説明

切離機構

【目的】 切り離された後の分離した切離装置をどちらも第1部材に備えさせることで、切離装置を再利用することを容易とし、低コスト化する。
【構成】 第1部材1の切離装置3によるブラケット2とアーム5との連結の切り離しによって、ブラケット2とアーム5とをヒンジ4を中心に開くことで、アーム5を第2部材11の保持部12による保持から切り離し、第1部材1と第2部材11との連結を切り離す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結された部材を切り離す切離機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、連結された部材を切り離す切離機構としては、分離可能な2個の部材に2本のローラを軸支し、前記2本のローラを結束するように該2本のローラ間に電食線を全体として該ローラの軸線方向に位置をずらせて複数回巻き付け、前記ローラ相互間に加わる荷重を分散させるようにし、電食線を切断後スムーズに離脱させるものがある。(特許文献1参照)
また、他の従来技術を図10乃至13に示す。図中1は第1部材を構成する浮力体、1aはロッド取付部、2はブラケットを構成するロッド、3は切離装置、3aは切離装置の一方部、3bは切離装置の他方部、11は第2部材を構成するアンカー、12は保持部、Dは切離機構を示す。
【0003】
図10は従来の切離装置を有する浮力体を海底に設置した図である。浮力体1は内部に海底設置型の地震計や各種調査等の観測装置を収納している略球形の構造を有し、外周にロッド取付部1aを備えている。切離機構Dは、ロッド取付部1aの図10における左右両側に結合されたロッド2と、ロッド2とアンカー11とを浮力体1の設置時は連結し、浮力体1の回収時は切り離しする切離装置3と、アンカー11から垂直方向に延びた保持部12とで構成されている。ロッド2は一端が浮力体1のロッド取付部1aに結合され、他端は切離装置3の一方部3aと結合された鉛直棒状の部材である。切離装置3は、ロッド2とともに、浮力体1とアンカー11とを連結しており、普段は一体である二つの部分を、音響等のコマンド信号やタイマ等により作動する電蝕式、ガス圧式又は爆発ボルト式等の分離手法を利用して2つの部分に分離させる装置である。切離装置3の2つの部分のうち一方部3aはロッド2に、他方部3bはアンカー11から垂直に延びる保持部12に結合されている。アンカー11は海底に沈められた錘であり、アンカー11から垂直方向に延びる保持部12を介して切離装置3の他方部3bに結合されている。この構造により、浮力体1は浮遊せずに、海底に設置されたアンカー11に保持される。
【0004】
図11は切離装置3が作動する前の切離機構Dを拡大した図である。作動前、切離装置3は二つの部分が連結された状態なので、浮力体1とアンカー11とは、切離機構Dを介して連結されている。図12は切離装置3が作動した後の切離機構Dを拡大した図である。切離装置3は海上等の遠隔からのコマンド信号等により一方部3aと他方部3bの二つの部分を分離させ、連結状態を切り離す。図13は切離装置3が作動した後の全体図である。切離装置3が切り離されると、浮力体1は浮力により浮上する。そして、浮力体1はアンカー11から完全に切り離され、浮上することになる。
【特許文献1】特開昭60−66115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、切離装置3を作動させると、切離装置3は一方部3aをロッド2に、他方部3bをアンカー11に残した状態で分離される構造となっており、特に海底に残った切離装置3の他方部3bは再利用することが困難となる。 また、直接切離装置3が浮力体1とアンカー11との間の張力を受けているため、切離装置3に作用する張力の負荷荷重を加減操作することができない。さらに、切離機構Dを二つ用いた場合に、双方が正常に切り離されないと浮力体1がアンカー11から切り離されないという問題点を有している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために本発明は、第1部材と第2部材との間の連結を切り離す切離機構において、前記第1部材に結合されたブラケットと、前記ブラケットに一方を結合されたヒンジと、一方部を前記ヒンジの他方に結合され、他方部を第2部材に保持されたアームと、通常前記ブラケットと前記アームとを前記ヒンジが閉状態で連結し、切り離し時に前記ブラケットと前記アームとの連結を切り離す切離装置と、前記第2部材に設け、前記アームを保持する保持部とを備え、前記第1部材の前記切離装置による前記ブラケットと前記アームとの連結の切り離しによって、前記ブラケットと前記アームとを前記ヒンジを中心に開くことで、前記アームを前記第2部材の前記保持部による保持から切り離し、前記第1部材と前記第2部材との連結を切り離すことを特徴とする。
【0007】
また、前記切離機構は、前記切離装置と前記ブラケットとの間及び前記切離装置と前記アームとの間に延長アームを設けたことを特徴とする。
【0008】
また、前記切離機構は、前記第2部材に前記アームを保持する保持部を有し、前記保持部の先端はピンにより回動可能に枢支されたことを特徴とする。
【0009】
また、前記切離機構は、二つ設けられ、どちらか一方のみが作動すれば、他方が作動しなくても、前記第1部材と前記第2部材との保持を切り離すことが可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1部材と第2部材との間の連結を切り離す切離機構において、前記第1部材に結合されたブラケットと、前記ブラケットに一方を結合されたヒンジと、一方を前記ヒンジの他方に結合され、他端部を第2部材に保持されたアームと、通常前記ブラケットと前記アームとを前記ヒンジが閉状態で連結し、切り離し時に前記ブラケットと前記アームとの連結を切り離す切離装置と、前記第2部材に設け、前記アームを保持する保持部材とを備え、前記第1部材の前記切離装置による前記ブラケットと前記アームとの連結の切り離しによって、前記ブラケットと前記アームとを前記ヒンジを中心に開くことで、前記アームを前記第2部材の前記保持部による保持から切り離し、前記第1部材と前記第2部材との連結を切り離すので、切り離された後の分離した切離装置がどちらも第1部材に存在し、切離装置を再利用することが容易となり、低コスト化ができる。
【0011】
また、前記切離機構は、前記切離装置と前記ブラケットとの間及び前記切離装置と前記アームとの間に延長アームを設けたので、切離装置が受ける張力の負荷荷重を加減操作することができる。
【0012】
また、前記切離機構は、前記第2部材に前記アームを保持する保持部を有し、前記保持部の先端はピンにより回動可能に枢支されているので、第1部材の切り離しの時にアームが保持部から抜けやすくなる。
【0013】
また、前記切離機構は、二つ設けられ、どちらか一方のみが作動すれば、他方が作動しなくても、前記第1部材と前記第2部材との保持を切り離すことが可能なので、切離機構の双方が正常に切り離されなくても、どちらか一方のみが正常に作動しさえすれば、第1部材が第2部材から切り離される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。従来と共通の部材には背景技術で説明した符号と共通の符号を付与している。図1は本実施形態の切離機構を有する浮力体を海底に設置した図である。図1において、1は第1部材を構成する浮力体、1aはロッド取付部、2はブラケットを構成するロッド、2aはロッドの一方部、2bはロッドの他端部、3は切離装置、3aは切離装置の一方部、3bは切離装置の他方部、4はヒンジ、4aはヒンジの一方部、4bはヒンジの他方部、5はアーム、5aはアームの一方部、5bはアームの他方部、11は第2物体を構成するアンカー、12は保持部を構成するアーム保持部、13は環状部、Dは切離機構を示す。
【0015】
本実施形態では、浮力体1は内部に地震計や各種調査等の観測装置を収納している略球形の構造を有している。浮力体1は側方部外周にロッド取付部1aを備え、切離機構Dを介してアンカー11に結合されている。切離機構Dは、ロッド取付部1aの中心に対して円周上180度離れた位置に結合された二つのロッド2と、ロッド2に結合された切離装置3と、同様にロッド2に結合されたヒンジ4と、切離装置3及びヒンジ4に結合されたアーム5と、アンカー11から垂直方向に延び先端に環状部13を有するアーム保持部12とをそれぞれ備えている。ロッド取付部1aは浮力体1の外周に設けられ、ロッド2を結合している。ロッド2は一方部2aがロッド取付部1aに結合され、他方部2bは切離装置3の一方部3a及びヒンジ4の一方部4aに結合されている。切離装置3及びヒンジ4は、ロッド2とアーム5とを連結するもので、並列に並んで設置され、それぞれ一方部3a,4aをロッド2に、他方部3b,4bをアーム5に結合している。アーム5は一方部5aが切離装置3の他方部3b及びヒンジ4の他方部4bに結合され、他方部5bは水平に伸び、海底に設置されたアンカー11に結合されたアーム保持部12に保持される。アンカー11は海底に設置された平板状の錘である。アーム保持部12はアンカー11に結合され、アンカー11から垂直方向に延び先端に環状部13を有する。環状部13はアーム保持部12の先端に設けられ、アーム5を環状部13に挿通させることによって、浮力体を保持するものである。なお、アンカー11、アーム保持部12及び環状部13は一体に形成しても良いし、それぞれ別体に形成しても良い。また、環状部13の形状は円形に限らず、楕円、角形等であっても良いし、フックのように必ずしも環状でなくても良い。
【0016】
図2はアーム保持部12先端の拡大図であり、図1の側面からアーム保持部12を見た図である。アーム保持部12は一方にアーム5を保持するための環状部13を備え、他端は海底に設置するアンカー11に結合されている。アーム5の他方部5bである水平部分の上部が環状部13の内側の穴に当接することで、浮力体1はアンカー11に保持される。
【0017】
図3は切離装置3が作動する前の切離機構Dを拡大した図である。ロッド2とアーム5は、並列に並べたヒンジ4と切離装置3を介して結合されている。また、アーム5は、他方部5bの水平部分をアーム保持部12の一方に設けられた環状部13に挿通され、保持されている。
【0018】
図4は切離装置3が作動した後の切離機構Dを拡大した図である。切離装置3は海上等の遠隔からの信号やタイマ等により作動される。すると、切離装置3のロッド2に結合された一方部3aとアーム5に結合された他方部3bとが分離する。該分離は電蝕式、ガス圧式又は爆発ボルト式等により行われる。切離装置3の作動により切り離しが行われると、浮力により浮力体1は浮上しようとし、それに伴って、ヒンジ4が徐々に開き、傾斜したアーム5がアーム保持部12の環状部13から抜けることができる。
【0019】
図5は切離装置3が作動した後の全体概略図である。なお、理解を容易にするために環状部は向きを変えて記載してある。切離機構Dは浮力体1のロッド保持部材1aの円周上に中心に対して180度離れて二つ備えられており、通常、切離装置3の作動は、一つのコマンド信号等で二つ同時に行われる。図4で説明したように切り離しが行われ、アーム5がアーム保持部12の環状部13から抜けると、浮力体1は浮力により浮上していく。
【0020】
図6はアームの変形例を示すものである。図6において、6は延長アーム、6aは第1延長アーム、6bは第2延長アームである。図6に示した実施形態では、切離装置3が延長アーム6を介してロッド2及びアーム5と結合する構造である。第1延長アーム6aは一端をロッド2と結合し、ロッド2からヒンジ4と逆方向に伸び、他端で切離装置3の一方部3aと結合する。第2延長アーム6bは一端をアーム5と結合し、アーム5の一方部5aからヒンジ4と逆方向に伸び、他端で切離装置3の他方部3bと結合する。延長アーム6の長さを調節し、切離装置3とヒンジ4からの距離を調節することによって、切離装置3に作用する張力bは次の式で変化する。
b=(X×a)/Y
ここで、aはアーム5に作用する荷重、Xはヒンジ4からアーム5の荷重aが作用する点までの距離、Yはヒンジ4から切離装置3の作用張力が作用する点までの距離である。すなわち、延長アーム6の距離を調節することによって、張力の負荷荷重を加減操作することができる。
【0021】
図7はアーム保持部12の変形例である。図7において14はピンを示す。この変形例ではアーム保持部12と環状部13とを別体の部材で構成し、ピン14を介してアーム保持部12と環状部13とを傾倒自在に結合した。このような構成とすることで、切り離し装置3が作動し、浮力体1が浮力によりに浮上し、ヒンジ4が徐々に開くことで、一方のアーム5が傾斜していく際に、環状部13もアーム5に押され傾斜していくことになり、アーム5が環状部13をよりスムーズに抜けることができる。
【0022】
図8は片方の切離装置3のみ作動した後の全体概略図である。なお、理解を容易にするために環状部は向きを変えて記載してある。図5に示したように、切離機構Dは浮力体1のロッド保持部材1aの円周上に中心に対して180度離れて二つ備えられており、通常、切離装置3の作動は、一つのコマンド信号等で二つ同時に行われる。しかしながら、故障等の何らかの要因で片方の切離装置3しか作動しない場合がある。
【0023】
このような場合、アーム5の他方部5bの水平部分の長さを調整する。一方の切離装置3が作動し切り離されると、浮力体1は浮力によりに浮上し、ヒンジ4が徐々に開くことで、一方のアーム5が傾斜していき環状部13から抜ける。すると、浮力体1は浮上に伴って傾斜していき、その結果、他方のアーム5は、徐々に傾斜していき、他方の切離装置3が作動しなくても、アーム保持部12の環状部13から抜けることができる。そして、浮力体1はアンカー11から完全に切り離され、浮上することになる。なお、このような作動は、図6又は図7で示した実施形態においても適用可能である。
【0024】
図9は他の実施形態を示すものである。図9において、21は船、22はクレーン、23はクレーンアーム、24はドラム、25は第1部材を構成するワイヤ、31は第2部材を構成する潜水艦、32は環状部を示す。船21は船尾に回転可能なクレーン22を有し、クレーン22はクレーンアーム23、ドラム24及びワイヤ25を備える。クレーン22はクレーンアーム23に掛けられ、ドラム24に巻かれたワイヤ25を操作することで潜水艦31を昇降可能に支持することができる。ワイヤ25の一端はドラムに結合され、他端は切離機構Dのロッド2の一端部2aに結合され、ロッド2の他端部2bは並列に並んだ切離装置3の一方部3a及びヒンジ4の一方部4aに結合され、さらに切離装置3の他方部3b及びヒンジ4の他方部4bはアーム5に結合されている。アーム5は一方部5aがヒンジ4の他方部4bに結合し、他方部5bの水平部分が潜水艦31の環状部32を支持する。
【0025】
本実施形態では第2部材としての潜水艦31を海上に切り離すための切離機構Dを示す。船21に搭載された潜水艦31は、環状部32が設けられ、環状部32の穴に切離機構Dのアーム5を通過させることで吊り下げ可能に支持される。切離機構Dに支持され、クレーン22により吊り下げられた潜水艦26は、クレーン22を操作することで海上に浮かべられる。潜水艦31が海上に浮かんだ状態で、切離装置3は海上からの信号等により保持状態を解放する。すると、潜水艦31が落下するのに伴って、ヒンジ4が徐々に開き、傾斜したアーム5が潜水艦31の環状部27から抜けることができる。なお、本実施形態でも切離機構Dを二つ設けることは可能である。
【0026】
また、さらに他の実施形態として、気球のような浮遊物を設置部から切り離す切離機構としても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態の切離機構を有する浮力体を海底に設置した図
【図2】アーム保持部先端の拡大図
【図3】切離装置が作動する前の切離機構を拡大した図
【図4】切離装置が作動した後の切離機構を拡大した図
【図5】切離装置が作動した後の全体概略図
【図6】アームの変形例を示す図
【図7】アーム保持部の変形例を示す図
【図8】片方の切離装置のみが作動した後の全体概略図
【図9】他の実施形態を示す図
【図10】従来の切離装置の作動する前の全体図
【図11】従来の切離装置が作動する前の切離機構を拡大した図
【図12】従来の切離装置が作動した後の切離機構を拡大した図
【図13】従来の切離装置の作動した後の全体図
【符号の説明】
【0028】
1…浮力体(第1部材)、2…ロッド(ブラケット)、3…切離装置、4…ヒンジ、5…アーム、6…延長アーム、11…アンカー(第2部材)、12…アーム保持部(保持部)、13…環状部、14…ピン、21…船(第1部材)、22…クレーン、31…潜水艦(第2部材)、32…保持部、D…切離機構


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と第2部材との連結を切り離す切離機構において、前記第1部材に結合されたブラケットと、前記ブラケットに一方を結合されたヒンジと、前記ヒンジの他方に一方部が結合され、前記第2部材に他方部が保持されたアームと、前記ヒンジが閉状態で前記ブラケットと前記アームとを連結する切離装置と、前記第2部材に設け前記アームを保持する保持部とを備え、前記切離装置による前記ブラケットと前記アームとの連結の切り離しによって、前記ブラケットと前記アームとを前記ヒンジを中心に開くことで、前記アームを前記第2部材の前記保持部による保持から切り離し、前記第1部材と前記第2部材との連結を切り離すことを特徴とする切離機構。
【請求項2】
前記切離機構は、前記切離装置と前記ブラケットとの間及び前記切離装置と前記アームとの間に延長アームを設けたことを特徴とする請求項1に記載の切離機構。
【請求項3】
前記保持部の先端はピンにより回動可能に枢支されたことを特徴とする前記請求項1又は2に記載の切離機構。
【請求項4】
前記切離機構は、二つ設けられ、どちらか一方のみが作動すれば、他方が作動しなくても、前記第1部材と前記第2部材との連結を切り離すことが可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の切離機構。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−8202(P2007−8202A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−188195(P2005−188195)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(504194878)独立行政法人海洋研究開発機構 (110)