12)の一部で受けることにより、樹脂ケース(20)等の破損を確実に防止できる。また、高圧ガスをカバー部(14)と逆側(下側)へ送ることで、土台部(13)からカバー部(14)が外れてしまうことも回避できる。
【0087】
排出通路(104)を下方へ流れた高圧ガスは、ガス排出口(106)を通じてブレード収容部材(47)の外部へ排出される。土台部(13)の下側には、上述したように、ハーネス(12)が締結される固定部材が設けられる。このため、土台部(13)の下側に排出された高圧ガスが、切断装置(10)の周辺機器等に吹き付けられてしまうことを回避できる。
【0088】
−実施形態1の効果−
実施形態1では、ハーネス(12)の被切断部(40)が切断された後の状態の背圧室(49)を、逃がし空間としての排ガス通路(100)と連通させることで、高圧ガスがハーネス(12)の被切断部(40)側へ漏れてしまうことを抑制している。よって、ハーネス(12)の分断箇所(即ち、一対の導電部(41,41)の間の箇所)に高圧ガスが漏れてしまい、両者の導電部(41,41)が高圧ガスを通じて導通してしまうことを防止できる。従って、この切断装置(10)の信頼性を確保できる。
【0089】
また、排ガス通路(100)へ流出した高圧ガスは、ブレード(30)に対して径方向外方で且つ一方の導電部(41)側へ送られるため、被切断部(40)側へ高圧ガスが流れてしまうことを確実に回避できる。つまり、本実施形態では、高圧ガスがハーネス(12)の分断箇所に流れてしまうことで、この高圧ガスが一対の導電部(41,41)に跨ってしまうことを回避できる。従って、高圧ガス中に含まれる導電性を有する不純物(例えばスス等の炭素成分)を介して、両者の導電部(41,41)の間の絶縁性が損なわれたり、両者の導電部(41,41)の間でスパークが発生してしまうことを回避できる。
【0090】
更に、高圧ガスをハーネス(12)の横板部(44a)に当てることで、高圧ガスの圧力を緩和しながら、この高圧ガスをガス排出口(106)へ案内できる。また、ハーネス(12)の一部を高圧ガスの衝突板として利用することで、部品点数の削減も図ることができる。また、排ガス通路(100)を通過する高圧ガスは比較的高温である。このため、この高圧ガスをハーネス(12)に当てることで、収容部材(47)が熱によって溶融して破損したり、高温の高圧ガスが収容部材(47)の外側へ急激に噴出されたりすることも回避できる。特に、収容部材(47)の樹脂ケース(20)は、比較的熱に弱い樹脂材料で構成されているため、樹脂ケース(20)の破損を効果的に防止できる。
【0091】
また、上記実施形態では、切断動作時に、背圧室(49)の高圧ガスをブレード収容部材(47)の外部へ排出するため、背圧室(49)の内圧を低下させることができる。このため、切断動作の後に切断装置(10)を安全に廃棄する、あるいは分解することができる。
【0092】
〈発明の実施形態2〉
実施形態2に係る切断装置(10)は、上記実施形態1と構成が異なるものである。図9〜図14に示すように、切断装置(10)は、樹脂ケース(20)を備えている。樹脂ケース(20)の内部には、ストッパ(23)と内筒(24)とブレード(30)とガス発生部(35)とが収容されている。樹脂ケース(20)及び内筒(24)は、ブレード(30)を進行可能に収容するブレード収容部材(47)を構成している。
【0093】
以下では説明の便宜上、図10における左右方向の左側を「前側」、右側を「後側」とし、図10における上下方向の上側を「上側」、下側を「下側」として説明する。また、図10における紙面に直交する方向の手前側を「左側」、奥側を「右側」として説明する。
【0094】
樹脂ケース(20)は、例えばPC(ポリカーボネート)等の樹脂によって形成されている。樹脂ケース(20)を構成する樹脂材料は、これに限られず、プラスチック等を含む樹脂材料であればよい。また、樹脂ケース(20)は、略直方体形状に形成されて樹脂ケース(20)の略下半部を構成する土台部(13)と、該土台部(13)の下面および後面以外の面を一体的に覆い樹脂ケース(20)の略上半部を構成するカバー部(14)とを有している。つまり、カバー部(14)は、土台部(13)の上面、前面、左面および右面を覆うように構成されている。土台部(13)は、内筒(24)及びハーネス(12)を収容する収容部を構成している。
【0095】
樹脂ケース(20)には、略円柱状の挿通孔(21)が土台部(13)とカバー部(14)とに跨って形成されている。挿通孔(21)には、前方から後方へ向かって順に、ストッパ(23)、内筒(24)およびガス発生部(35)が収容されている。
【0096】
また、上記樹脂ケース(20)には、ハーネス(12)を設置するための設置孔(22)が土台部(13)とカバー部(14)とに跨って形成されている。該設置孔(22)は、挿通孔(21)の軸心を含む鉛直面に関して対称な形状に形成されている。具体的には、設置孔(22)は、挿通孔(21)の前後方向の中央部から左右方向にそれぞれ延びた後、前方へ折れ曲がり、その後さらに下方向きに折れ曲がって土台部(13)の下面まで延びている。設置孔(22)には、ハーネス(12)が設置されている。
【0097】
実施形態2のハーネス(12)は、長板状の金属板が折り返されて構成されている。図13にも示すように、ハーネス(12)は、ブレード(30)の切断部(31)に対応する位置に形成される被切断部(40)と、該被切断部(40)の左右両側に形成される一対の導電部(41)とを有している。各導電部(41)は、一対の縦板部(42,42)と、該縦板部(42,42)から前方に屈曲する横板部(44,44)と、各横板部(44)の下端に接続する支持板部(45,45)とが一体的に連続して構成される。
【0098】
各縦板部(42,42)は、被切断部(40)と同一面を成すように左右方向にそれぞれ延びている。実施形態2の横板部(44,44)は、ハーネス(12)の被切断部(40)を挟んで前方寄りに形成されており、実施形態1のように衝突板を構成していない。支持板部(45,45)には、切断装置(10)を所定の固定部材に締結するための締結穴(45a,45a)が形成されている。以上のように、実施形態2のハーネス(12)の導電部(41)は、実施形態1と比較して、ガス発生室(36)や背圧室(49)から離れている。これにより、ガス発生室(36)から発生した高圧ガスが導電部(41)に届くのを抑制でき、切断後のハーネス(12)の絶縁を確保している。
【0099】
樹脂ケース(20)には、挿通孔(21)の前方側から空気を排出するための排気孔(29)が形成されている。該排気孔(29)は、挿通孔(21)の前方端の中央から前方へ向かって延びた後、下方向きに折れ曲がって土台部(13)の下面まで延びている。
【0100】
ストッパ(23)は、進行したブレード(30)を受け止めて停止させるためのものである。上記ストッパ(23)は、樹脂材料によって有底円筒形状に形成されている。具体的に、ストッパ(23)は、円板状の底部(23a)と円筒状の筒部(23b)とを有し、底部(23a)が筒部(23b)よりも前方側に位置するように配置されている。底部(23a)の中央部には、樹脂ケース(20)の排気孔(29)と連通する孔(23c)が形成されている。
【0101】
内筒(24)は、挿通孔(21)においてストッパ(23)の後方に配置され、ハーネス(12)を支持している。内筒(24)は、第1内筒部材(25)と第2内筒部材(26)とで構成され、両部材(25,26)でハーネス(12)を挟持している。内筒(24)には、ブレード(30)が摺動自在に収納される。
【0102】
第1内筒部材(25)は、樹脂材料によって略円筒状に形成され、ストッパ(23)の後方において、ストッパ(23)と同軸となるように配置されている。第1内筒部材(25)は、ブレード(30)が挿通可能な内径に構成されている。なお、第1内筒部材(25)はセラミックスによって形成されていてもよい。
【0103】
第2内筒部材(26)は、樹脂材料によって略円筒状に形成され、第1内筒部材(25)の後方において、第1内筒部材(25)と同軸となるように配置されている。第2内筒部材(26)は、内径が第2内筒部材(26)の内径と概ね等しくなるように構成されている。図15に示すように、第2内筒部材(26)の前方側端面(26c)には、ハーネス(12)の縦板部(42,42)が挿通する2つの挿通溝(26a)が形成されている。2つの挿通溝(26a)は、前方側端面(26c)の径方向に延びており、樹脂ケース(20)の設置孔(22)に対応する位置に形成されている。このように、上記内筒(24)は、絶縁部材である第1内筒部材(25)および第2内筒部材(26)がハーネス(12)の縦板部(42,42)を両側から挟み込むことでハーネス(12)を支持している。また、第2内筒部材(26)には、排ガス通路(100)の一部を構成する内筒側通路(110)が形成されている(詳細は後述する)。
【0104】
ガス発生部(35)は、内筒(24)内のブレード(30)を進行させてハーネス(12)を切断させるための高圧ガスを発生させるものである。ガス発生部(35)は、火薬と、該火薬を起爆するための発火部(37)と、該発火部(37)を保持する保持具(38)と、第2内筒部材(26)の後方端を閉塞する蓋部材(39)とを備えている。
【0105】
蓋部材(39)は、略円筒状に形成されて第2内筒部材(26)の後方端に内嵌されている。このように、蓋部材(39)が内嵌されることによって、ブレード(30)の後方に閉空間であるガス発生室(36)が形成される。なお、蓋部材(39)と第2内筒部材(26)との間は、Oリング(39c)によってシールされている。そして、蓋部材(39)に保持具(38)が挿通されている。
【0106】
発火部(37)は、雷管によって構成され、起爆薬を有する前端部がガス発生室(36)内に露出するように保持具(38)に保持されている。そして、発火部(37)は、コネクタ(図示省略)に接続される接続ピン(37a)が設けられている。発火部(37)は、火薬の爆発によってガス発生室(36)内で高圧ガスを発生させ、ガス発生室(36)内の圧力を上昇させてブレード(30)を前方へ進行(摺動)させる。
【0107】
ブレード(30)は、高圧ガスを受けて内筒(24)内を前方へ進行してハーネス(12)を切断するためのものである。ブレード(30)は、樹脂材料によって形成された切断部(31)と、該切断部(31)を取り付けるプッシャー(32)とを備えている。なお、プッシャー(32)は、本発明に係る受圧部を構成している。また、切断部(31)は樹脂材料に限らず金属材料(例えば、鋼材)によって形成されてもよい。
【0108】
図16にも示すように、切断部(31)は、段差で形成される前後2つの切断部分でもってハーネス(12)を切断する。具体的に、切断部(31)は、前方側に形成された第1刃部(31a)と、該第1刃部(31a)と段差を有して後方側に形成された第2刃部(31b)とを備えている。また、切断部(31)は、第1刃部(31a)よりも前方側へ突出するガイド部(31c)が設けられており、該ガイド部(31c)が内筒(24)の内面に接して摺動する。第1刃部(31a)および第2刃部(31b)は、先端が平坦に形成される刃部である。
【0109】
切断部(31)では、第1刃部(31a)と第2刃部(31b)との段差が、ハーネス(12)の縦板部(42)の厚みよりも大きくなるように形成されている。こうすることで、第1刃部(31a)がハーネス(12)の1箇所を切断した後に、第2刃部(31b)がハーネス(12)の他の1箇所を切断することができる。つまり、ブレード(30)は、高圧ガスによって前方へ進行することによって、第1刃部(31a)および第2刃部(31b)がハーネス(12)を順番に切断するように構成されている。
【0110】
プッシャー(32)は、切断部(31)の後方に配置され、高圧ガスの圧力を受けて切断部(31)を前方へ進行(摺動)させるものである。プッシャー(32)は、樹脂製で外形が略円柱状の本体(32a)を有する。本体(32a)は、第2内筒部材(26)と同軸に配置される。プッシャー(32)は、切断部(31)よりも僅かに大径に形成され、絶縁部を構成している。また、本体(32a)の前方端には、前方へ突出する突部(32b)が形成されている。この突部(32b)が切断部(31)の後方端に内嵌することで、切断部(31)がプッシャー(32)に保持される。
【0111】
〈排ガス通路、及びその周辺の細部構造〉
実施形態2の収容部材(47)にも、逃がし空間をなす排ガス通路(100)が形成されている。排ガス通路(100)、及びこの排ガス通路(100)の周辺構造について、図9、図13、図14、及び図17を参照しながら説明する。
【0112】
実施形態2に係る排ガス通路(100)は、内筒側通路(110)とケース側通路(120)と排出通路(104)とが接続して構成されている。内筒側通路(110)は、内筒部である第2内筒部材(26)に形成されている。ケース側通路(120)は、ケース部である土台部(13)に形成されている。
【0113】
内筒側通路(110)は、第2内筒部材(26)を径方向に貫通する径方向通路を構成している。内筒側通路(110)は、第2内筒部材(26)の内周面に開口する流入孔(111)と、該流入孔(111)の流出部から徐々に通路断面積を拡大させる拡径孔(112)と、該拡径孔(112)の流出端と接続して第2内筒部材(26)の外周面に開口する流出孔(113)とで構成される。つまり、内筒側通路(110)は、ブレード部材(30)に向かって開口する流入孔(111)の開口面積が、流出孔(113)の通路面積よりも小さくなっている。このように流入孔(111)の開口面積を小径とすることで、ブレード部材(30)のプッシャー(32)が、流入孔(111)の開口縁部に引っ掛かることを抑制できる。その結果、プッシャー(32)をスムーズに進行させることができるとともに、プッシャー(32)の外周面に凹み傷等がついてガス漏れが生じてしまうことも防止できる。また、流出孔(113)及び拡径孔(112)は、流入孔(111)よりも大径であるため、穴開け加工も比較的容易である。
【0114】
ケース側通路(120)は、樹脂ケース(20)の内部を内筒(24)の径方向外方に延びる径方向通路を構成している。本実施形態のケース側通路(120)は、土台部(13)側に形成された縦断面半円形状の溝(120a)と、カバー部(14)側に形成された縦断面半円形状の溝(120b)とが互いに重なり合うことで形成される。ケース側通路(120)の流出口(120c)は、土台部(13)とカバー部(14)との間に形成される排出通路(104)に連通している。また、実施形態2では、実施形態1と同様にして、内筒(24)を挟んでケース側通路(120)と反対側に、補助溝内通路(105)が形成されている。
【0115】
図14に示すように、実施形態2のカバー部(14)には、対向壁部(141)、長穴部(142)、第1リブ(143)、及び第2リブ(144)が形成されている。
【0116】
対向壁部(141)は、カバー部(14)の側壁のうち、ケース側通路(120)の流出口(120c)に対向する部位に形成されている。即ち、ケース側通路(120)の流出口(120c)は、カバー部(14)の対向壁部(141)の内壁に向かって開口している。これにより、流出口(120c)から流出した高圧ガスは、対向壁部(141)に衝突するため、この高圧ガスが樹脂ケース(20)の外部へ勢いよく吹き出してしまうことを防止できる。
【0117】
長穴部(142)は、ケース側通路(120)のカバー部(14)側の溝(120b)と連続するように、カバー部(14)の上側(図14における下側)の内壁に形成されている。長穴部(142)は、第1リブ(143)と第2リブ(144)との間で前後方向に延びている。このように長穴部(142)を形成することで、排出通路(104)の容積が拡大され、高圧ガスの圧力を低減できる。
【0118】
第1リブ(143)は、カバー部(14)の後方部位に形成され、第2リブ(144)は、カバー部(14)の前後方向の中間部位に形成される。第1リブ(143)と第2リブ(144)とは、略L字状に形成されてカバー部(14)に一体化されている。第1リブ(143)と第2リブ(144)とは、カバー部(14)の側壁に形成される側方リブ(143a,144a)と、カバー部(14)の上部に形成される上方リブ(143b,144b)とで構成される。第1リブ(143)は、第2リブ(144)よりも前後方向の肉厚が小さくなっている。第1リブ(143)と第2リブ(144)とは、カバー部(14)の側壁(特に対向壁部(141))の強度を向上させるための補強部材を構成している。これにより、対向壁部(141)における高圧ガスの衝突に対して、カバー部(14)に十分な強度が確保されている。
【0119】
図13に示すように、実施形態2の土台部(13)の側方には、排ガス用凹部(131)、第1嵌合溝(132)、及び第2嵌合溝(133)が形成される。排ガス用凹部(131)は、カバー部(14)の対向壁部(141)に対応する部位において、内筒(24)側に向かって凹むように形成されている。第1嵌合溝(132)は、第1リブ(143)に対応するように土台部(13)の後方部位に形成されている。第2嵌合溝(133)は、第2リブ(144)に対応するように土台部(13)の前後方向の中間部位に形成される。各嵌合溝(132,133)には、各リブ(143,144)の側方リブ(143a,144a)が嵌合する側方溝部(132a,133a)と、各リブ(143,144)の上方リブ(143b,144b)が嵌合する上方溝部(132b,133b)とが形成される。
【0120】
カバー部(14)は、各リブ(143,144)が対応する各嵌合溝(132,133)に嵌り込むようにして、土台部(13)に装着される。つまり、各リブ(143,144)は、カバー部(14)と土台部(13)との相対的な位置を決めるための位置決め部材も兼ねている。
【0121】
また、カバー部(14)側の第2リブ(144)と、土台部(13)側の第2嵌合溝(133)とを嵌め合う構造とすることで、カバー部(14)と土台部(13)との隙間に凹凸を形成でき、この隙間をシールすることができる。即ち、ハーネス(12)の切断時において、ケース側通路(120)を流出した高圧ガスが、カバー部(14)と土台部(13)の隙間を通じてハーネス(12)側へ流れてしまうと、上述の如く、切断状態のハーネス(12)の絶縁性が損なわれてしまう。しかしながら、このように第2リブ(144)と第2嵌合溝(133)とを嵌め合い構造として両者の間にシール面を形成することで、このような高圧ガスの漏れを防止できる。つまり、第2リブ(144)と第2嵌合溝(133)とは、ハーネス(12)側への高圧ガスの漏れを防止するシール部を兼ねている。
【0122】
図17にも示すように、カバー部(14)を土台部(13)に装着した状態では、排ガス用凹部(131)と対向壁部(141)との間に排出通路(104)が形成される。排出通路(104)は、実施形態1と同様、土台部(13)を鉛直下方に延びており、その流出端(104a)が、土台部(13)の下面に開口している。
【0123】
−高圧ガスの排出動作−
実施形態2の切断装置(10)によるハーネス(12)の切断動作時には、火薬の爆発に伴いガス発生室(36)で高圧ガスが発生する。
【0124】
ガス発生室(36)の爆薬が爆発する前の状態では、ブレード(30)が図9に示すように、後方寄りに位置している。この状態では、排ガス通路(100)の内筒側通路(110)が、背圧室(49)と遮断される。従って、この状態では、背圧室(49)の高圧ガスが排ガス通路(100)側へ流出してしまうことがない。その結果、背圧室(49)の圧力を確実に上昇させてブレード(30)を前方へ進行させることができる。
【0125】
このようにして、ブレード(30)が前方へ移動してハーネス(12)を切断すると、背圧室(49)と内筒側通路(110)とが連通する(例えば図18を参照)。すると、背圧室(49)の高圧ガスは、内筒側通路(110)及びケース側通路(120)を順に流れ、流出口(120c)を流出してカバー部(14)の対向壁部(141)に衝突する。対向壁部(141)に衝突した高圧ガスは、対向壁部(141)の壁面に沿うように排出通路(104)を下方に流れる。この高圧ガスは、ガス排出口(106)を通じてブレード収容部材(47)の外部へ排出される。
【0126】
以上のように、実施形態2においても、ハーネス(12)の被切断部(40)が切断された後の状態の背圧室(49)を、排ガス通路(100)を経由してブレード収容部材(47)の外部へ排出するようにしている。このため、背圧室(49)内の高圧ガスが、ブレード(30)と内筒(24)との間の隙間を通じて、ハーネス(12)の分断箇所へ漏れてしまうことを防止できる。これにより、ハーネス(12)の絶縁を確保して切断装置(10)の信頼性を確保できる。
【0127】
−実施形態2の変形例−
上述した実施形態において、以下のような変形例の構成としてもよい。
【0128】
〈変形例1〉
図19(A)に模式的に示すように、変形例1の切断装置(10)では、排ガス通路(100)の流入端部に薄壁部(151)が形成される。薄壁部(151)は、例えば射出成形によって内筒(24)と一体的に形成される樹脂製の薄膜である。薄壁部(151)は、ブレード(30)がハーネス(12)を切断する前の状態(図19(A)に示す状態)において、排ガス通路(100)の流入端部を閉塞しており、内筒(24)の内周壁面の一部を構成している。仮に、排ガス通路(100)の流入端部に射出成形によって開口を形成しようとすると、この開口の縁部にバリが生じることがあり、このようなバリ対策が必要となる。これに対し、図19(A)のように薄壁部(151)を一体成型すると、このようなバリ対策が不要となり、品質管理や製造工程の簡素化を図ることができる。
【0129】
変形例1において、ガス発生部(35)から高圧ガスが発生してブレード(30)が進行する際には、薄壁部(151)がプッシャー(32)の外周面に摺接する。つまり、変形例1の薄壁部(151)は、プッシャー(32)のガイド面として機能するため、プッシャー(32)の外周面が排ガス通路(100)の流入口の縁部に引っ掛かることはない。このため、ブレード(30)をスムーズに進行させることができるとともに、プッシャー(32)の外周面に凹み傷等がついてガス漏れが生じてしまうことも確実に防止できる。
【0130】
ブレード(30)が更に進行して背圧室(49)の圧力が上昇すると、この圧力によって薄壁部(151)が破断される。つまり、薄壁部(151)は、ガス発生部(35)から発生する高圧ガスによって破断される程度の強度となるように、その材質や厚みが設定されている。図19(B)に示すようにして、薄壁部(151)が破断されると、背圧室(49)内の高圧ガスが、排ガス通路(100)に流入し、上述のようにしてブレード収容部材(47)の外部に排出される。その結果、背圧室(49)内の高圧ガスがハーネス(12)側へ漏れることが回避される。
【0131】
〈変形例2〉
図20に模式的に示すように、変形例2の切断装置(10)には、内筒(24)の外周面に円形の筒状の突起部(152)が形成されている。突起部(152)は、内筒(24)の径方向外方へ突出しており、ケース側通路(120)の流入端に嵌合している。突起部(152)は、内筒側通路(110)を流出した高圧ガスが、内筒(24)と樹脂ケース(20)との隙間を通じて切断状態のハーネス(12)側へ漏れてしまうのを防止するシール部として機能する。その結果、ハーネス(12)の絶縁を一層確実に確保できる。
【0132】
〈変形例3〉
図21に模式的に示すように、変形例3の切断装置(10)では、変形例2の突起部(152)の外周に環状の小径Oリング(153)が外嵌されている。つまり、変形例3では、突起部(152)及び小径Oリング(153)が、内筒(24)と樹脂ケース(20)との隙間を通じて切断状態のハーネス(12)側へ漏れてしまうのを防止するシール部として機能する。なお、変形例3の突起部(152)を省略して、内筒側通路(110)の流出口に小径Oリング(153)だけを設ける構成としてもよい。
【0133】
〈変形例4〉
図22に模式的に示すように、変形例4の切断装置(10)では、内筒(24)の外周面に大径Oリング(154)が設けられている。大径Oリング(154)は、内筒側通路(110)の流出口の近傍であって、ハーネス(12)側に寄った位置に設けられる。変形例4では、大径Oリング(154)が、内筒(24)と樹脂ケース(20)との隙間を通じて切断状態のハーネス(12)側へ漏れてしまうのを防止するシール部として機能する。
【0134】
〈変形例5〉
図23に模式的に示すように、変形例4の大径オーリング(154)に替えて、内筒(24)の外周面に環状の凸部(155)を形成してもよい。この環状凸部(155)を樹脂ケース(20)の内周面に形成した環状の凹部(156)に嵌合させることで、両者の間にシール部を形成してもよい。
【0135】
〈発明の実施形態3〉
次に、実施形態3について説明する。図24に示すように、本実施形態3は、本発明に係る切断装置(10)を備えたブレーカ(50)である。このブレーカ(50)は、樹脂製のケーシング(図示省略)に設けられた負荷側端子(55)及び電源側端子(54)と、負荷側端子(55)と電源側端子(54)とを接続するためのハーネス(12)により構成された端子間部材(51)とを備えている。
【0136】
端子間部材(51)は、負荷側端子(55)に接続された固定接触子(52)と、電源側端子(54)に接続された可動接触子(53)とを備えている。可動接触子(53)は、固定接触子(52)に接触する接触位置と、固定接触子(52)から離れた非接触位置との間で移動可能に設けられている。可動接触子(53)が接触位置に移動すると、可動接触子(53)の可動接点(53a)が固定接触子(52)の固定接点(52a)に接触する。
【0137】
さらに、ブレーカ(50)は、可動接触子(53)を手動で動かすためのリンク機構(58)と、異常電流時に可動接触子(53)を固定接触子(52)から引き離すためのトリップ機構(56)と、可動接触子(53)を固定接触子(52)から引き離すように可動接触子(53)を付勢する付勢バネ(60)とを備えている。リンク機構(58)は、ケーシングに取り付けられ、手動レバー(57)の操作によって可動接触子(53)を接触位置と非接触位置との間で移動させることができるように構成されている。トリップ機構(56)は、バイメタルによって構成され、可動接触子(53)と電源側端子(54)とを接続している。トリップ機構(56)は、過電流時(異常電流時)に熱変形し、その熱変形によってリンク機構(58)を動かして、可動接触子(53)を固定接触子(52)から引き離す。可動接触子(53)が固定接触子(52)から引き離されると、ブレーカ(50)は通電不能になる。
【0138】
さらに、ブレーカ(50)は、上述の切断装置(10)と、可動接点(53a)と固定接点(52a)とが溶着したことを検出する溶着検出部(65)とを備えている。なお、切断装置(10)には、実施形態1及び後述するその他の実施形態の何れの切断装置(10)を用いてもよい。
【0139】
切断装置(10)は、端子間部材(51)を切断可能な位置に設けられている。具体的に、切断装置(10)は、端子間部材(51)の裏側(図24における下側)に設けられている。
【0140】
溶着検出部(65)は、例えば端子間部材(51)に接続され、端子間部材(51)の電流値に基づいて可動接点(53a)と固定接点(52a)とが溶着しているか否かを検出するように構成されている。溶着検出部(65)には、切断装置(10)の発火部(37)が接続されている。溶着検出部(65)は、可動接点(53a)と固定接点(52a)とが溶着していると判定すると、発火部(37)を作動させるように構成されている。
【0141】
実施形態2では、溶着検出部(65)が可動接点(53a)と固定接点(52a)とが溶着していると判定すると、発火部(37)が作動して火薬が爆発し、ブレード(30)が進行する。ブレード(30)は、端子間部材(51)を切断(破断)した後に、プッシャー(32)が端子間部材(51)の切断面に接触する状態で停止する。このため、端子間部材(51)の切断面の間が絶縁され、電源側端子(54)と負荷側端子(55)の間が通電不能になる。
【0142】
−実施形態3の効果−
実施形態3では、切断装置(10)によって、電源側端子(54)と負荷側端子(55)の間を強制的に通電不能にすることが可能である。このため、例えば可動接触子(53)と固定接触子(52)が溶着した場合であっても、切断装置(10)によって電源側端子(54)と負荷側端子(55)の間を強制的に通電不能にすることで、負荷側の機器の故障を防止することができる。
【0143】
〈発明の実施形態4〉
次に、本実施形態4について説明する。図25に示すように、本実施形態4は、本発明に係る切断装置(10)を備えた接触器である。この接触器(70)は、図25に示すように、樹脂製のケーシング(86)に設けられた負荷側端子(75)及び電源側端子(74)と、負荷側端子(75)と電源側端子(74)とを接続するためのハーネス(12)により構成された端子間部材(71)とを備えている。
【0144】
端子間部材(71)は、負荷側端子(75)に接続された第1固定接触子(68)と、電源側端子(74)に接続された第2固定接触子(69)と、後述する可動鉄心(81)に連結された可動接触子(73)とを備えている。上記可動接触子(73)は、一対の固定接触子(68,69)に接触する接触位置と、一対の固定接触子(68,69)から離れた非接触位置との間で移動可能に設けられている。可動接触子(73)が接触位置に移動すると、可動接触子(73)の一端の可動接点(73a)が第1固定接触子(68)の第1固定接点(68a)に接触すると共に、可動接触子(73)の他端の可動接点(73b)が第2固定接触子(69)の第2固定接点(69a)に接触する。
【0145】
さらに、接触器(70)は、可動接触子(73)を接触位置と非接触位置の間で動かすための移動機構(76)を備えている。この移動機構(76)は、可動鉄心(81)と固定鉄心(82)と励磁コイル(83)と巻枠(84)とを備えている。固定鉄心(82)はケーシング(86)の底面に固定されている。可動鉄心(81)は、固定鉄心(82)の上側に対面するように設けられている。励磁コイル(83)は巻枠(84)に巻かれている。可動鉄心(81)と巻枠(84)との間には、非通電時に可動鉄心(81)と固定鉄心(82)とを離間させるための一対の復帰バネ(79)が設けられている。
【0146】
移動機構(76)は、外部からの信号によって励磁コイル(83)が通電されると、固定鉄心(82)が励磁されて可動鉄心(81)を引き寄せるように構成されている。可動鉄心(81)が固定鉄心(82)に引き寄せられると、接触器(70)は非通電状態になる。一方、移動機構(76)は、外部からの信号によって励磁コイル(83)の通電が停止されると、復帰バネ(79)によって可動鉄心(81)が固定鉄心(82)から離れるように構成されている。可動鉄心(81)から固定鉄心(82)が離れると、接触器(70)は通電状態になる。
【0147】
さらに、接触器(70)は、上述の切断装置(10)と、上記実施形態3と同様の構成の溶着検出部(65)とを備えている。なお、切断装置(10)には、上記実施形態1、及び後述するその他の実施形態の何れの切断装置(10)を用いてもよい。
【0148】
切断装置(10)は、端子間部材(71)を切断可能な位置に設けられている。具体的に、切断装置(10)は、進行前のブレード(30)の切断部(31)が可動接触子(73)の前面に対面するように設けられている。
【0149】
実施形態4では、溶着検出部(65)が可動接点(73a,73b)と固定接点(68a,69a)とが溶着していると判断すると、発火部(37)が作動して火薬が爆発し、ブレード(30)が進行する。ブレード(30)は、可動接触子(73)を切断する。この状態では、プッシャー(32)が可動接触子(73)の切断面に接触している。つまり、ブレード(30)は、プッシャー(32)が可動接触子(73)の切断面に接触するまで進行する。
【0150】
−実施形態4の効果−
実施形態4では、切断装置(10)によって、電源側端子(74)と負荷側端子(75)の間を強制的に通電不能にすることが可能である。このため、例えば可動接触子(73)と固定接触子(68,69)が溶着した場合であっても、切断装置(10)によって電源側端子(74)と負荷側端子(75)との間を強制的に通電不能にすることで、負荷側の機器の故障を防止することができる。
【0151】
〈発明の実施形態5〉
次に、本実施形態5について説明する。図26に示すように、本実施形態5は、本発明に係る切断装置(10)を備えた電気回路遮断器(90)である。この電気回路遮断器(90)は、ブレーカ(50)と接触器(70)と樹脂製のケーシング(91)とを備えている。なお、ブレーカ(50)と接触器(70)についての説明は省略する。
【0152】
ケーシング(91)には、ブレーカ(50)が配置されたブレーカ配置室(88)と、接触器(70)が配置された接触器配置室(89)が障壁を挟んで形成されている。また、ケーシング(91)には、負荷側端子(95)及び電源側端子(94)と、ブレーカ(50)と接触器(70)と接続する接続用部材(92)とが設けられている。接続用部材(92)は、ハーネス(12)により構成されている。
【0153】
負荷側端子(95)は、接触器(70)の第1固定接触子(68)に接続されている。電源側端子(94)は、ブレーカ(50)の可動接触子(53)に接続されている。また、接続用部材(92)の一端は、接触器(70)の第2固定接触子(69)に接続されている。接続用部材(92)の他端は、ブレーカ(50)の固定接触子(52)に接続されている。
【0154】
さらに、電気回路遮断器(90)は、上述の切断装置(10)と、上記実施形態2と同様の溶着検出部(65)とを備えている。なお、切断装置(10)には、上記実施形態1及び後述するその他の実施形態の何れの切断装置を用いてもよい。
【0155】
切断装置(10)は、接続用部材(92)を切断可能な位置に設けられている。具体的に、切断装置(10)は、進行前のブレード(30)の切断部(31)が接続用部材(92)の前面に対面するよう設けられている。
【0156】
実施形態5では、ブレーカ(50)において可動接触子(53)と固定接触子(52)が溶着していると判定したり、接触器(70)において可動接触子(73)と固定接触子(68,69)が溶着していると判定した場合に、溶着検出部(65)が発火部(37)を作動させて、ブレード(30)が進行し、ブレード(30)は、接続用部材(92)を切断(破断)する。この状態では、プッシャー(32)が接続用部材(92)の切断面に接触している。つまり、ブレード(30)は、プッシャー(32)が接続用部材(92)の切断面に接触するまで進行する。
【0157】
−実施形態5の効果−
実施形態5では、切断装置(10)によって接続用部材(92)を切断して、電源側端子(94)と負荷側端子(95)の間を通電不能にすることが可能である。このため、例えばブレーカ(50)や接触器(70)で溶着が生じた場合であっても、切断装置(10)によって電源側端子(94)と負荷側端子(95)の間を通電不能にすることで、負荷側の機器の故障を防止することができる。
【0158】
〈その他の実施形態〉
上述した排ガス通路(100)の構成は、単なる一例である。ブレード(30)がハーネス(12)を切断する前の状態の背圧室(49)と遮断され、且つブレード(30)がハーネス(12)を切断した後の状態の背圧室(49)と連通する排ガス通路(100)であれば、他の部位に排ガス通路(100)を形成してもよいし、他の形状の排ガス通路(100)を採用してもよい。
【0159】
また、上述した排ガス通路(100)は、ブレード(30)がハーネス(12)を切断した後に、背圧室(49)と連通するように構成されている。しかしながら、排ガス通路(100)は、ブレード(30)がハーネス(12)を切断する直前に、背圧室(49)と連通するようにしてもよい。例えば排ガス通路(100)の通路面積を小さくして通路の抵抗を大きくしたり、ガス発生部(35)による高圧ガスの出力を増大させたりすることで、排ガス通路(100)と背圧室(49)とが連通してからブレード(30)がハーネス(12)を切断するまでの間に、背圧室(49)の内圧をある程度確保することができ、ハーネス(12)の切断が可能となる。
【0160】
また、排ガス通路(100)の流出端は、必ずしもブレード収容部材(47)の外部に開口していなくてもよい。この構成においても、ハーネスを切断した後の背圧室(49)と排ガス通路(100)とを連通させることで、背圧室(49)の圧力を低減することができる。従って、高圧ガスが被切断部(40)側へ漏れてしまうことを回避できる。
【0161】
また、上記実施形態では、板金を折り返すことで、ハーネス(12)を形成している。しかしながら、ハーネス(12)の形状はこれに限らず、棒状のハーネス(12)等を採用することもできる。
【0162】
また、上記実施形態において、内筒(24)とケース部(20)との間のシール部や、土台部(13)とカバー部(14)との間にシール部(133,144)は、シリコン樹脂等のシーリング剤を充填して形成してもよい。この場合にも、高圧ガスが隙間から漏れることを防止でき、切断後のハーネス(12)の絶縁性を確保できる。
【0163】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0164】
以上説明したように、本発明は、切断装置について有用である。
【符号の説明】
【0165】
10 切断装置
12 ハーネス(通電用部材)
13 土台部(収容部)
14 カバー部
20 ケース部(ケース)
24 内筒(内筒部)
30 ブレード(ブレード部材)
35 ガス発生部
40 被切断部
41 導電部
47 ブレード収容部材(収容部材)
48 開口(露出開口部)
49 背圧室
100 排ガス通路(逃がし空間)
102 連通路(径方向通路)
103 溝内通路(径方向通路)
103a ガス流出口
110 内筒側通路(径方向通路)
120 ケース側通路(径方向通路)
133 第2嵌合溝(シール部)
144 第2リブ(シール部)
151 薄壁部
152 突起部(シール部)
153 小径Oリング(シール部)
154 大径Oリング(シール部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電用部材(12)の被切断部(40)を切断するためのブレード部材(30)と、
筒状に形成されて上記ブレード部材(30)を移動可能に収容するとともに、軸方向の一端側に上記被切断部(40)を露出させる開口(48)を形成し、軸方向の他端側に上記ブレード部材(30)に臨む背圧室(49)を区画する収容部材(47)と、
上記背圧室(49)中で上記ブレード部材(30)を上記被切断部(40)側に向かって変位させるための高圧ガスを発生させるガス発生部(35)とを備え、
上記収容部材(47)には、上記ブレード部材(30)が通電用部材(12)を切断する前の状態の上記背圧室(49)と遮断され、且つ上記ブレード部材(30)が通電用部材(12)を切断した後の状態の上記背圧室(49)と連通する逃がし空間(100)が形成されていることを特徴とする切断装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記逃がし空間は、上記ブレード部材(30)が通電用部材(12)を切断した後の状態の上記背圧室(49)と上記収容部材(47)の外部とを連通する排ガス通路(100)を構成していることを特徴とする切断装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記逃がし空間(100)は、上記収容部材(47)のうち上記ブレード部材(30)の外周部位に形成されていることを特徴とする切断装置。
【請求項4】
請求項3において、
上記逃がし空間(100)は、上記ブレード部材(30)の外周部位を径方向に延びる少なくとも1本の径方向通路(102,103,110,120)を含んでいることを特徴とする切断装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つにおいて、
上記逃がし空間(100)の流入端には、上記ブレード部材(30)が通電用部材(12)を切断する前の状態で上記収容部材(47)の内周面を構成するように該逃がし空間(100)を閉塞し且つ上記ガス発生部(35)の高圧ガスによって破れる薄壁部(151)が形成されていることを特徴とする切断装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つにおいて、
上記収容部材(47)は、上記ブレード部材(30)を移動可能に収容する内筒部(24)と、該内筒部(24)及び上記通電用部材(12)を収容するケース(20)とを有し、
上記逃がし空間(100)は、上記内筒部(24)に形成され流出端が該内筒部(24)の外周面に開口する内筒側通路(110)と、該内筒側通路(110)の流出端と連通するようにケース(20)に形成されるケース側通路(120)とを含み、
上記内筒部(24)とケース(20)との間には、上記内筒側通路(110)を流出したガスが切断後の通電用部材(12)側へ流れるのを防止するシール部(152,153,154,155,156)が設けられていることを特徴とする切断装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つにおいて、
上記収容部材(47)は、上記ブレード部材(30)を移動可能に収容する内筒部(24)と、該内筒部(24)及び上記通電用部材(12)を収容する収容部(13)と、該収容部(13)を覆うカバー部(14)とを有し、
上記逃がし空間(100)は、上記内筒部(24)に形成される内筒側通路(110)と、該内筒側通路(110)の流出端と連通するように収容部(13)に形成され且つ流出端が上記カバー部(14)の壁面に向かって開口するケース側通路(120)とを含んでいることを特徴とする切断装置。
【請求項8】
請求項7において、
上記収容部(13)と上記カバー部(14)との間には、上記ケース側通路(120)を流出したガスが切断後の通電用部材(12)側へ流れるのを防止するシール部(133,144)が設けられていることを特徴とする切断装置。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれか1つにおいて、
上記逃がし空間(100)は、上記通電用部材(12)のうち上記被切断部(40)と異なる部位の導電部(41)に向かって開口するガス流出口(103a)を含んでいることを特徴とする切断装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1つにおいて、
上記通電用部材(12)は、上記被切断部(40)が上記ブレード部材(30)によって切断されることで該被切断部(40)の両側に分断して形成される一対の導電部(41,41)を有し、
上記逃がし空間(100)は、上記一対の導電部(41,41)のうちの片側に寄った部位に形成されることを特徴とする切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−151092(P2012−151092A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259150(P2011−259150)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【特許番号】特許第4985871号(P4985871)
【特許公報発行日】平成24年7月25日(2012.7.25)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)