説明

刈払い用チップソー及びその製造方法

【課題】刈払い機への取付ボルトを保護して頭部の摩耗等を抑制し、チップソーの刈払い機に対する交換作業等をスムーズに行ったり、刃先部先端のチップ固着部に対するチップのロー付け面積を大きくして、切れ味の低下を抑えることが可能な刈払い用チップソー及びその製造方法を提供する。
【解決手段】台金が、その中心部分に刈払い機への取付孔が形成された平坦部と、該平坦部の外側に反刈払い機側に突出する状態で形成された段差部と、該段差部の外側に台金の刃先部先端方向に向けて平坦部と略平行に延設された刃先部とを備え、段差部の高さは、平坦部を刈払い機に取付ボルトで取り付けた際に、該取付ボルトの突出寸法より大きく設定されていることを特徴とする。また、前記チップは、台金のチップ固着部への固着面の厚さ方向の両側にそれぞれ鍔が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈払い機に装着されて雑草や雑木等を刈払いする際に使用される刈払い用チップソー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、刈払い用のチップソーとしては、例えば図10及び図11に示すものが知られている。図10に示すように、チップソー101は、円板状の台金102の中心部分の平坦部102aに刈払い機104への取付孔103が形成されると共に、この平坦部102aの外側周囲に下方に膨らんだ円環状の膨出部102bが形成されている。また、台金102の膨出部102bの外側には、刃先部102cが前記平坦部102a方向に向けて反った状態で形成されている。
【0003】
そして、図11(a)、(b)に示すように、台金102の刃先部102c先端のチップ固着部105には、チップ106、107がそれぞれロー付けされている。すなわち、図11(a)のチップ固着部105は、段差状に形成され、このチップ固着部105にチップ106の二つの固着面106c、106dがロー付けされている。また、図11(b)のチップ固着部105は窪んだ溝状に形成され、このチップ固着部105にチップ107の三つの固着面107c〜107eからなる平面視半円弧形状の固着面がロー付けされている。なお、台金の刃先部先端にチップがロー付けされたチップソーとしては、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平06−24429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなチップソー101にあっては、膨出部102bの内側の凹部内に刈払い機104への取付ボルト108を位置させることができて、取付ボルト108の頭部の外部への露出を防止してその摩耗や変形等を抑制できるという利点が得られるものの、台金102の刃先部102cにロー付けされるチップ106、107(刃先)による、雑木等の切断性能が劣るという問題点を有している。
【0006】
すなわち、前記チップソー101の場合、台金102の刃先部102cにチップ106、107をロー付けした後に、プレス(絞り)加工により膨出部102bを成形する製造方法が採用されていることから、台金102のスプリングバックにより台金102の膨出部102bの外側が図10で上方に反った状態となる。その結果、刃先であるチップ106、107の突出方向が台金102の平坦部102aに対して角度を持ち平坦部102aと略同一方向の平面とならず、刃先が雑木等に直角に入り難くなって、その切断性能が劣ることになる。
【0007】
また、台金102の刃先部102c先端のチップ固着部105にロー付けされるチップ106、107が、図11(a)に示す形態でロー付けされる場合は、切れ刃となるチップ106の掬い面106aを大きく確保できるものの、ロー付け面積(固着面積)が少なくチップ106の脱落が発生し易い。逆に、図11(b)に示す形態でロー付けされる場合は、ロー付け面積をある程度大きくできるものの、切れ刃となるチップ107の掬い面107aの面積が小さくなり易く、切れ味を向上させるためにチップ107を再研磨して、チップソー101の寿命を延ばすことが困難である等、いずれの形態のチップソー101においても、一長一短を有している。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、刈払い機への取付ボルトを保護して頭部の摩耗等を抑制し、チップソーの刈払い機に対する交換作業等をスムーズに行うことができると共に、チップを雑木等に直角に入れることができて、良好な切れ味が得られる刈払い用チップソー及びその製造方法を提供することにある。また、他の目的は、前記目的に加え、台金の刃先部先端のチップ固着部に対するチップのロー付け面積を大きくしつつ、十分な大きさの掬い面を確保できて、切れ味の低下を抑えて寿命を延ばすことが可能な刈払い用チップソー及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、円板状の台金の刃先部先端にチップ固着部が形成されると共に、該チップ固着部に掬い面と先端面及び固着面を有するチップがロー付けされた刈払い用チップソーにおいて、前記台金は、その中心部分に刈払い機への取付孔が形成された平坦部と、該平坦部の外側に反刈払い機側に突出する状態で形成された段差部と、該段差部の外側に台金の刃先部先端方向に向けて前記平坦部と略平行に延設された刃先部とを備え、前記段差部の高さは、前記平坦部を刈払い機に取付ボルトで取り付けた際に、該取付ボルトの突出寸法より大きく設定されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、前記平坦部で段差部の内側の空間に、前記取付ボルトを覆うボルト保護カバーが取り付けられていることを特徴とする。さらに、請求項3に記載の発明は、前記チップが、台金のチップ固着部への固着面の厚さ方向の両側にそれぞれ鍔が形成されていることを特徴とする。この場合、前記鍔は、請求項4に記載の発明のように、側面視略L字形状に形成されていることが好ましい。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、円板状の台金の刃先部先端にチップ固着部が形成されると共に、該チップ固着部に掬い面と先端面及び固着面を有するチップがロー付けされた刈払い用チップソーの製造方法において、台金素材をプレス加工して、その中心部分に刈払い機への取付孔が形成された平坦部と、該平坦部の外側に反刈払い機側に突出する状態で形成された段差部と、該段差部の外側に刃先部先端方向に向けて前記平坦部と略平行に延設された刃先部とを成形する工程と、該工程で得られた台金を熱処理する工程と、該熱処理後に刃先部先端のチップ固着部にチップをそれぞれロー付けする工程と、を備えることを特徴とする。この場合、前記熱処理する工程は、請求項6に記載の発明のように、加熱加圧状態で行うことにより、前記平坦部と刃先部とが略平行に設定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、台金が平坦部と段差部及び平坦部に略平行に延設された刃先部とを備え、段差部の高さが平坦部を刈払い機に取付ボルトで取り付けた際に、該取付ボルトの突出寸法より大きく設定されているため、段差部により台金の平坦部に円形の窪み部が形成され、この窪み部内に取付ボルトを位置させて保護し頭部の摩耗等を抑制することができ、チップソーの刈払い機に対する交換作業等をスムーズに行うことができると共に、平坦部と略平行な刃先部により、チップを雑木等に略直角に入れることができて、良好な切れ味を得ることができる。
【0013】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、平坦部で段差部の内側の空間に取付ボルトを覆うボルト保護カバーが取り付けられているため、保護カバーで取付ボルトの頭部等を確実に保護できて、チップソーの刈払い機に対する交換作業等を一層スムーズに行うことができる。
【0014】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加え、チップの、台金のチップ固着部への固着面の厚さ方向の両側にそれぞれ鍔が形成されているため、両側の鍔により台金のチップ固着部に対するチップのロー付け面積を大きくして、チップの脱落を抑制することができると共に、チップ自体に十分な大きさの掬い面を確保できて、例えばチップの再研磨が可能になる等、チップソーの切れ味の低下を抑えてその寿命を延ばすことができる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明の効果に加え、チップの鍔が側面視略L字形状に形成されているため、チップのチップ固着部への嵌め込みを容易かつ確実に行うことができて、ロー付け作業の能率を向上させつつ、より大きなロー付け面積を確保することができる。
【0016】
また、請求項5に記載の発明によれば、台金素材をプレス加工して、平坦部と段差部及び刃先部とを成形する工程と、該工程で得られた台金を熱処理する工程と、該熱処理後にチップをロー付けする工程とを備えるため、段差部により台金の刈払い機への取付孔の周囲に円形の窪み部が形成され、この窪み部で取付ボルトを保護して頭部の摩耗等を抑制することができ、チップソーの刈払い機に対する交換作業等をスムーズに行うことができると共に、刃先部の反りを防止できて、良好な切れ味のチップソーを容易に製造することができる。
【0017】
また、請求項6に記載の発明によれば、請求項5に記載の発明の効果に加え、熱処理する工程を加熱加圧状態で行うことにより、平坦部と刃先部とが略平行に設定されるため、台金の平坦部と刃先部の平面度を確実に確保できて、一層良好な切れ味のチップソーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】 本発明に係わるチップソーを示す平面図
【図2】 同そのA−A線矢視図
【図3】 同図1のB部拡大図
【図4】 同図3のC−C線矢視図
【図5】 同チップの正面図、平面図、側面図
【図6】 同チップソーの製造方法の一例を示す工程図
【図7】 同刈払い機への取付状態を示す図
【図8】 同取付状態の変形例を示す図
【図9】 同チップの変形例を示す図
【図10】 従来のチップソーの刈払い機への取付状態を示す図
【図11】 従来のチップの固着状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図7は、本発明に係わる刈払い用チップソーの一実施形態を示している。図1及び図2に示すように、刈払い用チップソー1(チップソー1という)は、円板状で多数の軽量孔3が形成された台金2を有し、この台金2の中心位置には、後述する刈払い機5への取付孔4が形成されている。
【0020】
また、台金2は、取付孔4の外側に所定幅の平坦部2aが形成され、この平坦部2aの外側に反刈払い機5側となる図2の下方斜め方向に向けて高さ寸法h突出した段差部2bが形成されると共に、この段差部2bの外側に平坦な刃先部2cが形成されている。そして、台金2には、前記段差部2bによりその内側に裏面視円形の空間状の窪み部6が形成されると共に、平坦部2aと刃先部2cが平行に形成されることにより、刃先としてのチップ7の指向方向(外側への突出方向)と平坦部2aが平行(同一方向の平面)となるように設定されている。
【0021】
また、台金2の刃先部2c先端には、刃室(ガレット)8とチップ固着部9(図3参照)が一定間隔で多数形成され、各チップ固着部9には、超硬合金からなる前記チップ7がロー付けされている。このとき、チップ7は、図3〜図5に示すように、掬い面7aと先端面7b及び4つの固着面7c〜7fを有する如く形成されると共に、3つの固着面7c〜7eの厚さ方向の両側に鍔7gが側面視で略L字形状にそれぞれ形成されている。また、このチップ7の各固着面7c〜7fの形状に対応して、前記チップ固着部9は窪み形状に形成されている。
【0022】
そして、前記チップ7は、台金2のチップ固着部9に、次のようにしてロー付けされている。すなわち、チップ7を台金2のチップ固着部9に、図の矢印イ方向から差し込むことにより、図4に示すようにチップ7の一対の鍔7g間に台金2が挟まれた状態となり、この状態で、4つの固着面7c〜7fと一対の鍔7gの内面がロー付けされる。これにより、チップ7のチップ固着部9に対するロー付け面積が大幅に拡大することになる。なお、図4に示すように、台金2のチップ固着部9に固着されたチップ7は、鍔7gの部分が台金2の両側面から所定寸法突出して、この寸法があさり幅w1、w2となっている。
【0023】
次に、前記チップソー1の製造方法の一例を、図6の工程図に基づいて説明する。チップソー1は、先ず、台金素材(炭素鋼板等の生材)をプレスの絞り加工により加工(K01)して、前記平坦部2aと段差部2b及び刃室8やチップ固着部9を有する刃先部2cを成形する。この絞り加工時に、前記窪み部6の図2に示す各寸法は、刃先部2c側のアールがR1=4〜10mm(好ましくは5mm)、平坦部2a側のアールがR2=5〜15mm(好ましくは6mm)、平坦部2aの直径がφ1=85mm、窪み部6の直径がφ2=125mm、前記寸法hが19mmのときにw=19mm以上に設定されている。なお、台金2の直径(外径)dは、例えばd=255mmもしくはd=230mmに設定されている。これらの寸法設定により、炭素鋼板名等からなる台金素材を絞り加工しても、窪み部6部分の割れ等が防止され、刃先部2cの振れやあおりが抑制されるようになっている。
【0024】
そして、台金素材を加工して台金2を作製したら、この台金2を例えば高周波の誘導加熱を利用して焼入れすると共に焼き鈍しする熱処理(K02)を行う。この熱処理時に、台金2を加熱加圧状態で行うことにより、平坦部2aと刃先部2cの反り等が防止されて、互いに平行な平坦部2aと刃先部2cが成形される。台金2の熱処理が終了したら、例えばショットブラスト処理による表面処理(K03)を行い、この表面処理の後に、台金の各チップ固着部9にチップ7を、例えば高周波の誘導加熱を利用してロー付け(K04)する。
【0025】
そして、チップ7の掬い面7a、先端面7b及び両側面等の研磨(K05)を行い、仕上げ処理(K06)することにより、チップソー1が製造される。つまり、前記チップソー1の場合、チップ7がロー付けされる前の台金2を、加熱加圧状態で熱処理することにより、平坦部2aや刃先部2cがスプリングバックで反ることを防止できて、平坦部2aと刃先部2cに平行状態を得ることが可能となる。
【0026】
このように構成されたチップソー1は、図7に示すように、刈払い機5の回転伝達シャフト5a先端の鋸受けフランジ5bに、鋸割止カバー5c、鋸押えフランジ5d及び取付ボルト10を介して取り付けられる。この取付時に、チップソー1の平坦部2aの反刃先部2c側の面を鋸受けフランジ5bの面に当接させることにより、チップソー1の窪み部6内に取付ボルト10が位置した状態となり、その際、段差部2bの高さ寸法hにより、取付ボルト10の頭部が窪み部6内に位置して外側(図7において下方)に突出しないようになっている。
【0027】
なお、チップソー1の平坦部2aの幅(有効平坦部幅で前記寸法φ1)は、刈払い機5の鋸受けフランジ5bの外径より所定寸法大きく設定されており、平坦部2aが鋸受けフランジ5bのフランジ面の全域に密着した状態となっている。この取付状態で、刈払い機5を作動させることによりチップソー1が回転すると、その刃先部2c先端のチップ7が例えば雑木に略直角に入る状態となって、雑木がスムーズに切断されることになる。
【0028】
ところで、図7の刈払い機5への取付状態において、例えば図8に示すように、ボルト保護カバー11を窪み部6内に取り付けるようにしても良い。この場合は、例えば略皿状に形成されたボルト保護カバー11の外周縁部を鋸押えフランジ5d等で押さえるようにして取り付ければ良い。また、ボルト保護カバー11の底面には、必要に応じて該保護カバー自体の回転をスムーズにするためのリング状の凹み部11aが形成される。
【0029】
このように、前記チップソー1によれば、台金2が平坦部2aと段差部2b及び平坦部2aに平行に延設された刃先部2cとを備え、段差部2bの高さ寸法hが平坦部2aを刈払い機5に取付ボルト10で取り付けた際に、該取付ボルト10の突出寸法より大きく設定されているため、段差部2bにより台金2の平坦部2aに円形の窪み部6が形成され、この窪み部6で取付ボルト10を保護して頭部の摩耗や変形等を抑制することができ、チップソー1の刈払い機5に対する取り付けや取り外し時に、取付ボルト10を良好に回転操作でき、チップソー1の交換作業をスムーズに行うことができる。
【0030】
また、切断性能に影響する刃先部2cが平坦部2aと平行に設定されているため、従来のように刃先としてのチップ7と平坦部2a(刈払い機5への取付面)とが角度をもって、チップ7が雑木等に斜めに入ることを防止でき、チップ7を雑木等に略直角に入れることができて、チップソー1に良好な切れ味を容易に得ることができる。また、平坦部2aで段差部2bの内側の窪み部6に取付ボルト10を覆うボルト保護カバー11を取り付けるようにすれば、このボルト保護カバー11で取付ボルト10の頭部等を一層確実に保護することができて、チップソー1の刈払い機5に対する交換作業等を一層スムーズ行うことができる。
【0031】
さらに、チップ7の厚さ方向の両側にそれぞれ鍔7gが形成されているため、両側の鍔7gによりチップ固着部9に対するチップ7のロー付け面積を大きくすることができ、チップ7の固着強度を大幅に高めてその脱落を抑制することができると共に、例えばチップ7自体に十分な大きさの掬い面7a等を確保できて、チップ7の再研磨が可能になる等、チップソー1の切れ味の低下を抑えてその寿命を延ばすことが可能になる。
【0032】
また、チップ7の鍔7gが側面視略L字形状に形成されているため、チップ7のチップ固着部9への嵌め込みを容易に行うことができると共に、一対の鍔7g間の間隔寸法を台金2と略同一に設定することで、チップ7と台金2の位置関係が一義的に決定され、前記あさり寸法w1、w2を簡単かつ確実に設定することができる等、ロー付け作業や研磨作業等の能率を向上させることができて、チップソー1のコストダウンを図ることが可能になる。
【0033】
なお、前記各寸法に設定したチップソー1による刈払い性能の試験を行ったところ、台金2に段差部2bによる窪み部6が形成されて、刃先であるチップ7とチップソー1の刈払い機5への取付面である平坦部2aとが前述した所定の高さ寸法hを有して離れていることから、刈払い作業時に、刈払い機5の回転軸部分への雑草等の絡む付きがほとんどなかったり、窪み部6で小石等を跳ねとばすことができ、また、窪み部6で台金2の剛性が高まることから、回転時の刃先部2cの振れやあおりが抑制されて、チップソー1に良好な刈払い性能が得られることが確認されている。
【0034】
これに対し、例えば従来の図10に示すようなチップソー101においては、刈払い機104の取付面である平坦部102aと刃先が同一面であることから、例えば刈払いした雑草等の刈払い機104への回転軸部分への巻き付けを防止するために、回転軸部分の刈払い機104側に円盤状の巻付き防止板(図示せず)を取り付けたとしても、チップソー101の刃先と刈払い機104の回転軸部分との間に十分な寸法を確保することが困難で、チップソー101に良好な刈払い性能を得ることは難しい。
【0035】
また、チップソー1が、台金素材をプレス加工して、平坦部2aと段差部2b及び刃先部2cを成形する工程と、該工程で得られた台金2を熱処理する工程と、該熱処理後にチップ7をロー付けする工程等により製造されるため、取付ボルト10を保護して頭部の摩耗等を抑制し、刈払い機5に対する交換作業等をスムーズに行うことができたり、刃先部2cの反りを防止して良好な切れ味が得られるチップソー1を容易かつ安価に製造することができる。
【0036】
特に、台金素材の絞り加工時に、窪み部6のアール寸法R1、R2を前述した寸法に設定することにより、台金素材として炭素鋼板を使用しても、窪み部6の加工時の割れ等を防止することができ、台金2のコストアップを極力抑えることができる。また、熱処理する工程を加熱加圧状態で行うことにより、平坦部2aと刃先部2cとが平行に設定されるため、平坦部2aと刃先部2cの平行度を容易かつ確実に確保できて、一層良好な切れ味のチップソー1を安価に得ることができる。
【0037】
なお、前記実施形態においては、チップ7が4つの固着面7c〜7fを有するように形成したが、本発明はこれに限定されず、例えば図9(a)(b)に示すように構成することもできる。すなわち、(a)に示すチップ7は、3つの固着面7c〜7eを有して鍔7gが固着面7c、7dの両側に側面視L字形状に形成されている。また、(b)に示すチップ7は、2つの固着面7c、7dを有して鍔7gが固着面7c、7dの両側に側面視L字形状に形成されている。このように、本発明のチップソー1に使用されるチップ7は、2つ以上の固着面を有してその両側に鍔7gをそれぞれ有する形態であれば良い。
【0038】
また、前記実施形態においては、平坦部2aと刃先部2cが完全に平行である場合について説明したが、本発明の平坦部2aと刃先部2cは刃先が雑木等に略直角に入ることが可能な概ね平行であれば良い。また、前記実施形態における、チップ固着部9の個数や形状、台金2の平坦部2aの幅や段差部2bの高さ寸法h等も一例であって、本発明の各発明に係わる要旨を逸脱しない範囲において適宜の構成を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、円板状の台金の刃先部先端にチップが固着されて雑草等の刈払いに使用される全ての刈払い用チップソーに利用できる。
【符号の説明】
【0040】
1・・・刈払い用チップソー、2・・・台金、2a・・・平坦部、2b・・・段差部、2c・・・刃先部、4・・・取付孔、5・・・刈払い機、6・・・窪み部、7・・・チップ、7a・・・掬い面、7b・・・先端面、7c〜7f・・・固着面、7g・・・鍔、8・・・刃室、9・・・チップ固着部、10・・・取付ボルト、11・・・ボルト保護カバー、h・・・段差部の高さ寸法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状の台金の刃先部先端にチップ固着部が形成されると共に、該チップ固着部に掬い面と先端面及び固着面を有するチップがロー付けされた刈払い用チップソーにおいて、
前記台金は、その中心部分に刈払い機への取付孔が形成された平坦部と、該平坦部の外側に反刈払い機側に突出する状態で形成された段差部と、該段差部の外側に台金の刃先部先端方向に向けて前記平坦部と略平行に延設された刃先部とを備え、前記段差部の高さは、前記平坦部を刈払い機に取付ボルトで取り付けた際に、該取付ボルトの突出寸法より大きく設定されていることを特徴とする刈払い用チップソー。
【請求項2】
前記平坦部で段差部の内側の空間に、前記取付ボルトを覆うボルト保護カバーが取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の刈払い用チップソー。
【請求項3】
前記チップは、台金のチップ固着部への固着面の厚さ方向の両側にそれぞれ鍔が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の刈払い用チップソー。
【請求項4】
前記鍔は、側面視略L字形状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の刈払い用チップソー。
【請求項5】
円板状の台金の刃先部先端にチップ固着部が形成されると共に、該チップ固着部に掬い面と先端面及び固着面を有するチップがロー付けされた刈払い用チップソーの製造方法において、
台金素材をプレス加工して、その中心部分に刈払い機への取付孔が形成された平坦部と、該平坦部の外側に反刈払い機側に突出する状態で形成された段差部と、該段差部の外側に刃先部先端方向に向けて前記平坦部と略平行に延設された刃先部とを成形する工程と、該工程で得られた台金を熱処理する工程と、該熱処理後に刃先部先端のチップ固着部にチップをそれぞれロー付けする工程と、を備えることを特徴とする刈払い用チップソーの製造方法。
【請求項6】
前記熱処理する工程は、加熱加圧状態で行うことにより、前記平坦部と刃先部とが略平行に設定されることを特徴とする請求項5に記載の刈払い用チップソーの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate