説明

列車の通信システム

【課題】漏洩同軸ケーブルに大電流が流れた場合でも、沿線無線機の損傷を防止することができ、しかも、適正に送受信を行うことのできる列車の通信システムを提供する。
【解決手段】列車の軌道に沿って設置された漏洩同軸ケーブル5と、漏洩同軸ケーブル5の中途部に配置された分岐装置と、分岐装置に接続され軌道を走行する列車の車上無線機と情報の送受信を行う沿線無線機4と、を備え、分岐装置は、受信側方向性結合器9を備えた受信部7と、漏洩同軸ケーブル5の中途部に並列に配置された2つの送信側方向性結合器13を備えた送信部8とを直列に接続して構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は列車の通信システムに係り、特に、漏洩同軸ケーブルに大電流が流れた場合でも、沿線無線機の損傷を防止することができ、しかも、適正に送受信を行うことを可能とした列車の通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、列車の車上装置と、地上装置との間で通信を行う場合、軌道に沿って漏洩同軸ケーブル(LCX)を布設し、この漏洩同軸ケーブルを介して通信を行う漏洩同軸ケーブル方式が知られている。
【0003】
このような漏洩同軸ケーブルを用いた技術として、従来から、例えば、軌間中央で、かつ軌道に沿って布設された漏洩同軸ケーブルを使用し、地上から車上に微弱電波で情報伝送を行うとともに、車上から地上へは、漏洩同軸の外部導体と両わきのレール間で誘導ループを構成し、誘導無線周波数帯域で情報伝送を行うようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−002265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の技術のように、漏洩同軸ケーブルを用いて情報の送受信を行う場合、例えば、列車の沿線に沿って複数の沿線無線機を設置し、これら各沿線無線機を漏洩同軸ケーブルに接続するものであるが、従来、沿線無線機と漏洩同軸ケーブルとの接続は、分配器を介して接続するようにしていた。
【0006】
分配器の内部には、抵抗が設置されていることから、漏洩同軸ケーブルを信号が流れる際に、分配器を通過すると信号が減衰されてしまい、長距離にわたって信号を送信することが困難であるという問題を有している。また、漏洩同軸ケーブルと沿線無線機とが分配器を介して直接接続されているので、例えば、漏洩同軸ケーブルに落雷があった場合のように、漏洩同軸ケーブルに過大な電流が流された場合に、沿線無線機にも電流が流れ、沿線無線機の損傷を招いてしまうという問題を有している。
【0007】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、漏洩同軸ケーブルに大電流が流れた場合でも、沿線無線機の損傷を防止することができ、しかも、適正に送受信を行うことのできる列車の通信システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するために、請求項1の発明に係る列車の通信システムは、列車の軌道に沿って設置された漏洩同軸ケーブルと、
前記漏洩同軸ケーブルの中途部に配置された分岐装置と、
前記分岐装置に接続され、前記軌道を走行する列車の車上無線機と情報の送受信を行う沿線無線機と、備え、
前記分岐装置は、受信側方向性結合器を備えた受信部と、前記漏洩同軸ケーブルの中途部に並列に配置された2つの送信側方向性結合器を備えた送信部とを直列に接続して構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記分岐装置は、前記受信側方向性結合器から取出した信号の出力を可変する受信側可変抵抗器を備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2において、前記分岐装置は、前記送信側方向性結合器に送る信号の出力を可変する送信側可変抵抗器を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、分岐装置を、受信側方向性結合器を備えた受信部と、漏洩同軸ケーブルの中途部に並列に配置された2つの送信側方向性結合器を備えた送信部とを直列に接続して構成するようにしており、受信側方向性結合器および送信側方向性結合器は、漏洩同軸ケーブルと沿線無線機とを直接電気的に接続するものではないので、漏洩同軸ケーブルに過大な電流が流れた場合であっても、沿線無線機を確実に保護することができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、分岐装置に、受信側方向性結合器から取出した信号の出力を可変する受信側可変抵抗器を設けるようにしているので、漏洩同軸ケーブルから信号を受信する際に、受信側可変抵抗器により受信した信号を適正な出力に可変することができ、受信信号のレベルが低い場合であっても、適正な信号の受信を行うことができる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、分岐装置に、送信側方向性結合器に送る信号の出力を可変する送信側可変抵抗器を設けるようにしているので、沿線無線機から信号を送信する際に、送信側可変抵抗器により所定の出力に可変して送信することができ、送信距離に応じて適正な出力で送信することができ、長距離にわたって信号の送信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る列車の通信システムの実施形態における概略構成図である。
【図2】本発明に係る列車の通信システムの実施形態における分岐装置の詳細を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る列車の通信システムの実施形態を示す概略構成図であり、本実施形態においては、列車1が走行する所定の軌道2上には、列車1に搭載された車上無線機3と情報の送受信を行うための複数の沿線無線機4が設置されている。これら各沿線無線機4に沿って漏洩同軸ケーブル5が設置されており、この漏洩同軸ケーブル5は、漏洩同軸ケーブル5の中途部に設置された分岐装置6を介してそれぞれ沿線無線機4が接続されるように構成されている。
【0017】
また、図2は、本実施形態の分岐装置6を示したものであり、本実施形態においては、分岐装置6は、受信部7と送信部8とを備えている。受信部7は、一端部が漏洩同軸ケーブル5に接続された双方向性の受信側方向性結合器9を備えており、この受信側方向性結合器9には、漏洩同軸ケーブル5を流れる信号を取出して出力するための2つの受信側ポート10,10が設けられている。受信側方向性結合器9の各受信側ポート10には、それぞれ各受信側ポート10からの信号の出力を可変するための受信側可変抵抗器11が接続されており、これら各受信側可変抵抗器11には、各受信側可変抵抗器11の出力を合成して沿線無線機4に送る受信側合成器12が接続されている。
【0018】
また、送信部8は、並列に配置された双方向性の2つの送信側方向性結合器13,13を備えており、この送信側方向性結合器13には、それぞれ漏洩同軸ケーブル5に信号を送るための2つの送信側ポート14,14が設けられている。これら各送信側方向性結合器13の一端は、各送信側方向性結合器13の出力を合成する合成器15を介して受信側方向性結合器9の他端部に直列に接続されており、各送信側方向性結合器13の他端は、各送信側方向性結合器13の出力を合成する合成器16を介して漏洩同軸ケーブル5に接続されている。また、各送信側方向性結合器13の一方の送信側ポート14は、それぞれ終端とされており、各送信側方向性結合器13の他方の送信側ポート14には、それぞれ送信側可変抵抗器17が接続されている。これら各送信側可変抵抗器17には、送信側合成器18を介してアンプ19が接続されており、このアンプ19には、沿線無線機4の出力信号が入力されるように構成されている。
【0019】
なお、前記実施形態においては、受信側合成器12からの出力経路と、アンプ19への送信経路とを別個に構成するようにしたが、受信側合成器12からの出力経路と、アンプ19への送信経路とを結合器により、1つの経路にまとめるようにしてもよい。
【0020】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0021】
本実施形態においては、漏洩同軸ケーブル5を流れる信号は、受信部7を通過する際には、受信側方向性結合器9をそのまま通過する。また、送信部8を通過する際には、合成器により、一度分岐されて信号の出力が1/2に減衰された状態で、各送信側方向性結合器13を通過し、各送信側方向性結合器13を通過した後、合成器により再び合成されて元の出力に戻されて通過するものである。そのため、本実施形態においては、漏洩同軸ケーブル5を通過する信号が減衰してしまうことがなく、長い距離にわたって信号を送信することができるものである。
【0022】
そして、漏洩同軸ケーブル5を流れる信号を受信する場合は、図2中実線矢印で示すように、漏洩同軸ケーブル5を流れる信号の一部を受信側方向性結合器9の各受信側ポート10により取り出し、この信号は、それぞれ可変抵抗器により所定の出力に増幅されて受信側合成器12に送られ、この受信側合成器12により合成された後、沿線無線機4に送られる。
【0023】
また、漏洩同軸ケーブル5に信号を送信する場合は、図2中破線矢印で示すように、沿線無線機4からアンプ19を介して増幅された信号が送信側合成器18により分岐され、送信側可変抵抗器17を介して所定の出力に可変された後、各送信側方向性結合器13の一方の送信側ポート14に送られる。そして、図2において上方に位置する送信側方向性結合器13の出力信号は、図2において右方向に出力され、合成器を介して漏洩同軸ケーブル5に送られる。一方、図2において下方に位置する送信側方向性結合器13の出力信号は、図2において左方向に出力され、合成器を介して受信側方向性結合器9に出力される。
【0024】
この場合において、本実施形態においては、沿線無線機4から信号を送信する際に、送信側可変抵抗器17により所定の出力に可変して送信することができるようにしているので、送信距離に応じて適正な出力で送信することができ、長距離にわたって信号の送信を行うことができる。また、漏洩同軸ケーブル5から信号を受信する際にも、受信側可変抵抗器11により受信した信号を適正な出力に可変することができるので、例えば、受信信号のレベルが低い場合であっても、適正な信号の受信を行うことができるものである。
【0025】
以上述べたように、本実施形態においては、分岐装置6を、受信側方向性結合器9を備えた受信部7と、漏洩同軸ケーブル5の中途部に並列に配置された2つの送信側方向性結合器13を備えた送信部8とを直列に接続して構成し、受信側方向性結合器9および送信側方向性結合器13は、漏洩同軸ケーブル5と沿線無線機4とを直接電気的に接続するものではないので、漏洩同軸ケーブル5に過大な電流が流れた場合であっても、沿線無線機4を確実に保護することができる。また、信号を送信する場合に、送信側可変抵抗器17により所定の出力に可変して送信することができるとともに、信号を受信する場合に、受信側可変抵抗器11により、受信した信号を適正な出力に可変することができるので、信号の送受信を適正に行うことができる。
【0026】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 列車
2 軌道
3 車上無線機
4 沿線無線機
5 漏洩同軸ケーブル
6 分岐装置
7 受信部
8 送信部
9 受信側方向性結合器
10 受信側ポート
11 受信側可変抵抗器
12 受信側合成器
13 送信側方向性結合器
14 送信側ポート
15,16 合成器
17 送信側可変抵抗器
18 送信側合成器
19 アンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車の軌道に沿って設置された漏洩同軸ケーブルと、
前記漏洩同軸ケーブルの中途部に配置された分岐装置と、
前記分岐装置に接続され、前記軌道を走行する列車の車上無線機と情報の送受信を行う沿線無線機と、備え、
前記分岐装置は、受信側方向性結合器を備えた受信部と、前記漏洩同軸ケーブルの中途部に並列に配置された2つの送信側方向性結合器を備えた送信部とを直列に接続して構成されていることを特徴とする列車の通信システム。
【請求項2】
前記分岐装置は、前記受信側方向性結合器から取出した信号の出力を可変する受信側可変抵抗器を備えていることを特徴とする請求項1記載の列車の通信システム。
【請求項3】
前記分岐装置は、前記送信側方向性結合器に送る信号の出力を可変する送信側可変抵抗器を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の列車の通信システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−75649(P2013−75649A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218256(P2011−218256)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】