説明

刈払機用防護具

【課題】軽量で、作業の妨げとなるような肉厚にならず、柔軟性に富み装着性に優れ、かつ、仮に事故が生じた場合、刈払機の刈刃の回転を直ちに止めるので、刃が深く切り込むことが防がれ、作業者が刃物によって切創されることのない、胴着、前掛けや腕カバーあるいは足カバーなどの刈払機の防護具の提供。
【解決手段】防護具Aの中材として、一枚の縦長の防護材である編織物をタック状に折り曲げ、防護具Aの長さになるようにタックを重ねて構成した防護材層2の少なくとも1層を収納したことを特徴とする刈払機用防護具である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量で柔軟で耐切創性にすぐれた防護具に関するものであり、詳しくは、刈払機の回転する刈刃から作業者の身体を守り、かつ軽量で柔軟であって作業性にもすぐれた、腕カバー、足カバー(例えば、臑カバー)、胴着などの防護具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
農業や林業従事者のように、草刈りや木立伐採用の刈払機やチェーンソー等の鋭利な回転する刃物を使用する職業に従事する人は、その作業中に誤って人体を損傷することのないように、人体に直接、あるいは、作業衣の上に足カバーや腕カバーなどの防護具を身に付けて身体を保護することがおこなわれている。
従来、このような防護具としては、ステンレス、ジュラルミン、チタンなどの金属製防護板を用いたもの(特許文献1)、や高強度、高弾性を有する合成繊維の緻密な織編物からなる布帛を何層にも形成したもの、さらには、その層に鉄又はステンレス製の金網を混在させて耐切創性をより向上させたもの(特許文献2)などが知られており、これらは、硬い丈夫な材質のもので刃物と作業者との接触を防ぎ、作業者を防護しようとするものである。
しかし、これら従来のものでは、極めて重量の大きな、かつまた極めて厚手のものとならざるを得ないため、仮に、耐切創性という目的はある程度達成しえたとしても、防護具の柔軟性に欠け、また、防護具自体の重量が増え、作業において俊敏な行動を阻害され、かえって刃物の操作を誤らせる結果となるばかりでなく、材料費や縫製のための工賃も高価になるというコストの点でのデメリットも避けられず、実際上は非常に用いられにくく効果的ではないものであった。
【0003】
しかも、刈払機の刈刃は草が良く切れるよう、研ぎすまされているので切断力が強く、誤作動や突発的な事故等の場合に、この刈刃の回転を停止させる操作が遅れると、厚手の防護具でも防護しきれないことが生じるうえ、回転したままの刈刃が移動し二次的な災害を招く恐れがあるので、このような誤作動や突発的な事故等の場合に、刈刃が防護具に接触した際に、刈刃の回転が直ちに停止されることが望まれていた。
ここで、チェーンソーの防護具においては、中材として複数の層からなる高強度・高弾性繊維からなる編織物の補強層を配置し、チェーンソーなどの刃が当たった場合、その編織物の解繊されたマルチフィラメントがチェーンソーのモーター部分に絡まり、チェーンソーの回転を停止させるとする防護具が知られている(特許文献3)が、これは編織物の多数の層を必要とするうえ、チェーンソーには効果があっても、刈払機の刈刃に対しても効果があるとは言えず、事実、特許文献3の実施例の防護具のような20cm×20cmの編織物では、それを多数枚積層しても、後記する本願の比較例に示すように刈払機の刈刃の回転を直ちに止めることはできないものであり、軽量で柔軟な耐切創性にすぐれた刈払機の防護具は未だ提案されていないのが現状である。
【0004】
【特許文献1】特開2005−264360号公報
【特許文献2】特開2006−63506号公報
【特許文献3】特開平6−128421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上記従来の欠点を解消し、軽量で、作業の妨げとなるような肉厚にならず、柔軟性に富み装着性に優れ、かつ、仮に事故が生じた場合、刈払機の刈刃の回転を直ちに止めるので、刃が深く切り込むことが防がれ、作業者が刃物によって切創されることのない、胴着、前掛けや腕カバーあるいは足カバーなどの刈払機の防護具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために本発明の刈払機の防護具は、防護具の中材として、1枚の縦長の防護材である編織物をタック状に折り曲げ、防護具の長さになるようにタックを重ねて構成した防護材層の少なくとも1層を収納したことを特徴とする刈払機用防護具、即ち防護具の中材として、1枚の縦長の編織物をタック状に折り重ねて防護具の長さに調節して収納した防護材層(ストッパー層)を少なくとも1層設けることを特徴とするものである。
具体的には、例えば、不織布などからなる緩衝材層と、その上に1枚の縦長の編織物をタック状に折り重ねて防護具の長さに調節して収納した防護材層を少なくとも1層設け、それらの表面(外周)を編織物で被覆したことを特徴とする防護具に係るものである。
【0007】
本発明は、防護具の中材として編織物を、従来のように、防護具のサイズに合わせてカットして複数枚積層するものではなく、また、編織物を切らずに防護具のサイズで折り返して幾層かに折り重ねた積層型とするものでもない。本発明は、特に、防護具の中材として縦長の編織物を、タック状に折り重ねて防護具の長さに調節して収納し、防護材層(ストッパー層)とするもの、即ち、縦長の1枚の生地を1層の形で収納して防護材層とするものであり、仮に事故が生じた場合、この防護材層に刈払機の回転する刈刃が触れると、直ちに防護材である編織物の長い縦糸が多数引き出されて回転する刈刃と回転軸に絡みつき、その強い抵抗力で刈刃の回転を瞬時に止めることができるものとしたことを特徴とするものである。
【0008】
ここで、刈払機の危険性と防護具について述べる。刈払機としては、小型エンジンを取り付けたフレキシブルシャフトとそれに続く1.5〜2.0mほどの桿体の先端に刈刃部を備えた背負式刈払機や、エンジンと刈刃部が桿で直結されている桿式刈払機がある。刈払機の刈刃は、一般に作業目的や作業場の条件(山林の下刈り、笹刈り、田んぼの草刈り、ゴルフ場の芝草刈り等)に応じて、金属刃の4枚刃、8枚刃、丸のこ刃、刃先に超硬合金からなるチップを有するチップソー、や高強度のナイロン剛毛を有するナイロンカッターが用いられている。使用時は通常、桿体の後方を利腕で持ち、もう一方の手で先端を下げた状態で斜め下方とした桿体を持って、前方斜め下方の刈刃を地面に沿わせて左右に移動させながら、足元前方の草等を刈払いつつ前進する。このような刈払時の刈刃の左右移動のときに、誤って足部(特に臑部)に刃物が当たるという事故が一番起こりやすい事故である。この場合、刈刃は足の真横(90度)方向の上下約10度の範囲内、即ち約80度〜100度の角度で接触することが多い。
【0009】
すでに述べたように、このような事故に対して、従来の防護具は、金属などの堅い丈夫な材質のもの、又は編織物を多重に積層した厚手のもの等で刃物と作業者との接触を防ぎ、作業者を防護しようとしていたが、それら防護具は、重く厚手となるので作業性が悪く、また、刈刃の種類によって必要とされる耐切創性の程度は異なるので、全ての種類の刈刃に対して充分な耐切創性を有するものは少なく、実用的なものではなかった。
そこで、本発明者は、事故のときに刈刃の回転を直ちに止めることで刃が深く切り込むことを防いで作業者を防護することにウエイトをおいて多くの研究、実験を繰り返し、本発明を完成したものである。
【0010】
さて、多くの実験の結果、刈払機の刈刃の回転を直ちに止めるには、絡まる糸の長さが少なくとも80cm〜100cmほどが必要なことが分かった。
しかし刈払機の防護具として最も利用される臑部の防護具(臑カバー)は、縦の長さが臑の長さに応じて、25cm〜40cmぐらいとするものが多いため、そのサイズにあわせて、防護具の中材の防護材として編織物を、例えば30cm程度にカットしたもの用いると、それらを複数枚積層しても接触した刈払機の刈刃の回転を直ちに止めることはできなかった(比較例1、2参照)。また、縦80cm〜135cm程度の縦長の編織物を切らずに防護具のサイズで折り返し、三つ折り〜五つ折りに折り重ねた積層型としても、いずれも刈払機の刈刃の回転を直ちに止めることはできなかった(比較例3参照)。これらは、いずれも、刃が触れる中材の防護材層の層長が、30cm程度であったためであろうと考え、本発明者は、縦長(約105cm)の編織物をタック状に折り重ねて防護具の長さに調節して収納し、1層が縦長の1枚の生地で構成されるように工夫したところ、驚くべきことに、接触した刈払機の刈刃の回転はすぐに止まり、そのため刃が深く切り込むことがなく作業者を防護できたのである(実施例1〜3参照)。
【発明の効果】
【0011】
本発明の主な効果としては、(1)防護具に接触した刈払機の刈刃の回転が直ちに止まるので、刃が深く切り込むことがなく作業者を防護できる、(2)そのため、従来のものより防護材や緩衝材などの中材の量を少なくできるので、防護具を軽量にでき、経済的にも有利である、(3)防護材である編織物をタック状に折り重ねているので、伸縮性、柔軟性、弾力性が増し、かつ装着性や耐久性に富むようになる、(4)したがって、耐切創性にすぐれ、かつ軽量で柔軟で作業性にもすぐれた防護具を安価で提供することができ、産業上有益である等が挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、例えば、不織布などからなる緩衝材層と、その上に1枚の縦長の編織物をタック状に折り重ねて防護具の長さに調節して収納した防護材層(ストッパー層)を少なくとも1層設け、それらの表面(外周)を編織物で被覆したことを特徴とする刈払機用防護具に係るものである。
この刈払機用防護具として代表的な臑カバーの構造を図を参照にして説明すると、図1の臑カバー(A)の縦線a−a′での断面の概略図である図2において、緩衝材層(1)の上に1枚の縦長の編織物をタック状に折り重ねて防護具の長さに調節して収納した防護材層(2)が少なくとも1層設けられ、それら1、2から成る中材の表面(外周)を編織物からなる被覆材で被覆されており、該被覆材は、それぞれ材質が異なることもある、身体側の裏地(3)と外気側の表地(4)で構成されている。
そして、編織物をタック状に折り重ねるに際しては、図2に示されるように、タック幅(t)がタックとタックの間隔(t′)とほぼ等しくなる、即ち、tがt′に等しいか、少し大きくなるように折り重ねることが好ましい。このようにすると、防護材層のどの部分も3層の編織物地を有することになり、防護材層が均質になるので、刈刃との接触位置による効果のバラツキが無くなるうえ、伸縮性、柔軟性、弾力性、耐久性等からみても好ましい。
【0013】
緩衝材層を構成する緩衝材は、従来の防護具で緩衝材として用いられている公知の材料、即ち耐切創性とクッション性を有する公知の材料、例えば、アラミドフエルト、高強力ポリアリレートフエルト、超高強力ポリエチレンフエルト、ポリエステルフエルトなどの不織布や、ナイロン織・編地、ポリエステル織・編地等が用いられる。そして、緩衝材層は該緩衝材の1層、または複数積層した積層体により構成される。
【0014】
防護材層を構成するタック状に折り重ねる編織物材料は、従来の防護具で耐切創性を有する防護材として用いられている公知の編織物材料が使用でき、例えば、ポリエステル・アラミド繊維交織・編地、ナイロン・アラミド繊維交織・編地、アラミドメッシュ織物交織・編地、ナイロンまたはポリエステル・ポリエチレン繊維交織・編地、PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維織物・編物、ナイロンまたはポリエステル・ポリアリレート繊維交織・編地、ナイロン織・編地、ポリエステル織・編地、ビニロン織・編地、ポリプロピレン織・編地やこれらを2種類以上組み合わせたもの、基布にアラミド繊維やプリエステル繊維の縦糸を配したもの等が挙げられる。
【0015】
とりわけ、本発明は、防護材である編織物の長い縦糸が絡みつき、刈刃の回転を止めることを特徴とするものであるので、縦糸は、刈刃にたやすく切断されず、かつ回転軸に絡み付いても破断しない、高強度・高弾性繊維が好ましく、例えば、超高分子量ポリエチレンを素材とした高強度ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレンテレフタルアミドなどの芳香族ポリアミドを素材とした、アラミド系繊維、ポリパラオキシベンゾエート、ポリパラオキシベンゾエート−ポリエチレンテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステルを素材としたポリアクリレート系繊維、ポリオキシメチレンを素材としたポリオキシメチレン繊維、その他、ポリビニルアルコール繊維、ポリパラフェニレンベンズビスチアゾール繊維などを主材とする繊維が挙げられる。なかでも、ケブラー(登録商標 デュポン社、東レ社)の商品名で市販されている、いわゆるアラミド繊維を、防護材である編織物の縦糸の主材とするものが好ましく、特に、高強度・高弾性と経済性との兼ね合いからみて、アラミド繊維とポリエステル繊維の混紡繊維や引き揃え繊維を縦糸として用いることが好ましい。
【0016】
そして、防護材層を構成する編織物は、刈刃と接触したときに容易に縦糸が引き出されるように、ゆるめの織・編地であることが好ましく、例えば、その縦糸の長さが80cm〜110cm程度である縦長の編織物が用いられ、編織物の横幅は、例えば臑カバーであれば、覆う足の太さに対応する幅となるように選定される。
本発明の防護具の中材は、緩衝材層の上に、このような縦長の編織物をタック状に折り重ねて防護具の長さに調節して収納した防護材層を少なくとも1層、好ましくは2層設けるものである。防護材層は3層以上あってもかまわないが、本発明の防護具は、防護材層が2層あれば刈刃の回転を直ちに確実に止めることができるので、通常、3層以上はストッパーとしては必要がなく、あまり多層になると防護具の重量が増えるので好ましくない。なお、タック状に折り重ねた防護材層は、それ自体耐切創性を有するうえ、弾力性に富むので、防護材層が2層以上のときは、緩衝材層を省略することも可能である。防護材層の編織物のタックはその左右端を縫い付けても良いが、それ以外の部分では、タックは単に折り重ねられた状態であり、防護材層は柔軟性、弾力性に富んでいて、縦繊維が容易に引き出されるようになっている。
【0017】
事故が生じた場合は、例えば、臑カバーでは、膝下から足首にむけて順次タック状に折り重ねた縦長の編織物からなる防護材層に対し横(ほぼ真横)から回転した刈刃が接触することになる。このとき刈刃は、被覆材の表地を切り裂き、防護材層の編織物の並んでいる多数の縦糸を横から絡めることになるので、編織物の長い縦糸が直ちに多数引き出されて回転する刈刃と回転軸に絡みつき、強い抵抗力で刈刃の回転を瞬時(1秒以下、特に0.5秒以下、例えば0.2〜0.3秒)に止めることができるのである。
【0018】
被覆材は、従来の防護具において被覆材や表面材として用いられている公知の編織物材料が使用でき、例えば、ナイロンオックス織物、ポリエステル織物、防水加工されたナイロンオックス織物等が挙げられる。特に、これらのうち防水加工された編織物は、汚れや水分に触れることが多い被覆材の表地に用いるのが好ましく、また、被覆材を構成する編織物の繊維には、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、染料、核剤、充填剤、スリップ剤、滑剤、難燃剤、可塑剤などの添加剤を配合することができる。
【0019】
以下に本発明の詳細を実施例で説明する。本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
下層に、緩衝材としてポリエステルフエルト(以下、PEフエルトと略記する。)1層からなる緩衝材層を設け、その上に、布全体の重量に対し、アラミド繊維(商品名ケブラー)17重量%とポリエステル繊維53重量%からなる引き揃え縦糸をポリエステル繊維から成る基布に配した、目付け276gの布(以下、ケブラー/ポリエステル(#7000)と略記する。)の横24cm、縦全長105cmの生地をタック状に折り重ねて(タック幅5cm、タックとタックの間隔5cm弱)防護具の長さ34cmに調節して収納した防護材層1層(防護材層下層)、さらにその上に、布全体の重量に対し、アラミド繊維(商品名ケブラー)47重量%とポリエステル繊維31重量%からなる引き揃え縦糸をポリエステル繊維から成る基布に配した、目付け365gの布(以下、ケブラー/ポリエステル(#8000)と略記する。)の横24cm、縦全長105cmの生地をタック状に折り重ねて(タック幅5cm、タックとタックの間隔5cm弱)防護具の長さ34cmに調節して収納した防護材層1層(防護材層上層)とを設け、タックの左右両端と緩衝材の左右両端を縫合し、それらの表面(外周)を被覆材(表地はナイロンオックス防水加工、裏地はナイロンオックス)で被覆し、刈払機用防護具実施例試料(試料No.TIP−05)を作成した。
【実施例2】
【0021】
防護材層を、ケブラー/ポリエステル(#7000)の横24cm、縦全長105cmの生地をタック状に折り重ねて(タック幅5cm、タックとタックの間隔5cm弱)防護具の長さ34cmに調節して収納したもの2層とする以外は実施例1と同じ構成の刈払機用防護具実施例試料(試料No.TIP−06)を作成した。
【実施例3】
【0022】
防護材層を、ケブラー/ポリエステル(#8000)の横24cm、縦全長105cmの生地をタック状に折り重ねて(タック幅5cm、タックとタックの間隔5cm弱)防護具の長さ34cmに調節して収納した1層とする以外は実施例1と同じ構成の刈払機用防護具実施例試料(試料No.TIP−07)を作成した。
【0023】
[切削試験]
実施例1〜3で作成した各刈払機用防護具実施例試料を棒に固着し、刈払機を、試験条件<エンジン排気量:25cc以下、刈刃回転数:約5000ppm;刈刃種類:チップソー/255mm×40枚歯刃>で、試料の真横から刈刃を接触させ、各試料の切削防護状況を観察した。
判定は、1)裏地が無キズの場合・・・・・・・・・・◎
2)裏地表面に少しキズがみられる場合・・・○
3)裏地を刃物が貫通していた場合・・・・・×
とした。
結果を表1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
[比較例1]
(縦糸が短いサイズの防護材生地の積層からなる防護材層を用いた場合)
防護材層を、防護材として、ケブラー/ポリエステル(#8000)の、横30cm×縦27cmサイズの生地を用い、3枚積層し、積層体の左右両端と緩衝材の左右両端を縫合する以外は実施例1と同じ構成の刈払機用防護具比較例試料(試料No.TIP−01)、同じく4枚積層したものとする以外は実施例1と同じ構成の刈払機用防護具比較例試料(試料No.TIP−02)、及び、同じく5枚積層したものとする以外は実施例1と同じ構成の刈払機用防護具比較例試料(試料No.TIP−03)をそれぞれ作成した。
【0026】
[切削試験]
各刈払機用防護具比較例試料の切削試験を、上記実施例試料の切削試験と同じ条件で行い、その結果を表2に示す。
【0027】
【表2】

【0028】
[比較例2]
(縦糸が短いサイズの防護材生地の積層からなる防護材層を用い、かつ、緩衝材層を多くした場合)
a)下層に、PEフエルト1層からなる緩衝材層と、その上に設けた防護材層を構成する防護材生地の複数の積層の中間(即ち、防護材層が4層であれば、2層と2層の間)に、アラミド繊維(商品名ケブラー)のフエルト(以下、KVフエルトと略記する。)1層からなる緩衝材層を設け、該防護材層を防護材として、ケブラー/ポリエステル(#8000)の、横30cm×縦27cmサイズの生地を用い、4枚積層したものとし、積層体の左右両端と緩衝材の左右両端を縫合し、かつ、被覆材は実施例1と同じ構成の刈払機用防護具比較例試料(試料No.TIP−18−1、TIP−18−2、TIP−18−3)、同じく5枚積層したものとする以外は上記と同じ構成の刈払機用防護具比較例試料(試料No.TIP−20−1、TIP−20−2、TIP−20−3)をそれぞれ作成した。
b)下層に、KVフエルト層とPEフエルト層の2層からなる緩衝材層と、その上に設けた防護材層を構成する防護材生地の複数の積層の中間に、KVフエルト1層からなる緩衝材層を設け、該防護材層を防護材として、ケブラー/ポリエステル(#8000)の、横30cm×縦27cmサイズの生地を用い、4枚積層したものとし、積層体の左右両端と緩衝材の左右両端を縫合し、かつ、被覆材は実施例1と同じ構成の刈払機用防護具比較例試料(試料No.TIP−19−1、TIP−19−2、TIP−19−3)をそれぞれ作成した。
【0029】
[切削試験]
1)試料No.TIP−18−3、TIP−19−3、TIP−20−3の以外の各刈払機用防護具比較例試料の切削試験を、上記実施例試料の切削試験と同じ条件で行った。
2)試料No.TIP−18−3、TIP−19−3、TIP−20−3については、刈刃種類を笹刈刃/255mm×30枚刃とした以外は上記実施例試料の切削試験と同じ条件で行った。
1)、2)の結果を表3に示す。
【0030】
【表3】

【0031】
[比較例3]
(縦長の防護材生地を切らずに防護具のサイズで折り返し重ねて積層型とした場合)
a′)防護材層を、ケブラー/ポリエステル(#7000)の縦長の生地を防護具のサイズ(縦27cm)で折り返し重ねて積層型とし、該防護材の左右両端と緩衝材の左右両端を縫合する以外は実施例1と同じ構成とし、防護材生地(縦81cm)を三つ折りに折り重ねた刈払機用防護具比較例試料(試料No.TIP−15)、防護材生地(縦135cm)を五つ折りに折り重ねた刈払機用防護具比較例試料(試料No.TIP−16)をそれぞれ作成した。
b′)下層に、PEフエルト1層からなる緩衝材層と、その上に設ける防護材層の防護材として、ケブラー/ポリエステル(#8000)の縦108cm生地を用いて、防護具のサイズ(縦27cm)で四つ折りに折り返し重ねて積層型とし、該折り重ねた防護材生地の中間に、アラミド繊維(商品名ケブラー)の混紡フエルト(以下、KV混フエルトと略記する。)1層からなる緩衝材層を設け、該防護材の左右両端と緩衝材の左右両端を縫合した以外は実施例1と同じ構成の刈払機用防護具比較例試料(試料No.TIP−17)を作成した。
【0032】
[切削試験]
各刈払機用防護具比較例試料の切削試験を、上記実施例試料の切削試験と同じ条件で行い、その結果を表4に示す。
【0033】
【表4】

【0034】
[考察]
表1の結果から明らかなように、防護材(編織物)をタック状に折り重ねて防護具の長さに調節して収納し、1層が縦長の1枚の生地で構成されるようにした防護材層を有する本発明の防護具は、緩衝材層1層で、防護材層1層でも刈刃の回転を止め、刃が深く切り込むことが防がれ、作業者が刃物によって切創されることのない効果を奏するものであることがわかる(実施例1〜3、表1)。
一方、比較例1、2のように、防護具のサイズにカットした防護材(編織物)を用いた場合は、防護材を多数枚積層したものを用いても(比較例1、表2)、さらに緩衝材層を増やしても(比較例2、表3)、刈刃はいずれも防護具を貫通(裏地を突き抜ける)し、防護具としては使用できないものであった。
また、比較例3のように、防護材としては実施例と同一品質の編織物を用い、しかもカットせず縦長のままの生地を用いても、従来のように防護具のサイズにあわせて折り返し折りたたんだものを防護材層とした場合は、135cmもの縦長であっても(試料No.TIP−16)刈刃は防護具を貫通した。さらに、アラミド繊維含量が多いので、より耐切創性にすぐれたケブラー/ポリエステル(#8000)の縦108cm生地を用い、緩衝材層を2層用いた場合でも、折り返し折りたたんだものを防護材層とした場合(試料No.TIP−17)は、やはり刈刃は防護具を貫通した(比較例3、表4)。
特に、この比較例3の試料No.TIP−17の結果と実施例3(試料No.TIP−07)の結果を比較すると、いかに本発明の防護具が優れているかがわかる。
以上の結果から、本発明のように、防護材(編織物)をタック状に折り重ねて防護具の長さに調節して収納し、1層が縦長の1枚の生地で構成されるようにした防護材層を用いることにより、従来技術からは予想もつかない効果を奏することが裏付けられた。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の主な効果としてすでに述べたように、本発明の防護具は、防護具に接触した刈払機の刈刃の回転が直ちに止まるので、刃が深く切り込むことがなく作業者を防護でき、かつ、従来のものより防護材や緩衝材などの中材の量を少なくできるので、防護具を軽量にでき、材料費も軽減でき、経済的にも有利である。したがって、耐切創性にすぐれ、かつ軽量で柔軟で作業性にもすぐれた防護具を安価で提供することができるので、産業上大きな利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の防護具の臑カバー(A)を装着した状態を示す図である。
【図2】図1の臑カバー(A)の縦線a−a′での断面の概略図で、本発明の防護具の構造を説明する図である。
【符号の説明】
【0037】
A 臑カバー(防護具)
1 緩衝材層
2 防護材層
3 被覆材(裏地)
4 被覆材(表地)
t タック幅
t′ タックとタックの間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防護具の中材として、一枚の縦長の防護材である編織物をタック状に折り曲げ、防護具の長さになるようにタックを重ねて構成した防護材層の少なくとも1層を収納したことを特徴とする刈払機用防護具。
【請求項2】
防護材層が、少なくとも一面が緩衝材層によって被覆されたものである請求項1記載の刈払機用防護具。
【請求項3】
防護材である編織物が、縦の長さが80cm以上である、請求項1又は2記載の刈払機用防護具。
【請求項4】
防護材である編織物が、その縦糸が、高強度・高弾性繊維を主成分とするものである、請求項1乃至3のいずれかに記載の刈払機用防護具。
【請求項5】
編織物をタック状に折り曲げ、タックを重ねたものが、タック幅が、タックとタックの間隔とほぼ等しくなるように折り重ねたものである、請求項1乃至4のいずれかに記載の刈払機用防護具。
【請求項6】
防護具が、臑カバーである、請求項1乃至5のいずれかに記載の刈払機用防護具。
【請求項7】
刈払機が、チップソーを刈刃とするものである、請求項1乃至6のいずれかに記載の刈払機用防護具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−126851(P2010−126851A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304327(P2008−304327)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(598166928)株式会社マックス (5)
【Fターム(参考)】