切粉案内具付き工具
【課題】 詰まりを生じることなく切粉を所望の方向に誘導することができ、連続的な切粉処理が行なえ、切削効率の向上が可能な切粉案内具付き工具を提供する。
【解決手段】 この切粉案内具付き工具1は、ワークに接触して旋削加工を行う切削工具2と、この切削工具2に取り付けられる切粉案内具5と、強制排出用流体供給手段6とを備える。切粉案内具5には、切削工具2のワーク接触部近傍を入口7aとする切粉の誘導路7が形成され、切削工具2による旋削加工で生じる切粉を誘導路7で案内する。強制排出用流体供給手段6は、切粉案内具5の誘導路7内の切粉をこの誘導路7の出口7b側へ強制排出する流体9を誘導路7の入口7a側から出口7b側へ流す。
【解決手段】 この切粉案内具付き工具1は、ワークに接触して旋削加工を行う切削工具2と、この切削工具2に取り付けられる切粉案内具5と、強制排出用流体供給手段6とを備える。切粉案内具5には、切削工具2のワーク接触部近傍を入口7aとする切粉の誘導路7が形成され、切削工具2による旋削加工で生じる切粉を誘導路7で案内する。強制排出用流体供給手段6は、切粉案内具5の誘導路7内の切粉をこの誘導路7の出口7b側へ強制排出する流体9を誘導路7の入口7a側から出口7b側へ流す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、旋盤等による切削加工に用いる切粉案内具付き工具、特に、延性の高い材料に適した切粉案内具付き工具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工業製品の大量生産、高性能化に伴い、切削加工においても高効率化、高精度化が求められている。これらの要求を実現するために、切粉の適切な処理や、切削速度の増加が必要とされる。旋削加工において、切粉の処理性、工具寿命、切削抵抗、加工精度は、被削性4項目と呼ばれ、それぞれを改善するための工夫がなされてきた。その中で、切粉の処理性の悪さは、切粉の絡みつき等のため、自動化を阻害する最大の要因である。
【0003】
例えば、図22のようにシャフトワークWを旋削加工する場合、ワークWがチャック50とテイルストック51に挟まれているため、切粉Cの逃げ場が無く、ワークW、チャック50、テイルストック51、切削工具52に切粉Cが絡みつき、連続加工が困難になる。また、無人運転の場合は、ローダハンドでワークWを正常に掴めず、稼働停止等に至る問題になる。
【0004】
切粉の処理性の改善のために、一般的には、切粉のカールを強めて破壊、分断させるチップブレーカが使用される。このほかに、切削工具のすくい面にカバーやパイプ等で切粉の中空誘導路を形成するものが提案されている(例えば特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭52−142379号公報
【特許文献2】特開平7−136805号公報
【特許文献3】特開平11−90705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
チップブレーカを使用する場合、切粉がある程度の脆弱性を持ち、切粉が流出する力を利用して切粉の曲げによる破壊、分断を生じさせる必要がある。このため、プレス鋼や耐熱合金などのような延性の高い材料の切粉や、延びやすい仕上げの切粉に対しては機能しない場合が多く、切粉の絡みつきや仕上げ面の損傷を引き起こしている。
【0007】
切削工具のすくい面に、カバーやパイプ等により中空誘導路を形成するものは、切削条件によって切粉の幅、方向、カールが変わることから、切粉が中空誘導路の内壁面などに引っ掛かり、切粉の詰まりが発生し、実用化が困難である。
【0008】
加工条件を工夫したり、ステップ加工によって切粉の絡みつきを防止することも考えられるが、切粉の絡みつき防止に効果を上げるには限界がある。
【0009】
この発明の目的は、詰まりを生じることなく切粉を所望の方向に誘導することができ、連続的な切粉処理が行なえ、切削効率の向上が可能な切粉案内具付き工具を提供することである。
この発明の他の目的は、誘導路に対してより効果的に切粉を導くことができるようにすることである。
この発明のさらに他の目的は、切削条件の違い等による、工具の刃先における切粉の発生箇所の位置ずれに対応して、誘導路の入口位置を調整できて、種々の切削条件に応じて、より円滑に切粉の案内が行えるようにすることである。
この発明の他の目的は、切削条件の違い等による、工具の刃先からの切粉の発生方向の違いに対応して、誘導路の方向を調整できて、種々の切削条件に応じて、より円滑に切粉の案内が行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の切粉案内具付き工具は、ワークに接触して旋削加工を行う切削工具と、この切削工具に取り付けられてこの切削工具のワーク接触部近傍を入口とする切粉の誘導路を形成し、前記切削工具による旋削加工で生じる切粉を案内する切粉案内具と、前記誘導路内の切粉をこの誘導路の出口側へ強制排出する流体を前記誘導路の入口側から出口側へ流す強制排出用流体供給手段とを設けたものである。
【0011】
この切粉案内具付き工具は、切粉の誘導路を有する切粉案内具を設けると共に、誘導路内の切粉を出口側へ強制排出する流体を流す強制排出用流体供給手段を設けたため、旋削加工で生じる切粉を、詰まりを生じることなく所望の方向に誘導することができる。また連続的な切粉処理が行なえ、切削効率の向上が可能となる。
【0012】
前記強制排出用流体供給手段は、前記切粉案内具の前記誘導路の入口と出口の誘導路途中から前記流体を出口側へ供給し、前記入口にこの入口から前記出口に向かう吸気流を発生させるものであっても良い。
このように、前記流体を誘導路途中から流体を出口側へ供給し、前記入口から出口に向かう吸気流を発生させるようにした場合、切削工具のワーク接触点で発生した切粉が、前記吸気流により周辺空気と共に前記誘導路内に吸い込まれ、誘導路内を前記流体の流れで出口側へ強制排出される。そのため、より効果的にかつより円滑に、切粉を所望の方向に誘導できる。前記吸気流による前記誘導路内への吸い込みは、切削にクーラントが用いられている場合は、クーラントと共に行われ。また、強制排出用流体供給手段は、誘導路途中から流体を供給するものであるため、誘導路の入口から流体を供給するものと異なり、供給用の流体通路が切削工具の刃先から離れ位置に配置できて、流体通路が切削の邪魔になることが避けられる。さらに、誘導路の出口で吸引を行うものと異なり、出口で切粉と流体流れとを切り離す手段が不要であり、出口から出た切粉の処理が容易である。
【0013】
前記切粉案内具の前記誘導路の出口は、前記切削工具が前記ワークに接触して旋削加工を行う空間である加工領域内に位置してこの加工領域内に開放されていても良い。
誘導路の出口が加工領域であると、誘導路の出口を切粉回収ボックス等とするものと異なり、出口に切粉回収ボックス等の専用の処理手段を設ける必要がなくて、構成が簡素にできる。誘導路から加工領域内に排出された切粉は、誘導路内に入らなかった切粉やクーラント等共に、加工領域の底部に設けられたチップコンベア等の排出手段と共に排出させることができる。旋盤では、タレット旋盤や櫛歯型旋盤等のように、複数の切削工具が設けられていたり、さらにドリル等の工具が取付けられていることがあり、これらの工具でも切粉が発生する。工具の種類によっては、前記誘導路を設けないものもあり、その工具で発生した切粉は、加工領域の底部に落ちる。前記誘導路の出口から加工領域内に出た切粉は、このような別の工具で発生した切粉と一緒に処理すれば良い。
【0014】
前記切削工具が、水平軸心回りに回転するワークの上面に切刃が接触するように配置される場合に、前記切粉案内具の前記誘導路は、前記切刃がワークに接する接触点から上方に離れるように延びる第1部分と、この第1部分に続き湾曲形状に形成されてワーク軸心から離れる横方向に延び、さらに前記出口が下向きないし斜め下向きとなる第2部分とを有するものとしても良い。
旋削では、水平軸心回りに回転するワークの上面に切削工具の切刃を接触させた場合、切粉は切刃のワーク接触点から上方へ延びるように発生する。前記誘導路の第1部分は、ワークに接する接触点から上方に離れるように延びているため、上記のようにワーク接触点から上方へ延びるように発生する切粉を、その発生方向ののまま受け入れることができて、誘導路の入口周辺で切粉と誘導路の内面とで摩擦抵抗や引っ掛かりを生じることが軽減できる。誘導路内に入った切粉は、前記流体で案内されるため、詰まりを生じることなく所望の方向に誘導することができる。この誘導を、誘導路の第2部分で行うが、第2部分はワーク接触点から離れるように横方向に延び、さらに出口が下向きないし斜め下向きとなる湾曲形状であるため、誘導方向が曲がっていても詰まりが生じ難く、また出口が下向きないし斜め下向きであるため、出口から出た切粉の処理が容易である。出口から出た切粉は、そのまま加工領域に排出しても良い。
【0015】
この発明の切粉案内具付き工具において、前記切削工具と前記切粉案内具との間、または前記切削工具とこの切削工具を支持する工具ホルダとの間に介在し、前記切粉案内具を前記切削工具に対し、取付位置を位置調整自在に取り付ける切粉案内具位置調整機構を設けても良い。
このように切粉案内具の切削工具に対する取付位置を調整可能な切粉案内具位置調整機構を設けた場合、切削条件の違い等による、切削工具の刃先における切粉の発生箇所の位置ずれに対応して、誘導路の入口位置を調整することができる。そのため、より円滑に切粉の案内を行うことができる。
【0016】
この発明の切粉案内具付き工具において、前記切削工具と前記切粉案内具との間、または前記切削工具とこの切削工具を支持する工具ホルダとの間に介在し、前記切粉案内具を前記切削工具に対し、前記誘導路の方向を調整自在とする切粉案内具方向調整機構を設けても良い。
このように切粉案内具方向調整機構を設けた場合、切削条件の違い等により、切削工具の刃先からの切粉の発生方向に違いが生じても、その違いに対応して切粉案内具の誘導路の方向を調整することができる。そのため、種々の切削条件に応じて、より円滑に切粉の案内を行うことができる。
【0017】
この発明における他の切粉案内具付き工具は、ワークに接触して旋削加工を行う切削工具と、この切削工具に取り付けられてこの切削工具のワーク接触部近傍を入口とする切粉の誘導路を形成し、前記切削工具による旋削加工で生じる切粉を案内する切粉案内具と、前記切削工具と前記切粉案内具との間、または前記切削工具とこの切削工具を支持する工具ホルダとの間に介在し、前記切粉案内具を前記切削工具に対し、取付位置を位置調整自在に取り付ける切粉案内具位置調整機構とを設けたものである。
このように切粉案内具の切削工具に対する取付位置を調整可能な切粉案内具位置調整機構を設けた場合、切削条件の違い等による、切削工具の刃先における切粉の発生箇所の位置ずれに対応して、誘導路の入口位置を調整することができる。そのため、より円滑に切粉の案内を行うことができる。
【0018】
この発明におけるさらに他の切粉案内具付き工具は、ワークに接触して旋削加工を行う切削工具と、この切削工具に取り付けられてこの切削工具のワーク接触部近傍を入口とする切粉の誘導路を形成し、前記切削工具による旋削加工で生じる切粉を案内する切粉案内具と、前記切削工具と前記切粉案内具との間、または前記切削工具とこの切削工具を支持する工具ホルダとの間に介在し、前記切粉案内具を前記切削工具に対し、前記誘導路の方向を調整自在とする切粉案内具方向調整機構とを設けたものである。
このように切粉案内具方向調整機構を設けた場合、切削条件の違い等により、切削工具の刃先からの切粉の発生方向に違いが生じても、その違いに対応して切粉案内具の誘導路の方向を調整することができる。そのため、種々の切削条件に応じて、より円滑に切粉の案内を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明の切粉案内具付き工具は、ワークに接触して旋削加工を行う切削工具と、この切削工具に取り付けられてこの切削工具のワーク接触部近傍を入口とする切粉の誘導路を形成し、前記切削工具による旋削加工で生じる切粉を案内する切粉案内具と、前記誘導路内の切粉をこの誘導路の出口側へ強制排出する流体を前記誘導路の入口側から出口側へ流す強制排出用流体供給手段とを設けたため、詰まりを生じることなく切粉を所望の方向に誘導することができ、連続的な切粉処理が行なえて、切削効率の向上が可能となる。
前記切削工具と前記切粉案内具との間、または前記切削工具とこの切削工具を支持する工具ホルダとの間に介在し、前記切粉案内具を前記切削工具に対し、取付位置を位置調整自在に取り付ける切粉案内具位置調整機構を設けた場合は、切削条件の違い等による、切削工具の刃先における切粉の発生箇所の位置ずれに対応して、誘導路の入口位置を調整できて、種々の切削条件に応じて、より円滑に切粉の案内を行うことができる。
前記切削工具と前記切粉案内具との間、または前記切削工具とこの切削工具を支持する工具ホルダとの間に介在し、前記切粉案内具を前記切削工具に対し、前記誘導路の方向を調整自在とする切粉案内具方向調整機構を設けた場合は、切削条件の違い等による、切削工具の刃先からの切粉の発生方向の違いに対応して、誘導路の方向を調整できて、種々の切削条件に応じて、より円滑に切粉の案内を行うことができる。
【0020】
前記強制排出用流体供給手段が、前記切粉案内具の前記誘導路の入口と出口の誘導路途中から前記流体を出口側へ供給し、前記入口にこの入口から前記出口に向かう吸気流を発生させる構成である場合は、切削工具のワーク接触点で発生した切粉が、前記吸引流により誘導路内に吸い込まれ、誘導路により効果的に切粉を導くことができる。
【0021】
前記切粉案内具の前記誘導路の出口が、前記切削工具が前記ワークに接触して旋削加工を行う空間である加工領域内に位置してこの加工領域内に開放されている場合は、誘導路の出口を切粉回収ボックス等とするものと異なり、出口に専用の処理手段を設ける必要がなくて構成が簡素にできる。また、加工領域内に排出するため、排出された切粉を、前記誘導路に入らなかった切粉等と一緒に処理することができる。
【0022】
前記切削工具が、水平軸心回りに回転するワークの上面に切刃が接触するように配置される場合に、前記切粉案内具の前記誘導路は、前記切刃がワークに接する接触点から上方に離れるように延びる第1部分と、この第1部分に続き湾曲形状に形成されてワーク軸心から離れる横方向に延び、さらに前記出口が下向きないし斜め下向きとなる第2部分とを有する形状とした場合は、出口が下向きないし斜め下向きであるため、出口から出た切粉の処理が容易であり,また誘導方向を曲げてながら、湾曲形状であるため詰まりが生じ難い。
【0023】
この発明における他の切粉案内具付き工具は、ワークに接触して旋削加工を行う切削工具と、この切削工具に取り付けられてこの切削工具のワーク接触部近傍を入口とする切粉の誘導路を形成し、前記切削工具による旋削加工で生じる切粉を案内する切粉案内具と、前記切削工具と前記切粉案内具との間、または前記切削工具とこの切削工具を支持する工具ホルダとの間に介在し、前記切粉案内具を前記切削工具に対し、取付位置を位置調整自在に取り付ける切粉案内具位置調整機構とを設けたものであるため、切削条件の違い等による、切削工具の刃先における切粉の発生箇所の位置ずれに対応して、誘導路の入口位置を調整できて、種々の切削条件に応じて、より円滑に切粉の案内を行うことができる。
【0024】
この発明におけるさらに他の切粉案内具付き工具は、ワークに接触して旋削加工を行う切削工具と、この切削工具に取り付けられてこの切削工具のワーク接触部近傍を入口とする切粉の誘導路を形成し、前記切削工具による旋削加工で生じる切粉を案内する切粉案内具と、前記切削工具と前記切粉案内具との間、または前記切削工具とこの切削工具を支持する工具ホルダとの間に介在し、前記切粉案内具を前記切削工具に対し、前記誘導路の方向を調整自在とする切粉案内具方向調整機構とを設けたため、切削条件の違い等による、切削工具の刃先からの切粉の発生方向の違いに対応して、誘導路の方向を調整できて、種々の切削条件に応じて、より円滑に切粉の案内を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る切粉案内具付き工具の斜視図である。
【図2】同切粉案内具付き工具を旋盤に取り付けてワークの旋削加工を行う例を示す説明図である。
【図3】同切粉案内具付き工具を2タレットタイプの旋盤に取り付けてワークの旋削加工を行う例を示す説明図である。
【図4】同切粉案内具付き工具における誘導路の出口側半部の加工例を示す説明図である。
【図5】図3の旋盤の全体を示す破断側面図である。
【図6】この発明の他の実施形態に係る切粉案内具付き工具の斜視図である。
【図7】同図のVII-VII 線に沿う断面図である。
【図8】同切粉案内具付き工具を2タレットタイプの旋盤に取り付けてワークの旋削加工を行う例を示す説明図である。
【図9】この発明のさらに他の実施形態に係る切粉案内具付き工具の側面図である。
【図10】この発明の他の実施形態に係る切粉案内具付き工具の側面図である。
【図11】同切粉案内具付き工具の正面図である。
【図12】図11におけるXII − XII矢視断面図である。
【図13】同切粉案内具付き工具を旋盤に取り付けてワークの旋削加工を行う例の側面図である。
【図14】同旋削加工例の正面図である。
【図15】この発明のさらに他の実施形態に係る切粉案内具付き工具の一部を破断して示す平面図である。
【図16】同切粉案内具付き工具の側面図である。
【図17】切削工具によるワークの旋削加工における切粉の排出方向の説明図である。
【図18】この発明のさらに他の実施形態に係る切粉案内具付き工具の一部を破断して示す側面図である。
【図19】同切粉案内具付き工具の部分平面図である。
【図20】この発明の切粉案内具付き工具が用いられる工作機械となる旋盤の正面図である。
【図21】同工作機械の平面図である。
【図22】従来例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図4と共に説明する。図1は、切粉案内具付き工具の概要を示す。この切粉案内具付き工具1は、回転するワークW(図2)に接触して旋削加工を行う切削工具2と、この切削工具2による旋削加工で生じる切粉C(図2)を誘導路7により案内する切粉案内具5と、前記誘導路7内の切粉Cをこの誘導路7の出口7b側へ強制排出する流体9を誘導路7の入口7a側から出口7b側へ流す強制排出用流体供給手段6とを備える。
【0027】
切削工具2は、シャンク3と、このシャンク3の先端のチップ取付座部3aに取り付けられたチップ4からなるバイトである。切粉案内具5は、切削工具2のチップ4が設けられるシャンク3の上面に取り付けられるブロック状の案内具本体8を有し、この案内具本体8に切粉Cの誘導路7の本体内誘導路部7Aが形成されている。誘導路7は、切削工具2のワーク接触部近傍を入口7aとし、その本体内誘導路部7Aがワーク接触部から離れる方向に延びて形成されている。誘導路7の本体内誘導路部7Aは、チップ4のすくい面に対面して開口する溝部分7Aaと、この溝部分7Aaに続き、案内具本体8の上面に開通した孔7Abとで形成され、溝部分7Aaの先端が上記入口7aとなる。誘導路7の本体外誘導路部7Bは、本体内誘導路部7Aの後端に接続され案内具本体8から突出するパイプ60の内径孔からなる。上記パイプ60には、例えば、図4(A)のように内径面を研磨したパイプ材60′を図4(B)のように所望の形状に塑性変形した後、焼入れしたものが用いられる。
【0028】
強制排出用流体供給手段6は、切粉案内具5の誘導路7の本体内誘導路部7Aの途中部分に連通して案内具本体8から突出するパイプからなる流体通路10と、この流体通路10に流体9を圧送し誘導路7の出口7bへと流す流体供給源11とでなる。流体通路10の前記誘導路7に連通する部分は、流体9を誘導路7の出口側へ送り込む方向に向けられている。流体9は、液体であっても、気体であっても良く、例えばクーラントまたはエアーが用いられる。
【0029】
図2は、前記切粉案内具付き工具1を、工具ホルダ12を介してタレット型の刃物台13に取り付けた状態を概略図で示している。図3は、上下にタレット型の刃物台13を備える2タレット型の旋盤に、前記切粉案内具付き工具1を取り付けた例を示している。なお、図2よび図3では、切粉案内具付き工具1における強制排出用流体供給手段6の流体通路10を省略して示している。
【0030】
上記構成の切粉案内具付き工具1によると、切削工具2によるワークWの旋削加工で生じる切粉Cは、切削工具2のワーク接触部近傍を入口7aとする切粉案内具5の誘導路7に進入する。進入した切粉Cは、強制排出用流体供給手段6により誘導路7内を出口7b側へ流される流体9により、出口7b側へ強制的に案内される。そのため、切粉Cをスムーズに延ばして、その排出方向を加工に弊害の出ない場所へ強制的に向けることができる。その結果、切粉CがワークWや旋盤のチャックやテイルストックに絡まらず、無人連続加工も容易となる。
流体通路10は、誘導路7の途中部分に連通して流体9を出口7b側へ送るため、誘導路7の入口7aの付近に、入口7aから出口7bに向かう吸気流を発生させる。そのため、切削工具2のワーク接触点で発生した切粉Cを、前記吸気流により周辺空気と共に誘導路7内に吸い込む作用を生じる。そのため、より効果的に切粉すの強制案内が行われる。 なお、切粉Cをよりスムーズに延ばすには、ワークWの周速を上げるのが好ましく、これにより加工時間を短縮できる。また、このように切粉Cをスムーズに延ばすと、切削抵抗が軽減され、切削工具2のチップ寿命延長や加工面の高い面粗度が期待できる。
また、前記誘導路7に案内されて延びた切粉Cが貯まる旋盤の下部に、予め引っ掛けプレート付きヒンジコンベアあるいはスパイラルコンベアを設置しておけば、切粉Cを機外へ排出してチップクラッシャーなどで粉砕することができる。
【0031】
図5は、図3の2タレット型の旋盤からなる工作機械70の具体構成例を示す。ベッド71に、左右方向(紙面の表裏)に延びる水平な主軸72が主軸台73を介して回転自在に設置されており、棒状のワークWは、主軸72の先端に設けられたチャック(図示せず)に一端が把持され、主軸72に対向してベッド71に設置された芯押し台(図示せず)に他端が支持される。主軸72は主軸モータ74により伝達機構75を介して回転駆動される。主軸72によるワークWの支持位置の上下に、それぞれタレット型の刃物台13が、上下の各送り台75および昇降台76を介してベッド71に設置されている。各送り台75は、ベッド71に設けられた水平な案内71aに進退自在に設置され、昇降台76は、送り台75に設けられた垂直な案内75aに昇降自在に設置されている。タレット型の刃物台13は、昇降台76に、主軸73と平行な水平軸心回りに割出回転可能に設置されている。送り台75および昇降台76は、それぞれサーボモータおよび送りねじ機構からなる駆動装置(図示せず)により水平進退駆動および昇降駆動がなされ、その昇降により切粉案内具付き工具1のワークWに対する切り込みが、また水平進退駆動によりワークWに対する軸方向の送りがなされる。
【0032】
この工作機械70は、全体が機体カバー77により覆われており、この機体カバー77内における主軸台73および刃物台13を設置した空間が、加工領域Qとなる。この加工領域Qの底面は全体が、傾斜面のホッパー状部78に形成され、このホッパー状部78の底面の開口(図示せず)部分の下に一端79aが位置するチップコンベア79が、ベッド71の下面の前後に貫通した空間を介して工作機械70の後方へ延びている。加工領域Qの前面は、機体カバー77に設けられた開閉扉80で開閉可能であり、この開閉扉80に、主軸72に対するワークWの搬入搬出の補助を行う搬入搬出補助機構81,82が設けられている。
【0033】
図6,図7は、この発明の他の実施形態にかかる切粉案内具付き工具1を示す。この実施形態の切粉案内具付き工具1は、案内具本体8およびパイプ60の形状が異なる他は、図1,図2に示す第1の実施形態にかかる切粉案内具付き工具1と同じであり、特に説明した事項の他は、第1の実施形態と同様である。
案内具本体8は、本体下側部材8Aと本体上側部材8Bに2分割され、互いの合わさり面に、導入路形成溝7Ac,7Adが形成されて、これら導入路形成溝7Ac,7Adにより、角孔状の本体内誘導路部7Aが形成される。本体下側部材8Aは、シャンク3におけるチップ4が取付けられて面に、ボルト等で固定される。本体下側部材8Aは、シャンク3に直接に固定する他に、工具ホルダ12(図8参照)に取付けられて、シャンク3に対し固定状態とされても良い。前記角孔状の本体内誘導路部7Aは、チップ4のすくい面と平行な方向に長い矩形の断面形状であり、導入路7の本体外誘導路部7Bを構成する丸パイプからなるパイプ60の一端60aが、断面矩形の偏平形状に塑性変形されて本体内誘導路部7Aの出口端に嵌合している。本体下側部材8Aと本体上側部材8Bとは、パイプ60の一端60aを嵌合させた状態で、互いにボルト(図示せず)等で一体に結合される。本体内誘導路部7Aにおけるパイプ60が嵌合する部分は、パイプ60の肉厚に相当する深さの嵌合凹部が形成され、パイプ60の先端面が本体内誘導路部7A内に段差を持って突出することを回避してある。
【0034】
案内具本体8の本体上側部材8Bには、強制排出用流体供給手段6を構成する流体通路10の本体内流路部10aが形成されている。本体内流路部10aは、案内具本体8の外面に設けられた有底の入口側孔部10aaと、この入口側孔部10aaの底から本体内誘導路部7Aに連通した吐出孔部10abとでなる。入口側孔部10aaは、ねじ孔に形成されていて、本体外流路部10bとなるパイプの先端のカップリング部がねじ結合される。パイプ10bの基端は前記流体供給源11に接続される。吐出孔部10abは、入口側孔部10aaの底から本体内誘導路部7A側へ斜めに延びているが、図7を上から見て、本体内誘導路部7Aの幅方向の中央でこの本体内誘導路部7Aの流路方向に沿って延びていて、先端が本体内誘導路部7Aの内面で出口側に向いて開口している。吐出孔部10abは、入口側孔部10aaよりも小径とされている。前記強制排出用流体供給手段6は、前記流体通路10により、その吐出孔部10abの先端から前記流体9を誘導路7内へ出口7b側へ供給し、誘導路7の入口7aから出口7bに向かう吸気流を発生させる。
【0035】
この切粉案内具付き工具1は、例えば図8に示すように、上記2タレット型の旋盤からなる工作機械70における上側のタレット型の刃物台13に取付けられ、刃物台13の回転により、切粉案内具付き工具1がワークWに対向する下向きの位置に割り出されて加工に使用される。すなわち、切粉案内具付き工具1の切削工具2は、水平軸心回りに回転するワークWの上面に切刃が接触するように配置される。
切粉案内具5の誘導路7のパイプ60で構成される本体外誘導路部7Bの出口7bは、切削工具2が前記ワークWに接触して旋削加工を行う空間である前記加工領域Q内に位置してこの加工領域Q内に開放される。
【0036】
また、切粉案内具5の前記誘導路7は、前記切刃がワークWに接する接触点から上方に離れるように延びる第1部分71 と、この第1部分71 に続き湾曲形状に形成されてワーク軸心から離れる横方向に延び、さらに前記出口7bが下向きないし斜め下向きとなる第2部分72 とを有する。第1部分71 は、切粉案内具5の本体内誘導路部7Aと、本体外誘導路部7Bを構成するパイプ60の基端部付近である垂直方向の延びる部分とでなり、第2部分72 は、パイプ60の残り部分で構成される。
なお、図8の2タレット型の旋盤からなる工作機械70の具体的構成は、例えば、図5と共に前述した構成である。
【0037】
この実施形態の切粉案内具付き工具1においても、切粉Cの誘導路7を有する切粉案内具5を設けると共に、誘導路7内の切粉Cを出口側へ強制排出する流体を流す強制排出用流体供給手段6を設けたため、旋削加工で生じる切粉Cを、詰まりを生じることなく所望の方向に誘導することができる。また連続的な切粉処理が行なえ、切削効率の向上が可能となる。
前記強制排出用流体供給手段6は、切粉案内具5の誘導路7の入口7aと出口7bの誘導路途中から、前記流体9を出口7b側へ向かって供給するため、入口7aから出口7bに向かう吸気流を、入口7aの付近に発生させる。そのため、切削工具2のワーク接触点で発生した切粉Cが、前記吸気流により周辺空気と共に誘導路7内に吸い込まれ、誘導路7内を前記流体9の流れで出口7b側へ強制排出される。そのため、より効果的にかつより円滑に、切粉Cを所望の方向に誘導できる。前記吸気流による前記誘導路7内への吸い込みは、切削にクーラントが用いられている場合は、クーラントと共に行われ。また、強制排出用流体供給手段6は、誘導路7の途中から流体9を供給するものであるため、誘導路7の入口から流体を供給するものと異なり、供給用の流体通路10が切削工具2の刃先から離れた位置に配置できて、流体通路10が切削の邪魔になることが避けられる。さらに、誘導路7の出口7bで吸引を行うものと異なり、出口7bで切粉Cと流体流れとを切り離す手段が不要であり、出口7bから出た切粉Cの処理が容易である。
【0038】
切粉案内具5の誘導路7の出口7bは、切削工具2がワークWに接触して旋削加工を行う空間である加工領域Q内に位置してこの加工領域Q内に開放されている。このように、誘導路7の出口7bが加工領域Q内であるため、誘導路7の出口7bを切粉回収ボックス等とするものと異なり、出口7bに切粉回収ボックス等の専用の処理手段を設ける必要がなくて、構成が簡素にできる。誘導路7から加工領域Q内に排出された切粉Cは、誘導路7内に入らなかった切粉やクーラント等共に、加工領域Qの底部に設けられたチップコンベア79等の排出手段により排出させることができる。旋盤では、タレット旋盤や櫛歯型旋盤等のように、複数の切削工具が設けられていたり、さらにドリル等の工具が取付けられていることがあり、これらの工具でも切粉が発生する。工具の種類によっては、前記誘導路7を設けないものもあり、その工具で発生した切粉は、加工領域Qの底部に落ちる。前記誘導路7の出口7bから加工領域Q内に出た切粉Cは、このような別の工具で発生した切粉と一緒に処理すれば良い。
【0039】
この実施形態では、前記切削工具2が、前記のように水平軸心回りに回転するワークWの上面に切刃が接触するように配置されるものであって、前記切粉案内具5の前記誘導路7を、前記切刃がワークWに接する接触点から上方に離れるように延びる第1部分71 と、この第1部分71 に続き湾曲形状に形成されてワーク軸心から離れる横方向に延び、さらに前記出口7bが下向きないし斜め下向きとなる第2部分72 とを有するものとしたため、次の利点が得られる。すなわち、旋削では、水平軸心回りに回転するワークWの上面に切削工具2の切刃を接触させた場合、切粉は切刃のワーク接触点から上方へ延びるように発生する。前記誘導路7の第1部分71 は、ワークWに接する接触点から上方に離れるように延びているため、上記のようにワーク接触点から上方へ延びるように発生する切粉Cを、その発生方向のまま受け入れることができて、誘導路7の入口7aの周辺で切粉と誘導路の内面とで摩擦抵抗や引っ掛かりを生じることが軽減できる。誘導路7内に入った切粉Cは、前記流体9で案内されるため、詰まりを生じることなく所望の方向に誘導することができる。この誘導を、誘導路の第2部分72 で行うが、第2部分72 はワーク接触点から離れるように横方向に延び、さらに出口7bが下向きないし斜め下向きとなる湾曲形状であるため、誘導方向を曲げていても詰まりが生じ難く、また出口7bが下向きないし斜め下向きであるため、出口7bから出た切粉の処理が容易である。出口7bから出た切粉Cは、そのまま加工領域Qに排出しても良い。
【0040】
なお、この実施形態の切粉案内具付き工具1において、切粉案内具5の案内具本体8を切削工具2のシャンク3に直接に取付ける変わりに、工具ホルダ12に取付ける場合は、例えば図9に示すように、案内具本体8に取付片8aを設け、取付片8aに形成した取付孔を用いて工具ホルダ12にボルト(図示せず)で取付けるようにしても良い。
【0041】
図10〜図14は、この発明の他の実施形態を示す。この実施形態の切粉案内具付き工具1は、その切粉案内具5の案内具本体8に形成された切粉Cの誘導路7の本体内誘導路部7Aが、主直線孔7cと、この主直線孔7cから斜めに枝別れした分岐直線孔7dとでなり、分岐直線孔7dの先端が誘導路7の入口7aとされている。また、主直線孔7cの分岐直線孔7dが枝分かれした部分よりも先端側の部分で、強制排出用流体供給手段6の流体通路10が連通している。図13および図14は、上記構成の切粉案内具付き工具1を工具ホルダ12を介して刃物台13に取り付けた状態を示す側面図および正面図を示す。その他の構成は図1〜図4に示した実施形態の場合と同様である。
【0042】
上記構成の切粉案内具付き工具1では、切粉Cの誘導路7の本体内誘導路部7Aが、主直線孔7cと、この主直線孔7cから枝別れした分岐直線孔7dとでなり、分岐直線孔7dの先端が誘導路7の入口7aとされ、主直線孔7cの分岐直線孔7dが枝分かれした部分よりも先端側の部分で強制排出用流体供給手段6の流体通路10が連通しているので、流体通路10から圧送される流体9により、誘導路7内の切粉Cを確実に誘導路7の出口7b側へ強制排出することができる。
【0043】
図15および図16は、この発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態の切粉案内具付き工具1では、その切粉案内具5を切削工具2に対し、取付位置を位置調整自在に取り付ける切粉案内具位置調整機構14を設けたものである。切粉案内具位置調整機構14は、切削工具2を支持する工具ホルダ12と、切粉案内具5との間に介在する。なお、切粉案内具位置調整機構14は、切削工具2と切粉案内具5との間に設けても良い。
【0044】
切粉案内具位置調整機構14は、工具ホルダ12に対してY軸方向に移動自在なY軸調整ブロック15と、このY軸調整ブロック15に対してX軸方向に移動自在なX軸調整ブロック16と、切粉案内具5の案内具本体8に固定され前記X軸調整ブロック16に対してZ軸方向に移動自在なZ軸調整ブロック17とでなる。Y軸調整ブロック15は、工具ホルダ12に形成されたY軸方向に延びる蟻ほぞ12aに係合する蟻溝15aを有し、ボルト18で工具ホルダ12に位置固定される。X軸調整ブロック16は、Y軸調整ブロック15に形成されたX軸方向に延びる蟻ほぞ15bに係合する蟻溝16aを有し、ボルト19でY軸調整ブロック15に位置固定される。Z軸調整ブロック17は、X軸調整ブロック16に形成されたZ軸方向に延びる蟻ほぞ16bに係合する蟻溝17aを有し、ボルト20でX軸調整ブロック16に位置固定される。その他の構成は、図1〜図4に示した実施形態の場合と同様である。
【0045】
上記構成の切粉案内具付き工具1の場合、切削工具2に対する切粉案内具5の取付位置が、切粉案内具位置調整機構14により3軸方向(X,Y,Z軸方向)に位置調整自在となる。そのため、切削条件の違い等により、切削工具2のチップ4の刃先における切粉の発生箇所が種々変わっても、その切粉の発生箇所の違いに対応して切粉案内具5の取付位置を調整することができ、切粉案内具5の誘導路7の入口7aを、旋削加工で生じる切粉Cを取り込むのに最適な位置とできる。このため、切削条件等が種々異なっても、誘導路7で円滑に切粉を案内することができる。
【0046】
図17ないし図19は、この発明のさらに他の実施形態を示す。図17のように、旋削加工により生じる切粉は、切削工具2のチップ4のノーズ半径rと、そのワークWへの切込み深さtとで決まる切削点A,Bを結ぶ直線の垂直2等分線の方向に排出される。ちなみに、この場合の切粉の排出方向のワークW表面に対する角度をαとすると、その排出角度α、ノーズ半径r、切り込み深さtの間には、次式
tan α=√(r2 −(r−t)2 ) /t の関係がある。なお、この関係は、コルウェル(COLWEL)の法則として知られている。
【0047】
そこで、図18,図19に示すように、この実施形態の切粉案内具付き工具1では、その切粉案内具5を切削工具2に対し、切粉案内具5の誘導路7の方向を調整自在とする切粉案内具方向調整機構21を設けている。切粉案内具方向調整機構21は、切削工具2と切粉案内具5との間に介在する。具体的には、図18のように、切削工具2のシャンク3の後端から上方に延びてシャンク3の上面と平行に配置された固定基板22と切粉案内具5との間に切粉案内具方向調整機構21が介在する。
【0048】
切粉案内具方向調整機構21は、前記固定基板22の前部の所定位置に突設されて切粉案内具5を水平面内で回転自在に支持する回転支軸23と、この回転支軸23を中心にして切粉案内具5を回動させる回動機構部24とでなる。回動機構部24は、切粉案内具5の上面に固定され前記回転支軸23を回転中心とするセクタギア25と、このセクタギア25に噛み合う駆動ギア26と、前記固定基板22に設けられ前記駆動ギア26を回転駆動するモータ27とでなる。
【0049】
前記切粉案内具方向調整機構21では、モータ27が駆動ギア26を回転駆動すると、これに噛み合うセクタギア25が回動し、このセクタギア25と一体の切粉案内具5を回転支軸23を中心として回動させる。したがって、モータ27による駆動ギア26の回転量を可変設定することにより、切粉案内具5の誘導路7の方向を切削工具2に対して自在に調整することができる。
【0050】
この実施形態の切粉案内具付き工具1では、上記のように切粉案内具方向調整機構21を設けたので、切粉案内具5の誘導路7の方向を自由に調整することができる。特に、誘導路7の入口7aが、旋削加工で生じる切粉Cを取り込むのに最適となるように、切削工具2に対して切粉案内具5の方向を調整することができる。このため、切削条件の違い等により、切粉Cの発生方向が種々異なっても、円滑に切粉Cの案内を行うことができる。
【0051】
この発明の切粉案内具付き工具1を取り付けた工作機械の例を、図20および図21に示す。図20および図21において、工作機械30はタレット型の旋盤からなる。ベッド31上に主軸台32を介して主軸44が支持され、主軸44の主軸頭に、ワークWを把持するチャック44aが設けられている。主軸44は、サーボモータ等からなる主軸モータ33により回転駆動される。
【0052】
刃物台45は、正面形状が多角形のタレット刃物台からなり、その多角形の各辺部分を構成するいずれかの外周面部分45aに、切粉案内具付き工具1が工具ホルダ43を介して取り付けられている。刃物台45の外周面部分45aに取り付けられる工具は、バイト等の切削工具のほかに、ドリルやミリングヘッド等の回転工具(図示せず)であっても良いが、少なくとも一つが、上記切粉案内具付き工具1とされる。
【0053】
このタレット型の刃物台45は、送り台34の上側送り台部34bに、タレット軸35を介して割出回転可能に搭載されている。送り台34は、送り台ベース34aと上側送り台部34bとからなり、送り台ベース34aは、ベッド31上に案内36を介して、主軸軸方向(Z軸方向)と直交する水平方向(X軸方向)に進退自在に搭載されている。上側送り台部34bは、送り台ベース部34a上に主軸軸方向(Z)に進退自在に搭載されている。送り台ベース34aはX軸サーボモータ37により、送りねじ機構38を介して進退駆動される。上側送り台部34bは、Z軸サーボモータ39により、送りねじ機構40を介して進退駆動される。これら送り台ベース34aおよび上側送り台部34bの進退移動により、刃物台45が直交2軸方向に移動する。また、上側送り台部34bに搭載された割出用モータ41により、刃物台45の旋回割出が行なわれる。
【0054】
なお、図示の例では、刃物台45を主軸44と平行に配置したが、刃物台45は主軸44と直交する方向や、対面する方向に配置しても良い。刃物台45は、タレット型に限らず、櫛歯状のものや、一つの切粉案内具付き工具1のみを支持するものであっても良い。また、この工作機械30は、旋盤に限らず、切粉案内具付き工具1を用いる各種の工作機械に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…切粉案内具付き工具
2…切削工具
5…切粉案内具
6…強制排出用流体供給手段
7…誘導路
7A…本体内誘導路部
7B…本体外誘導路部
7a…入口
7b…出口
71 …第1部分
72 …第2部分
8…案内具本体
9…流体
10…流体通路
10a…本体内流路部
10b…本体外流路部
11…流体供給源
12…工具ホルダ
13…刃物台
14…切粉案内具位置調整機構
21…切粉案内具方向調整機構
70…工作機械
79…チップコンベア
Q…加工領域
W…ワーク
【技術分野】
【0001】
この発明は、旋盤等による切削加工に用いる切粉案内具付き工具、特に、延性の高い材料に適した切粉案内具付き工具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工業製品の大量生産、高性能化に伴い、切削加工においても高効率化、高精度化が求められている。これらの要求を実現するために、切粉の適切な処理や、切削速度の増加が必要とされる。旋削加工において、切粉の処理性、工具寿命、切削抵抗、加工精度は、被削性4項目と呼ばれ、それぞれを改善するための工夫がなされてきた。その中で、切粉の処理性の悪さは、切粉の絡みつき等のため、自動化を阻害する最大の要因である。
【0003】
例えば、図22のようにシャフトワークWを旋削加工する場合、ワークWがチャック50とテイルストック51に挟まれているため、切粉Cの逃げ場が無く、ワークW、チャック50、テイルストック51、切削工具52に切粉Cが絡みつき、連続加工が困難になる。また、無人運転の場合は、ローダハンドでワークWを正常に掴めず、稼働停止等に至る問題になる。
【0004】
切粉の処理性の改善のために、一般的には、切粉のカールを強めて破壊、分断させるチップブレーカが使用される。このほかに、切削工具のすくい面にカバーやパイプ等で切粉の中空誘導路を形成するものが提案されている(例えば特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭52−142379号公報
【特許文献2】特開平7−136805号公報
【特許文献3】特開平11−90705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
チップブレーカを使用する場合、切粉がある程度の脆弱性を持ち、切粉が流出する力を利用して切粉の曲げによる破壊、分断を生じさせる必要がある。このため、プレス鋼や耐熱合金などのような延性の高い材料の切粉や、延びやすい仕上げの切粉に対しては機能しない場合が多く、切粉の絡みつきや仕上げ面の損傷を引き起こしている。
【0007】
切削工具のすくい面に、カバーやパイプ等により中空誘導路を形成するものは、切削条件によって切粉の幅、方向、カールが変わることから、切粉が中空誘導路の内壁面などに引っ掛かり、切粉の詰まりが発生し、実用化が困難である。
【0008】
加工条件を工夫したり、ステップ加工によって切粉の絡みつきを防止することも考えられるが、切粉の絡みつき防止に効果を上げるには限界がある。
【0009】
この発明の目的は、詰まりを生じることなく切粉を所望の方向に誘導することができ、連続的な切粉処理が行なえ、切削効率の向上が可能な切粉案内具付き工具を提供することである。
この発明の他の目的は、誘導路に対してより効果的に切粉を導くことができるようにすることである。
この発明のさらに他の目的は、切削条件の違い等による、工具の刃先における切粉の発生箇所の位置ずれに対応して、誘導路の入口位置を調整できて、種々の切削条件に応じて、より円滑に切粉の案内が行えるようにすることである。
この発明の他の目的は、切削条件の違い等による、工具の刃先からの切粉の発生方向の違いに対応して、誘導路の方向を調整できて、種々の切削条件に応じて、より円滑に切粉の案内が行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の切粉案内具付き工具は、ワークに接触して旋削加工を行う切削工具と、この切削工具に取り付けられてこの切削工具のワーク接触部近傍を入口とする切粉の誘導路を形成し、前記切削工具による旋削加工で生じる切粉を案内する切粉案内具と、前記誘導路内の切粉をこの誘導路の出口側へ強制排出する流体を前記誘導路の入口側から出口側へ流す強制排出用流体供給手段とを設けたものである。
【0011】
この切粉案内具付き工具は、切粉の誘導路を有する切粉案内具を設けると共に、誘導路内の切粉を出口側へ強制排出する流体を流す強制排出用流体供給手段を設けたため、旋削加工で生じる切粉を、詰まりを生じることなく所望の方向に誘導することができる。また連続的な切粉処理が行なえ、切削効率の向上が可能となる。
【0012】
前記強制排出用流体供給手段は、前記切粉案内具の前記誘導路の入口と出口の誘導路途中から前記流体を出口側へ供給し、前記入口にこの入口から前記出口に向かう吸気流を発生させるものであっても良い。
このように、前記流体を誘導路途中から流体を出口側へ供給し、前記入口から出口に向かう吸気流を発生させるようにした場合、切削工具のワーク接触点で発生した切粉が、前記吸気流により周辺空気と共に前記誘導路内に吸い込まれ、誘導路内を前記流体の流れで出口側へ強制排出される。そのため、より効果的にかつより円滑に、切粉を所望の方向に誘導できる。前記吸気流による前記誘導路内への吸い込みは、切削にクーラントが用いられている場合は、クーラントと共に行われ。また、強制排出用流体供給手段は、誘導路途中から流体を供給するものであるため、誘導路の入口から流体を供給するものと異なり、供給用の流体通路が切削工具の刃先から離れ位置に配置できて、流体通路が切削の邪魔になることが避けられる。さらに、誘導路の出口で吸引を行うものと異なり、出口で切粉と流体流れとを切り離す手段が不要であり、出口から出た切粉の処理が容易である。
【0013】
前記切粉案内具の前記誘導路の出口は、前記切削工具が前記ワークに接触して旋削加工を行う空間である加工領域内に位置してこの加工領域内に開放されていても良い。
誘導路の出口が加工領域であると、誘導路の出口を切粉回収ボックス等とするものと異なり、出口に切粉回収ボックス等の専用の処理手段を設ける必要がなくて、構成が簡素にできる。誘導路から加工領域内に排出された切粉は、誘導路内に入らなかった切粉やクーラント等共に、加工領域の底部に設けられたチップコンベア等の排出手段と共に排出させることができる。旋盤では、タレット旋盤や櫛歯型旋盤等のように、複数の切削工具が設けられていたり、さらにドリル等の工具が取付けられていることがあり、これらの工具でも切粉が発生する。工具の種類によっては、前記誘導路を設けないものもあり、その工具で発生した切粉は、加工領域の底部に落ちる。前記誘導路の出口から加工領域内に出た切粉は、このような別の工具で発生した切粉と一緒に処理すれば良い。
【0014】
前記切削工具が、水平軸心回りに回転するワークの上面に切刃が接触するように配置される場合に、前記切粉案内具の前記誘導路は、前記切刃がワークに接する接触点から上方に離れるように延びる第1部分と、この第1部分に続き湾曲形状に形成されてワーク軸心から離れる横方向に延び、さらに前記出口が下向きないし斜め下向きとなる第2部分とを有するものとしても良い。
旋削では、水平軸心回りに回転するワークの上面に切削工具の切刃を接触させた場合、切粉は切刃のワーク接触点から上方へ延びるように発生する。前記誘導路の第1部分は、ワークに接する接触点から上方に離れるように延びているため、上記のようにワーク接触点から上方へ延びるように発生する切粉を、その発生方向ののまま受け入れることができて、誘導路の入口周辺で切粉と誘導路の内面とで摩擦抵抗や引っ掛かりを生じることが軽減できる。誘導路内に入った切粉は、前記流体で案内されるため、詰まりを生じることなく所望の方向に誘導することができる。この誘導を、誘導路の第2部分で行うが、第2部分はワーク接触点から離れるように横方向に延び、さらに出口が下向きないし斜め下向きとなる湾曲形状であるため、誘導方向が曲がっていても詰まりが生じ難く、また出口が下向きないし斜め下向きであるため、出口から出た切粉の処理が容易である。出口から出た切粉は、そのまま加工領域に排出しても良い。
【0015】
この発明の切粉案内具付き工具において、前記切削工具と前記切粉案内具との間、または前記切削工具とこの切削工具を支持する工具ホルダとの間に介在し、前記切粉案内具を前記切削工具に対し、取付位置を位置調整自在に取り付ける切粉案内具位置調整機構を設けても良い。
このように切粉案内具の切削工具に対する取付位置を調整可能な切粉案内具位置調整機構を設けた場合、切削条件の違い等による、切削工具の刃先における切粉の発生箇所の位置ずれに対応して、誘導路の入口位置を調整することができる。そのため、より円滑に切粉の案内を行うことができる。
【0016】
この発明の切粉案内具付き工具において、前記切削工具と前記切粉案内具との間、または前記切削工具とこの切削工具を支持する工具ホルダとの間に介在し、前記切粉案内具を前記切削工具に対し、前記誘導路の方向を調整自在とする切粉案内具方向調整機構を設けても良い。
このように切粉案内具方向調整機構を設けた場合、切削条件の違い等により、切削工具の刃先からの切粉の発生方向に違いが生じても、その違いに対応して切粉案内具の誘導路の方向を調整することができる。そのため、種々の切削条件に応じて、より円滑に切粉の案内を行うことができる。
【0017】
この発明における他の切粉案内具付き工具は、ワークに接触して旋削加工を行う切削工具と、この切削工具に取り付けられてこの切削工具のワーク接触部近傍を入口とする切粉の誘導路を形成し、前記切削工具による旋削加工で生じる切粉を案内する切粉案内具と、前記切削工具と前記切粉案内具との間、または前記切削工具とこの切削工具を支持する工具ホルダとの間に介在し、前記切粉案内具を前記切削工具に対し、取付位置を位置調整自在に取り付ける切粉案内具位置調整機構とを設けたものである。
このように切粉案内具の切削工具に対する取付位置を調整可能な切粉案内具位置調整機構を設けた場合、切削条件の違い等による、切削工具の刃先における切粉の発生箇所の位置ずれに対応して、誘導路の入口位置を調整することができる。そのため、より円滑に切粉の案内を行うことができる。
【0018】
この発明におけるさらに他の切粉案内具付き工具は、ワークに接触して旋削加工を行う切削工具と、この切削工具に取り付けられてこの切削工具のワーク接触部近傍を入口とする切粉の誘導路を形成し、前記切削工具による旋削加工で生じる切粉を案内する切粉案内具と、前記切削工具と前記切粉案内具との間、または前記切削工具とこの切削工具を支持する工具ホルダとの間に介在し、前記切粉案内具を前記切削工具に対し、前記誘導路の方向を調整自在とする切粉案内具方向調整機構とを設けたものである。
このように切粉案内具方向調整機構を設けた場合、切削条件の違い等により、切削工具の刃先からの切粉の発生方向に違いが生じても、その違いに対応して切粉案内具の誘導路の方向を調整することができる。そのため、種々の切削条件に応じて、より円滑に切粉の案内を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明の切粉案内具付き工具は、ワークに接触して旋削加工を行う切削工具と、この切削工具に取り付けられてこの切削工具のワーク接触部近傍を入口とする切粉の誘導路を形成し、前記切削工具による旋削加工で生じる切粉を案内する切粉案内具と、前記誘導路内の切粉をこの誘導路の出口側へ強制排出する流体を前記誘導路の入口側から出口側へ流す強制排出用流体供給手段とを設けたため、詰まりを生じることなく切粉を所望の方向に誘導することができ、連続的な切粉処理が行なえて、切削効率の向上が可能となる。
前記切削工具と前記切粉案内具との間、または前記切削工具とこの切削工具を支持する工具ホルダとの間に介在し、前記切粉案内具を前記切削工具に対し、取付位置を位置調整自在に取り付ける切粉案内具位置調整機構を設けた場合は、切削条件の違い等による、切削工具の刃先における切粉の発生箇所の位置ずれに対応して、誘導路の入口位置を調整できて、種々の切削条件に応じて、より円滑に切粉の案内を行うことができる。
前記切削工具と前記切粉案内具との間、または前記切削工具とこの切削工具を支持する工具ホルダとの間に介在し、前記切粉案内具を前記切削工具に対し、前記誘導路の方向を調整自在とする切粉案内具方向調整機構を設けた場合は、切削条件の違い等による、切削工具の刃先からの切粉の発生方向の違いに対応して、誘導路の方向を調整できて、種々の切削条件に応じて、より円滑に切粉の案内を行うことができる。
【0020】
前記強制排出用流体供給手段が、前記切粉案内具の前記誘導路の入口と出口の誘導路途中から前記流体を出口側へ供給し、前記入口にこの入口から前記出口に向かう吸気流を発生させる構成である場合は、切削工具のワーク接触点で発生した切粉が、前記吸引流により誘導路内に吸い込まれ、誘導路により効果的に切粉を導くことができる。
【0021】
前記切粉案内具の前記誘導路の出口が、前記切削工具が前記ワークに接触して旋削加工を行う空間である加工領域内に位置してこの加工領域内に開放されている場合は、誘導路の出口を切粉回収ボックス等とするものと異なり、出口に専用の処理手段を設ける必要がなくて構成が簡素にできる。また、加工領域内に排出するため、排出された切粉を、前記誘導路に入らなかった切粉等と一緒に処理することができる。
【0022】
前記切削工具が、水平軸心回りに回転するワークの上面に切刃が接触するように配置される場合に、前記切粉案内具の前記誘導路は、前記切刃がワークに接する接触点から上方に離れるように延びる第1部分と、この第1部分に続き湾曲形状に形成されてワーク軸心から離れる横方向に延び、さらに前記出口が下向きないし斜め下向きとなる第2部分とを有する形状とした場合は、出口が下向きないし斜め下向きであるため、出口から出た切粉の処理が容易であり,また誘導方向を曲げてながら、湾曲形状であるため詰まりが生じ難い。
【0023】
この発明における他の切粉案内具付き工具は、ワークに接触して旋削加工を行う切削工具と、この切削工具に取り付けられてこの切削工具のワーク接触部近傍を入口とする切粉の誘導路を形成し、前記切削工具による旋削加工で生じる切粉を案内する切粉案内具と、前記切削工具と前記切粉案内具との間、または前記切削工具とこの切削工具を支持する工具ホルダとの間に介在し、前記切粉案内具を前記切削工具に対し、取付位置を位置調整自在に取り付ける切粉案内具位置調整機構とを設けたものであるため、切削条件の違い等による、切削工具の刃先における切粉の発生箇所の位置ずれに対応して、誘導路の入口位置を調整できて、種々の切削条件に応じて、より円滑に切粉の案内を行うことができる。
【0024】
この発明におけるさらに他の切粉案内具付き工具は、ワークに接触して旋削加工を行う切削工具と、この切削工具に取り付けられてこの切削工具のワーク接触部近傍を入口とする切粉の誘導路を形成し、前記切削工具による旋削加工で生じる切粉を案内する切粉案内具と、前記切削工具と前記切粉案内具との間、または前記切削工具とこの切削工具を支持する工具ホルダとの間に介在し、前記切粉案内具を前記切削工具に対し、前記誘導路の方向を調整自在とする切粉案内具方向調整機構とを設けたため、切削条件の違い等による、切削工具の刃先からの切粉の発生方向の違いに対応して、誘導路の方向を調整できて、種々の切削条件に応じて、より円滑に切粉の案内を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る切粉案内具付き工具の斜視図である。
【図2】同切粉案内具付き工具を旋盤に取り付けてワークの旋削加工を行う例を示す説明図である。
【図3】同切粉案内具付き工具を2タレットタイプの旋盤に取り付けてワークの旋削加工を行う例を示す説明図である。
【図4】同切粉案内具付き工具における誘導路の出口側半部の加工例を示す説明図である。
【図5】図3の旋盤の全体を示す破断側面図である。
【図6】この発明の他の実施形態に係る切粉案内具付き工具の斜視図である。
【図7】同図のVII-VII 線に沿う断面図である。
【図8】同切粉案内具付き工具を2タレットタイプの旋盤に取り付けてワークの旋削加工を行う例を示す説明図である。
【図9】この発明のさらに他の実施形態に係る切粉案内具付き工具の側面図である。
【図10】この発明の他の実施形態に係る切粉案内具付き工具の側面図である。
【図11】同切粉案内具付き工具の正面図である。
【図12】図11におけるXII − XII矢視断面図である。
【図13】同切粉案内具付き工具を旋盤に取り付けてワークの旋削加工を行う例の側面図である。
【図14】同旋削加工例の正面図である。
【図15】この発明のさらに他の実施形態に係る切粉案内具付き工具の一部を破断して示す平面図である。
【図16】同切粉案内具付き工具の側面図である。
【図17】切削工具によるワークの旋削加工における切粉の排出方向の説明図である。
【図18】この発明のさらに他の実施形態に係る切粉案内具付き工具の一部を破断して示す側面図である。
【図19】同切粉案内具付き工具の部分平面図である。
【図20】この発明の切粉案内具付き工具が用いられる工作機械となる旋盤の正面図である。
【図21】同工作機械の平面図である。
【図22】従来例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図4と共に説明する。図1は、切粉案内具付き工具の概要を示す。この切粉案内具付き工具1は、回転するワークW(図2)に接触して旋削加工を行う切削工具2と、この切削工具2による旋削加工で生じる切粉C(図2)を誘導路7により案内する切粉案内具5と、前記誘導路7内の切粉Cをこの誘導路7の出口7b側へ強制排出する流体9を誘導路7の入口7a側から出口7b側へ流す強制排出用流体供給手段6とを備える。
【0027】
切削工具2は、シャンク3と、このシャンク3の先端のチップ取付座部3aに取り付けられたチップ4からなるバイトである。切粉案内具5は、切削工具2のチップ4が設けられるシャンク3の上面に取り付けられるブロック状の案内具本体8を有し、この案内具本体8に切粉Cの誘導路7の本体内誘導路部7Aが形成されている。誘導路7は、切削工具2のワーク接触部近傍を入口7aとし、その本体内誘導路部7Aがワーク接触部から離れる方向に延びて形成されている。誘導路7の本体内誘導路部7Aは、チップ4のすくい面に対面して開口する溝部分7Aaと、この溝部分7Aaに続き、案内具本体8の上面に開通した孔7Abとで形成され、溝部分7Aaの先端が上記入口7aとなる。誘導路7の本体外誘導路部7Bは、本体内誘導路部7Aの後端に接続され案内具本体8から突出するパイプ60の内径孔からなる。上記パイプ60には、例えば、図4(A)のように内径面を研磨したパイプ材60′を図4(B)のように所望の形状に塑性変形した後、焼入れしたものが用いられる。
【0028】
強制排出用流体供給手段6は、切粉案内具5の誘導路7の本体内誘導路部7Aの途中部分に連通して案内具本体8から突出するパイプからなる流体通路10と、この流体通路10に流体9を圧送し誘導路7の出口7bへと流す流体供給源11とでなる。流体通路10の前記誘導路7に連通する部分は、流体9を誘導路7の出口側へ送り込む方向に向けられている。流体9は、液体であっても、気体であっても良く、例えばクーラントまたはエアーが用いられる。
【0029】
図2は、前記切粉案内具付き工具1を、工具ホルダ12を介してタレット型の刃物台13に取り付けた状態を概略図で示している。図3は、上下にタレット型の刃物台13を備える2タレット型の旋盤に、前記切粉案内具付き工具1を取り付けた例を示している。なお、図2よび図3では、切粉案内具付き工具1における強制排出用流体供給手段6の流体通路10を省略して示している。
【0030】
上記構成の切粉案内具付き工具1によると、切削工具2によるワークWの旋削加工で生じる切粉Cは、切削工具2のワーク接触部近傍を入口7aとする切粉案内具5の誘導路7に進入する。進入した切粉Cは、強制排出用流体供給手段6により誘導路7内を出口7b側へ流される流体9により、出口7b側へ強制的に案内される。そのため、切粉Cをスムーズに延ばして、その排出方向を加工に弊害の出ない場所へ強制的に向けることができる。その結果、切粉CがワークWや旋盤のチャックやテイルストックに絡まらず、無人連続加工も容易となる。
流体通路10は、誘導路7の途中部分に連通して流体9を出口7b側へ送るため、誘導路7の入口7aの付近に、入口7aから出口7bに向かう吸気流を発生させる。そのため、切削工具2のワーク接触点で発生した切粉Cを、前記吸気流により周辺空気と共に誘導路7内に吸い込む作用を生じる。そのため、より効果的に切粉すの強制案内が行われる。 なお、切粉Cをよりスムーズに延ばすには、ワークWの周速を上げるのが好ましく、これにより加工時間を短縮できる。また、このように切粉Cをスムーズに延ばすと、切削抵抗が軽減され、切削工具2のチップ寿命延長や加工面の高い面粗度が期待できる。
また、前記誘導路7に案内されて延びた切粉Cが貯まる旋盤の下部に、予め引っ掛けプレート付きヒンジコンベアあるいはスパイラルコンベアを設置しておけば、切粉Cを機外へ排出してチップクラッシャーなどで粉砕することができる。
【0031】
図5は、図3の2タレット型の旋盤からなる工作機械70の具体構成例を示す。ベッド71に、左右方向(紙面の表裏)に延びる水平な主軸72が主軸台73を介して回転自在に設置されており、棒状のワークWは、主軸72の先端に設けられたチャック(図示せず)に一端が把持され、主軸72に対向してベッド71に設置された芯押し台(図示せず)に他端が支持される。主軸72は主軸モータ74により伝達機構75を介して回転駆動される。主軸72によるワークWの支持位置の上下に、それぞれタレット型の刃物台13が、上下の各送り台75および昇降台76を介してベッド71に設置されている。各送り台75は、ベッド71に設けられた水平な案内71aに進退自在に設置され、昇降台76は、送り台75に設けられた垂直な案内75aに昇降自在に設置されている。タレット型の刃物台13は、昇降台76に、主軸73と平行な水平軸心回りに割出回転可能に設置されている。送り台75および昇降台76は、それぞれサーボモータおよび送りねじ機構からなる駆動装置(図示せず)により水平進退駆動および昇降駆動がなされ、その昇降により切粉案内具付き工具1のワークWに対する切り込みが、また水平進退駆動によりワークWに対する軸方向の送りがなされる。
【0032】
この工作機械70は、全体が機体カバー77により覆われており、この機体カバー77内における主軸台73および刃物台13を設置した空間が、加工領域Qとなる。この加工領域Qの底面は全体が、傾斜面のホッパー状部78に形成され、このホッパー状部78の底面の開口(図示せず)部分の下に一端79aが位置するチップコンベア79が、ベッド71の下面の前後に貫通した空間を介して工作機械70の後方へ延びている。加工領域Qの前面は、機体カバー77に設けられた開閉扉80で開閉可能であり、この開閉扉80に、主軸72に対するワークWの搬入搬出の補助を行う搬入搬出補助機構81,82が設けられている。
【0033】
図6,図7は、この発明の他の実施形態にかかる切粉案内具付き工具1を示す。この実施形態の切粉案内具付き工具1は、案内具本体8およびパイプ60の形状が異なる他は、図1,図2に示す第1の実施形態にかかる切粉案内具付き工具1と同じであり、特に説明した事項の他は、第1の実施形態と同様である。
案内具本体8は、本体下側部材8Aと本体上側部材8Bに2分割され、互いの合わさり面に、導入路形成溝7Ac,7Adが形成されて、これら導入路形成溝7Ac,7Adにより、角孔状の本体内誘導路部7Aが形成される。本体下側部材8Aは、シャンク3におけるチップ4が取付けられて面に、ボルト等で固定される。本体下側部材8Aは、シャンク3に直接に固定する他に、工具ホルダ12(図8参照)に取付けられて、シャンク3に対し固定状態とされても良い。前記角孔状の本体内誘導路部7Aは、チップ4のすくい面と平行な方向に長い矩形の断面形状であり、導入路7の本体外誘導路部7Bを構成する丸パイプからなるパイプ60の一端60aが、断面矩形の偏平形状に塑性変形されて本体内誘導路部7Aの出口端に嵌合している。本体下側部材8Aと本体上側部材8Bとは、パイプ60の一端60aを嵌合させた状態で、互いにボルト(図示せず)等で一体に結合される。本体内誘導路部7Aにおけるパイプ60が嵌合する部分は、パイプ60の肉厚に相当する深さの嵌合凹部が形成され、パイプ60の先端面が本体内誘導路部7A内に段差を持って突出することを回避してある。
【0034】
案内具本体8の本体上側部材8Bには、強制排出用流体供給手段6を構成する流体通路10の本体内流路部10aが形成されている。本体内流路部10aは、案内具本体8の外面に設けられた有底の入口側孔部10aaと、この入口側孔部10aaの底から本体内誘導路部7Aに連通した吐出孔部10abとでなる。入口側孔部10aaは、ねじ孔に形成されていて、本体外流路部10bとなるパイプの先端のカップリング部がねじ結合される。パイプ10bの基端は前記流体供給源11に接続される。吐出孔部10abは、入口側孔部10aaの底から本体内誘導路部7A側へ斜めに延びているが、図7を上から見て、本体内誘導路部7Aの幅方向の中央でこの本体内誘導路部7Aの流路方向に沿って延びていて、先端が本体内誘導路部7Aの内面で出口側に向いて開口している。吐出孔部10abは、入口側孔部10aaよりも小径とされている。前記強制排出用流体供給手段6は、前記流体通路10により、その吐出孔部10abの先端から前記流体9を誘導路7内へ出口7b側へ供給し、誘導路7の入口7aから出口7bに向かう吸気流を発生させる。
【0035】
この切粉案内具付き工具1は、例えば図8に示すように、上記2タレット型の旋盤からなる工作機械70における上側のタレット型の刃物台13に取付けられ、刃物台13の回転により、切粉案内具付き工具1がワークWに対向する下向きの位置に割り出されて加工に使用される。すなわち、切粉案内具付き工具1の切削工具2は、水平軸心回りに回転するワークWの上面に切刃が接触するように配置される。
切粉案内具5の誘導路7のパイプ60で構成される本体外誘導路部7Bの出口7bは、切削工具2が前記ワークWに接触して旋削加工を行う空間である前記加工領域Q内に位置してこの加工領域Q内に開放される。
【0036】
また、切粉案内具5の前記誘導路7は、前記切刃がワークWに接する接触点から上方に離れるように延びる第1部分71 と、この第1部分71 に続き湾曲形状に形成されてワーク軸心から離れる横方向に延び、さらに前記出口7bが下向きないし斜め下向きとなる第2部分72 とを有する。第1部分71 は、切粉案内具5の本体内誘導路部7Aと、本体外誘導路部7Bを構成するパイプ60の基端部付近である垂直方向の延びる部分とでなり、第2部分72 は、パイプ60の残り部分で構成される。
なお、図8の2タレット型の旋盤からなる工作機械70の具体的構成は、例えば、図5と共に前述した構成である。
【0037】
この実施形態の切粉案内具付き工具1においても、切粉Cの誘導路7を有する切粉案内具5を設けると共に、誘導路7内の切粉Cを出口側へ強制排出する流体を流す強制排出用流体供給手段6を設けたため、旋削加工で生じる切粉Cを、詰まりを生じることなく所望の方向に誘導することができる。また連続的な切粉処理が行なえ、切削効率の向上が可能となる。
前記強制排出用流体供給手段6は、切粉案内具5の誘導路7の入口7aと出口7bの誘導路途中から、前記流体9を出口7b側へ向かって供給するため、入口7aから出口7bに向かう吸気流を、入口7aの付近に発生させる。そのため、切削工具2のワーク接触点で発生した切粉Cが、前記吸気流により周辺空気と共に誘導路7内に吸い込まれ、誘導路7内を前記流体9の流れで出口7b側へ強制排出される。そのため、より効果的にかつより円滑に、切粉Cを所望の方向に誘導できる。前記吸気流による前記誘導路7内への吸い込みは、切削にクーラントが用いられている場合は、クーラントと共に行われ。また、強制排出用流体供給手段6は、誘導路7の途中から流体9を供給するものであるため、誘導路7の入口から流体を供給するものと異なり、供給用の流体通路10が切削工具2の刃先から離れた位置に配置できて、流体通路10が切削の邪魔になることが避けられる。さらに、誘導路7の出口7bで吸引を行うものと異なり、出口7bで切粉Cと流体流れとを切り離す手段が不要であり、出口7bから出た切粉Cの処理が容易である。
【0038】
切粉案内具5の誘導路7の出口7bは、切削工具2がワークWに接触して旋削加工を行う空間である加工領域Q内に位置してこの加工領域Q内に開放されている。このように、誘導路7の出口7bが加工領域Q内であるため、誘導路7の出口7bを切粉回収ボックス等とするものと異なり、出口7bに切粉回収ボックス等の専用の処理手段を設ける必要がなくて、構成が簡素にできる。誘導路7から加工領域Q内に排出された切粉Cは、誘導路7内に入らなかった切粉やクーラント等共に、加工領域Qの底部に設けられたチップコンベア79等の排出手段により排出させることができる。旋盤では、タレット旋盤や櫛歯型旋盤等のように、複数の切削工具が設けられていたり、さらにドリル等の工具が取付けられていることがあり、これらの工具でも切粉が発生する。工具の種類によっては、前記誘導路7を設けないものもあり、その工具で発生した切粉は、加工領域Qの底部に落ちる。前記誘導路7の出口7bから加工領域Q内に出た切粉Cは、このような別の工具で発生した切粉と一緒に処理すれば良い。
【0039】
この実施形態では、前記切削工具2が、前記のように水平軸心回りに回転するワークWの上面に切刃が接触するように配置されるものであって、前記切粉案内具5の前記誘導路7を、前記切刃がワークWに接する接触点から上方に離れるように延びる第1部分71 と、この第1部分71 に続き湾曲形状に形成されてワーク軸心から離れる横方向に延び、さらに前記出口7bが下向きないし斜め下向きとなる第2部分72 とを有するものとしたため、次の利点が得られる。すなわち、旋削では、水平軸心回りに回転するワークWの上面に切削工具2の切刃を接触させた場合、切粉は切刃のワーク接触点から上方へ延びるように発生する。前記誘導路7の第1部分71 は、ワークWに接する接触点から上方に離れるように延びているため、上記のようにワーク接触点から上方へ延びるように発生する切粉Cを、その発生方向のまま受け入れることができて、誘導路7の入口7aの周辺で切粉と誘導路の内面とで摩擦抵抗や引っ掛かりを生じることが軽減できる。誘導路7内に入った切粉Cは、前記流体9で案内されるため、詰まりを生じることなく所望の方向に誘導することができる。この誘導を、誘導路の第2部分72 で行うが、第2部分72 はワーク接触点から離れるように横方向に延び、さらに出口7bが下向きないし斜め下向きとなる湾曲形状であるため、誘導方向を曲げていても詰まりが生じ難く、また出口7bが下向きないし斜め下向きであるため、出口7bから出た切粉の処理が容易である。出口7bから出た切粉Cは、そのまま加工領域Qに排出しても良い。
【0040】
なお、この実施形態の切粉案内具付き工具1において、切粉案内具5の案内具本体8を切削工具2のシャンク3に直接に取付ける変わりに、工具ホルダ12に取付ける場合は、例えば図9に示すように、案内具本体8に取付片8aを設け、取付片8aに形成した取付孔を用いて工具ホルダ12にボルト(図示せず)で取付けるようにしても良い。
【0041】
図10〜図14は、この発明の他の実施形態を示す。この実施形態の切粉案内具付き工具1は、その切粉案内具5の案内具本体8に形成された切粉Cの誘導路7の本体内誘導路部7Aが、主直線孔7cと、この主直線孔7cから斜めに枝別れした分岐直線孔7dとでなり、分岐直線孔7dの先端が誘導路7の入口7aとされている。また、主直線孔7cの分岐直線孔7dが枝分かれした部分よりも先端側の部分で、強制排出用流体供給手段6の流体通路10が連通している。図13および図14は、上記構成の切粉案内具付き工具1を工具ホルダ12を介して刃物台13に取り付けた状態を示す側面図および正面図を示す。その他の構成は図1〜図4に示した実施形態の場合と同様である。
【0042】
上記構成の切粉案内具付き工具1では、切粉Cの誘導路7の本体内誘導路部7Aが、主直線孔7cと、この主直線孔7cから枝別れした分岐直線孔7dとでなり、分岐直線孔7dの先端が誘導路7の入口7aとされ、主直線孔7cの分岐直線孔7dが枝分かれした部分よりも先端側の部分で強制排出用流体供給手段6の流体通路10が連通しているので、流体通路10から圧送される流体9により、誘導路7内の切粉Cを確実に誘導路7の出口7b側へ強制排出することができる。
【0043】
図15および図16は、この発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態の切粉案内具付き工具1では、その切粉案内具5を切削工具2に対し、取付位置を位置調整自在に取り付ける切粉案内具位置調整機構14を設けたものである。切粉案内具位置調整機構14は、切削工具2を支持する工具ホルダ12と、切粉案内具5との間に介在する。なお、切粉案内具位置調整機構14は、切削工具2と切粉案内具5との間に設けても良い。
【0044】
切粉案内具位置調整機構14は、工具ホルダ12に対してY軸方向に移動自在なY軸調整ブロック15と、このY軸調整ブロック15に対してX軸方向に移動自在なX軸調整ブロック16と、切粉案内具5の案内具本体8に固定され前記X軸調整ブロック16に対してZ軸方向に移動自在なZ軸調整ブロック17とでなる。Y軸調整ブロック15は、工具ホルダ12に形成されたY軸方向に延びる蟻ほぞ12aに係合する蟻溝15aを有し、ボルト18で工具ホルダ12に位置固定される。X軸調整ブロック16は、Y軸調整ブロック15に形成されたX軸方向に延びる蟻ほぞ15bに係合する蟻溝16aを有し、ボルト19でY軸調整ブロック15に位置固定される。Z軸調整ブロック17は、X軸調整ブロック16に形成されたZ軸方向に延びる蟻ほぞ16bに係合する蟻溝17aを有し、ボルト20でX軸調整ブロック16に位置固定される。その他の構成は、図1〜図4に示した実施形態の場合と同様である。
【0045】
上記構成の切粉案内具付き工具1の場合、切削工具2に対する切粉案内具5の取付位置が、切粉案内具位置調整機構14により3軸方向(X,Y,Z軸方向)に位置調整自在となる。そのため、切削条件の違い等により、切削工具2のチップ4の刃先における切粉の発生箇所が種々変わっても、その切粉の発生箇所の違いに対応して切粉案内具5の取付位置を調整することができ、切粉案内具5の誘導路7の入口7aを、旋削加工で生じる切粉Cを取り込むのに最適な位置とできる。このため、切削条件等が種々異なっても、誘導路7で円滑に切粉を案内することができる。
【0046】
図17ないし図19は、この発明のさらに他の実施形態を示す。図17のように、旋削加工により生じる切粉は、切削工具2のチップ4のノーズ半径rと、そのワークWへの切込み深さtとで決まる切削点A,Bを結ぶ直線の垂直2等分線の方向に排出される。ちなみに、この場合の切粉の排出方向のワークW表面に対する角度をαとすると、その排出角度α、ノーズ半径r、切り込み深さtの間には、次式
tan α=√(r2 −(r−t)2 ) /t の関係がある。なお、この関係は、コルウェル(COLWEL)の法則として知られている。
【0047】
そこで、図18,図19に示すように、この実施形態の切粉案内具付き工具1では、その切粉案内具5を切削工具2に対し、切粉案内具5の誘導路7の方向を調整自在とする切粉案内具方向調整機構21を設けている。切粉案内具方向調整機構21は、切削工具2と切粉案内具5との間に介在する。具体的には、図18のように、切削工具2のシャンク3の後端から上方に延びてシャンク3の上面と平行に配置された固定基板22と切粉案内具5との間に切粉案内具方向調整機構21が介在する。
【0048】
切粉案内具方向調整機構21は、前記固定基板22の前部の所定位置に突設されて切粉案内具5を水平面内で回転自在に支持する回転支軸23と、この回転支軸23を中心にして切粉案内具5を回動させる回動機構部24とでなる。回動機構部24は、切粉案内具5の上面に固定され前記回転支軸23を回転中心とするセクタギア25と、このセクタギア25に噛み合う駆動ギア26と、前記固定基板22に設けられ前記駆動ギア26を回転駆動するモータ27とでなる。
【0049】
前記切粉案内具方向調整機構21では、モータ27が駆動ギア26を回転駆動すると、これに噛み合うセクタギア25が回動し、このセクタギア25と一体の切粉案内具5を回転支軸23を中心として回動させる。したがって、モータ27による駆動ギア26の回転量を可変設定することにより、切粉案内具5の誘導路7の方向を切削工具2に対して自在に調整することができる。
【0050】
この実施形態の切粉案内具付き工具1では、上記のように切粉案内具方向調整機構21を設けたので、切粉案内具5の誘導路7の方向を自由に調整することができる。特に、誘導路7の入口7aが、旋削加工で生じる切粉Cを取り込むのに最適となるように、切削工具2に対して切粉案内具5の方向を調整することができる。このため、切削条件の違い等により、切粉Cの発生方向が種々異なっても、円滑に切粉Cの案内を行うことができる。
【0051】
この発明の切粉案内具付き工具1を取り付けた工作機械の例を、図20および図21に示す。図20および図21において、工作機械30はタレット型の旋盤からなる。ベッド31上に主軸台32を介して主軸44が支持され、主軸44の主軸頭に、ワークWを把持するチャック44aが設けられている。主軸44は、サーボモータ等からなる主軸モータ33により回転駆動される。
【0052】
刃物台45は、正面形状が多角形のタレット刃物台からなり、その多角形の各辺部分を構成するいずれかの外周面部分45aに、切粉案内具付き工具1が工具ホルダ43を介して取り付けられている。刃物台45の外周面部分45aに取り付けられる工具は、バイト等の切削工具のほかに、ドリルやミリングヘッド等の回転工具(図示せず)であっても良いが、少なくとも一つが、上記切粉案内具付き工具1とされる。
【0053】
このタレット型の刃物台45は、送り台34の上側送り台部34bに、タレット軸35を介して割出回転可能に搭載されている。送り台34は、送り台ベース34aと上側送り台部34bとからなり、送り台ベース34aは、ベッド31上に案内36を介して、主軸軸方向(Z軸方向)と直交する水平方向(X軸方向)に進退自在に搭載されている。上側送り台部34bは、送り台ベース部34a上に主軸軸方向(Z)に進退自在に搭載されている。送り台ベース34aはX軸サーボモータ37により、送りねじ機構38を介して進退駆動される。上側送り台部34bは、Z軸サーボモータ39により、送りねじ機構40を介して進退駆動される。これら送り台ベース34aおよび上側送り台部34bの進退移動により、刃物台45が直交2軸方向に移動する。また、上側送り台部34bに搭載された割出用モータ41により、刃物台45の旋回割出が行なわれる。
【0054】
なお、図示の例では、刃物台45を主軸44と平行に配置したが、刃物台45は主軸44と直交する方向や、対面する方向に配置しても良い。刃物台45は、タレット型に限らず、櫛歯状のものや、一つの切粉案内具付き工具1のみを支持するものであっても良い。また、この工作機械30は、旋盤に限らず、切粉案内具付き工具1を用いる各種の工作機械に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…切粉案内具付き工具
2…切削工具
5…切粉案内具
6…強制排出用流体供給手段
7…誘導路
7A…本体内誘導路部
7B…本体外誘導路部
7a…入口
7b…出口
71 …第1部分
72 …第2部分
8…案内具本体
9…流体
10…流体通路
10a…本体内流路部
10b…本体外流路部
11…流体供給源
12…工具ホルダ
13…刃物台
14…切粉案内具位置調整機構
21…切粉案内具方向調整機構
70…工作機械
79…チップコンベア
Q…加工領域
W…ワーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに接触して旋削加工を行う切削工具と、この切削工具に取り付けられてこの切削工具のワーク接触部近傍を入口とする切粉の誘導路を形成し、前記切削工具による旋削加工で生じる切粉を案内する切粉案内具と、前記誘導路内の切粉をこの誘導路の出口側へ強制排出する流体を前記誘導路の入口側から出口側へ流す強制排出用流体供給手段とを備えた切粉案内具付き工具。
【請求項2】
前記強制排出用流体供給手段は、前記切粉案内具の前記誘導路の入口と出口の誘導路途中から前記流体を出口側へ供給し、前記入口にこの入口から前記出口に向かう吸気流を発生させる請求項1記載の切粉案内具付き工具。
【請求項3】
前記切粉案内具の前記誘導路の出口は、前記切削工具が前記ワークに接触して旋削加工を行う空間である加工領域内に位置してこの加工領域内に開放された請求項1または請求項2に記載の切粉案内具付き工具。
【請求項4】
前記切削工具は、水平軸心回りに回転するワークの上面に切刃が接触するように配置され、前記切粉案内具の前記誘導路は、前記切刃がワークに接する接触点から上方に離れるように延びる第1部分と、この第1部分に続き湾曲形状に形成されてワーク軸心から離れる横方向に延び、さらに前記出口が下向きないし斜め下向きとなる第2部分とを有する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の切粉案内具付き工具。
【請求項5】
前記切削工具と前記切粉案内具との間、または前記切削工具とこの切削工具を支持する工具ホルダとの間に介在し、前記切粉案内具を前記切削工具に対し、取付位置を位置調整自在に取り付ける切粉案内具位置調整機構を設けた請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の切粉案内具付き工具。
【請求項6】
前記切削工具と前記切粉案内具との間、または前記切削工具とこの切削工具を支持する工具ホルダとの間に介在し、前記切粉案内具を前記切削工具に対し、前記誘導路の方向を調整自在とする切粉案内具方向調整機構を設けた請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の切粉案内具付き工具。
【請求項7】
ワークに接触して旋削加工を行う切削工具と、この切削工具に取り付けられてこの切削工具のワーク接触部近傍を入口とする切粉の誘導路を形成し、前記切削工具による旋削加工で生じる切粉を案内する切粉案内具と、前記切削工具と前記切粉案内具との間、または前記切削工具とこの切削工具を支持する工具ホルダとの間に介在し、前記切粉案内具を前記切削工具に対し、取付位置を位置調整自在に取り付ける切粉案内具位置調整機構とを備えた切粉案内具付き工具。
【請求項8】
ワークに接触して旋削加工を行う切削工具と、この切削工具に取り付けられてこの切削工具のワーク接触部近傍を入口とする切粉の誘導路を形成し、前記切削工具による旋削加工で生じる切粉を案内する切粉案内具と、前記切削工具と前記切粉案内具との間、または前記切削工具とこの切削工具を支持する工具ホルダとの間に介在し、前記切粉案内具を前記切削工具に対し、前記誘導路の方向を調整自在とする切粉案内具方向調整機構とを備えた切粉案内具付き工具。
【請求項1】
ワークに接触して旋削加工を行う切削工具と、この切削工具に取り付けられてこの切削工具のワーク接触部近傍を入口とする切粉の誘導路を形成し、前記切削工具による旋削加工で生じる切粉を案内する切粉案内具と、前記誘導路内の切粉をこの誘導路の出口側へ強制排出する流体を前記誘導路の入口側から出口側へ流す強制排出用流体供給手段とを備えた切粉案内具付き工具。
【請求項2】
前記強制排出用流体供給手段は、前記切粉案内具の前記誘導路の入口と出口の誘導路途中から前記流体を出口側へ供給し、前記入口にこの入口から前記出口に向かう吸気流を発生させる請求項1記載の切粉案内具付き工具。
【請求項3】
前記切粉案内具の前記誘導路の出口は、前記切削工具が前記ワークに接触して旋削加工を行う空間である加工領域内に位置してこの加工領域内に開放された請求項1または請求項2に記載の切粉案内具付き工具。
【請求項4】
前記切削工具は、水平軸心回りに回転するワークの上面に切刃が接触するように配置され、前記切粉案内具の前記誘導路は、前記切刃がワークに接する接触点から上方に離れるように延びる第1部分と、この第1部分に続き湾曲形状に形成されてワーク軸心から離れる横方向に延び、さらに前記出口が下向きないし斜め下向きとなる第2部分とを有する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の切粉案内具付き工具。
【請求項5】
前記切削工具と前記切粉案内具との間、または前記切削工具とこの切削工具を支持する工具ホルダとの間に介在し、前記切粉案内具を前記切削工具に対し、取付位置を位置調整自在に取り付ける切粉案内具位置調整機構を設けた請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の切粉案内具付き工具。
【請求項6】
前記切削工具と前記切粉案内具との間、または前記切削工具とこの切削工具を支持する工具ホルダとの間に介在し、前記切粉案内具を前記切削工具に対し、前記誘導路の方向を調整自在とする切粉案内具方向調整機構を設けた請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の切粉案内具付き工具。
【請求項7】
ワークに接触して旋削加工を行う切削工具と、この切削工具に取り付けられてこの切削工具のワーク接触部近傍を入口とする切粉の誘導路を形成し、前記切削工具による旋削加工で生じる切粉を案内する切粉案内具と、前記切削工具と前記切粉案内具との間、または前記切削工具とこの切削工具を支持する工具ホルダとの間に介在し、前記切粉案内具を前記切削工具に対し、取付位置を位置調整自在に取り付ける切粉案内具位置調整機構とを備えた切粉案内具付き工具。
【請求項8】
ワークに接触して旋削加工を行う切削工具と、この切削工具に取り付けられてこの切削工具のワーク接触部近傍を入口とする切粉の誘導路を形成し、前記切削工具による旋削加工で生じる切粉を案内する切粉案内具と、前記切削工具と前記切粉案内具との間、または前記切削工具とこの切削工具を支持する工具ホルダとの間に介在し、前記切粉案内具を前記切削工具に対し、前記誘導路の方向を調整自在とする切粉案内具方向調整機構とを備えた切粉案内具付き工具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
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【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2010−120156(P2010−120156A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−242572(P2009−242572)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
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